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特開2021-75419Cs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトの製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-75419(P2021-75419A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】Cs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C01B 39/46 20060101AFI20210423BHJP
   C01B 39/28 20060101ALI20210423BHJP
   B01J 20/18 20060101ALI20210423BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20210423BHJP
【FI】
   C01B39/46
   C01B39/28
   B01J20/18 D
   B01J20/30
【審査請求】未請求
【請求項の数】11
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-202865(P2019-202865)
(22)【出願日】2019年11月8日
【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (その1)ウェブサイトの掲載日 2018年11月28日 ウェブサイトのアドレス https://doi.org/10.1016/j.micromeso.2018.11.037
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
(71)【出願人】
【識別番号】399030060
【氏名又は名称】学校法人 関西大学
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】田中 俊輔
(72)【発明者】
【氏名】宮川 紗奈
【テーマコード(参考)】
4G066
4G073
【Fターム(参考)】
4G066AA62A
4G066AA62B
4G066BA09
4G066BA25
4G066BA26
4G066BA36
4G066CA35
4G066DA01
4G066FA02
4G066FA11
4G066FA21
4G066FA34
4G066FA37
4G073BA01
4G073BA02
4G073BA04
4G073BA05
4G073BA06
4G073BA07
4G073BA75
4G073BA81
4G073CZ03
4G073CZ08
4G073CZ17
4G073CZ50
4G073FA17
4G073FC04
4G073FC12
4G073FC13
4G073FC25
4G073FC30
4G073FD08
4G073FD24
4G073FE02
4G073FE10
4G073GA01
4G073GA03
4G073GA12
4G073GA14
4G073GA19
4G073GB05
4G073UA06
(57)【要約】
【課題】有機構造規定剤を使用する必要が無く、より簡便且つ環境負荷のより小さいゼオライトの製造方法、及び/又は二酸化炭素吸脱着等温線がシグモイド曲線を含むゼオライト及びその製造方法を提供すること。
【解決手段】(工程1)FAU型ゼオライト及び固体アルカリ源を含む固体状混合物を水蒸気雰囲気下で有機構造規定剤の添加を必要とせずに加熱処理してNa−CHA型及び/又はNa−PHI型ゼオライトを結晶転換法によって得る工程、及び(工程2)前記工程1で得られたCHA型及び/又はPHI型ゼオライト中のカチオンをセシウムイオン及び/又はルビジウムイオンにイオン交換してCs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトを得る工程、を含む、Cs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトの製造方法。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(工程1)FAU型ゼオライト及び固体アルカリ源を含む固体状混合物を水蒸気雰囲気下で有機構造規定剤の添加を必要とせずに加熱処理してNa−CHA型及び/又はNa−PHI型ゼオライトを結晶転換法によって得る工程、及び
(工程2)前記工程1で得られたCHA型及び/又はPHI型ゼオライト中のカチオンをセシウムイオン及び/又はルビジウムイオンにイオン交換してCs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトを得る工程、
を含む、Cs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトの製造方法。
【請求項2】
前記FAU型ゼオライトがNa−FAU型ゼオライトである、請求項1に記載の製造方法。
【請求項3】
前記アルカリ源がアルカリ金属水酸化物である、請求項1又は2に記載の製造方法。
