(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-79658(P2021-79658A)
(43)【公開日】2021年5月27日
(54)【発明の名称】印刷機
(51)【国際特許分類】
B41F 33/16 20060101AFI20210430BHJP
B41F 33/00 20060101ALI20210430BHJP
B41F 31/02 20060101ALI20210430BHJP
B41J 29/393 20060101ALI20210430BHJP
B41J 29/38 20060101ALI20210430BHJP
【FI】
B41F33/16
B41F33/00 238
B41F33/00 234
B41F31/02 A
B41J29/393 107
B41J29/38 301
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】17
(21)【出願番号】特願2019-210413(P2019-210413)
(22)【出願日】2019年11月21日
(71)【出願人】
【識別番号】714000460
【氏名又は名称】リョービMHIグラフィックテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002734
【氏名又は名称】特許業務法人藤本パートナーズ
(72)【発明者】
【氏名】中村 貴彦
(72)【発明者】
【氏名】六原 義昭
(72)【発明者】
【氏名】藤原 聖子
【テーマコード(参考)】
2C061
2C250
【Fターム(参考)】
2C061AR01
2C061AR03
2C061HH13
2C061HJ01
2C061HK11
2C061HN15
2C061KK04
2C061KK22
2C061KK25
2C061KK28
2C061KK32
2C250DB01
2C250EA15
2C250EA18
2C250EB26
(57)【要約】
【課題】濃度合わせ時に損紙が発生する枚数を低減することができる印刷機を提供する。
【解決手段】印刷物の複数のベタパッチの濃度値を測定する濃度値測定手段14と、測定された複数の濃度値を利用して印刷物が合格か不合格かを判定するための濃度関連指標を導出し、導出された濃度関連指標と目標の指標とに基づいて印刷物が合格か不合格かを判定し、合格と判定された場合には本刷りに移行し、不合格と判定された場合には試し刷りを繰り返す本刷り移行手段16と、前に試し刷りされた印刷物が不合格と判定され、かつ、後に試し刷りされた印刷物が不合格と判定された場合に、後の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との差が、前の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との差よりも大きい場合に試し刷りを中止する試し刷り中止手段18と、を備える。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試し刷りされて搬送されてくる印刷物のインキツボキーに対応する範囲に印刷された複数のベタパッチの濃度値を測定する濃度値測定手段と、該濃度値測定手段により測定された複数の濃度値を利用して試し刷りされた印刷物が合格か不合格かを判定するための濃度関連指標を導出する濃度関連指標導出手段と、該濃度関連指標導出手段により導出された濃度関連指標と目標の指標とに基づいて試し刷りされた印刷物が合格か不合格かを判定し、合格と判定された場合には本刷りに移行し、不合格と判定された場合には前記試し刷りを繰り返す本刷り移行手段と、を備える印刷機において、
前に試し刷りされた印刷物が不合格と判定され、かつ、後に試し刷りされた印刷物が不合格と判定された場合に、後の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違が、前の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違よりも大きい相違である場合に、試し刷りを中止する試し刷り中止手段を備えていることを特徴とする印刷機。
【請求項2】
後の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違が、前の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違よりも小さい相違である場合に、前記試し刷りを繰り返すことを特徴とする請求項1に記載の印刷機。
【請求項3】
前記濃度関連指標導出手段は、複数のベタパッチのうち、目標の濃度値に入っているベタパッチの数である目標内ベタパッチ数を濃度関連指標として導出する手段であり、前記本刷り移行手段は、前記濃度関連指標導出手段で導出した目標内ベタパッチ数が前記目標の指標である目標ベタパッチ数以上である場合に、試し刷りされた印刷物が合格であると判定し、前記濃度関連指標導出手段で導出した目標内ベタパッチ数が前記目標ベタパッチ数未満である場合に、試し刷りされた印刷物が不合格であると判定する判定手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷機。
【請求項4】
前記濃度関連指標導出手段は、複数のベタパッチの濃度値を合計した合計濃度値をベタパッチの個数で割った平均濃度値を濃度関連指標として導出する手段であり、前記本刷り移行手段は、前記濃度関連指標導出手段で導出した平均濃度値と前記目標の指標である目標の濃度値との差が設定範囲内にある場合に、試し刷りされた印刷物が合格であると判定し、前記濃度関連指標導出手段で導出した平均濃度値と前記目標の濃度値との差が設定範囲外にある場合に、試し刷りされた印刷物が不合格であると判定する判定手段を備えていることを特徴とする請求項1又は2に記載の印刷機。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、本刷りを行う前に試し刷りを行う印刷機に関するものである。
【背景技術】
【0002】
