特開2021-75807(P2021-75807A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 株式会社鎌倉製作所の特許一覧

<>
  • 特開2021075807-体温調節服 図000003
  • 特開2021075807-体温調節服 図000004
  • 特開2021075807-体温調節服 図000005
  • 特開2021075807-体温調節服 図000006
  • 特開2021075807-体温調節服 図000007
  • 特開2021075807-体温調節服 図000008
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-75807(P2021-75807A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】体温調節服
(51)【国際特許分類】
   A41D 13/005 20060101AFI20210423BHJP
【FI】
   A41D13/005 103
   A41D13/005 101
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-202035(P2019-202035)
(22)【出願日】2019年11月7日
(71)【出願人】
【識別番号】591240984
【氏名又は名称】株式会社鎌倉製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100104215
【弁理士】
【氏名又は名称】大森 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100196575
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 満
(74)【代理人】
【識別番号】100168181
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 哲平
(74)【代理人】
【識別番号】100117330
【弁理士】
【氏名又は名称】折居 章
(74)【代理人】
【識別番号】100160989
【弁理士】
【氏名又は名称】関根 正好
(74)【代理人】
【識別番号】100168745
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 彩子
(74)【代理人】
【識別番号】100176131
【弁理士】
【氏名又は名称】金山 慎太郎
(74)【代理人】
【識別番号】100197398
【弁理士】
【氏名又は名称】千葉 絢子
(74)【代理人】
【識別番号】100197619
【弁理士】
【氏名又は名称】白鹿 智久
(72)【発明者】
【氏名】堀江 威史
(72)【発明者】
【氏名】山坂 昇
(72)【発明者】
【氏名】山田 勝彦
【テーマコード(参考)】
3B011
【Fターム(参考)】
3B011AA01
3B011AB01
3B011AC01
3B011AC13
(57)【要約】
【課題】外気側の熱が侵入しにくく、かつ、肌側の熱を冷水に伝達しやすい、着用者の体温を効率よく低下させることができる体温調節服を提供する。
【解決手段】本発明の一形態に係る体温調節服は、所定の温度の液体が導入され、当該液体の流通により着用者の体温を調節する体温調節服であって、衣服本体と、搬送路および筒状の編み込み部とを具備する。上記衣服本体は、上記着用者の胴部を覆い、編地からなる。上記搬送路には、上記衣服本体に設けられ、上記液体が流れる。上記筒状の編み込み部は、上記衣服本体に設けられ、上記搬送路が挿入される。上記筒状の編み込み部は、着用者の肌に対向する肌側面を構成する第1の編地部分と、上記第1の編地部分よりも単位面積あたりの熱抵抗が大きい、当該肌側面の反対側の上記外気側面を構成する第2の編地部分とを有する。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の温度の液体が導入され、当該液体の流通により着用者の体温を調節する体温調節服であって、
前記着用者の胴部を覆い、編地からなる衣服本体と、
前記衣服本体に設けられた、前記液体が流れる搬送路、および、前記搬送路が挿入される筒状の編み込み部と
を具備し、
前記筒状の編み込み部は、
着用者の肌に対向する肌側面を構成する第1の編地部分と、
前記第1の編地部分よりも単位面積あたりの熱抵抗が大きい、当該肌側面の反対側の外気側面を構成する第2の編地部分と、を有する
体温調節服。
【請求項2】
請求項1に記載の体温調節服であって、
前記第1の編地部分は、前記第2の編地部分よりも編み目が粗い
体温調節服。
【請求項3】
請求項1または2に記載の体温調節服であって、
前記第1の編地部分は、前記第2の編地部分よりも厚みが薄い
体温調節服。
