アクリル系樹脂(A)、スチレン系エラストマー(B)およびポリオレフィン系樹脂(C)を含有し、前記(A)、(B)、(C)の合計量を100質量%とした場合のアクリル系樹脂(A)の含有量が15質量%以上、スチレン系エラストマー(B)の含有量が10〜55質量%あることを特徴とするフィルム成形用樹脂組成物。
アクリル系樹脂(A)、スチレン系エラストマー(B)およびポリオレフィン系樹脂(C)を含有し、前記(A)、(B)、(C)の合計量を100質量%とした場合のアクリル系樹脂(A)の含有量が15質量%以上、スチレン系エラストマー(B)の含有量が10〜55質量%であるフィルム成形用樹脂組成物。
前記アクリル系樹脂(A)の含有量が15〜65質量%であり、前記ポリオレフィン系樹脂(C)の含有量が10〜55質量%である請求項1に記載のフィルム成形用樹脂組成物。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下に本発明について詳述するが、本発明は、以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々に変更して実施することができる。尚、本明細書において「〜」という表現を用いる場合、その前後の数値又は物性値を含む表現として用いるものとする。
【0014】
本発明のフィルム成形用樹脂組成物は、アクリル系樹脂(A)、スチレン系エラストマー(B)およびポリオレフィン系樹脂(C)を含有し、前記(A)、(B)、(C)の合計量を100質量%とした場合のアクリル系樹脂(A)の含有量が15質量%以上、スチレン系エラストマー(B)の含有量が10〜55質量%であるフィルム成形用樹脂組成物である。
【0015】
<フィルム成形用樹脂組成物>
本発明のフィルム成形用樹脂組成物(以下「本発明の樹脂組成物」ともいう。)は、成形しフィルムを得るために用いられる樹脂組成物であって、アクリル系樹脂(A)、スチレン系エラストマー(B)およびポリオレフィン系樹脂(C)を含有し、前記(A)、(B)、(C)の合計量を100質量%とした場合のアクリル系樹脂(A)の含有量が15質量%以上、スチレン系エラストマー(B)の含有量が10〜55質量%である樹脂組成物である。
【0016】
アクリル系樹脂(A)を所定量配合することにより、得られるフィルムに印刷層または粘着層との良好な密着性を付与することが可能となる。
スチレン系エラストマー(B)を所定量配合することにより、得られるフィルムにおいてアクリル系樹脂を均一に分散させ、且つ柔軟性を付与することが可能となる。
ポリオレフィン系樹脂(C)を所定量配合することにより、得られるフィルムに柔軟性と耐熱性を付与することが可能となる。
【0017】
この樹脂組成物を単層もしくはこの樹脂組成物からなる層を少なくとも表裏のいずれか一方の面に有する複層のフィルムにすることもできる。
また、この樹脂組成物中には、得られるフィルムに必要とされる性能に応じて、帯電防止剤、酸化防止剤、中和剤、滑剤、アンチブロッキング剤、可塑剤、熱安定剤、光安定剤、染顔料、結晶核剤、紫外線吸収剤、充填剤、剛性を付与する無機フィラー、及び柔軟性を付与するために本発明に用いるスチレン系エラストマー(B)以外のエラストマー等を、本発明の効果を阻害しない範囲において用いてもよい。
【0018】
紫外線吸収剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤、ベンゾフェノン系紫外線吸収剤、トリアジン系紫外線吸収剤等を挙げることができる。中でも、ベンゾトリアゾール系の紫外線吸収剤を用いるのが、製品の着色を少なくする上で好適である。
また、紫外線吸収剤の分子量は、380〜1000の範囲にあるもの、好ましくは400〜800の範囲内にあるものがより好適である。分子量を上記の範囲にすることによって、紫外線吸収剤のブリードアウトを抑制することが可能となる。
【0019】
光安定剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、ヒンダードアミン系光安定剤等を挙げることができる。
【0020】
帯電防止剤としては、公知のものを使用可能であるが、フィルムへの長期的な帯電防止性の付与と表面へのブリードアウトにより起こる不具合の抑制のため高分子型帯電防止剤を用いることが好ましい。
【0021】
高分子型帯電防止剤としては、公知のものを使用することができ、例えば、疎水性ブロックと親水性ブロックとのブロック共重合体を用いることができ、疎水性ブロックと親水性ブロックとが、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、イミド結合、ウレタン結合及びウレア結合等によってブロック共重合体を形成している。このような帯電防止剤としては、例えば、エーテル−ポリオレフィンブロック共重合体、ポリエーテルと疎水性エステルアミドとのブロック共重合体であるポリエーテルエステルアミド、ポリエーテルと疎水性アミドとのブロック共重合体であるポリエーテルアミド、又は、ポリエーテルと疎水性アミドイミドとのブロック共重合体であるポリエーテルアミドイミド、或いは、ポリエチレングリコール(メタ)アクリレート共重合体を挙げることができる。
【0022】
更に帯電防止性を向上させるために、アルカリ金属又はアルカリ土類金属塩、4級アンモニウム塩、界面活性剤及びイオン性液体等が配合されていてもよい。
【0023】
<アクリル系樹脂(A)>
本発明の樹脂組成物には、該樹脂組成物を成形して得られるフィルムと該フィルムに積層された印刷層または粘着層との密着性を向上させるためにアクリル系樹脂(A)が添加される。
【0024】
アクリル系樹脂(A)は、以下に記載のアクリル重合体(α−1)、ゴム含有アクリル重合体(α―2)、またはこれらを併用してなるアクリル系樹脂であることが好ましい。
【0025】
アクリル重合体(α−1)としては、メタクリル酸アルキルエステル50〜100質量%、アクリル酸アルキルエステル0〜50質量%およびこれらと共重合可能な二重結合を有する他の単官能単量体0〜49質量%を含有する単量体成分を重合して得られる重合体が好ましい。
