【解決手段】本発明にかかる安全装置100は、加工ツール1010を備える加工装置1000において使用するための安全装置100であって、加工ツール1010の動作を阻止する第1の位置P1と、加工ツール1010の動作を可能にする第2の位置P2との間で移動可能な規制部材110と、所定の条件に応じて、規制部材110を第1の位置P1と第2の位置P2との間で移動させる駆動手段101とを備えたものである。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明を説明する。本明細書において使用される用語は、特に言及しない限り、当該分野で通常用いられる意味で用いられることが理解されるべきである。したがって、他に定義されない限り、本明細書中で使用される全ての専門用語および科学技術用語は、本発明の属する分野の当業者によって一般的に理解されるのと同じ意味を有する。矛盾する場合、本明細書(定義を含めて)が優先する。
【0021】
本明細書において、「約」とは、後に続く数字の±10%の範囲内をいう。
【0022】
本発明は、簡便で確実な規制部材(安全ピン)の移動手段および/またはそれを備える加工装置の提供を課題とし、
加工ツールを備える加工装置において使用するための安全装置であって、
加工ツールの動作を阻止する第1の位置と、加工ツールの動作を可能にする第2の位置との間で移動可能な規制部材と、
所定の条件に応じて、規制部材を第1の位置と第2の位置との間で移動させる駆動手段と
を備える、安全装置を提供することによって、上記課題を解決したものである。
【0023】
従って、本発明の安全装置は、所定の条件に応じて、加工ツールの動作を阻止する第1の位置と加工ツールの動作を可能にする第2の位置との間で、規制部材を駆動手段により移動させるものであれば、その他の構成は、特に限定されるものではない。
【0024】
加工ツールの作動を規制する規制部材を駆動させる所定の条件は任意であり得る。例えば、所定の条件は、加工装置1000の操作者からの規制部材の駆動要求があった場合、および操作者からの要求ではなく加工装置が一定時間操作されていない場合の少なくとも一方の条件であり得る。さらには、所定の条件は加工ツールが加工動作の開始位置に位置していることを条件としてもよい。この場合、加工装置は、加工ツールの加工動作の開始位置を検出する任意の形態の位置センサを有する。
【0025】
位置センサは、任意の形態であり得る。有接点方式であってもよいし、非接点方式であってもよい。例えば、鍛造装置などの大きな振動などが発生する加工装置の場合には、磁気センサなどの非接点方式の位置センサを用いることが好ましい。
【0026】
ここで、加工装置が操作されていない一定時間の長さは、安全性と作業性とを考慮して、作業内容や操作者の技能に合わせて適宜設定される。1つの実施形態においては、一定時間の長さは、特に限定されるものではないが、例えば、約10〜60秒の間であり、より好ましくは、約15秒〜30秒の間であり、具体的には、約20秒の間であり得る。
【0027】
加工装置は、加工開始位置と加工終了位置との間で移動可能な可動部材を含む加工ツールを備えていれば任意の装置であり得る。例えば、切削加工、研削加工、切断加工または研磨加工装置であってもよいし、プレス加工装置やエアスタンプハンマーなどの鍛造加工装置であってもよい。好ましくは、加工装置は加工ツールが大きく重量のある鍛造装置である。加工ツールも加工装置にもとづき任意の工具であり得る。例えば、切削工具、研削または研磨砥石であってもよいし、金型などを含むものであってもよい。
【0028】
また、加工ツールに含まれる可動部材の重さも被加工物の種類に応じて任意であり得る。例えば、プレス加工装置やエアスタンプハンマーなどの鍛造装置に用いる加工ツールに含まれる可動部材(金型およびラムを含む)の重量は、約500kg〜約20000kgである。
【0029】
加工装置で加工される被加工物の種類は任意であり得る。例えば、一つの実施形態において、エアスタンプハンマーなどの鍛造装置における被加工物として、スパナなどのサイズの小さい工具類から車両のホイルなどのサイズの大きい部品まで種々のものであり得る。
【0030】
また、第1の位置は、規制部材が加工ツールの動作を阻止する位置であれば特に限定されるものではない。例えば、第1の位置は、加工ツールの加工開始位置と加工終了位置との間の位置である。ただし、第1の位置は加工ツールの加工開始位置と加工終了位置との間以外の位置であっても、加工ツールの加工開始位置からの動作が阻止される位置であればよい。
【0031】
第2の位置は、加工ツールの動作を可能にする位置であれば特に限定されるものではない。例えば、第2の位置は、加工ツールの加工開始位置と加工終了位置との間から退避した位置である。ただし、第2の位置は、加工ツールの加工開始位置と加工終了位置との間以外の領域から退避した位置でもよい。第1の位置および第2の位置はそれぞれ上下方向に沿って設けられた位置であってもよいし、それぞれ水平方向に沿って設けられた位置であってもよい。
【0032】
また、規制部材は、第1の位置と第2の位置との間で移動可能なものであって、第1の位置で加工ツールの動作を阻止し、第2の位置で加工ツールの動作を可能とするものであれば、その形状、重量、材質などは限定されない。1つの実施形態において、規制部材は鋼鉄製の安全ピンである。しかし本発明はこれに限定されない。例えば、ブロック状であってもよい。また材料もステンレスなどの金属材料であってもよいし、硬質セラミックや硬質プラスチックであってもよい。例えば、この規制部材は安全ピンであり、規制部材(安全ビン)の重量は約5kg〜約30kgである。
【0033】
また、駆動手段は、所定の条件に応じて規制部材を第1の位置と第2の位置との間で移動させるものであれば、その他の構成は任意であり得る。例えば、駆動手段はエアーアクチュエータであるが、それに限定されない。例えば、油圧モータやエアモータなどであってもよい。加工装置が、加工ツールの加工動作の開始位置を検出する位置センサを有する場合、駆動手段は、位置センサの検出出力が、加工ツールがその加工動作の開始位置に位置していないことを示すとき、加工装置の操作者からの要求と、加工装置が一定時間操作されていないこととのいずれにも拘わらず、規制部材の第1の位置への移動を禁止するものでもよい。
【0034】
また、加工装置は、加工ツールを操作するための操作部材と、加工ツールを動かす動力源と、操作部材の操作に応じて加工ツールの動力源を駆動制御する駆動制御部とを備える。
【0035】
加工ツールを操作するための操作部材は任意の形態であり得る。例えば、手で操作する操作ボタンや操作パネルであってもよいし、足で操作する足踏みペダルであってもよい。
【0036】
駆動制御部は、操作者の要求があったとき、あるいは、加工装置が一定時間操作されていないとき、操作部材による加工ツールの操作を不能な状態としてロック信号を出力するロック手段を備えていてもよい。ロック手段は任意の形態であり得る。例えば、電気的機構であってもよいし、機械的機構であってもよい。ロック信号を出力するロック手段を備える場合、安全装置の駆動手段は、加工装置の駆動制御部からのロック信号に基づいて、加工ツールの動作が阻止されるように、規制部材を第1の位置に移動させることが好ましい。このようにすることで、操作者の要求があったとき、あるいは、加工装置が一定時間操作されていないとき、操作部材による加工ツールの操作自体が出来なくなることに加えて、加工ツールの動作が規制部材により阻止されることとなるため、操作部材の不意の操作による加工ツールの作動に対する安全対策を2重に施すことが可能となる。
