【解決手段】時計部品用のコーティング組成物であって、*結合剤、好ましくは二成分形ポリウレタンと;*1以上の顔料、好ましくは(組成物の全固形分に対して)重量比で19〜58重量%の量の顔料と;*少なくとも1種類の賦形剤と;*溶剤又は混合溶剤、好ましくは酢酸ブチル及び/又は乳酸エチルと;*場合により、1以上の一般的に使用される添加剤、通例の補助剤又はこれらの組み合わせと、を具備している組成物が開示される。さらに、パーツ型のキット、時計部品のコーティング、時計部品をコーティングするための方法、及び前記方法によって入手可能であるか又は前記コーティングを具備している時計、が開示される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】幅103マイクロメートルの凹部における成膜の例を示す図。
【
図2】本発明の第1の実施形態によるコーティング方法を示す概略図。
【
図3】本発明の第2の実施形態によるコーティング方法を示す概略図。
【
図4】コーティングを伴わない凹部を有する部品を示す概略図。
【
図5】硬化前のコーティングを備えた凹部を有する部品を示す概略図。
【
図6】硬化後のコーティング済み凹部を有する部品を示す概略図。
【
図7】実施例で得られた各コーティングについて、処理された基材と未処理の基材との間の、処理時間に応じたΔE
*ab値を示すグラフ。
【
図8】試験した微粒子についてその耐摩耗性に対する影響に関する概要を示す図。
【
図9】比較用の金のPVDコーティングについての引掻き試験の結果を示す図。
【
図10】比較用のBerlapoxy(登録商標)2K 058コーティングについての引掻き試験の結果を示す図。
【
図11】本発明によるコーティングについての引掻き試験の結果を示す図。
【0022】
具体的には、本発明は次の態様を提供する:
1.時計部品用のコーティング組成物であって、
*結合剤と;
*1以上の顔料と;
*少なくとも1つの賦形剤と;
*溶剤又は混合溶剤、好ましくは酢酸ブチル及び/又は乳酸エチルと、
*場合により、1以上の一般的に使用される添加剤、通例の補助剤又はこれらの組み合わせと
を含んでいるコーティング組成物。
2.結合剤は二成分形ポリウレタンである、請求項1に記載のコーティング組成物。
3.顔料の量は組成物の全固形分に対する重量比で19〜58重量%である、請求項1又は2に記載のコーティング組成物。
4.ポリウレタンの2つの成分は2つの別個の組成物として調合されている、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング組成物を形成するためのパーツ型のキット。
5.時計部品のコーティングであって、
*結合剤、好ましくは二成分形ポリウレタンと;
*1以上の顔料と;
*少なくとも1つの賦形剤と;
*場合により、1以上の一般的に使用される添加剤、通例の補助剤又はこれらの組み合わせと
を含んでいるコーティング。
6.結合剤は二成分形ポリウレタンである、請求項5に記載の時計部品のコーティング。
7.顔料の量はコーティングの全固形分に対する重量比で19〜58重量%である、請求項5又は6に記載の時計部品のコーティング。
8.共形コーティングである、請求項5〜7のいずれか1項に記載のコーティング。
9.高い耐引掻性、高い耐用性、及び/又は高い光学的被覆力を有する、請求項5〜8のいずれか1項に記載のコーティング。
10.艶消し、艶有り、又は真珠光沢の外観を有する、請求項5〜9のいずれか1項に記載のコーティング。
11.時計部品をコーティングするための方法であって、
a)場合により、基材を準備するステップと;
b)場合により、1以上の均質なペーストを、好ましくは着色ペースト及び/又は賦形剤ペーストとして、調製するステップと;
c)場合により、ステップb)で得た異なるペーストの予混合物を調製するステップと;
d)ステップa)及び/又はb)で得られたペースト若しくは予混合物から、又は成分から直接、請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング組成物を調製するステップと;
e)基材上にコーティング組成物を適用するステップと;
f)場合により、乾燥を行うステップと
g)コーティングを形成するためにコーティング組成物を硬化させるステップと
を含んでいる方法。
12.請求項11に記載の方法によって得られるか、又は請求項5〜10のいずれか1項に記載のコーティングを備えている、時計部品。
【0023】
[コーティング]
本発明のコーティングは、結合剤、1以上の顔料、少なくとも1つの賦形剤、及び最後に添加剤を含んでいる、ポリウレタン系コーティングである。該コーティングは、本発明のコーティング組成物から、場合により乾燥を伴う成膜、及び硬化の後に得られる。
【0024】
コーティング組成物は、コーティングと同じ成分に加えて1以上の溶剤を含有している。コーティング組成物とコーティングとの間の差は溶剤のみであって溶剤は適用及び硬化の後に除去されるので、コーティング中の顔料の量は、全固形分に基づいて表現されることからコーティング組成物中の量と同じである。
【0025】
コーティング組成物は、
a)結合剤と;
b)1以上の(組成物の全固形分に基づく)顔料と;
c)少なくとも賦形剤、例えばSiO
2、Al
2O
3又はマイクロダイヤモンドと;
d)溶剤又は混合溶剤、例えば酢酸ブチル及び/又は乳酸エチルと;
e)場合により、1以上の一般的に使用される添加剤、通例の補助剤又はこれらの組み合わせと
を含んでいる。
【0026】
本発明における成分については、コーティング組成物に関して、かつ同時にコーティングに関して以降に説明する。
【0027】
[結合剤]
結合剤は、脂肪族系ジイソシアナート及びポリオールを基にした二成分形ポリウレタン(PU)であることが好ましい。
【0028】
概して、既知の全種類の二成分形ポリウレタンが本発明のコーティング組成物に適している。
【0029】
本発明で使用される結合剤は、比較的高い、すなわち約50℃を上回る反応温度を有することが好ましい。例えば、ポリオールと硬化剤との間の反応は、80℃で1時間、続いて150℃で2時間の後に完了する。反応の完了は、赤外線測定及び/又は熱分析により検証される。熱分析は試験サンプルを加熱することにより実施され;加熱で発熱反応が引き起こされる場合、反応は完了していない。
【0030】
ポリオールは、ポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールであることが好ましい。ポリオールは、そのままで使用することも、製造業者が提供するような適切な溶剤に溶解して使用することも可能である。
【0031】
さらに、ポリオール成分は、添加剤、例えば酸化に対する安定化剤又はその他の製造業者により提供されるような一般的に使用される添加剤などを含んでもよい。
【0032】
ポリオールは直鎖状ポリオールでも、軽度の分岐型ポリオールでも、又は分岐型ポリオールであってもよく、好ましくはポリエステルポリオールであるとよい。通常、ポリオールは脂肪族の飽和化合物である。
【0033】
本発明により適切に使用可能なポリオールは一般に、それぞれOH含有量(DIN EN ISO 4629‐2に従って計測)が6〜9%、好ましくは6.3〜8.9%、より好ましくは6.5〜8.6%であるか、又はOH価(DIN 53 240に従って計測)が50〜240mgKOH/g、好ましくは55〜230mgKOH/gである。
【0034】
