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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-75704(P2021-75704A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】ホットメルト組成物及び繊維状部材
(51)【国際特許分類】
   C09J 153/00 20060101AFI20210423BHJP
   C08L 53/02 20060101ALI20210423BHJP
   C09J 11/08 20060101ALI20210423BHJP
【FI】
   C09J153/00
   C08L53/02
   C09J11/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2020-177766(P2020-177766)
(22)【出願日】2020年10月23日
(31)【優先権主張番号】特願2019-198678(P2019-198678)
(32)【優先日】2019年10月31日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】305044143
【氏名又は名称】積水フーラー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】特許業務法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】日笠 有利
(72)【発明者】
【氏名】染谷 悠
【テーマコード(参考)】
4J002
4J040
【Fターム(参考)】
4J002AE052
4J002BK003
4J002BP011
4J002EJ010
4J002FD022
4J002FD070
4J002FD343
4J002GJ01
4J040BA172
4J040DM011
4J040JA06
4J040JB01
4J040KA31
4J040LA02
4J040MA09
4J040MB02
4J040NA02
4J040PA30
(57)【要約】      (修正有)
【課題】ホットメルト組成物を提供する。
【解決手段】スチレン系ブロック共重合体(A)と、25℃で液体の可塑剤(B)とを含むホットメルト組成物で、130℃から200℃温度で、チクソ性を発現し、チクソ性を発現する全ての温度の中で最大の温度をTt(℃)とすると、Tt+10(℃)の溶融粘度が、1000〜40000mPa・sで、Tt(℃)において、以下の(1)〜(4)のいずれかを満たす、ホットメルト組成物:(1)粘度計の回転数10rpmでの粘度Vb(mPa・s)及び回転数100rpmでの粘度Va(mPa・s)により算出されるチクソトロピーインデックスVb(10rpm)/Va(100rpm)が1.5〜15.0;(2)Vb(5rpm)/Va(50rpm)が1.5〜15.0;(3))Vb(1rpm)/Va(10rpm)が1.5〜15.0;(4)Vb(0.3rpm)/Va(3rpm)が1.5〜15.0。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系ブロック共重合体(A)と、25℃で液体の可塑剤(B)とを含むホットメルト組成物であって、
前記ホットメルト組成物が、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃及び200℃のうち少なくとも1点の温度において、チクソ性を発現し、
前記温度のうち、チクソ性を発現する全ての温度の中で最大の温度をTt(℃)とするとき、
前記ホットメルト組成物の温度Tt+10(℃)における溶融粘度が、1000〜40000mPa・sであり、
前記ホットメルト組成物が、Tt(℃)において、以下の(1)〜(4)のいずれかを満たす、ホットメルト組成物:
(1)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数100rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数10rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるチクソトロピーインデックス(Vb/Va)が1.5〜15.0;
(2)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数50rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数5rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるチクソトロピーインデックス(Vb/Va)が1.5〜15.0;
(3)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数10rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数1rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるチクソトロピーインデックス(Vb/Va)が1.5〜15.0;
(4)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数3rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数0.3rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるチクソトロピーインデックス(Vb/Va)が1.5〜15.0。
【請求項2】
示差走査熱量測定(DSC)によって10℃/分の速度で昇温した際に得られるDSC曲線において、120℃〜220℃の温度範囲に吸熱ピーク又は吸熱変位を有する、請求項1に記載のホットメルト組成物。
【請求項3】
前記ホットメルト組成物100質量%中、スチレン骨格を17〜40質量%含有する、請求項1又は2に記載のホットメルト組成物。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか一項に記載のホットメルト組成物を用いてなる繊維状部材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ホットメルト組成物及び繊維状部材に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、熱可塑性樹脂を主原料としたホットメルト組成物は、接着性に優れる点で、紙おむつ、生理用ナプキン等の衛生材料を製造する際に、接着剤として広く用いられている。
【0003】
また、ホットメルト組成物は、接着剤としてではなく、衛生材料の機能性及びデザイン性を向上させるために、伸縮性を有する部材としても用いられている。
【0004】
例えば、特許文献1には、熱可塑性エラストマーを含む伸縮性ホットメルト組成物であって、通常用いられるホットメルト接着剤塗布装置で塗布可能な伸縮性ホットメルト組成物が記載されている。
【0005】
更に、ホットメルトと同様に、熱可塑性の高分子を熱溶融させてノズルから繊維状に吐出し冷却することによって繊維化する溶融紡糸技術が、フィラメント(繊維)を製造する際に利用されている。
【0006】
例えば、特許文献2には、ポリオレフィンを含む組成物を少なくとも1つのスピナレットから押出して少なくとも1つの溶融押出物を形成し、該溶融押出物を急冷して少なくとも1つのフィラメントを形成し、紡糸高さを1乃至4mとして、少なくとも約500m/minの紡糸速度で緊張ロールに該少なくとも1つのフィラメントを通過させることを含んでなるポリオレフィンフィラメントの紡糸方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】国際公開第2019/151369号
【特許文献2】特表2001−512189号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
特許文献1の伸縮性ホットメルト組成物は、スプレー塗布による繊維化が可能であるが、スプレー塗布後に適切なチクソ性を発揮しないため、繊維が堆積した際に繊維同士が再溶融し、融着及び接合することにより、繊維同士が一体化する。その結果、繊維が潰れてフィルム化が起こる、又は繊維の嵩高さが維持できずクッション性を付与できないという問題がある。
【0009】
特許文献2の紡糸方法は、冷却工程を長くとることにより、繊維化を実現しているが、通常用いられるホットメルト塗布装置では冷却工程を長くとることができないため、独立した繊維を形成することができないという問題がある。
【0010】
本発明は上記事情を鑑み、通常用いられるホットメルト接着剤塗布装置で吐出可能であり、且つ、繊維状に吐出することにより、独立した繊維を形成可能であるホットメルト組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、上記目的を達成すべく鋭意研究を重ねた結果、スチレン系ブロック共重合体(A)と、25℃で液体の可塑剤(B)とを含むホットメルト組成物であって、特定の温度でチクソ性を発現し、特定の溶融粘度を有するホットメルト組成物によれば、上記課題を達成できることを見出した。本発明は、本発明者らがさらに研究を重ね、完成させたものである。
【0012】
即ち、本発明は、下記に掲げる態様の発明を提供する。
項1.