かかる印刷機では、本刷りを行う前に所定枚数の印刷を試し刷りとして行い濃度確認(濃度合わせ)をしている。具体的には、所定枚数の印刷を試し刷りとして行い、試し刷りした印刷物の濃度測定を行い、測定した濃度値が目標とする濃度値に対して許容範囲内にあるかどうかを判定する。許容範囲内にあると判定されると、本刷りへ移行し、許容範囲外にあると判定されると、測定される濃度値が許容範囲内に入るようにインキ供給量の補正を行いつつ更に試し刷りを行って濃度確認(濃度合わせ)をすることになる。試し刷りは、測定される濃度値が許容範囲内に入るまで繰り返し行われる。しかし、測定される濃度値が許容範囲内に入るように前記試し刷りを繰り返し行っていると、大量の損紙が発生してしまう場合がある。
【0003】
そこで、例えば特許文献1では、試し刷り枚数に上限枚数(測定終了枚数)を設け、この上限枚数に達しても、測定される濃度値が許容範囲内に入っていない場合には、試し刷りを中止することによって、大量に損紙が発生することを回避している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特許第6220117号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記のように、上限枚数に達して試し刷りを中止した場合は、改めて所定枚数の印刷を試し刷りとして行い、試し刷りした印刷物の濃度測定を行い、測定した濃度値が目標とする濃度値に対して許容範囲内に入るようにインキ供給量の補正(インキツボキーの開度の補正)を行いつつ試し刷りを繰り返しながら、濃度合わせを行っていくことになる。
【0006】
ところで、最初の方に試し刷りした印刷物の濃度値よりも最後の方に試し刷りした印刷物の濃度値の方が目標濃度に近づいている良好な状態になっていることがある。このような良好な状態になっている場合でも、特許文献1では、上限枚数に達していれば、印刷を中止することになる。印刷を中止した後は、前述のように、所定枚数の試し刷りを行い、印刷物の濃度測定を行ってからインキツボキーの開度の補正を行うことになるため、前記のように良好な状態になっている場合でも、濃度合わせが完了するまでの間にある程度の試し刷り枚数が必ず必要になる。この試し刷り枚数の印刷物は損紙となる。したがって、前記のような良好な状態においては、上限枚数に達していたとしても、印刷を中止せずに連続して濃度合わせを行う方が損紙の枚数を低減することができることがあり、改善の余地があった。
【0007】
本発明はこのような問題を解決するためになされたもので、濃度合わせ時に損紙が発生する枚数を低減することができる印刷機を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明に係る印刷機は、試し刷りされて搬送されてくる印刷物のインキツボキーに対応する範囲に印刷された複数のベタパッチの濃度値を測定する濃度値測定手段と、該濃度値測定手段により測定された複数の濃度値を利用して試し刷りされた印刷物が合格か不合格かを判定するための濃度関連指標を導出する濃度関連指標導出手段と、該濃度関連指標導出手段により導出された濃度関連指標と目標の指標とに基づいて試し刷りされた印刷物が合格か不合格かを判定し、合格と判定された場合には本刷りに移行し、不合格と判定された場合には前記試し刷りを繰り返す本刷り移行手段と、を備える印刷機において、前に試し刷りされた印刷物が不合格と判定され、かつ、後に試し刷りされた印刷物が不合格と判定された場合に、後の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違が、前の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違よりも大きい相違である場合に、試し刷りを中止する試し刷り中止手段を備えていることを特徴としている。
【0009】
上記構成によれば、試し刷りを行った印刷物が不合格と判定された場合でも試し刷りを繰り返すことによって、合格と判定される場合がある。そして、前に試し刷りされた印刷物が不合格と判定され、かつ、後に試し刷りされた印刷物が不合格と判定された場合に、後の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違が、前の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違よりも大きい相違である場合、つまり後の試し刷り時の印刷物の濃度が前の試し刷り時の印刷物の濃度よりも悪化している場合は、合格になるまでに大量の損紙が発生することが予想されるので、試し刷りを中止する。
【0010】
また、本発明に係る印刷機は、後の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違が、前の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違よりも小さい相違である場合に、前記試し刷りを繰り返す構成であってもよい。
【0011】
上記のように、後の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違が、前の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違よりも小さい相違である場合、つまり後の試し刷り時の印刷物の濃度が前の試し刷り時の印刷物の濃度よりも良好になっている場合は、合格になるまでの時間が短くて済むことが予想されるので、試し刷りを繰り返し行って濃度合わせをすることで、損紙が発生する枚数を低減することができる。
【0012】
また、本発明に係る印刷機は、前記濃度関連指標導出手段が、複数のベタパッチのうち、目標の濃度値に入っているベタパッチの数である目標内ベタパッチ数を濃度関連指標として導出する手段であり、前記本刷り移行手段は、前記濃度関連指標導出手段で導出した目標内ベタパッチ数が前記目標の指標である目標ベタパッチ数以上である場合に、試し刷りされた印刷物が合格であると判定し、前記濃度関連指標導出手段で導出した目標内ベタパッチ数が前記目標ベタパッチ数未満である場合に、試し刷りされた印刷物が不合格であると判定する判定手段を備えていてもよい。
【0013】
上記のように、判定手段は、濃度関連指標導出手段で導出した目標内ベタパッチ数が目標ベタパッチ数以上である場合に、試し刷りされた印刷物が合格であると判定し、濃度関連指標導出手段で導出した目標内ベタパッチ数が目標ベタパッチ数未満である場合に、試し刷りされた印刷物が不合格であると判定する。
【0014】
