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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-80039(P2021-80039A)
(43)【公開日】2021年5月27日
(54)【発明の名称】作業車
(51)【国際特許分類】
   B66F 9/24 20060101AFI20210430BHJP
   B66F 11/04 20060101ALI20210430BHJP
   B66C 23/78 20060101ALI20210430BHJP
【FI】
   B66F9/24 S
   B66F11/04
   B66C23/78 H
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-206870(P2019-206870)
(22)【出願日】2019年11月15日
(71)【出願人】
【識別番号】000116644
【氏名又は名称】株式会社アイチコーポレーション
(74)【代理人】
【識別番号】100092897
【弁理士】
【氏名又は名称】大西 正悟
(74)【代理人】
【識別番号】100157417
【弁理士】
【氏名又は名称】並木 敏章
(72)【発明者】
【氏名】須田 元昭
(72)【発明者】
【氏名】森山 亮
【テーマコード(参考)】
3F205
3F333
【Fターム(参考)】
3F205AA20
3F205AC01
3F205FA01
3F205HA01
3F205HA02
3F205HA03
3F205HA04
3F205HC04
3F205HC08
3F333AA08
3F333AB04
3F333FA10
3F333FD08
3F333FD09
3F333FE04
3F333FE05
(57)【要約】
【課題】作業台が作業対象物に対してアプローチ可能であるか否かを容易に判断することが可能な作業車を提供する。
【解決手段】作業車は、走行可能な車体と、車体上に設けられたブームと、ブームの先端部に設けられた作業台と、車体側方へ張り出し可能なアウトリガビームと、アウトリガビームの先端部に伸縮自在に設けられたジャッキと、車体の周囲の画像情報を取得するカメラ91〜94と、カメラ91〜94により取得された車体の周囲の画像情報を用いて、平面視での車体の周囲を示す周囲表示画像を生成する画像処理部65と、画像処理部65により生成された周囲表示画像を表示する下部表示装置100とを備え、周囲表示画像は、アウトリガビームの車体側方への張り出し量に応じて、作業台の移動が許容される作業可能範囲を示す。
【選択図】図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
走行可能な車体と、
前記車体上に起伏および旋回自在に設けられたブームと、
前記ブームの先端部に設けられた作業台と、
前記車体の側部に設けられ、前記車体側方へ張り出し可能なアウトリガビームと、
前記アウトリガビームの先端部に伸縮自在に設けられ、下方へ伸長して接地した状態で前記車体を支持するジャッキと、
前記車体に設けられ、前記車体の周囲の画像情報を取得するカメラと、
前記カメラにより取得された前記車体の周囲の画像情報を用いて、平面視での前記車体の周囲を示す周囲表示画像を生成する画像処理部と、
前記画像処理部により生成された前記周囲表示画像を表示する表示装置とを備え、
前記周囲表示画像は、前記アウトリガビームの前記車体側方への張り出し量に応じて、前記車体の周囲において前記作業台の移動が許容される作業可能範囲を示すことを特徴とする作業車。
【請求項2】
前記車体上の左側に設けられて工具を収納可能な左側工具収納部と、
前記車体上の右側に設けられて工具を収納可能な右側工具収納部とを備え、
前記カメラは、
前記車体の前部に設けられ、前記車体の周囲の前側部分の画像情報を取得するフロントカメラと、
前記車体の後部に設けられ、前記車体の周囲の後側部分の画像情報を取得するリアカメラと、
前記左側工具収納部の上部に設けられ、前記車体の周囲の左側部分の画像情報を取得する左サイドカメラと、
前記右側工具収納部の上部に設けられ、前記車体の周囲の右側部分の画像情報を取得する右サイドカメラとを有し、
前記画像処理部は、前記フロントカメラにより取得された前記車体の周囲の前側部分の画像情報と、前記リアカメラにより取得された前記車体の周囲の後側部分の画像情報と、前記左サイドカメラにより取得された前記車体の周囲の左側部分の画像情報と、前記右サイドカメラにより取得された前記車体の周囲の右側部分の画像情報とを用いて、前記周囲表示画像を生成することを特徴とする請求項1に記載の作業車。
【請求項3】
