【解決手段】成形材料を金型4内に射出する射出装置1において、射出部3内に供給された成形材料にガスを圧縮溶解させるために、該射出部3内にガスを供給するガス供給部8を設ける。射出部3は、成形材料を収容する射出室34を有する射出シリンダ30と、射出室34内をシリンダ軸方向に往復動する射出軸31と、射出軸31をシリンダ軸方向に往復動させる射出駆動装置36と、射出駆動装置36を制御して、射出室34を拡大、縮小するように射出軸31を射出室34内で後退、前進させ、該射出軸31が後退して射出室34にガスが供給された後、該射出軸31を前進させて射出室34に有る成形材料にガスを圧縮溶解させる射出制御装置38とを有する。射出軸31は各々少なくとも1つのシールリング31c、ピストンリング31dを有する。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、熱可塑性樹脂を成形材料とするプリプラ式射出装置を一例にして、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るプリプラ式射出装置1(以下、単に射出装置1という)の概略構成を示す図である。この射出装置1は、成形材料を可塑化する可塑化部2と、可塑化部2から供給された可塑化された溶融状態の成形材料(以下、単に成形材料という)を金型4のキャビティ空間41内に射出する射出部3と、可塑化部2および射出部3の各内部空間を連通する連通路3a、5aと、ガス供給部8とを備えている。可塑化部2および射出部3は、連結部材5で連結されている。
連結部材5は、連通路5aが形成されている。なお射出成形機は、射出装置1と、金型4を搭載する不図示の型締装置と、それらを制御する不図示の制御装置とで少なくとも構成されている。射出装置1および型締装置は、図示しない機台上に配置されている。なお以下では、成形材料として熱可塑性樹脂を用いるものとして説明するが、成形材料には、熱可塑性樹脂の他に、熱硬化性樹脂や、それらの樹脂と金属との複合材料等を使用してもよいし、特に限定されるものではない。
【0017】
可塑化部2は、可塑化シリンダ20と、可塑化シリンダ20の内部に配置された可塑化スクリュ21と、可塑化スクリュ21を回転させる回転駆動装置22と、逆流防止機構6とを有する。また、可塑化シリンダ20の後端側から樹脂材料を供給するためのホッパ7が設けられている。ホッパ7、可塑化シリンダ20および逆流防止機構6は、ホッパ取付部材2aに取り付けられている。回転駆動装置22は、逆流防止機構6に取り付けられている。ホッパ7の材料排出口と可塑化シリンダ20の材料供給口は、ホッパ取付部材2aの内部で連通されている。可塑化シリンダ20は、例えば、外周に巻かれたヒータによってシリンダ内部まで加熱されている。なお熱硬化性樹脂材料を成形材料とするプリプラ式射出装置の混合部は、例えば、混合軸と、混合シリンダを収容する混合シリンダを含む。
混合シリンダは、外周に冷却媒体を流す配管が巻かれていて、冷却されているとよい。
【0018】
可塑化シリンダ20の内部は、連結部材5の連通路5aおよび射出部3の連通路3aを介して、射出部3の射出室34と連通している。連通路5aの可塑化部側開口5bは、可塑化スクリュ21の軸線上に位置している。可塑化スクリュ21の先端は先鋭した円錐状に形成されている。回転駆動装置22が駆動されると、逆流防止機構6およびホッパ取付部材2a内に配された図示外の駆動伝達機構を介して、可塑化スクリュ21が回転する。
ホッパ7から可塑化シリンダ20に供給された成形材料は、例えばヒータによる可塑化シリンダ20の加熱および可塑化スクリュ21の圧縮と回転に伴う剪断発熱によって溶融される。連結部材5は、例えば、外周に巻かれたヒータによって部材内部まで加熱されている。なお熱硬化性樹脂材料を成形材料とするプリプラ式射出装置の連結部材5は、外周に冷却媒体を流す配管が巻かれていて、冷却されているとよい。
【0019】
逆流防止機構6は、後述される射出プランジャ31によって射出室34内に圧力が掛けられた際に、射出室34内の成形材料が可塑化シリンダ20内に逆流することを防止するために設けられている。その具体的な構成としては、例えば特許第6281999号公報に示されているように、逆流防止機構6で可塑化スクリュ21を前進させて、可塑化スクリュ21の先端で連通路5aの可塑化部側開口5bを閉塞する構成等を採用することができる。また、逆流防止機構6は、連通路5aの途中を閉塞するチェック弁、ロータリ弁またはニードル弁などの開閉弁を採用してもよい。