また、本発明に係る印刷機は、前記濃度関連指標導出手段が、複数のベタパッチの濃度値を合計した合計濃度値をベタパッチの個数で割った平均濃度値を濃度関連指標として導出する手段であり、前記本刷り移行手段は、前記濃度関連指標導出手段で導出した平均濃度値と前記目標の指標である目標の濃度値との差が設定範囲内にある場合に、試し刷りされた印刷物が合格であると判定し、前記濃度関連指標導出手段で導出した平均濃度値と前記目標の濃度値との差が設定範囲外にある場合に、試し刷りされた印刷物が不合格であると判定する判定手段を備えていてもよい。
【0015】
上記のように、判定手段は、濃度関連指標導出手段で導出した平均濃度値と目標の濃度値との差が設定範囲内にある場合に、試し刷りされた印刷物が合格であると判定し、濃度関連指標導出手段で導出した平均濃度値と目標の濃度値との差が設定範囲外にある場合に、試し刷りされた印刷物が不合格であると判定する。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、後の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違が、前の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との相違よりも大きい相違である場合に試し刷りを中止する試し刷り中止手段を備えることで、濃度合わせ時に損紙が発生する枚数を低減することができる印刷機を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図3】印刷機の試し刷り中止判定処理を行うためのフローチャートであり、最初の処理を示している。
【
図4】印刷機の試し刷り中止判定処理を行うためのフローチャートであり、
図3から引き続きの処理を示している。
【
図5】印刷機の試し刷り中止判定処理を行うためのフローチャートであり、
図4から引き続きの処理を示している。
【
図6】印刷機の試し刷り中止判定処理を行うためのフローチャートであり、
図5から引き続きの処理を示している。
【
図7】印刷機の試し刷り中止判定処理を行うためのフローチャートであり、
図6から引き続きの処理を示している。
【
図8】印刷機の試し刷り中止判定処理を行うためのフローチャートであり、
図7から引き続きの処理を示している。
【
図9】印刷機の試し刷り中止判定処理を行うためのフローチャートであり、
図8から引き続きの処理を示している。
【
図10】印刷機の試し刷り中止判定処理の一部を行うための別のフローチャートであり、
図7の処理の部分の別の処理を示している。
【
図11】
図10から引き続きの処理を示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の一実施形態にかかる印刷機について、図面を参照しながら説明する。
【0019】
印刷機1は、紙積み台2と、紙積み台2からフィーダ装置3により一枚ずつ印刷用紙を送り出すための給紙部4と、この給紙部4から送り出された印刷用紙に5色(少なくとも一つの特色を含む色)の印刷を行うための印刷部5と、該印刷部5で印刷された印刷用紙(印刷物)のインキツボキーに対応する範囲に印刷された複数のベタパッチ(図示せず)を撮像するRGB方式の撮像手段であるRGBカメラ6と、撮像後の印刷用紙を搬送して排紙するための排紙部7と、を備えている。
図1において、紙積み台2側を前側とし、排紙部7側を後側とし、紙面を貫通する方向を左右方向(又は幅方向)として、以下説明する。
【0020】
印刷部5は、プロセス4色であるC(シアン)、M(マゼンタ)Y(イエロー)、K(ブラック)を印刷する4台の印刷ユニット5A,5B,5C,5Dと、プロセス4色以外の色である特色を印刷する印刷ユニット5Eと、を備えている。この実施形態では、特色を印刷する印刷ユニット5Eを後端に配置しているが、どの位置に配置してもよい。なお、印刷ユニット5Aが、後述するフローチャートに登場するユニット1に相当し、印刷ユニット5Bが、後述するフローチャートに登場するユニット2に相当し、印刷ユニット5Cが、後述するフローチャートに登場するユニット3に相当し、印刷ユニット5Dが、後述するフローチャートに登場するユニット4に相当し、印刷ユニット5Eが、後述するフローチャートに登場するユニットnに相当する。
【0021】
RGBカメラ6は、排紙部7の前端側上部に配置されたボックス9内に収容されているとともに、最後部に位置する印刷ユニット5Eと排紙部7との間に配置されるステップ10に形成される開口(図示せず)を通して搬送される印刷用紙の複数のベタパッチを撮像する。尚、開口は、開閉自在な蓋体(図示せず)によって開口状態と閉塞状態とに切り換えられる。また、排紙部7の左右方向に設けられた一対の側壁部11,11(
図1では一方側のみ図示)のそれぞれに、点検やトラブル解消の目的でステップ10を横断したい場合に、RGBカメラ6による撮像を一時中断及び再開させるための押しボタン12を備えている。この押しボタン12を押すことによりRGBカメラ6による撮像を中断し、押しボタン12を再度押すことによりRGBカメラ6による撮像を再開する。なお、押しボタン12は、排紙部7の後壁部に備えることもできる。また、中断している時は、押しボタン12が点滅することで、中断していることを作業者へ報知する。なお、撮像手段であるRGBカメラ6としては、ラインセンサカメラ、CMOSカメラ、CCDカメラ等が挙げられる。RGBカメラ6で撮像した各ベタパッチの撮像データが
図2に示す制御部Sに備える濃度値算出手段13に入力され、濃度値算出手段13が各ベタパッチの濃度値を算出する。前記RGBカメラ6と濃度値算出手段13とから、複数のベタパッチの濃度値を測定する濃度値測定手段14(
図2参照)を構成している。
【0022】
図2に、本発明の印刷機の試し刷り中止判定処理を行うためのブロック図を示している。つまり、印刷機は、RGBカメラ6からの撮像データが入力される制御部Sを備え、制御部Sは、RGBカメラ6からの撮像データを濃度値に算出する濃度値算出手段13と、濃度関連指標導出手段15と、本刷り移行手段16と、判定手段17と、試し刷り中止手段18と、を備えている。
【0023】
また、各印刷ユニット5A〜5Eは、印刷用インキを収容するインキツボ(図示せず)と、インキツボの幅方向に沿ってインキ供給量を調整可能に設けられた複数のインキツボキー(図示せず)とを備えている。したがって、印刷用紙(印刷物)上の各インキツボキーに対応する領域にベタパッチが印刷される。
