【課題】金属蒸着法による金属膜の形成性(蒸着適正)が良好で、かつ耐屈曲性、加飾成型性、耐擦傷性、高耐熱性、鉛筆硬度が良好な樹脂硬化膜を形成できる樹脂組成物を提供する。
【解決手段】カルボキシル基を有するポリウレタン系樹脂(A)、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)、及び、体積基準の累積90%径(D90)が5μm以下であるフィラー(C)を含有し、前記ポリウレタン系樹脂(A)の酸価が2〜60mgKOH/gであり、前記エポキシ樹脂(B)の数平均分子量が1500以上である熱硬化性樹脂組成物。
カルボキシル基を有するポリウレタン系樹脂(A)、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)、及び、体積基準の累積90%径(D90)が5μm以下であるフィラー(C)を含有し
前記ポリウレタン系樹脂(A)の酸価が2〜60mgKOH/gであり、
前記エポキシ樹脂(B)の数平均分子量が、1500以上である熱硬化性樹脂組成物。
固形分換算で、前記ポリウレタン系樹脂(A)100質量部に対して前記エポキシ樹脂(B)を7〜290質量部含む請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
動的粘弾性のtanδ=E”(損失弾性率)/E’(貯蔵弾性率)のスペクトルがピークとなるガラス転移温度が70℃以上である請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱硬化性樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0010】
[熱硬化性樹脂組成物]
本発明の一実施形態(本実施形態)に係る熱硬化性樹脂組成物は、カルボキシル基を有するポリウレタン系樹脂(A)、1分子中に2個以上のエポキシ基を有するエポキシ樹脂(B)、及び、体積基準の累積90%径(D90)が5μm以下であるフィラー(C)を含有する。
以下、本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物について、より詳細に説明する。
【0011】
<カルボキシル基を有するポリウレタン系樹脂(A)>
ポリウレタン系樹脂は、1分子に2以上の水酸基を有するポリオール成分、及び1分子に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート成分等を反応させて得られるが、さらにカルボキシル基を有する成分を反応に用いることで、本実施形態に係るカルボキシル基を有するポリウレタン系樹脂(A)(以下、単に「ポリウレタン系樹脂(A)」という)が得られる。
【0012】
ポリウレタン系樹脂(A)はカルボキシル基を有するので、このカルボキシル基と、エポキシ樹脂(B)のエポキシ基とが反応するため、ポリウレタン系樹脂(A)とエポキシ樹脂(B)とを架橋反応させることができる。その結果、本実施形態の熱硬化性樹脂組成物の硬化物は、長時間の耐熱性に優れたものとなる。
【0013】
ポリウレタン系樹脂(A)の酸価は2〜60mgKOH/gであることが好ましく、5〜50mgKOH/gであることがより好ましい。酸価が2mgKOH/g未満の場合、エポキシ基と架橋反応する酸成分が不十分となることがあるため好ましくない。酸価が60mgKOH/gを超えると耐屈曲性や加飾成型性に劣る場合がある。
なお、酸価は実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0014】
ポリウレタン系樹脂(A)の重量平均分子量は5,000〜400,000であることが好ましく、10,000〜300,000であることがより好ましく、15,000〜200,000であることがさらに好ましい。
【0015】
本明細書において、ポリウレタン系樹脂(A)の重量平均分子量(Mw)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によって測定した値を意味する。例えば、以下の装置、条件にて測定することができる。
(1) 機器装置:商品名「HLC−8020」(東ソー社製)
(2) カラム:商品名「TSKgel G2000HXL」、「G3000HXL」、「G4000GXL」(東ソー社製)
(3) 溶媒:THF
(4) 流速:1.0ml/min
(5) 試料濃度:2g/L
(6) 注入量:100μL
(7) 温度:40℃
(8) 検出器:型番「RI−8020」(東ソー社製)
(9) 標準物質:TSK標準ポリスチレン(東ソー社製)
【0016】
本発明のポリウレタン系樹脂(A)は、ポリカーボネートポリオールに由来するカーボネート構造を含むことが好ましい。当該構造を有することで、耐加水分解性、耐熱性等を向上させることができる。耐加水分解性、耐熱性等を向上させる観点から、ポリカーボネートポリオールに由来するカーボネート構造は、ポリウレタン系樹脂(A)に、0.1〜70質量%含むことが好ましく、10〜60質量%含むことがより好ましい。
【0017】
カルボキシル基を有するポリウレタン系樹脂(A)は、従来公知のポリウレタンの製造方法を適用して、1分子に2以上の水酸基を有するポリオール成分、1分子に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート成分、及びカルボキシル基を有する成分等を反応させて製造することができる。
【0018】
具体的には、先ず、分子内に活性水素を含まない有機溶剤の存在下又は不存在下で、カルボキシル基を有する成分としてカルボキシル基を有する水酸基含有化合物と、ポリオール成分及びポリイソシアネート成分と、鎖伸長剤として必要に応じて用いられる短鎖ポリオールを含む反応成分を反応させる。
反応成分は、一般的にはイソシアネート基と水酸基の当量比が0.8〜1.25の配合組成とすればよい。また、反応はワンショット法又は多段法により、通常20〜150℃、好ましくは60〜110℃で反応させればよい。
【0019】
カルボキシル基は、例えば、ポリオール成分に、カルボキシル基を有する水酸基含有化合物を含有させることでポリウレタン系樹脂(A)に備えさせることができる。この場合には、ポリオール成分は、カルボキシル基を有する水酸基含有化合物と共に一般的なポリオールを含有することが好ましい。
【0020】
前記カルボキシル基を有する水酸基含有化合物は、1分子に2以上の水酸基を有する。
また、前記カルボキシル基を有する水酸基含有化合物は、1分子に2以上の水酸基を有するので、1分子に2以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート成分と反応し、ポリウレタン系樹脂(A)が得られる。
【0021】
カルボキシル基を有する水酸基含有化合物としては、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸、それらのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満)やγ−カプロラクトン低モル付加物(数平均分子量500未満)、酸無水物とグリセリンから誘導されるハーフエステル類、水酸基と不飽和基を含有するモノマーとカルボキシル基と不飽和基を含有するモノマーとをフリーラジカル反応により誘導される化合物などが挙げられる。これらの化合物は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0022】