スチレン系ブロック共重合体(A)と、25℃で液体の可塑剤(B)とを含むホットメルト組成物であって、
前記ホットメルト組成物が、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃及び200℃のうち少なくとも1点の温度において、チクソ性を発現し、
前記温度のうち、チクソ性を発現する全ての温度の中で最大の温度をTt(℃)とするとき、
前記ホットメルト組成物の温度Tt+10(℃)における溶融粘度が、1000〜40000mPa・sであり、
前記ホットメルト組成物が、Tt(℃)において、以下の(1)〜(4)のいずれかを満たす、ホットメルト組成物:
(1)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数100rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数10rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるチクソトロピーインデックス(Vb/Va)が1.5〜15.0;
(2)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数50rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数5rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるチクソトロピーインデックス(Vb/Va)が1.5〜15.0;
(3)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数10rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数1rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるチクソトロピーインデックス(Vb/Va)が1.5〜15.0;
(4)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数3rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数0.3rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるチクソトロピーインデックス(Vb/Va)が1.5〜15.0。
項2.
示差走査熱量測定(DSC)によって10℃/分の速度で昇温した際に得られるDSC曲線において、120℃〜220℃の温度範囲に吸熱ピーク又は吸熱変位を有する、項1に記載のホットメルト組成物。
項3.
前記ホットメルト組成物100質量%中、スチレン骨格を17〜40質量%含有する、項1又は2に記載のホットメルト組成物。
項4.
項1〜3のいずれか一項に記載のホットメルト組成物を用いてなる繊維状部材。
【発明の効果】
【0013】
本発明のホットメルト組成物は、通常用いられるホットメルト接着剤塗布装置で吐出可能であり、且つ、繊維状に吐出することにより、独立した繊維を形成可能である。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】DSC曲線において、吸熱ピークがある場合にオンセット温度を導出する際の概略図である。
図2】DSC曲線において、吸熱変位がある場合にオンセット温度を導出する際の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。以下に記載する構成要件の説明は、代表的な実施形態及び具体例に基づいてなされることがあるが、本発明はそのような実施形態に限定されるものではない。
【0016】
本明細書において「〜」を用いて表される数値範囲は、「〜」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
【0017】
本明細書において、チクソ性とは、せん断速度(回転数)が大きくなるにつれて、粘度が減少する現象を意味する。チクソ性を有する系は、長時間静置した状態からせん断速度を上げた時の粘度(高せん断速度における粘度)と、せん断を加えた状態からせん断速度を下げた時の粘度(低せん断速度における粘度)とが異なる。また、高せん断速度における粘度の方が、低せん断速度における粘度よりも高い。
【0018】
本明細書において、チクソ性を表す指標として、チクソトロピーインデックス(thixotropic index:TI値)を用いる。本明細書において、チクソ性を発現する温度とは、低せん断速度:高せん断速度=1:10となるように速度比を設定した場合に、TI値(低せん断速度における粘度を、高せん断速度における粘度で除した値)が1.5以上となる温度を意味する。
【0019】
本明細書において、吸熱ピークとは、DSC曲線におけるポリスチレン由来のピークを意味する。吸熱変位とは、DSC曲線におけるポリスチレン由来のベースラインのシフトのことを意味する。ここで、ポリスチレンとは、スチレン系ブロック共重合体(A)中のポリスチレンを意味する。
【0020】
本明細書において、通常用いられるホットメルト塗布装置としては、例えば、Nordson社製のユニバーサルサミットノズル等がある。
【0021】
1.ホットメルト組成物
本発明のホットメルト組成物は、スチレン系ブロック共重合体(A)及び25℃で液体の可塑剤(B)を必須成分として含有する。
【0022】
本発明のホットメルト組成物は、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃及び200℃のうち少なくとも1点の温度において、チクソ性を発現する。
【0023】
本発明のホットメルト組成物は、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃及び200℃のうち少なくとも1点の温度のうち、チクソ性を発現する全ての温度の中で最大の温度をTt(℃)とするとき、温度Tt+10(℃)における溶融粘度が、1000〜40000mPa・sである。
【0024】
本発明のホットメルト組成物は、上記Tt(℃)において、以下の(1)〜(4)に示されるいずれか一つを満たす:
(1)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数100rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数10rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるチクソトロピーインデックス(Vb/Va)が1.5〜15.0;