メタクリル酸アルキルエステルの例としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピルおよびメタクリル酸n−ブチル、メタアクリル酸i−ブチル等を挙げることができる。
アクリル酸アルキルエステルの例としては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピルおよびアクリル酸n−ブチル、アクリル酸i−ブチル等を挙げることができる。
【0026】
他の単官能単量体としては、(メタ)アクリル酸低級アルコキシ、(メタ)アクリル酸シアノエチル、(メタ)アクリル酸アミド、(メタ)アクリル酸等の(メタ)アクリル酸エステル単量体;スチレン、アルキル置換スチレン等の芳香族ビニル単量体;およびアクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル単量体が挙げられる。
アクリル重合体(α−1)の重合方法としては、例えば、懸濁重合法、乳化重合法および塊状重合法が挙げられる。
これらは一種を単独でまたは二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0027】
ゴム含有アクリル重合体(α−2)は、アクリル酸アルキルエステルおよび多官能単量体を必須成分として含む単量体成分を重合して得られるゴム重合体(g)の存在下に、メタクリル酸アルキルエステルを必須成分として含む単量体成分を重合して得られたゴム含有重合体である。
ゴム重合体(g)を構成する単量体成分中のアクリル酸アルキルエステルおよび多官能性単量体以外の単量体としては、例えば、メタクリル酸アルキルエステル、またはこれら(アクリル酸アルキルエステル、多官能性単量体)と共重合可能な二重結合を有する他の単官能単量体が挙げられる。
【0028】
ゴム含有アクリル重合体(α−2)の製造方法としては、乳化重合法、逐次多段乳化重合法と同様の方法で行うことが好ましい。
アクリル重合体(α−1)とゴム含有アクリル重合体(α―2)はそれぞれ単独で用いてもよいし、これらを併用することもできる。
【0029】
アクリル重合体(α−1)から構成されるアクリル系樹脂(A)の市販品の例としては、例えば、「アクリペットMD001」、「アクリペットVH001」、(いずれも三菱ケミカル社製)、「パラペットGF」、「パラペットG」(いずれもクラレ社製)等が挙げられる。
【0030】
アクリル重合体(α―1)とゴム含有アクリル重合体(α―2)から構成されるアクリル系樹脂(A)の市販品の例としては、例えば、「アクリペットIRS204」、「アクリペットIRD50」(いずれも三菱ケミカル社製)、「パラペットSA−NW201」(クラレ社製)等が挙げられる。
【0031】
本発明の樹脂組成物中には、後述するスチレン系エラストマー(B)、ポリオレフィン系樹脂(C)およびアクリル系樹脂(A)の合計100質量%を基準として、アクリル系樹脂(A)が15〜65質量%添加される。
【0032】
アクリル系樹脂(A)の添加量が15質量%以上であれば、得られるフィルムと該フィルムに積層した印刷層もしくは粘着層との密着性が十分に発現する。また、好ましくは65質量%以下とすることで、密着性を確保しつつ十分な柔軟性を維持することが可能となる。アクリル系樹脂(A)の添加量としては、さらに好ましくは17〜60質量%、もっとも好ましくは20〜55質量%である。
【0033】
アクリル系樹脂(A)のメルトフローレイト(230℃、3.8kg)は、0.1〜20g/10分であることが好ましい。メルトフローレイトが0.1〜20g/10minの範囲内にあれば、後述するスチレン系エラストマー(B)およびポリオレフィン系樹脂(C)中にアクリル系樹脂(A)を均一に分散させることが容易となる。アクリル系樹脂(A)のメルトフローレイトとしては、より好ましくは0.15〜18g/10分、さらに好ましくは0.2〜16g/10分である。
【0034】
<スチレン系エラストマー(B)>
本発明の樹脂組成物には、前述したアクリル系樹脂(A)を得られるフィルム中に均一に分散させ、且つフィルムに柔軟性を付与するためにスチレン系エラストマー(B)が添加される。
スチレン系エラストマー(B)は、下記式(I)または(II)で表されるブロック共重合体であることが好ましい。
X−(Y−X)n …(I)
(X−Y)n …(II)
【0035】
一般式(I)および(II)におけるXはスチレンに代表される芳香族ビニル重合体ブロックで、式(I)においては分子鎖両末端で重合度が同じであってもよいし、異なっていてもよい。また、Yとしてはブタジエン重合体ブロック、イソプレン重合体ブロック、ブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、水添されたブタジエン重合体ブロック、水添されたイソプレン重合体ブロック、水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロック、部分水添されたブタジエン重合体ブロック、部分水添されたイソプレン重合体ブロックおよび部分水添されたブタジエン/イソプレン共重合体ブロックの中から選ばれた少なくとも1種である。また、nは1以上の整数である。
【0036】
具体例としては、スチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−ブテン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体、スチレン−イソプレン−スチレン共重合体、スチレン−水添ブタジエンジブロック共重合体、スチレン−水添イソプレンジブロック共重合体、スチレン−ブタジエンジブロック共重合体、スチレン−イソプレンジブロック共重合体等が挙げられる。
その中でもスチレン−エチレン・ブチレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン・プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−エチレン・エチレン・プロピレン−スチレン共重合体、スチレン−ブタジエン−ブテン−スチレン共重合体が最も好適である。
【0037】
