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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-75660(P2021-75660A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】顔料分散液
(51)【国際特許分類】
   C09D 17/00 20060101AFI20210423BHJP
   C09C 1/44 20060101ALI20210423BHJP
【FI】
   C09D17/00
   C09C1/44
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2019-204793(P2019-204793)
(22)【出願日】2019年11月12日
(71)【出願人】
【識別番号】000002820
【氏名又は名称】大日精化工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】506076891
【氏名又は名称】ナンヤン テクノロジカル ユニヴァーシティー
(74)【代理人】
【識別番号】100098707
【弁理士】
【氏名又は名称】近藤 利英子
(74)【代理人】
【識別番号】100135987
【弁理士】
【氏名又は名称】菅野 重慶
(74)【代理人】
【識別番号】100168033
【弁理士】
【氏名又は名称】竹山 圭太
(74)【代理人】
【識別番号】100161377
【弁理士】
【氏名又は名称】岡田 薫
(72)【発明者】
【氏名】嶋中 博之
(72)【発明者】
【氏名】村上 賀一
(72)【発明者】
【氏名】釜林 純
(72)【発明者】
【氏名】後藤 淳
【テーマコード(参考)】
4J037
【Fターム(参考)】
4J037AA01
4J037AA30
4J037CA20
4J037CB07
4J037CB08
4J037CB10
4J037CC16
4J037CC29
4J037EE08
4J037EE17
4J037EE43
4J037FF23
(57)【要約】
【課題】低粘度であるとともに、良好な着色性能を示し、かつ、顔料の分散安定性及び長期保存性に優れた、各種の着色剤として有用な顔料分散液を提供する。
【解決手段】顔料、有機溶媒、及び高分子分散剤を含有し、高分子分散剤が、下記(1)〜(4)の要件を満たすポリマーである顔料分散液。
(1)メタクリレート系モノマー単位を90質量%以上含むA−Bブロックコポリマーである。
(2)ポリマー鎖Aが、アミン価が0.5mgKOH/g以下、数平均分子量が3,000〜15,000のポリマーブロックである。
(3)ポリマー鎖Bが、特定の第4級アンモニウム塩基を有するメタクリレート系モノマー単位(b)を含む、アミン価が0〜150mgKOH/gのポリマーブロックである。
(4)メタクリレート系モノマー単位(b)の含有量が、ポリマー全体を基準として、30〜80質量%である。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
顔料、有機溶媒、及び高分子分散剤を含有し、
前記高分子分散剤が、下記(1)〜(4)の要件を満たすポリマーである顔料分散液。
(1)メタクリレート系モノマー単位を90質量%以上含む、ポリマー鎖A及びポリマー鎖Bを有するA−Bブロックコポリマーである。
(2)前記ポリマー鎖Aが、アミン価が0.5mgKOH/g以下、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量が3,000〜15,000のポリマーブロックである。
(3)前記ポリマー鎖Bが、下記一般式(1)で表される官能基を有するメタクリレート系モノマー単位(b)を含む、アミン価が0〜150mgKOH/gのポリマーブロックである。
(4)前記メタクリレート系モノマー単位(b)の含有量が、ポリマー全体を基準として、30〜80質量%である。
(前記一般式(1)中、R、R、及びRは、相互に独立に、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、又はアリルメチル基を示し、X及びXは、相互に独立に、フッ素原子又は炭素数1〜8のフッ化アルキル基を示す)
【請求項2】
前記有機溶媒が、その比誘電率が20以下の非プロトン性溶媒である請求項1に記載の顔料分散液。
【請求項3】
前記顔料が、その表面にカルボキシ基、スルホン酸基、及びリン酸基の少なくともいずれかの酸性基を有する顔料である請求項1又は2に記載の顔料分散液。
【請求項4】
前記顔料が、ナノカーボン物質である請求項1〜3のいずれか一項に記載の顔料分散液。
【請求項5】
前記ナノカーボン物質が、カーボンナノチューブ類及びナノグラフェン類の少なくともいずれかである請求項4に記載の顔料分散液。
【請求項6】
前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が、10〜200質量部であり、
前記顔料の含有量が、分散液全体を基準として、0.5〜30質量%である請求項1〜5のいずれか一項に記載の顔料分散液。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特定構造を有するポリマーを顔料の分散剤として用いた顔料分散液に関する。
【背景技術】
【0002】
情報機器として、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ、量子ドットディスプレイなどの次世代のディスプレイが近年開発されている。また、技術の急速な発展に伴い、より高画質であるとともにコストパフォーマンスに優れた液晶ディスプレイパネルを構成する部材であるカラーフィルター、及びそのようなカラーフィルターを製造するための着色剤が要求されている。さらに、有機ELディスプレイや量子ドットディスプレイに対しては、発光層の画素を分割するバンク材を構成しうる、顔料の分散性に優れた着色剤が要求されている。
【0003】
カラーフィルター等を製造する材料となる着色剤として用いられる顔料分散液は、極めて微細な顔料(顔料微粒子)が微分散した状態で含まれている。そして、このような顔料分散液は、顔料が微細化されているために表面張力が高く、顔料が凝集しやすい傾向にある。したがって、顔料分散液に対しては、微粒子の状態で分散させた顔料の分散安定性を保持するための工夫が必要とされている。例えば、耐熱性の良好な顔料分散剤を用いた、アルカリ現像しやすいカラーフィルター用の着色剤が種々提案されている(特許文献1〜3)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−298967号公報
【特許文献2】特開2011−068865号公報
【特許文献3】特開2013−032441号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
次世代ディスプレイ用の着色剤については、顔料の微粒子化がさらに進行している。そして、微粒子化された顔料を含みながらも高い着色性能を安定して発揮するには、高温条件下で長期保存した場合であっても、顔料が凝集することなく、微分散状態が維持されていることが要求される。しかし、従来の着色剤はこれらの要求を必ずしも満足できるものであるとは言えなかった。