【0020】
射出部3は、射出シリンダ30と、射出シリンダ30の内部に配置された射出軸31と、射出シリンダ30の前端に取り付けられた射出ノズル32とを有する。射出ノズル32には、射出シリンダ30の内部に形成されている射出室34に連通して外部に開口した射出孔32aが、該射出ノズル32の全長に亘って穿設されている。射出ノズル32の先端部には、射出孔32aを開閉する射出孔開閉弁33が設けられている。射出孔開閉弁33は、例えば、チェック弁、ロータリ弁またはニードル弁などを採用してもよい。なお射出シリンダ30および射出ノズル32は、例えば、外周に巻かれたヒータによってシリンダ内部まで加熱されている。なお熱硬化性樹脂材料を成形材料とするプリプラ式射出装置の射出部は、例えば、射出シリンダおよび射出ノズルの外周に冷却媒体を流す配管が巻かれていて、冷却されているとよい。
【0021】
射出軸31は、射出プランジャ31または不図示の射出スクリュなどである。ここからは、射出プランジャ31を一例にして説明する。射出プランジャ31の中心部には、該射出プランジャ31の全長に亘って延びるガス供給孔31aが穿設されており、このガス供給孔31aの先端部(射出ノズル32側の端部)には、ガス供給孔31aを開閉可能なバネ式弁31bが収められている。ガス供給孔31aは、ガス供給部8から供給されるガスを射出室34内に導く。
【0022】
図1において、射出部3の以上説明した構成は概略的に示している。
図2は以上の構成をより詳しく示す断面図である。なお、この
図2では、射出プランジャ31が可能な限り射出ノズル32側に位置している状態を示している。この
図2に示される通りバネ式弁31bは、コイルバネ31sによって図中右方に付勢されており、外力が作用しなければこの付勢力により、ガス供給孔31aを閉じた状態を維持する。また同図に示す通り、概略円柱状の射出プランジャ31の外周面には少なくとも1つのシールリング31cおよび少なくとも1つのピストンリング31dが射出プランジャ31の軸方向に並んで嵌着されている。射出プランジャ31は、これらのシールリング31cおよびピストンリング31dが射出シリンダ30の内周面と摺動することにより、射出シリンダ30との間で機密状態を保って該射出シリンダ30のシリンダ軸方向に相対移動可能となっている。主にシールリング31cは、射出室34内のガスが射出シリンダ30の内周面と射出プランジャ31の外周面との間から漏れることを防止する。主にピストンリング31dは、射出シリンダ30内を摺動する射出プランジャ31を調心しかつ射出プランジャ31の姿勢を維持して、射出プランジャ31の移動をスムーズにするとともに、射出シリンダ30の内周面と射出プランジャ31の外周面との間の隙間を均一にして、シールリング31cが確実にすべての隙間をシールして隙間から射出室34内のガスが漏れることを防止する。
【0023】
シールリング31cのうちの少なくとも1つは、例えば、材質が金属でもよい。好ましくは、射出プランジャ31の外周面には、3つ以上の金属製のシールリング31cが射出プランジャ31の軸方向に並んで嵌着されているとよい。具体的な例として
図4に、金属製シールリング31cが射出プランジャ31の軸方向に3個並べて嵌着されている例を示す。なおこの
図4において、先に説明した
図2中のものと同等の要素には同番号を付してあり、それらについての説明は、特に必要の無い限り省略する(以下、同様)。
【0024】
シールリングのうちの少なくとも1つは、例えば、付勢部材を可撓性部材で被覆して構成されているとよい。付勢部材は、例えば、ばねである。可撓性部材は、例えば、高い耐熱性と高い耐磨耗性を有し、さらに高い滑り性を有するとよい。可撓性部材の材質は、例えば、フッ素樹脂を含むとよい。
図5に、そのように形成されたシールリング131cの一例を示す。図中130が付勢部材、132が可撓性部材である。このように構成されているシールリング131cは、必要以上に変形して取り付け位置から移動することを防止するために、バックアップリング131bと一緒に射出プランジャ31に取り付けられてもよい。
【0025】
さらに