これらの化合物の中で好ましいものは、ジメチロールプロパン酸、ジメチロールブタン酸であり、特に好ましいものは、ジメチロールプロパン酸である。
【0023】
ポリウレタン系樹脂(A)を生成する際、カルボキシル基を有する水酸基含有化合物の使用量は、ポリウレタン系樹脂(A)の酸価を2〜60mgKOH/gの範囲内となるようにすることが好ましい。
【0024】
ポリオールは、ポリウレタン樹脂の合成の際に用いられる従来公知のポリオールを用いることができる。
ポリオールの具体例としては、ポリエステルポリオール、ポリエーテルポリオール、ポリカーボネートポリオール、その他のポリオールなどを挙げることができる。
【0025】
ポリエステルポリオールとしては、脂肪族系ジカルボン酸(例えば、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、グルタル酸、アゼライン酸など)及び/又は芳香族系ジカルボン酸(例えば、イソフタル酸、テレフタル酸など)と、低分子量グリコール(例えば、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール,1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサンなど)と、を縮重合したものが例示される。
【0026】
このようなポリエステルポリオールの具体例としては、ポリエチレンアジペートジオール、ポリブチレンアジペートジオール、ポリヘキサメチレンアジペートジオール、ポリネオペンチルアジペートジオール、ポリエチレン/ブチレンアジペートジオール、ポリネオペンチル/ヘキシルアジペートジオール、ポリ−3−メチルペンタンアジペートジオール、ポリブチレンイソフタレートジオール、ポリカプロラクトンジオール、ポリ−3−メチルバレロラクトンジオールなどを挙げることができる。
ポリエステルポリオールは、ポリエーテルポリオールに比べ、耐熱性に優れている。従って、ポリエステルポリオールは、耐熱性を得る上においてポリエーテルポリオールよりも有利である。
【0027】
ポリエーテルポリオールの具体例としては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体などを挙げることができる。
ポリエーテルポリオールは、ポリエステルポリオールに比べ、耐加水分解性に優れている。従って、ポリエーテルポリオールは、耐加水分解性を得る上においてポリエステルポリオールよりも有利である。
【0028】
ポリカーボネートポリオールの具体例としては、ポリテトラメチレンカーボネートジオール、ポリペンタメチレンカーボネートジオール、ポリネオペンチルカーボネートジオール、ポリヘキサメチレンカーボネートジオール、ポリ(1,4−シクロヘキサンジメチレンカーボネート)ジオール、及びこれらのランダム/ブロック共重合体などを挙げることができる。
ポリカーボネートポリオールは、耐加水分解性、耐熱性に優れるので、ポリオールとして好適に用いることができる。
ポリカーボネートポリオールの中でも、ポリヘキサメチレンカーボネートジオールが、コストの観点や、材料としての入手のし易さから好適である。
【0029】
その他のポリオールの具体例としては、ダイマージオールやその水素添加物、ポリブタジエンポリオールやその水素添加物、ポリイソプレンポリオールやその水素添加物、アクリルポリオール、エポキシポリオール、ポリエーテルエステルポリオール、シロキサン変性ポリオール、α,ω−ポリメチルメタクリレートジオール、α,ω−ポリブチルメタクリレートジオール、シロキサン変性ポリオールなどを挙げることができる。
これらのうちダイマージオールの水素添加物、ポリブタジエンポリオールの水素添加物から得られるジオールは、ポリカーボネートジオールと同様に、耐加水分解性、耐熱性に優れるので、ポリオールとして好適に用いることができる。
【0030】
ポリオールの数平均分子量(Mn、末端官能基定量法による)は、特に限定されないが、500〜6,000であることが好ましい。ポリオールは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0031】
ポリオール成分としては、上述したポリオールに加えて、必要に応じて、短鎖ジオールを用いることができる。
短鎖ジオールの具体例としては、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどの脂肪族グリコールやそのアルキレンオキシド低モル付加物(末端官能基定量法による数平均分子量500未満);1,4−ビスヒドロキシメチルシクロヘキサン、2−メチル−1,1−シクロヘキサンジメタノールなどの脂環式グリコールやそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満、同上);キシリレングリコールなどの芳香族グリコールやそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満、同上);ビスフェノールA、チオビスフェノール、スルホンビスフェノールなどのビスフェノールやそのアルキレンオキシド低モル付加物(数平均分子量500未満、同上)などを挙げることができる。
【0032】
なお、ポリウレタン系樹脂(A)を生成する際には、ポリウレタン系樹脂(A)の材料として、短鎖ジオール成分と同様に、多価アルコール系化合物を用いることもできる。多価アルコール系化合物の具体例としては、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリトリトール、トリス−(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレート、1,1,1−トリメチロールエタン、1,1,1−トリメチロールプロパンなどを挙げることができる。
【0033】
短鎖ポリオールをポリオールと併用して用いる場合には、短鎖ポリオール(a3)が短鎖ジオールであることが好ましい。
短鎖ジオールとしては、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコール、1,6−ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが好ましく、特に好ましいのはエチレングリコール、1,3−ブチレングリコール、1,4−ブチレングリコールである。
これらの短鎖ジオールは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0034】
ポリイソシアネート成分としては、ポリウレタン樹脂の製造に用いられている従来公知のポリイソシアネート成分を用いることができる。
