【解決手段】画像処理部により生成される周囲表示画像110は、アウトリガが車体2の左右側方へ張り出すことが可能な張り出し可能範囲(張り出し範囲表示画像121)を示し、当該張り出し可能範囲は、障害物検出器により障害物(ガードレールGR)が検出された場合、アウトリガが車体2の左右側方へ張り出してもジャッキが障害物に接触しない範囲に設定される。また、周囲表示画像110は、張り出し可能範囲におけるアウトリガの最大張り出し量に応じて、車体2の周囲において作業台の移動が許容される作業可能範囲(作業範囲表示画像125)を示す。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。本実施形態に係る高所作業車1を
図1〜
図4に示しており、まず、これらの図を参照して高所作業車1の全体構成について説明する。高所作業車1は、
図1に示すように、車体2の前部に運転キャブ7を有し、車体2の前後左右に配設された車輪3により走行可能なトラック式車両をベースに構成されている。
【0016】
車体2の前後左右には、高所作業時に車体2を持ち上げ支持するアウトリガジャッキ10が設けられている。アウトリガジャッキ10は、
図2および
図4に示すように、車体2の左右方向(車幅方向)に伸縮可能なアウトリガ(アウトリガビーム)11と、アウトリガ11の先端部に設けられて上下方向に伸縮可能なジャッキ12と、ジャッキ12の下端部に取り付けられた接地板13とを有して構成される。アウトリガ11は、該アウトリガ11の内部に設けられたアウトリガシリンダ15(
図5を参照)により左右方向(車幅方向)に伸縮作動可能に構成されている。ジャッキ12は、該ジャッキ12の内部に設けられたジャッキシリンダ16(
図5を参照)により上下方向に伸縮作動可能に構成されている。アウトリガ11を車体2の左右側方に張り出すとともにジャッキ12を伸長させて接地板13を路面に接地させることにより、車体2が持ち上げ支持され、車両全体を安定させた状態にすることができる。
【0017】
なお、ジャッキ12は、
図4に示すように、車体2の左右側方の地面に置かれたジャッキベース200を介して接地した状態で、車体2を持ち上げ支持することも可能である。ジャッキベース200は、
図6に示すように、プレート部210と、フレーム部220とを有して構成される。プレート部210は、例えば木製板材を用いて、ジャッキ12の接地板13よりもひと回り大きい矩形板状に形成される。フレーム部220は、金属材料を用いて、プレート部210の外周部を保持する矩形枠状に形成される。フレーム部220の四隅の上面側に、ジャッキベース200を検出するための検出マーカー221が設けられている。検出マーカー221は、例えば、カメラ等により検出可能な二次元コードを用いて構成される。
【0018】
図1および
図2に示すように、車体2における運転キャブ7後方の架装領域には、ブーム旋回モータ24(
図5を参照)により駆動されて上下軸回りに水平旋回動自在に構成された旋回台20が設けられている。この旋回台20から上方に延びた支柱21には、ブーム30の基端部がフートピン22を介して上下方向に揺動自在(起伏自在)に取り付けられている。また、車体2の架装領域の左右には、作業工具や作業機材などを収納するための左側工具収納部26および右側工具収納部27が設けられている。左側工具収納部26は、車体2における架装領域の左側に配設された箱状の左下部工具箱26aと、左下部工具箱26aの上に配設された箱状の左上部工具箱26bとを有する。右側工具収納部27は、車体2における架装領域の右側に配設された箱状の右下部工具箱27aと、右下部工具箱27aの上に配設された箱状の右上部工具箱27bとを有する。
【0019】
ブーム30は、
図1に示すように、旋回台20側から順に、基端ブーム30a、中間ブーム30b、および先端ブーム30cが入れ子式に組み合わされた構成を有しており、その内部に設けられたブーム伸縮シリンダ31(
図5を参照)の伸縮駆動により、ブーム30を軸方向(長手方向)に伸縮動させることができる。また、基端ブーム30aと支柱21との間にはブーム起伏シリンダ23(
図5を参照)が跨設されており、このブーム起伏シリンダ23を伸縮駆動させることにより、ブーム30全体を上下面(垂直面)内で起伏動させることができる。
【0020】
先端ブーム30cの先端部には、垂直ポスト35(
図2を参照)が上下方向に揺動自在に枢支されている。この垂直ポスト35は、先端ブーム30cの先端部との間に跨設された上部レベリングシリンダ(図示せず)と、基端ブーム30aと支柱21との間に跨設された下部レベリングシリンダ25とにより、ブーム30の起伏の如何に拘らず常時垂直姿勢に保持されるように揺動制御(レベリング制御)される。垂直ポスト35には、作業者搭乗用の作業台40が取り付けられている。作業台40は、垂直ポスト35に設けられた作業台旋回モータ37(