【0024】
濃度値算出手段13は、前述したように、RGBカメラ6で撮像した各ベタパッチの撮像データに基づいて各ベタパッチの濃度値を算出する手段である。なお、算出した3つのRGBのベタ濃度値をCMYKのベタ濃度値に変換した濃度値を利用してもよい。
【0025】
濃度関連指標導出手段15は、印刷された複数のベタパッチのうち、目標の濃度値に入っているベタパッチの数である目標内ベタパッチ数を濃度関連指標として導出する手段である。例えば、目標の濃度値を、予め設定された所定範囲を有する濃度値とし、その濃度値を例えば、1.4〜1.6に設定すると、測定したベタパッチの濃度値が目標の濃度値1.4〜1.6に入っていれば、目標内ベタパッチ数を加算していくことになる。これら目標の濃度値の設定は、自由に変更でき、例えば色毎や印刷する作業対象に応じて変更することができる。
【0026】
本刷り移行手段16は、濃度関連指標導出手段15により導出された濃度関連指標と目標の指標とに基づいて試し刷りされた印刷物が合格か不合格かを判定し、合格と判定された場合には本刷りに移行し、不合格と判定された場合には試し刷りを繰り返す手段である。
【0027】
判定手段17は、前記本刷り移行手段16に備えており、前記濃度関連指標導出手段15により導出した目標内ベタパッチ数が目標の指標である目標ベタパッチ数以上である場合に、試し刷りされた印刷物が合格であると判定し、前記濃度関連指標導出手段15で導出した目標内ベタパッチ数が前記目標ベタパッチ数未満である場合に、試し刷りされた印刷物が不合格であると判定する。例えば、インキツボキーが21個ある場合に、全数の21個全ての数を目標ベタパッチ数にしてもよいし、20個以下の任意の数に目標ベタパッチ数を自由に設定することができ、例えば色毎や印刷する作業対象に応じて変更することができる。本実施形態では、この導出した目標内ベタパッチ数と目標ベタパッチ数との差を、両者の相違としている。
【0028】
試し刷り中止手段18は、前(例えば1回目)に試し刷りされた印刷物が不合格と判定され、かつ、後(2回目)に試し刷りされた印刷物が不合格と判定された場合に、後(2回目)の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との差が、前(1回目)の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との差よりも大きい場合に試し刷りを中止する手段である。例えば、インキツボキーが21個である場合に、目標ベタパッチ数を10個とした場合に、1回目の試し刷りの印刷物の目標内ベタパッチ数が8個となり、2回目の試し刷りの印刷物の目標内ベタパッチ数が7個となった場合に、目標ベタパッチ数との差が、1回目の場合は2個となり、2回目の場合は3個となるため、試し刷り印刷を中止することになる。これに対して、1回目の試し刷りの印刷物の目標内ベタパッチ数が7個となり、2回目の試し刷りの印刷物の目標内ベタパッチ数が8個となった場合に、目標ベタパッチ数との差が、1回目の場合は3個となり、2回目の場合は2個となるため、試し刷り印刷を繰り返し行うことになる。この実施形態では、具体的には、目標の個数(目標ベタパッチ数)を本刷り移行OK%で表示し、(目標濃度に入ったユニットのインキツボキー数)÷(ユニットの全インキツボキー数)×100%で得た数値%と本刷り移行OK%とを比較することになる。なお、ユニットの全インキツボキー数は、画像面積率が1以上のインキツボキーを対象とし、画像面積率が1未満の(画像がない)インキツボキーは総数の対象にしない。
【0029】
要するに、後(2回目)の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との差が、前(1回目)の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との差よりも大きい場合、つまり後の試し刷り時の印刷物の濃度が前の試し刷り時の印刷物の濃度よりも悪化している場合は、合格になるまでに大量の損紙が発生することが予想されるので、試し刷りを中止する。この中止して悪化した原因を調査したうえで試し刷りを再開することが好ましい。これに対して、後(2回目)の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との差が、前(1回目)の試し刷り時の濃度関連指標と目標の指標との差よりも小さい場合、つまり後の試し刷り時の印刷物の濃度が前の試し刷り時の印刷物の濃度よりも良好になっている場合は、合格になるまでの時間が短くて済むことが予想されるので、試し刷りを繰り返し行って濃度合わせをすることで、損紙が発生する枚数を低減することができる。
【0030】
次に、
図3〜
図9に示すフローチャートに基づいて試し刷り中止判定処理を行う制御を説明する。
図3〜
図9は、試し刷り中止判定処理を行う一連のフローチャートであるが、一つの図の中に記載できないため、7枚に分けて記載している。
【0031】
まず、各種設定を行う。具体的には、目標濃度の設定(上限値と下限値との間の許容範囲を含んだ範囲の設定を行うことになるが、目標濃度の設定と目標濃度に対してずれてもよい許容範囲の設定を別々に行ってもよい)、本刷り移行OK%の設定(ユニット毎(色毎)にそれぞれ設定)を行う(ステップS1)。本刷り移行OK%は、前述した目標ベタパッチ数に相当する。次に、試し刷り濃度判定枚数の設定を行う(ステップS2)。試し刷り濃度判定枚数とは、試し刷り1回あたりの印刷枚数である。試し刷り濃度判定枚数の設定は、試し刷り回数毎に設定することになる。例えば、2回目の試し刷りの印刷枚数よりも3回目の試し刷りの印刷枚数を少なく設定することもできる。なお、試し刷り印刷物における各位置のベタパッチの濃度値は、試し刷り濃度判定枚数の試し刷り印刷物の中の最後の10枚の濃度値の中から最小値と最大値の2つを除いた残りの8つの濃度値の平均値としている。ただし、試し刷り印刷物における各位置のベタパッチの濃度値は、これに限定されない。例えば、最後の5枚の濃度値の中から最小値と最大値の2つを除いた残りの3つの濃度値の平均値とすることもできる。あるいは、試し刷り濃度判定枚数の試し刷り印刷物の中の最後の1枚の印刷物の濃度値とすることもできる。また、試し刷り濃度判定枚数の試し刷り印刷物の中の最後の3枚の印刷物の濃度値の平均値とすることもできる。