前記ブロック共重合体におけるX成分の含有量は5〜50質量%が好ましい。5質量%以上であれば、得られるフィルムに柔軟性と弾性を付与することが可能となり、50質量%以下であれば柔軟性を損なわずに、破断伸度も十分に維持することが可能となる。上記X成分の含有量は、より好ましくは6〜40質量%、さらに好ましくは7〜30質量%の範囲である。
【0038】
本発明の樹脂組成物中には、前述したアクリル系樹脂(A)、スチレン系エラストマー(B)および後述するポリオレフィン系樹脂(C))の合計100質量%を基準として、スチレン系エラストマー(B)が10〜55質量%添加される。
スチレン系エラストマー(B)の添加量が10質量%以上であれば、得られるフィルムにアクリル系樹脂を均一に分散させつつ、柔軟性を付与することが可能となり、また、55質量%以下とすることで、適度な柔軟性を維持しつつ製膜性を良好に維持することが可能となる。スチレン系エラストマー(B)の添加量として、より好ましくは15〜50質量%、さらに好ましくは20〜45質量%である。
【0039】
スチレン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレイト(230℃、2.16kg)は、0.1〜20g/10分であることが好ましく、0.15〜15g/10分であることがより好ましく、0.2〜10g/10分であることが特に好ましい。スチレン系熱可塑性エラストマーのメルトフローレイトが0.1〜20g/10minの範囲内にあれば、得られるフィルムに十分な靭性を発現させることが可能となる。
【0040】
スチレン系エラストマーの市販品としては、例えば、タフプレンA、ソルプレンT、アサプレンT−411、タフテックH1221、タフテックP1500、タフテックM1943、タフテックH1041、タフテックP2000(以上、旭化成ケミカルズ(株)製)、エラストマーAR−850C、エラストマーAR−720、エラストマーAR−FL−75N、エラストマーAR−1050(以上、アロン化成(株)製)、クレイトンD1111、クレイトンDX406、クレイトンD4141、クレイトンD1152、クレイトンFG1901、クレイトンG1640、クレイトンG1726(以上、クレイトンポリマージャパン(株)製)、TR2000、TR1086、SIS5002、ダイナロン6100P、ダイナロン4600P、ダイナロン8601P、ダイナロン8630P、ダイナロン1321P、ダイナロン2324P、ダイナロン9901P(以上、JSR(株)製)、クインタック3520、クインタック3433N(以上、日本ゼオン製)、TPE−SBシリーズ(住友化学(株)製)、セプトン1001、セプトン2104、セプトンHG252、セプトン8004、セプトンV9461、ハイブラー7311、(以上、(株)クラレ製)、スミフレックス(住友ベークライト(株)製)、レオストマー、アクティマー(以上、リケンテクノス(株)製)などが挙げられる。
【0041】
<ポリオレフィン系樹脂(C)>
本発明の樹脂組成物には、ポリオレフィン系樹脂(C)が添加される。以下に記載のポリオレフィン系樹脂(C)を添加することにより、得られるフィルムに柔軟性と耐熱性を付与することが可能となる。
ポリオレフィン系樹脂(C)の具体例としては、例えば、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、オレフィン系エラストマー、環状オレフィン系樹脂及びこれらの混合物等が挙げられる。
【0042】
ポリエチレン系樹脂としては、エチレンの単独重合体、エチレンを主成分とするエチレンと共重合可能な他の単量体との共重合体が挙げられ、低密度ポリエチレン(LDPE)、高圧法低密度ポリエチレン、線状低密度ポリエチレン(LLDPE)、高密度ポリエチレン(HDPE)、メタロセン系触媒を用いて重合して得られたエチレン−α−オレフィン共重合体(メタロセン系ポリエチレン)及びこれらの2種以上の混合物等が例示できる。また、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−メチル(メタ)アクリル酸エステル共重合体、エチレン−エチル(メタ)アクリル酸共重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、エチレン系アイオノマー樹脂等もポリエチレン系樹脂に分類される。
【0043】
ポリプロピレン系樹脂としては、プロピレンの単独重合体(ホモポリプロピレン)、プロピレンの共重合体、リアクター型のポリプロピレン系熱可塑性エラストマー及びこれらの2種以上の混合物等が例示できる。
【0044】
前記プロピレンの共重合体としてはプロピレンとエチレンまたは他のα−オレフィンとのランダム共重合体(ランダムポリプロピレン)やブロック共重合体(ブロックポリプロピレン)、ゴム成分を含むブロック共重合体あるいはグラフト共重合体等が挙げられる。前記プロピレンと共重合可能な他のα−オレフィンとしては、炭素原子数が4〜12のものが好ましく、例えば、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、4−メチル−1−ペンテン、1−デセン等が挙げられ、その1種または2種以上の混合物が用いられる。
【0045】
オレフィン系エラストマーとは、エチレン、プロピレン、1−ブテン、イソブテン、1−ペンテン、2−メチル−1−ブテン、3−メチル−1−ブテン、1−ヘキセン、2−メチル−1−ペンテン、3−メチル−1−ペンテン、4−メチル−1−ペンテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン、1−ウンデセン、1−ドデセン等の炭素数2〜20のα−オレフィンが共重合した共重合体、上記α−オレフィンや共重合体に更にスチレン、非共役ジエン、酢酸ビニル等のモノマーが共重合した共重合体などが挙げられる。
【0046】
