(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-76041(P2021-76041A)
(43)【公開日】2021年5月20日
(54)【発明の名称】可搬式エンジン発電機及び可搬式エンジン発電機の使用方法
(51)【国際特許分類】
F02B 63/04 20060101AFI20210423BHJP
【FI】
F02B63/04 B
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-201647(P2019-201647)
(22)【出願日】2019年11月6日
(71)【出願人】
【識別番号】000004617
【氏名又は名称】日本車輌製造株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100128358
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 良彦
(74)【代理人】
【識別番号】100086210
【弁理士】
【氏名又は名称】木戸 一彦
(72)【発明者】
【氏名】東 知世洋
(57)【要約】
【課題】多様な使用環境において利便性と安全性とを両立させることが可能な可搬式エンジン発電機及び可搬式エンジン発電機の使用方法を提供する。
【解決手段】可搬式エンジン発電機は、ケーシングの側面に、接続端子14a,14bを備えた出力制御盤14を遮蔽する閉じ状態と、配線可能に開放する開き状態とに開閉可能な扉15が設けられ、支持架台12は、側面に差込口12cを有する差込空間18が設けられることにより、該差込空間に運搬用フォークリフトの爪が出入り可能であり、出力制御盤は、差込空間の上方に配置されるとともに、機内側に向かって陥没した端子収容空間17を有し、該端子収容空間と差込空間との間には、両空間を連通する配線通路19が形成されている。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持架台の上部に設けられたケーシング内に、発電機と該発電機を駆動するエンジンとを収容し、前記ケーシングの側面に、接続端子を備えた出力端子盤を遮蔽する閉じ状態と、配線可能に開放する開き状態とに開閉可能な扉が設けられた可搬式エンジン発電機において、
前記支持架台は、側面に差込口を有する差込空間が設けられることにより、該差込空間に運搬用フォークリフトの爪が出入り可能であり、
前記出力端子盤は、前記差込空間の上方に配置されるとともに、機内側に向かって陥没した端子収容空間を有し、該端子収容空間と前記差込空間との間には、両空間を連通する配線通路が形成されていることを特徴とする可搬式エンジン発電機。
【請求項2】
前記差込空間は、前記支持架台の側面における前記差込口のある面とは反対側に位置する面まで延びていることを特徴とする請求項1記載の可搬式エンジン発電機。
【請求項3】
前記差込空間は、筒体の内側空間であり、該筒体には、前記配線通路に合致した電線挿通孔が設けられていることを特徴とする請求項1又は2記載の可搬式エンジン発電機。
【請求項4】
支持架台の上部に設けられたケーシング内に、発電機と該発電機を駆動するエンジンとを収容し、前記ケーシングの側面に、接続端子を備えた出力端子盤を遮蔽する閉じ状態と、配線可能に開放する開き状態とに開閉可能な扉が設けられた可搬式エンジン発電機であって、
前記支持架台は、側面に差込口を有する差込空間が設けられることにより、該差込空間に運搬用フォークリフトの爪が出入り可能であり、
前記出力端子盤は、前記差込空間の上方に配置されるとともに、機内側に向かって陥没した端子収容空間を有し、該端子収容空間と前記差込空間との間には、両空間を連通する配線通路が形成されている可搬式エンジン発電機の使用方法において、