図5を参照)を回転駆動させることにより、垂直ポスト35回りに首振り動(水平旋回動)することができる。
【0021】
図2に示すように、作業台40には、これに搭乗した作業者が操作する操作レバーや操作スイッチ、操作ダイヤル等を備えた上部操作装置45が設けられている。そのため、作業台40に搭乗した作業者は、上部操作装置45を操作することにより、旋回台20の旋回作動(ブーム旋回モータ24の回転作動)、ブーム30の起伏作動(ブーム起伏シリンダ23の伸縮作動)、ブーム30の伸縮作動(ブーム伸縮シリンダ31の伸縮作動)、作業台40の首振り作動(作業台旋回モータ37の回転作動)などの各作動操作を行うことができる。なお、
図4に示すように、車体2の後部には、下部操作装置50が設けられており、地上もしくは車体2上にいる作業者は、上記の作動操作(上部操作装置45と同様な作動操作)や、アウトリガジャッキ10の作動操作などを行うことができるようになっている。
【0022】
上部操作装置45もしくは下部操作装置50が操作されると、
図5に示すように、その操作内容に対応した操作信号が、車体2に設けられたコントロールユニット60に出力される。コントロールユニット60の作動制御部61は、その操作信号に基づいた指令信号を油圧駆動ユニット70に出力するようになっている。油圧駆動ユニット70は、
図5に示すように、作動油を貯留する作動油タンク71と、車体2に搭載されたエンジンEの動力を用いて駆動される油圧ポンプ72と、油圧ポンプ72から吐出される作動油を上記指令信号に基づいた供給方向および供給量で各油圧アクチュエータに供給制御する制御バルブユニット73とを有している。
【0023】
エンジンEの動力を変速して車輪3に伝達するトランスミッションには、パワーテイク
オフ機構PTOが組み込まれている。運転キャブ7内に配設されたPTO操作レバー75がオフ位置からオン位置に操作されると、パワーテイクオフ機構PTOによりエンジンEによる駆動先を車輪3から油圧ポンプ72に切り換えられ、エンジンEの動力により油圧ポンプ72が駆動されるようになっている。制御バルブユニット73は、ブーム旋回モータ24、ブーム起伏シリンダ23、ブーム伸縮シリンダ31、作業台旋回モータ37、アウトリガシリンダ15およびジャッキシリンダ16のそれぞれに対応した電磁比例制御バルブV1〜V6を有している。油圧駆動ユニット70は、コントロールユニット60の作動制御部61からの指令信号に応じて各油圧アクチュエータに供給する作動油の流れを制御して各油圧アクチュエータを作動させる。
【0024】
このように各油圧アクチュエータの作動はコントロールユニット60(作動制御部61)により制御される。そのため、高所作業車1には種々の検出装置が配設されており、それらの検出装置から出力される検出信号がコントロールユニット60に入力されるようになっている。例えば、コントロールユニット60には、ブーム旋回角センサ81からブーム30(旋回台20)の旋回角度に応じた旋回角度検出信号が入力され、ブーム起伏角センサ82からブーム30の起伏角度に応じた起伏角度検出信号が入力され、ブーム長センサ83からブーム30の伸長量に応じた伸長量検出信号が入力され、作業台旋回角センサ84から作業台40の旋回角度に応じた旋回角度検出信号が入力される。また例えば、コントロールユニット60には、ジャッキ張出量センサ85からアウトリガジャッキ10(アウトリガ11)の車体側方への張り出し量に応じた張出量検出信号が入力され、ジャッキ接地センサ86からアウトリガジャッキ10(接地板13)の接地検出信号が入力される。また例えば、コントロールユニット60には、車体傾斜角センサ87から車体2(路面)の前後および左右の傾斜角度に応じた傾斜角度検出信号が入力され、走行速度センサ88から高所作業車1の走行速度に応じた走行速度検出信号が入力される。
【0025】
なお、ジャッキ張出量センサ85は、アウトリガジャッキ10(アウトリガ11)の車幅方向の張り出し量(つまり、車体2に対する左右側方への張り出し量)を4段階で検出する。本実施形態では、上記4段階の張り出し量として、「最小張り出し量(MIN)」、
「中間1張り出し量(MID1)」、「中間2張り出し量(MID2)」、「最大張り出し量(MAX)」が設定されている。なお、最小張り出し量はアウトリガ11の格納状態に対応し
、最大張り出し量はアウトリガ11の最大張り出し状態に対応する。つまり、アウトリガ11の張り出し量は、最小張り出し量<中間1張り出し量<中間2張り出し量<最大張り出し量という順に1段階ずつ増加する。なお、ジャッキ張出量センサ85として、アウトリガ11の張り出し量を段階的に検出する構成に代えて、アウトリガ11の張り出し量を連続的に検出する構成を適用してもよい。
【0026】