【請求項4】
前記アルカリ源に対する前記FAU型ゼオライトの質量比が1〜25である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【請求項5】
前記加熱処理の温度が115〜200℃である、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【請求項6】
前記加熱処理が閉鎖空間内で行われる、請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【請求項7】
前記閉鎖空間内の水に対する前記FAU型ゼオライトの質量比が1〜50である、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【請求項8】
前記工程2において前記カチオンを前記セシウムイオンにイオン交換する、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【請求項9】
請求項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得られる、Cs-CHA型及び/又はPHI型ゼオライト。
【請求項10】
二酸化炭素吸脱着等温線がシグモイド曲線を含む、Cs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライト。
【請求項11】
シグモイド型の二酸化炭素吸着または脱着等温線を示すことを特徴とするCs型またはRb型CHAゼオライト、若しくはCs型またはRb型PHIゼオライトから主に構成される吸着分離材料。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトの製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
ゼオライトはSi、Al、酸素、及び陽イオンを含む結晶性アルミノケイ酸塩であり、その骨格構造としては200種類以上報告されている。ゼオライトは、その骨格中に気体分子や有機物分子レベルの穴(細孔)を有するので、気体の分離吸着機能や陽イオン交換能、触媒能等の性質を利用して、多様な分野で実用されている。
【0003】
ゼオライトの製造方法としては、例えば、シリカやアルミナを原料としてゼオライトを合成する方法が知られている。この方法は、有機構造規定剤の使用が不可欠であり、同時に強アルカリ溶媒中(液相中)で反応させる必要がある。しかしながら、有機構造規定剤は一般的に高価であるところ、その使用は製造コストの上昇に繋がってしまう。
【0004】
一方、特許文献1には、出発原料であるゼオライトを局所的な秩序構造をもつナノパーツにまで分解して、それを更に目的のゼオライト構造に再構築させる水熱転換法について記載されている。この方法は、有機構造規定剤を使用する必要が無い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2017−521347号公報
【非特許文献】
【0006】
【非特許文献1】Microporous and Mesoporous Materials 278 (2019) 219-224.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
水熱転換法は、強アルカリ液相中からの固体生成物の固液分離作業が困難を伴い、廃液処理等の課題がある。そのため、より簡便で環境負荷のより小さい方法が望ましい。
【0008】
一方、非特許文献1には、Na−FAU型ゼオライトと水酸化カリウムの混合粉末を水蒸気雰囲気下で加熱してNa−CHA型ゼオライトが得られたことが記載されている。この方法であれば、簡便であり、また有機構造規定剤を使用する必要が無いので、環境負荷を低減することができる。
【0009】
ところで、ゼオライトの常温以上の温度域における二酸化炭素吸脱着等温線は、通常、変曲点を有しない、圧力の上昇と共に接線の傾きが減少する曲線を示す。このため、ガスに対する吸着性が強い場合はガスの回収が困難であり、一方でガスに対する吸着性が弱い場合は分離効率が低くなってしまう。このため、理想的には、小さい圧力幅で急激なガス吸脱着が起こるように、二酸化炭素吸脱着等温線が変曲点を含むシグモイド曲線を示すことが望ましい。
【0010】
そこで、本発明は、その一態様において、有機構造規定剤を使用する必要が無く、より簡便且つ環境負荷のより小さいゼオライトの製造方法を提供することを課題とする。また、本発明は、その一態様において、二酸化炭素吸脱着等温線がシグモイド曲線を含むゼオライト及びその製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者は上記課題に鑑みて鋭意研究を進めた結果、(工程1)FAU型ゼオライト及び固体アルカリ源を含む固体状混合物を水蒸気雰囲気下で有機構造規定剤の添加を必要とせずに加熱処理してNa−CHA型及び/又はNa−PHI型ゼオライトを結晶転換法によって得る工程、及び(工程2)前記工程1で得られたCHA型及び/又はPHI型ゼオライト中のカチオンをセシウムイオン及び/又はルビジウムイオンにイオン交換してCs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトを得る工程、を含む、Cs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトの製造方法、を開発するに至った。本発明者はさらに研究を進め、本発明を完成させた。即ち、本発明は、下記の態様を包含する。