前記扉を開き状態にする開き段階と、電線を前記差込空間及び前記配線通路に引き込む引込み段階と、前記電線を前記接続端子に接続する接続段階と、前記扉を閉じ状態にする閉じ段階とを順に行うことを特徴とする可搬式エンジン発電機の使用方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、可搬式エンジン発電機及び可搬式エンジン発電機の使用方法に関し、詳しくは、工事現場などに搬入して運転され、負荷に電力を供給可能な可搬式エンジン発電機及び可搬式エンジン発電機の使用方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、エンジンによって発電機などの作業機を駆動する可搬式エンジン作業機では、支持架台にフォークリフトの爪を挿入するための中空部(フォークポケット)が設けられ、該中空部にフォークリフトの爪を挿入した状態で把持されることにより、クレーンがない現場や運搬スピードが求められる現場での迅速な搬送を可能にしている(例えば、特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010−249087号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
近年の可搬式エンジン発電機は、従来の工事現場用に加えて、災害復旧現場、各種イベント会場などで動力、照明などの負荷に電力を供給するための移動電源として広く使用されている。このような、機動性の高い可搬式エンジン発電機においては、不特定多数の人が通る使用場所での安全確保が重要な課題である。特に、負荷接続がなされた端子は、その構造上、外部に露出してしまうことから、関係者以外による端子への不用意な接触や感電をなくす必要がある。
【0005】
そこで本発明は、多様な使用環境において利便性と安全性とを両立させることが可能な可搬式エンジン発電機及び可搬式エンジン発電機の使用方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本発明の可搬式エンジン発電機は、支持架台の上部に設けられたケーシング内に、発電機と該発電機を駆動するエンジンとを収容し、前記ケーシングの側面に、接続端子を備えた出力端子盤を遮蔽する閉じ状態と、配線可能に開放する開き状態とに開閉可能な扉が設けられた可搬式エンジン発電機において、前記支持架台は、側面に差込口を有する差込空間が設けられることにより、該差込空間に運搬用フォークリフトの爪が出入り可能であり、前記出力端子盤は、前記差込空間の上方に配置されるとともに、機内側に向かって陥没した端子収容空間を有し、該端子収容空間と前記差込空間との間には、両空間を連通する配線通路が形成されていることを特徴としている。
【0007】
また、前記差込空間は、前記支持架台の側面における前記差込口のある面とは反対側に位置する面まで延びていることを特徴としている。さらに、前記差込空間は、筒体の内側空間であり、該筒体には、前記配線通路に合致した電線挿通孔が設けられていることを特徴としている。
【0008】
また、本発明の可搬式エンジン発電機の使用方法は、支持架台の上部に設けられたケーシング内に、発電機と該発電機を駆動するエンジンとを収容し、前記ケーシングの側面に、接続端子を備えた出力端子盤を遮蔽する閉じ状態と、配線可能に開放する開き状態とに開閉可能な扉が設けられた可搬式エンジン発電機であって、前記支持架台は、側面に差込口を有する差込空間が設けられることにより、該差込空間に運搬用フォークリフトの爪が出入り可能であり、前記出力端子盤は、前記差込空間の上方に配置されるとともに、機内側に向かって陥没した端子収容空間を有し、該端子収容空間と前記差込空間との間には、両空間を連通する配線通路が形成されている可搬式エンジン発電機の使用方法において、前記扉を開き状態にする開き段階と、電線を前記差込空間及び前記配線通路に引き込む引込み段階と、前記電線を前記接続端子に接続する接続段階と、前記扉を閉じ状態にする閉じ段階とを順に行うことを特徴としている。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、可搬式エンジン発電機の支持架台が、側面に差込口を有する差込空間(フォークポケット)を有し、該差込空間と端子収容空間との間に配線通路を形成したので、フォークリフトによる運搬の利点を確保しつつ、使用時には電線を差込口から差込空間及び電線通路に引き込んだ状態で端子接続が行える。これにより、配線後に扉を閉めて出力端子盤を遮蔽できることから、接続端子への不用意な接触による感電の防止が図れるだけでなく、雨水の付着による漏電や腐食などからの保護も適切に図れる。すなわち、多様な使用環境において利便性と安全性とを両立させることが可能な可搬式エンジン発電機及びその使用方法が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本発明の一形態例を示す可搬式エンジン発電機の斜視図である。