【0006】
本発明は、このような従来技術の有する問題点に鑑みてなされたものであり、その課題とするところは、低粘度であるとともに、良好な着色性能を示し、かつ、顔料の分散安定性及び長期保存性に優れた、各種の着色剤として有用な顔料分散液を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
すなわち、本発明によれば、以下に示す顔料分散液が提供される。
[1]顔料、有機溶媒、及び高分子分散剤を含有し、前記高分子分散剤が、下記(1)〜(4)の要件を満たすポリマーである顔料分散液。
(1)メタクリレート系モノマー単位を90質量%以上含む、ポリマー鎖A及びポリマー鎖Bを有するA−Bブロックコポリマーである。
(2)前記ポリマー鎖Aが、アミン価が0.5mgKOH/g以下、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量が3,000〜15,000のポリマーブロックである。
(3)前記ポリマー鎖Bが、下記一般式(1)で表される官能基を有するメタクリレート系モノマー単位(b)を含む、アミン価が0〜150mgKOH/gのポリマーブロックである。
(4)前記メタクリレート系モノマー単位(b)の含有量が、ポリマー全体を基準として、30〜80質量%である。
【0008】
(前記一般式(1)中、R、R、及びRは、相互に独立に、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、又はアリルメチル基を示し、X及びXは、相互に独立に、フッ素原子又は炭素数1〜8のフッ化アルキル基を示す)
【0009】
[2]前記有機溶媒が、その比誘電率が20以下の非プロトン性溶媒である前記[1]に記載の顔料分散液。
[3]前記顔料が、その表面にカルボキシ基、スルホン酸基、及びリン酸基の少なくともいずれかの酸性基を有する顔料である前記[1]又は[2]に記載の顔料分散液。
[4]前記顔料が、ナノカーボン物質である前記[1]〜[3]のいずれかに記載の顔料分散液。
[5]前記ナノカーボン物質が、カーボンナノチューブ類及びナノグラフェン類の少なくともいずれかである前記[4]に記載の顔料分散液。
[6]前記顔料100質量部に対する、前記高分子分散剤の含有量が、10〜200質量部であり、前記顔料の含有量が、分散液全体を基準として、0.5〜30質量%である前記[1]〜[5]のいずれかに記載の顔料分散液。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、低粘度であるとともに、良好な着色性能を示し、かつ、顔料の分散安定性及び長期保存性に優れた、各種の着色剤として有用な顔料分散液を提供することができる。本発明の顔料分散液は、カラーフィルター、油性インクジェットインク、紫外線硬化型インクジェットインク、その他塗料、グラビアインキ、コーティング剤などの着色剤として有用である。また、本発明の顔料分散液に用いる高分子分散剤は、難分散性の黒色顔料であるカーボンナノチューブ類やナノグラフェン類等のナノカーボン物質を有機溶媒中に安定して分散させることが可能である。このため、本発明によれば、顔料である上記のナノカーボン物質が高濃度に安定して分散された、黒色度及び漆黒性の高い顔料分散液を提供することもできる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態について説明するが、本発明は以下の実施の形態に限定されるものではない。なお、本明細書中の各種物性値は、特に断りのない限り、常温(25℃)における値である。
【0012】
<顔料分散液>
本発明の顔料分散液は、顔料、有機溶媒、及び高分子分散剤を含有する、いわゆる「油性」の顔料分散液である。そして、有機溶媒中に顔料を分散させるための高分子分散剤が、以下の(1)〜(4)の要件を満たすポリマーである。以下、本発明の顔料分散液の詳細について説明する。
(1)メタクリレート系モノマー単位を90質量%以上含む、ポリマー鎖A及びポリマー鎖Bを有するA−Bブロックコポリマーである。
(2)前記ポリマー鎖Aが、アミン価が0.5mgKOH/g以下、ゲルパーミエーションクロマトグラフにより測定されるポリスチレン換算の数平均分子量が3,000〜15,000のポリマーブロックである。
(3)前記ポリマー鎖Bが、下記一般式(1)で表される官能基を有するメタクリレート系モノマー単位(b)を含む、アミン価が0〜150mgKOH/gのポリマーブロックである。
(4)前記メタクリレート系モノマー単位(b)の含有量が、ポリマー全体を基準として、30〜80質量%である。
【0013】
(一般式(1)中、R、R、及びRは、相互に独立に、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、又はアリルメチル基を示し、X及びXは、相互に独立に、フッ素原子又は炭素数1〜8のフッ化アルキル基を示す)
【0014】
(高分子分散剤)
微粒子状、繊維状、鱗片状、又は棒状等の各種形状を有する顔料を有機溶媒(顔料分散液)中に分散させるための分散剤として機能する成分である高分子分散剤(顔料分散剤)は、特定の対アニオンを持った第4級アンモニウム塩基をその分子構造中に有するブロックコポリマーである。第4級アンモニウム塩基は、顔料の粒子表面との電気的作用等によって顔料と吸着する。これにより、顔料分散液中における微粒子状の顔料の分散安定性を高めることができるとともに、顔料分散液の粘度が経時的に変化しにくくなり、長期保存性が発揮される。また、高分子分散剤の分子構造中にアミノ基がさらに存在する場合、顔料の粒子表面のカルボキシ基、スルホン酸基、又はリン酸基等の酸性基とイオン結合するので、顔料と高分子分散剤との吸着性が向上し、顔料の分散安定性がさらに向上する。
【0015】
高分子分散剤として用いるポリマーは、メタクリレート系モノマー単位を90質量%以上含む、ポリマー鎖A及びポリマー鎖Bを有するA−Bブロックコポリマーである(要件(1))。A−Bブロックコポリマーは、その構造が的確に制御されたポリマーであり、リビング重合、なかでもリビングラジカル重合によって製造することができる。特に、開始化合物として有機ヨウ化物を用いるリビングラジカル重合の場合、末端成長基であるヨウ素原子が第3級の炭素原子に結合していることが好ましい。このため、A−Bブロックコポリマーは、メタクリレート系モノマー単位を90質量%以上含む。
【0016】
メタクリレート系モノマー単位は、例えば、メタクリレート系モノマーを重合することで形成される。メタクリレート系モノマー単位の含有量が多いと、A−Bブロックコポリマーのガラス転移温度が高くなり、耐熱性等の熱的性質が向上する。なかでも、A−Bブロックコポリマーは、メタクリレート系モノマー単位の含有量が100質量%であることが好ましい。
【0017】
メタクリレート系モノマーとしては、従来公知のメタクリレート系モノマーを用いることができる。メタクリレート系モノマーとしては、例えば、メタクリル酸;メチル、エチル、プロピル、ブチル、ヘキシル、2−エチルヘキシル、オクチル、デシル、ドデシル、トリデシル、ヘキサデシル、オクタデシル、イソステアリル、ベヘニル、シクロヘキシル、トリメチルシクロヘキシル、t−ブチルシクロヘキシル、ベンジル、メトキシエチル、ブトキシエチル、フェノキシエチル、ノニルフェノキシエチル、イソボルニル、ジシクロペンタニル、ジシクロペンテニル、ジシクロペンテニロキシエチル、グリシジル、2−ヒドロキシエチル、2−ヒドロキシプロピル、4−ヒドロキシブチル、ジメチルアミノエチル、ジエチルアミノエチル、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングコリールモノメチルエーテル、ポリプロピレングリコールモノメチルエーテル、ポリイプシロンカプロラクトン、ポリジメチルシロキサン等の置換基を有する単官能メタクリレートを挙げることができる。