(2)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数50rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数5rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるチクソトロピーインデックス(Vb/Va)が1.5〜15.0;
(3)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数10rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数1rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるチクソトロピーインデックス(Vb/Va)が1.5〜15.0;
(4)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数3rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数0.3rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるチクソトロピーインデックス(Vb/Va)が1.5〜15.0。
【0025】
本発明のホットメルト組成物は、上述した要件を備えていることにより、特定の温度で特定の溶融粘度を有するため、通常用いられるホットメルト塗布装置で吐出可能であり、塗工適正が良好となる。更に、本発明のホットメルト組成物は、上述した要件を備えていることにより、通常用いられるホットメルト塗布装置で繊維状に吐出した際に、独立した繊維を形成可能であるため、繊維の独立性に優れる。
【0026】
以下、本発明のホットメルト組成物に含まれる各成分について説明する。なお、本発明のホットメルト組成物を、単に「本発明」と記載することもある。
【0027】
(スチレン系ブロック共重合体(A))
本発明において、スチレン系ブロック共重合体(A)は、ビニル系芳香族炭化水素と共役ジエン化合物とのブロック共重合体である。スチレン系ブロック共重合体(A)を用いることにより、本発明は、ホットメルト塗布装置から吐出可能であり、チクソ性を発現し得るものとなる。即ち、本発明において、スチレン系ブロック共重合体(A)は、チクソ性付与剤としての役割を担う。
【0028】
ビニル系芳香族炭化水素とは、ビニル基を有する芳香族炭化水素化合物を意味する。ビニル系芳香族炭化水素としては、例えば、スチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、1,3−ジメチルスチレン、α−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。これらのビニル系芳香族炭化水素は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのビニル系芳香族炭化水素の中でも、スチレンが好ましい。
【0029】
共役ジエン化合物とは、少なくとも一対の共役二重結合を有するジオレフィン化合物を意味する。共役ジエン化合物としては、例えば、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン(又はイソプレン)、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらの共役ジエン化合物は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの共役ジエン化合物の中でも、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエンが好ましい。
【0030】
スチレン系ブロック共重合体(A)は、未水素添加物であっても、水素添加物であってもよい。スチレン系ブロック共重合体(A)としては、例えば、スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS:SBSの完全水素添加物)、スチレン−ブタジエン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBBS:SBSの部分水素添加物)、スチレン−エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−エチレン/エチレン/プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEEPS)、スチレン−エチレン/ブチレン−結晶オレフィンブロック共重合体(SEBC)が挙げられる。これらのスチレン系ブロック共重合体(A)は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのスチレン系ブロック共重合体(A)の中でも、チクソ性を良好に発現させる点から、SBS、SIS及びSEBSが好ましい。
【0031】
本発明において、スチレン系ブロック共重合体(A)は、チクソ性を良好に発現させる点から、SBS、SIS及びSEBSからなる群より選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0032】
本発明において、スチレン系ブロック共重合体(A)は、チクソ性を良好に発現させる点から、スチレン−エチレン−ブチレン/スチレン−スチレンブロック共重合体(SEB/S−S)を含まないことが好ましい。
【0033】
本発明において、チクソ性を良好に発現させる点から、スチレン系ブロック共重合体(A)は、SBS、SIS及びSEBSからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、且つSEB/S−Sを含まないことがより好ましい。
【0034】
スチレン系ブロック共重合体(A)におけるスチレン骨格含有量は、スチレン系ブロック共重合体(A)100質量%中、30〜80質量%が好ましく、40〜75質量%がより好ましく、45〜70質量%が更に好ましい。
【0035】
本明細書において、スチレン系ブロック共重合体(A)中のスチレン骨格含有量とは、スチレン系ブロック共重合体(A)中のスチレンブロックの含有割合(質量%)をいう。スチレン系ブロック共重合体(A)中のスチレン骨格含有量の算出方法としては、例えば、JIS K6239に準じたプロトン核磁気共鳴法、赤外分光法等を用いる方法が挙げられる。
【0036】