【
図2】接続端子に電線を接続した状態を示す図である。
【
図3】接続端子に電線を接続した状態の変形例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1乃至
図3は、本発明の可搬式エンジン発電機の一形態例を示すもので、可搬式エンジン発電機11は、
図1に示すように、支持架台12の上部に防音構造を有する箱形のケーシング13を設け、該ケーシング13内に、図示しないエンジンや、該エンジンによって駆動される発電機、燃料タンク、ラジエータなどの各種機器が収容されている。
【0012】
ケーシング13は、出力制御盤14が配置された前面(
図1において手前左側)と、操作盤が配置された右側面(
図1において手前右側)と、これらに対向する後面及び左側面(図示せず)の各面をなす4枚の側壁と、各側壁の上部を覆う天井板13aとによって矩形箱状に形成されている。また、天井板13aには、ケーシング13の前面に沿う方向を長手方向として、その中間位置に凹部13bが設けられており、該凹部13bの中央には、可搬式エンジン発電機11の重心位置に対応した吊り金具13cが設けられている。さらに、ケーシング13の前面には、前記出力制御盤14の位置に対応した扉15が設けられており、出力制御盤14を遮蔽する閉じ状態と、配線可能に開放する開き状態(
図1)とに開閉可能になっている。
【0013】
操作盤は、図示は省略するが、発電機及びエンジンを制御したり、状態を監視したりするための各種スイッチ、例えば、遮断器や出力周波数(エンジン回転数)などを設定するスイッチ類や、各種計器、例えば、出力中の周波数,電流,電圧や冷却水温度などを表示する計器類を備え、開閉可能なパネル16の内側に配置されている。また、パネル16には、計器類を外部から確認するための透明板を嵌め込んだ窓部16aが設けられている。
【0014】
出力制御盤14は、ケーシング13の前面に設けられた開口部13dの下部に設置され、機内側に向かって陥没した端子収容空間17を有して形成されている。この端子収容空間17には、例えば、三相4線式交流の高電圧を出力するための接続端子14aや、単相交流の低電圧を出力するための接続端子14b及びコンセント14cが各組毎に横並びに設けられている。これにより、負荷に対応した高電圧あるいは低電圧の出力が得られる。
【0015】
支持架台12は、溝形鋼などの鋼材を用いて長方形状に枠組みされており、前後一対のサイドフレーム12a,12a間には、2本の筒体12b,12bが長手方向に所定間隔あけて配置され、その両端開口部が両サイドフレーム12a,12aの側面を貫通した状態で固定されている。各筒体12b,12bは、同一形状の四角断面を有しており、内部に両端開口部を差込口12c,12cとする差込空間(フォークポケット)18,18が形成されている。また、差込空間18は、差込口12cのある前面とは反対側に位置する後面まで延び、運搬用フォークリフトの2本の爪(図示せず)が、前面側からだけでなく後面側からも、それぞれ出入り可能になっている。これにより、運搬時にはフォークリフトの爪の間に可搬式エンジン発電機11の重心が位置され、持ち上げられたときに安定状態で支持される。
【0016】
また、前記2本の筒体12b,12bのうち、一方の筒体12bの真上に出力制御盤14を配置することで、端子収容空間17と差込空間18との間に、管構造の内面からなる上下方向の配線通路19が形成され、該配線通路19によって両空間17,18が連通されている。さらに、前記一方の筒体12bの上面及び端子収容空間17を形成する板部下面には、配線通路19に合致した上下一対の電線挿通孔20,21が設けられている。これにより、接続端子14a,14bに接続される電線は、配線通路19を介して端子収容空間17と差込空間18との間に引き回され、すなわち、ケーシング13の開口部13dから直接的に外部に取り出されることなく、配線通路19を一端経由して、差込口12cから間接的に外部に取り出すことが可能になっている。
【0017】