【0018】
ポリマー鎖A(以下、単に「A鎖」とも記す)は、アミン価が0.5mgKOH/g以下、ゲルパーミエーションクロマトグラフ(GPC)により測定されるポリスチレン換算の数平均分子量が3,000〜15,000のポリマーブロックである(要件(2))。ポリマー鎖Aは有機溶媒に溶解しうるポリマーブロックであり、顔料を有機溶媒へ親和させるとともに、その立体反発や電気的反発によって有機溶媒中に分散した顔料の再凝集を抑制する機能を有する。
【0019】
ポリマー鎖Aのアミン価は0.5mgKOH/g以下であり、好ましくは0.1mgKOH/g以下、さらに好ましくは0mgKOH/gである。アミン価が0mgKOH/gである場合には、ポリマー鎖Aはアミノ基を実質的に有しないことを意味する。一方、ポリマー鎖B(以下、単に「B鎖」とも記す)は、アミノ基や第4級アンモニウム塩基を有する。これらのアミノ基や第4級アンモニウム塩基が、イオン結合、電気的作用、水素結合、π−πスタッキング、又は疎水性相互作用等によって顔料に親和又は結合することで、ポリマー鎖Bは顔料に吸着すると考えられる。しかし、ポリマー鎖Aが一定量を超えるアミノ基を有していると、ポリマー鎖Aも顔料に積極的に吸着しやすくなるので、分散性や保存安定性が低下する傾向にある。
【0020】
GPCにより測定されるポリマー鎖Aのポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は、3,000〜15,000であり、好ましくは4,000〜10,000である。A−Bブロックコポリマーを構成するポリマーブロックのうち、ポリマー鎖Bが顔料に吸着し、ポリマー鎖Aが有機溶媒に親和及び溶解する。これにより、顔料を有機溶媒中に分散させることができる。ポリマー鎖Aは、その立体反発等によって顔料同士の再凝集を抑制する機能を発揮しうる分子量のポリマーブロックであることを必要する。このため、ポリマー鎖Aの数平均分子量が3,000未満であると、立体反発等が不足し、分散安定性が不十分になる。一方、ポリマー鎖Aの数平均分子量が15,000超であると、分散液の粘度が過度に高くなる又は有機溶媒に溶解しにくくなる場合がある。
【0021】
ポリマー鎖Bは、下記一般式(1)で表される官能基を有するメタクリレート系モノマー単位(b)を含む、アミン価が0〜150mgKOH/gのポリマーブロックである(要件(3))。高分子分散剤(A−Bブロックコポリマー)中のポリマー鎖Bの含有量は、50〜80質量%であることが好ましい。
【0022】
(一般式(1)中、R、R、及びRは、相互に独立に、炭素数1〜18のアルキル基、アルケニル基、又はアリルメチル基を示し、X及びXは、相互に独立に、フッ素原子又は炭素数1〜8のフッ化アルキル基を示す)
【0023】
一般式(1)で表される官能基は、特定の対アニオンを含む第4級アンモニウム塩基である。この官能基はイオン性であって、電子的作用によって、顔料表面へ吸着する作用をする。この第4級アンモニウム塩基は水溶解性が低いとともに、有機溶媒、なかでも低〜中極性の有機溶媒に溶解しやすい。一般式(1)中、X及びXで表されるフッ化アルキル基の炭素数が8超であると、フッ化アルキル基(パーフルオロアルキル基)の撥水性が高くなりすぎるため、用いる有機溶媒の種類が制限される可能性がある。一般式(1)中のX及びXで表されるフッ化アルキル基の炭素数は、1〜4であることが好ましい。フッ化アルキル基の炭素数が1〜4であると、イオン性の第4級アンモニウム塩でありながら、低極性の有機溶媒、さらには非プロトン性の有機溶媒に溶解しやすくなる。また、このようなイオン性の第4級アンモニウム塩とすることで、電気的作用又はイオン的作用で顔料に吸着しやすくなり、顔料の分散性を向上させることができる。
【0024】
第4級アンモニウムカチオンの対アニオンとしては、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン、(フルオロスルホニル)(トリフルオロメチルスルホン)イミドアニオン、ビス(トリフルオロメチルスルホン)イミドアニオン、ビス(2,2,2−トリフルオロエチルスルホン)イミドアニオン、ビス(パーフルオロエチルスルホン)イミドアニオン、ビス(パーフルオロプロピルスルホン)イミドアニオン、ビス(パーフルオロブチルスルホン)イミドアニオン、ビス(パーフルオロオクチルスルホン)イミドアニオン、1,1,2,2,3,3−ヘキサフルオロプロパン−1,3−ジスルホンイミドアニオン等を挙げることができる。なかでも、有機溶媒への溶解性や入手のしやすさ等の観点から、炭素数がさほど多くないパーフルオロアルキル基を有するアニオンが好ましく、ビス(トリフルオロメチルスルホン)イミドアニオン、ビス(パーフルオロブチルスルホン)イミドアニオンがさらに好ましい。
【0025】
ポリマー鎖Bは、一般式(1)で表される官能基を有するメタクリレート系モノマーを構成成分とするポリマーブロックである。一般式(1)で表される官能基は、任意の有機基に結合している。上記のメタクリレート系モノマーは、例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレートやジエチルアミノエチルメタクリレート等のアミノ基含有メタクリレートのアミノ基に4級化剤を反応させ、アミノ基を第4級アンモニウム塩基とすることで形成される。例えば、ジメチルアミノエチルメタクリレートに塩化ベンジルを反応させることで、ベンジルジメチル−2−メタクロイルオキシエチルアンモニウムの塩化物塩とすることができる。
【0026】
第4級アンモニウム塩基は、上記以外の方法によっても形成することができる。具体的には、以下に示す(i)〜(iii)の方法等を挙げることができる。
(i)グリシジル基を有するメタクリレートやイソシアナトエチルメタクリレート等に、1級又は2級アミノ基と、第3級アミノ基とを有する化合物を反応させて第3級アミノ基を導入した後、この第3級アミノ基を第4級アンモニウム塩基とする。
(ii)グリシジル基を有するメタクリレートに第3級アミンを反応させて第4級アンモニウム塩基とする。
(iii)3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のハロゲン化アルキル基を有するメタクリレートに第3級アミンを反応させて第4級アンモニウム塩基とする。
【0027】
一般式(1)中、「−N(−R)(−R)(−R)」で表される第4級アンモニウムカチオンとしては、トリメチルアンモニウムカチオン、ブチルジメチルアンモニウムカチオン、ジエチルメチルアンモニウムカチオン、ブチルジエチルアンモニウムカチオン、ジプロピルメチルアンモニウムカチオン、ジブチルメチルアンモニウムカチオン、ベンジルジメチルアンモニウムカチオン、ベンジルジエチルアンモニウムカチオン、ベンジルジプロピルアンモニウムカチオン、ベンジルジブチルアンモニウムカチオン、ジメチル(ナフチルメチル)アンモニウムカチオン、ジメチル(アントラセニルメチル)アンモニウムカチオン、ジメチル(ピレンメチル)アンモニウムカチオン等を挙げることができる。