図6に一例を示すように、射出プランジャ31の外周には、シールリング231cに対して射出プランジャ31の前進側の部分に、少なくとも1つの環状溝231bが射出プランジャ31の軸方向にシールリング231cと並べて形成されているとよい。
【0026】
以下、
図1および
図2に戻って説明を続ける。射出シリンダ30は、
図2に示すように、後端部に冷却装置42を備えるとよい。冷却装置42は、ヒータで加熱されている射出シリンダ30の後端部の熱膨張を抑制する。熱膨張が抑制された射出シリンダ30の後部の内周面と、それに対面する射出プランジャ31の外周面と、の間の隙間は、ヒータの加熱によって大きくなることが抑制されて、その隙間から射出室34内のガスが漏れることを防止する。
【0027】
冷却装置42は、例えば、冷却配管43を備えて射出シリンダ30の後端部に取り付けられているスクレーパリングでもよい。冷却配管43を備えるスクレーパリングは、冷却配管43の入口から供給されて出口から排出される冷却媒体によって射出シリンダ30の後端部を冷却することができる。なおスクレーパリングは、射出プランジャ31を貫通させて、射出プランジャ31の外周面に付着する薄い膜状の成形材料を取り除くための装置である。冷却装置42は、スクレーパリングとは別の単体の装置でもよい。
【0028】
射出シリンダ30の内部空間のうち、射出プランジャ31よりも前側つまり射出ノズル32側の空間が、前述した射出室34とされている。また射出シリンダ30の後方側つまり
図1中で右側には、駆動装置保持部35が設けられ、この駆動装置保持部35には射出駆動装置36が保持されている。
【0029】
射出駆動装置36は例えば油圧式等のピストンシリンダ装置等から形成されて、ロッド37を射出プランジャ31の軸方向に移動させるように構成されている。このロッド37は射出プランジャ31に連結されている。したがって該ロッド37が上述のように移動すると、射出プランジャ31が前進、後退する。射出室34の容積は、射出プランジャ31が前進すると縮小し、射出プランジャ31が後退すると拡大する。ここで、前進とは
図1中で左方への移動であり、後退とは同図中で右方への移動である。射出プランジャ31の位置は例えばリニアエンコーダ、ロータリエンコーダ等の不図示の位置検出器で検出されているとよい。射出駆動装置36の駆動は、射出制御装置38によって制御される。射出制御装置38は、射出成形機の全体を制御する前述した制御装置に含まれてもよい。射出制御装置38は、前述の位置検出器の検出値に基づき射出駆動装置36を制御するとよい。なお射出駆動装置36は油圧式の他にも例えば空圧式、電動式等の各種方式で構成されてもよい。
【0030】
なお、前述した型締装置は、金型4を開閉させる機構を有し、金型4に成形材料が充填された時に十分な圧力(型締力)をかける構造になっている。型締力をかけることで溶けた樹脂材料が金型4に入ってくる時の圧力に負けないようにして、金型4から樹脂材料が外に出ないようにしている。
【0031】
ガス供給部8は、例えば、二酸化炭素等のガスを貯えたガス供給源としての高圧ガスボンベ80と、この高圧ガスボンベ80から吐出されるガスを上記ロッド37の内部通路(図示せず)を介して、射出プランジャ31のガス供給孔31a内に送るガス通路81と、ガス通路81に高圧ガスボンベ80の側から順に介設された減圧弁82、圧力計83、および切換弁84とを有している。ガス供給部8はさらに、切換弁84の下流側つまり高圧ガスボンベ80と反対側においてガス通路81から分岐された分岐通路85と、この分岐通路85に介設された切換弁86とを有している。なおガス通路81は、前述した射出プランジャ31のガス供給孔31aと共に、本発明におけるガス通路を構成している。
【0032】
本例では通常、切換弁84が開かれると共に切換弁86が閉じられて、高圧ガスボンベ80に貯えられているガスがガス供給孔31a内に送られるようになっている。こうしてガス供給孔31a内に送られるガスの圧力は、減圧弁82の操作によって、好ましい値に設定することができる。またこのガスの圧力は、圧力計83によって確認することができる。その一方、例えば射出部3の保守、管理等のために、上記とは反対に切換弁84を閉じると共に切換弁86を開いて、ガス供給孔31aから切換弁86までのガス通路81内のガスの一部を外部に排出させて、ガス供給孔31aから切換弁86までのガス通路81内のガスの圧力を大気圧まで減圧することも可能となっている。またガス供給部8は、必要に応じてガス通路81の必要な箇所に例えば、リリーフ弁等の圧力制御弁92を少なくとも1つ備えてもよい。なお、