本実施形態に係る高所作業車1では、車体2の前後左右にカメラが配設され、各カメラから出力される画像情報がコントロールユニット60に入力されるようになっている。
図1および
図3に示すように、車体2の前部には、フロントカメラ91が配設される。フロントカメラ91は、車体2の前部におけるフロントバンパー28の近傍に、車体2の前方を向いて取り付けられる。フロントカメラ91は、魚眼レンズや超広角レンズ等の画角の広いレンズを備えて構成され、車体2の周囲の前側部分の画像情報を取得し、取得した画像情報をコントロールユニット60へ出力する。
【0027】
図2および
図4に示すように、車体2の後部には、リアカメラ92が配設される。リアカメラ92は、車体2の後部における右側のテールランプ29の近傍に、車体2の後方を向いて取り付けられる。リアカメラ92は、フロントカメラ91と同様に構成され、車体2の周囲の後側部分の画像情報を取得し、取得した画像情報をコントロールユニット60へ出力する。なお、リアカメラ92は、テールランプ29の近傍に限らず、非使用時の下部操作装置50を覆う保護カバー(図示せず)に取り付けられてもよく、ブーム30の基
端部や旋回台20の後部に取り付けられてもよい。リアカメラ92がブーム30の基端部や旋回台20の後部に取り付けられる場合、リアカメラ92から延びるケーブルが、旋回台20に設けられたスリップリング(図示せず)に挿通されるようにしてもよい。またこの場合、リアカメラ92から出力される画像情報が、無線通信によりコントロールユニット60へ送信されるようにしてもよい。
【0028】
図2および
図4に示すように、車体2の左側部には、左サイドカメラ93が配設される。左サイドカメラ93は、車体2の左側部における左側工具収納部26(左上部工具箱26b)の上端部に、車体2の左方を向いて取り付けられる。左サイドカメラ93は、フロントカメラ91と同様に構成され、車体2の周囲の左側部分の画像情報を取得し、取得した画像情報をコントロールユニット60へ出力する。車体2の右側部には、右サイドカメラ94が配設される。右サイドカメラ94は、車体2の右側部における右側工具収納部27(右上部工具箱27b)の上端部に、車体2の右方を向いて取り付けられる。右サイドカメラ94は、フロントカメラ91と同様に構成され、車体2の周囲の右側部分の画像情報を取得し、取得した画像情報をコントロールユニット60へ出力する。
【0029】
また、
図1および
図2に示すように、ジャッキ12におけるジャッキポスト部には、マーカー検出カメラ97が配設される。マーカー検出カメラ97は、ジャッキ12におけるジャッキポスト部の側部に、ジャッキ12の下方を向いて取り付けられる。マーカー検出カメラ97は、ジャッキ12(接地板13)の直下の位置の近傍に設定された所定の画像取得領域SB(
図6を参照)での画像情報を取得する。マーカー検出カメラ97の所定の画像取得領域SBに、車体2の側方の地面に置かれたジャッキベース200が存在する場合、マーカー検出カメラ97は、取得した画像情報に基づいてジャッキベース200の検出マーカー221(
図6を参照)を検出し、マーカー検出信号をコントロールユニット60へ出力する。
【0030】
また、
図1および
図2に示すように、車体2におけるアウトリガジャッキ10の近傍には、障害物検出器96が配設される。障害物検出器96は、例えばLiDAR(Light Detection and Ranging)等を用いて構成され、障害物検出器96の検出可能範囲SAに障害物が存在する場合、車体2の側部から当該障害物までの距離を測定し、測定した障害物までの距離に応じた障害物検出信号をコントロールユニット60へ出力する。なお、上方から見た(平面視での)障害物検出器96の検出可能範囲SAを
図2の二点鎖線で示し、後方から見た(鉛直面視での)障害物検出器96の検出可能範囲SAを
図4の二点鎖線で示す。
【0031】
また、本実施形態に係る高所作業車1では、車体2における運転キャブ7内に、運転キャブ側表示装置100(
図5を参照)と、第1〜第3表示切換スイッチ101〜103(
図5を参照)とが配設されている。運転キャブ7内で高所作業車1の運転操作を行う作業者は、運転キャブ側表示装置100に表示される画像を視認することができるようになっている。運転キャブ側表示装置100は、例えば液晶ディスプレイ等を用いて構成され、コントロールユニット60の画像処理部65により生成された画像を表示することができる。第1〜第3表示切換スイッチ101〜103は、例えば押しボタンスイッチ等を用いて構成され、第1〜第3表示切換スイッチ101〜103に対して表示切換操作が行われると、第1〜第3表示切換スイッチ101〜103からコントロールユニット60へ表示切換操作信号が出力される。
【0032】
コントロールユニット60は、