ポリイソシアネート成分の具体例としては、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、それらの混合体、4−メトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−イソプロピル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−クロル−1,3−フェニレンジイソシアネート、4−ブトキシ−1,3−フェニレンジイソシアネート、2,4−ジイソシアネートジフェニルエーテル、4,4−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、及びクルード又はポリメリックMDI、ジュリレンジイソシアネート、キシリレンジイソシアネート(XDI)、1,5−ナフタレンジイソシアネート、ベンジジンジイソシアネート、o−ニトロベンジジンジイソシアネート、4,4−ジイソシアネートジベンジルなどの芳香族ジイソシアネート;メチレンジイソシアネート、1,4−テトラメチレンジイソシアネート、1,6−ヘキサメチレンジイソシアネート、1,10−デカメチレンジイソシアネートなどの脂肪族ジイソシアネート;1,4−シクロヘキシレンジイソシアネート、4,4−メチレンビス(シクロヘキシルイソシアネート)、1,5−テトラヒドロナフタレンジイソシアネート、イソフォロンンジイソシアネート、水添XDIなどの脂環式ジイソシアネート;これらのジイソシアネートと、低分子量のポリオールとを、末端がイソシアネートとなるように反応させて得られるポリウレタンプレポリマーなどを挙げることができる。
【0035】
これらポリイソシアネート成分のうち、工業上安定的に廉価で耐熱性に優れる観点からは、芳香族イソシアネートが好ましく、特に好ましいのは、トルエン−2,4−ジイソシアネート、トルエン−2,6−ジイソシアネート、それらの混合体、4,4−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)、及びクルード又はポリメリックMDIである。これらのポリイソシアネート成分は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0036】
本実施形態では、ポリウレタン樹脂の合成において、必要に応じて触媒を使用できる。触媒としては、例えば、ジブチルチンラウレート、ジオクチルチンラウレート、スタナスオクトエート、オクチル酸亜鉛、テトラn−ブチルチタネートなどの金属と有機酸又は無機酸との塩、有機金属誘導体、トリエチルアミンなどの有機アミン、ジアザビシクロウンデセン系触媒などが挙げられる。前記触媒は、ポリウレタン樹脂の合成の反応を促進する。しかし、前記触媒を過剰に使用すると、ポリウレタン樹脂以外の物質を分解する分解反応を誘発するおそれがあるので、前記触媒を用いる場合には、前記触媒を適量用いることが好ましい。
【0037】
ポリウレタン系樹脂(A)は、溶剤を用いずに合成しても、有機溶剤を用いて合成してもよい。
有機溶剤としては、イソシアネート基に対して不活性な有機溶剤、又はイソシアネート基に対して反応成分よりも低活性な有機溶剤を用いることができる。
有機溶剤の具体例としては、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、シクロヘキサノンなどのケトン系溶剤;トルエン、キシレン、スワゾール(商品名、コスモ石油社製)、ソルベッソ(商品名、エクソン化学社製)などの芳香族系炭化水素溶剤;n−ヘキサンなどの脂肪族系炭化水素溶剤;メタノール、エタノール、イソプロピルアルコールなどのアルコール系溶剤;ジオキサン、テトラヒドロフランなどのエーテル系溶剤;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸イソブチルなどのエステル系溶剤;エチレングリコールエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、エチル−3−エトキシプロピオネートなどのグリコールエーテルエステル系溶剤;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド系溶剤;N−メチル−2−ピロリドンなどのラクタム系溶剤などを挙げることができる。
特にトルエン、メチルエチルケトンが、ポリウレタン樹脂の溶解性等から好ましい。
【0038】
本発明における「ポリウレタン系樹脂(A)」とは、ポリウレタン樹脂及びポリウレタン−ウレア樹脂の総称を意味する。なお、この「ポリウレタン系樹脂」は、必要に応じてポリアミンのアミン成分を反応させたものであってもよい。ポリアミンの具体例としては、エチレンジアミン、N−ヒドロキシエチルエチレンジアミン、テトラメチレンジアミン、ヘキサメチレンジアミン、ジエチレントリアミン等の脂肪族ジアミン;4,4−ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,4−ジアミノシクロヘキサン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、イソホロンジアミン等の脂環式ジアミン;ヒドラジン、カルボジヒドラジド、アジピン酸ジヒドラジド、セバシン酸ジヒドラジド、フタル酸ジヒドラジド等のヒドラジン類;ジアリルアミン化合物等の不飽和基を含むポリアミン類を挙げることができる。これらのポリアミンは、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0039】
<エポキシ樹脂(B)>
本実施形態に係るエポキシ樹脂(B)は、上記ウレタン樹脂(A)の酸成分と架橋反応をするために使用される。エポキシ樹脂(B)はゲルパーミエーションクロマトグラフィーによる標準ポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)が、1500以上であり、2000〜30000であることが好ましく、3000〜25000であることがより好ましい。数平均分子量(Mn)が1500以上であることで、蒸着適正、表面硬度、耐熱性、耐屈曲性、加飾成型性を向上させることができる。
【0040】
エポキシ樹脂(B)としては、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ブタジエン変性エポキシ樹脂)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、フェノールノボラック型エポキシ樹脂、クレゾールノボラック型エポキシ樹脂、ナフトール型エポキシ樹脂、ナフタレン型エポキシ樹脂、ナフチレンエーテル型エポキシ樹脂、グリシジルアミン型エポキシ樹脂、ビフェニル型エポキシ樹脂、脂環式エポキシ樹脂、複素環式エポキシ樹脂、スピロ環含有エポキシ樹脂、シクロヘキサンジメタノール型エポキシ樹脂、トリメチロール型エポキシ樹脂等が挙げられ、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ブタジエン変性エポキシ樹脂)が好ましい。これらは1種又は2種以上組み合わせて使用してもよい。
【0041】