【0037】
この加工装置は、加工装置の動作条件(例えば、加工ツールに含まれる可動部材(金型およびラムを含む)の落下高さ、落下速度、加工ツールの動作を規制する条件である加工装置が操作されない一定時間など)の設定などを登録するための操作パネルをさらに備えていてもよい。操作者からの要求(加工ツールの動作を規制する要求)は操作パネルの操作により行うことが可能となる。しかし、本発明はこれに限定されない。操作者からの要求は操作パネルとは別に設けたスイッチなどであってもよい。
【0038】
加工装置の駆動制御部は、操作パネルなどからの操作者からのロック解除操作要求に基づいて操作部材による加工ツールの操作を可能な状態としてロック解除信号を出力し、安全装置の駆動手段は、ロック解除信号に基づいて、加工ツールの動作の阻止が解除されるように規制部材を第2の位置に移動させることが好ましい。これにより、加工ツールの動作が不能となった加工装置のロック状態を、操作パネルなどの操作により簡単に解除することができる。
【0039】
ただし、以下の実施形態では、安全装置を設ける対象となる加工装置は鍛造装置(例えば、エアスタンプハンマー)とし、この加工装置は、上述した駆動制御部として、少なくとも、加工ツールの動力源に接続されたリンク機構と、リンク機構を制御するリンク制御部と、リンク制御部に加工ツールのロック(加工ツールを動作不能にすること)を指令するロック手段と、動作条件の設定などのための操作パネルとを有するものとする。また、加工装置に使用される安全装置は、上述した駆動手段として、少なくとも、規制部材を動かす駆動機構と、駆動機構の動作を制御する制御部とを有するものとする。
【0040】
以下、本発明の具体的な実施形態の一例(実施形態1)について図面を参照しながら説明する。
【0041】
(実施形態1)
図1は、本発明の実施形態1による安全装置100を説明するための模式図であり、安全装置100および安全装置100を利用した加工装置1000を概念的に示している。
【0042】
加工装置1000は、装置筐体1001と、被加工物Wを加工する加工ツール1010と、加工ツール1010を動かす動力源(以下、ツール動力源という。)1020とを備えている。加工装置1000はさらに、加工ツール1010を操作するための操作部材1030と、操作部材1030の操作に応じて加工ツール1010のツール動力源1020を駆動制御する駆動制御部1100とを備えている。ここで、ツール動力源1020には、エアーアクチュエータ(エアーシリンダ)が用いられている。しかし、本発明はこれに限定されない。ツール動力源1020として、油圧シリンダであってもよい。操作部材1030には足踏みペダルが用いられており、足踏みペダルの操作によりペダル操作信号PEsを駆動制御部1100に出力するように構成されている。この足踏みペダルは、バネなどにより踏み込む前のペダル位置に付勢されており、足踏みペダルを踏み込んだ後、踏込みを止めると(すなわち、足踏みペダルから足を離すと)、足踏みペダルは、バネなどの付勢力により自動的に踏み込む前の元のペダル位置に復帰するように構成されている。
【0043】
また、装置筐体1001の中央部には加工スペース1001aが形成されており、この加工スペース1001aには加工ツール1010が配置され、加工スペース1001aの上方にはツール動力源1020が取り付けられている。さらに、装置筐体1001の加工スペース1001aの一方の側部(ここでは、紙面に向かって左側部)には安全装置100が取り付けられている。
【0044】
ここで、加工ツール1010は、加工スペース1001aの底面部分に固定された金型固定台1011と、金型固定台1011の上面に取り外し可能に取り付けられた下金型1012と、ツール動力源1020を構成するエアーシリンダのピストンロッド1021に固定されたラム1013と、ラム1013の下面に取り外し可能に取り付けられた上金型1014とを有する。なお、ラム1013は、ピストンロッド1021の昇降動作(紙面上下方向での往復移動)により金型固定台1011上で昇降するように構成されており、上金型1014を下金型1012に打付けるハンマー部材として働くものである。また、ここでは、ラム1013と上金型1014とが加工ツール1010における可動部材を構成しており、金型固定台1011と下金型1012とが加工ツール1010における固定部材を構成している。
【0045】
そして、この加工装置1000で使用されている安全装置100は、加工ツール1010の動作を阻止する第1の位置P1と、加工ツール1010の動作を可能にする第2の位置P2との間で移動可能な規制部材110と、所定の条件に応じて、規制部材110を第1の位置P1と第2の位置P2との間で移動させる駆動手段101とを備えている。なお、
図1に示す規制部材110の移動可能な方向は
図1では紙面の左右方向であるが、厳密には、
図1の紙面の奥行方向に若干傾斜した方向であり、その傾斜角度は、
図4に示される規制部材110の中心軸と
図4の紙面左右方向とがなす角度である。
【0046】
以下、加工装置1000の駆動制御部1100および安全装置100の駆動手段101について詳しく説明する。
【0047】
図2は、
図1に示す加工装置1000の駆動制御部1100および安全装置100の駆動手段101を具体的に説明するための図である。
【0048】
図1に示す加工装置1000には、
図2に示すように、加工ツール1010の加工動作の開始位置(具体的には、ラム1013の上死点位置)を検出する位置センサ1040が設けられている。なお、この位置センサには近接センサが用いられている。ただし、位置センサは、大きな振動の発生する加工装置では、有接点の近接センサに比べて振動による誤動作の少ない非接点方式のセンサ(例えば、磁気センサ)が好ましい。
【0049】
〔加工装置1000の駆動制御部1100〕
駆動制御部1100は、操作部材1030による操作に応じて加工ツール1010の動作が行われるようにツール動力源1020を駆動する構成となっている。
【0050】
具体的には、駆動制御部1100は、加工ツール1010を動かすツール動力源1020に接続されたリンク機構1110と、リンク機構1110を制御するリンク制御部1120と、リンク制御部1120にリンク機構1110の動作をロックさせることにより操作部材1030による加工ツール1010の動作(ラム1013の下降)を禁止するロック手段1130と、動作条件の設定や操作者の種々の要求を入力するための操作パネル1140とを有している。
【0051】
ここで、ツール動力源1020にはエアーシリンダ(図示せず)が用いられており、このエアーシリンダは、ピストンロッド1021を昇降させるために、シリンダブロック(図示せず)内でピストン上側の部屋およびピストン下側の部屋に対する給排気を切り換える動作切替弁(図示せず)を有する。
【0052】
(リンク機構1110)