具体的には、例えば、エチレン−プロピレン共重合体エラストマー、エチレン−1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン−1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−1−ヘキセン共重合体エラストマー、エチレン−1−オクテン共重合体エラストマー、エチレン−スチレン共重合体エラストマー、エチレン−ノルボルネン共重合体エラストマー、プロピレン−1−ブテン共重合体エラストマー、エチレン−プロピレン−非共役ジエン共重合体エラストマー、エチレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー、及びエチレン−プロピレン−1−ブテン−非共役ジエン共重合体エラストマー等のオレフィンを主成分とする無定型の弾性共重合体、その誘導体及び酸変性誘導体等を挙げることができる。
【0047】
オレフィン系エラストマーの市販品としては、「ウェルネクス RFX4V」(日本ポリプロ社製、メタロセン重合オレフィン系エラストマー)、ミラストマー(三井化学(株)製)、サーモラン(三菱化学(株)製)、ニューコン(日本ポリプロ(株)製)、EXCELINK(JSR(株)製)などが挙げられる。
環状オレフィン系樹脂としては、例えば、ノルボルネン系重合体、ビニル脂環式炭化水素重合体、環状共役ジエン重合体等が挙げられる。これらの中でも、ノルボルネン系重合体が好ましい。また、ノルボルネン系重合体としては、ノルボルネン系単量体の開環重合体、ノルボルネン系単量体とエチレン等のα−オレフィンを共重合したノルボルネン系共重合体等が挙げられる。また、これらの水素添加物も用いることができる。
【0048】
環状オレフィン系樹脂の市販品として、ノルボルネン系モノマーの開環重合体としては、例えば、日本ゼオン株式会社製「ゼオノア(ZEONOR)」等が挙げられ、ノルボルネン系共重合体としては、例えば、三井化学株式会社製「アペル」、ポリプラスチックス株式会社製「トパス(TOPAS)」等が挙げられる。
【0049】
ポリオレフィン系樹脂(C)としては、加工や取扱いの容易さや入手のしやすさの観点から、ポリエチレン系樹脂、ポリプロピレン系樹脂、ポリオレフィン系エラストマーが好ましい。
また、得られるフィルムの耐熱性の観点から、用いられるポリオレフィン系樹脂(C)の融点は100〜240℃の範囲内にあることが好ましい。融点が100℃以上であることにより、フィルムに適度な耐熱性を付与することが可能となり、続く印刷層を積層する工程、粘着層を積層する工程においてもフィルムの変形を抑制することが可能となる。融点が240℃以下であれば、前述したアクリル系樹脂(A)およびスチレン系エラストマー(B)の成形時の熱による劣化を抑制しつつ、フィルムに成形することが可能となる。より好ましくは110〜220℃、さらに好ましくは120〜200℃の範囲である。
【0050】
本発明の樹脂組成物中には、前述したアクリル系樹脂(A)、スチレン系エラストマー(B)およびポリオレフィン系樹脂(C)の合計100質量%を基準として、ポリオレフィン系樹脂(C)が5〜65質量%添加することが好ましい。
ポリオレフィン系樹脂(C)の添加量が5質量%以上であれば、得られるフィルムに十分な耐熱性を付与することが可能となる。また、65質量%以下とすることで、耐熱性を維持しつつ前述したアクリル系樹脂(A)とスチレン系エラストマー(B)をフィルム中に分散させることが可能となる。ポリオレフィン系樹脂(C)の添加量は、より好ましくは15〜50質量%、さらに好ましくは20〜45質量%である。
【0051】
ポリオレフィン系樹脂(C)のメルトフローレイトは、その適用する成形方法や用途により適宜選択されるものの、190℃もしくは230℃の温度条件下、荷重2.16kgで測定した値が0.1〜50g/10分であることが好ましい。0.5g/10分以上であればフィルムの成形性が良好となり、50g/以下であればフィルムの厚み精度を良好に保つことが可能となる。ポリオレフィン系樹脂(C)のメルトフローレイトとしては、より好ましくは0.5〜40g/10分、さらに好ましくは1.0〜30g/10分である。
【0052】
ポリオレフィン系樹脂(C)の強度については、ポリオレフィン系樹脂単独で作成したフィルムの引張弾性率が100〜2000MPaの範囲内であることが好ましい。引張弾性率が100〜2000MPaの範囲内であれば、本発明の樹脂組成物から得られるフィルムに適度な柔軟性を付与することが可能となる。上記引張弾性率は、より好ましくは150〜1900MPaの範囲内、さらに好ましくは200〜1800MPaの範囲内である。
【0053】
<単層および複層フィルム>
本発明のフィルム成形用樹脂組成物を成形することで、フィルム状の成形体を得ることが可能となる。また、フィルムは単層であってもよいし、該樹脂組成物からなる層を少なくとも表裏のいずれか一方の面に有する複層のフィルムとしてもよい。
【0054】
該樹脂組成物からなる単層フィルムもしくはそれからなる層を表裏のいずれか一方の面に有するフィルムは、所定のアクリル系樹脂(A)を含んでおり、フィルムの表裏いずれか、もしくは両方に積層される印刷層もしくは粘着層との密着性に優れたフィルムとなる。
【0055】
フィルムの成形方法としては、公知の方法を用いることができるが、溶融押出成形法を用いることが好ましい。溶融押出成形法の中でも、Tダイを有する押出機より溶融状態の樹脂を押出し、冷却固化させてフィルムを得るTダイ成形法がより好ましい。
【0056】
また、複層フィルムを得る場合は、複数の押出機を利用した共押出Tダイ成形法とすることが好ましい。共押出Tダイ成形法としては、マルチマニホールドダイを用いて、複数の樹脂層をフィルム状としたのち、Tダイ内で接触させて複層化させフィルムを得る方法と、フィードブロックと称する溶融状態の樹脂を合流させる装置を用い、複数の樹脂を合流させ密着した後、複層のフィルムを得る方法が挙げられる。
【0057】
本発明の単層および複層フィルムには必要に応じて、片面または両方の面にプラズマ処理やコロナ処理、オゾン処理および火炎処理等の方法による表面処理を行ってもよい。
【0058】
本発明の単層および複層フィルムの厚みは特に制限されるものではないが、30〜400μmであることが好ましい。上記範囲内とすることで、フィルムの取扱い性およびその後の加工性を良好に維持することができる。
【0059】