スチレン系ブロック共重合体(A)としては、公知の市販品を広く用いることができる。市販品としては、例えば、旭化成社製の製品名「タフテックH1043」(スチレン骨格含有量:67質量%)、旭化成社製の製品名「タフテックH1051」(スチレン骨格含有量:42質量%)、旭化成社製の製品名「タフテックH1041」(スチレン骨格含有量:30質量%)、旭化成社製の製品名「アサプレンT−439」(スチレン骨格含有量:45質量%)、TSRC社製の製品名「ベクター4411」(スチレン骨格含有量:44質量%)等が挙げられる。
【0037】
本発明のホットメルト組成物100質量%中のスチレン系ブロック共重合体(A)の含有量は、好ましくは20〜80質量%、より好ましくは25〜70質量%、更に好ましくは30〜65質量%、特に好ましくは35〜60質量%である。
【0038】
本発明のホットメルト組成物100質量%中のスチレン骨格含有量は、好ましくは17〜40質量%、より好ましくは20〜36質量%、更に好ましくは22〜32質量%、特に好ましくは22.5〜30質量%である。本発明のホットメルト組成物100質量%中のスチレン骨格含有量が、上記範囲内であれば、本発明のホットメルト組成物がチクソ性を発現しやすくなり、且つ、本発明のホットメルト組成物の粘度上昇が抑制され、通常用いられるホットメルト塗布装置で吐出可能となる。
【0039】
本発明において、(1)スチレン系ブロック共重合体(A)が、SBS、SIS及びSEBSからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、且つSEB/S−Sを含まないこと、並びに(2)ホットメルト組成物100質量%中、スチレン骨格を17〜40質量%含有すること、が好ましい。
【0040】
本発明において、(1)スチレン系ブロック共重合体(A)が、SBS、SIS及びSEBSからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、且つSEB/S−Sを含まないこと、並びに(2)ホットメルト組成物100質量%中、スチレン骨格を20〜36質量%含有すること、がより好ましい。
【0041】
本発明において、(1)スチレン系ブロック共重合体(A)が、SBS、SIS及びSEBSからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、且つSEB/S−Sを含まないこと、並びに(2)ホットメルト組成物100質量%中、スチレン骨格を22〜32質量%含有すること、が更に好ましい。
【0042】
本発明において、(1)スチレン系ブロック共重合体(A)が、SBS、SIS及びSEBSからなる群より選ばれる少なくとも一種であり、且つSEB/S−Sを含まないこと、並びに(2)ホットメルト組成物100質量%中、スチレン骨格を22.5〜30質量%含有すること、が特に好ましい。
【0043】
(25℃で液体の可塑剤(B))
本発明のホットメルト組成物は、25℃で液体の可塑剤(B)(以下、「可塑剤(B)」とも称する)を含む。本明細書において、「25℃で液体」とは、25℃で液状であることを意味する。本明細書において、「液状」とは、流動性を示す状態であることを意味する。可塑剤(B)の流動点は、23℃以下が好ましく、10℃以下がより好ましい。
【0044】
本明細書において、可塑剤(B)の流動点は、JIS K2269に準拠した測定方法により測定される値である。
【0045】
本発明のホットメルト組成物が、25℃で液体の可塑剤(B)を含むことにより、本発明のホットメルト組成物の温度Tt+10(℃)における溶融粘度を1000〜40000mPa・sに調整することが可能となる。
【0046】
可塑剤(B)としては、例えば、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、芳香族系プロセスオイル、流動パラフィン、炭化水素系合成オイル等が挙げられる。これらの可塑剤(B)は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0047】
上述した可塑剤(B)の中でも、加熱安定性が優れる観点から、パラフィン系プロセスオイル、ナフテン系プロセスオイル、流動パラフィン、及び炭化水素系合成オイルが好ましく。更に、これらの中でも、上記スチレン系ブロック共重合体(A)との相溶性の観点から、パラフィン系プロセスオイル及びナフテン系プロセスオイルがより好ましい。
【0048】
パラフィン系プロセスオイルとしては、公知の市販品を広く用いることができる。市販品としては、例えば、出光興産社製の製品名「PW−32」、出光興産社製の製品名「PS−32」等が挙げられる。
【0049】
ナフテン系プロセスオイルとしては、公知の市販品を広く用いることができる。市販品としては、例えば、出光興産社製の製品名「ダイアナフレシアN28」、中国石油社製の製品名「KN−4010」、Nynas社製の製品名「Nyflex222B」等が挙げられる。
【0050】
流動パラフィンとしては、公知の市販品を広く用いることができる。市販品としては、MORESCO社製の製品名「P−100」、Sonneborn社製の製品名「Kaydol」等が挙げられる。
【0051】
炭化水素系合成オイルとしては、公知の市販品を広く用いることができる。市販品としては、三井化学社製の製品名「ルーカントHC−10」、三井化学社製の製品名「ルーカントHC−40」等が挙げられる。
【0052】
本発明のホットメルト組成物100質量%中の可塑剤(B)の含有量は、好ましくは10〜80質量%、より好ましくは30〜75質量%、更に好ましくは45〜70質量%である。本発明のホットメルト組成物100質量%中の可塑剤(B)の含有量が、上記範囲内であれば、本発明のホットメルト組成物の粘度上昇が抑制され、通常用いられるホットメルト塗布装置で吐出可能となる、且つ、本発明のホットメルト組成物がチクソ性を発現しやすくなる。
【0053】
(任意成分である添加剤)
本発明のホットメルト組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、任意の添加剤を含有していてもよい。
【0054】
任意の添加剤としては、例えば、酸化防止剤、紫外線吸収剤、粘着付与樹脂、ワックス、液状ゴム、微粒子充填剤等が挙げられる。これらの添加剤の中でも、酸化防止剤及び粘着付与剤が好ましい。
【0055】
本発明は、スチレン系ブロック共重合体(A)、可塑剤(B)及び酸化防止剤のみからなることが好ましい。この場合、本発明は、スチレン系ブロック共重合体(A)、可塑剤(B)及び酸化防止剤の合計量を100質量%として、スチレン系ブロック共重合体(A)を20〜60質量%含有することが好ましく、22.5〜55質量%含有することがより好ましく、25〜50質量%含有することが更に好ましい。