リンク機構1110は、この動作切替弁を移動させる機構である。すなわち、リンク機構1110は、ピストン(すなわち、ピストンロッド1021)が下死点側に向けて加速されようにエアーシリンダ内でピストンに対して圧縮空気の圧力が作用する弁位置(下方加速弁位置)と、ピストンが上死点側に向けて加速されようにエアーシリンダ内でピストンに対して圧縮空気の圧力が作用する弁位置(上方加速弁位置)と、ピストンが上死点と下死点との間で静止する弁位置(中立弁位置)との間で動作切替弁を移動させる機構である。ここで、ツール動力源1020は、操作部材1030の操作と駆動制御部1100の働きとにより、ピストンを上死点と下死点との間の任意の位置で静止させることができるように構成されている。また、この動作切替弁がピストンが静止する弁位置(中立弁位置)にあるときは、シリンダブロック内でピストンを押し上げようとする力(すなわち、ピストン上側の部屋の圧縮空気の圧力や、ピストン、ピストンロッド、ラム、および上金型などのピストンにかかる部品の重力による力)とピストンを押し上げようとする力(すなわち、ピストン下側の部屋の圧縮空気の圧力による力)とが釣り合う。
【0053】
このリンク機構1110は、複数のロッド、カム、油圧シリンダなどで構成されている。この場合、動作切替弁に繋がるロッドを油圧シリンダで伸縮させることにより動作切替弁を各弁位置に位置するように移動させることができる。また油圧シリンダで伸縮させるロッドの伸縮長さは、足踏みペダル(操作部材)の踏込み量、より具体的には、足踏みペダルを回動可能に支持する軸に対する足踏みペダルの回転位置(回転量)によって調整することができる。また、リンク機構1110は、ピストンロッド1021に固定されたラム1013に当接する制御カム(
図14に示す揺りカム12)を有しており、この制御カムは、足踏みペダルの踏込みにより下方加速弁位置に移動した動作切替弁を、ラム1013の下降動作を受けて中立弁位置に戻す働きがあり、動作切替弁が中立弁位置に戻ったときラムは停止する。その結果、ラム1013を足踏みペダルの踏込み量に応じた位置に停止させることができる。なお、リンク機構1110の詳細は
図14を用いて後述する。
【0054】
(ロック手段1130)
ロック手段1130は、操作パネル1140からの操作者のロック要求(加工ツール1010の作動を禁止する要求)に応じて、あるいは、操作部材1030からの操作信号PEsに基づいて加工装置1000が一定時間操作されていないと判断したことに応じて、ロック信号Lsを出力する。この加工装置1000が一定時間操作されないと判断するときの一定時間の長さは、操作パネル1140で操作者が適宜設定することが可能である。
【0055】
さらに、ロック手段1130は、操作パネル1140からの操作者からロック解除要求(加工ツール1010の作動禁止を解除する要求)に応じてロック解除信号ULsを出力する。
【0056】
(リンク制御部1120)
リンク制御部1120は、ロック手段1130からのロック信号Lsおよびロック解除信号ULsに基づいてリンク機構1110の駆動部(例えば、油圧シリンダなどのアクチュエータ)を制御する手段である。
【0057】
具体的には、リンク制御部1120は、加工装置1000において操作部材1030による加工ツール1010の作動(足踏みペダルによるラム1013の下降)が許容されている状態(加工許容状態)では、操作部材1030からの操作信号PEsに基づいて、リンク機構1110がツール動力源1020を作動させることにより加工ツール1010が作動するようにリンク機構1110を制御する。ここでの加工ツール1010の作動は、ラム1013が上死点位置から下降する動作である。
【0058】
一方、加工装置1000において操作部材1030による加工ツール1010の作動(足踏みペダルによるラム1013の下降動作)が禁止されている状態(加工禁止状態)では、リンク制御部1120は、操作部材1030の操作に拘わらず、リンク機構1110の動作を禁止して、ツール動力源1020を作動させるリンク機構1110の動作をロックして、動力源1020がラム1013を作動させないようにする。
【0059】
ここで、加工装置1000において操作部材1030による加工ツール1010の操作が禁止されている状態は、操作者からの要求に応じてロック手段1130がロック信号Lsを出力した後にロック解除信号ULsが未だ出力していない状態、あるいは、ロック手段1130が操作部材1030からの操作信号PEsに基づいて加工装置1000が一定時間操作されていないと判断してロック信号Lsを出力した後にロック解除信号ULsが未だ出力していない状態である。
【0060】
なお、ツール動力源1020を作動させるリンク機構1110の動作をロックする方法は特に限定されるものではない。例えば、操作部材1030の操作により操作部材1030から出力された操作信号PEsをリンク制御部1120が受け付けないことで操作信号PEsに反応しない方法、あるいは、リンク機構1110の駆動部に動力が供給されないようにする方法、あるいは、リンク機構の駆動部の動作を機械的に規制する方法などが用いられる。
【0061】
また、リンク機構1110が、複数の可動ロッド、カム、油圧シリンダなどで構成されている場合は、リンク機構1110の動作をロックする方法としては、さらに、いずれかの可動ロッドを固定する方法、油圧シリンダへの油の供給管のバルブを閉める方法を用いることもできる。
【0062】
さらに、リンク機構1110の動作をロックする方法は、操作部材(足踏みペダル)1030自体が動かないようにする方法でもよい。例えば、足踏みペダル1030でリンク機構1110の油圧アクチュエータを直接操作する場合、具体的には、油圧アクチュエータに直接つながる足踏みペダル1030を踏み込むと、油圧アクチュエータの作動に応じてラム1013が下降し、足踏みペダルを踏み込む前の位置に戻すと、油圧アクチュエータの作動に応じてラム1013が上昇する場合、リンク制御部1120により油圧アクチュエータへの油の供給経路の弁をロックして、足踏みペダルを動かないようにしてもよい。
【0063】
〔安全装置100〕
このような加工装置1000に使用されている安全装置100の規制部材110は、加工装置1000の装置筐体1001の加工スペース1001a内に出没可能となるように、装置筐体1001の一部に形成されたピン挿入孔1001bにスライド可能に挿入されている安全ピン110である。ここでは、ピン挿入孔1001bの高さ位置は、加工装置1000のサイズに応じて設定される。サイズの大きい加工装置(例えば、エアスタンプハンマー)においては、人が容易にセッティングすることが出来ない高さである。具体的には、ピン挿入孔1001bの高さ位置は、操作者の立っている床面から約1m〜約2.5mの高さであり、例えば、約1.5m以上の高さである。
【0064】
この安全ピン110は円柱形状の鋼鉄製部材で構成されているが、安全ピン110の構成材料は、ステンレスなどその他の金属材料でもよい。また、この安全ピン110の重量は約23kgであるが、重さは特に限定されず、取付けなどの作業性を考慮すると、約5kg〜約30kgである。
【0065】
図3は、
図1に示す安全装置100の働きを説明するための図であり、
図3(a)は、安全装置100の規制部材110が加工ツール1010の動作が阻止される第1の位置P1にある状態を示し、
図3(b)は、規制部材110が加工ツール1010の動作可能な第2の位置P2にある状態を示す。
【0066】
安全装置100の駆動手段101は、
図2に示すように、規制部材110を動かす駆動機構101aと、駆動機構101aを制御する制御部101bとを有する。ここでは、駆動機構101aでは動力源としてエアーアクチュエータが用いられている。
【0067】