図5に示すように、前述の作動制御部61と、作業範囲設定部63と、画像処理部65とを有している。作業範囲設定部63には、車体2を転倒させることなくブーム30の先端部(作業台40)を移動させることのできる領域として定められた作業可能範囲のデータが記憶されている。また、作業範囲設定部63には、ア
ウトリガジャッキ10(アウトリガ11)の4段階の張り出し量のそれぞれに対応する作業可能範囲のデータが記憶されている。作業範囲設定部63は、作業可能範囲のデータ群の中から、アウトリガ11が車体2の左右側方へ張り出し可能な最大の張り出し量に応じた作業可能範囲のデータを読み出す。以下では、アウトリガ11が車体2の左右側方へ張り出し可能な最大の張り出し量を「最大張り出し量」と称する。そして、作業範囲設定部63は、作業可能範囲のデータ群の中からアウトリガ11の最大張り出し量に応じて読み出された作業可能範囲のデータを、アウトリガ11が最大張り出し量だけ張り出す場合に許容できるブーム30の先端部の移動可能領域として設定する。
【0033】
なお、図示を省略するが、作業可能範囲(移動可能領域)の外縁は、ブーム30の長さが取り得る範囲とブーム30の起伏角度が取り得る範囲との関係により構造上設定される外縁(作動限界線)と、構造上はブーム30の先端部を移動させ得るが、転倒モーメントが過大となるのを未然に防止する観点からブーム30の先端部の移動を禁止せざる得ない限界線として設定される外縁(規制限界線)とからなる。以下では、作業可能範囲の外縁として、作動限界線と規制限界線とを区別せずに、「限界線」と称する。
【0034】
画像処理部65には、フロントカメラ91、リアカメラ92、左サイドカメラ93、および右サイドカメラ94からの画像情報と、ジャッキ張出量センサ85からの張出量検出信号と、障害物検出器96からの障害物検出信号が入力される。また、画像処理部65には、上方から見て(平面視において)簡略化した高所作業車1の画像情報と、前上方から見て(俯瞰的に見て)簡略化した高所作業車1の画像情報が予め記憶されている。画像処理部65は、フロントカメラ91から入力された車体2の周囲の前側部分の画像情報と、リアカメラ92から入力された車体2の周囲の後側部分の画像情報と、左サイドカメラ93から入力された車体2の周囲の左側部分の画像情報と、右サイドカメラ94から入力された車体2の周囲の右側部分の画像情報と、予め記憶された平面視において簡略化した高所作業車1の画像情報とを用いて、画像合成や歪み補正などの所定の画像処理を行うことにより、平面視での車体2(すなわち、高所作業車1)の周囲を示す周囲表示画像110(
図7を参照)を生成する。
【0035】
また、画像処理部65は、フロントカメラ91から入力された車体2の周囲の前側部分の画像情報と、リアカメラ92から入力された車体2の周囲の後側部分の画像情報と、左サイドカメラ93から入力された車体2の周囲の左側部分の画像情報と、右サイドカメラ94から入力された車体2の周囲の右側部分の画像情報と、予め記憶された俯瞰的に見て簡略化した高所作業車1の画像情報とを用いて、画像合成や歪み補正などの所定の画像処理を行うことにより、俯瞰的に見た車体2(すなわち、高所作業車1)の周囲を示す俯瞰画像140(
図7を参照)を生成する。画像処理部65は、生成した周囲表示画像110および俯瞰画像140の画像情報を運転キャブ側表示装置100へ出力する。運転キャブ側表示装置100は、画像処理部65から入力された画像情報に基づいて、周囲表示画像110と俯瞰画像140とを左右に並べて表示する。
【0036】
図7に、画像処理部65により生成される周囲表示画像110および俯瞰画像140の一例を示す。
図7の例では、作業対象物である電柱WKの近傍の場所に、高所作業車1が停車している場合を示す。なお、電柱WKは、障害物であるガードレールGRの近傍に立設されている。
図7に示す周囲表示画像110では、高所作業車1において旋回台20の旋回中心Cが表示される。この旋回中心Cの画像情報は、平面視において簡略化した高所作業車1の画像情報として予め画像処理部65に記憶される。
【0037】
また、運転キャブ側表示装置100の、周囲表示画像110には、
図7の二点鎖線で示すように、張り出し範囲表示画像121が重ねて表示される。張り出し範囲表示画像121は、アウトリガ11の先端部(ジャッキ12)が車体2の左右側方へ張り出すことが可
能な張り出し可能範囲を示す。車体2の側方に障害物が存在せず、障害物検出器96から障害物検出信号が出力されない場合、張り出し可能範囲は、アウトリガ11が車体2の左右側方へ設計的に張り出すことが可能な最大の範囲に設定される。車体2の側方に障害物(例えばガードレールGR)が存在し、障害物検出器96から障害物検出信号が出力される場合、張り出し可能範囲は、アウトリガ11が車体2の側方へ張り出してもジャッキ12が障害物に接触しない範囲に設定される。この場合、画像処理部65は、障害物検出器96から入力された障害物検出信号に基づいて、車体2の側部から障害物までの距離に応じた張り出し可能範囲を求め、求めた張り出し可能範囲を示すように張り出し範囲表示画像121を設定する。そして、画像処理部65は、画像合成などの所定の画像処理を行うことにより、張り出し範囲表示画像121が重ねて表示されるように周囲表示画像110を生成する。