【0028】
一般式(1)で表される官能基を有するメタクリレート系モノマー単位(b)の含有量は、ポリマー全体を基準として、30〜80質量%である(要件(4))。一般式(1)で表される官能基を有するメタクリレート系モノマー単位(b)の含有量(以下、単に「単位(b)の含有量」とも記す)を上記の範囲とすることで、低極性の有機溶媒及び非プロトン性の有機溶媒に溶解しやすくなるとともに、顔料に吸着しやすくなり、顔料の分散性を向上させることができる。なお、単位(b)の含有量は、ポリマー全体を基準として、50〜70質量%であることがさらに好ましい。
【0029】
ポリマー鎖Bは、メタクリレート系モノマー単位(b)のみで実質的に構成されていてもよく、メタクリレート系モノマー単位(b)以外の構成単位(その他の構成単位)をさらに有していてもよい。その他の構成単位としては、前述のメタクリレート系モノマーに由来する構成単位等を挙げることができる。なかでも、ポリマー鎖Bは、アミノ基を有するメタクリレート系モノマーに由来する構成単位をさらに含むことが好ましい。ポリマー鎖Bにアミノ基が導入されていると、顔料との吸着性をさらに高めることができ、顔料の分散安定性をより向上させることができる。特に、その表面にカルボキシ基、スルホン酸基、又はリン酸基等の酸性基を有する顔料と併用する場合、これらの酸性基とイオン結合するので、顔料と高分子分散剤との吸着性が向上するとともに、顔料からのポリマー(高分子分散剤)の脱離が抑制されるので、顔料の分散安定性をさらに向上させることができる。
【0030】
ポリマー鎖Bのアミン価は、0〜150mgKOH/gであり、好ましくは100mgKOH/g以下、さらに好ましくは50mgKOH/g以下である。ポリマー鎖Bのアミン価が150mgKOH/g超であると、アミノ基の量が多すぎるので、ポリマー鎖Bが親水性になりやすい。また、ポリマーが隣接する顔料の粒子にまたがって吸着しやすくなるので、凝集剤として機能してしまうことがあるとともに、着色等の問題が生ずる場合がある。
【0031】
ポリマー鎖Bの分子量は、ポリマー鎖B中の第4級アンモニウム塩基の含有量や、ポリマー鎖Aの分子量等を勘案して設計すればよい。具体的には、GPCにより測定されるポリスチレン換算のポリマー鎖Bの数平均分子量Mnは、500〜15,000であることが好ましく、1,000〜10,000であることがさらに好ましい。
【0032】
高分子分散剤として用いるA−Bブロックコポリマーは、従来公知の方法にしたがって製造することができる。なかでも、リビングアニオン重合、リビングカチオン重合、リビングラジカル重合によって製造することができ、条件、材料、及び装置等の観点から、リビングラジカル重合によって製造することが好ましい。リビングラジカル重合には、例えば、原子移動ラジカル重合(ATRP法)、ニトロキサイドを介したラジカル重合(NMP法)、可逆的付加解裂連鎖移動重合(RAFT法)、有機テルル系リビングラジカル重合(TERP法)、可逆的移動触媒重合(RTCP法)、可逆的触媒媒介重合(RCMP法)等がある。なかでも、有機化合物を触媒として用いるとともに、有機ヨウ化物を開始化合物として用いるRTCP法やRCMP法が好ましい。これらの方法は、比較的安全な市販の化合物を使用するが、重金属や特殊な化合物を使用しない方法であることから、コスト面で有利であるとともに、精製や処理の簡便さの面でも有利である。さらに、末端成長基であるヨウ素原子が第3級の炭素原子に結合しているため、特定のブロック構造を有するA−Bブロックコポリマーを一般的な設備で精度よく容易に製造することができるために好ましい。
【0033】
無溶剤、溶液重合、及び乳化重合等のいずれの重合形式によってA−Bブロックコポリマーを製造してもよい。なかでも、溶液重合が好ましい。溶液重合で用いる溶剤は、顔料分散液に用いる有機溶媒と同一であることが好ましい。重合後のA−Bブロックコポリマー溶液の状態で、A−Bブロックコポリマーを取り出すことなく、そのまま顔料分散液に用いることができるためである。上記のRTCP法やRCMP法は、顔料分散液に用いる有機溶媒中で実施することができる。
【0034】
ポリマー鎖Aとポリマー鎖Bのいずれのポリマーブロックを先に重合してもよいが、先にポリマー鎖Aを重合した後、後でポリマー鎖Bを重合することが好ましい。先にポリマー鎖Bを重合すると、重合率が100%未満であった場合に、残存したモノマーに由来する構成単位が、後で重合するポリマー鎖Aに導入されてしまう可能性があるためである。第4級アンモニウム塩基を有するメタクリレートを重合することで、ポリマー鎖Bに第4級アンモニウム塩基を導入することができる。また、アミノ基を有するメタクリレートを重合した後、4級化剤を反応させることでも、ポリマー鎖Bに第4級アンモニウム塩基を導入することができる。さらに、対アニオンがハロゲン化物イオンである第4級アンモニウム塩を形成しておき、特定の対アニオンを持った金属塩を添加してイオン交換することでも、ポリマー鎖Bに第4級アンモニウム塩基を導入することができる。
【0035】
(顔料)
顔料としては、従来公知の無機顔料や有機顔料を用いることができる。無機顔料としては、サーマルブラック、ケッチェンブラック、アセチレンブラック等のカーボンブラックの他、酸化チタン、酸化亜鉛、弁柄、オーカー、複合酸化物顔料等を挙げることができる。なかでも、塩基性基を有する高分子分散剤を用いることから、酸性の表面を有する顔料を用いることが好ましい。例えば、カーボンブラックとしては、いわゆる酸性カーボンブラックを用いることが好ましい。酸化チタンは、シリカや酸性のシランカップリング剤で処理し、表面を酸性にしておくことが好ましい。有機顔料としては、キナクリドン系顔料、アンスラキノン系顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリレン系顔料、フタロシアニンブルー系顔料、フタロシアニングリーン系顔料、イソインドリノン系顔料、インジゴ・チオインジゴ顔料、ジオキサジン系顔料、キノフタロン顔料、ニッケルアゾ顔料、不溶性アゾ系顔料、溶性アゾ系顔料、高分子量アゾ系顔料、有機黒色顔料等を挙げることができる。また、カーボンナノチューブ類、グラファイト、ナノグラフェン類などの黒色の着色剤として使用可能なナノカーボン物質等を挙げることができる。
【0036】
インクジェットインク等の画像記録用の顔料としては、カラーインデックスナンバー(C.I.)ピグメントブルー−15:3、15:4、C.I.ピグメントレッド−122、269、C.I.ピグメントバイオレット−19、C.I.ピグメントイエロー−74、155、180、183、C.I.ピグメントグリーン−7、36、58、C.I.ピグメントオレンジ−43、C.I.ピグメントブラック−7、C.I.ピグメントホワイト−6等を挙げることができる。これらの顔料の平均一次粒子径は、350nm未満であることが好ましい。
【0037】