例えば、直鎖脂肪族ポリオールを基にした飽和ポリオールポリエステル樹脂であり、かつ溶剤ベースの二成分形PU系の製造に適しているWorleePol(登録商標)VP 6778(ドイツ連邦共和国ハンブルクのヴォルレー・ヘミー社(Worlee-Chemie GmbH)より入手可能)を、ポリエステルポリオールとして使用することが可能である。WorleePol(登録商標)VP 6778のポリオールポリエステルのM
wは、サイズ排除クロマトグラフィーによる計測でおよそ2000gmol
−1である。WorleePol(登録商標)VP 6778(VP‐U 1423/95とも称される)は酢酸ブチル中の78%溶液である。不揮発分含量(1h、125℃、DIN EN ISO 3251に従って計測)は、78%±1である。WorleePol(登録商標)VP6778のOH含有量は7.8重量%(乾重量)であり、粘度は、レオメータでの計測で20℃、C35/1、50s
−1において10,000〜45,000mPa・sである。WorleePol(登録商標)VP6778は、製造業者により提供されるデータシートによれば、低い温度でも優れた耐薬品性と非常に良好な可撓性とを有する二成分形上塗り材の調合に適している。
【0035】
その他市販のポリエステルポリオール又はポリエーテルポリオールは本発明に照らして同様に適切であり、例えば
Desmophen(登録商標)VP LS 2328(コベストロ社(Covestro AG )より入手可能な直鎖状短鎖ポリエステルポリオール;粘度はDIN EN ISO 3219/A.3に従い23℃で800±50mPa・s、OH含有量はDIN EN ISO 4629‐2によれば7.95±0.35%、酸価はDIN EN ISO 2114によれば<5.0mgKOH/g)、
Desmophen(登録商標)1100(コベストロ社より入手可能、水酸基を有する分岐状ポリエステル、酸価はDIN EN ISO 2114によれば≦3mgKOH/g、粘度はDIN EN ISO 3219によれば23℃で30,500±5,500mPa・s、水酸基含有量はDIN EN ISO 4629‐2によれば6.5±0.45%)、
Desmophen(登録商標)800(コベストロ社より入手可能、水酸基を含有する高度分岐ポリエステル、酸価はDIN EN ISO 2114によれば≦4mgKOH/g、粘度はDIN EN ISO3219/A.3によれば23℃、1‐メトキシ‐2‐プロピルアセタート中に70%で850±150mPa・s、水酸基含有量はDIN EN ISO 4629‐2によれば8.6±0.3%)、
Lupraphen(登録商標)2901/1(ビーエーエスエフ社(BASF AG )より入手可能、酸化に対して安定化された部分的に分岐状のポリエステルポリオール、安定化剤はホスファイト及びBHTを含んでいない、酸価はDIN EN ISO 2114によれば≦2.5mgKOH/g、粘度はDIN EN 12 092によれば25℃で20,500mPa・s、水酸基価はDIN 53 240によれば223mgKOH/g)、又は
Lupraphen(登録商標)2602/1(ビーエーエスエフ社より入手可能、軽度に分岐状の脂肪族ポリエステルポリオール、酸価はDIN EN ISO 2114によれば≦1.5mgKOH/g、粘度はDIN EN 12 092によれば25℃で21,650mPa・s、水酸基価はDIN 53 240によれば59mgKOH/g)
などである。
【0036】
二成分形PU結合剤の第2の成分はイソシアナートである。好ましくは、脂肪族ジイソシアナート又は脂肪族ポリイソシアナートを使用することが可能である。
【0037】
ヘキサメチレンジイソシアナート、例えば、フランス共和国サン=プリエストのベンコレックス・フランス社(Vencorex France Societe par Actions Simplifiee)より入手可能な、中程度の粘度を有する溶剤を含まない脂肪族ポリイソシアナートであるTolonate(商標)HDT‐LV2、が特に適している。
【0038】
その他の適切なイソシアナートはイソホロンジイソシアナート(IPDI)及び4,4’‐ジイソシアナトジシクロヘキシルメタン(H12MDI)である。
【0039】
他の市販の二成分形ポリウレタンも本発明に従って使用可能である。
【0040】
結合剤の2つの成分は、下記に述べるようにコーティング組成物に別々に添加される。
【0041】
コーティング組成物は、PU組成物の可使時間内で時計部品上にコーティングされる。
【0042】
結合剤は、本発明によれば最終製品の主要な特性をもたらす。
ジイソシアナート又はポリイソシアナートは一般的にジオール又はポリオール成分に対して過剰量で添加される。過剰量のポリイソシアナート(例えばTolonate(商標))を添加する利点は、次の3点である。
1.ポリオール中に、ジイソシアナートとの反応でポリオールと競合することが可能な水が残存しており、その結果得られる収率が100%未満になること。
2.過剰量のイソシアナートは、アロファナート形成により結合剤マトリックスをより一層架橋させることも可能であり、このことは摩耗・引掻き及び化学薬品への抵抗性がより高いコーティングをもたらすこと。
3.ポリオール反応性の官能基含有量が必ずしも正確に知られているとは限らないこと。
【0043】
本発明のコーティングの調製については、ジオール又はポリオール成分に対して10%過剰量のジイソシアナートが、より優れた安定性を達成するために使用されることが好ましい。
【0044】
[顔料]
以下に開示されるような顔料が、目標の色すなわち特定のPantone(登録商標)又はRALの色調を達成するために本発明に従って選択される。
【0045】
顔料の量は、コーティングの適切な隠蔽力(すなわち光学的被覆力)を得るために調整することが可能である。量は上記のようにして指定される。
【0046】
例えば、有機顔料又は有機金属顔料は、キナクリドン顔料、キナクリドンキノン顔料、ジオキサジン顔料、フタロシアニン顔料、アントラピリミジン顔料、アンサンスロン顔料、インダンスロン顔料、フラバントロン顔料、ペリレン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ペリノン顔料、キノフタロン顔料、アントラキノン顔料、チオインジゴ顔料、ベンズイミダゾロン顔料、イソインドリノン顔料、アゾメチン顔料、アゾ顔料及びジアゾ顔料、青色の有機顔料であって例としてはHeliogen(商標)ブルー、例えばHeliogenブルーL7085、Heliogen(商標)シアン、Sicopal(商標)ブルーなど、赤色の有機顔料であって例としてはIrgazin(商標)レッド、ルビン、スカーレットなど、Cinquasia(商標)マゼンタ、ピンク、レッド、黄色の有機顔料であって例としてはCromophtal(登録商標)イエローL1084、Hostaperm(商標)イエローHG3、Paliotol(商標)イエローL0962HD、Irgazin(商標)イエロー、Sicopal(商標)イエロー、橙色の有機顔料であって例としてはHostaperm(商標)オレンジGR;Irgazin(商標)オレンジ、Sicopal(商標)オレンジ、緑色の有機顔料であって例としてはHeliogen(商標)グリーンL8735、Sicopal(商標)グリーン、その他の種類の有機顔料、例えば茶色顔料、紫色顔料、蛍光顔料などであって例としてCromophtal(商標)ブラウン、Cromophtal(商標)バイオレットなど、から選択可能である。
【0047】