【0038】
なお、
図7に示す例において、車体2の右側方に位置する張り出し範囲表示画像121は、車体2の右側方に障害物が存在しないため、張り出し可能範囲として、アウトリガ11が車体2の右側方へ設計的に張り出すことが可能な最大の範囲を示す。車体2の左側方に位置する張り出し範囲表示画像121は、車体2の左側方に障害物としてガードレールGRが存在するため、張り出し可能範囲として、アウトリガ11が車体2の左側方へ張り出してもジャッキ12がガードレールGRに接触しない範囲を示す。このとき、画像処理部65は、障害物検出器96から入力された障害物検出信号に基づいて、車体2の左側部からガードレールGRまでの距離に応じた張り出し可能範囲を求める。
【0039】
また、運転キャブ側表示装置100の、周囲表示画像110には、
図7の二点鎖線で示すように、作業範囲表示画像125が重ねて表示される。作業範囲表示画像125は、高所作業車1の周囲において前述の作業可能範囲を示す。作業範囲表示画像125は、環状に形成された限界線表示画像126を有する。限界線表示画像126は、前述の作業可能範囲における限界線を示す。画像処理部65は、先に求めた張り出し可能範囲に基づいて、作業範囲設定部63に記憶された作業可能範囲のデータ群の中から、当該張り出し可能範囲でのアウトリガ11の最大張り出し量に応じた作業可能範囲のデータを読み出し、読み出した作業可能範囲における限界線を示すように限界線表示画像126を設定する。そして、画像処理部65は、画像合成などの所定の画像処理を行うことにより、高所作業車1の周囲において限界線表示画像126(すなわち、作業範囲表示画像125)が重ねて表示されるように周囲表示画像110を生成する。
【0040】
なお、限界線表示画像126において示される限界線は、ブーム30の作業可能半径を全旋回位置(360度)に亘って示した包絡線であり、限界線表示画像126において示される限界線で囲まれる領域が前述の作業可能範囲を示す。また、限界線表示画像126において示される限界線は、ブーム30の先端部(作業台40)が所定の基準高さ(例えば、ブーム30の先端部を移動させ得る最大の高さ)の場合における平面視での限界線を示す。
【0041】
また、運転キャブ側表示装置100の、俯瞰画像140には、
図7の二点鎖線で示すように、張り出し範囲表示画像151が重ねて表示される。俯瞰画像140の張り出し範囲表示画像151は、周囲表示画像110の張り出し範囲表示画像121と同様に、前述の張り出し可能範囲を示す。画像処理部65は、周囲表示画像110の張り出し範囲表示画像121の場合と同様に、俯瞰画像140の張り出し範囲表示画像151を設定する。そして、画像処理部65は、画像合成などの所定の画像処理を行うことにより、張り出し範囲表示画像151が重ねて表示されるように俯瞰画像140を生成する。
【0042】
また、運転キャブ側表示装置100の、俯瞰画像140には、
図7の二点鎖線で示すように、作業範囲表示画像155が重ねて表示される。俯瞰画像140の作業範囲表示画像
155は、周囲表示画像110の作業範囲表示画像125と同様に、前述の作業可能範囲を示す。作業範囲表示画像155は、弧状に形成された限界線表示画像156を有する。限界線表示画像156は、前述の作業可能範囲における後側の限界線を示す。画像処理部65は、周囲表示画像110の限界線表示画像126の場合と同様に、俯瞰画像140の限界線表示画像156を設定する。そして、画像処理部65は、画像合成などの所定の画像処理を行うことにより、高所作業車1の周囲において限界線表示画像156(すなわち、作業範囲表示画像155)が重ねて表示されるように俯瞰画像140を生成する。
【0043】
図7に示す例では、運転キャブ側表示装置100の画面に、周囲表示画像110と俯瞰画像140とが左右に並んで表示される。第1表示切換スイッチ101に対して表示切換操作が行われると、第1表示切換スイッチ101からコントロールユニット60へ表示切換操作信号が出力され、周囲表示画像110の右方に表示される画像は、俯瞰画像140と、地図ナビゲーション画像130(
図8を参照)との間で切り換えられるようになっている。なお、地図ナビゲーション画像130は、
図8に示すように、カーナビゲーションシステムにおける地図情報を示す。
【0044】