【0032】
続いて、試し刷り中止判定枚数を設定する(ステップS3)。試し刷り中止判定枚数とは、試し刷りスタートからの印刷物の通算枚数がこの枚数に達するまでの期間は、試し刷り印刷物の濃度状況が不合格かつ悪化していたとしても試し刷り印刷を中止しないこととする枚数である。印刷(試し刷り1)スタート後しばらくの期間の印刷物は濃度が変化している段階であり、濃度の状態が安定しないことから、この期間の印刷物の濃度に基づいて試し刷りを中止した場合、中止せず試し刷りを継続した場合と比較して損紙が増加してしまう傾向がある。試し刷り中止判定枚数は、このような損紙の増加を避けるためのものである。なお、試し刷り中止判定枚数は、画像面積率や印刷速度等から自動で設定されるようにしてもよい。以上の設定が終了すると、試し刷り1(1回目)をスタートする(ステップS4)。
【0033】
試し刷り1(1回目)の印刷枚数が設定した試し刷り1の濃度判定枚数に達したかどうかを判定する(ステップS5)。印刷枚数が設定した試し刷り1の濃度判定枚数に達したと判定すると、目標濃度に入ったインキツボキーの数を算出する(ユニット1の試し刷り1のOKのインキツボキーの数を算出する)(ステップS6)。尚、インキツボキーの数とは、前述のベタパッチ数(ベタパッチの数)と同義である。すなわち、目標濃度に入ったインキツボキーの数が、前述した目標内ベタパッチ数に相当する。以下においてはインキツボキーの数で説明する。また、インキツボキーの数を図中ではキー数と表現している。次に、(目標濃度に入ったユニットのインキツボキーの数)÷(ユニットの全インキツボキーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OKの%設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS7)。%設定値以上であると判定すると、ユニット1で印刷された印刷物が合格と判定されてユニット2の判定に移る(ステップS8)。また、%設定値未満であると判定されると、次の試し刷り(2回目)に移行する(ステップS17)。ステップS8に移行すると、目標濃度に入ったインキツボキーの数を算出する(ユニット2の試し刷り1のOKのインキツボキーの数を算出する)。次に、(目標濃度に入ったユニットのインキツボキーの数)÷(ユニットの全インキツボキーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OKの%設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS9)。%設定値以上であると判定すると、ユニット2で印刷された印刷物が合格と判定されてユニット3の判定に移る(ステップS10)。また、%設定値未満であると判定されると、次の試し刷り(2回目)に移行する(ステップS17)。ステップS10では、目標濃度に入ったインキツボキーの数を算出する(ユニット3の試し刷り1のOKのインキツボキーの数を算出する)。次に、(目標濃度に入ったユニットのインキツボキーの数)÷(ユニットの全インキツボキーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OKの%設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS11)。%設定値以上であると判定すると、ユニット3で印刷された印刷物が合格と判定されてユニット4の判定に移る(ステップS12)。また、%設定値未満であると判定されると、次の試し刷り(2回目)に移行する(ステップS17)。ステップS12では、目標濃度に入ったインキツボキーの数を算出する(ユニット4の試し刷り1のOKのインキツボキーの数を算出する)。次に、(目標濃度に入ったユニットのインキツボキーの数)÷(ユニットの全インキツボキーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OKの%設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS13)。%設定値以上であると判定すると、ユニット4で印刷された印刷物が合格と判定されてユニットnの判定に移る(ステップS14)。また、%設定値未満であると判定されると、次の試し刷り(2回目)に移行する(ステップS17)。ステップS14では、目標濃度に入ったインキツボキーの数を算出する(ユニットnの試し刷り1のOKのインキツボキーの数を算出する)。次に、(目標濃度に入ったユニットのインキツボキーの数)÷(ユニットの全インキツボキーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OKの%設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS15)。%設定値以上であると判定すると、ユニットnで印刷された印刷物が合格と判定されて、全ユニットで印刷された印刷物が合格と判定され、本刷りへ移行する(ステップS16)。また、%設定値未満であると判定されると、次の試し刷り(2回目)に移行する(ステップS17)。前記本刷り移行OKの%設定値の設定は、画像面積率や印刷速度等の変動要因から自動で設定可能にしてもよいし、オペレータが手動で任意の値に設定してもよい。
【0034】
ステップS17では、少なくとも1つのユニットが不合格と判定されたため、次の試し刷りm回目(m≧2)をスタートする。試し刷りm回目の印刷枚数が設定した試し刷りm回目(例えば2回目)の濃度判定枚数に達したかどうかを判定する(ステップS18)。m回目(例えば2回目)の濃度判定枚数に達したと判定すると、目標濃度に入ったインキツボキーの数を算出する(ユニット1の試し刷りm回目のOKのインキツボキーの数を算出する)(ステップS19)。次に、(目標濃度に入ったユニットのインキツボキーの数)÷(ユニットの全インキツボキーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OKの%設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS20)。%設定値以上であると判定すると、ユニット1で印刷された印刷物が合格と判定されてユニット2の判定に移る(ステップS21)。