さらなる例として、無機顔料の具体的な種類としては、白色顔料、例えば二酸化チタン、亜鉛白、硫化亜鉛又はリトポン、Kronos(商標)2310(TiO2);黒色顔料であって例としてはカーボンブラック、アイアンマンガニーズブラック又はスピネルブラック;Emperor(商標)1200、ランプブラック101;有彩顔料、例えば酸化クロム、水酸化クロムグリーン、コバルトグリーン又はウルトラマリングリーン、コバルトブルー、ウルトラマリンブルー、マンガニーズブルー、ウルトラマリンバイオレット、コバルトバイオレット、マンガニーズバイオレット、赤色酸化鉄、カドミウムスルホセレニド、モリブダートレッド、ウルトラマリンレッド、褐色酸化鉄、クロムオレンジ、黄色酸化鉄、ニッケルチタンイエロー、クロムチタンイエロー、硫化カドミウム、硫化カドミウム亜鉛、クロムイエロー、バナジン酸ビスマス、複合金属酸化物、スピネル相又はコランダム相;クロム・アンチモン・チタン複合酸化物、例えばSicotan(商標)イエローL1912など、アルミン酸コバルトブルースピネル(CoAl
2O
4)、例えばSicopal(商標)ブルーK7210など;ピグメントグリーン50、例えばSicopal(商標)グリーンEH2059(L9715)など;バナジン酸ビスマス、例えばSicopal(商標)イエローL1130など、酸化第二鉄(Fe
2O
3)、例えばBayferrox(商標)レッド130Mなど;黄色酸化鉄、例えばBayferrox(商標)3920などが挙げられる。
顔料は、特定の色調を達成するために、単独で使用されてもよいし2以上の顔料の混合物として使用されてもよい。
【0048】
顔料、及び軽微にではあるが賦形剤は、色彩の色相及び明度を決定付けることになり、また賦形剤それ自体は適正な機械的抵抗性を可能にするであろう。溶剤及び添加剤は、コーティング組成物をより使用し易くするか、及び/又はコーティング組成物の特性を増強するであろう。
【0049】
組成物全体に対する結合剤(すなわち好ましくはポリウレタン)の量は、通常15〜60重量%である。結合剤が15重量%未満であると、組成物の凝集は確保されない。
【0050】
顔料の量は通常19〜58重量%、及び賦形剤の量は好ましくは19〜25重量%であって、それぞれ組成物中のすべての成分の合計を100重量%とした場合の組成物全体に対する重量%である。組成物が顔料及び/又は賦形剤を総量で19重量%未満しか含有しない場合、該組成物は所望のとおりに不透明とはならない場合がある。
【0051】
[賦形剤]
賦形剤としては、一般的に使用されている賦形剤を使用することができる。例えば、アルミナ、シリカ、スピネル、ケイ酸塩、ジルコニア、炭化ケイ素、石英、工業用ダイヤモンドなどを、本発明により適切に使用することが可能である。
【0052】
様々な粒径を有するアルミナ(Al
2O
3)の種類の混合物を本発明に従って使用することが好ましいが、より好ましくは、12.8±1μm及び6.5±1μmの粒径(d50)を70:30の比で有する種類のアルミナの混合物が、30重量%の濃度で使用される(例えばAlodur(登録商標)コランダムF800及びF500など)。耐摩耗性は、賦形剤粒子を含まないコーティングと比較して8倍高まる。
【0053】
別例では、アルミナ粒子は、通常のシランカップリング剤、例えばアミノプロピル‐トリメトキシシラン、N‐(2‐アミノエチル)‐アミノプロピルトリメトキシシラン、3‐グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3‐メタクリルプロピルトリメトキシシラン、ビニルメトキシシランなどを用いて官能化される。より好ましくは、官能化アルミナ粒子は上記に定義された様々な粒径を有するアルミナの種類の混合物である。アルミナ粒子はその表面に水酸基を有し、この水酸基は官能化反応によりメタノールを放出してシランカップリング剤と反応する。得られた官能化粒子はこの時イソシアナートと反応することができるアミノ基を有しており、従ってコーティング組成物のマトリックスに共有結合する。アミノプロピルトリメトキシシランを用いると、耐摩耗性が粒子を含まないコーティングと比較して約14倍に高まることが観察されている。
【0054】
さらなる別例では、工業用ダイヤモンドであって8〜15μmが70%及び0.1〜1μmが30%(それぞれ重量%)のもの(マイクロダイヤモンド)が賦形剤として使用される。例えば、単結晶ダイヤモンドのMONO‐ECO 0.5〜1.0μm 0.71μm又は単結晶ダイヤモンドのMONO‐ECO 8〜15μmが適切である。類似の他の「マイクロダイヤモンド」(単結晶であるかどうかは不問)を使用することも考えられる。
【0055】
耐摩耗性は、賦形剤を加えることにより粒子を含まないラッカーと比較して約14倍に高まる。
【0056】
Aerosil(登録商標)200又はAeroxide(登録商標)Alu Cのような沈降防止剤が賦形剤と共に添加されると好都合である。
【0057】
賦形剤粒子の使用はコーティングの色彩に影響を及ぼす。したがって、組成物の調合は賦形剤粒子の存在を考慮に入れなければならない。
【0058】
賦形剤粒子は、コーティング組成物に直接添加されてもよいし、ペーストとして提供されてもよい。賦形剤ペーストは、後述の予混合物に添加されることも可能である。
【0059】
特定の実施形態では、賦形剤ペーストは、適切と考えられる量の上記に指定されたポリオールを含有する。
【0060】
補助剤が必要に応じて賦形剤ペーストに加えられてもよい。
【0061】
例えば、安定化剤は、フタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーン、有機バイオレット顔料並びにカーボンブラックを安定化する時に湿潤分散用ポリマー添加剤の有効性を改善する。安定化剤は、高分子量の湿潤分散用添加剤がフタロシアニンブルー及びフタロシアニングリーン、有機バイオレット顔料並びにカーボンブラックの表面に、より効率的に吸着されることを可能にし;それにより湿潤分散用添加剤の有効性を高める。顔料の安定化が改善され、かつ粘度が低下する結果としてより高い顔料含有量が見込まれる。
【0062】
例えば、垂れ防止剤は組成物中の粒子/固形分の沈降及び垂れを防止する。
【0063】
例えば、チキソトロピック剤は、組成物中の粒子/固形分の色浮き及び色相むらを低減する。
【0064】
[溶剤]
適切な粘度を得るために、かつコーティングの乾燥時間を制御するべく組成物の蒸発速度を制御するために、適切な溶剤がコーティング組成物に含められる。適切な溶剤は、酢酸ブチル、キシレン、トルエン及び/又は乳酸エチルであってよい。酢酸ブチル及び/又は乳酸エチルが使用されることが好ましい。溶剤は、粘度を改変して適合させるために、ペースト、予混合物又はコーティング組成物のいずれかに添加される。
ペースト及び予混合物は酢酸ブチルを用いて調製されると好都合である。
【0065】
さらに有利には、乳酸エチルが、組成物の蒸発速度を改変して適合させ、かつ粘度を制御するために、コーティング組成物中の乳酸ブチルに加えて使用される。蒸発速度は、割れ、穿孔、凹みなどの生成を妨げるように適合させる必要がある。乳酸エチルは通常はラセミ体の形態で使用されるが、その鏡像異性体のうちいずれか一方として使用されてもよい。乳酸エチルは、コーティングの直前に組成物に添加されることが好ましい。
乳酸エチルのさらなる利点は、乳酸エチルが作業者にとって酢酸ブチルのような他の溶剤よりも毒性が低いということである。
【0066】
[添加剤又は通例の補助剤]
選ばれた顔料及び要求される外観(艶あり、艶消し)に応じて、様々な添加剤又は通例の補助剤を本発明の組成物中に使用することが可能である。添加剤又は通例の補助剤の例を以下に列挙する:
*湿潤分散用添加剤(Disperbyk(登録商標)‐161又はDisperbyk(登録商標)‐2150又はSolsperse(登録商標)32500);
*基本的には青色又は緑色の顔料のための、顔料分散を促進するための安定化剤(BYK(登録商標)‐SYNERGIST 210);
