(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-75921(P2021-75921A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】杭打機及び杭打機の使用方法
(51)【国際特許分類】
E02D 7/00 20060101AFI20210423BHJP
【FI】
E02D7/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2019-203996(P2019-203996)
(22)【出願日】2019年11月11日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】渡邊 幸洋
【テーマコード(参考)】
2D050
【Fターム(参考)】
2D050EE14
(57)【要約】
【課題】作業装置に接続される配管と車体との接触を回避して、配管の耐久性を向上させることが可能な配管受けを備えた杭打機及び杭打機の使用方法を提供する。
【解決手段】杭打機の上部旋回体には、リーダの後方で配管18を支持する起伏可能な配管案内アーム19が配備され、前記配管は、上部旋回体から配管案内アームに沿って拘束した状態で設けられ、該配管案内アームの先端から無拘束で作業装置に接続され、配管案内アームは、作業装置の降下に追随して下方移動する配管を受ける配管受け40を備えている。また、配管受けは、配管が当接可能な円弧当接面40cを有して形成され、該円弧当接面の半径は、配管の最小許容曲げ半径よりも大きく設定されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能な作業装置とを備え、該作業装置は、前記上部旋回体との間で配管による接続がなされ、前記上部旋回体には、前記リーダの後方で前記配管を支持する起伏可能な配管案内アームを配備した杭打機において、
前記配管は、前記上部旋回体から前記配管案内アームに沿って拘束した状態で設けられ、該配管案内アームの先端から無拘束で前記作業装置に接続され、
前記配管案内アームは、前記作業装置の降下に追随して下方移動する前記配管を受ける配管受けを備えていることを特徴とする杭打機。
【請求項2】
前記配管受けは、前記配管が当接可能な円弧当接面を有して形成されていることを特徴とする請求項1項記載の杭打機。
【請求項3】
前記円弧当接面の半径は、前記配管の最小許容曲げ半径よりも大きいことを特徴とする請求項2記載の杭打機。
【請求項4】
前記円弧当接面は、回転可能に軸支されたローラの外周面からなることを特徴とする請求項2又は3記載の杭打機。
【請求項5】
前記配管受けは、前記配管の脱落を防止する脱落防止部を備えていることを特徴とする請求項1乃至4のいずれか1項記載の杭打機。
【請求項6】
下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能な作業装置とを備え、該作業装置は、前記上部旋回体との間で配管による接続がなされ、前記上部旋回体には、前記リーダの後方で前記配管を支持する起伏可能な配管案内アームを配備した杭打機であって、
前記リーダは、複数のリーダ部材を分解可能に連結し、前記リーダ部材を組み替えることにより、該リーダ部材を多数で構成した長尺仕様と少数で構成した短尺仕様とに変更可能であり、
前記配管は、前記上部旋回体から前記配管案内アームに沿って拘束した状態で設けられ、該配管案内アームの先端から無拘束で前記作業装置に接続され、
前記配管案内アームは、前記作業装置の降下に追随して下方移動する前記配管を受ける配管受けを備えている杭打機の使用方法において、
前記リーダ部材を組み替えて、リーダ長さを前記長尺仕様から前記短尺仕様へ変更する段階と、前記配管案内アームを前記短尺仕様に対応した起伏角度に保持する段階と、前記作業装置を降下させて、前記配管受けと前記配管とを、該配管の弛みの最下部よりも前方で当接させる段階とを含むことを特徴とする杭打機の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、杭打機に関し、詳しくは、作業装置に接続した配管を移動可能に支持する配管案内アームを備えた杭打機及び杭打機の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