前記アウトリガビームの前記車体側方への張り出し量を検出する張り出し量検出器を備え、
前記画像処理部は、前記張り出し量検出器により検出された前記張り出し量に基づいて、前記作業可能範囲を示す前記周囲表示画像を生成することを特徴とする請求項1または2に記載の作業車。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アウトリガジャッキを備えた作業車に関する。
【背景技術】
【0002】
作業車の一例として、運転キャブを前部に有して走行可能なトラック車両をベースに構成され、その車体上に水平旋回可能に設けられた旋回台と、その旋回台に起伏および伸縮可能に設けられたブームと、そのブームの先端部に旋回可能に支持された作業台とを備えた高所作業車が知られている。このような高所作業車は、電線工事、道路トンネル内の保守点検作業、橋梁の保守点検作業等の種々の作業現場で用いられている。このような高所作業車では、作業中に車両を安定した状態で支持するため、車両の前後左右にそれぞれアウトリガジャッキが設けられ、これらのアウトリガジャッキを車両の側方に張り出して接地させるように構成されている(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平8−324998号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
作業台の移動が許容される作業可能範囲は、アウトリガジャッキの張り出し量等によって変化する。そのため、アウトリガジャッキにより車両が支持される場所において、作業台が電柱等の作業対象物に対してアプローチ可能であるか否かを判断することは難しい。
【0005】
本発明は、このような問題に鑑みてなされたものであり、作業台が作業対象物に対してアプローチ可能であるか否かを容易に判断することが可能な作業車を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
このような目的達成のため、本発明に係る作業車(例えば、実施形態における高所作業車1)は、走行可能な車体と、前記車体上に起伏および旋回自在に設けられたブームと、前記ブームの先端部に設けられた作業台と、前記車体の側部に設けられ、前記車体側方へ張り出し可能なアウトリガビーム(例えば、実施形態におけるアウトリガ11)と、前記アウトリガビームの先端部に伸縮自在に設けられ、下方へ伸長して接地した状態で前記車体を支持するジャッキと、前記車体に設けられ、前記車体の周囲の画像情報を取得するカメラと、前記カメラにより取得された前記車体の周囲の画像情報を用いて、平面視での前記車体の周囲を示す周囲表示画像を生成する画像処理部と、前記画像処理部により生成された前記周囲表示画像を表示する表示装置とを備え、前記周囲表示画像は、前記アウトリガビームの前記車体側方への張り出し量に応じて、前記車体の周囲において前記作業台の移動が許容される作業可能範囲を示す。
【0007】
上述の作業車において、前記車体上の左側に設けられて工具を収納可能な左側工具収納部と、前記車体上の右側に設けられて工具を収納可能な右側工具収納部とを備え、前記カメラは、前記車体の前部に設けられ、前記車体の周囲の前側部分の画像情報を取得するフロントカメラと、前記車体の後部に設けられ、前記車体の周囲の後側部分の画像情報を取得するリアカメラと、前記左側工具収納部の上部に設けられ、前記車体の周囲の左側部分の画像情報を取得する左サイドカメラと、前記右側工具収納部の上部に設けられ、前記車体の周囲の右側部分の画像情報を取得する右サイドカメラとを有し、前記画像処理部は、
前記フロントカメラにより取得された前記車体の周囲の前側部分の画像情報と、前記リアカメラにより取得された前記車体の周囲の後側部分の画像情報と、前記左サイドカメラにより取得された前記車体の周囲の左側部分の画像情報と、前記右サイドカメラにより取得された前記車体の周囲の右側部分の画像情報とを用いて、前記周囲表示画像を生成することが好ましい。
【0008】
上述の作業車において、前記アウトリガビームの前記車体側方への張り出し量を検出する張り出し量検出器(例えば、実施形態におけるジャッキ張出量センサ85)を備え、前記画像処理部は、前記張り出し量検出器により検出された前記張り出し量に基づいて、前記作業可能範囲を示す前記周囲表示画像を生成することが好ましい。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、画像処理部により生成される周囲表示画像は、アウトリガビームの車体側方への張り出し量に応じて、車体の周囲において作業台の移動が許容される作業可能範囲を示す。これにより、平面視での車体の周囲を示す周囲表示画像に、作業台の移動が許容される作業可能範囲が示されるため、表示装置に表示される周囲表示画像を視認することで、車体の周囲に位置する作業対象物に対して、作業台がアプローチ可能であるか否かを容易に判断することが可能になる。