【0012】
項1. (工程1)FAU型ゼオライト及び固体アルカリ源を含む固体状混合物を水蒸気雰囲気下で有機構造規定剤の添加を必要とせずに加熱処理してNa−CHA型及び/又はNa−PHI型ゼオライトを結晶転換法によって得る工程、及び
(工程2)前記工程1で得られたCHA型及び/又はPHI型ゼオライト中のカチオンをセシウムイオン及び/又はルビジウムイオンにイオン交換してCs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトを得る工程、
を含む、Cs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトの製造方法。
【0013】
項2. 前記FAU型ゼオライトがNa−FAU型ゼオライトである、項1に記載の製造方法。
【0014】
項3. 前記アルカリ源がアルカリ金属水酸化物である、項1又は2に記載の製造方法。
【0015】
項4. 前記アルカリ源に対する前記FAU型ゼオライトの質量比が1〜25である、項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
【0016】
項5. 前記加熱処理の温度が115〜200℃である、項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
【0017】
項6. 前記加熱処理が閉鎖空間内で行われる、項1〜5のいずれかに記載の製造方法。
【0018】
項7. 前記閉鎖空間内の水に対する前記FAU型ゼオライトの質量比が1〜50である、項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
【0019】
項8. 前記工程2において前記カチオンを前記セシウムイオンにイオン交換する、項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
【0020】
項9. 項1〜8のいずれかに記載の製造方法により得られる、Cs-CHA型及び/又はPHI型ゼオライト。
【0021】
項10. 二酸化炭素吸脱着等温線がシグモイド曲線を含む、Cs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライト。
【0022】
項11. シグモイド型の二酸化炭素吸着または脱着等温線を示すことを特徴とするCs型またはRb型CHAゼオライト、若しくはCs型またはRb型PHIゼオライトから主に構成される吸着分離材料。
【発明の効果】
【0023】
本発明によれば、有機構造規定剤を使用する必要が無く、より簡便且つ環境負荷のより小さいゼオライトの製造方法を提供することができる。また、本発明によれば、二酸化炭素吸脱着等温線がシグモイド曲線を含むゼオライト及びその製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1】試験例1の粉体X線結晶回折のグラフを示す。PHI及びCHAはそれぞれリファレンスとして使用したPHI型ゼオライト及びCHA型ゼオライトを示す。
図2】左側の図は試験例2の粉体X線結晶回折のグラフを示す。左側の図中、PHI及びCHAはそれぞれリファレンスとして使用したPHI型ゼオライト及びCHA型ゼオライトを示し、Seedは種結晶を添加した場合(数字は添加量)を示す。右側の図は試験例2で得られた粉体X線結晶回折ピークにおける、CHA構造の及びPHI構造のfirst peakの強度(縦軸)と種結晶量との関係を表すグラフである。
図3】試験例3の粉体X線結晶回折のグラフを示す。PHIはリファレンスとして使用したPHI型ゼオライトを示し、SAC-PHIはSAC法で得られたゼオライトを示す。
図4】従来法(HTS)で得られたCHA型ゼオライト(試験例1)のカチオンをセシウムにイオン交換して得られたCs−CHA型ゼオライトの二酸化炭素吸脱着等温線を示す。縦軸は二酸化炭素吸着量を示し、横軸は圧力を示し、凡例は測定温度を示す。塗り潰し記号は吸着を示し、白抜き記号は脱離を示す。
図5】SAC法で得られたCHA型ゼオライト(試験例1)のカチオンをセシウムにイオン交換して得られたCs−CHA型ゼオライトの二酸化炭素吸脱着等温線を示す。縦軸、横軸、及び凡例については図4の説明と同じである。
図6】SAC法で得られたPHI型ゼオライト(試験例3)のカチオンをセシウムにイオン交換して得られたCs−CHA型ゼオライトの二酸化炭素吸脱着等温線を示す。縦軸、横軸、及び凡例については図4の説明と同じである。