安全装置100の制御部101bは、加工装置1000の駆動制御部1100のロック手段1030からのロック信号Lsおよびロック解除信号ULsと、位置センサ1040からの位置信号Psとに基づいて駆動機構101aの駆動を制御することにより、
図3(a)および
図3(b)に示すように、駆動機構101aのエアーアクチュエータが規制部材110を第1の位置P1と第2の位置P2との間で移動させる。
【0068】
ここでは、安全装置100の作動可能な状態(加工装置1000および安全装置100の電源投入後の正常状態の確認プロセスが完了した状態)では、規制部材110は、加工ツールの動作を可能にする第2の位置P2に位置しているものとする。なお、正常状態の確認プロセスについては後述する。
【0069】
制御部101bは、操作者から要求に応じてロック手段1130から出力されたロック信号を受信したとき、あるいは、ロック手段1130が操作部材1030からの操作信号PEsに基づいて加工装置1000が一定時間操作されていないと判断して出力したロック信号Lsを受信したときは、位置センサ1040からの位置信号Psに基づいてピン駆動機構101aを駆動する。
【0070】
すなわち、位置信号Psからラム1013が上死点位置に位置していると判定される場合は、安全装置100では、制御部101bがロック信号Lsを受信すると、
図3(a)に示すように、制御部101bは、規制部材110が加工ツール1010の動作を阻止する第1の位置P1に移動するように駆動機構101aを駆動する。
【0071】
一方、位置信号Psからラム1013が上死点位置に位置していないと判定される場合は、安全装置100では、制御部101bがロック信号Lsを受信しても、
図3(b)に示すように、制御部101bは駆動機構101aの駆動を行わずに、規制部材110を加工ツールの動作を可能にする第2の位置P2に保持する。
【0072】
制御部101bは、操作部材1030が第1の位置P1に位置している状態で、操作者の要求(ロック解除操作)に応じてロック手段1130が出力したロック解除信号ULsを受信すると、安全ピン110が第1の位置P1から第2の位置P2に移動するように駆動機構101aを駆動する。これにより、操作部材1030による加工ツール1010の操作が可能となる。
【0073】
以下、安全装置100の駆動機構101aの具体的な構成を説明する。
【0074】
図4は、
図2に示される安全装置100の規制部材110および駆動手段101を構成する駆動機構101aを
図2のY方向(装置筐体1001の上方)から見た平面図であり、
図5は、
図4に示す規制部材110およびその駆動機構101aを
図4のX方向(
図1の紙面に垂直な方向)から見た構造を拡大して示す平面図である。
【0075】
ここで、駆動機構101aは、規制部材110を水平方向に往復移動させるものであり、ここでは、規制部材110としての円柱状の安全ピンは、加工装置1000の装置筐体1001の一部に形成された断面円形のピン挿入孔にスライド可能に挿入されている。ただし、安全ピン110の断面形状は任意であり得る。例えば、安全ピン110の断面形状は、正方形でも長方形でも菱形でも台形などの四角形でも五角形以上の多角形でもよい。
【0076】
具体的には、駆動機構101aは、
図4および
図5に示すように、加工装置1000の装置筐体1001の一部に固定された架台120と、この架台120に取り付けられた取付ベース板130とを有する。装置筐体1001に対する架台120の固定方法は限定されるものではない。例えば、装置筐体1001に対する架台120の固定方法は、装置筐体1001の一部を掘り込んで窪みを設け、その窪みに架台120の一部を埋め込んで装置筐体1001と架台120とを溶接などで固定する方法でもよいし、あるいは、装置筐体1001の一部にねじ穴を形成し、このねじ穴を利用して架台120をボルトで装置筐体1001に固定する方法でもよい。
【0077】
この取付ベース板130上にはスライド板150がスライド可能に支持されている。
【0078】
すなわち、取付ベース板130および架台120の内部に形成されたスペースには、
図5に示すように下部ガイド部材140が嵌め込まれており、下部ガイド部材140上には上部ガイド部材160が配置されている。スライド板150は、下部ガイド部材140と上部ガイド部材160との間にスライド可能に収容されている。
【0079】
スライド板150の先端は規制部材110が接続されている。スライド板150の根元側部は、アクチュエータ190のシリンダロッド191の一端に接続されている。シリンダロッド191の他端側はアクチュエータ190のシリンダチューブ192内に収容されており、シリンダロッド191の他端は、シリンダチューブ192内で摺動するピストン193に接続されている。シリンダチューブ192のスライド部材150とは反対側の端部には、シリンダロッド191がシリンダチューブ192内に完全に没入していることを検出する非接点センサ194bとして例えば磁気センサが取り付けられている。また、シリンダチューブ192のスライド部材150側の端部には、シリンダロッド191がシリンダチューブ192内に完全に突出していることを検出する非接点センサ194aとして例えば磁気センサが取り付けられている。ここで、非接点センサ194a、194bは磁気センサに限定されず、容量センサであってもよい。
【0080】
このシリンダロッド191は、制御部101bからの駆動信号Dsによりシリンダチューブ192に対して突出あるいは没入するようになっている。ここで、シリンダロッド191、シリンダチューブ192およびピストン193はステンレス製であるが、これに限らず、チタンや鉄などのその他の金属材料、さらには金属材料以外の樹脂やセラミックなどの材料を用いることもできる。
【0081】
このシリンダチューブ192は、
図4および
図5に示すように、前シリンダ取付台170および後シリンダ取付台180により取付ベース板130に取り付けられている。
【0082】
なお、駆動機構101aを構成する架台120、取付ベース板130、下部ガイド部材140、上部ガイド部材160、スライド板150、前シリンダ取付台170および後シリンダ取付台180は、鉄製の部材であるが、これらの部材の構成材料は、鉄以外のステンレスなどの金属材料でもよい。
【0083】
以下、駆動機構101aにおける複数の構成要素の接続関係を説明する。
【0084】
図6は、
図5のR1部分(主に規制部材110の部分)の構成要素を分解して示す平面図である。
図7は、
図4および
図5に示されるスライド板150を説明するための図であり、
図7(a)は、スライド板150を
図5の紙面上方から見た構造を示し、
図7(b)は、
図7(a)のVIIb−VIIb線断面図である。
【0085】
図6および
図7(a)、(b)に示すように、スライド板150の先端部にはピン挿入長孔151が形成されている。規制部材110の根元部分には、スライド板150の先端部を収容する切込み部112が形成されており、切込み部112には、ピン取付孔111が形成されている。
【0086】
スライド板150と規制部材110とは、スライド板150の先端部を規制部材110の切込み部112に収容した状態で、スライド板150のピン挿入長孔151を貫通するようにピン取付孔111に接続ピン110aを装着することにより接続されている。
【0087】
図8は、
図5のR2部分(駆動機構101aの部分)の構成要素を分解して示す平面図である。
図9は、
図4および