図1には、2つ備えた例を示している。圧力制御弁92は、ガス通路81内のガスの圧力が所定の圧力値以上になると外部にガスを排出して、ガス通路81内のガスの圧力が所定の圧力値以上にならないように制御する。
【0033】
ガス供給部8はさらに、例えば、分岐通路85の下流側においてガス通路81に介設された流量センサ88と、この流量センサ88に接続された積算流量コントローラ89と、この積算流量コントローラ89に接続された積算流量モニタ90とを有している。流量センサ88、積算流量コントローラ89、および積算流量モニタ90はガスの積算流量を計測するガス積算流量計測装置91を構成しており、このガス積算流量計測装置91は前述の射出制御装置38に接続されている。例えば、ガス通路81を通してガス供給孔31a内に送られたガスの積算流量を示す信号が、積算流量モニタ90から射出制御装置38に入力される。積算流量コントローラ89と積算流量モニタ90は、射出制御装置38または前述した制御装置に含まれてもよい。流量センサ88は、マスフローメータであるとよい。またガス供給部8は、流量センサ88に替えて、ガスの流量を検出するとともにガスの流量を制御することができるマスフローコントローラを備えてもよい。マスフローコントローラは、流量センサと、流量制御弁と、流量センサの出力に基づき流量制御弁を制御する制御部とを備えている。ガス供給部8は、マスフローコントローラによって、所望する一定の流量でガスを供給することができる。なお、マスフローメータには、積算流量コントローラ89の機能を備えるものがある。マスフローメータには、積算流量モニタ90の機能を備えるものがある。マスフローコントローラには、積算流量コントローラ89の機能を備えるものがある。マスフローコントローラには、積算流量モニタ90の機能を備えるものがある。積算流量コントローラ89は、マスフローメータまたはマスフローコントローラが有する積算流量コントローラ89の機能を利用してもよい。積算流量モニタ90は、マスフローメータまたはマスフローコントローラが有する積算流量モニタ90の機能を利用してもよい。
【0034】
以下、上記射出装置1の作用について、
図3を参考にしながら説明する。一般に射出成形は、型閉および型締め、射出、保圧、冷却、計量、型開、取出の各工程が順になされ、この成形サイクルを繰り返して成形された製品が得られる。
図3の(1)〜(11)は、1つの製品を成形するに当たって上記保圧が終了した時点から、次の製品を成形する際の保圧がなされるまでの射出プランジャ31、バネ式弁31b、および射出孔開閉弁33の状態を時間経過に従って概略的に示している。なお、同図の(1)では、図中の全ての要素に附番を付けて示しているが、(2)〜(11)では図面の煩雑化を避けるために、説明に必要な要素のみに附番を付けて示している。
【0035】
また、射出シリンダ30内における射出プランジャ31の前進、後退位置は、前述したように射出制御装置38によって制御される射出駆動装置36の動作によって定められる。しかし以下の説明では、特に必要な場合以外は、射出制御装置38の制御および射出駆動装置36の動作については逐一説明しないで、射出プランジャ31の動作あるいは位置だけを説明することもある。
【0036】
まず、上記保圧工程が終了した時点において、射出プランジャ31の位置は
図3の(1)に示す状態となっている。また射出孔開閉弁33は、射出ノズル32の射出孔32aを開いた状態となっている。このとき、射出プランジャ31の前の射出室34には、成形材料が残っている。またこのとき逆流防止機構6は、連通路5aを閉じている。この逆流防止機構6の動作は、例えば射出制御装置38によって制御されるが、それに限らず、射出成形機全体の動作を制御する制御装置によって制御されてもよい。
【0037】
以上の状態から次に、
図3の(2)に示すように、例えば電磁弁等からなる射出孔開閉弁33は射出ノズル32の射出孔32aを閉じる状態に変えられる。この射出孔開閉弁33の動作は、例えば射出制御装置38によって制御されるが、それに限らず、射出成形機全体の動作を制御する制御装置によって制御されてもよい。射出孔開閉弁33が以上の状態に変えられた後、型締装置で金型4を開く型開の工程、および、開かれた金型4から冷却した成形品を取り出す取出の工程がなされる。