第2表示切換スイッチ102に対して表示切換操作が行われると、第2表示切換スイッチ102からコントロールユニット60へ表示切換操作信号が出力され、周囲表示画像110の右方に表示される画像は、俯瞰画像140と、左サイド表示画像160(
図9を参照)と、右サイド表示画像(図示せず)との間で切り換えられるようになっている。なお、左サイド表示画像160は、
図9に示すように、左サイドカメラ93により取得された車体2の周囲の左側部分の画像である。右サイド表示画像は、右サイドカメラ94により取得された車体2の周囲の右側部分の画像である。
【0045】
第3表示切換スイッチ103に対して表示切換操作が行われると、第3表示切換スイッチ103からコントロールユニット60へ表示切換操作信号が出力され、周囲表示画像110は、張り出し範囲表示画像121および作業範囲表示画像125が重ねて表示される表示状態と、張り出し範囲表示画像121および作業範囲表示画像125が表示されない非表示状態との間で切り換えられるようになっている。また、第3表示切換スイッチ103に対して表示切換操作が行われると、俯瞰画像140は、張り出し範囲表示画像151および作業範囲表示画像155が重ねて表示される表示状態と、張り出し範囲表示画像151および作業範囲表示画像155が表示されない非表示状態との間で切り換えられるようになっている。
【0046】
周囲表示画像110において、例えば、
図7に示すように、車体2の左側方に障害物としてガードレールGRが存在する場合、張り出し範囲表示画像121を利用して、ジャッキ12がガードレールGRに接触しない張り出し可能範囲を容易に知ることができる。俯瞰画像140においても、張り出し範囲表示画像151を利用して、ジャッキ12がガードレールGRに接触しない張り出し可能範囲を容易に知ることができる。これにより、運転キャブ側表示装置100に表示される周囲表示画像110または俯瞰画像140を視認することで、アウトリガ11の張り出しを行う前に、ジャッキ12がガードレールGRに接触しない張り出し可能範囲を容易に知ることができる。そのため、ジャッキ12を接地させる際の作業効率を向上させることが可能になる。
【0047】
また、周囲表示画像110において、例えば、
図7に示すように、電柱WKが作業範囲表示画像125の限界線表示画像126より内側に位置する場合、当該電柱WKに対して作業台40がアプローチ可能であることを容易に判断することができる。一方、電柱WKが作業範囲表示画像125の限界線表示画像126より外側に位置する場合、当該電柱WKに対して作業台40がアプローチ可能ではないことを容易に判断することができる。俯瞰画像140においても、作業範囲表示画像155の限界線表示画像156を利用して、
電柱WKに対して作業台40がアプローチ可能であるか否かを容易に判断することができる。これにより、運転キャブ側表示装置100に表示される周囲表示画像110または俯瞰画像140を視認することで、車体2の周囲に位置する電柱WKに対して、作業台40がアプローチ可能であるか否かを容易に判断することが可能になる。
【0048】
本実施形態によれば、画像処理部65により生成される周囲表示画像110は、アウトリガ(アウトリガビーム)11が車体2の左右側方へ張り出すことが可能な張り出し可能範囲を示し、当該張り出し可能範囲は、障害物検出器96により障害物(ガードレールGR)が検出された場合、アウトリガ11が車体2の左右側方へ張り出してもジャッキ12が障害物に接触しない範囲に設定される。これにより、平面視での車体2の周囲を示す周囲表示画像110に、アウトリガ11が車体2の左右側方へ張り出すことが可能な張り出し可能範囲が示されるため、運転キャブ側表示装置100に表示される周囲表示画像110を視認することで、アウトリガ11の張り出しを行う前に、ジャッキ12が障害物に接触しない張り出し可能範囲を容易に知ることができる。そのため、ジャッキ12を接地させる際の作業効率を向上させることが可能になる。
【0049】
また、画像処理部65により生成される周囲表示画像110は、張り出し可能範囲におけるアウトリガ11の最大張り出し量に応じて、車体2の周囲において作業台40の移動が許容される作業可能範囲を示すことが好ましい。これにより、平面視での車体2の周囲を示す周囲表示画像110に、作業台40の移動が許容される作業可能範囲が示されるため、運転キャブ側表示装置100に表示される周囲表示画像110を視認することで、車体2の周囲に位置する作業対象物(電柱WK)に対して、作業台40がアプローチ可能であるか否かを容易に判断することが可能になる。
【0050】
また、各カメラは、車体2の前部に設けられたフロントカメラ91と、車体2の後部に設けられたリアカメラ92と、左側工具収納部26の上部に設けられた左サイドカメラ93と、右側工具収納部27の上部に設けられた右サイドカメラ94とを有することが好ましい。これにより、工具収納部は、例えば箱状の同じような形状に形成されることが多いため、左右の工具収納部26,27の上部に左右のサイドカメラ93,94を設けることで、車体上の装置レイアウトが設計的に変わっても、車体上における左右のサイドカメラの配置を容易に決定することが可能になる。