【0010】
上述の作業車において、カメラは、車体の前部に設けられたフロントカメラと、車体の後部に設けられたリアカメラと、左側工具収納部の上部に設けられた左サイドカメラと、右側工具収納部の上部に設けられた右サイドカメラとを有することが好ましい。これにより、工具収納部は、例えば箱状の同じような形状に形成されることが多いため、左右の工具収納部の上部に左右のサイドカメラを設けることで、車体上の装置レイアウトが設計的に変わっても、車体上における左右のサイドカメラの配置を容易に決定することが可能になる。
【0011】
上述の作業車において、画像処理部は、張り出し量検出器により検出されたアウトリガビームの張り出し量に基づいて、作業台の作業可能範囲を示す周囲表示画像を生成することが好ましい。これにより、張り出し量検出器により検出されたアウトリガビームの張り出し量に基づいて、作業台の作業可能範囲を求めることができるため、表示装置に表示される周囲表示画像を視認することで、車体の周囲に位置する作業対象物に対して、作業台がアプローチ可能であるか否かを容易に且つ正確に判断することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】高所作業車を左方から見た図である。
図2】高所作業車を上方から見た図である。
図3】高所作業車を前方から見た図である。
図4】高所作業車を後方から見た図である。
図5】高所作業車の制御系を示すブロック図である。
図6】表示装置に表示される周囲表示画像の一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る高所作業車1を図1図4に示しており、まず、これらの図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。高所作業車1は、図1に示すように、車体2の前部に運転キャブ7を有し、車体2の前後左右に配設された車輪3により走行可能なトラック式車両をベースに構成されている。
【0014】
車体2の前後左右には、高所作業時に車体2を持ち上げ支持するアウトリガジャッキ1
0が設けられている。アウトリガジャッキ10は、図2および図4に示すように、車体2の左右方向(車幅方向)に伸縮可能なアウトリガ(アウトリガビーム)11と、アウトリガ11の先端部に設けられて上下方向に伸縮可能なジャッキ12と、ジャッキ12の下端部に取り付けられた接地板13とを有して構成される。アウトリガ11は、該アウトリガ11の内部に設けられたアウトリガシリンダ15(図5を参照)により左右方向(車幅方向)に伸縮作動可能に構成されている。ジャッキ12は、該ジャッキ12の内部に設けられたジャッキシリンダ16(図5を参照)により上下方向に伸縮作動可能に構成されている。アウトリガ11を車体2の左右側方に張り出すとともにジャッキ12を伸長させて接地板13を路面に接地させることにより、車体2が持ち上げ支持され、車両全体を安定させた状態にすることができる。
【0015】
図1および図2に示すように、車体2における運転キャブ7後方の架装領域には、ブーム旋回モータ24(図5を参照)により駆動されて上下軸回りに水平旋回動自在に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱21には、ブーム30の基端部がフートピン22を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。また、車体2の架装領域の左右には、作業工具や作業機材などを収納するための左側工具収納部26および右側工具収納部27が設けられている。左側工具収納部26は、車体2における架装領域の左側に配設された箱状の左下部工具箱26aと、左下部工具箱26aの上に配設された箱状の左上部工具箱26bとを有する。右側工具収納部27は、車体2における架装領域の右側に配設された箱状の右下部工具箱27aと、右下部工具箱27aの上に配設された箱状の右上部工具箱27bとを有する。
【0016】
ブーム30は、図1に示すように、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30b、および先端ブーム30cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられたブーム伸縮シリンダ31(図5を参照)の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと支柱21との間にはブーム起伏シリンダ23(図5を参照)が跨設されており、このブーム起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏動させることができる。