これらの中でも、特に耐熱性向上、耐屈曲性向上の観点からノボラック型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型エポキシ樹脂が好ましい。具体的には、例えば、ノボラック型エポキシ樹脂(日本化薬(株)製「EOCN−120」、「EOCN−102S」、「EOCN−103S」、「EOCN−104S」、「EOCN−1012」、「EOCN−1025」、「EOCN−1027」)、(DIC(株)製「N−730」、「N−770」、「N−665」、「N−673」、「N−865」、「N−870」)、ビスフェノールA型エポキシ樹脂(三菱ケミカル(株)製「jER1007」、「jER1009」、「jER1256」、「YX7200B35」)等が挙げられる。
【0042】
さらに、本発明の熱硬化性樹脂組成物は、エポキシ樹脂として、ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂(ブタジエン変性エポキシ樹脂)を他のエポキシ樹脂と併用して用いることが好ましい。ブタジエン構造を有するエポキシ樹脂の具体例としては、日本曹達(株)製「JP−100」、「JP−200」、(株)ダイセル製「エポリードPB3600」、「エポリードPB4700」、ナガセケムテックス(株)製の「FCA−061L」等が挙げられる。
【0043】
また固形分換算で、ポリウレタン系樹脂(A)100質量部に対してエポキシ樹脂(B)を7〜290質量部含むことが好ましく、25〜200質量部含むことがより好ましい。エポキシ樹脂(B)を7〜290質量部含むことで良好な硬化性を得ることができ、かつ耐擦傷性、高耐熱性、鉛筆硬度を向上することができる。
【0044】
<フィラー(C)>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、さらに、密着性、塗膜硬度等の諸特性を向上させる目的で、無機フィラー、有機フィラーといったフィラー(C)を含有することが好ましい。
例えば、シリカ(SiO
2)、アルミナ(Al
2O
3)、チタニア(TiO
2)、酸化タンタル(Ta
2O
5)、ジルコニア(ZrO
2)、窒化ケイ素(Si
3N
4)、チタン酸バリウム(BaO・TiO
2)、炭酸バリウム(BaCO
3)、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、水酸化マグネシウム、チタン酸鉛(PbO・TiO
2)、チタン酸ジルコン酸鉛(PZT)、チタン酸ジルコン酸ランタン鉛(PLZT)、酸化ガリウム(Ga
2O
3)、スピネル(MgO・Al
2O
3)、ムライト(3Al
2O
3・2SiO
2)、コーディエライト(2MgO・2Al
2O
3/5SiO
2)、タルク(3MgO・4SiO
2・H
2O)、チタン酸アルミニウム(TiO
2−Al
2O
3)、イットリア含有ジルコニア(Y
2O
3−ZrO
2)、ケイ酸バリウム(BaO・8SiO
2)、窒化ホウ素(BN)、炭酸カルシウム(CaCO
3)、硫酸バリウム(BaSO
4)、硫酸カルシウム(CaSO
4)、酸化亜鉛(ZnO)、チタン酸マグネシウム(MgO・TiO
2)、ハイドロタルサイト、雲母、焼成カオリン、カーボンブラック、シリコーン複合パウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダー、アクリル微粒子、ウレタン微粒子、コアシェル微粒子、有機無機複合粒子等を使用することができる。これらの無機フィラー及び有機フィラーは、1種を単独で又は2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0045】
これらの中でも、耐熱性を向上できる観点から、シリカ(特に溶融シリカ)、シリコーン複合パウダー、シリコーンゴムパウダー、シリコーンレジンパウダーを使用することが好ましい。
【0046】
フィラー(C)の含有量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量を基準として0〜80質量%であることが好ましく、5〜70質量%であることがより好ましく、7〜60質量%であることがさらに好ましく、10〜50質量%であることがよりさらい好ましい。含有量が上記範囲内である場合には、膜強度、耐熱性、密着性、湿熱信頼性等をより向上させることができる。
【0047】
また、無機及び有機フィラーは、体積基準の累積90%径(D90)が5μm以下であり、0.01〜5μmであることが好ましく、0.05〜4μmであることがより好ましく、0.1〜3μmであることがさらに好ましい。D90が5μmを超えると、蒸着適正が損なわれる傾向にある。
【0048】
また、体積基準の累積50%径(D50)は2.5μm以下であることが好ましく、0.01〜2.0μmであることがより好ましく、0.05〜1.5μmであることがさらに好ましい。D50が2.5μm以下であることで、金属蒸着法による金属膜の形成性(蒸着適正)を良好にすることができる。
【0049】
D90は、レーザー回折式粒度分布測定装置を用いて得られる体積基準の粒度分布において小径側からの累積が90%となるときの粒子径であり、D50は小径側からの累積が50%となるときの粒子径である。
【0050】
<硬化促進剤(D)>
本発明の熱硬化性樹脂組成物には、最終硬化膜の耐熱性、密着性、耐薬品性等の諸特性を更に向上させる目的で硬化促進剤(D)を併用することができる。硬化促進剤としては従来公知のものを使用することができる。
硬化促進剤(D)の具体例としては、2−メチルイミダゾール、1,2−ジメチルイミダゾール、2−エチル−4−メチルイミダゾール、1−ベンジル−2−メチルイミダゾール、2−フェニルイミダゾール、2−フェニル−4−メチル−5−ヒドロキシメチルイミダゾール等のイミダゾール誘導体、アセトグアナミン、ベンゾグアナミン等のグアナミン類、ジアミノジフェニルメタン、m−フェニレンジアミン、m−キシレンジアミン、ジアミノジフェニルスルフォン、ジシアンジアミド、尿素、尿素誘導体、メラミン、多塩基ヒドラジド等のポリアミン類、これらの有機酸塩及び/又はエポキシアダクト、三フッ化ホウ素のアミン錯体、エチルジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−S−トリアジン、2,4−ジアミノ−6−キシリル−S−トリアジン等のトリアジン誘導体類、トリメチルアミン、N,N−ジメチルオクチルアミン、N−ベンジルジメチルアミン、ピリジン、N−メチルモルホリン、ヘキサ(N−メチル)メラミン、2,4,6−トリス(ジメチルアミノフェノール)、テトラメチルグアニジン、m−アミノフェノール等の三級アミン類:ポリビニルフェノール、ポリビニルフェノール臭素化物、フェノールノボラック、アルキルフェノールノボラック等のポリフェノール類、トリブチルホスフィン、トリフェニルホスフィン、トリス−2−シアノエチルホスフィン等の有機ホスフィン類、トリ−n−ブチル(2,5−ジヒドロキシフェニル)ホスホニウムブロマイド、ヘキサデシルトリブチルホスホニウムクロライド等のホスホニウム塩類、ベンジルトリメチルアンモニウムクロライド、フェニルトリブチルアンモニウムクロライド等の4級アンモニウム塩類、前記の多塩基酸無水物、ジフェニルヨードニウムテトラフルオロボレート、トリフェニルスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、2,4,6−トリフェニルチオピリリウムヘキサフルオロホスフェート、3,5−ジメチルピラゾール等のヒドラジン誘導体、又はこれらの硬化促進剤をブロックイソシアネート化して反応時に解離するものなどが挙げられる。