図5に示される取付ベース板130を説明するための図であり、
図9(a)は、取付ベース板130を
図5の紙面上方から見た構造を示し、
図9(b)は、
図9(a)のIXb−IXb線断面図である。
【0088】
取付ベース板130には、下部ガイド部材140を嵌め込むための貫通開口部134が形成され、架台120には、下部ガイド部材140を収容する部品取付凹部123が形成されており、取付ベース板130を架台120に取り付けたとき、取付ベース板130の貫通開口部134と架台120の部品取付凹部123とにより下部ガイド部材140を収容するスペースが形成される。取付ベース板130は、取付ベース板130に形成されたビス貫通孔133を通して架台120のビス取付孔122に固定ビス130aを取り付けることにより架台120に取付けられている。この場合、取付ベース板130と架台120との間に緩衝材120aを介在させることが好ましい。なお、緩衝材120aには固定ビス130aを貫通させるためのビス貫通孔121aが形成され、さらに、下部ガイド部材140を貫通させる貫通開口121bが形成されている。
【0089】
さらに、スライド板150は、下部ガイド部材140と上部ガイド部材160との間でスライド可能に配置されている。
【0090】
すなわち、スライド板150の取り付けは、例えば、下部ガイド部材140と上部ガイド部材160との間にスライド板150を挟み込んだ状態で、下部ガイド部材140を、取付ベース板130および架台120の組立体の内部に形成されたスペース内に配置し、固定ボルト160aを、上部ガイド部材160のボルト貫通孔161、スライド板150のボルトガイド長孔152および下部ガイド部材140のボルト貫通孔141を通して架台120のボルト取付孔121に取り付けることにより行うことができる。
【0091】
なお、上部ガイド部材160は、対向する一対の側壁部と、一対の側壁部を連結する上面壁とを有する、断面逆U字型の部材であり、上面壁には固定ボルト160aを通すボルト貫通孔161が形成されている。上部ガイド部材160は、
図4および
図5に示すように、一対の側壁部でスライド板150を挟み込むことで、一対の側壁部がスライド板150の内面に当接することよりスライド板150の幅方向の移動を規制することができる。
【0092】
さらに、取付ベース板130のうちの、貫通開口部134が形成されている端部とは反対側の端部には、部品を取り付けるための部品収容凹部132が形成されており、部品収容凹部132には、前シリンダ取付台170と後シリンダ取付台180とが配置されている。前シリンダ取付台170および後シリンダ取付台180にはそれぞれ、ビス貫通孔171および181が形成されている。取付ベース板130の部品収容凹部132の底面には、前シリンダ取付台170および後シリンダ取付台180を部品収容凹部132内に配置したときにそれぞれのビス貫通孔171および181と一致する位置にビス固定孔131が形成されている。前シリンダ取付台170は、取付ベース板130の部品収容凹部132に配置された状態で、固定ビス170aをビス貫通孔171を通して取付ベース板130のビス固定孔131に装着することにより取付ベース板130に固定されている。後シリンダ取付台180も同様、取付ベース板130の部品収容凹部132に配置された状態で、固定ビス180aをビス貫通孔181を通して取付ベース板130のビス固定孔131に装着することにより取付ベース板130に固定されている。
【0093】
前シリンダ取付台170と後シリンダ取付台180との間にはアクチュエータ190のシリンダチューブ192のフランジ部分が挟持されることにより、アクチュエータ190が取付ベース板130に固定される。
【0094】
次に、
図2、
図3および
図10〜
図13を用いて加工装置1000および安全装置100の動作を説明する。
【0095】
(リンク制御部1120の動作)
この加工装置1000では、作業中は、操作部材(足踏みペダル)1030からの操作信号PEsに基づいて駆動制御部1100のリンク制御部1120がリンク制御信号LCsによりリンク機構1110を制御することにより、ツール動力源1020が作動して加工ツール1010が作動する、つまり、ラム1013が落下する。これにより、操作者による操作部材1030の操作に応じた加工が被加工物Wに対して施される。
【0096】
このようなリンク制御部1120の動作はロック手段1130からの信号に基づいている。
【0097】
図10は、加工装置1000のリンク制御部1120の動作をフローチャートで説明するための図であり、ペダル操作(操作部材1030の操作)によるリンク機構1110の動作を可能あるいは不能とする動作を示す。
【0098】
リンク制御部1120は、ロック手段1130からロック信号Lsを受信したか否かを判定し(ステップS11)、ロック信号Lsを受信していない場合は、リンク機構1110を操作部材1030による操作が可能な状態(動作可能な状態)に維持する(ステップS12a)。なお、加工装置1000では、電源投入後の正常状態の確認プロセスが完了した状態ではリンク機構1110は動作可能な状態に設定されているものとする。
【0099】
一方、リンク制御部1120は、ロック信号Lsを受信した場合は、リンク機構1110を操作部材1030による操作が不能な状態(動作不能な状態)とし(ステップS12b)、その後、ロック手段1130からロック解除信号ULsを受信するまで、リンク機構1110の動作不能状態を維持し(ステップS13)、ロック解除信号ULsを受信すると、リンク機構1110を動作可能な状態に復帰させる(ステップS12a)。
【0100】
次に、リンク制御部1120は、操作部材1030からの操作信号PEsに基づいてペダル操作が行われたか否かを判定し(ステップS14)、ペダル操作が行われると、リンク制御信号LCsによりリンク機構1110をペダル操作に応じて作動させることにより、ラム1013がツール動力源1020により駆動されて下降する(ステップS15)。
【0101】
その後、リンク制御部1120は、加工装置1000の電源がオフされたか否かを判定し(ステップS16)、加工装置1000の電源がオフされない限り、ステップS11〜ステップS16の処理を繰り返し行い、加工装置1000の電源がオフされると処理を終了する。
【0102】
(ロック手段1130の動作)
次に、リンク制御部1120にロック信号Ls、ロック解除信号ULsを出力するロック手段1130の動作を説明する。
【0103】
この加工装置1000では、作業中は、操作部材(足踏みペダル)1030からの操作信号PEsおよび操作パネル1140からの操作信号OPsに基づいて駆動制御部1100のロック手段1130がロック信号Lsおよびロック解除信号ULsをリンク制御部1120に出力する。これにより、リンク制御部1120により制御されるツール動力源1020が、操作部材1030の操作に応じて動作する状態と、操作部材1030の操作に拘わらず動作しない状態との切り替えが行われる。
【0104】
図11は、加工装置1000のロック手段1130の動作をフローチャートで説明するための図である。
【0105】
ロック手段1130は、操作パネル1140からの操作信号OPsに基づいて操作者によるロック要求(ラム1013が動作しない状態にする要求)があったか否かを判定する(ステップS21)。操作者のロック要求があった場合は、ロック信号Lsをリンク機構1110に出力する(ステップS23)。
【0106】