杭打機は、一般に、ベースマシンの前部に立設したリーダに対してオーガなどの作業装置が昇降可能に装着されている。通常、作業装置には油圧ホースや電気ケーブルなどの配管が接続され、作業装置の昇降動作に追随して位置を変化させる。このような、長くて動きの自由度が大きい配管については、作業装置への巻き込みを防止する必要があることから、杭打機には、リーダの後方で配管を支持する配管案内アームが備わっている(例えば、特許文献1参照。)。また、杭打機が使用される現場の多様化に伴い、リーダを複数のリーダ部材に分解可能な構成とし、リーダの長さを長尺リーダ(標準リーダ)から短尺リーダへ、あるいはこの逆に組み替えることにより、通常の施工現場だけでなく、橋の下や工場内などの高さ制限のある場所においても使用可能な小型杭打機が知られている(例えば、特許文献2参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許3105487号公報
【特許文献2】特開2007−182716号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述の配管及び配管案内アームは、長尺リーダの仕様に対応できる最大長さに設定しておけば、仕様変更のたびに付け替える手間がなくなり、扱いが容易となる。一方で、長尺リーダから短尺リーダへ仕様変更する場合、配管案内アームをリーダに沿って起立した状態から後方に傾けて全高を低く抑える必要がある。しかしながら、配管案内アームを傾けると、配管の支持間隔(スパン)が前後方向に大きく広がってしまう。この結果、接続状態にある配管は、そのうちの無拘束で接続されている部分(弛み部分)が作業装置の降下に伴って車体に接触し、擦れて摩耗したり、無理に折り曲げられたりする問題があった。このような状況で作業装置の上下動が繰り返されると、配管の劣化が進み、最悪の場合、破けてしまうおそれがある。
【0005】
そこで本発明は、作業装置に接続される配管と車体との接触を回避して、配管の耐久性を向上させることが可能な配管受けを備えた杭打機及び杭打機の使用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の杭打機は、下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能な作業装置とを備え、該作業装置は、前記上部旋回体との間で配管による接続がなされ、前記上部旋回体には、前記リーダの後方で前記配管を支持する起伏可能な配管案内アームを配備した杭打機において、前記配管は、前記上部旋回体から前記配管案内アームに沿って拘束した状態で設けられ、該配管案内アームの先端から無拘束で前記作業装置に接続され、前記配管案内アームは、前記作業装置の降下に追随して下方移動する前記配管を受ける配管受けを備えていることを特徴としている。
【0007】
また、前記配管受けは、前記配管が当接可能な円弧当接面を有して形成されていることを特徴とし、前記円弧当接面の半径は、前記配管の最小許容曲げ半径よりも大きいことを特徴としている。さらに、前記円弧当接面は、回転可能に軸支されたローラの外周面からなることを特徴としている。加えて、前記配管受けは、前記配管の脱落を防止する脱落防止部を備えていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の杭打機の使用方法は、下部走行体の上部に上部旋回体を旋回可能に設けたベースマシンと、前記上部旋回体の前部に起伏可能に設けられたリーダと、該リーダの前面に沿って昇降可能な作業装置とを備え、該作業装置は、前記上部旋回体との間で配管による接続がなされ、前記上部旋回体には、前記リーダの後方で前記配管を支持する起伏可能な配管案内アームを配備した杭打機であって、前記リーダは、複数のリーダ部材を分解可能に連結し、前記リーダ部材を組み替えることにより、該リーダ部材を多数で構成した長尺仕様と少数で構成した短尺仕様とに変更可能であり、前記配管は、前記上部旋回体から前記配管案内アームに沿って拘束した状態で設けられ、該配管案内アームの先端から無拘束で前記作業装置に接続され、前記配管案内アームは、前記作業装置の降下に追随して下方移動する前記配管を受ける配管受けを備えている杭打機の使用方法において、前記リーダ部材を組み替えて、リーダ長さを前記長尺仕様から前記短尺仕様へ変更する段階と、前記配管案内アームを前記短尺仕様に対応した起伏角度に保持する段階と、前記作業装置を降下させて、前記配管受けと前記配管とを、該配管の弛みの最下部よりも前方で当接させる段階とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、杭打機の上部旋回体に配備した配管案内アームが、作業装置の降下に追随して下方移動する配管を受ける配管受けを備えているので、杭打ち施工中に、配管と車体との接触を回避することが可能となり、上下方向に動き量の大きい配管を損傷などから効果的に保護できる。また、リーダ長さを短尺仕様に変更し、配管案内アームを傾けた状態で施工する際に、配管受けと配管とを、該配管の弛みの最下部よりも前方で当接させるので、作業装置の降下に伴う配管の後方への移動(逃げ)が重力によって円滑に許容される。これにより、作業装置の後面側で配管に無理な曲げが生じるのを回避して、配管の耐久性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の第1形態例を示す杭打機(長尺仕様のリーダ)の側面図である。