*表面張力を低減するための作用薬(BYK(登録商標)‐306);
*艶消剤(Acematt(登録商標)3300);
*接着促進剤(WorleeAdd487);
*垂れ防止・沈降防止剤(BYK‐E‐410、Aerosil(登録商標)200又はAeroxide(登録商標)Alu C);
*チキソトロピック剤(Aerosil(登録商標)200、BYK‐E‐410);
*UV安定化用添加剤、例えばTinuvin(商標)1130又はTinuvin(商標)123など。
【0067】
粒子の沈殿作用を防止するために、沈降防止剤を加えることが可能である。沈降防止剤の例は、Aerosil(登録商標)200(シリカ系)およびAeroxide(登録商標)Alu C(アルミナ系)である。
【0068】
別例として、沈降防止剤を一様に分散させるために、沈降防止剤を、結合剤の1成分であるWorleePol(登録商標)VP6778のようなポリエステルポリオール及び酢酸ブチルのような溶剤と混合して、ペーストにすることが可能である。
【0069】
添加剤又は通例の補助剤のペーストは、予混合物を調製するために使用することが可能である。
【0070】
添加剤又は通例の補助剤のペーストは、結合剤の成分であるポリエステルポリオールを含有していると好都合である。
【0071】
[コーティング組成物の調製]
第1の選択肢では、組成物の様々な構成要素(顔料、結合剤、溶剤、賦形剤、添加剤、通例の補助剤)は直接混合される。
【0072】
第2の選択肢では、組成物の少なくとも一部の構成要素(顔料、賦形剤及び/又は添加剤及び/又は通例の補助剤)は1以上のペースト又は1以上の予混合物として提供される。ペースト及び/又は予混合物は最終的に共に混合されて本発明の組成物を形成する。
【0073】
ペースト又は予混合物は場合によりその均質化を向上させるためにミル、例えばビーズミル(破砕用ビーズの直径は0.5mm、破砕速度4000〜6000rpm)を用いて粉砕することが可能である。
【0074】
組成物の一例をグラム表示で以下に挙げる。
【0075】
橙色のコーティング組成物は、およそ4000Pa(40mbar)の弱い減圧条件下にて、
*1.217gの第1のペースト:
・賦形剤ペーストは、0.167gの酢酸ブチル、0.833gの乳酸エチル、及び0.217gの6.5±1μmのアルミナ(Al
2O
3、例えばAlodur(登録商標)コランダムF800)(d50)を混合することにより調製される;
*0.174gのTolonate(商標)HDT‐LV2;
*1gの予混合物(以降の実施例Bを参照のこと)
を混合することにより得られる。
【0076】
組成物の例は表2に提示されている。
【0077】
組成物は、ポリウレタンの形成によって組成物の硬化が生じる前の適切な時間内に適用される。その時間は使用されるコーティング技術及び温度によって決まる。さらに、組成物の粘度は適用技法との整合性がなければならない。粘度は過度の負担なく最適化することが可能であり、かつこれは当業者には日常的な業務である。適切な時間は粘度の計測によりモニタリングすることができる。ある橙色ラッカーについての粘度の増大を本発明者らはモニタリング済みである。4時間後、粘度は著しく増大し始めた。粘度は常に溶剤含有率及び使用される顔料によって左右され、かつあらゆる色について測定されるべきである。
【0078】
コーティング中の顔料に必要な分散状態を達成するために、顔料が組成物中に直接混合されてもよいし、有色ペーストが上述のように調製されてから添加されてもよい。
【0079】
別例として、有色ペーストどうしが組み合わされて、又は有色ペーストが他のペーストと、例えば賦形剤ペースト、添加剤ペースト、若しくはさらに複雑なペーストなどと共に、予混合物中で混合されることも可能である。複雑なペーストとは、様々な機能を有する粒子(顔料、賦形剤、添加剤)を含むペーストである。
【0080】
説明を簡潔にするために、ペーストという用語は本明細書中で単純なペースト及び複雑なペーストの両方について述べるために使用されることとする。
【0081】
顔料ペーストは、ポリオール、好ましくはWorleePol(登録商標)VP 6778を含んでいると好都合である。
【0082】
目指す色彩及び顔料の性質に応じて、チタン酸化物のような不透明顔料がコーティングの隠蔽力を改善するために組成物に添加されるか、又は二層構造(白色若しくは金属の下塗り材と有色の上塗り材)が使用されることが可能である。すなわち、最初に白色のコーティング組成物のコーティングが行われ、場合により乾燥及び硬化が行われ、かつさらにその上面に、本発明による有色のコーティング組成物のコーティングが行われ、場合により乾燥及び硬化が行われる。様々な種類の顔料、例えば有機顔料、有機金属顔料、無機顔料及び金属粉顔料、カーボンブラック又は蛍光顔料などを使用することが可能である。
【0083】
[コーティング方法]
コーティング組成物の適用は、当業者には既知であってコーティングすべき基材の構造に適合した様々な技法によって行うことが可能である。コーティング技法の例は、スプレーコーティング、浸漬コーティング、スピンコーティング、バーコーティング、メイヤーバーコーティング、ジェットコーティング、ブラシによる成膜、シリンジの使用による計量分配技法、パッド印刷、スクリーン印刷などである。
【0084】
粘度、流動学的挙動、賦形剤の粒径、溶剤濃度及び溶剤蒸発速度のような、組成物のいくつかの特徴を、選択された成膜技法に適切に適合させる必要がある。コーティング組成物で着色すべき凹部を備えた時計ベゼルについては、コーティング組成物を、例えば計量分配技法を用いて有利に成膜することが可能である。
【0085】
コーティングは1層で適用されてもよいし、2以上の層で適用されてもよい。各層を適用した後、コーティングは乾燥及び硬化せしめられる。
【0086】
コーティング組成物は、例えば凹部の中に適用される(
図2に例示)。成膜される体積は凹部の体積に合わせて調整されなければならない。
【0087】
別の具現化例では(
図3に例示)、コーティング組成物は、時計部品の表面及び少なくとも1つの凹部に適用される。硬化の後、凹部内にのみコーティングを残すために、表面が当業者に既知の任意の適切な技法で研磨されることにより表面上のコーティングが除去される。表面の処理は、従来説明されているようにして表面に適用することが可能である。
【0088】
別例では(図示せず)、主としてコーティングが浸漬コーティング又はスピンコーティングのような表面全体を覆う技法によって適用される場合に、一部の凹部は、コーティングが適用される前に、従来の洗浄技法又は任意の同等手段によって容易に除去可能な仮組成物で充填されて、選ばれた凹部(すなわち仮組成物で充填されていない凹部)のみを着色するようにすることが可能である。過剰量のコーティングは任意の研磨技法によって除去され、かつ仮組成物が除去される。表面の処理は、従来説明されているようにして表面に適用することが可能である。
【0089】
[乾燥及び硬化]
コーティングが施された時計部品は、硬化の前に既知技法を適用して清浄化及び乾燥を行うことが可能である。
【0090】
好都合には、コーティング組成物の硬化は2つのステップで行われる。非限定的な例として、硬化は、イソシアナートが最終生成物に残存しないことを確実にするために、80℃で1時間、その後150℃で2時間加熱することにより実施可能である。
【0091】
[コーティング方法の詳細な説明]
コーティング方法は、次のステップすなわち
a)場合により、基材を準備するステップと;
b)場合により、1以上の均質なペーストを、好ましくは着色ペースト及び/又は賦形剤ペーストとして、調製するステップと;