C.I.ピグメントブルー−15:3、15:4、C.I.ピグメントレッド−122、269、C.I.ピグメントバイオレット−19、C.I.ピグメントイエロー−74、155、180、183、C.I.ピグメントグリーン−7、36、58、C.I.ピグメントオレンジ−43、及びC.I.ピグメントブラック−7の平均一次粒子径は、150nm未満であることが好ましい。また、C.I.ピグメントホワイト−6の平均一次粒子径は、300nm未満であることが好ましい。インクジェット記録装置の記録ヘッドのつまりや、記録される画像の鮮鋭性等を考慮すると、顔料の粒子径は小さい方が好ましい。カップリング剤や界面活性剤等の表面処理剤、シナジスト、樹脂等で表面処理又はカプセル化された、いわゆる処理顔料を用いることもできる。
【0038】
カラーフィルターなどの画像表示用の顔料としては、有機顔料やブラックマトリックス用の無機顔料を用いることが好ましい。赤色顔料としては、カラーインデックス(以下、C.I.)ピグメントレッド(PR)56、58、122、166、168、176、177、178、224、242、254、255等を挙げることができる。緑色顔料としては、C.I.ピグメントグリーン(PG)7、36、58、ポリ(14〜16)ブロム銅フタロシアニン、ポリ(12〜15)ブロム化−ポリ(4〜1)クロル化銅フタロシアニン等を挙げることができる。青色顔料としては、C.I.ピグメントブルー15:1、15:3、15:6、60、80等を挙げることができる。
【0039】
上記の顔料に対する補色顔料又は多色型の画素用顔料としては、以下のものを挙げることができる。黄色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー(PY)12、13、14、17、24、55、60、74、83、90、93、126、128、138、139、150、154、155、180、185、216、219、C.I.ピグメントバイオレット(PV)19、23等を挙げることができる。また、ブラックマトリックス用の黒色顔料としては、C.I.ピグメントブラック(PBK)6、7、11、26、銅・マンガン・鉄系複合酸化物等を挙げることができる。これらの顔料の表面は、シナジストと呼ばれる色素誘導体(表面改質剤)や界面活性剤等で処理されていてもよい。
【0040】
カーボンブラック及び有機顔料の顔料分散液中における数平均粒子径は、10〜200nmであることが好ましく、20〜150nmであることがさらに好ましい。酸化チタン等の無機顔料の顔料分散液中における数平均粒子径は、50〜300nmであることが好ましく、100〜250nmであることがさらに好ましい。顔料の数平均粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)を使用して観察し、測定及び算出することができる。このように微粒子化された顔料を含有する顔料分散液は、高発色性、高画質、高グロス、高印画性などを与える着色剤として有用である。
【0041】
また、前述の高分子分散剤を用いれば、難分散性の黒色顔料であるナノカーボン物質を有機溶媒中に安定して分散させることができる。ナノカーボン物質としては、カーボンナノチューブ、グラファイト、グラフェン、カーボンナノホーン、カーボンナノリボン、カーボンフラーレン、炭素系量子ドット、ナノダイヤモンド等を挙げることができる。なかでも、カーボンナノチューブ類及びナノグラフェン類の少なくともいずれかが、黒色性に優れているために好ましい。
【0042】
カーボンナノチューブ類は、円筒形状に丸まったグラフェンシートで構成されるナノカーボン物質である。カーボンナノチューブ類としては、1層の円筒形状のグラフェンシートからなる単層カーボンナノチューブ(SWNT)や、複数の円筒形状のグラフェンシートが同心円状に積層した多層カーボンナノチューブ(MWNT)等がある。また、ナノグラフェン類は、ナノサイズのグラフェンシートそのものであり、1枚のグラフェンシートや、複数枚のグラフェンシートが積層した積層シート等がある。ナノカーボン物質の形状、大きさ、及び製造方法等については特に限定されない。ナノカーボン物質には、白金やパラジウム等の金属又は金属塩がドープされていてもよい。
【0043】
顔料は、その表面にカルボキシ基、スルホン酸基、及びリン酸基の少なくともいずれかの酸性基を有する顔料であることが好ましい。高分子分散剤が、その分子構造中にアミノ基を有するA−Bブロックコポリマーである場合、顔料の粒子表面の酸性基がアミノ基とイオン結合することで、高分子分散剤が顔料に吸着しやすくなる。これにより、高分子分散剤と顔料との親和性が向上するので、顔料からの高分子分散剤の脱離が抑制され、顔料の分散安定性がさらに向上するとともに、顔料の再凝集をより抑制することができる。
【0044】
酸性基は、従来公知の方法により顔料の表面に導入することができる。具体的には、顔料の表面を(i)酸化処理する;(ii)酸性基を有するシランカップリング剤などの処理剤で表面処理する;(iii)酸性基を有する芳香族ジアゾニウム塩等で表面カップリング処理する;(iv)酸性基を有するシナジスト(色素誘導体)で表面処理する;等の方法によって顔料の表面に酸性基を導入することができる。
【0045】
顔料を表面処理する(顔料と併用する)シナジストとしては、カルボキシ基、スルホン酸基、及びリン酸基の少なくともいずれかの酸性基を有する、色素骨格を持った化合物を用いることができる。なかでも、スルホン酸基を有するシナジストは、前述の高分子分散剤とイオン結合して吸着しやすいために好ましい。
【0046】
(有機溶媒)
有機溶媒としては、従来公知の有機溶媒を用いることができる。なお、有機溶媒には少量の水が含まれていてもよい。有機溶媒としては、ヘキサン、トルエン、キシレン等の炭化水素系溶媒;メタノール、エタノール、イソプロパノール、ブタノール、ドデカノール等のアルコール系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、イソブチルメチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、酢酸ブチル、酢酸アミル、コハク酸ジメチル、アジピン酸ジメチル、乳酸メチル、乳酸ジメチル等のエステル系溶媒;ジプロピルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒;N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、ピロリドン、N−メチルピロリドン、3−メトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド、3−ブトキシ−N,N−ジメチルプロパンアミド等のアミド系溶媒;テトラメチルウレア、ジメチルイミダゾリジノン等のウレア系溶媒;ジメチルスルホキシド等のスルホキシド溶媒;エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、エチレングリコールメチルエーテル、エチレングリコールブチルエーテル、ジエチレングリコールメチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、トリエチレングリコールモノブチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル等のグリコールモノエーテル系溶媒;エチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジプロピレングリコールジメチルエーテル等のグリコールジエーテル系溶媒;エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコールエーテルモノエーテルエステル系溶媒;等を挙げることができる。