【
図7】短尺仕様(4連結)のリーダに装着されたオーガを上昇限界位置に保持した状態を示す図である。
【
図8】同じくオーガを作動途中位置に降下させた状態を示す図である。
【
図9】同じくオーガを下降限界位置に降下させた状態を示す図である。
【
図10】短尺仕様(3連結)のリーダに装着されたオーガを上昇限界位置に保持した状態を示す図である。
【
図11】同じくオーガを下降限界位置に降下させた状態を示す図である。
【
図12】短尺仕様(2連結)のリーダに装着されたオーガを下降限界位置に降下させた状態を示す図である。
【
図13】本発明の第2形態例を示す杭打機の要部側面図である。
【
図16】第2形態例における短尺仕様(3連結)のリーダに装着されたオーガを作動途中位置に降下させた状態を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図12は、本発明の第1形態例における杭打機及び杭打機の使用方法を示す図である。杭打機11は、
図1乃至
図3に示すように、クローラ12aを備えた下部走行体12と、該下部走行体12上に旋回可能に設けられた上部旋回体13とで構成されたベースマシン14と、上部旋回体13の前部に立設したリーダ15と、該リーダ15を後方から支持するリーダ起伏シリンダ16とを備えている。また、上部旋回体13の前部には、リーダ15を起伏可能に支持するフロントブラケット17が設けられ、上部旋回体13の前部上方には、リーダ15の後方で油圧ホースや電気ケーブルなどの複数の配管18を支持する配管案内アーム19が設けられている。さらに、上部旋回体13の右側部には運転室20が、左側部にはエンジンや油圧ユニットを収納したハウス21がそれぞれ設けられている。また、上部旋回体13の前後左右の4箇所にジャッキシリンダ22がそれぞれ設けられるとともに、上部旋回体13の後端部にベースマシン14のバランスをとるためのカウンタウエイト23が搭載されている。
【0012】
リーダ15は、断面が角筒状に形成された複数のリーダ部材を互いに着脱可能に連結したもので、前記フロントブラケット17に設けられた車体幅方向の支軸24に回動可能に取り付けられた下部リーダ25と、該下部リーダ25の上部に連結される中間リーダ26と、該中間リーダ26の上部に連結される上部リーダ27とに分割形成され、さらに、下部リーダ25は、下部第1部材25aと下部第2部材25bとに分割形成され、中間リーダ26は、中間第1部材26aと中間第2部材26bとに分割形成され、上部リーダ27は、上部第1部材27aと上部第2部材27bと上部第3部材27cとに分割形成されている。
【0013】
各リーダ部材は、隣接する部分において、複数のボルト及びナットにより安定的に結合されるフランジ結合部28を有して形成されている。また、各フランジ結合部28は、ボルト孔のサイズ及び配置ピッチを全て共通にして形成されており、ボルト及びナットを外してフランジ結合を解除することにより、リーダ部材を多数で、例えば、上部リーダ27について上部第1部材27aと上部第2部材27bと上部第3部材27cとの3部材で構成した長尺仕様(
図1)と、リーダ部材を少数で、例えば、上部リーダ27を中間リーダ26の部分から切り離して構成した短尺仕様あるいは、中間リーダ26を下部リーダ25の部分から切り離して更に短く構成した短尺仕様とに組み替え可能になっている。
【0014】
また、上部リーダ27の上端部にはウインチ装置29から繰り出されたワイヤロープ30が巻き掛けられるトップシーブブロック31が、下部リーダ25の下部前方には着脱可能な振止部材32がそれぞれ配置されており、リーダ15の前面中央には、ラックピニオン式昇降装置の構成品の一つであるラック部材33が、両側面前端部には、左右一対のガイドパイプ34,34が、リーダ15の全長に亘ってそれぞれ連続的に設けられている。
【0015】