フィルムの強度としては、JIS K 7161に従い、フィルムから採取した試験片(JIS K 6732)を用い、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機にて、引張速度:50mm/分で測定した際の引張弾性率が、50〜1000MPaの範囲内であることが好ましい。
得られたフィルムの引張弾性率が50〜1000MPaの範囲内であれば柔軟で且つ取扱い性にも優れたフィルムとなる。より好ましくは60〜900MPaの範囲内であり、さらに好ましくは70〜800MPaの範囲内である。
フィルムの伸度としては、JIS K 7161に従い、フィルムから採取した試験片(JIS K 6732)を用い、23℃、50%RHの雰囲気下、引張試験機にて、引張速度:300mm/分で測定した際の引張破断伸度が、50%以上であることが好ましい。
【0060】
引張破断伸度が50%以上であれば、溶融押出成形時のフィルムを引き取る際のフィルムの破断による不具合や、これに続く印刷層や粘着層を積層する工程においても同様の不具合を抑制させることができるため好ましい。より好ましくは75%以上、さらに好ましくは100%以上である。
また、本発明の樹脂組成物からなる層を少なくとも表裏のいずれか一方の面に有する複層フィルムとする際は、当該積層フィルム中のその層以外の層(以下「その他の層」ともいう。)もアクリル系樹脂(A)、スチレン系エラストマー(B)、ポリオレフィン系樹脂(C)からなる樹脂組成物からなる層であることが好ましい。この場合、その層と、その他の層とは、アクリル系樹脂(A)、スチレン系エラストマー(B)、オレフィン系樹脂(C)の含有量が同じであっても異なっていてもよい。
【0061】
その他の層がアクリル系樹脂(A)、スチレン系エラストマー(B)、オレフィン系樹脂(C)から構成されることで、各層間の密着性を良好に保つことが可能となり好ましい。
その他の層が2層以上になる場合は、それらの層の樹脂の比率は同じでもよいし異なってもよい。得られるフィルムの物性に応じて、適宜比率を決定することができる。
また、その他の層が表裏いずれにも用いられない場合は、本発明に記載のフィルム成形用樹脂組成物として規定されるアクリル系樹脂(A)、スチレン系エラストマー(B)、ポリオレフィン系樹脂(C)の含有量の範囲外とすることも可能である。
【0062】
<粘着フィルム>
本発明のフィルムには、少なくとも片方の面に粘着層を積層することで、粘着フィルムとすることができる。
粘着層として用いられる粘着剤は特に限定されないが、例えば、天然ゴム系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、シリコン系樹脂、ポリビニルエーテル系樹脂等の各種粘着剤が用いられる。また粘着剤層の上にさらに接着剤層や熱硬化性樹脂層等の機能層を設けてもよい。
本発明の粘着フィルムにおいて、粘着層を積層する前のフィルムの片面もしくは両方の面に、前述した表面処理を行ってもよい。また、基材フィルム(本発明のフィルム)と粘着層の間には、必要に応じて、プライマー層を設けてもよい。
【0063】
<化粧フィルム>
本発明のフィルムには、少なくとも片方の面に印刷層を積層して、化粧フィルムとすることができる。
化粧フィルムを構成する印刷層は、公知の方法で形成できる。例えば、オフセット印刷法、グラビア輪転印刷法、スクリーン印刷法等の公知の印刷法、ロールコート法、スプレーコート法等の公知のコート法、フレキソグラフ印刷法等が挙げられる。また、蒸着法を用いることもできる。
印刷の柄としては、例えば、木目、石目、布目、砂目、幾何学模様、文字、全面ベタ、メタリック等からなる絵柄が挙げられる。
印刷層の厚さは、必要に応じて適宜決めることができる。
【0064】
<化粧用粘着フィルム>
本発明の化粧フィルムには、必要に応じて、該印刷層側にさらに粘着層を積層して化粧用粘着フィルムとすることができる。この場合、粘着層を印刷層の上に設けてもよいし、印刷層の上に他の層(例えば、帯電防止層やプライマー層等)を設けて、当該他の層の上に粘着層を設けてもよい。
該化粧用粘着フィルムを被着体に貼着させることで、被着体の美麗な外観を付与することが可能となり、建築内外装用途の成形体や積層体、自動車加飾用途の成形体や積層体を得ることができる。
【0065】
本発明の樹脂組成物は、優れた柔軟性と破断伸度、高い融点を有し、印刷層や粘着剤との密着性の良好なフィルムを得ることが可能なフィルム成形用樹脂組成物である。また、本発明の樹脂組成物から得られるフィルムは粘着剤や印刷層との密着性にも優れるため、粘着フィルムや化粧フィルムおよびそれらを使用した半導体製造工程用テープ、建築内外装用途、さらには自動車加飾用途にも好適に用いることができる。
【実施例】
【0066】
以下、本発明の実施例及び比較例を示して、具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例により何ら限定されるものではない。尚、以下の実施例及び比較例で使用した材料、評価した特性の測定方法等は、次の通りである。
【0067】
[使用材料]
<アクリル系樹脂(A)>
アクリル系樹脂(A−1):
三菱ケミカル社製、「アクリペットMD001」(アクリル重合体(α―1)からなるアクリル樹脂、230℃3.8kgにおけるメルトフローレイト=6.0g/10分)
アクリル系樹脂(A―2):
三菱ケミカル社製、「アクリペットIRS204」(アクリル重合体(α−1)およびゴム含有アクリル重合体(α―2)の混合物、230℃3.8kgにおけるメルトフローレイト=14.0g/10分)
【0068】
<スチレン系エラストマー(B)>
旭化成社製、「タフテックH1221」(水素添加を行ったスチレン−エチレン・ブチレン−スチレンのブロック共重合体、230℃2.16kgにおけるメルトフローレイト=4.5g/10分)
【0069】
<ポリオレフィン系樹脂(C)>
ポリオレフィン系樹脂(C−1):
日本ポリプロ社製、「FW4B」(ランダムポリプロピレン、230℃2.16kgにおけるメルトフローレイト=8.0g/10分、融点=136℃、単独フィルムの引張弾性率=600MPa)
ポリオレフィン系樹脂(C−2)
日本ポリプロ社製、「MA3U」(ホモポリプロピレン、230℃2.16kgにおけるメルトフローレイト=11g/10分、融点=160℃、単独フィルムの引張弾性率=1000MPa)