【請求項4】
請求項1〜3のいずれか1項に記載の体温調節服であって、
前記第1の編地部分の糸は、前記第2の編地部分の糸よりも細い
体温調節服。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の体温調節服であって、
前記第1の編地部分の糸は、前記第2の編地部分の糸よりも熱伝導性が高い材質からなる
体温調節服。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定温度の液体の流通により着用者の体温を調節する体温調節服に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、高温あるいは低温の作業環境にある屋内や、夏季あるいは冬季における屋外での作業での快適性を高めるため、冷却または加熱された流体を作業者の身体近傍に流通させることによって作業者の体温調節を行う体温調節服の開発が進められている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
体温調節服の内部を循環する流体の温度は、体温調節服に接続される流体温度調節装置によって調節される。流体温度調節装置は、典型的には、冷媒が循環する冷熱回路と、冷熱回路で冷却または加熱された流体を体温調節服に送出する流体回路とを有する。
搬送路は、この流体温度調節装置に接続され、流体温度調節装置から供給される冷却水が流れる流路を構成する。
着用者が着用する衣服本体は、編み物(ニット)として、表側と裏側に別れた2層の編地を少なくとも有し、双方の編地の間に搬送路を構成するチューブ材が挿入される筒状の編み込み部が形成される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2017−57518号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
工場や屋外などの酷暑環境下において体温上昇を抑えるために、このチューブ材を包囲する編み込み部において、編み目が密であると、表側の編地を透過する熱が侵入しにくいメリットがある反面、裏側の編地を透過する熱を冷水に伝達しにくいデメリットがある。
その一方で、編み目が粗いと、外気側の熱が透過しやすいデメリットがある反面、肌側の熱が、冷水が通るチューブまで透過し易く、肌側の熱を奪い易いというメリットがある。
このようなトレードオフ関係の改善が望まれていた。
【0006】
以上のような事情に鑑み、本発明の目的は、外気側の熱が侵入しにくく、かつ、肌側の熱を冷水に伝達しやすい、着用者の体温を効率よく低下させることができる体温調節服を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するため、本発明の一形態に係る体温調節服は、所定の温度の液体が導入され、当該液体の流通により着用者の体温を調節する体温調節服であって、衣服本体と、搬送路および筒状の編み込み部とを具備する。上記衣服本体は、上記着用者の胴部を覆い、編地からなる。上記搬送路には、上記衣服本体に設けられ、上記液体が流れる。上記筒状の編み込み部は、上記衣服本体に設けられ、上記搬送路が挿入される。上記筒状の編み込み部は、着用者の肌に対向する肌側面を構成する第1の編地部分と、上記第1の編地部分よりも単位面積あたりの熱抵抗が大きい、当該肌側面の反対側の外気側面を構成する第2の編地部分とを有する。
【0008】
上記体温調節服においては、衣服本体の外気側面における熱が、搬送路内の液体(冷却水)に伝達しにくく、かつ、肌側面における熱が冷却水に伝達しやすくなるため、熱損失をより削減することができ、効率よく体温を調節することができる。
【0009】
上記体温調節服において、上記第1の編地部分は、上記第2の編地部分よりも編み目が粗くてもよい。
【0010】
上記体温調節服において、上記第1の編地部分は、上記第2の編地部分よりも厚みが薄くてもよい。
【0011】
上記体温調節服において、上記第1の編地部分の糸は、上記第2の編地部分の糸よりも細くてもよい。
【0012】
上記体温調節服において、上記第1の編地部分の糸は、上記第2の編地部分の糸よりも熱伝導性が高い材質からなるとしても良い。
【発明の効果】
【0013】
以上述べたように、本発明によれば、着用者の体温を効率よく低下させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態に係る体温調節システムの使用例を示す作業者の側面図である。
図2】上記体温調節システムにおける流体温度調節装置の一例を示す概略図である。
図3】上記体温調節システムにおける体温調節服の正面図(a)および背面図(b)である。
図4】(a)は、図3(b)のA−A'部の拡大斜視図であり、(b)は、そのA−A'断面の、本発明の一実施例に係る概略構成図である。