また、%設定値未満であると判定されると、試し刷り中止判定に移行する(ステップS30)。ステップS21に移行すると、目標濃度に入ったインキツボキーの数を算出する(ユニット2の試し刷りm回目のOKのインキツボキーの数を算出する)。次に、(目標濃度に入ったユニットのインキツボキーの数)÷(ユニットの全インキツボキーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OKの%設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS22)。%設定値以上であると判定すると、ユニット2で印刷された印刷物が合格と判定されてユニット3の判定に移る(ステップS23)。また、%設定値未満であると判定されると、試し刷り中止判定に移行する(ステップS30)。ステップS23では、目標濃度に入ったインキツボキーの数を算出する(ユニット3の試し刷りm回目のOKのインキツボキーの数を算出する)。次に、(目標濃度に入ったユニットのインキツボキーの数)÷(ユニットの全インキツボキーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OKの%設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS24)。%設定値以上であると判定すると、ユニット3で印刷された印刷物が合格と判定されてユニット4の判定に移る(ステップS25)。また、%設定値未満であると判定されると、試し刷り中止判定に移行する(ステップS30)。ステップS25では、目標濃度に入ったインキツボキーの数を算出する(ユニット4の試し刷りm回目のOKのインキツボキーの数を算出する)。次に、(目標濃度に入ったユニットのインキツボキーの数)÷(ユニットの全インキツボキーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OKの%設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS26)。%設定値以上であると判定すると、ユニット4で印刷された印刷物が合格と判定されてユニットnの判定に移る(ステップS27)。また、%設定値未満であると判定されると、試し刷り中止判定に移行する(ステップS30)。ステップS27では、目標濃度に入ったインキツボキーの数を算出する(ユニットnの試し刷りm回目のOKのインキツボキーの数を算出する)。次に、(目標濃度に入ったユニットのインキツボキーの数)÷(ユニットの全インキツボキーの数)×100%の計算値が、設定した本刷り移行OKの%設定値以上であるかどうかを判定する(ステップS28)。%設定値以上であると判定すると、ユニットnで印刷された印刷物が合格と判定されて、全ユニットで印刷された印刷物が合格と判定され、本刷りへ移行する(ステップS29)。また、%設定値未満であると判定されると、試し刷り中止判定に移行する(ステップS30)。
【0035】
ステップS30では、試し刷りの通算枚数が試し刷り中止判定枚数に達しているかどうかを判定する。達していないと判定されると、ステップS17に戻って再度試し刷りm(前回の試し刷りが2回目なら3回目となる)をスタートして印刷物が合格か不合格かを判定する。試し刷り中止判定枚数に達していると判定されると、ユニット1において後に試し刷りしたm回目(例えば2回目)の印刷物と前に試し刷りしたm−1回目(1回目)の印刷物の両方とも不合格(NG)であるかどうかを判定する(ステップS31)。連続して2回とも不合格であると判定されると、ユニット1の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニット1の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数以上であるかを判定する(ステップS32)。ユニット1の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニット1の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数以上であると判定した場合は、ステップS33に移行し、ユニット1の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニット1の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数未満であると判定した場合は、試し刷りを中止する(ステップS46)。ステップS33では、ユニット1の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数と、ユニット1の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数とが同数であるかを判定する。同数であると判定すると、試し刷りを中止する(ステップS46)。同数でないと判定すると、ユニット2の判定に移行する(ステップS34)。前記ステップS31で試し刷りされた印刷物が連続して2回とも不合格ではないと判定された場合には、ステップS32とステップS33の判定は行わずに、ステップS34へ移行する。
【0036】
ステップS34では、ユニット2において後に試し刷りしたm回目(例えば2回目)の印刷物と前に試し刷りした(m−1)回目(1回目)の印刷物の両方とも不合格(NG)であるかどうかを判定する。連続して2回とも不合格であると判定されると、ユニット2の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニット2の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数以上であるかを判定する(ステップS35)。ユニット2の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニット2の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数以上であると判定した場合は、ステップS36に移行し、ユニット2の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニット2の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数未満であると判定した場合は、試し刷りを中止する(ステップS46)。ステップS36では、ユニット2の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数と、ユニット2の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数とが同数であるかを判定する。同数であると判定すると、試し刷りを中止する(ステップS46)。同数でないと判定すると、ユニット3の判定に移行する(ステップS37)。前記ステップS37で試し刷りされた印刷物が連続して2回とも不合格ではないと判定された場合には、ステップS38とステップS39の判定は行わずに、ステップS40へ移行する。