一方、ステップS21での判定の結果、操作者のロック要求がない場合は、操作部材1030からの操作信号PEsに基づいて、一定時間の間、加工装置での加工操作が行われていないか否かを判定する(ステップS22)。一定時間の間、加工操作が行われていない場合は、ロック信号Lsをリンク機構1110に出力する(ステップS23)。なお、ステップS22の処理で、一定時間以内の間隔に加工操作が繰り返し行われていると判定された場合は、ロック手段1130は、ステップS21処理に戻る。
【0107】
その後、操作パネル1040からの操作信号OPsに基づいて操作者によるロック解除要求(ラム1013が動作しない状態を解除する要求)があったか否かを判定する(ステップS24)。操作者のロック解除要求があった場合は、ロック解除信号ULsをリンク機構1110に出力する(ステップS25)。ステップS24の処理は、ロック解除要求があるまで一定周期で繰り返し行われる。
【0108】
その後、ロック手段1130は、加工装置1000の電源がオフされたか否かを判定し(ステップS26)、加工装置1000の電源がオフされるまで、ステップS21〜ステップS26の処理を繰り返し行い、加工装置1000の電源がオフされると処理を終了する。
【0109】
(安全装置100の動作)
本加工装置1000では、このようなラム1013の不意の操作による想定外の動作を回避するための対策に加えて、ロック信号Ls、ロック解除信号ULsに基づいて加工ツール1010の動作を規制する安全装置100を備えており、以下この安全装置100の動作を説明する。
【0110】
図12は、安全装置100の動作をフローチャートで説明するための図であり、規制部材110を第1の位置P1へ移動させる動作、および規制部材110を第2の位置P2へ移動させる動作を示す。
図13は、安全装置100の動作を説明するための平面図であり、
図13(a)は、安全装置100の規制部材110によりラム1013の動作が規制された状態を示し、
図13(b)は、規制部材110によるラム1013の動作規制が解除された状態を示す。
【0111】
この安全装置100は、加工装置1000に備わっているロック手段1130からの出力信号に基づいて加工ツール1010の動作(具体的にはラム1013の下降動作)を規制するものであり、加工装置1000のリンク制御部1120で、操作部材1030によるラム1013の作動を不能とする安全動作と相まって二重の安全対策を実現するものである。
【0112】
安全装置100の制御部101bは、加工装置1000のロック手段1130からロック信号Lsを受信したか否かを判定する(ステップS31)。ここでは、ロック信号Lsを受信したと判定するまで、ロック信号Lsを受信したか否かの判定を繰り返す。そして、ロック信号Lsを受信したと判定した場合はラム1013が上死点位置にあるか否かを判定する(ステップS32)。
【0113】
ラム1013が上死点位置にあると判定した場合は、
図3(a)、
図13(a)に示すように、制御部101bは、駆動機構101aを制御して規制部材110を第1の位置P1へ移動させる(ステップS33)。一方、ステップS32の処理で、制御部101bがラム1013が上死点位置にないと判定した場合は、制御部101bはステップS31の処理に戻る。
【0114】
その後、ロック解除信号ULsを受信したか否かを判定する(ステップS34)。このステップS34の処理は、ロック解除信号を受信するまで一定周期で繰り返し行われる。そして、ロック解除信号ULsを受信したと判定した場合は、制御部101bは、
図3(b)、
図13(b)に示すように、駆動機構101aを制御して規制部材110を第2の位置P2へ移動させる(ステップS35)。
【0115】
その後、安全装置100の制御部101bは、加工装置1000の電源がオフされたか否かを判定し(ステップS36)、加工装置1000の電源がオフされるまで、ステップS31〜ステップS36の処理を繰り返し行い、加工装置1000の電源がオフされると処理を終了する。
【0116】
〔加工装置1000のより具体的な構成例〕
以下、
図1および
図2を用いて説明した本発明の安全装置を用いた加工装置のより具体的な構成例を説明する。
【0117】
図14は、
図1および
図2に示す安全装置100を備えた加工装置1000のより具体的な構成の一例を説明するための平面図であり、加工装置1000を正面から見た構造を示す。
【0118】
図14では、特に、
図1および
図2に示す加工装置1000におけるツール動力源1020およびリンク機構1110の構成をより具体的に示しており、
図14において、
図1および
図2における符号と同一符号は、
図1および
図2に示すものと同一の部材を示している。
【0119】
(ツール動力源1020)
図14に示すように、ツール動力源1020は、シリンダ1020bが形成されたシリンダブロック1020aと、シリンダ1020b内に昇降可能に設けられたピストン1022と、ピストン1022に接続されたピストンロッド1021とを備えたものであり、ピストンロッド1021の下端はラム1013に接続されている。また、シリンダブロック1020aには、シリンダ1020bにおけるピストン1022の上側の領域につながる第1通路1023aと、シリンダ1020bにおけるピストン1022の下側の領域につながる第2通路1023bとが形成されている。
【0120】
また、シリンダブロック1020aには、シリンダブロック1020aに取り付けられた給気管1025aおよび排気管1025bにつながる給気路1024aおよび排気路1024bが形成されている。給気管1025aはエアー源1050に開閉弁1051を介して接続されており、シリンダ1020b内にはエアー源1050から圧縮空気が供給されるようになっている。
【0121】
さらに、シリンダブロック1020aには、上述した動作切替弁としての通路切替弁15が昇降可能に設けられている。この通路切替弁15は、第1通路1023aが給気路1024aに繋がり、第2通路1023bが排気路1024bにつながる第1状態と、第1通路1023aが排気路1024bに繋がり、第2通路1023bが給気路1024aにつながる第2状態と、第1通路1023aおよび第2通路1023bに対する流体の流れが遮断される第3状態とを切り換えるものである。ここでは、通路切換弁15は、例えば、中立弁位置より上方の位置(ピストンが下降するように加速される下方加速弁位置)に位置するとき第1状態となり、中立弁位置より下方の位置(ピストンが上昇するように加速される上方加速弁位置)に位置するとき第2状態となり、中立弁位置に位置するとき、第3状態となるように構成されている。なお、ここでは、この通路切換弁15が中立弁位置から上方に遠ざかるほど、ピストン1022が下死点に向けて移動する勢いが増大し、中立弁位置から下方に遠ざかるほど、ピストン1022が上死点に向けて移動する勢いが増大する。
【0122】
図1および
図2で説明したリンク機構1110は、この通路切換弁15を動かして、第1通路1023aおよび第2通路1023bと給気路1024aおよび排気路1024bとの間での流体(空気)の流れを切り換えるものである。
【0123】
例えば、通路切換弁15が中立弁位置より上方に移動すると、第1通路1023aが給気路1024aにつながり、第2通路1023bが排気路1024bにつながることにより、ピストン上側の領域に流体が供給され、ピストン下側の領域から流体が排出されることとなるので、ラム1013が下降する方向に加速されることとなる。