作業装置の一例であるオーガ35は、前記ガイドパイプ34に摺接する左右一対のガイドギブ35aが後方に突出して設けられるとともに、前記ラック部材33の両側に設けられているラックに歯合する左右一対のピニオンをオーガ昇降用油圧モータ35bで回転駆動することにより、リーダ15の前面に沿って昇降する。この杭打機11を工事現場で使用する場合には、例えば、施工部材として鋼管杭が使用される。鋼管杭(図示せず)は、減速機構35cの回転軸にキャップロッド36を介して連結され、オーガ駆動用油圧モータ35dの駆動を受けて、キャップロッド36を回転させながらオーガ35を降下させることにより地中に圧入される。
【0016】
前記配管案内アーム19は、フロントブラケット17の外側面から屈曲して上方に延びたベース部材37と、前記配管18を沿わせて前後方向に傾動可能に軸支されたアーム本体38と、ベース部材37及びアーム本体38間に跨設されたアーム起伏シリンダ39とを有し、該アーム起伏シリンダ39の伸縮動作により、アーム本体38を鉛直に保持した起立位置(
図1)と、水平に保持した倒伏位置との間で起伏可能に構成されている。
【0017】
アーム本体38は、下方側が開口した略コ字状断面を有しており、案内面(上面)38aには、所定間隔毎に配置された複数の固定バンド38bと、該固定バンド38bにより拘束された配管18を接続する金属配管38cとが設けられている。配管18の基部は、上部旋回体(フレーム側面)13に備わる集中コネクタ13aに接続され、アーム本体38に沿って拘束状態で案内されるとともに、前記金属配管38cの先端(J字状屈曲部)において拘束が解かれ、無拘束状態でオーガ35に備わる集中コネクタ35eに接続されている。アーム本体38からオーガ35までの配管18は、オーガ35の昇降動作に追随して上下方向に移動可能であり、その長さは、長尺リーダの仕様に対して整合が図られた長さに、すなわち、アーム本体38を起立位置に保持した状態で、オーガ35がリーダ15の上部(上昇限界位置)及び下部(下降限界位置)に十分到達する長さに設定されている。
【0018】
ところで、杭打機11は、建屋内などの高さ制限のある場所で杭打ち作業を行う場合、リーダ15を標準の長尺仕様から短尺仕様へ組み替えて使用するが、この場合、起立位置にある配管案内アーム19は、アーム本体38を後方に傾けることによって短尺仕様に対応した起伏角度に保持され、その先端がリーダ15の高さ、つまり全高よりも低く抑えられる。しかし、アーム本体38を傾けると、配管18は、その支持間隔(スパン)が前後方向に大きく広がってしまうことから、無拘束状態で弛んでいる部分がオーガ35の降下に伴って車体の一部、例えば、ハウス21の階段(エッジ部)21aなどに接触する問題が生じる。そこで、配管案内アーム19には、オーガ35の降下に追随して下方移動する配管18を受ける配管受け40が備わっている。
【0019】
配管受け40は、上部旋回体13の外側面よりも内側に収められた半割円筒構造であって、
図4乃至
図6に示すように、アーム本体38の基端部外側面に片持ち支持された状態で、円弧部材40aを周方向に二等分する位置(頂部)がアーム本体38の案内面38aと同一平面上に揃えられ、周方向一端部(下端部)がアーム本体38の回動軸41と近接して配置されている。これにより、アーム本体38の回動範囲において、その位置が前後方向に大きく移動することはなく、円弧部材40aによって配管18を柔らかく受け止めることが可能になっている。
【0020】
円弧部材40aは、その周方向両端部が一対の丸パイプ40b,40bによって丸みを帯び、外周面には、配管18が周方向に当接可能な円弧当接面40cを有している。一方、前記円弧当接面40cとは反対側の内周面に、取付ブラケット40dが幅方向に延びて設けられている。また、円弧当接面40cの半径は、配管18の最小許容曲げ半径よりも大きく形成されている。最小許容曲げ半径とは、配管が損傷されることなく曲げられる最小半径であり、これにより、配管18の永久変形を防止する。さらに、円弧部材40aの外側縁部には、配管18の脱落を防止する脱落防止部として、半割円環形状のプレート40eと、該プレート40eの両端部同士を周方向につなぐ略U字形状の丸棒40fとが設けられている。
【0021】
このように形成された杭打機11は、長尺仕様から短尺仕様にリーダ15を組み替えて施工を行う場合、例えば、上部リーダ27の全てのリーダ部材が取り除かれ、
図7乃至
図9に示すように、下部リーダ25及び中間リーダ26の各リーダ部材25a,25b,26a,26bからなる4連結で構成される。また、配管案内アーム19は、アーム本体38を後方に傾けることにより、起伏角度が略45度に保持され、リーダ15の高さと同程度に低く抑えられる。このとき、
図7に示すように、オーガ35を上昇限界位置に保持した状態で、配管18は、無拘束状態で弛んでいる部分がハウス21の上方に位置している。
【0022】