c)場合により、ステップb)で得た異なるペーストの予混合物を調製するステップと;
d)請求項1〜3のいずれか1項に記載のコーティング組成物を、ステップa)及び/又はb)で得られたペースト若しくは予混合物から、又は成分から直接、調製するステップと;
e)基材上にコーティング組成物を適用するステップと;
f)場合により、乾燥を行うステップと
g)コーティングを形成するためにコーティング組成物を硬化させるステップと
を含んでいる。
【0092】
[基材の準備]
基材は、時計部品の製造のために一般的に使用される材料で作られる。材料は特に限定されない。材料は、金属、例えばステンレス鋼若しくは貴金属、例えば金(特に金合金、例えば18金、ホワイトゴールド、イエローゴールド若しくはレッドゴールド)、銀合金、例えば875銀、925銀すなわちスターリング銀、若しくは白金合金、チタン、若しくは時計部品の製造に適したその他の金属、又は工業用セラミック(例えばジルコニア(好ましくは例えばイットリウムで安定化されたもの)、若しくはアルミナ)若しくはサーメット、又は時計に通常使用されるポリマー、例えばポリカーボネート、シリコーン若しくはポリウレタン、又は炭素繊維複合材若しくはガラス繊維複合材のような複合材料、又はこれらの材料のうち任意のものの組み合わせ、例えば金/ホワイトゴールド、金/ステンレス鋼、ポリマー/複合材料などであってよい。
【0093】
コーティングが共形である(乾燥及び硬化の後にコーティングが凹部の壁面及び底面にきっちりと付着し、中空のくぼみと特有の外観とを生じることになる)という事実に関しては、凹部の、特に凹部の底面の幾何学的形状は、最終的な部品の美観に強い影響力を有しうる。該コーティングは、強烈な色彩という利点を備えつつ、凹部の底面に対してPVDコーティングと同じように作用することになる。さらに該コーティングは、基材の凹凸や粗さを覆い隠すように、PVDコーティングよりもはるかに厚く作られることが可能である。
【0094】
凹部の正確な幾何学的形状(深さ及び幅)は最終的な審美上の結果に影響を及ぼす。典型的な凹部の深さは60〜300マイクロメートルである。典型的な凹部の幅は50μm〜6mmである。凹部の幾何学的形状は、規則的形状(例えば円形若しくは矩形若しくは星形)を有してもよいし、数字や文字のような、不規則な形状を有してもよい。不規則な形状の場合、最大の幅及び最大の深さが、それぞれ本明細書中における幅及び深さと見なされる。
【0095】
適切な粘度を備えれば、極めて狭い凹部であってもコーティング組成物で満たすことが可能である。例えば、幅100マイクロメートルの狭い空洞をコーティング組成物で充填することが可能であり、その場合凹部のコーティングはジューリンの法則として知られる毛管作用により流し込まれる。
【0096】
時計部品は、コーティングの適用前に準備、洗浄及び乾燥が行われることが好ましい。
【0097】
しかしながら基材は、本発明のコーティングを適用する前に少なくとも清浄化される、すなわち洗浄される必要がある。清浄化(すなわち洗浄)はあらゆるコーティング技術における標準的なステップである。洗浄は、準備のステップが実行される場合に、基材の場合による準備の前及び/又は後において実行することが可能である。通常、洗浄は準備の前に行われる。
【0098】
本発明のコーティングが付着するためには、追加の基材準備は必要ではない。しかしながら、準備によりコーティングの層間剥離、凹凸などを回避するような利点がもたらされることも考えられる。
【0099】
セラミックについて好都合なのは、基材が、接触面を増やすために、例えばコランダムを用いた最初のサンドブラスト処理を伴って準備されることである。別例として、表面は、レーザテクスチャリング、化学エッチング、プラズマエッチング又は任意の他の適切な技法によって、改変することが可能である。
【0100】
別例として、又は追加として、基材の化学的又は物理的処理が、基材上のコーティングの付着をさらに改善するために基材に施されることが可能である。そのような処理により、表面を、PUコーティングの付着性を改善するように官能化することが可能である。
【0101】
別例として、又は追加として、別の化学的又は物理的処理が、コーティングが付着するべきでない表面上で行われることも可能である。
洗浄は、当業者に既知の標準的な清浄化法を使用して実行される。より具体的には、洗浄は、適切な溶剤、例えばアセトン、エタノール、メタノール、イソプロパノール、ブタノール、酢酸エチル、酢酸ブチル、メチルエチルケトン、クロロホルム、n‐ヘプタン、n‐ヘキサンなどを用いて、又は洗剤を含有する水相中で、又は酸素、オゾンなどのような気体を使用して、実行される。数回の洗浄ステップが、各ステップに同じ流体又は異なる流体を用いて連続して行われることも可能である。
【0102】
場合により、各洗浄ステップの後に、洗浄された基材が例えば温風を用いるか又は当分野で既知の任意の適切な方法で、乾燥せしめられる。
【0103】
[均質化ペーストの調製]
顔料、通例の補助剤及び/又は添加剤を、コーティング組成物に直接、又はあらかじめ調製された1以上の均質化ペーストにより、添加することが可能である。
【0104】
均質化ペーストは、顔料、及び/又は通例の補助剤及び/又は添加剤を溶剤と混ぜ合わせた状態で含んでいる。成分は、混合物が肉眼で均質に見えるまで通常の手法で均質化される。均質化は、例えば、次の方法:
*平坦な層(数十cm
2)を作り、続いて色彩の均質性を観察及び計測し、表面に集塊が無いことを観察すること
*ツェンター社(Zehnter GmbH)の粒ゲージを用いて粒子又は集塊の大きさを計測すること
*ラッカー又は層から得られた様々なサンプルの熱重量分析(TGA)
によってモニタリングすることが可能である。
【0105】
有利には、均質化ペーストはポリウレタン結合剤のポリオール成分も含んでいる。
【0106】
この場合、ペーストがポリオールのみを用いて作られるならば該ペーストは十分な貯蔵寿命を有する。さらに、ポリオールの代わりにポリウレタンのイソシアナート成分をペーストに加えることも可能である。
例えば各々が異なる顔料を含有している数種の異なるペーストがあらかじめ調製されてもよいし、1つのペーストのみが調製されてもよい。
【0107】
[ペーストの混合 − 有色ペーストの例]
ポリオール(好ましくはWorleePol(登録商標)VP 6778)、溶剤(好ましくは酢酸ブチル及び/又は乳酸エチル)、通例の補助剤並びに添加剤(Disperbyk(登録商標)‐161及びAerosil(登録商標)200)をブリキ缶に入れ、溶解機を使用して分散させる(およそ4000rpmでおよそ2分)。その後、小分けにした顔料を添加して低速(およそ500rpm)で混合する。小分け分ごとに、顔料が均一に分布した後で速度を4000〜6000rpmに上げ、ペーストをおよそ1分間分散させる。全ての顔料を添加し終えたら、ペーストを5000〜7000rpmでおよそ3分間混合する。
【0108】
白色、黄色、橙色及び黒色の着色ペースト組成物の例を表1に示す。
【表1】
【0109】
[ビーズミルを用いたペーストの粉砕]
上述のような有色ペーストは、好ましくは例えばWAB社のDYNO(登録商標)ミル・リサーチラボ型(破砕用ビーズの直径0.5mm;破砕速度6000rpm)を用いた粉砕によって均質化される。ペーストは1回で(断続的に)破砕される。均質化されたペースト中の粒径はTQC社のグラインドメータで測定される。粒径の測定はDIN EN 21 524に従って行われる。
【0110】
本発明の重要な特徴は、顔料及び/又は賦形剤の粒子の大きさ並びにそのコーティング組成物中への分配である。顔料及び/又は賦形剤の粒径は、その顔料及び/又は賦形剤の性質に適合せしめられる。