【0051】
硬化促進剤(D)は、単独あるいは2種類以上を組み合わせて用いられ、熱硬化性樹脂組成物中に含まれる硬化促進剤の量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量を基準として、好ましくは0.01〜20質量%、更に好ましくは0.1〜10質量%用いられる。
【0052】
<着色剤(E)>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物は、上記構成成分に加えて着色剤(E)を添加してもよい。着色剤(E)を添加することで塗料の構成となる。添加する着色剤(E)としては、従来公知のものを使用することができる。
【0053】
着色剤(E)の種類としては、例えば、酸化チタン、アニリンブラック、カーボンブラック、群青、コバルトブルー、酸化クロム、べんがら、黒鉛等の無機顔料、C.I.ピグメントブラック1、C.I.ピグメントグリーン7、C.I.ピグメントブルー15、C.I.ピグメントレッド112、C.I.ピグメントバイオレット19等の有機顔料が挙げられる。その他の着色剤として、蛍光顔料、蓄光顔料等も用いることができる。また、本発明の着色剤として、フレーク状アルミナ粒子(板状アルミナ)、フレーク状アルミニウム粒子、フレーク状窒化ホウ素などの着色又は非着色のフレーク状粒子を用いることもできる。これら着色剤は、1種又は2種以上組み合わせて使用しても良い。
【0054】
また、着色剤(E)を構成する粒子の形状は、特に制限されず、球状、多角形状、扁平状、繊維状等のいずれであっても良い。
【0055】
着色剤(E)は、単独あるいは2種類以上を組み合わせて用いられ、熱硬化性樹脂組成物中に含まれる着用剤の量は、熱硬化性樹脂組成物の固形分全量を基準として、好ましくは0.01〜40質量%、更に好ましくは0.1〜30質量%用いられる。
【0056】
<分散剤(F)>
本実施形態に係る熱硬化性樹脂組成物には、アミン基、エステル基、カルボン酸基、アミド基、水酸基、エーテル基、又はケトン基を一つ以上含む高分子化合物であり、公知の分散剤を必要に応じて加えることができる。
【0057】
このような添加剤(F)の具体例としては、ビック・ケミー社製DISPERBYKシリーズの「101」、「102」、「103」、「106」、「108」、「109」、「110」、「111」、「112」、「116」、「130」、「140」、「142」、「145」、「161」、「162」、「163」、「164」、「165」、「166」、「167」、「168」、「170」、「171」、「174」、「180」、「182」、「183」、「184」、「185」、「2000」、「2001」、「2020」、「2050」、「2070」、「2096」、「2150」、チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製EFKAシリーズの「4008」、「4009」、「4010」、「4015」、「4020」、「4046」、「4047」、「4050」、「4055」、「4060」、「4080」、「4300」、「4330」、「4340」、「4400」、「4401」、「4402」、「4403」、「4406」、「4800」、「5010」、「5044」、「5054」、「5055」、「5063」、「5064」、「5065」、「5066」、「5070」、「5244」、日本ルーブリゾール社製ソルスパースシリーズの「3000」、「11200」、「12000」、「16000」、「17000」、「18000」、「20000」、「21000」、「24000SC」、「24000GR」、「26000」、「28000」、「32000」、「32500」、「32550」、「32600」、「33000」、「34750」、「35100」、「35200」、「36000」、「36600」、「37500」、「38500」、「39000」、「41000」、「53000」、「53095」、「54000」、「55000」、「56000」、「71000」、「76400」、「76500」、味の素ファインテクノ(株)製アジスパーシリーズの「PB−711」、「PB−821」、「PB−822」、「PB−824」、「PB−827」、「PN−411」、「PA−111」、ジョンソンポリマー社製ジョンクリルシリーズの「67」、「678」、「586」、「611」、「680」、「682」、「683」、「690」、「HPD−671」、楠本化成(株)製DISPARLONシリーズの「1210」、「1220」、「1831」、「1850」、「1860」、「2100」、「2150」、「2200」、「7004」、「KS−260」、「KS−273N」、「KS−860」、「KS−873N」、「PW−36」、「DN−900」、「DA−234」、「DA−325」、「DA−375」、「DA−550」、「DA−1200」、「DA−1401」、及び「DA−7301」、積水化学工業(株)社製エスレックシリーズの「BL−1」、「BL−10」、「BM−1」、「BM−2」等の少なくとも一種が挙げられ、好ましくは、DISPERBYK−162、DISPERBYK−167、DISPERBYK−168、ソルスパースシリーズの12000、20000、24000SC、24000GR、32000、33000、35000、39000、76400、76500、アジスパーシリーズのPB−821、822、824、及び827が望ましい。これらは、いずれも、塩基性樹脂型の添加剤である。
【0058】
添加剤(F)は、単独あるいは2種類以上を組み合わせて用いられる。添加剤(F)の添加量は、特に限定されるものではなく、所望の安定性が得られる範囲において任意に調整することができる。
【0059】
本実施形態では、カーボンブラックを着色剤(E)使用することが好ましい。このような実施形態において、分散剤(F)として、塩基性樹脂型分散剤を使用することが好ましい。添加剤(F)の効果を十分に発揮させるためには、上記カーボンブラックと添加剤(F)の配合比を適切に調整することが重要である。したがって、本発明の一実施形態では、熱硬化性樹脂組成物中に含まれる添加剤(F)の量は、カーボンブラック100質量部に対して、好ましくは0〜25質量部であり、より好ましくは0〜20質量部である。
【0060】
<有機溶剤(G)>
本発明で用いられる熱硬化性樹脂組成物は、希釈剤として各種の有機溶剤(G)が使用できる。有機溶剤(G)としては、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール類;エチルメチルケトン、シクロヘキサノン等のケトン類;トルエン、キシレン、テトラメチルベンゼン等の芳香族炭化水素類;メチルセロソルブ、ブチルセロソルブ、メチルカルビトール、ブチルカルビトール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノエチルエーテル、ジプロピレングリコールジエチルエーテル、トリエチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;酢酸エチル、酢酸ブチル、ブチルセロソルブアセテート、カルビトールアセテート等のエステル類;オクタン、デカンなどの脂肪族炭化水素類;石油エーテル、石油ナフサ、水添石油ナフサ、ソルベントナフサ等の石油系溶剤;が挙げられる。