【0124】
逆に、通路切換弁15が中立弁位置より下方に移動すると、第1通路1023aが排気路1024bにつながり、第2通路1023bが給気路1024aにつながることにより、ピストン上側の領域から流体が排出され、ピストン下側の領域に流体が供給されることとなるので、ラム1013が上昇する方向に加速されることとなる。
【0125】
さらに、第1通路1023aおよび第2通路1023bに対する流体の流れが遮断されることにより、ピストンは足踏みペダルの踏込み量に応じた位置で静止状態に保持される。なぜなら、ラム1013(ピストン)が低い位置にあるほど、ラム1013の傾斜側面に当接する制御カム(後述の揺りカム12)が通路切替弁15を引き下げる距離が大きくなり、足踏みペダルの踏込み量が大きくなる。従って、ラム1013(ピストン)が静止する状態は、足踏みペダルの踏込みによる通路切替弁15の上昇が、ラム1013の下降による通路切替弁15の下降により相殺された状態であり、足踏みペダルの踏込み量に応じた高さ位置でラム1013が停止することとなる。
【0126】
(リンク機構1110)
リンク機構1110は、通路切換弁15につながる弁駆動ロッド16と、上部操作ロッド14と、装置筐体1001に回動可能に取付けられた回動リンク片17とを有する。回動リンク片17の一端は回動可能に装置筐体1001に支持されており、回動リンク片17の他端側には、弁駆動ロッド16の一端および上部操作ロッド14の一端が回動可能に取り付けられている。
【0127】
さらに、リンク機構1110は、揺りカム12と、ロッカーアーム13と、下部操作ロッド20とを有する。ここで、下部操作ロッド20は油圧アクチュエータ21を含み、油圧アクチュエータ21の動作により伸縮するようになっている。下部操作ロッド20の下端は、装置筐体1001の下部に取り付けられた支持部材1201に支持されている。ロッカーアーム13は、装置筐体1001の高さ方向の概ね真ん中部分に位置するように装置筐体1001に回動可能に取り付けられ、ロッカーアーム13の一端に下部操作ロッド20の上端が回動可能に取り付けられ、ロッカーアーム13の他端には揺りカム12の一端側が支持ピン12aを中心として回動可能に取り付けられている。さらに、揺りカム12の上端には、上部操作ロッド14の下端が取り付けられている。この揺りカム12の下端側部分は、ラム1013の傾斜した側面部分に当接しており、ラム1013の傾斜した側面は、下側が迫り出した傾斜面となっている。従って、下端側部分がラム1013の傾斜した側面に当接する揺りカム12は、ラム1013の位置が下死点に近いほど、通路切換弁15をより下方に引き下げるように、支持ピンを中心として時計回りに回転することとなる。
【0128】
このような構成のリンク機構1110では、操作部材(足踏みペダル)1030を踏込むとラム1013を下降させることができ、操作部材(足踏みペダル)1030の踏込みを解除すると、揺りカム12の働きによりラム1013を上死点位置に戻すことができ、操作部材(足踏みペダル)1030を任意の踏込み量だけ踏み込んだときには、ラム1013をその踏込み量に応じた任意の位置に保持することができる。
【0130】
操作部材(足ふみペダル)1030が操作され、これによりリンク制御部1120が油圧ポンプ11を油圧アクチュエータ21が縮むように作動させると、ロッカーアーム13が時計回りに回転して揺りカム12とともに、上部操作ロッド14が持ち上げられ、その結果、通路切換弁15が持ち上げられる。これにより、第1通路1023aが給気路1024aにつながり、第2通路1023bが排気路1024bにつながることにより、ピストン上側の領域に流体が供給され、ピストン下側の領域から流体が排出されることとなるので、ラム1013が下降する方向に加速されることとなる。
【0131】
一方、操作部材(足ふみペダル)1030の操作が解除され、これによりリンク制御部1120が油圧ポンプ11を油圧アクチュエータ21が縮む前の長さまで伸びるように作動させると、ロッカーアーム13が反時計回りに回転して揺りカム12とともに、上部操作ロッド14が引き下げられ、その結果、通路切換弁15が引き下げられる。この場合、すでに操作部材1030の操作によりラム1013が上死点位置から下降しているので、通路切換弁15や上部操作ロッド14などの自重により揺りカム12がラム1013の上側が後退するように傾斜した側面に接触する状態では、、通路切換弁15の位置は揺れカムにより中立弁位置より引き下げられることとなる。その結果、第1通路1023aが排気路1024bにつながり、第2通路1023bが給気路1024aにつながることにより、ピストン下側の領域に流体が供給され、ピストン上側の領域から流体が排出されることとなるので、ラム1013が上昇する方向に加速されることとなる。そして、ラム1013が上死点位置に近づくにつれて、揺りカム12も徐々に反時計回りに回動するので、通路切換弁15も中立弁位置に向かって移動することとなる。その結果、ラム1013は、作業開始位置である上死点位置に戻ることとなる。
【0132】
このような操作部材(足踏みペダル)1030の踏込みと揺りカム12との働きによりラムの動作が行われる加工装置1000においては運転開始時の下死点位置にあるラムの急激な上昇および運転停止時の上死点位置にあるラムの落下による装置の破損を回避するために、ラム1013が下死点に固定した状態でエアー源1050をオンオフする必要がある。また、上述した安全装置100を備えた加工装置1000では、リンク制御部1120によるリンク機構1110の動作規制、および安全装置100によるラム1013の動作規制が行われるので、加工装置1000および安全装置100の電源オン直後の正常状態の確認プロセスが実行される。
【0133】
以下、(1)運転開始時に加工装置1000を運転可能状態まで立ち上げるプロセス、(2)運転可能状態で加工装置1000および安全装置100が正常状態であるかを確認するプロセス、(3)運転停止時に加工装置1000の電源をオフするプロセスについて具体的に説明する。
【0134】
上記の(1)〜(3)の説明に際し、まず初めに、運転可能状態での足踏みペダルの踏込み操作とラム1013の動作との関係を纏めて示す。
【0135】
なお、運転可能状態は、加工装置1000の動作準備が整った状態で、ツール動力源1020(具体的には、シリンダブロック1020aに取り付けられた給気管1025a)には、エアー源1050から所定の圧力の圧縮空気が供給されている状態(加工許容状態)である。
【0136】
運転可能状態では、足踏みペダル(操作部材)1030の踏込みむと、リンク制御部1120の制御により油圧ポンプ11が駆動して下部操作ロッド(油圧シリンダロッド)20が縮むことで、通路切換弁15が中立弁位置から上昇する。これにより、シリンダブロック1020a内では、ピストン上側の部屋への給気およびピストン下側の部屋からの排気が行われ、圧縮空気によりラム1013が下降する方向に加速される。ラム1013が上死点位置に静止している状態では、足踏みペダル(操作部材)1030の踏込みによりラム1013は下降することとなる。
【0137】