【0017】
先端ブーム30cの先端部には、垂直ポスト35(図2を参照)が上下方向に揺動自在に枢支されている。この垂直ポスト35は、先端ブーム30cの先端部との間に跨設された上部レベリングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された下部レベリングシリンダ25とにより、ブーム30の起伏の如何に拘らず常時垂直姿勢に保持されるように揺動制御(レベリング制御)される。垂直ポスト35には、作業者搭乗用の作業台40が取り付けられている。作業台40は、垂直ポスト35に設けられた作業台旋回モータ37(図5を参照)を回転駆動させることにより、垂直ポスト35回りに首振り動(水平旋回動)することができる。
【0018】
図2に示すように、作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーや操作スイッチ、操作ダイヤル等を備えた上部操作装置45が設けられている。そのため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(ブーム旋回モータ24の回転作動)、ブーム30の起伏作動(ブーム起伏シリンダ23の伸縮作動)、ブーム30の伸縮作動(ブーム伸縮シリンダ31の伸縮作動)、作業台40の首振り作動(作業台旋回モータ37の回転作動)などの各作動操作を行うことができる。なお、図4に示すように、車体2の後部には、下部操作装置50が設けられており、地上もしくは車体2上にいる作業者は、上記の作動操作(上部操作装置45と同様な作動操作)や、アウトリガジャッキ10の作動操作などを行うことができるようになっている。
【0019】
上部操作装置45もしくは下部操作装置50が操作されると、図5に示すように、その操作内容に対応した操作信号が、車体2に設けられたコントロールユニット60に出力される。コントロールユニット60の作動制御部61は、その操作信号に基づいた指令信号を油圧駆動ユニット70に出力するようになっている。油圧駆動ユニット70は、図5に示すように、作動油を貯留する作動油タンク71と、車体2に搭載されたエンジンEの動力を用いて駆動される油圧ポンプ72と、油圧ポンプ72から吐出される作動油を上記指令信号に基づいた供給方向および供給量で各油圧アクチュエータに供給制御する制御バルブユニット73とを有している。
【0020】
エンジンEの動力を変速して車輪3に伝達するトランスミッションには、パワーテイクオフ機構PTOが組み込まれている。運転キャブ7内に配設されたPTO操作レバー75がオフ位置からオン位置に操作されると、パワーテイクオフ機構PTOによりエンジンEによる駆動先を車輪3から油圧ポンプ72に切り換えられ、エンジンEの動力により油圧ポンプ72が駆動されるようになっている。制御バルブユニット73は、ブーム旋回モータ24、ブーム起伏シリンダ23、ブーム伸縮シリンダ31、作業台旋回モータ37、アウトリガシリンダ15およびジャッキシリンダ16のそれぞれに対応した電磁比例制御バルブV1〜V6を有している。油圧駆動ユニット70は、コントロールユニット60の作動制御部61からの指令信号に応じて各油圧アクチュエータに供給する作動油の流れを制御して各油圧アクチュエータを作動させる。
【0021】
このように各油圧アクチュエータの作動はコントロールユニット60(作動制御部61)により制御される。そのため、高所作業車1には種々の検出装置が配設されており、それらの検出装置から出力される検出信号がコントロールユニット60に入力されるようになっている。例えば、コントロールユニット60には、ブーム旋回角センサ81からブーム30(旋回台20)の旋回角度に応じた旋回角度検出信号が入力され、ブーム起伏角センサ82からブーム30の起伏角度に応じた起伏角度検出信号が入力され、ブーム長センサ83からブーム30の伸長量に応じた伸長量検出信号が入力され、作業台旋回角センサ84から作業台40の旋回角度に応じた旋回角度検出信号が入力される。また例えば、コントロールユニット60には、ジャッキ張出量センサ85からアウトリガジャッキ10(アウトリガ11)の車体側方への張り出し量に応じた張出量検出信号が入力され、ジャッキ接地センサ86からアウトリガジャッキ10(接地板13)の接地検出信号が入力される。また例えば、コントロールユニット60には、車体傾斜角センサ87から車体2(路面)の前後および左右の傾斜角度に応じた傾斜角度検出信号が入力され、走行速度センサ88から高所作業車1の走行速度に応じた走行速度検出信号が入力される。