【0056】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2’−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2’−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤等が挙げられる。これらの酸化防止剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0057】
酸化防止剤としては、公知の市販品を広く用いることができる。市販品としては、BASF社製の製品名「IRGANOX1010」等が挙げられる。
【0058】
本発明のホットメルト組成物100質量%中の酸化防止剤の含有量は、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.05〜1.5質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%である。本発明のホットメルト組成物100質量%中の酸化防止剤の含有量が、上記範囲内であれば、本発明のホットメルト組成物の熱安定が向上し、且つ、臭気が低減する。
【0059】
紫外線吸収剤としては、2−(2’−ヒドロキシ−5’−メチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−t−ブチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−t−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;サリチル酸エステル系紫外線吸収剤;シアノアクリレート系紫外線吸収剤;ヒンダードアミン系光安定剤が挙げられる。これらの紫外線吸収剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0060】
本発明のホットメルト組成物100質量%中の紫外線吸収剤の含有量は、好ましくは0.01〜2質量%、より好ましくは0.05〜1.5質量%、更に好ましくは0.1〜1質量%である。本発明のホットメルト組成物100質量%中の紫外線吸収剤の含有量が、上記範囲内であれば、本発明のホットメルト組成物の耐候性が向上し、且つ、臭気が低減する。
【0061】
粘着付与樹脂としては、天然ロジン、変性ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの三次元ポリマー、天然テルペンのコポリマーの水素化誘導体、テルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、芳香族系炭化水素樹脂、C5系石油樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系石油樹脂等の石油樹脂、また、これら石油樹脂に水素を添加した部分水添石油樹脂、完全水添石油樹脂等が挙げられる。これらの粘着付与樹脂は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらの粘着付与樹脂の中でも、本発明のホットメルト組成物のチクソ性発現の点で、芳香族系炭化水素樹脂、C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂が好ましく、芳香族炭化水素樹脂及びC9系石油樹脂がより好ましい。また、本発明のホットメルト組成物の臭気の低減および熱安定性向上の点で、石油樹脂、部分水添石油樹脂及び完全水添石油樹脂が好ましく、部分水添石油樹脂及び完全水添石油樹脂がより好ましい。
【0062】
なお、C5系石油樹脂とは石油のC5留分を原料とした石油樹脂であり、C9系石油樹脂とは石油のC9留分を原料とした石油樹脂であり、C5C9系石油樹脂とは石油のC5留分とC9留分とを原料とした石油樹脂である。C5留分としては、シクロペンタジエン、イソプレン、ペンタン等が挙げられる。C9留分としては、スチレン、ビニルトルエン、インデン等が挙げられる。C9系石油樹脂、C5C9系石油樹脂としては、C9留分の一種であるスチレンを骨格中に含むものが好ましい。
【0063】
粘着付与樹脂の環球式軟化点温度は、本発明の伸縮性向上及び熱安定性向上の点で、80℃以上が好ましく、90℃以上がより好ましい。
【0064】
粘着付与樹脂の環球式軟化点温度は、本発明の柔軟性向上及び脆弱化抑制の点で、145℃以下が好ましく、140℃以下がより好ましい。
【0065】
本明細書において、粘着付与樹脂の環球式軟化点温度は、JIS K2207に準拠して測定される値である。
【0066】
本発明のホットメルト組成物100質量%中の粘着付与樹脂の含有量は、好ましくは0.1〜30質量%、より好ましくは0.5〜20質量%、更に好ましくは1〜15質量%である。本発明のホットメルト組成物100質量%中の粘着付与樹脂の含有量が、上記範囲内であれば、本発明との相溶性が良好となり、且つ、チクソ性の発現性が向上する。
【0067】
粘着付与樹脂としては、公知の市販品を広く用いることができる。市販品としては、芳香族炭化水素樹脂であるイーストマンケミカル社製の製品名「プラストリン290」(スチレン骨格含有量:100質量%)等が挙げられる。
【0068】
ワックスとしては、パラフィンワックス、フィッシャートロプスワックス、酢酸ビニルワックス、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、アクリル酸ワックス、マレイン酸変性ワックス等が挙げられる。これらのワックスは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。これらのワックスの中でも、本発明との相溶性の観点から、パラフィンワックス及びフィッシャートロプスワックスが好ましい。
【0069】
ワックスの軟化点は25℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以上が更に好ましい。本明細書において、軟化点は、ASTM D−3954に準拠した測定方法により測定される値である。
【0070】
本発明のホットメルト組成物100質量%中のワックスの含有量は、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下、更に好ましくは15質量%以下である。本発明のホットメルト組成物100質量%中のワックスの含有量が、30質量%以下であれば、本発明の粘度が良好となり、且つ、通常のホットメルト塗布装置からの吐出適性が向上する。