【0037】
ステップS37では、ユニット3において後に試し刷りしたm回目の印刷物と前に試し刷りしたm−1回目の印刷物の両方とも不合格(NG)であるかどうかを判定する。連続して2回とも不合格であると判定されると、ユニット3の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニット3の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目とな)のOKのインキツボキーの数以上であるかを判定する(ステップS38)。ユニット3の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニット3の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数以上であると判定した場合は、ステップS39に移行し、ユニット3の試し刷りm回目のOKのインキツボキーの数が、ユニット3の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り)のOKのインキツボキーの数未満であると判定した場合は、試し刷りを中止する(ステップS46)。ステップS39では、ユニット3の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数と、ユニット3の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数とが同数であるかを判定する。同数であると判定すると、試し刷りを中止する(ステップS46)。同数でないと判定すると、ユニット4の判定に移行する(ステップS40)。前記ステップS40で試し刷りされた印刷物が連続して2回とも不合格ではないと判定された場合には、ステップS41とステップS42の判定は行わずに、ステップS43へ移行する。
【0038】
ステップS40では、ユニット4において後に試し刷りしたm回目(例えば2回目)の印刷物と前に試し刷りした(m−1)回目(1回目)の印刷物の両方とも不合格(NG)であるかどうかを判定する。連続して2回とも不合格であると判定されると、ユニット4において後に試し刷りしたm回目の印刷物と前に試し刷りしたm−1回目の印刷物の両方とも不合格(NG)であるかどうかを判定する。連続して2回とも不合格であると判定されると、ユニット4の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニット4の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数以上であるかを判定する(ステップS41)。ユニット4の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニット4の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数以上であると判定した場合は、ステップS42に移行し、ユニット4の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニット4の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数未満であると判定した場合は、試し刷りを中止する(ステップS46)。ステップS42では、ユニット4の試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数と、ユニット4の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数とが同数であるかを判定する。同数であると判定すると、試し刷りを中止する(ステップS46)。同数でないと判定すると、ユニットnの判定に移行する(ステップS43)。前記ステップS43で試し刷りされた印刷物が連続して2回とも不合格ではないと判定された場合には、ステップS44とステップS45の判定は行わずに、ステップS17へ移行する。
【0039】
ステップS43では、ユニットnにおいて後に試し刷りしたm回目(例えば2回目)の印刷物と前に試し刷りした(m−1)回目(1回目)の印刷物の両方とも不合格(NG)であるかどうかを判定する。連続して2回とも不合格であると判定されると、ユニットnの試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニットnの試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数以上であるかを判定する(ステップS44)。ユニットnの試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニットnの試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数以上であると判定した場合は、ステップS45に移行し、ユニットnの試し刷りm回目(例えば2回目)のOKのインキツボキーの数が、ユニットnの試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り、m回目が2回目なら1回目となる)のOKのインキツボキーの数未満であると判定した場合は、試し刷りを中止する(ステップS46)。ステップS45では、ユニットnの試し刷りm回目のOKのインキツボキーの数と、ユニットnの試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り)のOKのインキツボキーの数とが同数であるかを判定する。同数であると判定すると、試し刷りを中止する(ステップS46)。同数でないと判定すると、ステップS17に戻って再度試し刷りm(前回が2回目なら3回目)をスタートして印刷物が合格か不合格かを判定する。この実施形態では、試し刷りm回目の印刷物と試し刷り(m−1)回目の印刷物とを比較したが、例えば試し刷りm回目の印刷物と試し刷り(m−2)回目の印刷物又は(m−3)回目の印刷物とを比較してもよく、比較する印刷物は、連続して試し刷りされた印刷物同士を比較するものに限定されない。また、例えばステップS32において試し刷りm回目の印刷物と試し刷り(m−1)回目の印刷物とを比較し、ステップS33では、試し刷りm回目の印刷物と試し刷り(m−2)回目の印刷物又は(m−3)回目の印刷物とを比較してもよく、ステップS32で比較する2つの印刷物とステップS33で比較する2つの印刷物とを異ならせてもよい。