図7】従来法(HTS)で得られたCHA型ゼオライト(試験例1)、SAC法で得られたCHA型ゼオライト(試験例1)、及びSAC法で得られたPHI型ゼオライト(試験例3)のカチオンをルビジウムにイオン交換して得られたRb−CHA又はPHI型ゼオライトの、70℃における二酸化炭素吸脱着等温線を示す。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本明細書中において、「含有」及び「含む」なる表現については、「含有」、「含む」、「実質的にからなる」及び「のみからなる」という概念を含む。
【0026】
1.ゼオライトの製造方法
本発明は、その一態様において、(工程1)FAU型ゼオライト及び固体アルカリ源を含む固体状混合物を水蒸気雰囲気下で有機構造規定剤の添加を必要とせずに加熱処理してNa−CHA型及び/又はNa−PHI型ゼオライトを結晶転換法によって得る工程、及び(工程2)前記工程1で得られたCHA型及び/又はPHI型ゼオライト中のカチオンをセシウムイオン及び/又はルビジウムイオンにイオン交換してCs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトを得る工程、を含む、Cs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトの製造方法(本明細書において、「本発明の製造方法」と示すこともある。)に関する。以下に、これについて説明する。
【0027】
工程1では、FAU型ゼオライト及び固体アルカリ源を含む固体状混合物を水蒸気雰囲気下で加熱処理してCHA型及び/又はPHI型ゼオライトを得る。
【0028】
FAU型ゼオライトは、フォージャサイト(FAU)骨格構造を有するゼオライトである限り、特に制限されない。
【0029】
なお、本明細書において、ゼオライトの骨格構造を示す「AAA型」(「AAA」は国際ゼオライト学会(International Zeolite Association, IZA)により定められている、骨格構造の3文字コードを示す。)なる表記は、ゼオライトが主に「AAA」骨格構造を含むことを示す。「AAA型」なる表記は、ゼオライト骨格構造の、例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上が、AAA骨格構造であることを示す。ゼオライトの骨格構造は、粉体X線結晶回折(CuKα線(λ=1.5418Å)を使用し、銅アノードを30kV及び15mAで動作)で解析することができる。リファレンスゼオライト(ある骨格構造が約100%のゼオライト)のピーク強度に対する、被検ゼオライトの同ピークの強度の比から、被検ゼオライトにおけるその骨格構造の割合を算出することができる。
【0030】
FAU型ゼオライトが含むカチオンは、ゼオライト構造内の負電荷部分と対になり得るイオンである限り、特に制限されない。FAU型ゼオライトとして、具体的には、例えばNa−FAU型ゼオライト、NH4−FAU型ゼオライト、Ba−FAU型ゼオライト、Sr−FAU型ゼオライト、Ca−FAU型ゼオライト、Fe−FAU型ゼオライト、Al−FAU型ゼオライト、Mg−FAU型ゼオライト、H−FAU型ゼオライト等が挙げられる。
【0031】
なお、本明細書において、ゼオライトのカチオンタイプを示す「X−」(「X」はカチオンの原子を示す。)なる表記は、ゼオライトが主にXカチオンを含むことを示す。「X−」なる表記は、ゼオライトが含む総カチオン数100%に対して、Xカチオン数が、例えば50%以上、好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは90%以上、よりさらに好ましくは95%以上であることを示す。ゼオライトのカチオン組成は、エネルギー分散型X線分析(EDX分析)または高周波誘導結合プラズマ発光分光法(ICP分析)または蛍光X線分析(XRF分析)により測定することができる。
【0032】
FAU型ゼオライトのSi/Al元素比は、特に制限されないが、例えば1〜500、好ましくは1.5〜100、より好ましくは2〜20、さらに好ましくは3〜10である。FAU型ゼオライトは、X型及びY型のいずれでもあり得るが、好ましくはY型である。
【0033】
なお、本明細書において、ゼオライトのSi/Al元素比は、29Si NMRにより測定することができる。
【0034】
FAU型ゼオライトのBET比表面積は、特に制限されないが、例えば100〜2000m2/g、好ましくは300〜1500m2/g、より好ましくは400〜1000m2/g、さらに好ましくは600〜800m2/gである。BET比表面積は、77Kにおける窒素吸着等温線から算出することができる。
【0035】
FAU型ゼオライトの平均粒子径は、特に制限されないが、例えば0.1〜20μm、好ましくは0.5〜15μm、より好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは4〜8μmである。
【0036】
FAU型ゼオライトは、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組合わせて使用することもできる。
【0037】