【0047】
また、(メタ)アクリル系モノマー、ビニルエーテル系モノマー、エポキシ化合物、オキセタン化合物等の反応性モノマーを有機溶媒として用いることができる。反応性モノマーを有機溶媒として用いることで、紫外線硬化性又は電子線硬化性のインクやコーティング剤に適用可能な分散液とすることができる。
【0048】
有機溶媒としては、非プロトン性溶媒を用いることが好ましい。さらには、有機溶媒は、非プロトン性の低極性溶媒及び非プロトン性の非極性溶媒を含有するが、プロトン性溶媒を実質的に含有しないことが好ましい。非プロトン性溶媒は、プロトン(H)化する水素原子を有しない溶媒である。また、非プロトン性溶媒の極性は、20〜25℃の温度条件下における比誘電率で定義することができる。非プロトン性溶媒の比誘電率は20以下であることが好ましく、10以下であることがさらに好ましい。その比誘電率が20以下の非プロトン性溶媒としては、酢酸エチル(6.0)、酢酸ブチル(5.0)、シクロヘキサノン(18.3)、メチルエチルケトン(18.5)、テトラヒドロフラン(7.5)、トルエン(2.4)、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(8.0)、3−メトキシ−3−メチル−1−ブタノール(13)、アクリル酸ブチル(5.1)等を挙げることができる(括弧内の数値は25℃における比誘電率を示す)。非プロトン性溶媒の比誘電率は、実測値であってもよいし、メーカーのカタログやインフォメーション、溶剤ポケットブックなどの文献、化学便覧、化学大辞典等に記載されている値であってもよい。
【0049】
非プロトン性溶媒、なかでも非プロトン性の低極性溶媒及び非プロトン性の非極性溶媒には、イオン性基である第4級アンモニウム塩基を有する一般的なポリマーは溶解しにくい。このため、第4級アンモニウム塩基を有する一般的なポリマーを溶解させるには、通常、プロトン性の極性溶媒を用いる。これに対して、本発明の顔料分散液に高分子分散剤として用いるポリマーは、特定の対アニオンを持った第4級アンモニウム塩基を有するため、非プロトン性溶媒にも溶解しやすく、顔料を安定した状態で分散させることができる。さらに、非プロトン性溶媒を用いることで、インクや塗料などの乾燥性、吸湿性、作業性等を向上させることができるとともに、他の反応性物質との混合が容易になる等の利点がある。
【0050】
(その他の成分)
顔料分散液には、従来公知の添加剤や樹脂等の成分(その他の成分)をさらに含有させることができる。添加剤としては、染料、樹脂、光安定剤、紫外線吸収剤、レベリング剤、消泡剤、光重合開始剤等を挙げることができる。
【0051】
樹脂としては、感光性又は非感光性の樹脂ワニス等を用いることができる。感光性の樹脂ワニスとしては、感光性環化ゴム系樹脂、感光性フェノール系樹脂、感光性ポリアクリレート系樹脂、感光性ポリアミド系樹脂、感光性ポリイミド系樹脂、不飽和ポリエステル系樹脂、ポリエステルアクリレート系樹脂、ポリエポキシアクリレート系樹脂、ポリウレタンアクリレート系樹脂、ポリエーテルアクリレート系樹脂、ポリオールアクリレート系樹脂等のワニスを挙げることができる。さらに、これらのワニスに反応性希釈剤としてのモノマーが添加されたワニスを用いることもできる。
【0052】
非感光性の樹脂ワニスとしては、セルロースアセテート系樹脂、ニトロセルロース系樹脂、スチレン系(共)重合体、ポリビニルブチラール系樹脂、アミノアルキッド系樹脂、ポリエステル系樹脂、アミノ樹脂変性ポリエステル系樹脂、ポリウレタン系樹脂、アクリルポリオールウレタン系樹脂、可溶性ポリアミド系樹脂、可溶性ポリイミド系樹脂、可溶性ポリアミドイミド系樹脂、可溶性ポリエステルイミド系樹脂、ヒドロキシエチルセルロース、スチレン−マレイン酸エステル系共重合体の水溶性塩、(メタ)アクリル酸エステル系(共)重合体の水溶性塩、水溶性アミノアルキッド系樹脂、水溶性アミノポリエステル系樹脂、水溶性ポリアミド系樹脂等のワニスを挙げることができる。
【0053】
顔料分散液は、例えば、上述の各成分を配合し、高分子分散剤によって有機溶媒中に顔料を分散させることで調製することができる。なお、顔料原体を顔料化する際に高分子分散剤を添加して、又は顔料を微細化(微粒子化)する際に高分子分散剤を添加して、樹脂処理顔料を調製してもよい。顔料分散液中の顔料の含有量は、分散液全体を基準として、0.1〜70質量%であることが好ましく、0.5〜30質量%であることがさらに好ましく、5〜20質量%であることが特に好ましい。顔料の含有量が0.5質量%未満であると、着色性が不十分になることがある。一方、顔料の含有量が30質量%超であると、顔料分散液の粘度が過度に高くなる場合がある。また、顔料分散液中の高分子分散剤の含有量は、顔料100質量部に対して、5〜100質量部であることが好ましく、10〜200質量部であることがさらに好ましい。
【0054】
高分子分散剤、顔料、及び有機溶媒を混合し、必要に応じて各種の添加剤等をさらに混合した後、顔料が所望とする粒子径の微粒子となるまで分散機等を使用して分散処理することで、顔料分散液を得ることができる。また、高分子分散剤、顔料、及び有機溶媒を混合し、必要に応じて予備混合した後、さらに分散機等を使用して分散処理することでも、顔料分散液を得ることができる。分散機としては、従来公知の各種分散機を使用することができる。分散機としては、ニーダー、アトライター、ボールミル、ガラスやジルコン等を使用したサンドミル、横型メディア分散機、コロイドミル等を挙げることができる。得られる顔料分散液の信頼性を高めるために、分散処理後に、遠心分離機、超遠心分離機、又はろ過機を使用してさらに処理して、僅かに存在する粗大粒子を除去することが好ましい。
【0055】
本発明の顔料分散液は、有機溶媒中に顔料を分散させた、いわゆる「油性」の分散液であることから、従来のインクや塗料等に配合される着色剤として用いることができる。さらに、油性インクジェットインク用の着色剤、紫外線硬化型インク用の着色剤、紫外線硬化型インクジェットインク用の着色剤、カラーフィルター用ディスプレイ向け部材用の着色剤、懸濁又は乳化重合法トナー用の着色剤等に用いることもできる。また、ナノカーボン物質を顔料として用いた顔料分散液は、例えば、車、楽器、意匠性ディスプレイ等の漆黒性が要求される用途の着色剤として有用である。
【実施例】
【0056】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は、その要旨を超えない限り、下記の実施例によって何ら限定されるものではない。成分量に関して「部」及び「%」と記載しているものは特に断らない限り質量基準である。
【0057】
<第4級アンモニウム塩基含有ポリマー(高分子分散剤)の合成>
(合成例1)
撹拌機、逆流コンデンサー、温度計、及び窒素導入管をセパラブルフラスコに取り付けた反応装置を用意した。この反応装置に、ジエチレングリコールモノブチルエーテル(BDG)438部、ヨウ素4.1部、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(商品名「V−65」、富士フィルム和光純薬社製)(V−65)11.9部、ジフェニルメタン(DPM)0.7部、メタクリル酸メチル(MMA)80部、メタクリル酸ブチル(BMA)80部、及びメタクリル酸2−エチルへキシル(EHMA)80部を入れ、窒素をバブリングしながら撹拌し、60℃に加温して4.5時間重合し、ポリマー(A鎖)を合成した。反応溶液の一部をサンプリングして測定した固形分は36.8%であり、それに基づいて算出した重合率は約100%であった。テトラヒドロフラン(THF)を展開溶媒とするGPCにより測定した、A鎖のポリスチレン換算の数平均分子量(Mn)は4,500、分散度(PDI)は1.22であった。Mnは、GPCの示差屈折率検出器により測定した。