オーガ35を上昇限界位置から降下させると、
図8に示すように、作動途中の中間位置において、配管受け40と配管18とが、該配管18の弛みの最下部Lよりも前方で当接される。この状態から、オーガ35を更に降下させると、配管受け40の円弧当接面40cに沿って配管18が緩やかに曲げられるとともに、配管18そのものの自重作用で円弧当接面40cを摺動しながら後方に所定量移動する。これにより、配管18は、
図9に示すように、オーガ35の下降限界位置において、該オーガ35と配管案内アーム19との間で波状に垂れ下がった状態となり、ハウス21やその周辺の構造物に接触することなく保持される。
【0023】
図10及び
図11は、リーダ15を下部リーダ25及び中間リーダ26の各リーダ部材25a,25b,26aからなる3連結で構成したもので、配管案内アーム19は、その起伏角度が略25度に保持されている。また、配管18は、
図10に示すように、オーガ35の上昇限界位置において、無拘束状態で弛んでいる部分が前後方向に大きく広がって延びている。この状態から、オーガ35を降下させると、配管受け40と配管18とが、該配管18の弛みの最下部Lよりも前方で当接され、上述の短尺仕様(4連結)と同様に、配管受け40の円弧当接面40cに沿って配管18が緩やかに曲げられるとともに、配管18そのものの自重作用で円弧当接面40cを摺動しながら後方に所定量移動する。これにより、配管18は、
図11に示すように、オーガ35の下降限界位置において、該オーガ35と配管案内アーム19との間で波状に垂れ下がった状態となり、ハウス21やその周辺の構造物に接触することなく保持される。
【0024】
図12は、リーダ15を下部リーダ25の各リーダ部材25a,25bからなる2連結で構成したもので、配管案内アーム19は、その起伏角度が0度に、つまりアーム本体38を水平にした倒伏位置に保持されている。この場合では、オーガ35の移動範囲が地上付近の狭い範囲に限定されることから、配管18は、配管受け40によって常時受け止められた状態のままで保持される。この状態においても、配管18は、オーガ35の下降限界位置において、該オーガ35と配管案内アーム19との間で波状に垂れ下がった状態となり、ハウス21やその周辺の構造物に接触することなく保持される。
【0025】
このように、杭打機11の上部旋回体13に配備した配管案内アーム19が、オーガ35の降下に追随して下方移動する配管18を受ける配管受け40を備えているので、杭打ち施工中に、配管18と車体との接触を回避することが可能となり、上下方向に動き量の大きい配管18を損傷などから効果的に保護できる。また、リーダ長さを短尺仕様に変更し、配管案内アーム19を傾けた状態で施工する際に、配管受け40と配管18とを、該配管18の弛みの最下部よりも前方で当接させるので、オーガ35の降下に伴う配管18の後方への移動(逃げ)が重力によって円滑に許容される。これにより、オーガ35の後面側で配管18に無理な曲げが生じるのを回避して、配管18の耐久性を向上させることができる。
【0026】
さらに、配管受け40が円弧当接面40cを有しているので、配管18と円弧当接面40cとの間の相対的な動きを簡便に、かつ、円滑に許容することができる。加えて、円弧当接面40cの半径を配管18の最小許容曲げ半径よりも大きくするので、撓み変形しやすい配管18を効果的に保護することができる。また、プレート40eや丸棒40fを組み合わせた脱落防止部によって配管受け40からの配管18の脱落を防止するので、長尺で、かつ、動きのある配管18の保護が確実なものとなる。
【0027】
図13乃至
図16は、本発明の第2形態例における杭打機及び杭打機の使用方法を示すものである。なお、以下の説明において、前記第1形態例に示した構成要素と同一の構成要素には同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0028】
本形態例では、前記第1形態例の配管受け40に対して、配管案内アーム19への取り付け互換性を有する配管受け50であって、さらに円弧部材40aに相当する部分を回転可能なローラ50aによる受け構造としたものである。
【0029】
配管受け50は、
図13乃至
図15に示すように、アーム本体38の基端部外側面に片持ち支持され、基本的には、アーム本体38の長手方向に所定間隔あけて配置した一対のローラ50a,50aと、これらを一対の支軸50b,50bで回転可能に軸支する略H型状のフレーム50cとを有し、アーム本体38に取り付けた状態で、上部旋回体13の外側面よりも内側に収まる大きさに形成されている。
【0030】