【0038】
次に
図3の(3)に示すように、
図1に示すガス通路81を通してガス供給孔31a内にガスを送り込みながら、射出プランジャ31が所定の速度で所定の位置まで後退させられる。このときのガスの圧力は、
図1に示す減圧弁82により、例えば5MPa以下程度に設定される。このガスの圧力および射出プランジャ31の後退に伴う負圧により、バネ式弁31bはコイルバネ31sの付勢力に抗してガス供給孔31aを開く。それにより、ガス供給孔31aから射出シリンダ30の内部空間(射出室34)にガスが送られる。このガスは、圧力が上記程度でさほど高くはないので、射出室34内に残っている成形材料に溶解することは基本的に回避される。
【0039】
次に
図3の(4)に示すように、射出プランジャ31が所定の圧力で所定の時間だけ前進させられる。それにより、射出室34に送られていたガスが、該射出室34に残っている成形材料に圧縮溶解する。なお、バネ式弁31bは
図2に示した通りの構成を有するので、射出室34に送られたガスがガス供給孔31aに逆流することを防止可能である。バネ式弁31bは、射出室内のガスの圧力とコイルばね31sの付勢力を足し合わせた圧力が、ガス供給孔31a内のガスの圧力よりも大きくなるとガス供給孔31aを閉じる。
【0040】
次に
図3の(5)に示すように、同図(3)に示したのと同様にして、射出プランジャ31が所定の速度で所定の位置まで後退させられる。それにより、ガス供給孔31aから射出シリンダ30の射出室34にガスが送られる。この場合も、射出室34内に残っている成形材料にガスが溶解することは基本的に回避される。
【0041】
次に
図3の(6)に示すように、同図(4)に示したのと同様にして、射出プランジャ31が所定の圧力で所定の時間だけ前進させられる。それにより、射出室34に送られていたガスが、該射出室34に残っている成形材料に圧縮溶解する。
【0042】
以上のようにして、射出プランジャ31の後退および前進が複数サイクル繰り返される。その間、
図1に示す流量センサ88が、ガス通路81を流れるガスの流量を検出し、積算流量コントローラ89がこのガスの流量から積算流量を算出する。そして、その積算流量が積算流量モニタ90によって監視され、この積算流量を示す信号が射出制御装置38に入力される。射出制御装置38はこの信号が示す積算流量が目標値(射出室34内に供給させたい所望量)に達すると、射出駆動装置36の動作を制御して射出プランジャ31の位置を、最初の保圧工程が終了した時点の位置に戻す。
図3の(7)は、このときの状態を示している。積算流量モニタ90は、射出制御装置38に積算流量が予め設定した目標値に達すると、それを示す信号を出力するようにしてもよい。射出制御装置38は、積算流量が予め設定した目標値に達したことを示す信号が入力されると、射出プランジャ31の位置を、最初の保圧工程が終了した時点の位置に戻すように射出駆動装置36の動作を制御してもよい。射出制御装置38は、積算流量モニタ90を含んで、積算流量コントローラ89で算出された積算流量を示す信号が入力されて、積算流量が予め設定した目標値に達すると、射出プランジャ31の位置を、最初の保圧工程が終了した時点の位置に戻すように射出駆動装置36の動作を制御してもよい。射出制御装置38は、積算流量コントローラ89および積算流量モニタ90を含んで、流量センサ88で検出されたガスの流量を示す信号が入力されて、このガスの流量から積算流量を算出して、積算流量が予め設定した目標値に達すると、射出プランジャ31の位置を、最初の保圧工程が終了した時点の位置に戻すように射出駆動装置36の動作を制御してもよい。
【0043】
次に射出制御装置38は、連通路5aを開き、射出駆動装置36により射出プランジャ31に所定の背圧を掛けながら、
図1の回転駆動装置22を駆動させて可塑化スクリュ21を回転させ、ホッパ7から溶融した成形材料を可塑化シリンダ20内に供給させる。なお、このように射出制御装置38が回転駆動装置22の駆動を直接制御する他に、回転駆動装置22の駆動を制御する専用の回転駆動制御部を設けて、その回転駆動制御部を射出制御装置38が制御するようにしてもよい。可塑化シリンダ20内に供給された成形材料は、回転する可塑化スクリュ21によって混練されながら前方、つまり連通路5aの方に給送される。連結部材5の可塑化部側開口5bから連通路5a内に送られた成形材料は、連通路3aを経て射出部3の射出室34に送られる。