【0051】
なお、ジャッキ12は、前述したように、車体2の左右側方の地面に置かれたジャッキベース200を介して接地した状態で、車体2を持ち上げ支持することも可能である。本実施形態に係る高所作業車1では、ジャッキ12がジャッキベース200の上方に移動するまで自動的にアウトリガ11が車体2の左右側方へ張り出す。この場合、作業者は、車体2の左右側方の地面にジャッキベース200を置いた状態で、下部操作装置50に対してアウトリガ11の自動張出操作を行う。車体2の左右側方の地面にジャッキベース200が置かれると、周囲表示画像110にジャッキベース200が映るため、アウトリガ11の自動張出操作を行う前に、運転キャブ側表示装置100に表示される周囲表示画像110を視認することで、ジャッキベース200が地面の適切な箇所に置かれているか否かを容易に判断することができる。
【0052】
下部操作装置50に対してアウトリガ11の自動張出操作が行われると、作動制御部61は、当該自動張出操作に対応する操作信号に基づいた指令信号を、油圧駆動ユニット70に出力する。油圧駆動ユニット70は、作動制御部61からの指令信号に応じてアウトリガシリンダ15に供給する作動油の流れを制御し、アウトリガシリンダ15を作動させる。アウトリガシリンダ15は、油圧駆動ユニット70から作動油が供給されると、アウトリガ11を車体2の左右側方へ張り出させる。アウトリガ11が車体2の左右側方へ張り出すと、アウトリガ11の先端部に設けられたジャッキ12も車体2の左右側方へ移動
する。このとき、ジャッキ12(ジャッキポスト部)に設けられたマーカー検出カメラ97は、ジャッキ12(接地板13)の直下の位置の近傍に設定された所定の画像取得領域SBでの画像情報を取得する。ジャッキ12がジャッキベース200の上方近傍のジャッキベース検出位置に移動すると、マーカー検出カメラ97の所定の画像取得領域SBに、ジャッキベース200の全体が入り込むようになっている(
図6を参照)。ジャッキ12がジャッキベース検出位置に移動すると、マーカー検出カメラ97は、ジャッキベース検出位置で取得した画像情報に基づいて、ジャッキベース200に設けられた4つの検出マーカー221を検出し、マーカー検出信号をコントロールユニット60へ出力する。
【0053】
作動制御部61には、マーカー検出カメラ97からのマーカー検出信号が入力される。また、作動制御部61には、ジャッキ12が前述のジャッキベース検出位置からジャッキベース200の上方の(真上の)ジャッキベース直上位置まで移動するのに必要な、ジャッキ12の最終移動量、すなわち、アウトリガ11の最終張り出し量に関する情報が予め記憶されている。作動制御部61は、マーカー検出カメラ97からのマーカー検出信号が入力されると、アウトリガ11の最終張り出し量に基づいた指令信号を、油圧駆動ユニット70に出力する。油圧駆動ユニット70は、作動制御部61からの指令信号に応じてアウトリガシリンダ15に供給する作動油の流れを制御し、アウトリガ11が、現在の張り出し量(すなわち、ジャッキ12がジャッキベース検出位置に移動したときのアウトリガ11の張り出し量)から、さらに最終張り出し量だけ張り出すように、アウトリガシリンダ15を作動させる。これにより、ジャッキ12がジャッキベース検出位置からジャッキベース直上位置まで移動すると、アウトリガ11が停止する。
【0054】
このようにして、ジャッキ12がジャッキベース200の上方(ジャッキベース直上位置)に移動するまで自動的にアウトリガ11が車体2の左右側方へ張り出す。ジャッキ12がジャッキベース200の上方に移動した状態で、作業者は、下部操作装置50に対してジャッキ12の伸長操作を行うことで、ジャッキベース200を介して容易に、ジャッキ12を所望の地面の箇所に接地させることができる。なお、ジャッキ12は、アウトリガ11の自動的な張り出しによってジャッキベース200の上方に移動すると、自動的にジャッキベース200に向けて下方へ伸長作動するようにしてもよい。また、マーカー検出カメラ97により、ジャッキベース200の4つの検出マーカー221のうち3つ以下の検出マーカー221しか検出されない場合、ジャッキベース200の位置ずれにより、ジャッキ12がジャッキベース200の上方まで(真上まで)移動できないことになる。この場合、作動制御部61は、油圧駆動ユニット70への指令信号の出力を停止し、アウトリガ11の自動的な張り出しを中止する制御を行うようにしてもよい。
【0055】