【0071】
液状ゴムとしては、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン及びこれらの水添樹脂が挙げられる。これらの液状ゴムは、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0072】
本発明のホットメルト組成物100質量%中の液状ゴムの含有量は、好ましくは20質量%以下、より好ましくは15質量%以下、更に好ましくは10質量%以下である。本発明のホットメルト組成物100質量%中の液状ゴムの含有量が、20質量%以下であれば、本発明との相溶性が良好となり、且つ、チクソ性の発現性が向上する。
【0073】
微粒子充填剤としては、例えば、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、酸化チタン、雲母、スチレンビーズ等が挙げられる。これらの微粒子充填剤は、それぞれ単独で、又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0074】
以下、本発明のホットメルト組成物の物性値について説明する。
【0075】
(ホットメルト組成物の物性値)
本発明のホットメルト組成物は、130℃、140℃、150℃、160℃、170℃、180℃、190℃及び200℃のうち少なくとも1点の温度でチクソ性を発現する。本明細書において、Tt(℃)とは、チクソ性を発現する全ての温度の中で最大の温度(℃)を意味する。
【0076】
本発明のホットメルト組成物は、ホットメルト塗布装置から吐出されるまでは、チクソ性を発現することにより、高せん断がかかるため溶融粘度が低下し、それ故、ホットメルト塗布装置から容易に吐出することができる。そして、本発明のホットメルト組成物は、当該ホットメルト塗布装置から吐出された後は、低せん断となるため溶融粘度が上昇し、それ故、繊維が堆積した際に再溶融及び融着が起こらず、独立した繊維を形成することができる。
【0077】
本発明のホットメルト組成物は、上記Tt(℃)において、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)により測定した溶融粘度から算出されるチクソトロピーインデックス(以下、「TI値」とも称する)が、以下の(1)〜(4)の少なくとも1つを満たす。TI値は次式に基づいて算出される。
TI値=[低回転数(rpm)における粘度Vb(mPa・s)]/[高回転数(rpm)における粘度Va(mPa・s)]
(1)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数100rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数10rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるTI値(Vb/Va)が1.5〜15.0
(2)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数50rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数5rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるTI値(Vb/Va)が1.5〜15.0
(3)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数10rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数1rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるTI値(Vb/Va)が1.5〜15.0
(4)ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)による回転数3rpmでの粘度Va(mPa・s)及び回転数0.3rpmでの粘度Vb(mPa・s)により算出されるTI値(Vb/Va)が1.5〜15.0
【0078】
上記(1)〜(4)で表されるTI値が1.5以上であると、ホットメルト組成物をホットメルト塗布装置から吐出した後、ホットメルト組成物の低せん断速度における溶融粘度が高くなるため、繊維の独立性が向上する。
【0079】
上記(1)〜(4)で表されるTI値が15.0以下であると、ホットメルト組成物をホットメルト塗布装置から吐出した後、ホットメルト組成物の低せん断速度における溶融粘度の上昇が抑制されるため、ホットメルト塗布装置による繊維化が容易になる。
【0080】
本発明において、上記(1)〜(4)で表されるTI値は、いずれも、好ましくは1.7〜10.0、より好ましくは2.0〜9.0、更に好ましくは2.5〜8.0、特に好ましくは3.0〜7.0である。
【0081】
本発明のホットメルト組成物は、温度Tt+10(℃)における溶融粘度が1000〜40000mPa・sである。
【0082】
本明細書において、「溶融粘度」とは、一定の温度で加熱溶融状態となったホットメルト組成物の粘度を意味する。Tt+10(℃)における溶融粘度の測定方法としては、例えば、ホットメルト組成物を加熱溶融し、Tt+10℃における溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)を用いて測定する測定方法が挙げられる。
【0083】
本発明において、Tt+10(℃)における溶融粘度が1000mPa・s未満であると、チクソ性が発現されても、十分な粘度上昇が得られず、独立した繊維を形成することが困難となる。
【0084】
本発明において、Tt+10(℃)における溶融粘度が40000mPa・sを超えると、通常用いられるホットメルト塗布装置によりホットメルト組成物を吐出することが困難となる。
【0085】
本発明のTt+10(℃)における溶融粘度は、好ましくは2000〜30000mPa・s、より好ましくは2500〜27500mPa・s、更に好ましく3000〜25000mPa・s、特に好ましくは3500〜22500mPa・sである。
【0086】
本発明のホットメルト組成物は、通常使用されるホットメルト塗布装置から繊維状に吐出され、繊維が堆積した際に再溶融、融着等による繊維の一体化が生じない。本明細書において、繊維の一体化が生じない状態とは、以下の(I)又は(II)のどちらかを意味する:
(I)繊維が接点にて全く融着しておらず、嵩高さがある
(II)繊維が接点にて少し融着しているが、簡単にほぐれ、嵩高さも維持している
【0087】
本発明において、繊維の一体化が生じない状態は、上記(I)に記載の状態が特に好ましい。
【0088】
繊維の一体化が生じないことにより、本発明のホットメルト組成物を用いてなる繊維状部材は、布感及びクッション性を備えることができる。また、本明細書において、繊維同士が一体化していないこととは、繊維が「独立している」ことを意味する。即ち、本発明においては、繊維の一体化の程度を繊維の独立性として評価する。
【0089】
繊維の独立性は、以下の方法により、本発明のホットメルト組成物をホットメルト塗布装置から吐出した後、吐出されたサンプル(吐出サンプル)を用いて評価する。
【0090】
(ホットメルト組成物の吐出サンプル作成方法)
本発明のホットメルト組成物を温度Tt+10(℃)で溶融し、ホットメルト塗布装置を用いて、ノズル径0.5mmが8口連なったノズルから吐出する。吐出量は1分間当たり10g程度となるように設定し、吐出口から高さ20cmの点で吐出された繊維を30秒間堆積させる。繊維を30秒間吐出した後、放冷により内部まで完全に冷却し、ホットメルト組成物の評価用吐出サンプル調製する。
【0091】
(繊維の独立性の評価方法)
調製したホットメルト組成物の評価用吐出サンプルをあらゆる方向へ手で引っ張ることにより、繊維の接点における融着を確認する。また、目視で堆積した繊維の嵩高さを確認する。接点による融着の有無及び嵩高さを、繊維の独立性の評価基準とする。
【0092】
本発明において、繊維の独立性は、繊維が接点にて少し融着しているが、簡単にほぐれ、嵩高さも維持している状態が好ましい。本明細書において、この状態を「ホットメルト組成物から得られる繊維の独立性が良好である」ことを意味する。ホットメルト組成物から得られる繊維の独立性が良好で、嵩高さが維持されていると、本発明のホットメルト組成物を用いてなる繊維状部材の風合い、クッション性等が良好となる。
【0093】
本発明において、繊維の独立性は、繊維が接点にて全く融着しておらず、嵩高さがある状態が特に好ましい。本明細書において、この状態を「ホットメルト組成物から得られる繊維の独立性が特に良好である」ことを意味する。ホットメルト組成物から得られる繊維の独立性が特に良好で、嵩高さが得られていると、本発明のホットメルト組成物を用いてなる繊維状部材の風合い、クッション性等が特に良好となる。
【0094】
本明細書において、繊維が接点にて融着しており、一体化している状態、又は繊維が再溶融し繊維状でなくなっている状態は、繊維の独立性がないことを意味する。
【0095】
本発明のホットメルト組成物は、示差走査熱量測定(DSC)によって10℃/分の速度で昇温した際に得られるDSC曲線において、120℃〜220℃の温度範囲に吸熱ピーク又は吸熱変位を有することが好ましい。
【0096】
本発明のホットメルト組成物は、このような熱的特性を有することにより、チクソ性を良好に発現することが可能となる。
【0097】
以下、本発明のホットメルト組成物の製造方法及び用途について説明する。
【0098】
2.ホットメルト組成物の製造方法及び用途
本発明のホットメルト組成物は、公知の方法で製造することができる。例えば、上述したスチレン系ブロック共重合体(A)、25℃で液体の可塑剤(B)、必要に応じて各種添加剤を、150℃に加熱した双腕型混練機へ投入し、加熱しながら溶融混練することによって製造することができる。
【0099】
本発明のホットメルト組成物の用途としては、例えば、紙おむつ、生理用ナプキン、病院用ガウン等の衛生材料が挙げられる。
【0100】
本発明のホットメルト組成物は、不織布、緩衝材等の繊維状部材として好適に用いられる。
【実施例】
【0101】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されない。
【0102】
実施例及び比較例で用いた原料は以下のとおりである。
【0103】
<スチレン系ブロック共重合体(A)>
・スチレン系ブロック共重合体(A1):
スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)(A1)、旭化成社製、製品名「タフテックH1043」、スチレン骨格含有量=67質量%
・スチレン系ブロック共重合体(A2):
スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)(A2)、旭化成社製、製品名「タフテックH1051」、スチレン骨格含有量=42質量%
・スチレン系ブロック共重合体(A3):
スチレン−エチレン/ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)(A3)、旭化成社製、製品名「タフテックH1041」、スチレン骨格含有量=30質量%
・スチレン系ブロック共重合体(A4):
スチレン−ブタジエン−スチレンブロック共重合体(SBS)(A4)、旭化成社製、製品名「アサプレンT−439」、スチレン骨格含有量=45質量%
・スチレン系ブロック共重合体(A5):
スチレン−イソプレン−スチレンブロック共重合体(SIS)(A5)、TSRC社製、製品名「ベクター4411」、スチレン骨格含有量=44質量%
【0104】
<25℃で液体の可塑剤(B)>
・パラフィン系プロセスオイル:
可塑剤(B1)、出光興産社製、製品名「PS−32」、流動点=−17.5℃
・ナフテン系プロセスオイル:
可塑剤(B2)、中国石油社製、製品名「KN−4010」、流動点=−15.0℃・流動パラフィン:
可塑剤(B3)、Sonneborn社製、製品名「Kaydol」、流動点=−12.0℃
【0105】
<任意の添加剤>
・芳香族炭化水素樹脂:イーストマンケミカル社製、製品名「プラストリン290」、スチレン骨格含有量=100質量%
・ヒンダードフェノール系酸化防止剤:BASF社製、製品名「IRGANOX1010」
【0106】
(実施例及び比較例)
上述した原料を、それぞれ表1及び表2に示した配合量で、加熱装置を備えた攪拌混練機中に投入した。150℃で120分間加熱しながら混練して、ホットメルト組成物を製造した。
【0107】
製造したホットメルト組成物について、以下の測定条件により物性値を評価した。
【0108】
(チクソ性発現温度(℃))