【0044】
図3の(8)はこのときの状態を示しており、図示のように射出プランジャ31は、射出室34に供給された成形材料に押されて後退している。射出室34に新たに供給された成形材料には、射出室34の中で既にガスが圧縮溶解した成形材料と混ざり合うことで、該射出室34に供給されていたガスが高圧下で圧縮溶解する。
図1に示す射出制御装置38は射出プランジャ31を、上記計量が完了した位置、つまり計量された成形材料の量が所定量に達した位置で停止させる。
図3中のL1は、同図の(7)の位置からこの停止した位置までの射出プランジャ31の後退長を示している。
【0045】
上記計量が完了し、逆流防止機構6が連通路5aを閉じた後、射出制御装置38は成形材料を金型4内に射出する工程が開始されるまで射出プランジャ31を所定の圧力で前進させる。
図3の(9)はこの前進がなされた後の状態を示している。同図中のL2は、この前進の長さを示している。こうして射出プランジャ31を前進させることにより、成形材料およびガスがさらに圧縮されて、成形材料へのガスの溶解が促進されて、そして、成形材料にガスが圧縮溶解している状態が維持される。成形材料は、こうしてガスが溶解されることにより粘度が低下して、可塑性が高められる。
【0046】
次に射出制御装置38は、例えば内部メモリに記憶している、成形材料計量完了時の射出プランジャ31の位置を、上記前進がなされた後の位置として補正する。成形材料計量完了時の射出プランジャ31の位置は、成形材料を金型4内に射出する際に、射出プランジャ31が前進を開始する位置である。
【0047】
次いで、射出孔開閉弁33が射出ノズル32の射出孔32aを開く状態に変えられた後、射出制御装置38は
図3の(10)に示すように、射出プランジャ31を所定の速度で所定の距離だけ前進させる。同図中のL3は、この前進の長さを示している。こうして射出プランジャ31を前進させることにより、ガスが溶解して低粘度化している成形材料が、射出ノズル32の射出孔32aを通して金型4の中に射出される。
【0048】
次いで射出制御装置38は、
図3の(11)に示すように、金型4中のゲート部分の成形材料が冷却固化するまで、射出プランジャ31を所定の圧力で所定時間前進させる保圧を行う。同図中のL4は、このときの射出プランジャ31の前進長を示している。
【0049】
本実施形態では、射出プランジャ31にガス供給孔31aが穿設されている。ガス供給孔31aは、射出プランジャ31の先端面に開口し、射出プランジャ31が後退すると、射出室34内における、射出プランジャ31の先端面と射出室34内の成形材料との間の空間に連通する。ガス供給孔31aが連通する空間は、射出プランジャ31を後退させることで、容積が拡大することで発生する負圧によって空間内の圧力が下がる。ガスは、ガス供給孔31a内の圧力よりも、負圧によって空間内の圧力が小さくなることで、ガス供給孔31aの開口から射出室34内に供給される。
【0050】
一般的に、保圧工程後の射出ノズル32内および射出室34内には、成形材料が残っている。例えば、ガス供給孔31aが射出ノズル32内に開口している場合、あるいは、ガス供給孔31aが射出プランジャ31の先端面に対面する射出室34の壁面に開口している場合、ガスは、ガス供給孔31aの開口を覆う成形材料を一時的に押し退けて、負圧によって内部圧力が低下した空間へと到達する。
【0051】
ガス供給孔31aから負圧によって内部圧力が低下した空間内へと流れるガスは、負圧によって内部圧力が低下した空間内の圧力とガス供給孔31a内の圧力との間の圧力差が小さくなるにしたがって流量が小さくなり、ガス供給孔31aの開口を覆っていた成形材料を押し退けられなくなる場合がある。再びガス供給孔31aの開口の少なくとも一部を覆った成形材料は、ガス供給孔31aからのガスの供給を途中で停止させる原因となる場合がある。
【0052】
保圧工程後に射出室34内に残る成形材料の量は、成形サイクル毎にばらつきがある。保圧工程後にガス供給孔31aの開口を覆う成形材料の量は、成形サイクル毎にばらつきがある。前述の理由でガスの供給が停止するタイミングは、成形サイクル毎にばらつく場合がある。ガスの供給が停止するタイミングがばらつくことで、射出室34内に供給されるガスの供給量が成形サイクル毎にばらつく場合がある。