【0022】
なお、ジャッキ張出量センサ85は、アウトリガジャッキ10(アウトリガ11)の車幅方向の張り出し量(つまり、車体2に対する左右側方への張り出し量)を4段階で検出する。本実施形態では、上記4段階の張り出し量として、「最小張り出し量(MIN)」、
「中間1張り出し量(MID1)」、「中間2張り出し量(MID2)」、「最大張り出し量(MAX)」が設定されている。なお、最小張り出し量はアウトリガ11の格納状態に対応し
、最大張り出し量はアウトリガ11の最大張り出し状態に対応する。つまり、アウトリガ11の張り出し量は、最小張り出し量<中間1張り出し量<中間2張り出し量<最大張り出し量という順に1段階ずつ増加する。なお、ジャッキ張出量センサ85として、アウトリガ11の張り出し量を段階的に検出する構成に代えて、アウトリガ11の張り出し量を連続的に検出する構成を適用してもよい。
【0023】
本実施形態に係る高所作業車1では、車体2の前後左右にカメラが配設され、各カメラから出力される画像情報がコントロールユニット60に入力されるようになっている。図1および図3に示すように、車体2の前部には、フロントカメラ91が配設される。フロントカメラ91は、車体2の前部におけるフロントバンパー28の近傍に、車体2の前方
を向いて取り付けられる。フロントカメラ91は、魚眼レンズや超広角レンズ等の画角の広いレンズを備えて構成され、車体2の周囲の前側部分の画像情報を取得し、取得した画像情報をコントロールユニット60へ出力する。
【0024】
図2および図4に示すように、車体2の後部には、リアカメラ92が配設される。リアカメラ92は、車体2の後部における右側のテールランプ29の近傍に、車体2の後方を向いて取り付けられる。リアカメラ92は、フロントカメラ91と同様に構成され、車体2の周囲の後側部分の画像情報を取得し、取得した画像情報をコントロールユニット60へ出力する。なお、リアカメラ92は、テールランプ29の近傍に限らず、非使用時の下部操作装置50を覆う保護カバー(図示せず)に取り付けられてもよく、ブーム30の基端部や旋回台20の後部に取り付けられてもよい。リアカメラ92がブーム30の基端部や旋回台20の後部に取り付けられる場合、リアカメラ92から延びるケーブルが、旋回台20に設けられたスリップリング(図示せず)に挿通されるようにしてもよい。またこの場合、リアカメラ92から出力される画像情報が、無線通信によりコントロールユニット60へ送信されるようにしてもよい。
【0025】
図2および図4に示すように、車体2の左側部には、左サイドカメラ93が配設される。左サイドカメラ93は、車体2の左側部における左側工具収納部26(左上部工具箱26b)の上端部に、車体2の左方を向いて取り付けられる。左サイドカメラ93は、フロントカメラ91と同様に構成され、車体2の周囲の左側部分の画像情報を取得し、取得した画像情報をコントロールユニット60へ出力する。車体2の右側部には、右サイドカメラ94が配設される。右サイドカメラ94は、車体2の右側部における右側工具収納部27(右上部工具箱27b)の上端部に、車体2の右方を向いて取り付けられる。右サイドカメラ94は、フロントカメラ91と同様に構成され、車体2の周囲の右側部分の画像情報を取得し、取得した画像情報をコントロールユニット60へ出力する。
【0026】
また、本実施形態に係る高所作業車1では、車体2における下部操作装置50の近傍に、下部表示装置100(図5を参照)が配設されている。下部操作装置50を操作する作業者は、下部表示装置100に表示される画像を視認することができるようになっている。下部表示装置100は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成され、コントロールユニット60の画像処理部65により生成された画像を表示することができる。
【0027】
コントロールユニット60は、図5に示すように、前述の作動制御部61と、作業範囲設定部63と、画像処理部65とを有している。作業範囲設定部63には、車体2を転倒させることなくブーム30の先端部(作業台40)を移動させることのできる領域として定められた作業可能範囲のデータが記憶されている。また、作業範囲設定部63には、アウトリガジャッキ10(アウトリガ11)の4段階の張り出し量のそれぞれに対応する作業可能範囲のデータが記憶されている。作業範囲設定部63は、ジャッキ張出量センサ85から入力された張出量検出信号に基づいて、作業可能範囲のデータ群の中から現在のアウトリガ11の張り出し量に応じた作業可能範囲のデータを読み出す。そして、作業範囲設定部63は、作業可能範囲のデータ群の中からアウトリガ11の張り出し量に応じて読み出された作業可能範囲のデータを、現在のアウトリガ11の張り出し量により許容できるブーム30の先端部の移動可能領域として設定する。