【0061】
本実施形態の樹脂組成物は、既述のような、ポリウレタン系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、及びフィラー(C)と、適宜、硬化促進剤(D)、着色剤(E)、及び添加剤(F)等とを混合し分散させて、熱硬化性樹脂組成物を製造することができる。
【0062】
ここで、本実施形態の樹脂組成物は、動的粘弾性のtanδ=E”(損失弾性率)/E’(貯蔵弾性率)のスペクトルがピークとなるガラス転移温度が70℃以上であることが好ましく、80〜150℃であることがより好ましい。ガラス転移温度が70℃以上であることで、金属蒸着法による金属膜の形成性(蒸着適正)と耐屈曲性・加飾成型性の向上を両立することができる。
なお、ガラス転移温度を70℃以上とするには、例えば、カルボキシル基を有するポリウレタン系樹脂(A)の酸価を高くすることや、フィラー(C)の含有率を高めることをすればよい。
【0063】
[塗料]
本実施形態に係る塗料は、本発明の熱硬化性樹脂組成物を含有する。具体的には、ポリウレタン系樹脂(A)、エポキシ樹脂(B)、フィラー(C)に着色剤(E)を加えて調製することができる。
【0064】
本実施形態に係る塗料は、各種の無機系基材やプラスチック基材に塗装して用いられる。また、塗装後は、半硬化(Bステージ)の半硬化膜又は完全に硬化した硬化膜の状態で他の処理が施されることもある。
【0065】
本発明の熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物を含有する塗料から得られる半硬化膜や硬化膜は、金属又は金属酸化物を良好に蒸着させることが可能であり、かつ密着性が高いので、種々の蒸着法によって、蒸着を行い、金属蒸着層を良好に形成することが可能である。
【0066】
また、本発明の熱硬化性樹脂組成物及び熱硬化性樹脂組成物を含有する塗料から得られる半硬化膜や硬化膜は、種々の成型加工に対応可能な耐屈曲性を持ち、各種金属蒸着適正に優れた膜が得られるため、三次元成型加飾フィルムの製造に使用することができるが、それに限定されるものでは無く、フレキシブルプリント配線板の部材や製造工程、その他蒸着を施す用途全般に使用してもよい。
【0067】
[積層シート]
本実施形態に係る積層シートは、キャリアフィルムと、本発明の熱硬化性樹脂組成物の半硬化膜、又は本発明の塗料の半硬化膜を有する。具体的には、キャリアフィルム上に、上記半硬化膜、金属蒸着層、接着層がこの順に形成された態様、キャリアフィルム上に、意匠層、半硬化膜、金属蒸着層がこの順に形成された態様等が挙げられる。
意匠層を設ける場合は、当該積層体は加飾フィルム用であることが好ましい。なお、便宜上、金属蒸着層の金属には金属の他に金属酸化物も含む。
【0068】
ここで、キャリアフィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムが用いられる。キャリアフィルムの厚さや材質は特に限定されないが、一般的には厚さ50〜100μm程度のPETフィルムが好適である。
【0069】
金属蒸着層を形成するための金属は、金属蒸着可能であれば、特に限定されず、例えば、第4族金属(Ti、Zr、Hfなど)、第5族金属(V、Nb、Taなど)、第6族金属(Cr、Mo、Wなど)、第7族金属(Mn、Tc、Reなど)、第8族金属(Fe、Ru、Osなど)、第9族金属(Co、Rh、Irなど)、第10族金属(Ni、Pd、Pt)、第11族金属(Cu、Ag、Au)、第12族金属(Zn、Cdなど)、第13族金属(Al、Ga、In、Tlなど)、第14族金属(Ge、Sn、Pbなど)、第15族金属(Sb、Biなど)などが挙げられる。
金属蒸着層が金属酸化物である場合は、上記金属に対応する金属酸化物(例えば、酸化スズ、酸化インジウム、酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛など)であってもよい。これらの金属は、単独で又は二種以上の合金又は複合体(酸化インジウム/酸化スズ複合体(ITO)など)として金属被膜又は金属酸化物被膜を蒸着できる。これらの中でも、加飾フィルムや、プリント配線板部材に用いる場合などにおける電磁波シールド性や導電性などの点より、導電性の高い金属(Ag、Cu、Au、Alなど(特にAg))が好ましい。
【0070】
蒸着法としては、例えば、PVD法(真空蒸着法、イオンプレーティング法、スパッタリング法、分子線エピタキシー法など)、イオンビームミキシング法、CVD法[熱CVD法、プラズマCVD法、有機金属気相成長法(MOCVD法)、光CVD法など]、イオン注入法などの気相法などが挙げられる。これらの蒸着法による金属蒸着層は、単独の又は二種以上の複合であってもよい。例えば、Ag蒸着層などを単独で形成してもよく、また、Cu被膜上にその他の金属蒸着層(Zn蒸着層、Sn蒸着層など)を形成してもよい。
【0071】
金属蒸着層の厚みは、通常、0.01〜200μm程度であり、好ましくは0.02〜180μm、より好ましくは0.05〜150μm、さらにより好ましくは0.1〜100μm程度である。
【0072】
金属蒸着については、積層体の少なくとも一部が金属蒸着されていればよく、積層体の表面の一部(例えば、シート状の構成体の片面又は片面の一部)に蒸着されていてもよく、また、全面に亘ってが蒸着されていてもよい。
【0073】
接着層の構成材料(バインダー樹脂)としては、本発明の機能性成型シートを貼付する対象となる部材の材質等に応じて、熱可塑性樹脂、並びに熱硬化性及び紫外線硬化性等の硬化性樹脂を用いることができる。熱可塑性樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化又は酸変性ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂、テルペン系樹脂等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、1種で又は2種以上を組み合わせて用いることができる。硬化性樹脂の具体例としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。
また、接着層を形成する樹脂にシリカ、有機ビーズ、顔料、染料等の着色剤や体質顔料等を用いて意匠を施すことで、意匠が施された樹脂層を接着層とすることができる。
【0074】
