特開2021-75806(P2021-75806A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特開2021-75806繰り返し塑性変形可能な線状部材、マスク用保護部材及び繰り返し塑性変形可能な線状部材の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-75806(P2021-75806A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】繰り返し塑性変形可能な線状部材、マスク用保護部材及び繰り返し塑性変形可能な線状部材の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/11 20060101AFI20210423BHJP
   A62B 18/02 20060101ALI20210423BHJP
【FI】
   A41D13/11 Z
   A62B18/02 C
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】5
(21)【出願番号】特願2019-202008(P2019-202008)
(22)【出願日】2019年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】519397600
【氏名又は名称】有限会社クラヤ
(74)【代理人】
【識別番号】100154966
【弁理士】
【氏名又は名称】海野 徹
(72)【発明者】
【氏名】蔵 淳哉
【テーマコード(参考)】
2E185
【Fターム(参考)】
2E185AA07
2E185BA08
2E185BA12
2E185BA17
2E185BA18
2E185CC36
2E185CC73
(57)【要約】
【課題】 肌触りが良く繰り返し塑性変形可能な線状部材と、この線状部材を使用したマスク用保護部材と、繰り返し塑性変形可能な線状部材の製造方法を提供する。
【解決手段】 本発明の繰り返し塑性変形可能な線状部材1は、繰り返し塑性変形可能な合成樹脂製の線状の芯材10と、芯材の周囲を覆う熱融着糸20と、熱融着糸の周囲を覆うウーリー加工糸30とを備えており、ウーリー加工糸は熱融着糸の接着力によって芯材に固定される。熱融着糸でウーリー加工糸を芯材に接着するので位置ずれ等の問題が生じず、繰り返し洗濯できる。また、芯材として塑性変形可能な線状の部材を使用するので使用者が自在に変形させることができる。芯材の材料として合成樹脂を使用するので、金属を使用する場合と比較して錆が発生しない、軽量化できる、廃棄が容易、安全性の観点から食品・医療用製品に適している、端部の切断面が鋭利になりにくいという効果を得られる。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
繰り返し塑性変形可能な合成樹脂製の線状の芯材と、
前記芯材の周囲を覆う熱融着糸と、
前記熱融着糸の周囲を覆うウーリー加工糸とを備えており、
前記ウーリー加工糸は前記熱融着糸の接着力によって前記芯材に固定されていることを特徴とする繰り返し塑性変形可能な線状部材。
【請求項2】
請求項1に記載の繰り返し塑性変形可能な線状部材が螺旋状に形成されて成ることを特徴とするマスク用保護部材。
【請求項3】
繰り返し塑性変形可能な合成樹脂製の線状の芯材の周囲を熱融着糸で覆うステップと、
加熱しながら前記熱融着糸の周囲をウーリー加工糸で覆うステップと、
前記加熱により生じる前記熱融着糸の接着力によって前記ウーリー加工糸を前記芯材に固定するステップを少なくとも備えることを特徴とする繰り返し塑性変形可能な線状部材の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肌触りが良く繰り返し塑性変形可能な線状部材と、この線状部材を使用したマスク用保護部材と、繰り返し塑性変形可能な線状部材の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
繰り返し塑性変形させることができる線状部材(針金等)は袋の開口部の結束や植物の支柱への固定等の様々な分野で使用されている。線状部材は芯材として使用している金属を塑性変形させる。しかし、金属は錆が発生する、軽量化が難しい、廃棄に手間がかかる、安全性の観点から食品・医療用製品には使用し辛い、端部の切断面が鋭利になり使用者が怪我するおそれがある等の種々の問題を有する。
【0003】
そこで、近年合成樹脂製の線状部材が開発されている(特許文献1及び2)。この線状部材は上記問題を解消できるだけでなく、様々な分野での使用が想定される。
例えば、マスクを長時間着用していると耳に掛けているゴム紐(耳輪)が耳に食い込んだり擦れたりして痛みが生じることがある。そこで例えば従来シリコーンゴム等の軟質ゴムを筒状に形成して螺旋状に切り込んだり、螺旋状に加工したりしたマスク用保護部材が知られている(特許文献3及び4)。このマスク用保護部材を耳輪に取り付けることで、耳輪が耳に直接触れることがなくなるので痛みを軽減できる。上述した合成樹脂製の線状部材を螺旋状に形成すれば軟質ゴム製のマスク用保護部材の代替品となる可能性がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第3582854号公報
【特許文献2】特許第3810698号公報
【特許文献3】特開2015−42231号公報
【特許文献4】特開2013−150678号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上記合成樹脂製の線状部材をマスク用保護部材のようなヒトの肌に直接触れる使い方をする場合には肌触りをよくするために何らかの加工を施すのが好ましい。
【0006】
本発明は、上記のような問題を考慮して、肌触りが良く繰り返し塑性変形可能な線状部材と、この線状部材を使用したマスク用保護部材と、繰り返し塑性変形可能な線状部材の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の繰り返し塑性変形可能な線状部材は、繰り返し塑性変形可能な合成樹脂製の線状の芯材と、前記芯材の周囲を覆う熱融着糸と、前記熱融着糸の周囲を覆うウーリー加工糸とを備えており、前記ウーリー加工糸は前記熱融着糸の接着力によって前記芯材に固定されていることを特徴とする。