固体アルカリ源は、固体状の強塩基である限り、特に制限されない。固体アルカリ源は、好ましくは融点が180℃以上、200℃以上、250℃以上、又は300℃以上である。固体アルカリ源としては、好ましくはアルカリ金属化合物、より好ましくはアルカリ金属水酸化物が挙げられる。アルカリ金属としては、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム等が挙げられ、好ましくはナトリウム、カリウムが挙げられ、より好ましくはカリウムが挙げられる。固体アルカリ源としては、好ましくは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等が挙げられ、特に好ましくは水酸化カリウムが挙げられる。
【0038】
固体アルカリ源は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組合わせて使用することもできる。
【0039】
固体状混合物は、FAU型ゼオライト及び固体アルカリ源を含む、固体状(好ましくは粉体状)の混合物である限り、特に制限されない。
【0040】
アルカリ源に対するFAU型ゼオライトの質量比は、好ましくは1〜25である。このような範囲に設定することにより、CHA型及び/又はPHI型ゼオライトを効率的に生成させることができる。該質量比は、より好ましくは2〜25、さらに好ましくは5〜25、よりさらに好ましくは10〜20、特に好ましくは13〜17である。
【0041】
固体状混合物は、種結晶を含むことができる。工程1では、後述するように加熱処理温度に応じてCHA型ゼオライト及び/又はPHI型ゼオライトを得ることができるが、種結晶としてCHA型ゼオライト又はPHI型ゼオライトを加えることにより、ゼオライト中のCHA型骨格構造又はPHI型骨格構造の割合を増やすことができる。種結晶として使用されるCHA型ゼオライトは、チャバサイト(CHA)骨格構造を有するゼオライトである限り、特に制限されない。また、PHI型ゼオライトは、フィリップサイト(PHI)骨格構造を有するゼオライトである限り、特に制限されない。これらの種結晶の平均粒子径は、特に制限されないが、例えば0.1〜20μm、好ましくは0.5〜15μm、より好ましくは2〜10μm、さらに好ましくは4〜8μmである。種結晶は、1種単独で使用することもできるし、2種以上を組合わせて使用することもできる。
【0042】
固体状混合物における種結晶の含有量は、目的の骨格構造に応じて、適宜調節することができる。種結晶を含有する場合、その含有量は、FAU型ゼオライト100質量部に対して、例えば1〜30質量部である。該含有量は、生成物における種結晶の骨格構造を効果的に増加させることができるという観点から、好ましくは5〜25質量部、より好ましくは10〜20質量部、さらに好ましくは13〜17質量部である。
【0043】
固体状混合物は、工程1によるCHA型及び/又はPHI型ゼオライトの生成を著しく阻害することが無い限りにおいて、他の成分を含むことができる。本発明の製造方法は、有機構造規定剤を使用する必要が無い点に特徴を有するので、一般的に高価であり、また環境負荷を増大させ得る有機構造規定剤は使用しない方が好ましい。この観点から、有機構造規定剤の含有量は、FAU型ゼオライト100質量部に対して、例えば10質量部以下、好ましくは1質量部以下、より好ましくは0.1質量部以下、さらに好ましくは0.01質量部以下、特に好ましくは0質量部である。
【0044】
請求項1に記載の固体状混合物に従来は有機構造規定剤(OSDA)の添加が不可欠であったが、本発明では添加の有無にかかわらず、Na-CHA型及び/又はNa-PHI型ゼオライトが形成できること、そしてその後のイオン交換によってCsまたはRb型のCHA、PHIが得られる。即ち本発明において、OSDAの添加を不可欠としない結晶転換法として発明者等が初めて見出した製造方法である。また、従来のCHAの水熱転換法(HTS)等による製法では、まずK-CHAが形成されて、その後KイオンをNaイオンに変換して初めてNa-CHAを形成できたが、本発明の製造方法では直接にNa-CHAが形成される。一方、Na-PHIの作製にあたってはNa-CHAのような従来製法によるデータは十分には知られていない。
【0045】
固体状混合物におけるFAU型ゼオライト及び固体アルカリ源の合計含有量(種結晶を加えた場合は種結晶の含有量も含めた合計含有量)は、固体状混合物100質量%に対して、例えば70質量%以上、好ましくは80質量%、より好ましくは90質量%以上、さらに好ましくは95質量%以上、よりさらに好ましくは99質量%以上である。
【0046】
固体状混合物は、各成分を混合することにより得ることができる。混合の順序は特に制限されず、全ての成分を同時に混合することもできるし、一部の成分を混合後、他の成分を一度に又は順次添加して混合することもできる。混合方法は、特に制限されず、例えば公知の混合方法を各種適用することができる。混合方法としては、粒子を混ぜるミキサーやナウターミキサー、さらには、シェアをかけて混ぜ合わせる、乳鉢、ボールミル、メカノフュージョン等を使用する方法を採用することができる。
【0047】
加熱処理は、水蒸気雰囲気下(水蒸気が固体状混合物に接触可能な条件下)で行われる限りにおいて、特に制限されない。水蒸気雰囲気下で行われるので、処理後に得られるのは固体(生成物(CHA型及び/又はPHI型ゼオライト))である。このため、工程1では溶媒除去を行う必要が無い。