意匠層を構成する材料としては、熱可塑性樹脂、並びに熱硬化性及び紫外線硬化性等の硬化性樹脂等を用いることができる。熱可塑性樹脂の具体例としては、アクリル樹脂、アクリル変性ポリオレフィン樹脂、塩素化又は変性ポリオレフィン樹脂、塩化ビニル−酢酸ビニル共重合体、熱可塑性ウレタン樹脂、熱可塑性ポリエステル樹脂、ポリアミド樹脂、ゴム系樹脂等を挙げることができる。これらの熱可塑性樹脂は、一種単独で又は二種以上を組み合わせて用いることができる。また、硬化性樹脂の具体例としては、ウレタン樹脂、アクリル樹脂、エポキシ樹脂等を挙げることができる。これらの樹脂に、シリカ、有機ビーズ、顔料、染料等の着色剤や体質顔料等を用いて意匠を施すことで意匠層とすることができる。着色剤としては、カーボンブラック、鉄黒、チタン白、アンチモン白、黄鉛、チタン黄、弁柄、カドミウム赤、群青、コバルトブルー等の無機顔料;キナクリドンレッド、イソインドリノンイエロー、フタロシアニンブルー等の有機顔料又は染料;アルミニウム、真鍮等の鱗片状箔片からなる金属顔料;二酸化チタン被覆雲母、塩基性炭酸鉛等の鱗片状箔片からなる真珠光沢(パール)顔料等を挙げることができる。また、アルミニウム、クロム、金、銀、銅等を用いて蒸着、スパッタリング、或いは箔転写等することによって設けた金属薄膜を意匠層としてもよい。
なお、高度なデザイン性を付与することを目的として、意匠層に付与された図柄と同様の図柄や他の図柄が付与された第2の意匠層を、表皮層と意匠層の間に設けることも好ましい。また、基材シートと意匠層の密着性を向上させるために、これらの間にプライマー層を設けてもよい。
【実施例】
【0075】
以下、実施例により本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。なお、合成例中、実施例中の部、及び表中の配合量は質量部を示す。
【0076】
(合成例1)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリカーボネートポリオール(商品名「エタナコールUH−100」、宇部興産(株)製、OHv約110mgKOH/g)200g、1,3−ブタンジオール(1,3BD)8.9g、ジメチロールプロピオン酸(商品名「Bis−MPA」、パーストープ製)6.0g、メチルエチルケトン(MEK)130g仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃で4,4’−メチレンビス(フェニレンイソシアネート)(MDI)を86.3g添加した。80℃に昇温して反応させ、溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
−1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとトルエン(TOL)の質量比が1:1となるまでTOLを添加して、酸価8、及び重量平均分子量70,000のポリウレタン樹脂A1(固形分35%)を得た。
【0077】
(合成例2)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリカーボネートポリオール(商品名「エタナコールUH−50」、宇部興産(社)製、OHv約220mgKOH/g)200g、1,3BD 15.3g、ジメチロールプロピオン酸(商品名「Bis−MPA」、パーストープ製)60g、メチルエチルケトン(MEK)353g仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃でMDIを254g添加した。80℃に昇温して反応させ、溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
−1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとトルエン(TOL)の質量比が1:1となるまでTOLを添加して、酸価48、及び重量平均分子量70,000のポリウレタン樹脂A2(固形分35%)を得た。
【0078】
(合成例3)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリカーボネートポリオール(商品名「エタナコールUH−100」、宇部興産(株)製、OHv約110mgKOH/g)150g、イソホロンジアミン(IPDA)を11.6g、ジメチロールプロピオン酸(商品名「Bis−MPA」、パーストープ製)16.2g、トルエン(TOL)80.7gを仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃でIPDIを75.6g添加した。100℃に昇温して反応させ、溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
−1の吸収が消失するまで反応を進行させた。トルエン(TOL)とイソプロパノール(IPA)の質量比が1:1となるまでIPAを添加して、酸価26、及び重量平均分子量140,000のポリウレタン−ウレア樹脂A3(固形分35%)を得た。
【0079】
(合成例4)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリカーボネートポリオール(商品名「デュラノールT6001」、旭化成(株)製、OHv約110mgKOH/g)200g、1,3BD 7.3g、メチルエチルケトン(MEK)116g仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃でMDIを70.6g添加した。80℃に昇温して反応させ、溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
−1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとトルエン(TOL)の質量比が1:1となるまでTOLを添加して、酸価0、及び重量平均分子量100,000のポリウレタン樹脂A4(固形分35%)を得た。
【0080】
(合成例5)
撹拌機、還流冷却管、温度計、窒素吹き込み管、及びマンホールを備えた反応容器を用意した。反応容器の内部を窒素ガスで置換しながら、ポリカーボネートポリオール(商品名「デュラノールG3450J」、旭化成(社)製、OHv約140mgKOH/g)200g、1,3BD 37.2g、ジメチロールプロピオン酸(商品名「Bis−MPA」、パーストープ製)106g、MEKを285g仕込んだ。加熱撹拌を開始して系内が均一となった後、50℃でMDIを361g添加した。80℃に昇温して反応させ、溶剤希釈により反応液の粘度を調整し、赤外吸収スペクトル分析で測定される遊離イソシアネート基による2,270cm
−1の吸収が消失するまで反応を進行させた。MEKとトルエン(TOL)の質量比が1:1となるまでTOLを添加して、酸価63、及び重量平均分子量70,000のポリウレタン樹脂A5(固形分35%)を得た。
【0081】
なお、酸価の測定は、下記のとおり、JIS K0070に基づいた中和滴定法により測定した。
三角フラスコにポリウレタン系樹脂を秤量し、MEKを加えて溶解後、指示薬としてフェノールフタレイン溶液を適量添加し、0.1Nの水酸化カリウム水溶液を用いて中和滴定を行った。そして、次式により酸価(mgKOH/g)を算出した。
酸価=V×f×5.611/(Wp×I/100)
[式中、Vは、滴定に用いた0.1Nの水酸化カリウム水溶液の滴定量(mL)を示し、fは、0.1Nの水酸化カリウム水溶液のファクター(濃度換算係数)を示し、Wpは、樹脂溶液の質量(g)を示し、Iは、樹脂溶液中の固形分の割合(質量%)を示す。]
【0082】
(実施例1)