足踏みペダル(操作部材)1030の踏込みの直後に、足踏みペダル1030の踏込みを解除すると、リンク制御部1120の制御により油圧ポンプ11が駆動して下部操作ロッド(油圧シリンダロッド)20が伸びる。このとき、通路切換弁15は、揺りカム12の働きで中立弁位置を越えて下降する。これにより、シリンダブロック1020a内では、ピストン上側の部屋からの排気およびピストン下側の部屋への給気が行われ、慣性により下降を続けるラム1013が上昇する方向に加速される。そして、上向きの加速度によりラム1013の下向きの速度が上向きの速度に反転すると、ラム1013は上昇することとなる。
【0138】
足踏みペダル1030の踏込みを踏込み前の元の位置と最も踏み込んだ位置との間の途中で停止すると、足踏みペダル1030の停止位置に応じて、通路切換弁15が揺りカム12の回転により中立弁位置に戻るまでラム1013が上方あるいは下方に移動する。これによりラム1013は、足踏みペダル1030の停止位置(踏込み量)に応じた位置に停止することとなる。
【0139】
続いて、電源オン時の操作、その後の状態確認のプロセス、および電源オフ時の手順について説明する。
【0140】
(1)運転開始時に加工装置1000を運転可能状態まで立ち上げるプロセス、
加工装置1000の運転開始時には、加工装置1000の電源をオンして駆動制御部1100およびエアー源(例えば、コンプレッサ)1050を動作させる。運転停止状態ではラム1013は下死点位置にあるので、ロック手段1130によるロック状態(足踏みペダル1030のロック)を解除して、足踏みペダル1030を踏み込んだ状態で、エアー源1050と給気管1025aとの間の開閉弁1051を開く。このように足踏みペダル1030を踏み込んだ状態で開閉弁1051を開くことで、給気管1025aからシリンダ1020b内に供給される圧縮空気は、ピストン上側の領域に導入され、ラムの急激な上昇を回避できる。その後、エアー源1050からの圧縮空気が定常状態となった時点で、ペダルの踏込み量を徐々に少なくして最終的に足踏みペダルの踏込みを解除することで、ラム1013を上死点位置に引き上げて保持する。
【0141】
(2)加工装置1000、安全装置100の電源投入直後の正常状態の確認プロセス
続いて、駆動制御部1100が、加工装置1000が一定時間操作されていないこと、あるいは、操作パネルから操作者の要求を受けたことにより、駆動制御部1100では、リンク機構1110がロック状態(つまり、足踏みペダルを踏んでもラム1013が動作しないぺダルロックの状態)になるかを確認する。なお、ぺダルロックの状態とする前に安全ピンの作動状態を確認したい場合は、操作パネルなどからの操作信号により安全ピンを手動操作で作動させてもよい。
【0142】
次に、ラム1013の上死点位置を検出する位置センサ1040で、足踏みペダルの踏込みを行っていない状態で、ラム1013が上死点位置にあるかを確認する。
【0143】
例えば、足踏みペダルの踏込みを行っていない状態で、ラム1013が上死点位置にないときは、安全装置100の駆動手段101が自動で安全ピン110を作動させないようにする。運転開始時は、ラム1013は下死点位置にあり、ロック信号Lsを受信しても作動させない。
【0144】
一方、足踏みペダルの踏込みを行っていない状態で、ラム1013が下死点位置にあるときは、安全装置100の駆動手段101に安全ピン110を自動で作動させるようにする。
【0145】
次に、安全装置100のエアーシリンダ190の位置センサ194a(
図4参照)で安全ピン110が正常に突出したことを確認する。位置センサ194aが異常状態を示している場合、例えば、操作パネル1140のエラー表示がでたときは、操作者による異常解消作業が行われる。
【0146】
ペダルロックと安全ピンによる二重ロック状態が確認されると、操作者によるパネル操作(ロック解除スイッチの操作)によりロック解除を行う。
【0147】
この時点で、ラムが上死点位置にあるか否かを位置センサ1040により確認する。位置センサ1040が異常状態を示している場合、例えば、操作パネル1140のエラー表示がでたときは、操作者による異常解消作業が行われる。
【0148】
次に、操作パネルから操作者のロック解除要求を受けて、安全装置100は、安全ピン110を引き込む。このとき、エアーシリンダ190の位置センサ194b(
図4参照)により引き込み位置を確認する。位置センサ194bが異常状態を示している場合、例えば、操作パネル1140のエラー表示がでたときは、操作者による異常解消作業が行われる。
【0149】
その後、駆動制御部1100は、操作パネル1140から操作者のロック解除要求を受けて、リンク機構1110によるロック状態(つまり、足踏みペダルを踏んでもラム1013が動作しない状態)を解除する。
【0150】
これにより、以降、加工装置1000の運転可能状態、すなわち、通常の加工動作が可能となる。
【0151】
(3)運転停止時に加工装置1000の電源をオフするプロセス
加工装置1000の運転停止時には、足踏みペダル1030を徐々に踏み込んでラム1030を下死点位置まで移動させる。そして、ラム1030が下死点位置に位置している状態で、エアー源1050と給気管1025aとの間の開閉弁1051を閉める。これにより、ラム1013が上死点位置にある状態で、エアー源1050からピストン下側の領域に供給されている圧縮空気が断たれることによりラム1013が落下するのを回避することができる。
【0152】
その後、加工装置1000の電源をオフにする。
【0153】
従来は、規制部材(安全ピン)は重いもので約23kgの重量があり、安全ピンを持ち上げる高さが約1.5m〜約2.5mであるため、通常は二人以上での作業となり煩雑であった。そのため、安全ピンの挿入作業を怠りがちとなり、事故が発生する恐れがあった。また、安全ピンは加工装置のピン挿入穴に挿入された状態でラムに干渉しない位置に配置することで、加工装置の動作中もピン挿入穴に安全ピンを挿入したままにすることも可能であるが、その場合は、加工作業中の振動により安全ピンの挿入位置がずれると、安全ピンが加工装置のピン挿入穴から脱落したり、ラムに干渉したりする虞があり、加工作業中も安全ピンを加工装置のピン挿入穴に挿入したままにすることもできないといいう問題があった。
【0154】
しかしながら、本発明の実施形態1の加工装置1000の安全装置100では、規制部材の移動は人の手を介さずに駆動手段を用いて行うことにより、簡単かつ効率よく加工ツールの動作を規制するように安全装置を働かせることが可能となる。さらに、本発明の加工装置は、操作部材1030による加工ツール(ラム1013)の操作を不能とするロック手段1130からの出力信号に基づいて、加工ツール1010の動作(具体的にはラム1013の下降動作)自体を規制することが可能であるため、加工ツール1010の動作を規制する安全対策に加えて、操作部材1030によるラム1013の操作自体を不能とする安全対策も実現できる。その結果、操作部材1030の不意の操作による加工ツール1010の作動を二重の安全対策により確実に防止することができる。
【0155】
以上のように、本発明の好ましい実施形態を用いて本発明を例示してきたが、本発明は、この実施形態に限定して解釈されるべきものではない。本発明は、特許請求の範囲によってのみその範囲が解釈されるべきであることが理解される。当業者は、本発明の具体的な好ましい実施形態の記載から、本発明の記載および技術常識に基づいて等価な範囲を実施することができることが理解される。本明細書において引用した文献は、その内容自体が具体的に本明細書に記載されているのと同様にその内容が本明細書に対する参考として援用されるべきであることが理解される。