【0111】
顔料の粒径は、好都合には<10μm、より好都合には<5μmである。白色顔料については、粒径は通常<10μmであり、有色の顔料については通常<5μmであり、黒色顔料については通常<1μmである。
【0112】
賦形剤は、好都合には<15μmの粒子を70重量%及び<1μmの粒子を30重量%、より好都合には<13μmの粒子を70重量%及び<7μmの粒子を30重量%の比率で含んでいる。
【0113】
本発明による粒径は、上述のようにグラインドメータを使用して「組成物」中で測定される。
【0114】
[予混合物の調製]
別例として、数種のペーストを混ぜ合わせて本明細書中で予混合物と呼ばれるペーストとすることが可能である。必要であれば、予混合物の粘度を、溶剤の添加によって適合させることが可能である。溶剤は上述と同じものであり、好ましくは酢酸ブチル及び/又は乳酸エチルである。最も好ましくは、予混合物に使用される溶剤は酢酸ブチルである。
【0115】
予混合を行うことにより、例えば、色調の微調整が可能となる。
【0116】
予混合物は、上述のペーストに使用された方法と同じ様に粉砕することが可能である。
【0117】
上記に開示されたすべてのステップにおける粉砕の間に、ビーズミルの庫内温度は上昇する。したがって、その次の運転を開始する前に、ビーズミルの庫内温度を室温に戻すと好都合である。
【0118】
[コーティング組成物の調製]
【0119】
好ましくは全固形分に対して19〜58重量%の顔料を有しているコーティング組成物が調製される。顔料の量は、使用される特定の顔料に応じて変化する。19重量%を下回ると、組成物の光学的被覆力は不十分である。58重量%を上回ると、組成物中に十分な賦形剤及び結合剤を含むことが困難になる。実際に、顔料の比率が高いほど隠蔽力が高まることになるので、通常は可能な限り多くの顔料が組成物に添加されることになる。しかしながら、顔料によっては粒径が非常に小さく、このことが粘度を高め、かつ破砕を困難にする(ビーズミルの目詰まりなど)。一般に、顔料の量は熟練者の実際的経験によって決定されることになろう。例えば、カーボンブラックについては比較的低い顔料含有量が適正となり、チタン酸化物については比較的高い顔料含有量が適切となろう。
【0120】
有利には、上述のようなペースト又は予混合物が使用される。ペースト又は予混合物は、ジイソシアナートと共に、かつ必要に応じて本発明のコーティング組成物を調製するための追加のポリオール、及び/又は溶剤、及び/又は賦形剤、及び/又は添加剤、及び/又は通例の補助剤と共に、混ぜ合わされる。
【0121】
ポリイソシアナート及びポリオールの量は上述のように関連があり、よって原則として追加のポリオールを加える必要はない。
【0122】
この場合もまた、溶剤は好ましくは酢酸ブチル及び/又は乳酸エチルであることが可能だが、酢酸ブチルは組成物の許容可能な貯蔵寿命を達成するという点で望ましい。乳酸エチルは、上記に述べるように、組成物を調製するための追加の溶剤として使用されることが好ましい。しかしながら、酢酸ブチルが最終ステップで追加の溶剤として使用されることも考えられる。
【0123】
別例として、溶剤及びジイソシアナート及びポリオール、及び/又は溶剤、及び/又は顔料、及び/又は賦形剤、及び/又は添加剤、及び/又は通例の補助剤は、いかなるペースト又は予混合物も使用せずに本発明のコーティング組成物を調製するために直接混ぜ合わされる。
【0124】
別例として、PU結合剤のイソシアナート及びポリオール成分が異なるペーストに含まれており、次いでそれらのペーストが、時計部品をコーティングする直前にコーティング組成物を形成するために混ぜ合わされる。そのため、それらのペーストはパーツ型のキットを形成する。
【0125】
本発明によるコーティング組成物は一般に、7%を超える、好ましくは7.5%を超えるOH含有量(DIN EN ISO 4629‐2に従って計測)、又はDIN 53 240に従った計測で≧240mgKOH/g、好ましくは≧245mgKOH/g、さらにより好ましくは≧247mgKOH/gのOH価を有している。
【0126】
[好ましい組成物]
橙色、白色、赤色及び青色用の好ましい組成物を表3(コーティング組成物)及び表4(硬化コーティング)に挙げる。
【表2】
【表3】
【0127】
本発明によるコーティングは、高い耐摩耗・引掻性、高い耐用性、及び/又は高い光学的被覆力を示すことが証明されている。
【0128】
顔料を含む塗料/ニス/ラッカーとの関連においては、被覆力とは隠蔽力、換言すれば、塗料/ニス/ラッカーが表面を被覆し、その表面がもはや該コーティングを通して見られないようにすることができる程度、を指している。被覆力は、顔料及び薄膜を形成しているビヒクルの屈折率の差に比例する。被覆力はさらに、顔料の特性にも左右される。被覆力が大きいほど、単位表面積当たりに必要な塗料は少なくなる。目視及び測光による検査手順がコーティングの被覆力を測定するために使用されてもよい。
【0129】
本発明における耐久性とは、光、特に紫外線光、温度、湿度の影響、及びその他環境の影響に対する耐性を意味する。特に、耐久性は、コーティングが時計の正常な使用状況の下では変色しない、例えば黄変しないことを意味する。
【0130】
耐摩耗・引掻性は、材料が様々な種類の損傷、例えば引掻傷、抉れ傷、摩滅及びその他の傷などに抵抗する能力について述べている。耐摩耗性は、摩擦、擦過及び浸食のような機械的作用に対抗する材料の能力として定義され、耐引掻性は、視認可能な溝を生じる可能性のある機械的損傷に対して材料が抵抗する能力である。
【0131】
耐摩耗性は摩耗試験によって計測可能であり、耐引掻性は下記に述べるような引掻抵抗試験によって計測可能である。
【0132】
組成物を適用して乾燥させることにより得られる本発明のコーティングは、高い動的弾性率、好ましくは動的機械分析(DMA)による計測で>10
9Paの動的弾性率を有する。
【0133】
さらに、コーティングは、動的水蒸気吸着(DVS)による計測で、40℃及び60%RHで24時間の等温線を用いた水分摂取量0.4〜0.6%の湿度に対して高い耐性を有している。
【0134】
得られたコーティングは、窒素雰囲気下の示差走査熱量測定(DSC)による計測で55〜71℃のT
gを有する。
【実施例】
【0135】
実施例A(賦形剤ペースト)
賦形剤ペーストを、0.167gの酢酸ブチル、0.833gの乳酸エチル、及び0.217gのアルミナ(Alodur(登録商標)コランダムF800のようなAl
2O
3)を混合することにより調製する。
【0136】
実施例B(有色の予混合物)
2ステップでの予混合物の調製の一例について以下に詳述する。
【0137】
第1のペーストを、99.72gのHostaperm(商標)イエローH3G、28.82gのHostaperm(商標)オレンジGR、111.71gのKronos(商標)2310、199.16gのWorleePol(商標)VP6778、74.47のDisperbyk‐161及び120.52gの酢酸ブチルを混合することにより調製する。
【0138】
第1のペーストについては、酢酸ブチル、Disperbyk(登録商標)‐161及びWorleePol(商標)VP6778を量り取ってブリキ缶に入れる。
【0139】
この第1のペーストを溶解機で短時間撹拌する。次いで3種の顔料全てを同時に加える。ブリキ缶を軽く揺り動かすことにより、又はへらを用いて撹拌することにより、顔料が液体に浸るようにする。
【0140】
第1のペーストを溶解機で撹拌する(3000rpmで10〜15分)。
【0141】