【0028】
なお、図示を省略するが、作業可能範囲(移動可能領域)の外縁は、ブーム30の長さが取り得る範囲とブーム30の起伏角度が取り得る範囲との関係により構造上設定される外縁(作動限界線)と、構造上はブーム30の先端部を移動させ得るが、転倒モーメントが過大となるのを未然に防止する観点からブーム30の先端部の移動を禁止せざる得ない限界線として設定される外縁(規制限界線)とからなる。以下では、作業可能範囲の外縁として、作動限界線と規制限界線とを区別せずに、「限界線」と称する。
【0029】
画像処理部65には、フロントカメラ91、リアカメラ92、左サイドカメラ93、および右サイドカメラ94からの画像情報と、ジャッキ張出量センサ85からの張出量検出信号が入力される。また、画像処理部65には、平面視での高所作業車1の画像情報が予め記憶されている。画像処理部65は、フロントカメラ91から入力された車体2の周囲の前側部分の画像情報と、リアカメラ92から入力された車体2の周囲の後側部分の画像情報と、左サイドカメラ93から入力された車体2の周囲の左側部分の画像情報と、右サイドカメラ94から入力された車体2の周囲の右側部分の画像情報と、予め記憶された平面視での高所作業車1の画像情報とを用いて、画像合成や歪み補正などの所定の画像処理を行うことにより、平面視での車体2(すなわち、高所作業車1)の周囲を示す周囲表示画像110(図6を参照)を生成する。画像処理部65は、生成した周囲表示画像110の画像情報を下部表示装置100へ出力する。下部表示装置100は、画像処理部65から入力された画像情報に基づいて周囲表示画像110を表示する。
【0030】
図6に、画像処理部65により生成される周囲表示画像110の一例を示す。図6の例では、作業対象物である電柱WKの近傍の場所に、高所作業車1が停車している場合を示す。なお、電柱WKは、障害物であるガードレールGRの近傍に立設されている。図6に示す周囲表示画像110では、高所作業車1において旋回台20の旋回中心Cが表示される。この旋回中心Cの画像情報は、平面視での高所作業車1の画像情報として予め画像処理部65に記憶される。
【0031】
また、図6に示す周囲表示画像110では、図6の二点鎖線で示すように、範囲表示画像120が重ねて表示される。範囲表示画像120は、高所作業車1の周囲において前述の作業可能範囲を示す。範囲表示画像120は、環状に形成された限界線表示画像121を有する。限界線表示画像121は、前述の作業可能範囲における限界線を示す。画像処理部65は、ジャッキ張出量センサ85から入力された張出量検出信号(すなわち、アウトリガ11の張り出し量)に基づいて、作業範囲設定部63に記憶された作業可能範囲のデータ群の中から、現在のアウトリガ11の張り出し量に応じた作業可能範囲のデータを読み出し、読み出した作業可能範囲における限界線を示すように限界線表示画像121を設定する。そして、画像処理部65は、画像合成などの所定の画像処理を行うことにより、高所作業車1の周囲において限界線表示画像121(すなわち、範囲表示画像120)が重ねて表示されるように周囲表示画像110を生成する。
【0032】
なお、限界線表示画像121において示される限界線は、ブーム30の作業可能半径を全旋回位置(360度)に亘って示した包絡線であり、限界線表示画像121において示される限界線で囲まれる領域が前述の作業可能範囲を示す。また、限界線表示画像121において示される限界線は、ブーム30の先端部(作業台40)が所定の基準高さ(例えば、ブーム30の先端部を移動させ得る最大の高さ)の場合における平面視での限界線を示す。
【0033】
周囲表示画像110において、例えば、図6に示すように、電柱WKが範囲表示画像120の限界線表示画像121より内側に位置する場合、当該電柱WKに対して作業台40がアプローチ可能であることを容易に判断することができる。一方、電柱WKが範囲表示画像120の限界線表示画像121より外側に位置する場合、当該電柱WKに対して作業台40がアプローチ可能ではないことを容易に判断することができる。これにより、下部表示装置100に表示される周囲表示画像110を視認することで、車体2の周囲に位置する電柱WKに対して、作業台40がアプローチ可能であるか否かを容易に判断することが可能になる。
【0034】
本実施形態によれば、画像処理部65により生成される周囲表示画像110は、アウト