【0058】
次いで、V−65 5.4部、メタクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチル(DMAEMA)180部を添加し、60℃に加温して4時間重合した。これによりポリマー(B鎖)を形成し、ブロックコポリマーであるポリマーBP−1を含有するポリマー溶液を得た。反応溶液の一部をサンプリングして測定した固形分は49.9%であり、それに基づいて算出した重合率は約100%であった。ポリマーBP−1のMnは7,700、PDIは1.26、アミン価(実測)は153.2mgKOH/gであった。ポリマーのアミン価(実測)は、試料をトルエン及び2−プロパノールで希釈した後、0.1mol/L 塩酸2−プロパノール溶液を滴定溶液とし、電位差自動滴定装置を使用して測定した。
【0059】
ポリマーBP−1を室温まで冷却した後、塩化ベンジル(BzCl)144.9部及びBDG144.9部の混合溶液を30分間かけて滴下した。80℃に昇温して5時間反応させ、DMAEMAに由来するアミノ基を第4級アンモニウム塩化して、固形分49.8%であるポリマーPP−1(プレポリマー)の溶液を得た。ポリマーPP−1のアミン価(実測)は約0mgKOH/gであり、ポリマーBP−1中のすべてのアミノ基が第4級アンモニウム塩基となったことを確認した。ポリマーPP−1中の第4級アンモニウムカチオンの対アニオンは、塩化物イオン(Cl)である。
【0060】
撹拌機を取り付けたバットにポリマーPP−1 276.4部及び水2487.6部を入れて撹拌し、透明な溶液を得た。ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(TFSILi)82.2部及び水739.8部の混合液を滴下したところ、系が白濁して析出物が生成した。塩交換によって生じた、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドアニオン(TFSI)を対イオンとする第4級アンモニウム塩の疎水性が高いため、析出物が生成したと推測される。析出物を吸引ろ過した後、水で洗浄及び乾燥して、白色固体である第4級アンモニウム塩基含有ポリマー(ポリマーSIB−1)を得た。ポリマーSIB−1のアミン価は0mgKOH/gであるので、B鎖のアミン価も0mgKOH/gである。
【0061】
(合成例2及び3)
表1に示す種類及び量(単位:部)のモノマー等の原料を用いたこと以外は、前述の合成例1と同様にして、第4級アンモニウム塩基含有ポリマーであるポリマーSIB−2及びSIB−3を得た。表1中の略号の意味は以下に示す通りである。
・BzMA:ベンジルメタクリレート
・PME200:ポリ(n≒4)エチレングリコールモノメチルエーテルメタクリレート
・DMQ:DMAEMAにBzClを反応させて生成した第4級アンモニウム塩
・DMTFSI:DMQの塩化物イオンがTFSIに交換された第4級アンモニウム塩
【0062】
合成例3で得たポリマーSIB−3のB鎖のアミン価(計算)は、DMAEMAの分子量を157.1、KOHの分子量を56.1とし、以下の要領で算出した。すなわち、B鎖はDMAEMA及びDMTFSIで構成されるため、B鎖のDMAEMA含有量は「23.9/(23.9+40.1)×100=0.3734」であり、B鎖のアミン価(計算)は、「(0.3734/157.1)×56.1=133.3mgKOH/g」となる。
【0063】
【0064】
(合成例4)
撹拌機を取り付けたバットにポリマーPP−3 225部及び水2137.5部を入れて撹拌し、透明な溶液(樹脂:約5%)を得た。ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム(NFSILi)74.7部及び水672.3部の混合液を滴下したところ、系が白濁して析出物が生成した。塩交換によって生じた、ビス(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドアニオン(NFSI)を対イオンとする第4級アンモニウム塩の疎水性が高いため、析出物が生成したと推測される。析出物を吸引ろ過した後、水で洗浄及び乾燥して、白色固体である第4級アンモニウム塩基含有ポリマー(ポリマーSIB−4)を得た。
【0065】
(合成例5)
表2に示す種類及び量(単位:部)の原料等を用いたこと以外は、前述の合成例4と同様にして、ビス(フルオロスルホニル)イミドアニオン(FSI)を対イオンとする第4級アンモニウム塩基含有ポリマー(ポリマーSIB−5)を得た。表2中の略号の意味は以下に示す通りである。
・FSILi:ビス(フルオロスルホニル)イミドリチウム
・DMNFSI:DMQの塩化物イオンがNFSIに交換された第4級アンモニウム塩
・DMFSI:DMQの塩化物イオンがFSIに交換された第4級アンモニウム塩
【0066】
【0067】
(比較合成例1及び2)
表3に示す種類及び量(単位:部)の原料等を用いたこと以外は、前述の合成例4と同様にして、テトラフルオロホウ酸アニオン(BF)及びヘキサフルオロリン酸アニオン(PF)をそれぞれ対イオンとする第4級アンモニウム塩基含有ポリマー(ポリマーHB−1及びHB−2)を得た。表3中の略号の意味は以下に示す通りである。
・NaBF:テトラフルオロホウ酸ナトリウム
・NaPF:ヘキサフルオロリン酸ナトリウム
・DMBF:DMQの塩化物イオンがテトラフルオロホウ酸に交換された第4級アンモニウム塩
・DMPF:DMQの塩化物イオンがヘキサフルオロリン酸に交換された第4級アンモニウム塩
【0068】
【0069】
合成例1〜5、比較合成例1及び2で得た第4級アンモニウム塩基含有ポリマーの物性及び各種溶剤・アクリルモノマーに対する溶解性を表4に示す。表4中の略号の意味は以下に示す通りである。
・MEK:メチルエチルケトン
・THF:テトラヒドロフラン
・PGMAc:プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート
・PEA:フェニルエチルアクリレート
・BzA:ベンジルアクリレート
【0070】
また、表4中の「溶解性」の評価基準は以下に示す通りである。
○:可溶(透明溶液)
△:半透明溶液
×:不溶(沈殿)
【0071】
【0072】
表4に示すように、第4級アンモニウムカチオンの対アニオンがBFやPFであるポリマーHB−1及びHB−2は、各種の有機溶媒等に溶解しにくい。このため、ポリマーHB−1及びHB−2を用いても、これらの有機溶媒中で顔料やナノカーボン類を分散させるのは実質的に不可能であることが分かる。
【0073】
<顔料分散液の調製(1)>
(実施例1〜3)
(a)顔料の微細化処理