【0048】
加熱処理の温度は、CHA型及び/又はPHI型ゼオライト生成が可能である限り、特に制限されない。該温度は、例えば115〜200℃である。該温度は、CHA型構造がより多いゼオライトを得るという観点からは比較的低温域が好ましく、例えば115℃以上150℃未満、好ましくは118℃以上145℃以下、より好ましくは118℃以上130℃以下、さらに好ましくは120℃以上125℃以下である。該温度は、PHI型構造がより多いゼオライトを得るという観点からは比較的高温域が好ましく、例えば150℃以上200℃以下、好ましくは155℃以上180℃以下、より好ましくは158℃以上170℃である。
【0049】
加熱処理は閉鎖空間内で行われることが好ましい。閉鎖空間としては、耐圧性を有する密閉容器内空間であることが好ましい。
【0050】
閉鎖空間内の水(水蒸気源)に対するFAU型ゼオライトの質量比は、特に制限されない。該質量比は、例えば1〜50、より好ましくは2〜25、さらに好ましくは5〜25、よりさらに好ましくは10〜20、特に好ましくは13〜17である。
【0051】
固体状混合物1gに対する閉鎖空間容量は、好ましくは10〜300mlである。
【0052】
加熱処理の時間は、CHA型及び/又はPHI型ゼオライトが生成する限り、特に制限されない。該時間は、例えば1〜48時間、好ましくは4〜36時間、より好ましくは12〜30時間、さらに好ましくは18〜28時間である。
【0053】
加熱処理により、CHA型及び/又はPHI型ゼオライトを得ることができる。得られたCHA型及び/又はPHI型ゼオライトは、原料であるFAU型ゼオライトが有していたカチオンを保持し得る。原料がNa−FAU型ゼオライトである場合は、加熱処理により生成したゼオライトもNa−ゼオライトであり得る。
【0054】
加熱処理後は、水で洗浄することが好ましい。洗浄により余分なアルカリ源を除去することができる。また、加熱処理後又は洗浄後に、必要に応じて乾燥処理を行うこともできる。
【0055】
工程2では、工程1で得られたCHA型及び/又はPHI型ゼオライト中のカチオンをセシウムイオン及び/又はルビジウムイオンにイオン交換してCs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトを得る。二酸化炭素吸脱着等温線がより明確なシグモイド曲線を含むゼオライトを効率的に得るという観点から、セシウムイオンにイオン交換することが好ましい。
【0056】
イオン交換は、常法に従って又は準じて行うことができる。例えば、CHA型及び/又はPHI型ゼオライトにセシウムイオン及び/又はルビジウムイオンを含有する処理液を接触させることにより、イオン交換を行うことができる。
【0057】
処理液中のセシウムイオン及びルビジウムイオンの合計の濃度は、イオン交換が可能である限り特に制限されないが、例えば0.2〜2M、好ましくは0.5〜1.5M、より好ましくは0.8〜1.2Mである。
【0058】
処理液の溶媒は、通常、水である。水以外にも、他の有機溶媒を含むこともできる。
【0059】
処理液は、セシウムイオン源及び/又はルビジウムイオン源となる化合物を溶媒に溶解することにより、得ることができる。該化合物としては、セシウム及び/又はルビジウムの塩化物、硝酸塩、炭酸塩、水酸化物塩等を好適に使用することができる。
【0060】
処理液のpHは、イオン交換が可能である限り特に制限されないが、例えば5〜8、好ましくは6〜7.5である。
【0061】
接触させる処理液の容量は、特に制限されないが、CHA型及び/又はPHI型ゼオライト1gに対して、例えば10〜500ml、好ましくは50〜200mlである。
【0062】
接触方法は、特に制限されないが、例えば処理液中でCHA型及び/又はPHI型ゼオライトを攪拌することにより、効率的に接触させることができる。
【0063】
接触温度は、特に制限されないが、例えば10〜90℃、好ましくは40〜90℃、より好ましくは60〜80℃である。
【0064】
接触時間は、温度に応じて調節され、特に制限されないが、例えば1〜12時間、好ましくは2〜8時間である。
【0065】
イオン交換処理は、処理液を交換して複数回、例えば2〜8回、好ましくは3〜5回行うことが好ましい。
【0066】
イオン交換処理により、目的物(Cs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライト)を得ることができる。イオン交換処理後は、必要に応じて、水による洗浄、乾燥処理等を行うことができる。
【0067】
本発明の製造方法によれば、有機構造規定剤の添加を必要とせずに、加熱された水蒸気雰囲気下の処理の段階ではNa-CHA、Na-PHIが得られ、その後のイオン交換によってCsまたはRb型のCHA、PHI−ゼオライトが形成される。
【0068】
『シグモイド型』の吸着分離特性を有するゼオライトが本発明において初めて形成できた理由は詳細には明らかにできていないが、従来の方法で作製したCs-CHAおよびRb-CHAは凸型のCO2吸脱着等温線を示すのに対して、本法で作製し、CsまたはRbにイオン交換したCHAおよびPHIはある圧力で吸着量が急増するシグモイド型の等温線を示す。