第1のペーストを、DYNO(登録商標)ミル及び0.5mmのジルコニアビーズを使用して5700rpmの速度で2回破砕処理する。2回目の処理の後、最も大きな粒子の大きさをグラインドメータの方法によって測定する。
【0142】
第1のペーストに2.84gのAeroxid(登録商標)Alu C、1.92gのBYK(登録商標)‐306及び6.41gのWorleeAdd(登録商標)487を加えることにより、予混合物を調製する(一部の生成物は粉砕方法で失われるので、量は目的のコーティング組成物が得られるように調整しなければならない)。
【0143】
次いで予混合物を、Dispermat(登録商標)を用いて撹拌する(3000rpmで10〜15分、粉末が空回りするのを回避するためにAeroxid(登録商標)をゆっくり添加するか又は最初にへらを用いて撹拌する)。
【0144】
次にこれを、Dispermat(登録商標)を用いて再度撹拌する(3000rpmで10〜15分、粉末が空回りするのを回避するためにAeroxid(登録商標)をゆっくり添加するか又は最初にへらを用いて撹拌する)。
【0145】
得られた予混合物を、ビーズミルを用いてもう一度粉砕する。
【0146】
実施例C(黒色の組成物)
黒色の有色ペーストを、24.2gのSolsperse(登録商標)32500、29.3gのWorleePol(登録商標)VP 6778、5gのAeroxide(商標)Alu C及び22.1gの酢酸ブチルを混合することにより調製する。この第1の混合物をブリキ缶に量り取り、溶解機(ディスク直径=4cm)を用いて3000rpmで5分間撹拌する。50gのEmperor(登録商標)1200(カーボンブラック)をポリプロピレン製ビーカーに量り取り、第1の混合物に添加する。黒色の有色ペースト、すなわち第1の混合物+カーボンブラックを、3000rpmで5分間撹拌する。得られた黒色の有色ペーストを次にビーズミルで破砕する。
【0147】
粉砕処理はWAB社のDYNO(登録商標)ミル・リサーチラボ型を用いて行う。直径0.5mmの破砕用ジルコニアビーズを使用する。破砕速度は6000rpmである。黒色の有色ペーストを、粒度が5μm未満になるまで破砕する。顔料分散物は直ちに撹拌及び破砕しなければならない。2回の粉砕ステップの後、黒色の有色ペーストは安定して沈降はこれ以上生じない。粒径は6回の粉砕ステップの間におよそ30μmから<1μmへと小さくなる。
【0148】
得られた45.4gの黒色の有色ペースト、11gの市販の官能化アルミナ粒子(70重量%のAlodur(登録商標)コランダムF500、12.8±1μm及び30重量%のAlodur(登録商標)コランダムF800、6.5±1μm;30重量%、いずれもイエプコ社(IEPCO )より入手可能)並びに9.6gのTolonate(商標)HDT‐LV2を、ポリプロピレン製ビーカーに量り取り、溶解機(ディスク直径=2cm)を用いて4000rpmで5分間撹拌する(第1の混合物)。1gのWorleeAdd(登録商標)487、0.3gのBYK(登録商標)‐306及び30.4gの酢酸ブチルを別途ビーカーに量り取り、へらでよく混合し、第1の混合物に添加して第2の混合物を形成する。第2の混合物を4000rpmで2分間撹拌する。最後に2.3gのAcematt(登録商標)3300を加え、この全体混合物すなわち黒色コーティング組成物を、5000rpmで10分間撹拌する。空気を除去するために、黒色コーティング組成物を超音波浴槽内に5分間置く。
【0149】
黒色コーティング組成物を、904Lステンレス鋼の基材上にスプレーコーティングを行うために使用する。基材を予めアセトンで洗浄し、続いてエタノールで第2の洗浄を行う。最後に、洗浄した基材を、エタノールを蒸発させることにより乾燥させる。
【0150】
黒色コーティングされた基材を80℃のオーブンに5分間置き、100℃、25分間で完全に乾燥させる。
【0151】
黒色コーティング組成物の硬化は、2ステップすなわち:80℃で5分間、続いて100℃で25分間にて行われる。
【0152】
実施例D(Pantone1575C組成物)
実施例Dでは、特定のPantoneの橙色(1575C)を作り出す。
【0153】
下記に詳述する有色ペーストを、構成物質を合わせて混合することにより調製する。有色ペーストを、WAB社のDYNO(登録商標)ミル・リサーチラボ型(破砕用ビーズの直径0.5mm;破砕速度6000rpm)を用いて細かく粉砕する。ペーストは1回で(断続的に)破砕する。均質化されたペースト中の粒径をTQC社のグラインドメータで測定する。
【0154】
白色の有色ペーストを、65重量%のチタン酸化物(Kronos(商標)2310)、22.5重量%のWorleePol(商標)VP 6778、7.9重量%の酢酸ブチル、4.3重量%のDisperbyk(登録商標)‐161及び0.3重量%のAerosil(登録商標)200を用いて調製する。この白色の有色ペーストを粒径<10μmまで細かく粉砕する。
【0155】
黄色の有色ペーストを、30重量%のHostaperm(商標)イエローH3G、40重量%のWorleePol(商標)VP 6778、15重量%の酢酸ブチル及び15重量%のDisperbyk(登録商標)‐161を用いて調製する。この黄色の有色ペーストを粒径<5μmまで細かく粉砕する。
【0156】
橙色の有色ペーストを、12重量%のHostaperm(商標)オレンジGR、16重量%のWorleePol(商標)VP 6778、65重量%の酢酸ブチル及び7重量%のDisperbyk(登録商標)‐161を用いて調製する。この橙色の有色ペーストを粒径<5μmまで細かく粉砕する。
【0157】
粒子の沈降を防止するために、沈降防止剤をコーティング組成物に添加する。沈降防止剤を一様に分散させるために、沈降防止ペーストを、68.4重量%のWorleePol(商標)VP6778、20.6重量%の酢酸ブチル及び11重量%のAeroxide(登録商標)AluCを混合することにより調製する。この沈降防止剤ペーストを粉砕する。
【0158】
有色ペースト及び沈降防止ペーストから始めて、表3にまとめたような、結合剤(イソシアナート(Tolonate(商標)HDT‐LV2))、溶剤(乳酸エチル)、賦形剤粒子、添加剤及び通例の補助剤(接着促進剤及び湿潤剤)を添加することによりコーティング組成物を調製する。
【0159】
16.6gの白色ペースト、28.8gの黄色ペースト、16.8gの橙色ペースト、4.3gの沈降防止ペースト、17gの酢酸ブチル、1gのWorleeAdd(登録商標)487、0.3gのBYK(登録商標)‐306、15.2gのイソシアナート(Tolonate(商標)HDT‐LV2)及び17.7gのマイクロダイヤモンド(70重量%の8〜15μm+30重量%の0.5〜1μm;30重量%)を混合する。
【0160】
バーコーティングを、清浄で平らな鋼板上に75μmメイヤーバーを用いて25mm/秒の速度で行う。
【0161】
コーティングされた基材を、予熱したオーブンにて100℃で30分間硬化させる。
【0162】
実施例E(時計ベゼル上の橙色組成物)
実施例Eでは橙色の標示を備えたセラミックベゼルを作り出す。
【0163】
セラミック製ベゼルは一般に、表面に凹部を備えて射出成形によって得られ、次いで素地の脱バインダ処理及び焼結が行われる。ベゼル表面をサンドブラスト機器においてコランダムでサンドブラスト処理し、このベゼルを注意深く洗浄して乾燥させる。
【0164】
賦形剤ペーストを、0.167gの酢酸ブチル、0.833gの乳酸エチル、及び0.217gの官能化アルミナ(Al
2O
3、例えばAlodur(登録商標)コランダムF800など)を混合することにより調製する。
【0165】
予混合物を、実施例Bに上述されるようにして調製する。
【0166】