ポリウレタン樹脂(A1)(大日精化工業(株)製、A1)60質量部、エポキシ樹脂(B1)((株)ダイセル製、エポリードPB−3600)7質量部、エポキシ樹脂(B2)(三菱ケミカル社製、jER1256)7質量部、フィラー(C1)(デンカ(株)製、SFP−20M)10質量部、硬化促進剤(D1)((株)日本ファインケム製、DMP)1.6質量部、着色剤(E1)(三菱ケミカル(株)製、MA−7B)9.4質量部、添加剤(F1)(ビック・ケミー社製、DISPERBYK−162)4.7質量部、MEK93質量部を混合した後、ビーズミルを使用して分散させて、熱硬化性樹脂組成物である塗料を調製した。その後、下記の評価を行った。
【0083】
(実施例2〜8)
表1に示す配合に従って実施例1と同様にして熱硬化性樹脂組成物である塗料を調製した。その後、下記の評価を行った。
【0084】
(比較例1〜4)
表1に示す配合に従って実施例と同様にして熱硬化性樹脂組成物である塗料を調製した。その後、下記の評価を行った。
【0085】
【表1】
【0086】
B1:エポリードPB−3600((株)ダイセル製ブタジエン変性型エポキシ樹脂、数平均分子量:6500)
B2:jER1256(三菱ケミカル(株)社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、数平均分子量:22000)
B3:jER1001(三菱ケミカル(株)社製ビスフェノールA型エポキシ樹脂、数平均分子量:450)
C1:SFP−20M(デンカ(株)社製溶融シリカ、D50:0.4μm、D90:0.8μm)
C2:KMP590(信越化学工業(株)社製シリコーンレジンパウダー、D50:2.0μm、D90:3.0μm)
C3:サイリシア350(富士シリシア化学(株)社製シリカパウダー、D50:3.8μm、D90:5.5μm)
D1:DMP((株)日本ファインケム社製3,5−ジメチルピラゾール)
E1:MA−7B(三菱ケミカル(株)社製カーボンブラック)
F1:DISPERBYK−162(ビック・ケミー社製)
【0087】
<評価>
(蒸着適正)
ここで評価する蒸着適正は、スパッタリング法における金蒸着を指す。
蒸着適正の測定方法としては、上記で得られた塗料を乾燥後の膜厚が10μmになるように塗布し、100℃3分、80℃24時間の乾燥・加熱の条件により塗膜を得た。この得られた塗膜を2cm×2cmに切り出し、スパッタリング装置に入れ、10分間の金蒸着を行った。この時の外観を観察し、目視で変色・色ムラなどの問題がないか確認した。評価基準は以下の通りである。
〇・・・変色、色ムラ無し
×・・・変色、色ムラ有り
測定した結果を表2、3に示した。
【0088】
(ガラス転移温度)
ここでいうガラス転移温度は、動的粘弾性のtanδ=E”(損失弾性率)/E’(貯蔵弾性率)のスペクトルがピークとなる温度を指す。ガラス転移温度を明らかにする動的粘弾性測定は、プラスチックの動的機械特性の試験方法であるJIS K7244:プラスチック−動的機械特性の試験方法に適合した方法を用いる。
【0089】
粘弾性測定方法としては、上記で得られた塗料を乾燥後の膜厚が200μmになるように塗布し、100℃3分、80℃24時間、150℃1時間の乾燥・加熱の条件により塗膜を得た。この得られた塗膜をMetravib社製粘弾性測定装置DMA25で測定し、得られたtanδ=E”(損失弾性率)/E’(貯蔵弾性率)をガラス転移温度とした。
【0090】
このガラス転移温度が70℃以上であれば蒸着適正が良好であり、より好ましくは75℃以上であり、さらにより好ましくは80℃以上である。上限値に関しては特に規定はないが、ガラス転移温度が高すぎると熱硬化性樹脂組成物の硬化膜が脆くなり、耐屈曲性に悪影響を与える場合がある。ガラス転移温度を測定した結果を表2、3に示した。
【0091】
(鉛筆硬度)
上記で得られた塗料を乾燥後の膜厚が10μmになるように100μmの厚さのポリエチレンテレフタレートフィルム上に均一に塗布し、100℃3分、80℃24時間、150℃1時間の乾燥・加熱の条件により試験シートを得た。上記方法で作製した試験シートの表面をJIS規格(JIS K5600−5−4)に準拠して鉛筆硬度試験を行った。具体的には、異なる鉛筆濃度の芯で表面を引っ掻き、傷が生じない最も硬い鉛筆濃度を鉛筆硬度とする。
鉛筆濃度は、柔らかい側から硬い側に向かって、6B,5B,4B,3B,2B,B,HB,F,H,2H,3H,4H,5H,6Hであり、評価基準は以下の通りである。
〇・・・3H以上
×・・・2H以下
測定した結果を表2、3に示した。
【0092】
(耐擦傷性)
上記鉛筆硬度評価と同方法で作製した試験シートの耐擦傷性を評価するため、以下の条件でスチールウール摩耗試験を行った。表面性測定器のスチールウールホルダーに♯0000のスチールウールを固定し、試験シートの塗膜面を1000gの荷重をかけて、表面を100回往復摩擦した。評価基準は以下の通りである。
〇・・・傷が確認できない
×・・・傷が確認できる
測定した結果を表2、3に示した。
【0093】
(耐熱性)
上記で得られた塗料を乾燥後の膜厚が10μmになるように35μm厚銅箔をポリイミド基材に積層したFPC用基板(ニッカン工業株式会社製、商品名、F30VC125RC11)のポリイミド面に均一に塗布し、100℃3分、80℃24時間、150℃1時間の乾燥・加熱の条件により試験シートを得た。この試験シートの高耐熱性を評価するため、以下の条件で高耐熱性評価を行った。試験シートを2cm×2cmに切り出し288℃のはんだ浴に10秒×3回浸漬させた後の試験シートを目視で確認した。評価基準は以下の通りである。
〇・・・膨れの発生無し
×・・・膨れの発生有り
測定した結果を表2、3に示した。
【0094】
(耐屈曲性)
上記高耐熱性評価と同方法で作製した試験シートの耐屈曲性を評価するため、以下の条件で耐屈曲性試験を行った。評価方法としては、耐屈曲性試験器(コーティングテスター社製、円筒型マンドレル法)で直径2mmの心棒を用いて行った。試験シートを装置にセットし、1回/1秒の速度で50回折り曲げを行った。50回折り曲げを行った後、試験シートの折り曲げ部分を観察し、クラックの有無を確認する。評価基準は以下の通りである。
〇・・・クラックの発生無し
×・・・クラックの発生有り
測定した結果を表2、3に示した。
【0095】
(加飾成型性)
上記で得られた塗料を基材PVCフィルム上に均一に塗布し、100℃3分、80℃24時間の乾燥・加熱の条件により試験シートを得た。この試験シートを10cm×1cmの大きさに切り出し、塗膜側に金属蒸着を施し意匠層とし、試験片を得た。この試験片をオーブンで100℃に加熱しながら130%延伸した後に外観(蒸着部のクラックおよび白化有無)を観察し、加飾成型性を評価した。評価基準は以下の通りである。
〇・・・クラックや白化の発生無しか、最大延伸部の一部に実用上問題の無い微細なクラック又は白化の発生有り。
×・・・大きなクラック又は白化の発生有り。
測定した結果を表2、3に示した。
【0096】
【表2】
【0097】
【表3】
【0098】
表2に示される結果から明らかなように、実施例1〜8の本発明の金属蒸着用熱硬化性樹脂組成物、並びに該熱硬化性樹脂組成物を含有する塗料、及びこれを用いた柔軟性保護シートは、良好な金属蒸着適正を有し、かつ良好な耐屈曲性、加飾成型性を有し、加えて良好な鉛筆硬度、耐擦傷性、高耐熱性を有することが確認された。