【0069】
これは細孔内に電荷補償カチオンとして存在するCsまたはRbイオンが、ある閾圧で移動することによって起こるTrapdoor吸着と考えられる(参考文献:J. Am. Chem. Soc. 2012, 134, 19246. doi.org/10.1021/ja309274y、J. Phys. Chem. C 2013, 117, 12841. doi.org/10.1021/jp4015146 ただし、これらの文献におけるCs型を含むCHAゼオライトのCO2吸着等温線の形はいずれも凸型)。これに対して、本法で作製したCsまたはRb型のCHA、PHIのTrapdoor吸着はある閾圧で吸着量が急増するシグモイド曲線を示す。以下は推察ではあるが、従来の方法(液相中で結晶転換する方法)では、CHAは前駆体のFAUゼオライトが水熱条件下で溶解、再析出を繰り返しCHA構造に再構築されるのに対して、本法(水蒸気雰囲気で前駆体のFAUゼオライトを固相のまま結晶転換する方法)で得られるCHAは、前駆体FAUゼオライトの局所構造を一部(CHA構造と共通のナノユニット)維持しながら結晶転換が進行して得られると考えられる。
これにより、本法のCHAは従来のCHAと異なるAl配置(または構造歪み)を有し、CsおよびRbイオンが交換されるサイトが異なることから、従来のCHA では発現しないTrapdoor吸着能(ある閾圧で吸着量が増加するシグモイド曲線)を示したと考えられる。
【0070】
2.ゼオライト
本発明は、その一態様において、本発明の製造方法により得られる、Cs-CHA型及び/又はPHI型ゼオライト(本明細書において、「本発明のゼオライト」と示すこともある。)に関する。
【0071】
本発明のゼオライトは、好ましくは、シグモイド曲線を含む二酸化炭素吸脱着等温線を示すことができる。本発明は、その一態様において、二酸化炭素吸脱着等温線がシグモイド曲線を含む、Cs及び/又はRb−CHA型及び/又はPHI型ゼオライトにも関する。以下、これも、「本発明のゼオライト」と示すこともある。
【0072】
限定的な解釈を望むものではないが、本発明のゼオライトがシグモイド曲線を含む二酸化炭素吸脱着等温線を示す理由の1つとしては、次のように考えられる。工程1により得られるCHA型及び/又はPHI型ゼオライトは、工程1の処理方法に起因して骨格構造内におけるAlの配置が特有の配置となると考えられる。このAl配置により、本発明のゼオライトにおけるセシウムイオン及び/又はルビジウムイオンの配置も特有の配置となると考えられる。この特有の配置により、低い圧力では、比較的大きなイオンであるセシウムイオン及び/又はルビジウムイオンが吸着スペースを占有し、分子が吸着できないものの、一定以上の高い圧力条件になるとセシウムイオン及び/又はルビジウムイオンの移動が起こり、これにより吸着スペースができるので、分子吸着量が急激に増加する、トラップドア効果が起こると考えられる。本発明のゼオライトは、二酸化炭素のみならず、吸着可能な他の分子(ゼオライトの静電場と相互作用する極性の分子(分極率、双極子モーメント、四重極子モーメント、π電子))に対しても、シグモイド曲線を含む吸脱着等温線を示すと考えられる。
【0073】
シグモイド曲線とは、変曲点を1つ含む曲線である。本発明のゼオライトの二酸化炭素吸脱着等温線は、好ましくは、圧力の上昇につれて接線の傾きが増加し、さらに圧力を上昇させると、変曲点を経て、接線の傾きが減少する曲線を含む。なお、二酸化炭素吸脱着等温線は測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社:BELSORP-max)を用いてガス吸着法で測定することができ、その測定温度は、例えば25℃、45℃、70℃である。
【0074】
二酸化炭素吸脱着等温線を横軸(x):圧力(kPa)、縦軸(y):吸着量(mmol/g)のグラフで表す場合、シグモイド曲線中の変曲点における接線は、y=ax(aは例えば0.01〜10、好ましくは0.05〜5、より好ましくは0.1〜1)である。
【0075】
本発明のゼオライトは、二酸化炭素吸着性が、窒素ガス吸着性に比べて顕著に高い。例えばガス吸着法で測定される同一温度及び同一圧力(例えば25℃、45℃、又は70℃で、圧力20 kPa、40 kPa、60 kPa、80 kPa、又は100kPa)での窒素ガス吸着量(mmol/g)は、二酸化炭素吸着量(mmol/g)100に対して、例えば20以下、好ましくは10以下、より好ましくは5以下、さらに好ましくは1以下、よりさらに好ましくは0.1以下、とりわけさらに好ましくは0.01以下である。
【0076】
本発明のゼオライトの用途は、特に限定されるものではなく、例えば、各種ガス及び液などの分離剤、燃料電池などの電解質膜、各種樹脂成形体のフィラー、メンブランリアクター、あるいはハイドロクラッキング、アルキレーションなどの触媒、金属、金属酸化物などの担持用触媒担体、吸着剤、乾燥剤、洗剤助剤、イオン交換剤、排水処理剤、肥料、食品添加物、化粧品添加物等として用いることができる。これらの用途に利用する場合、粒子径が微小な方が好ましく、かつ、粒子径が均一な方が好ましい。