ホットメルト組成物を加熱溶融し、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)(ブルックフィールド社製)を用いて回転数(rpm)を変化させ、210℃におけるホットメルト組成物の粘度(mPa・s)を測定した。具体的には、以下のa)、b)、c)及びd)に示される回転数の条件で、210℃におけるホットメルト組成物の高回転数での粘度及び低回転数での粘度をそれぞれ測定した。そして、得られた2点の粘度に基づき、次式を用いて、210℃におけるホットメルト組成物のTI値を算出した。なお、ここでいう粘度とは、210℃で30分間経過した時のブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)に示された粘度を意味する。
210℃におけるホットメルト組成物のTI値=低回転数での粘度(mPa・s)/高回転数での粘度(mPa・s)
a)100rpm及び10rpm (回転数の比率 10:1)
b)50rpm及び5rpm (回転数の比率 10:1)
c)10rpm及び1rpm (回転数の比率 10:1)
d)3rpm及び0.3rpm (回転数の比率 10:1)
【0109】
上記a)、b)、c)及びd)の4つ全ての条件で、210℃におけるホットメルト組成物のTI値が1.5未満であることを確認した。次いで、210℃から温度を1・BR>O℃ずつ下げ、200℃、190℃、180℃、170℃、160℃、150℃、140℃及び130℃の全ての温度において、上記a)、b)、c)及びd)に示される回転数の条件で、ホットメルト組成物の高回転数での粘度及び低回転数での粘度をそれぞれ測定した。得られた2点の粘度に基づき、各温度におけるホットメルト組成物のTI値を算出した。ここでいう粘度とは、上記各温度及び各回転数で30分間経過した時のブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)に示された粘度を意味する。上記各温度のうち、上記a)、b)、c)及びd)のいずれか1つの条件で、ホットメルト組成物のTI値が1.5以上となる温度をチクソ性発現温度(℃)とした。
【0110】
(ホットメルト組成物のTI値)
ホットメルト組成物を加熱溶融し、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)(ブルックフィールド社製)を用いて回転数(rpm)を変化させ、溶融状態のホットメルト組成物の粘度(mPa・s)を測定した。その際に回転数が10:1となる2点の回転数において、低回転数時の粘度に対する高回転数時の粘度の比率に基づき、Tt(℃)におけるホットメルト組成物のTI値を算出した。具体的には、上記の方法により求めたチクソ性発現温度(℃)のうち、最大の温度をTt(℃)と設定したとき、以下のe)、f)、g)及びh)に示される回転数の条件で、溶融状態のホットメルト組成物の高回転数(rpm)での粘度及び低回転数(rpm)での粘度を測定し、得られた2点の粘度から次式を用いて、Tt(℃)におけるホットメルト組成物のTI値を算出した。
Tt(℃)におけるホットメルト組成物のTI値=低回転数での粘度Vb(mPa・s)/高回転数での粘度Va(mPa・s)
e)100rpm及び10rpm (回転数の比率 10:1)
f)50rpm及び5rpm (回転数の比率 10:1)
g)10rpm及び1rpm (回転数の比率 10:1)
h)3rpm及び0.3rpm (回転数の比率 10:1)
【0111】
(Tt+10(℃)におけるホットメルト組成物の溶融粘度(mPa・s)及び塗工適正)
ホットメルト組成物を加熱溶融し、Ttより10℃高い温度(Tt+10(℃))におけるホットメルト組成物の溶融状態の粘度を、ブルックフィールドRVT型粘度計(スピンドルNo.29)を用いて測定し、以下の評価基準に従って塗工適正を評価した。
○:Tt+10(℃)におけるホットメルト組成物の溶融粘度が1000mPa・s以上、20000mPa・s未満
△:Tt+10(℃)におけるホットメルト組成物の溶融粘度が20000mPa・s以上、40000mPa・s以下
×:Tt+10(℃)におけるホットメルト組成物の溶融粘度が40000mPa・sを超える、又は、1000mPa・s未満
【0112】
(DSC曲線における吸熱ピーク又は吸熱変位のオンセット温度(℃))
ホットメルト組成物10mgをアルミニウムパンに封入し、示差走査熱量測定装置(島津社製、製品名「DSC−60」)を用いて、測定を行った。測定は、窒素気流化、25℃から220℃まで10℃/min.で昇温して熱量変化を測定し、「縦軸:吸発熱量(mW)」及び「横軸:温度(℃)」のグラフを描いた(図1及び図2)。得られたDSC曲線より、ベースラインと変曲点(上に凸の曲線が下に凸の曲線に変わる点)にて接線交点を求め、オンセット温度とした。具体的には、図1に示すように、得られたDSC曲線において、吸熱ピークがある場合は、元のベースラインでの接線と変曲点での接線との交点をオンセット温度とした。また、図2に示すように、得られたDSC曲線において、吸熱変位がある場合は、元のベースラインでの接線と変曲点での接線との交点をオンセット温度とした。
【0113】
(ホットメルト組成物の吐出サンプルの調製方法)
ホットメルト組成物を温度Tt+10(℃)で溶融し、ホットメルト塗布装置(Nordson社製、製品名「ユニバーサルサミットノズル」)を用いて、ノズル径0.5mmが8口連なったノズルから吐出した。吐出量は1分間当たり10g程度となるように設定し、吐出口から高さ20cmの点で吐出された繊維を30秒間堆積させた。繊維を30秒間吐出した後、放冷により内部まで完全に冷却し、ホットメルト組成物の評価用吐出サンプルを調製した。
【0114】
(繊維の独立性)
ホットメルト組成物の吐出サンプルの両端を手で持ち、左右外側に軽く引っ張ることにより、繊維の接点における融着を確認した。また、目視で堆積した繊維の嵩高さを確認した。繊維の接点による融着の有無及び嵩高さを、以下の評価基準に従って評価し、繊維の独立性を評価した。なお、繊維の接点による嵩高さに関して、最も高いところで約2cmあれば、繊維の接点による嵩高さがあると評価した。
○:繊維が接点にて全く融着しておらず、嵩高さがある
△:繊維が接点にて少し融着しているが、簡単にほぐれ、嵩高さも維持している
×:繊維が接点にて融着しており、一体化している。または再溶融し繊維状でなくなっている
【0115】
結果を表1及び表2に示す。
【0116】
表1及び表2の実施例1〜11及び比較例4において、物性値の項目の「−」は、測定不能を意味する。
【0117】
表2の比較例1〜3では、チクソ性を発現する最大の温度Tt(℃)を規定することができないため、ホットメルト組成物の物性値を測定することができず、塗工適正を評価することができなかった。
【0118】
【表1】
【0119】
【表2】
図1
図2