リガ(アウトリガビーム)11の車体2の左右側方への張り出し量に応じて、車体2の周囲において作業台40の移動が許容される作業可能範囲を示す。これにより、平面視での車体2の周囲を示す周囲表示画像110に、作業台40の移動が許容される作業可能範囲が示されるため、下部表示装置100に表示される周囲表示画像110を視認することで、車体2の周囲に位置する作業対象物(電柱WK)に対して、作業台40がアプローチ可能であるか否かを容易に判断することが可能になる。なお、画像処理部65が、ジャッキ張出量センサ85により検出されたアウトリガ(アウトリガビーム)11の張り出し量に基づいて、作業台40の作業可能範囲を示す周囲表示画像110を生成するため、車体2の周囲に位置する作業対象物(電柱WK)に対して、作業台40がアプローチ可能であるか否かを容易に且つ正確に判断することが可能である。
【0035】
また、各カメラは、車体2の前部に設けられたフロントカメラ91と、車体2の後部に設けられたリアカメラ92と、左側工具収納部26の上部に設けられた左サイドカメラ93と、右側工具収納部27の上部に設けられた右サイドカメラ94とを有することが好ましい。これにより、工具収納部は、例えば箱状の同じような形状に形成されることが多いため、左右の工具収納部26,27の上部に左右のサイドカメラ93,94を設けることで、車体上の装置レイアウトが設計的に変わっても、車体上における左右のサイドカメラの配置を容易に決定することが可能になる。
【0036】
上述の実施形態において、範囲表示画像120は、作業台の積載荷重が所定の積載荷重の場合の限界線を示す限界線表示画像121を有しているが、これに限られるものではなく、当該限界線表示画像121に加え、作業台40の積載荷重が所定の(第1の)積載荷重と異なる第2の積載荷重の場合の限界線を示す第2の限界線表示画像121´を有してもよい。
【0037】
上述の実施形態において、画像処理部65は、ジャッキ張出量センサ85から入力された張出量検出信号(すなわち、アウトリガ11の張り出し量)に基づいて、作業範囲設定部63に記憶された作業可能範囲のデータ群の中から、現在のアウトリガ11の張り出し量に応じた作業可能範囲のデータを読み出し、読み出した作業可能範囲における限界線を示すように限界線表示画像121を設定しているが、これに限られるものではない。例えば、ジャッキ張出量センサ85として、アウトリガ11の張り出し量を連続的に検出する構成を適用する場合、画像処理部65は、アウトリガ11の4段階の張り出し量に対応する作業可能範囲に基づいて、現在のアウトリガ11の張り出し量から補間等により作業可能範囲を求め、求めた作業可能範囲における限界線を示すように限界線表示画像121を設定してもよい。
【0038】
上述の実施形態において、画像処理部65は、ジャッキ張出量センサ85から入力された張出量検出信号(すなわち、アウトリガ11の張り出し量)に基づいて、範囲表示画像120の限界線表示画像121を設定しているが、これに限られるものではない。例えば、ジャッキ張出量センサ85の張出量検出信号に代えて、下部表示装置100に設けられた入力部(図示せず)に対する入力操作等により、アウトリガ11の張り出し量に関する情報が画像処理部65に入力されるようにしてもよい。
【0039】
上述の実施形態において、伸縮ブーム式の高所作業車を例示して説明したが、これに限られるものではなく、例えば、屈伸ブーム式の高所作業車等でもよく、少なくとも起伏動および旋回動自在なブームと作業台を備えた作業車であれば、本発明を適用可能である。
【0040】
上述の実施形態において、エンジンEの動力をパワーテイクオフ機構PTOによって取り出して油圧ポンプ72を駆動するPTO駆動型の高所作業車を例示して説明したが、これに限られるものではなく、電気駆動型(バッテリ駆動型)の高所作業車や、上記の両方
を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の高所作業車でもよい。
【0041】
上述の実施形態において、作業対象物として、電柱WKを例示したが、これに限られるものではなく、道路トンネル内の構造物でもよく、橋脚でもよい。
【符号の説明】
【0042】
1 高所作業車
2 車体
10 アウトリガジャッキ
11 アウトリガ(アウトリガビーム)
12 ジャッキ
26 左側工具収納部
27 右側工具収納部
30 ブーム
40 作業台
60 コントロールユニット
61 作動制御部
63 作業範囲設定部
65 画像処理部
85 ジャッキ張出量センサ
91 フロントカメラ
92 リアカメラ
93 左サイドカメラ
94 右サイドカメラ
100 下部表示装置
110 周囲表示画像
120 範囲表示画像
WK 電柱
GR ガードレール
図1
図2
図3
図4
図5
図6