【0040】
前記印刷機1を用いて印刷用紙の表面のみ(又は裏面のみ)印刷する場合は、全てのユニット(ここでは5つのユニット)の表面(又は裏面)の濃度が合格(OK判定)になって本刷りに移行することになる。また、前記印刷機1を用いて印刷用紙に対して表面4色及び裏面1色の両面印刷を行う場合は、表面4色及び裏面1色の全ての濃度がいずれも合格(OK判定)になって本刷りに移行することになる。
【0041】
前記実施形態で説明した濃度関連指標導出手段15及び本刷り移行手段16を、次のように構成することもできる。つまり、濃度関連指標導出手段15を、複数のベタパッチの濃度値を合計した合計濃度値をベタパッチの個数で割った平均濃度値を濃度関連指標として導出する手段から構成し、前記本刷り移行手段16が、前記濃度関連指標導出手段15で導出した平均濃度値と目標の指標である目標の濃度値との差が設定範囲内にある場合に、試し刷りされた印刷物が合格であると判定し、前記濃度関連指標導出手段15で導出した平均濃度値と目標の指標である目標の濃度値との差が設定範囲外にある場合に、試し刷りされた印刷物が不合格であると判定する判定手段17を備えていてもよい。
【0042】
尚、本発明は、前記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0043】
前記実施形態では、5つのユニットを備える印刷機を示したが、1つのユニット又は2つ以上の任意の個数のユニットを備える印刷機であってもよい。また、複数のユニットを備える印刷機で全数のユニットよりも少ない数(最低1ユニット以上)のユニットにより印刷してもよい。
【0044】
また、前記実施形態では、RGBカメラ6を用いたが、分光測色計を用いてもよい。この場合、分光測色計が複数のベタパッチの濃度値を測定する濃度値測定手段14を構成する。
【0045】
また、前記実施形態では、全ベタパッチ又は特定のベタパッチの濃度を確認していたが、重点エリアに対応するベタパッチの濃度だけを確認してもよい。
【0046】
また、前記実施形態では、図のフローチャートのステップS31からステップS34の間のステップS32とステップS33を、
図10及び
図11に示すように、ステップS47に置き換えて実施してもよい。つまり、ステップS32とステップS33において、2つの判断をさせる場合であるが、
図10及び
図11では、1つの判断にしている。つまり、
図10及び
図11では、ユニット1の試し刷りm回目のOKのインキツボキーの数が、ユニット1の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り)のOKのインキツボキーの数よりも多いと判定した場合に、ユニット2の判定に移行し(ステップS34)、ユニット1の試し刷りm回目のOKのインキツボキーの数が、ユニット1の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り)のOKのインキツボキーの数よりも少ない場合又は同数と判定した場合に、試し刷りを中止する(ステップS46)。ユニット2のステップS48及びユニット3のステップS49も同様であるため、説明は省略する。また、ステップS40以降も同様なフローになるため、省略している。
【0047】
また、前記実施形態では、ユニット1〜nのそれぞれにおいて、後に試し刷りしたm回目の印刷物と前に試し刷りした(m−1)回目の印刷物の両方とも不合格(NG)である場合に、ユニット1〜nそれぞれの試し刷りm回目のOKのインキツボキーの数が、ユニット1〜nそれぞれの試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り)のOKのインキツボキーの数以上であるかを判定するようにしたが、後に試し刷りしたm回目の印刷物の状態(合格又は不合格)と前に試し刷りした(m−1)回目の印刷物の状態(合格又は不合格)にかかわらず、常にユニット1〜nそれぞれの試し刷りm回目のOKのインキツボキーの数が、ユニット1〜nそれぞれの試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り)のOKのインキツボキーの数以上であるかを判定するようにしてもよい。具体的には、ステップS31、S34、S37、S40、S43を削除して実施することになる。
【0048】
また、前記実施形態では、2回連続して印刷物が不合格と判定された場合に、例えばユニット1において、ユニット1の試し刷りm回目のOKのインキツボキーの数が、ユニット1の試し刷り(m−1)回目(m回目の一つ前の試し刷り)のOKのインキツボキーの数以上であるかを判定するようにしたが、3回又は4回連続して印刷物が不合格と判定された場合に、前記判定を行うようにしてもよい。この判定に用いる印刷物は、例えば最後に試し刷りされた不合格の印刷物と、その前に試し刷りされた不合格の印刷物とを用いてもよいし、1回目に試し刷りされた不合格の印刷物と3回目に試し刷りされた不合格の印刷物とを用いてもよく、用いる印刷物は、自由に設定可能である。
【符号の説明】
【0049】
1…印刷機、2…紙積み台、3…フィーダ装置、4…給紙部、5…印刷部、5A,5B,5C,5D,5E…印刷ユニット、6…RGBカメラ、7…排紙部、9…ボックス、10…ステップ、11…側壁部、12…ボタン、13…濃度値算出手段、14…濃度値測定手段、15…濃度関連指標導出手段、16…本刷り移行手段、17…判定手段、18…試し刷り中止手段、S…制御部