ポリオレフィン系樹脂(C−3)
日本ポリエチレン社製、「LC500」(低密度ポリエチレン、190℃2.16kgでのメルトフローレイト=4.0g/10分、融点=111℃、単独フィルムの引張弾性率=120MPa)
【0070】
[ポリオレフィン系樹脂の融点]
示差走査熱量測定装置(メトラー・トレド社製 DSC823e)を用い、各ポリオレフィン系樹脂の約5mgを、昇温速度10℃/分で25℃から230℃まで昇温した後、冷却速度10℃/分で25℃まで降温し、再度、昇温速度10℃/分で230℃まで昇温した際に測定されたチャートの融解ピーク温度を融点とした。
【0071】
<帯電防止剤>
高分子型帯電防止剤:三洋化成工業社製「ペレクトロンPVL」(ポリプロピレン−ポリエーテルブロック共重合体)
【0072】
<樹脂組成物の調製>
上記使用原料のアクリル系樹脂(A)、スチレン系エラストマー(B)、ポリオレフィン系樹脂(C)を合計で100質量%となるように調整し、表1に記載の原料を用い、それらをドライブレンドし混合した。目視にて均一に混合できていることを確認し、フィルム成形用樹脂組成物を得た。
【0073】
<単層フィルムの製膜方法>
東芝機械製単軸押出機(50φmm、L/D=32)のホッパーにドライブレンドした原料を投入し、押出機温度を200〜210℃に設定し、650mm幅Tダイ(温度設定210℃、リップ開度0.3mm)から押出した。押出された溶融樹脂は、冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度30℃)にて冷却固化、コロナ処理を行わずに巻き取りを行い、厚みが約80μmの単層フィルムを得た。
【0074】
<複層フィルムの製膜方法>
3台の東芝機械製単軸押出機(外層用:35φmm,L/D=25mm、中間層用:50φmm,L/D=32、外層用:35φmm,L/D=25mm)のそれぞれのホッパーにドライブレンドした原料を投入し、外層用、中間層用それぞれの押出機温度を200〜210℃に設定し、フィードブロック部にて、外層/中間層/外層の3層構成に合流させ、650mm幅Tダイ(温度設定210℃ リップ開度0.5mm)から押出した。厚み構成は、8μm/64μm/8μmになるよう各押出機回転数を設定した。
押出された溶融樹脂は、冷却ロールを備えた巻き取り機(冷却ロール700mm幅×φ350mm、ロール温度約30℃)にて冷却固化、コロナ処理を行わずに巻き取りを行い、厚みが約80μmの1種3層の実質的に単層のフィルム、もしくは2種3層からなる複層のフィルムを得た。
【0075】
[フィルムの製膜性]
単層フィルム、複層フィルムの製膜性を目視によって、以下の基準を用いて評価した。
◎:冷却ロールにフィルムが貼り付くことなく、製膜可能
○:冷却ロールにフィルムが僅かに貼り付くものの、製膜可能
×:冷却ロールにフィルムが顕著に貼り付き、製膜不可
【0076】
[フィルムの外観]
得られたフィルムを目視にて観察し、以下の基準により評価した。
○:原料が均一に分散しており、外観良好
×:原料の分散が不均一であり、フィルム表面に顕著な凹凸が発生
【0077】
[引張弾性率]
得られたフィルムから1号ダンベル試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、オートグラフ(島津製作所製AGS−X)を用いて、引張速度50mm/分にて引張弾性率(MPa)を測定した。
引張弾性率の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0078】
[引張破断強度]
得られたフィルムから1号ダンベル試験片を採取し、23℃、50%RHの雰囲気下、小型卓上試験機(島津製作所製EZ−L)を用いて、引張速度300mm/分にて引張破断伸度(%)を測定した。
引張破断伸度の測定は、フィルムの押出方向(MD)で測定を行った。
【0079】
[インキの密着性]
以下に記載のDICグラフィックス(株)製のインキを倉敷紡績(株)製、グラビア印刷試験機「GP−2」、印刷プレート「54L6階調」を用い、単層および複層フィルムに塗布を行った。塗布後のフィルムを40℃で5日間エージングし、インキによる印刷層が積層された化粧フィルムを得た。
得られた化粧フィルムの印刷層にセロテープを貼り、それを剥離することで印刷層とアクリル樹脂フィルムとの密着性を以下の基準により評価した。
○:インキの剥離が認められない
×:インキの剥離が認められる
【0080】
<DICグラフィックス(株)製インキ>
「VTP−NT40黄(A)」を95質量部、「AT−NT溶剤」を5質量部を混合・撹拌しインキを調製した。
「VTP−NT40黄(A)」:塩化ビニル/酢酸ビニル共重合体およびアクリル系樹脂の混合物と溶剤としてメチルイソブチルケトンからなる塗料
「AT−NT溶剤」:酢酸ブチル/酢酸エチル/メチルエチルケトンの混合物
【0081】
[実施例1]
アクリル系樹脂(A−1)、スチレン系エラストマー(B)、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を表1に記載の通り用いた樹脂組成物を調製した後、それをフィルム状に成形することにより単層フィルムを得た。
このフィルムは冷却ロールに貼り付くことがなく、製膜性に優れるものであり、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は330MPa、引張破断伸度は670%であり、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を用いたことにより136℃の融点を有することから耐熱性にも優れることが確認された。
また、本フィルムにインキを積層した化粧フィルムの密着性の評価では、インキとの剥離は観察されず、コロナ処理を施さずにインキとの十分な密着性を有するフィルムであることを確認した。
【0082】
[実施例2]
アクリル系樹脂(A−2)を用いた以外は実施例1と同様に行った。