本発明のマスク用保護部材は、上記繰り返し塑性変形可能な線状部材が螺旋状に形成されて成ることを特徴とする。
本発明の繰り返し塑性変形可能な線状部材の製造方法は、繰り返し塑性変形可能な合成樹脂製の線状の芯材の周囲を熱融着糸で覆うステップと、加熱しながら前記熱融着糸の周囲をウーリー加工糸で覆うステップと、前記加熱により生じる前記熱融着糸の接着力によって前記ウーリー加工糸を前記芯材に固定するステップを少なくとも備えることを特徴とする。
【発明の効果】
【0008】
本発明では繰り返し塑性変形可能な合成樹脂製の線状の芯材の周囲をウーリー加工糸で覆い、熱融着糸の接着性を利用してウーリー加工糸を芯材に固定する。仮に熱融着糸を用いずに芯材の周囲をウーリー加工糸で覆っただけの構造の場合、ウーリー加工糸が芯材の表面を滑ってしまい、ウーリー加工糸の位置ずれが生じたり芯材の端部から抜けてしまったりするおそれがある。本発明では熱融着糸でウーリー加工糸を芯材に接着して固定するので位置ずれ等の問題が生じず、繰り返し洗濯することもできる。
芯材として塑性変形可能な線状の部材を使用するので使用者が自在に変形させることができる。
芯材の材料として合成樹脂を使用するので、金属を使用する場合と比較して錆が発生しない、軽量化できる、廃棄が容易、安全性の観点から食品・医療用製品に適している、端部の切断面が鋭利になりにくいという効果も得られる。
最表面がウーリー加工糸で覆われているので肌触りが良いという効果も得られる。
【0009】
繰り返し塑性変形可能な線状部材を螺旋状に形成してマスクの耳輪に取り付けることでマスク用保護部材として使用することができる。使用者が線状部材を伸ばした状態や縮めた状態で保持することができるので使用者の耳の大きさに合わせて調整することが可能になる。
また、従来のようにマスク用保護部材の材料を軟質ゴムにする場合と比較して本発明ではウーリー加工糸が汗を吸収するので耳が蒸れる事態を防止でき、また、ウーリー加工糸が耳の皮膚に柔らかく接触するので使い心地を良好にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】繰り返し塑性変形可能な線状部材の断面図(a)及び斜視図(b)
図2】マスク用保護部材をマスクの耳輪に取り付けた状態を示す平面図
【発明を実施するための形態】
【0011】
[繰り返し塑性変形可能な線状部材]
本発明の繰り返し塑性変形可能な線状部材(以下、単に「線状部材」と表記することがある。)の実施の形態について説明する。
図1に示すように線状部材1は芯材10、熱融着糸20、ウーリー加工糸30を備える。
芯材10は繰り返し塑性変形可能な合成樹脂製の線状の部材である。合成樹脂の材料としては繰り返し塑性変形が可能であれば特に限定されないが、例えばポリエチレン樹脂、ポリオレフィン樹脂、ウレタン樹脂が挙げられる。芯材10として使用可能な製品としては例えば積水成型工業株式会社製のフォルテ(登録商標)、三井化学株式会社製のテクノロート(登録商標)、株式会社ハギテック製の形状保持樹脂ワイヤーなどが挙げられる。芯材10の直径は特に限定されないが、0.5ミリ〜1.5ミリ程度が好ましい。
【0012】
熱融着糸20は芯材10の周囲を覆うための部材である。熱融着糸20を芯材10に巻き付ける方法で覆うのが好ましい。熱融着糸20は加熱により融着する糸(接着力を発揮する糸)であり、具体的にはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリエチレン、オレフィン系等の周知の熱融着糸を利用できる。熱融着糸20の融点は特に限定されないが80℃〜150℃が好ましい。熱融着糸20を融着させるための加熱方法としては例えば室熱式、直接式等が挙げられる。
【0013】
ウーリー加工糸30は熱融着糸20の周囲を覆う部材である。ウーリー加工糸30を熱融着糸20の周囲に巻き付けたり、編み込んだりする方法で覆うのが好ましい。ウーリー加工糸30としてはナイロン、ポリエステル、ポリプロピレン等の公知のウーリー加工糸を使用することができる。ウーリー加工糸30としてマルチフィラメント糸を用いてもよい。
ウーリー加工糸30で熱融着糸20の周囲を覆った状態で加熱することで熱融着糸20が溶け出して接着力が生じる。この接着力によりウーリー加工糸30を芯材10に固定する。
【0014】
[線状部材の製造方法]
次に、線状部材1の製造方法について説明する。
まず作業者は芯材10の周囲に熱融着糸20を巻き付けたりして芯材10の周囲を熱融着糸20で覆う。
次に作業者は加熱しながら熱融着糸20の周囲にウーリー加工糸30を編み込んだり巻き付けたりして熱融着糸20の周囲をウーリー加工糸30で覆う。加熱により生じる熱融着糸20の接着力を利用してウーリー加工糸30を芯材10に固定することで線状部材1の製造が完了する。
線状部材1を適当な長さに切断する際に線状部材1の端部が鋭利な形状になる場合がある。その場合は安全上の観点から端部をカバーで覆ったりグラインダーで丸めたりするのが好ましい。
【0015】
[マスク用保護部材]
図2に示すように線状部材1を螺旋状に形成することでマスク用保護部材2を得られる。
使用者はマスク用保護部材2を伸ばしながらその端部からマスク40の耳輪41を内部に入れていくことでマスク用保護部材2を耳輪41に取り付けることができる。
螺旋状に形成した線状部材1はマスク用に限定されず、他にも例えば眼鏡のテンプル(つる)に取り付けたり、靴紐として使用したりしてもよい。
【産業上の利用可能性】
【0016】
本発明は、肌触りが良く繰り返し塑性変形可能な線状部材と、この線状部材を使用したマスク用保護部材と、繰り返し塑性変形可能な線状部材の製造方法であり、産業上の利用可能性を有する。
【符号の説明】
【0017】
1 繰り返し塑性変形可能な線状部材
2 マスク用保護部材
10 芯材
20 熱融着糸
30 ウーリー加工糸
40 マスク
41 耳輪
図1
図2