本実施形態によれば、ジャッキ12は、ジャッキベース200に設けられたマーカーを検出してマーカー検出信号を出力するマーカー検出カメラ97を有し、作動制御部61は、マーカー検出カメラ97から入力されるマーカー検出信号に基づいて、ジャッキ12がジャッキベース200の上方に移動するまでアウトリガ11が車体2の左右側方へ張り出すように、アウトリガシリンダ15の作動を制御する。これにより、車体2の左右側方の地面にジャッキベース200を置くと、作動制御部61がアウトリガシリンダ15の作動を制御して、ジャッキ12がジャッキベース200の上方に移動するまで自動的にアウトリガ11が車体2の左右側方へ張り出すため、ジャッキベース200を介して容易に、ジャッキ12を所望の地面の箇所に接地させることができる。そのため、ジャッキ12を接地させる際の作業効率を向上させることが可能になる。
【0056】
上述の実施形態において、検出マーカー221は、二次元コードを用いて構成されているが、これに限られるものではなく、例えば、一次元コードや反射材等を用いて構成されてもよく、光学センサやカメラ等により検出可能な構成であればよい。また、検出マーカー221は、ジャッキベース200(フレーム部220)の四隅の上面側に設けられてい
るが、これに限られるものではなく、例えば、ジャッキベース200(プレート部210)の中央の上面側に1つだけ設けられてもよい。
【0057】
上述の実施形態において、障害物検出器96は、LiDARを用いて構成されているが、これに限られるものではなく、例えば、ステレオカメラ等を用いて構成されてもよく、車体2の側部から障害物までの距離を測定可能に構成されていればよい。
【0058】
上述の実施形態において、周囲表示画像110に、張り出し範囲表示画像121および作業範囲表示画像125が重ねて表示されるが、これに限られるものではなく、張り出し範囲表示画像121のみが重ねて表示されてもよい。また、俯瞰画像140に、張り出し範囲表示画像151および作業範囲表示画像155が重ねて表示されるが、これに限られるものではなく、作業範囲表示画像155のみが重ねて表示されてもよい。
【0059】
上述の実施形態において、周囲表示画像110の作業範囲表示画像125は、作業台の積載荷重が所定の積載荷重の場合の限界線を示す限界線表示画像126を有しているが、これに限られるものではなく、当該限界線表示画像126に加え、作業台40の積載荷重が所定の(第1の)積載荷重と異なる第2の積載荷重の場合の限界線を示す第2の限界線表示画像126´を有してもよい。同様に、俯瞰画像140の作業範囲表示画像155は、限界線表示画像156に加え、作業台40の積載荷重が所定の(第1の)積載荷重と異なる第2の積載荷重の場合の限界線を示す第2の限界線表示画像156´を有してもよい。
【0060】
上述の実施形態において、画像処理部65は、張り出し可能範囲に基づいて、作業範囲設定部63に記憶された作業可能範囲のデータ群の中から、当該張り出し可能範囲でのアウトリガ11の最大張り出し量に応じた作業可能範囲のデータを読み出し、読み出した作業可能範囲における限界線を示すように限界線表示画像126を設定しているが、これに限られるものではない。例えば、画像処理部65は、アウトリガ11の4段階の張り出し量に対応する作業可能範囲に基づいて、アウトリガ11の最大張り出し量から補間等により作業可能範囲を求め、求めた作業可能範囲における限界線を示すように限界線表示画像126(および、俯瞰画像140の限界線表示画像156)を設定してもよい。
【0061】
上述の実施形態において、画像処理部65は、張り出し可能範囲に基づいて、作業範囲表示画像125の限界線表示画像126(および、俯瞰画像140の限界線表示画像156)を設定しているが、これに限られるものではない。例えば、張り出し可能範囲に代えて、運転キャブ7内に設けられた入力部(図示せず)に対する入力操作等により、アウトリガ11の最大張り出し量に関する情報が画像処理部65に入力されるようにしてもよい。
【0062】
上述の実施形態において、作業装置として、伸縮自在なブーム30と作業台40を備えた伸縮ブーム式の高所作業車を例示して説明したが、これに限られるものではなく、例えば、屈伸ブーム式の高所作業車等でもよく、少なくとも起伏動および旋回動自在なブームと作業台を備えた作業車であれば、本発明を適用可能である。
【0063】
上述の実施形態において、エンジンEの動力をパワーテイクオフ機構PTOによって取り出して油圧ポンプ72を駆動するPTO駆動型の高所作業車を例示して説明したが、これに限られるものではなく、電気駆動型(バッテリ駆動型)の高所作業車や、上記の両方を具備して動力源を選択的に切り替えるハイブリッド型の高所作業車でもよい。
【0064】
上述の実施形態において、作業対象物として、電柱WKを例示したが、これに限られるものではなく、道路トンネル内の構造物でもよく、橋脚でもよい。