このフィルムは冷却ロールに貼り付くことがなく、製膜性に優れるものであり、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は310MPa、引張破断伸度は740%であり、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を用いたことにより136℃の融点を有することから耐熱性にも優れることが確認された。
また、インキとの剥離も観察されず、コロナ処理を施さずにインキとの十分な密着性を有するフィルムであることを確認した。
【0083】
[実施例3]
ポリオレフィン系樹脂(C−2)を用いた以外は実施例1と同様に行った。
このフィルムは冷却ロールに貼り付くことがなく、製膜性に優れるものであり、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は410MPa、引張破断伸度は720%であり、ポリオレフィン系樹脂(C−2)を用いたことにより160℃の融点を有することから耐熱性にも優れることが確認された。
また、インキとの剥離も観察されず、コロナ処理を施さずにインキとの十分な密着性を有するフィルムであることを確認した。
【0084】
[実施例4]
ポリオレフィン系樹脂(C−3)を用いた以外は実施例1と同様に行った。
このフィルムは冷却ロールに貼り付くことがなく、製膜性に優れるものであり、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は180MPa、引張破断伸度は50%であり、ポリオレフィン系樹脂(C−3)を用いたことにより111℃の融点を有することから耐熱性にも優れることが確認された。
また、インキとの剥離も観察されず、コロナ処理を施さずにインキとの十分な密着性を有するフィルムであることを確認した。
【0085】
[実施例5]
アクリル系樹脂(A−1)、スチレン系エラストマー(B)、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を表1に記載の通りの配合とした以外は実施例1と同様に行った。
このフィルムは冷却ロールに貼り付くことがなく、製膜性に優れるものであり、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は240MPa、引張破断伸度は700%であり、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を用いたことにより136℃の融点を有することから耐熱性にも優れることが確認された。
また、インキとの剥離も観察されず、コロナ処理を施さずにインキとの十分な密着性を有するフィルムであることを確認した。
【0086】
[実施例6]
アクリル系樹脂(A−1)、スチレン系エラストマー(B)、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を表1に記載の通りの配合とした以外は実施例1と同様に行った。
このフィルムは冷却ロールへの貼り付きが僅かに観察されたが、容易に剥離できることから製膜は可能であった。また、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は150MPa、引張破断伸度は730%であり、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を用いたことにより136℃の融点を有することから耐熱性にも優れることが確認された。
また、インキとの剥離も観察されず、コロナ処理を施さずにインキとの十分な密着性を有するフィルムであることを確認した。
【0087】
[実施例7]
アクリル系樹脂(A−1)、スチレン系エラストマー(B)、ポリオレフィン系樹脂(C−1)および帯電防止剤を加え、表1に記載の通りのものを実施例1と同様に行った。
このフィルムは冷却ロールに貼り付くことがなく、製膜性に優れるものであり、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は630MPa、引張破断伸度は290%であり、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を用いたことにより136℃の融点を有することから耐熱性にも優れることが確認された。
また、インキとの剥離も観察されず、コロナ処理を施さずにインキとの十分な密着性を有するフィルムであることを確認した。
【0088】
[実施例8]
アクリル系樹脂(A−1)、スチレン系エラストマー(B)、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を表1に記載の通りの配合とした以外は実施例1と同様に行った。
このフィルムは冷却ロールへの貼り付きが僅かに観察されたが、容易に剥離できることから製膜は可能であった。また、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は160MPa、引張破断伸度は550%であり、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を用いたことにより136℃の融点を有することから耐熱性にも優れることが確認された。
また、インキとの剥離も観察されず、コロナ処理を施さずにインキとの十分な密着性を有するフィルムであることを確認した。
【0089】
[実施例9]
アクリル系樹脂(A−1)、スチレン系エラストマー(B)、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を表1に記載の通りの配合とした以外は実施例1と同様に行った。
このフィルムは冷却ロールに貼り付くことがなく、製膜性に優れるものであり、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は240MPa、引張破断伸度は310%であり、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を用いたことにより136℃の融点を有することから耐熱性にも優れることが確認された。
また、インキとの剥離も観察されず、コロナ処理を施さずにインキとの十分な密着性を有するフィルムであることを確認した。
【0090】
[実施例10]