図5】本発明の他実施例に係る図3(b)のA−A'断面の概略構成図である。
図6】本発明の他実施例に係る図3(b)のA−A'断面の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態を説明する。
【0016】
[体温調節システム]
図1は、本発明の一実施形態に係る体温調節システムの使用例を示す作業者の側面図である。
【0017】
本実施形態の体温調節システム1は、体温調節服100と、流体温度調節装置200とを備える。
体温調節服100は、作業者Uが着用可能な適宜の形態の衣服であって、作業者Uの体温を調節(冷却又は加温)することが可能な流体(本例では、水)の循環通路を有する。
流体温度調節装置200は、体温調節服100の内部を循環する流体の温度を調節する冷熱回路を内蔵する。作業者Uは特に限定されず、例えば、溶接現場や土木現場等の作業従事者が該当する。
【0018】
本実施形態の体温調節システム1においては、流体温度調節装置200が作業者Uの背後に取り付けられることで、体温調節服100を着用する作業者Uと一体的に移動可能に構成される。
【0019】
[流体温度調節装置]
図2は流体温度調節装置200の概略図である。
【0020】
流体温度調節装置200は、回路ユニット20と、回路ユニット20を収容する筐体30と、筐体30を作業者Uの背面に固定するベルト41(図1参照)とを有する。
【0021】
回路ユニット20は、冷熱回路21と、流体回路22と、これらの運転を制御する制御部23とを有する。
【0022】
冷熱回路21は、冷媒を作動流体として用いる冷凍サイクル回路で構成され、圧縮機211と、凝縮器212と、キャビラリーチューブ213と、蒸発器214とを有する。凝縮器212及び蒸発器214は、それぞれ冷媒を空気及び流体と熱交換させる熱交換器として構成される。本実施形態では、凝縮器212において、冷媒と空気を熱交換するとともに、蒸発器214において、冷媒と流体回路22内の流体(水)とを熱交換して流体を所定温度に冷却する場合について説明する。
【0023】
なお、冷媒の循環経路を変更もしくは切り替える切替弁を設けることにより、蒸発器214を凝縮器として機能させるとともに、凝縮器212を蒸発器として機能させるようにすれば、流体回路22内の流体を所定温度に加熱することができる。
【0024】
圧縮機211は、例えば、ロータリー式コンプレッサであり、蒸発器214から供給される気体冷媒を圧縮し、凝縮器212へと吐出する。凝縮器212は、圧縮機211から吐出された高温高圧の冷媒ガスを凝縮して液化させる。凝縮器212には必要に応じて凝縮効率を促進させるファン215が付設される。凝縮器212で凝縮された冷媒は、キャピラリーチューブ213で減圧された後、蒸発器214で蒸発(気化)する。キャピラリーチューブ213に代えて、電子膨張弁等が採用されてもよい。
【0025】
流体回路22は、体温調節服100の出水口182(図3参照)にカプラ172を介して着脱可能に接続される吸水配管221と、体温調節服100の入水口181(図3参照)にカプラ171を介して着脱可能に接続される送水配管222とを有する。
【0026】
流体回路22はさらに、吸水配管221を介して導入された流体(以下、冷却水ともいう)を貯留するタンク223と、タンク223内の冷却水を蒸発器214へ向けて吐出するポンプ224とを有する。ポンプ224から吐出された冷却水は、蒸発器214において、主に冷媒の蒸発潜熱により熱量を奪われることで冷却される。蒸発器214において所定温度に冷却された冷却水は、送水配管222を介して体温調節服100の入水口181へ送出される。
【0027】
制御部23は、例えば、CPU(Central Processing Unit)やメモリを有するコンピュータで構成される。制御部23は、圧縮機211、ファン215、ポンプ224等の駆動を制御する。
【0028】
流体温度調節装置200は、回路ユニット20へ電源を供給する電源ケーブル37をさらに備える(図2参照)。電源ケーブル37は、筐体30の例えば側面部から外部へ延出される。電源ケーブル37は交流を直流に変換するアダプタ38を有する。流体温度調節装置200は、電源ケーブル37に代えて又はこれに加えて、充電可能なバッテリユニットを備えていてもよい。これにより、外部電源を必要とすることなく体温調節システム1を稼働させることができるとともに、作業者Uの行動範囲が広がり、移動の自由度が高められる。
【0029】
[体温調節服]
続いて、体温調節服100の詳細について説明する。図3は、体温調節服100の構成を示す正面図(a)および背面図(b)である。
【0030】
体温調節服100は、流体温度調節装置200から冷却水が導入され、当該冷却水の流通により、作業者Uの体温を調節する。体温調節服100は、作業者Uが着用する衣服本体10と、衣服本体10に設けられた冷却水の搬送路50とを有する。冷却水は例えば、10℃程度に設定される。