各ローラ50a,50aは、同一形状であって、外周面には、配管18が周方向に当接可能な円弧当接面50d,50dをそれぞれ有しており、アーム本体38の案内面38aよりもやや低い位置に揃えられるとともに、そのうちのアーム基端側のローラ50aは、アーム本体38の回動軸41と近接して配置されている。これにより、アーム本体38の回動範囲において、その位置が前後方向に大きく移動することはなく、両ローラ50a,50aによって配管18を柔らかく受け止めることが可能になっている。また、フレーム50cの外側縁部には、配管18の脱落を防止する脱落防止部として、略U字形状の丸棒50eが設けられている。
【0031】
このように形成された杭打機11は、短尺仕様のリーダ長さで施工を行う場合、例えば、
図16に示すように、リーダ15を下部リーダ25及び中間リーダ26の各リーダ部材25a,25b,26aからなる3連結で構成し、配管案内アーム19については、その起伏角度が略25度に保持される。また、配管18は、オーガ35の上昇限界位置において、無拘束状態で弛んでいる部分が前後方向に大きく広がって延びている。この状態から、オーガ35を降下させると、配管受け50と配管18とが、該配管18の弛みの最下部Lよりも前方で当接され、配管受け50の当接面50dに沿って配管18が緩やかに曲げられるとともに、配管18そのものの自重作用で当接面50dに接しながら後方に所定量移動する。これにより、配管18は、オーガ35の下降限界位置において、該オーガ35と配管案内アーム19との間で波状に垂れ下がった状態となり、ハウス21やその周辺の構造物に接触することなく保持されるようになっている。
【0032】
このように、杭打機11の上部旋回体13に配備した配管案内アーム19が、オーガ35の降下に追随して下方移動する配管18を受ける配管受け50を備えているので、上述の第1形態例と同様に、上下方向に動き量の大きい配管18を損傷などから効果的に保護できる。とりわけ、当接面50dが回転可能に軸支されたローラ50aの外周面からなるので、配管18と当接面50dとの摩擦をなくして配管18の滑らかな移動が実現され、さらなる配管寿命の長期化に寄与するものとなる。
【0033】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、配管受けは、配管に無理な曲げを与えずに安定して受け止め可能な構造であればよく、円弧当接面は、板材を曲げ形成したり、丸パイプや丸棒、ローラなどを複数円弧状に並べて形成することができる。また、配管受けの設置は、配管と車体とが接触しない程度の距離を確保できれば一箇所に限定されず、例えば、配管案内アームの基端部から中間部にかけて複数箇所に設けたり、アーム本体以外の構造物に設けたりするなど、配管の動き量を考慮して、その配置を適宜に変更することができる。
【0034】
とりわけ、配管受けを配管案内アームの基端部に設けることで、施工時に配管案内アームを水平に傾けた姿勢においても、配管とハウス(階段)との接触を確実に防止できることは勿論、これに加えて、施工後に、オーガを車体から分離して別々に輸送する場合であっても、オーガとの間で接続が解除された配管部分が配管受けの下方位置にコンパクトにまとまり、その取り扱いが容易になるだけでなく、脱落防止部によって配管受けからの脱落防止も図られ、輸送の安全に資するものとなる。
【符号の説明】
【0035】
11…杭打機、12…下部走行体、12a…クローラ、13…上部旋回体、13a…集中コネクタ、14…ベースマシン、15…リーダ、16…リーダ起伏シリンダ、17…フロントブラケット、18…配管、19…配管案内アーム、20…運転室、21…ハウス、21a…階段、22…ジャッキシリンダ、23…カウンタウエイト、24…支軸、25…下部リーダ、25a…下部第1部材、25b…下部第2部材、26…中間リーダ、26a…中間第1部材、26b…中間第2部材、27…上部リーダ、27a…上部第1部材、27b…上部第2部材、27c…上部第3部材、28…フランジ結合部、29…ウインチ装置、30…ワイヤロープ、31…トップシーブブロック、32…振止部材、33…ラック部材、34…ガイドパイプ、35…オーガ、35a…ガイドギブ、35b…オーガ昇降用油圧モータ、35c…減速機構、35d…オーガ駆動用油圧モータ、35e…集中コネクタ、36…キャップロッド、37…ベース部材、38…アーム本体、38a…案内面、38b…固定バンド、38c…金属配管、39…アーム起伏シリンダ、40…配管受け、40a…円弧部材、40b…丸パイプ、40c…円弧当接面、40d…取付ブラケット、40e…プレート、40f…丸棒、41…回動軸、50…配管受け、50a…ローラ、50b…支軸、50c…フレーム、50d…円弧当接面、50e…丸棒