アクリル系樹脂(A−1)、スチレン系エラストマー(B)、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を表1に記載の通りの配合とした以外は実施例1と同様に行った。
このフィルムは冷却ロールへの貼り付きが僅かに観察されたが、容易に剥離できることから製膜は可能であった。また、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は300MPa、引張破断伸度は60%であり、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を用いたことにより136℃の融点を有することから耐熱性にも優れることが確認された。
また、インキとの剥離も観察されず、コロナ処理を施さずにインキとの十分な密着性を有するフィルムであることを確認した。
【0091】
[実施例11]
アクリル系樹脂(A−1)の含有量を70質量%とし、スチレン系エラストマー(B)、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を表1に記載の通りの配合とした以外は実施例1と同様に行った。
このフィルムは冷却ロールに貼り付くことがなく、製膜性に優れるものであり、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は1200MPa、引張破断伸度40%であり、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を用いたことにより136℃の融点を有することから耐熱性にも優れることが確認された。
しかしながら、アクリル系樹脂の含有量が多いため、引張弾性率が高く、引張破断伸度も低いものであった。
【0092】
[比較例1]
アクリル系樹脂(A−1)の含有量を10質量%とし、スチレン系エラストマー(B)、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を表1に記載の通りの配合とした以外は実施例1と同様に行った。
このフィルムは冷却ロールに貼り付くことがなく、製膜性に優れるものであり、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は400MPa、引張破断伸度は810%であり、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を用いたことにより136℃の融点を有することから耐熱性にも優れることが確認された。
しかしながら、アクリル系樹脂の含有量が10質量%と少なく、本フィルムを用いた化粧フィルムからのインキの剥離が観察されたことから、インキとの密着性に劣るフィルムであることを確認した。
【0093】
[比較例2]
スチレン系エラストマー(B)を添加しなかったこと以外は、実施例1と同様に行った。
このフィルムは冷却ロールに貼り付くことがなく、製膜性に優れていたが、アクリル系樹脂とポリオレフィン系樹脂が均一に分散しておらず、フィルム表面に顕著な凹凸が発生しており、外観に劣るフィルムであることを確認した。
【0094】
[比較例3]
スチレン系エラストマー(B)の含有量を60質量%とした以外は、表1に記載の通りのものを実施例1と同様に行った。
このフィルムはスチレン系エラストマー(B)の添加量が多いため、柔らかくフィルム表面にタック性を有していたことから、顕著に冷却ロールに貼り付き、製膜性に劣るものであることを確認した。
【0095】
[比較例4]
ポリオレフィン系樹脂(C)を添加しなかったこと以外は、表1に記載の通りのものを実施例1と同様に行った。
このフィルムは冷却ロールに貼り付くことがなく、製膜性に優れるものであり、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は280MPa、引張破断伸度60%であった。また、ポリオレフィン系樹脂(C)を用いていないことから、100〜240℃の範囲内に融点を有しておらず、耐熱性にも劣るものであることを確認した。
【0096】
【表1】
【0097】
[実施例12]
3台の押出機に、表2に記載の樹脂組成物をそれぞれ投入し、2種3層からなる複層フィルムを得た。
このフィルムは冷却ロールに貼り付くことがなく、製膜性に優れるものであり、得られたフィルムの外観も良好であった。
得られたフィルムの引張弾性率は200MPa、引張破断伸度は700%であり、ポリオレフィン系樹脂(C−1)を用いたことにより136℃の融点を有することから耐熱性にも優れることが確認された。
また、インキとの剥離も観察されず、コロナ処理を施さずにインキとの十分な密着性を有するフィルムであることを確認した。
【0098】
【表2】
【0099】
[実施例13]
アクリル系粘着剤(綜研化学(株)製SKダイン1502C)をセパレータ上にコンマコート法にて、乾燥後の粘着剤層の厚みが25μmになるように塗工し、80℃の熱風乾燥機にて5分間乾燥させた後、粘着剤層を形成し、実施例1で作成した単層フィルムの片方の面に貼り合わせることで、単層フィルム/粘着層/セパレータからなる粘着フィルムを得た。
単層フィルムと粘着層との密着性は、インキの密着性の評価と同様の評価を行うことで確認した。評価の結果、粘着層の剥離が観察されないことから、コロナ処理を施さずに粘着層との十分な密着性を有するフィルムであることを確認した。
【0100】
[実施例14]
実施例1で作成した化粧フィルムの印刷層側に、さらに実施例13と同様の方法で粘着層を積層することで、化粧用粘着フィルムを得た。
得られた化粧用粘着フィルムはインキとの良好な密着性を有しており、さらにこの化粧用粘着フィルムを鋼板に貼り合わせることでインキとフィルムの密着性に優れた、建築内外装用化粧材を得ることが可能なことを確認した。
【0101】
この様に、本発明の構成により、優れた柔軟性と破断伸度、高い融点を有し、さらにコロナ処理等の前処理を行わなくとも印刷層や粘着剤との密着性の良好なフィルムを得ることができる。さらに、得られたフィルムは粘着剤や印刷層との密着性にも優れるため、粘着フィルムや化粧フィルムおよびそれらを使用した半導体製造工程用テープ、建築内外装用途、自動車加飾用途に好適に用いることができる。