【0031】
衣服本体10は、着用者である作業者Uの体型に合わせて構成され、作業者Uの胴部を覆う第1のエリア11と、作業者Uの背中部を覆う第2のエリア12と、作業者の脇部を覆う第3のエリア13とを有する。衣服本体10は、作業者Uの首部を覆う第4のエリアを有してもよい(図示せず)。衣服本体10は、編地(編み物、伸縮性が考慮されたニット)から成り、ジャカード、ホールガーメント(登録商標)、インターシャなどによって一体的に製造される、例えば袖なしのジップアップのニットベスト(ノースリーブニット、インナーベスト)である。
衣服本体10は、その他の衣類全般に適用可能であり、ズボンやパンツなどでもよい。
【0032】
搬送路50は、流体温度調節装置200に接続され、流体温度調節装置200から供給される冷却水が流れる流路を構成する。搬送路50は、左右対称に設けられた第1の通路部51と、第2の通路部52と、第3の通路部53とが一続きとなって構成される。
【0033】
第1の通路部51は、第1のエリア11のうち主として作業者Uの胸部に対応する部位に割り当てられた区間であり、主として作業者Uの両胸部を冷却する。第2の通路部52は、第2のエリア12に割り当てられた区間であり、作業者Uの背中を冷却する。第3の通路部53は、第3のエリア13に割り当てられた区間であり、作業者Uの両脇部を冷却する。
【0034】
第1および第2の通路部51、52は、少なくとも1つの反転部を有する蛇行通路で形成される。
搬送路50は、経路上最も離れた位置にそれぞれ配置される入水口181及び出水口182を有する。入水口181は、カプラ171を介して流体温度調節装置200の送水配管222に接続され、出水口182は、カプラ172を介して流体温度調節装置200の吸水配管221に接続される。
【0035】
入水口181及び出水口182の設置個所は特に限定されず、本実施形態では後身頃部のテール部(最下部中央)に設置されるが、勿論これに限られない。入水口181及び出水口182は、それぞれ、カプラ171及びカプラ172と直接接続されてもよいし、接続用のチューブを介してカプラ171及びカプラ172と接続されてもよい。
【0036】
搬送路50が描く経路は、これに限定されないが、後身頃部のテール部において1つの入水口181から左右半身に其々流れるように2つの経路に分割される。これら2つの経路は、例えば、衣服本体10の第2のエリア12の中央部を直線的に通過し、第2のエリア12の上部から左右に離れる方向に弧を描く。その後、第3のエリア13を経由して第1のエリア11の上部を周り、再び第3のエリア13を経由して後身頃部のテール部に戻るように経路は形成される。この経路は、左右半身で同様のパターンを描き、作業者Uの背中全体、および、胸部(あるいは心臓部)の体温の上昇を効率よく抑えることができ、延いては、核心温の上昇を抑制することができる。
【0037】
搬送路50は上述したように、衣服本体10における第1〜第3のエリア11〜13に旦って配設される。衣服本体10は、典型的には、図4、5に示すように肌側の編地111(第1の編地部分)と、外気側の編地112(第2の編地部分)との2層構造(2重編み)を有する。ここで、肌側の編地111は、作業者Uの肌に対向する肌側面に接触又は近接する部分であり、外気側の編地112は、当該肌側面の反対側の外気側に位置する部分である。
【0038】
衣服本体10は、肌側の編地111と外気側の編地112との間に、搬送路50(第1〜第3の通路部51〜53)を構成するチューブ50Tを配設するための、筒状の編み込み部113を有する。この筒状の編み込み部113は袋状の2層構造であり、チューブ50Tを袋内部に挿通(挿入)させる。換言すると、筒状の編み込み部113は、搬送路50の経路を決定するものである。
【0039】
図3に示すように筒状の編み込み部113は、チューブ50Tをチューブ材の径方向および軸方向に全体的に覆うように袋状に形成される。編み込み部113の肌側の編地111は、チューブ50Tをチューブ材の軸方向において部分的に覆うようにループ状(縞模様)に形成されてもよい。これにより、チューブ50Tが編み込み部113に挿通しやすくなり、作業者Uが、チューブ50Tと部分的に直接接触することで、衣服本体10の冷却効果の向上も図ることができる。
【0040】
肌側の編地111は、例えば、ポリエステル糸を編んだものであり、抗菌性、吸収速乾性及び接触冷感を有する繊維組成を有する。外気側の編地112は、例えば、ポリエステル糸を編んだものであり、吸水速乾性及び遮熱性を有する繊維組成を有する。肌側の編地111および外気側の編地112は、熱伝導性をより高めるために、金属やカーボン糸などから編まれていてもよい。チューブ50Tは、合成樹脂製の管などのフレキシブル管で構成される。
搬送路50を内蔵した衣服本体10は、体温調節服100として前後に被せるものが不要であり、作業者Uが単一のものとして衣服本体10を容易に着用することができる。