このように形成された可搬式エンジン発電機11を使用する場合、機材センターや倉庫などのストック施設において、トラックなどの運搬車の荷台に搭載され、電線や各種機材と共にあるいは別々に現場に配送される。このとき、扉15などの開閉部は閉じ状態で施錠されている。現場に到着すると、吊り金具13cを使用して吊り上げられるが、クレーンがない現場などでは、支持架台12の差込空間18にフォークリフトの爪を挿入した状態で把持され、所定の場所に搬送される。
【0018】
可搬式エンジン発電機11を設置した後は、扉15を解錠して開き状態とし(開き段階)、
図2に示すように、出力制御盤14を露出させることにより、負荷接続が可能な状態となる。ここで、例えば、三相4線式交流の高電圧(400V)を出力するためには、4個一組の接続端子14aに4本の電線22をそれぞれ接続するとともに、必要なアース接地(図示せず)が行われる。
【0019】
以下では、電線22の具体的な引き回し方法について説明する。まず、準備した電線22の一端を支持架台12の前面側にある差込口12cから差込空間18に挿入する。続いて、配線通路19に向かって電線22を立ち上げるとともに、配線通路19を経由した電線22の一端を端子収容空間17に取り出す(引込み段階)。これを、1本ずつ行うか、あるいは複数本をまとめた状態で行う。最後に、4本の電線22を接続端子14aにそれぞれ接続し(接続段階)、扉15を閉じ状態にして施錠する(閉じ段階)。そして、負荷に電線22が接続された状態で、操作盤を適宜操作することにより、可搬式エンジン発電機11の運転が開始され、例えば、電気器具や電動機に対して電力供給が行われる。
【0020】
また、電線22は、可搬式エンジン発電機11が設置される状況に応じて、その引き回し経路を変更でき、
図3に示すように、例えば、後面側にある差込口12cから差込空間18に引き込むことが可能である。この場合においても、同様にして、配線通路19に向かって電線22が立ち上げられるとともに、配線通路19を経由した電線22の一端が端子収容空間17に引き出される。
【0021】
このように、可搬式エンジン発電機11の支持架台12が、側面に差込口12cを有する差込空間(フォークポケット)18を有し、該差込空間18と端子収容空間17との間に配線通路19を形成したので、フォークリフトによる運搬の利点を確保しつつ、使用時には電線22を差込口12cから差込空間18及び配線通路19に引き込んだ状態で接続端子14aに対する接続が行える。これにより、配線後に扉15を閉めて出力制御盤14を遮蔽できることから、接続端子14aへの不用意な接触による感電の防止が図れるだけでなく、雨水の付着による漏電や腐食などからの保護も適切に図れる。すなわち、多様な使用環境において利便性と安全性とを両立させることが可能な可搬式エンジン発電機11及びその使用方法が実現される。
【0022】
また、差込空間18が差込口12cのある前面とは反対側に位置する後面まで延びているので、出力制御盤14がない後面側にある差込口12cからも電線22を取り出すことが可能となり、利便性をより向上させることができる。さらに、差込空間18を筒体12bの内側空間としたので、配線作業の途中で電線22が引っ掛かることはなく、作業性の向上も図ることができる。
【0023】
なお、本発明は、前記形態例に限定されるものではなく、端子収容空間と差込空間との間に設けた配線通路は、電線の引き回しや端子接続する際の作業性を考慮して任意の大きさに形成できる。また、差込空間は、筒体で形成することにより、円滑な引き回しが実現されるが、例えば、支持架台の底部をスリット状にして形成するなど、フォークリフトによる運搬が安全に行える範囲で適宜に変更できる。
【0024】
さらに、配線後に閉めた扉を施錠すれば、使用状態において感電事故を確実になくせる利点があるが、これに加えて、電線を支持架台の差込口から外部に取り出すので、フォークリフトの運転者など運搬に従事する者に対して使用状態であることが注意喚起され、可搬式エンジン発電機を不用意に移動させてしまう危険がなくなる。したがって、より安全な作業環境を提供することが可能となる。
【符号の説明】
【0025】
11…可搬式エンジン発電機、12…支持架台、12a…サイドフレーム、12b…筒体、12c…差込口、13…ケーシング、13a…天井板、13b…凹部、13c…吊り金具、13d…開口部、14…出力制御盤、14a,14b…接続端子、14c…コンセント、15…扉、16…パネル、16a…窓部、17…端子収容空間、18…差込空間、19…配線通路、20,21…電線挿通孔、22…電線