【0077】
特に好適には、本発明のゼオライトは吸着分離材料として利用することができる。この観点から、本発明は、その一態様において、シグモイド型の二酸化炭素吸着または脱着等温線を示すことを特徴とするCs型またはRb型CHAゼオライト、若しくはCs型またはRb型PHIゼオライトから主に構成される吸着分離材料、に関する。
【実施例】
【0078】
以下に、実施例に基づいて本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0079】
試験例1.CHA型ゼオライトの製造1
Steam-Assisted Conversion法(SAC法)により、Na−ゼオライトを製造した。具体的には次のようにして行った。Na−FAU型ゼオライト(Si/Al=2.8、東ソー社製HSZ-320NAA)3.0gと水酸化カリウム0.2gとをジルコニアボールを含む250ml容量セラミック容器に入れ、容器を150rpmで1時間回転させた。得られた粉体状混合物を水蒸気源である水0.2gと共にテフロン加工ステンレス製耐圧容器(140ml)に入れ、該容器を密閉し、120℃で24時間加熱処理した。得られた粉体を脱イオン水で洗浄した。洗浄は、洗浄廃液のpHが7になるまで行った。洗浄後、80℃で乾燥させて粉体(Na−ゼオライト)を得た。
【0080】
一方で、従来公知の方法に従って、K−CHA型ゼオライトを製造した。具体的には次のようにして行った。水酸化カリウム1.88gを脱イオン水26gに溶解し、得られた溶液にNa−FAU型ゼオライト(Si/Al=2.8、東ソー社製HSZ-320NAA)を添加して室温で24時間混合した。得られた溶液をテフロン加工ステンレス製耐圧容器(140ml)に入れ、該容器を密閉し、120℃で24時間加熱処理した。得られた懸濁液を遠心分離して固体を回収し、上記と同様にして洗浄及び乾燥させて粉体(K−CHA型ゼオライト)を得た。
【0081】
上記で得られたゼオライトの結晶構造を粉体X線結晶回折で解析した。解析においては、CuKα線(λ=1.5418Å)を使用し、銅アノードを30kV及び15mAで動作させた。
【0082】
結果を図1に示す。図1に示されるように、SAC法により得られたNa−ゼオライトはCHA型であることが分かった。また、該ゼオライトには、PHI構造が僅かに含まれることも分かった。
【0083】
試験例2.CHA型ゼオライトの製造2
Na−FAU型ゼオライト100質量部に対して7質量部、15質量部、又は18質量部のCHA型ゼオライト(種結晶)を加えて粉体上混合物を得る以外は製造例1と同様にして、SAC法によりNa−CHA型ゼオライトを製造した。
【0084】
得られたNa−CHA型ゼオライトの結晶構造を、製造例1と同様にして粉体X線結晶回折で解析した。
【0085】
結果を図2に示す。CHA型ゼオライトを種結晶を加えることにより、PHI構造の生成を抑制できることが分かった。また、種結晶15%の時もっともPHI構造の生成が抑制された。
【0086】
試験例3.PHI型ゼオライトの製造
加熱処理の温度を160℃とする以外は製造例1と同様にして、SAC法によりNa−ゼオライトを製造した。得られたゼオライトの結晶構造を、製造例1と同様にして粉体X線結晶回折で解析した。
【0087】
結果を図3に示す。本試験例の方法で得られたNa−ゼオライトはPHI型であることが分かった。
【0088】
試験例4.物性解析
SAC法で得られたCHA型ゼオライト(試験例1及び2)の構造及び物性(Si/Al比、比表面積、及び細孔容積)を測定した。Si/Alはエネルギー分散型X線分析により測定した。比表面積及び細孔容積は、測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社:BELSORP-max)を用いてガス吸着法(77K)により測定した。
【0089】
結果を表1に示す。
【0090】
【表1】
【0091】
試験例5.ゼオライトのイオン交換
従来法で得られたCHA型ゼオライト(試験例1)、SAC法で得られたCHA型ゼオライト(試験例1)、及びSAC法で得られたPHI型ゼオライト(試験例3)それぞれ1.0gを、100 mlの1M アルカリ金属塩化物(NaCl、KCl、RbCl、CsCl)水溶液に加え、70℃で4時間のイオン交換処理を行った。該処理を計3〜4回繰り返し行なった。
【0092】
得られたゼオライトについて、測定装置(マイクロトラック・ベル株式会社:BELSORP-max)を用いてガス吸着法で解析した。解析により得られた吸脱着等温線グラフを図4〜7に示す。
【0093】
SAC法で得られたゼオライト(Cs−CHA型ゼオライト、Cs−PHI型ゼオライト、Rb−CHA型ゼオライト、Rb−PHI型ゼオライト)は、シグモイド曲線を含む二酸化炭素吸脱着等温線を示すことが分かった。また、SAC法で得られたゼオライトは、二酸化炭素ガスに比べて、窒素ガスはほとんど吸着しないことが確認された。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7