【0041】
チューブ50Tを包囲する筒状の編み込み部113において、外気側の編地112は、肌側の編地111よりも単位面積あたりの熱抵抗が大きいことが望ましい。これにより、外気側面の熱がチューブ50T内の冷却水に伝達しにくく、かつ、肌側面の熱が冷却水に伝達しやすくなるため、熱損失をより削減することができ、効率よく体温を調節することができる。本実施形態では、編み機で体温調節服100を編む際に、筒状の編み込み部113を形成する過程で、チューブ50Tの経路の肌側と外気側の単位面積当たりの熱抵抗に差をつける。以下にその実施例を示す。
【0042】
[実施例]
本発明の一実施例として図4(b)に示すように、肌側の編地111は、チューブ50Tの径方向において、粗目の1層目のニット糸111a、粗目の2層目のニット糸111bなどから層状に構成される。外気側の編地112は、チューブ50Tの軸方向において、1段目のニット糸112a、2段目のニット糸112bなどから段状に構成される。
つまり、筒状の編み込み部113において、肌側の編地111は、外気側の編地112よりも編み目が粗い(開口率が大きい)。
【0043】
このように肌側の編地111および外気側の編地112の編み目の大きさを調整することにより、衣服本体10は、外気側の空気の侵入、つまり熱が侵入しにくく、かつ、肌側は、チューブ50Tの露出度合を大きくして、肌側の熱を冷水に伝達しやすくなり、作業者Uの体温を効率よく低下させることができる。
本実施例では、筒状の編み込み部113の、チューブ50Tを覆う筒状部のみにおいて、編み目の大きさを変更することにより、編地111と編地112の大きさを調整しているが、編みの技術が可能な限り一層と二層目が重なる部分においても、編地111及び編地112に、編目の差をつけても構わない。
【0044】
本発明の他実施例として図5に示すように、筒状の編み込み部113において、肌側の編地111は、1段目のニット糸111a、2段目のニット糸111bなどから構成される。外気側の編地212は、1段目のニット太糸212a、2段目のニット太糸212bなどから構成される。すなわち、肌側の編地111の糸は、外気側の編地212の糸よりも細い。ここで、肌側の編地111は、外気側の編地212よりも糸の番手が大きく(つまり細く)、単位体積あたりの密度が小さい。つまり、空気が透過しやすい。
編地糸の選択の代わりに、肌側の編地111は、外気側の編地112よりも厚みが薄くてもよい(図示せず)。
【0045】
このように肌側の編地111および外気側の編地112、212の厚みを設計することにより、衣服本体10は、外気側の熱が侵入しにくく、かつ、肌側の熱を冷水に伝達しやすくなり、作業者Uの体温を効率よく低下させることができる。
【0046】
本発明の他実施例として図6に示すように、筒状の編み込み部113において、肌側の編地211は、1層目の高熱伝導素材のニット211a、2層目の高熱伝導素材のニット糸211bなどから構成される。外気側の編地112は、1層目のニット糸112a、2層目のニット糸112bなどから構成される。つまり、肌側の編地211は、外気側の編地112よりも熱伝導性が高い糸を使用している。例えば、上記糸は、熱伝導性をより高めるために、金属(繊維)やカーボン(炭素繊維)などを、外気側の編地112の糸より多くの割合で含有している。
【0047】
このように肌側の編地211および外気側の編地112の編地の熱伝導性を設定することにより、衣服本体10は、外気側の熱が侵入しにくく、かつ、肌側の熱を冷水に伝達しやすくなり、作業者Uの体温を効率よく低下させることができる。
これらの図4(b)、5および6の実施例は、適宜組み合わされてもよい。
【0048】
以上、本発明の実施形態について説明したが、本発明は上述の実施形態にのみ限定されるものではなく種々変更を加え得ることは勿論である。
【0049】
例えば以上の実施形態では、流体温度調節装置200を着用者へ固定するための固定具としてベルト41を用いたが、これに限られず、作業者の両肩に架け渡される一対のストラップが固定具として用いられてもよい。
【0050】
さらに以上の実施形態では、体温調節服100の搬送路50を流れる流体が水である場合を例に挙げて説明したが、これに限られず、水以外、例えば不凍液などの他の水溶液あるいは非水系溶液であってもよい。
さらにまた以上の実施形態は、服としてだけでなく、座席や布団などのシートに用いられてもよい。
【符号の説明】
【0051】
1…体温調節システム
10…衣服本体
50…搬送路
51…第1の通路部
52…第2の通路部
53…第3の通路部
100…体温調節服
111、211…肌側の編地(第1の編地部分)
112、212…外気側の編地(第2の編地部分)
113…筒状の編み込み部
200…流体温度調節装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6