カラーフィルター用の顔料として、PR254、PG58、及びPB15−6を用意した。加圧蓋を装着したニーダー(モリヤマ社製加圧ニーダー)に、顔料100部、塩化ナトリウム400部、及びジエチレングリコール130部を入れた。ニーダー内に均一に湿潤された塊ができるまで予備混合した後、加圧蓋を閉じて、圧力6kg/cmで内容物を押さえ込みながら7時間混練及び摩砕処理して摩砕物を得た。得られた摩砕物を2%硫酸3,000部に投入し、1時間撹拌した。ろ過して塩化ナトリウム及びジエチレングリコールを除去した後、十分水洗し、次いで、乾燥及び粉砕して各顔料粉末を得た。透過型電子顕微鏡(TEM)で観察して測定及び算出した顔料粉末の数平均粒子径は、いずれも約30nmであった。
【0074】
(b)高分子分散剤溶液の調製
ポリマーSIB−1〜3をそれぞれ50部及びPGMAc116.7部をビーカーに入れた。さらに撹拌子を入れ、マグネチックスターラーを使用してポリマーが完全に溶解するまで撹拌して、高分子分散剤溶液SIB−1S、SIB−2S、及びSIB−3Sを得た。得られた高分子分散剤溶液の固形分は、それぞれ、30.0%(SIB−1S)、29.9%(SIB−2S)、及び29.9%(SIB−3S)であった。
【0075】
(c)顔料分散液の調製
表5の上段に示す種類及び量(単位:部)の各成分を混合し、ディゾルバーを用いて2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理し、顔料分散液を調製した。表5中、「シナジスト1」は下記式(I)で表される化合物(色素誘導体)であり、「シナジスト2」は下記式(II)で表される化合物であり、「シナジスト3」は下記式(III)で表される化合物である。表5中の「アクリル樹脂」としては、モノマー組成がBzMA/MAA=80/20(質量比)、Mn5,500、PDI2.02のポリマーを用いた。なお、ポリマーのMnは、固形分30%のPGMAc溶液を用いて測定した。
【0076】
【0077】
(d)顔料分散液の評価
顔料分散液中の顔料の数平均粒子径(nm)、顔料分散液の初期の粘度(mPa・s)、及び45℃で3日間保存した後の顔料分散液の粘度(保存後の粘度;mPa・s)の測定結果を表5の下段に示す。顔料の数平均粒子径は、動的光散乱式の粒子径分布測定装置を使用して測定した。顔料分散液の粘度は、E型粘度計を使用し、60rpm、25℃の条件で測定した。
【0078】
【0079】
<カラーフィルター用レジストへの応用>
(応用例1〜3)
(a)カラーフィルター用レジストインクの調製
表6に示す種類及び量(単位:部)の各成分を配合し、混合機を使用して十分に混合して、各色のカラーフィルター用レジストインクを得た。表6中の「感光性アクリル樹脂ワニス」は、BzMA/MAA共重合物にメタクリル酸グリシジルを反応させて得られたアクリル樹脂(Mn6,100、PT14,400、PDI2.39、酸価111mgKOH/g)を含有するワニスである。表6中の略号の意味は以下に示す通りである。
・TMPTA:トリメチロールプロパントリアクリレート
・HEMPA:2−ヒドロキシエチル2−メチルプロピオン酸
・DEAP:2,2−ジエトキシアセトフェノン
【0080】
【0081】
(b)カラーフィルター用レジストインクの評価
シランカップリング剤で処理したガラス基板をスピンコーターにセットした。各色のレジストインクを300rpm、5秒間の条件でガラス基板上にスピンコートした。80℃で10分間プリベークした後、超高圧水銀灯を用いて100mJ/cmの光量で露光し、各色のガラス基板(赤色ガラス基板−1、緑色ガラス基板−1、及び青色ガラス基板−1)を製造した。
【0082】
得られた各色のガラス基板は、いずれも優れた分光カーブ特性を有するとともに、耐光性や耐熱性等の堅牢性に優れていた。また、いずれのガラス基板も、光透過性やコントラスト比等の光学特性に優れていた。
【0083】
<顔料分散液の調製(2)>
(実施例4〜8)
(a)高分子分散剤溶液の調製
ポリマーSIB−4及びSIB−5をそれぞれ50部、並びにPEA116.7部をビーカーに入れた。さらに撹拌子を入れ、マグネチックスターラーを使用してポリマーが完全に溶解するまで撹拌して、高分子分散剤溶液SIB−4S及びSIB−5Sを得た。得られた高分子分散剤溶液の固形分は、それぞれ、29.9%(SIB−4S)及び30.0%(SIB−5S)であった。
【0084】
(b)顔料分散液の調製
表7の上段に示す種類及び量(単位:部)の各成分を混合し、ディゾルバーを用いて2時間撹拌した。顔料の塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理し、顔料分散液を調製した。表7中、「シナジスト4」は下記式(IV)で表される化合物(色素誘導体)である。表7中、「PY−150」としては、商品名「レバスクリンエロー」(ランクセス社製)を用いた。また、「PR−122」及び「PB−15:4」としては、大日精化工業社製の顔料を用いた。さらに、「カーボンブラック」としては、商品名「MB−1000」(三菱化学社製)を用い、「酸化チタン」としては、商品名「JR−405」(テイカ社製)を用いた。
【0085】
【0086】
(c)顔料分散液の評価
初期の顔料分散液中の顔料の数平均粒子径(nm)、70℃で1週間保存した後の顔料分散液中の顔料の数平均粒子径(nm)、顔料分散液の初期の粘度(mPa・s)、及び70℃で1週間保存した後の顔料分散液の粘度(mPa・s)の測定結果を表7の下段に示す。
【0087】
【0088】
表7に示すように、実施例4〜8の各色の顔料分散液は、顔料が高度に分散されているとともに、保存安定性も高いことから、紫外線硬化型インク用の着色剤として好適である。なかでも、顔料がほとんど凝集せずに微粒子の状態で安定して長期間分散していることから、吐出安定性や高速印字性が要求される紫外線硬化型インクジェットインク用の着色剤として特に好適である。
【0089】
<顔料分散液の調製(3)>
(実施例9〜11)
(a)高分子分散剤溶液の調製
ポリマーSIB−2〜4をそれぞれ50部及び3−メトキシ−3−メチル−1−ブチルアセテート(商品名「ソルフィットAC」、クラレ社製)116.7部をビーカーに入れた。さらに撹拌子を入れ、マグネチックスターラーを使用してポリマーが完全に溶解するまで撹拌して、高分子分散剤溶液SIB−2A、SIB−3A、及びSIB−4Aを得た。得られた高分子分散剤溶液の固形分は、それぞれ、29.8%(SIB−2A)、29.8%(SIB−3A)、及び30.1%(SIB−4A)であった。
【0090】
(b)顔料分散液(ナノカーボン分散液)の調製
表8の上段に示す種類及び量(単位:部)の各成分を混合し、ディゾルバーを用いて2時間撹拌した。ナノカーボンの塊がなくなったことを確認した後、横型メディア分散機を使用して分散処理し、ナノカーボン分散液を調製した。表8中、「グラフェン」としては、商品名「N006−P」(石原ケミカル社製)を用いた。また、「グラファイト」としては、商品名「xGnP−M−5」(XGサイエンス社製)を用いた。さらに、「CNT」としては、商品名「AMC」(宇部興産社製)を用いた。
【0091】
(c)顔料分散液(ナノカーボン分散液)の評価
顔料分散液の初期の粘度(mPa・s)、及び70℃で1週間保存した後の顔料分散液の粘度(mPa・s)の測定結果を表8の下段に示す。
【0092】
【産業上の利用可能性】
【0093】
本発明の顔料分散液は、カラーフィルターなどの画像表示材料用の着色剤や、インクジェットインク等の画像記録材料用の着色剤として好適である。