【0053】
本実施形態では、射出プランジャ31の先端面にガス供給孔31aの開口を設け、ガスを供給する際に射出プランジャ31を後退させるので、ガスを供給している途中でガス供給孔31aの開口の少なくとも一部が成形材料に覆われることがない。本実施形態では、成形サイクル毎に所定量のガスを正確に射出室34内に供給することが可能になり、ガスの供給量を正しく制御することが可能になる。
【0054】
本実施形態では、射出プランジャ31が後退を開始した直後からガス供給孔31aの開口の前方に空間が形成される。本実施形態では、射出プランジャ31が後退を開始した直後でも前述の圧力差があればガスの供給を開始できるので、射出プランジャ31が後退するストロークを短くできる。
【0055】
本実施形態では、射出室34内の成形材料に所定量のガスを圧縮溶解させるために、射出プランジャ31の後退、前進を複数サイクル行わせるようにしている。
【0056】
一般的に、保圧工程後の射出ノズル32内および射出室34内には、成形材料が残っている。保圧工程では、成形材料を金型内に射出したあと、射出室34内に残る成形材料および射出ノズル32内に残る成形材料を介して金型内の成形材料に射出プランジャ31で所定の保持圧力を付与している。このとき、射出室34内の成形材料は、成形材料の弾性に応じて収縮する。保圧工程が完了すると、射出プランジャ31は、保持圧力が付与されなくなる。射出室34内で収縮していた成形材料は、元に戻ろうとして反発力を発生する。保圧工程が完了すると、射出プランジャ31は、成形材料の弾性による反発力で後退方向へと押し戻される。
【0057】
保圧工程後の射出室34内に残る成形材料の量は、成形サイクル毎にばらつきがある。保圧工程後に反発する成形材料によって後退方向に移動する射出プランジャ31のストロークは、成形サイクル毎にばらつきがある。それらのばらつきが原因で、負圧が発生する前の射出室34内の圧力は、成形サイクル毎にばらつく場合がある。そのあと射出プランジャ31を後退させた際に、負圧によって内部圧力が低下する射出室34内の圧力も成形サイクル毎にばらつく場合がある。ガスは、前述のとおり、圧力差によって、ガス供給孔31aの開口から射出室34内へと供給される。射出プランジャ31を1回だけ後退させて、所定量のガスを1回で射出室34内に供給する場合、ガスの供給量は、成形サイクル毎にばらつく場合がある。
【0058】
本実施形態では、所定量のガスが射出室34内に供給されるまで、所定量のガスよりも少ない量のガスを射出室34内に供給したあと、射出室34内の成形材料にガスを圧縮溶解することを繰り返すことで、成形サイクル毎に所定量のガスを正確に射出室34内に供給することが可能になり、ガスの供給量を正しく制御することが可能になる。
【0059】
本実施形態では、射出プランジャ31の後退、前進を1回だけ行う場合と比べると、射出プランジャ31の往復動のストロークをより短く設定可能である。
【0060】
一般的に、射出プランジャ31の往復動のストロークを比較的長く設定するには、射出シリンダ30を比較的長い全長を有するように形成する必要がある。そのように射出シリンダ30の全長が比較的長いと、射出プランジャ31は可塑化シリンダ20や射出室34から離れて低温になっている射出シリンダ30の一部も通過するようになる。そのような場合は、射出室34で射出プランジャ31に付着した溶融状態の成形材料が冷えて薄く固化することがある。
【0061】
この固化した成形材料が射出シリンダ30の内周面に不均一に残ると、射出シリンダ30の内周面と射出プランジャ31の外周面との間の隙間が不均一になる。当該不均一な隙間は、射出プランジャ31に取り付けたシールリング31cでもシールできずに、射出室34内のガスを漏らす原因となる場合がある。射出プランジャ31の往復動のストロークを比較的長く設定すると、ガスの供給量を正しく制御できないという不具合が生じることがある。それに対して、射出プランジャ31の往復動のストロークをより短く設定できれば、上述のような不具合を回避して、ガスの供給量を正しく制御可能となる。
【0062】
本発明の射出装置は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において適宜変更可能である。