1.217gの賦形剤ペーストを0.174gのTolonate(商標)HDT‐LV2及び1gの予混合物とともに混合することにより、コーティング組成物を調製する。
【0167】
コーティング組成物をシリンジのコンテナ部に導入し、次いでベゼルの表面にある凹部に計量分配の技法で(手動で、又はロボットで駆動される計量分配機器を使って)、成膜する。
【0168】
その後ベゼルを室温で一晩乾燥させる。
【0169】
コーティング組成物を、2ステップすなわち:80℃で1時間、続いて150℃で2時間で、硬化させる。
【0170】
最後に、コーティングされたベゼル表面を、
図3に例証するようにして凹部の外側の過剰なコーティングを除去するために研磨する。
【0171】
[コーティングされた部品の試験]
コーティングされた部品について、最終結果を確認するために試験した。比較用のコーティング付きサンプルを、様々な結合剤すなわちWorleeCryl(商標)=アクリル樹脂;Berlapoxy(登録商標)=一成分形ラッカーを使用することにより同様に得た。Berlapoxy(登録商標)は、スイスのベルラック社(Berlac AG )より入手可能な時計用の特殊なラッカーである。これは140℃のような低温で焼成可能な二成分形エポキシ樹脂焼付エナメルである。
【0172】
[周囲との物理化学的相互作用による変化]
溶剤及び人工汗液に対するコーティングの耐性について、コーティング付き基材を設定温度で設定時間浸漬することにより試験した。
*ガソリン(10分、周囲温度)
*漂白剤(ジャベル水)(10分、周囲温度)
*漂白剤(ジャベル水)(10日、周囲温度)
*メチルエチルケトン(10分、周囲温度)
*人工汗液(20gの塩化ナトリウム、17.5gの塩化アンモニウム、5gの尿素、2.5gの酢酸、15gの乳酸)(24時間、40℃)
*一般家庭用洗剤(Handy(登録商標)、ミグロ(Migros)で購入)+超音波浴(10分、周囲温度)
【0173】
コーティング付き基材をすすぎ、視覚的に照合してそれぞれ未試験のサンプルと比較した。本発明によるコーティング組成物(WorleePol(登録商標)VP 6778)でコーティングされたサンプルについては、外観変化は観察されていない、すなわち差異を肉眼で見出すことはできず、色彩は同一に見える。結果を表4に示す。「OK」は外観の変化がないことを意味している。
【表4】
【0174】
[紫外線抵抗性]
試験はDIN EN ISO 11341:2004に従って実施した。CIEのL
*a
*b色空間を紫外線曝露の持続期間全体にわたって測定し、比較した。各サンプル/持続期間と比較用タイルの未処理部分との間のΔEを測定した。ΔEは、三次元の色空間における2つの色の間の距離を表す。ΔEが小さいほど、双方の色はより同一に近い。
【数1】
【0175】
本発明によるコーティングは紫外線安定性に関して最も安定な系である。この事実は、図のΔE値で示されている(
図7)。本発明によるPUコーティングについてのΔE値は明らかに最小かつ最も一定した値である。この事実は肉眼で見ても明らかである。
【0176】
本発明による橙色のコーティングを、市販の橙色のPUエナメル塗料と比較した。市販のエナメル塗料(Berlapoxy(商標))及び比較用のWorleeCryl(商標)2335又はWorleeCryl(商標)2445をベースとしたコーティングは、96時間後に色の変化を感知できない本発明のコーティング(WorleePol(商標)VP 6778)とは対照的に、黄変を示している。
【0177】
本発明のコーティングに対する紫外線光の影響は、試験したすべての色について同程度である(結果は示さない)。肉眼で差異を見出すことはできず、色彩は同一であるように見える。
【0178】
[熱衝撃抵抗性]
サンプルを水が入ったビーカーに浸漬し、70℃のオーブン中に1時間置いた。その後、ビーカーをオーブンから取り出し、直ちに4℃の冷蔵庫に入れた。そのような温‐冷サイクルを4回繰り返し、次いでサンプルをひび割れの出現について視覚的に調査して未試験サンプルと比較した。
【0179】
外観の変化はWorleePol(商標)VP 6778をベースとした本発明のコーティングについて観察されなかった。WorleeCryl(商標)A2335又は2445をベースとした比較用コーティングは小さなひび割れを示す。
【0180】
[耐湿性]
サンプルを、相対湿度100%で60℃の湿度室に24時間置いた。
【0181】
外観の変化は試験した全てのコーティングについて観察されなかった。
【0182】
[耐摩耗性]
コーティングの耐摩耗性を、Elcometer(登録商標)1720摩耗試験機を用い、寸法15×20mmであり600g/cm
2のパッド圧を得るために1800gの負荷がかけられた摩耗パッド(ミグロのMiobrill(登録商標))を使用して、試験した。摩耗パッドを、コーティングが除去されるまで35サイクル/分の速度で作動させた。摩耗率は、コーティングの厚さをストロークの数で割ったものである。
【0183】
コーティング厚は、フィッシャー社(Fischer )のDualscope(登録商標)MP40を使用して渦電流法により計測した。
【0184】
本発明のコーティングの耐摩耗性を、標準的なPVDコーティング及び賦形剤を含まないコーティングの耐摩耗性と比較した。結果を表5に示す。
【表5】
【0185】
[賦形剤の大きさの影響]
ナノ粒子賦形剤は、文献(マイケル・ベルカイ博士(Dr. Michael Berkei)、機能性コーティングのためのBYKナノテクノロジー添加剤(BYK Nanotechnology Additives for Functional Coatings)、2013年10月21日)によれば、単位面積当たりにより多くの粒子を使用することが可能であることからマイクロ粒子より有利であると考えられている。
【0186】
意外にも、本発明者らは、マイクロ粒子と比較してナノ粒子又はサブミクロン粒子を使用することによるコーティングの耐摩耗性の明瞭な改善はみられないことを観察している。
【0187】
マイクロ粒子の沈降を防止するために、Aerosil(登録商標)200又はAeroxide(登録商標)Alu Cのような沈降防止剤を使用することが可能である。平滑で欠陥のないコーティングを得ることができる。
【0188】
アミノプロピルトリメトキシシラン又はマイクロダイヤモンドで官能化されたAl
2O
3粒子は、耐摩耗性の改善に関して非常に良好な結果をもたらす。
【0189】
様々な大きさの粒子を混合することにより耐摩耗性が改善されることが観察されている。70重量%の大きな粒子と30重量%の小さな粒子とが混合される比率が、耐摩耗性に関しては1/1比よりも有利である。この7/3比は、次の表6及び
図8から明白であるように、球体の最密充填に相当する。
【表6】
【0190】
[耐引掻性]
本発明による橙色のコーティングの耐引掻性について、2つの他のコーティング:金のPVDコーティング(物理蒸着)及び商用供給業者が製造した白色樹脂コーティング(Berlapoxy(登録商標)058)と比較した。耐引掻性は、サンプルの表面を綿パッド上のガラス粉末BREMOR BR550で2分間、次いでスコッチ・ブライト7440パッドで1分間、引っ掻くことにより試験した。
【0191】
試験後のコーティング面の評価は、
*PVDコーティング:引掻傷は密集しており著明である;
*白色の商用樹脂コーティング(Berlapoxy(登録商標)058):引掻傷は中程度に密集しており目に見える;
*本発明によるコーティング:引掻傷はほとんど目に見えない
ということを示している。
【0192】
結果を
図9〜11に示す。注:
図11は橙色で艶消しのサンプルを示す。