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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-80047(P2021-80047A)
(43)【公開日】2021年5月27日
(54)【発明の名称】振動搬送装置
(51)【国際特許分類】
   B65G 27/08 20060101AFI20210430BHJP
【FI】
   B65G27/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-207586(P2019-207586)
(22)【出願日】2019年11月18日
(71)【出願人】
【識別番号】000002059
【氏名又は名称】シンフォニアテクノロジー株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100130498
【弁理士】
【氏名又は名称】佐野 禎哉
(72)【発明者】
【氏名】田邉 喜文
(72)【発明者】
【氏名】川内 悠生
【テーマコード(参考)】
3F037
【Fターム(参考)】
3F037BA03
3F037CB03
3F037CC05
(57)【要約】
【課題】幅方向の設置面積増大化や制御の複雑化を回避しつつ、1つのリニア搬送面上においてワークを複数種類の振動条件で搬送可能な振動搬送装置を提供する。
【解決手段】振動によって搬送面上の搬送対象物を所定の搬送方向に搬送させる振動搬送装置Xであり、搬送面を有する第1質量体1と、搬送面を有しない第2質量体2と、第1質量体1及び第2質量体2を接続する第1弾性体4と、第2質量体2及び第3質量体3を接続する第2弾性体5と、第1弾性体4と第2弾性体5を相互に周波数が異なる振動条件で駆動させる加振手段6とを備えた構成にした。
【選択図】図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動によってリニア搬送面上の搬送対象物を搬送させる振動搬送装置であり、
前記リニア搬送面を有する第1質量体と、
前記搬送面を有しない第2質量体と、
前記第1質量体と前記第2質量体を接続する第1弾性体と、
前記第2質量体と他の質量体を接続する第2弾性体と、
前記第1弾性体と前記第2弾性体を相互に周波数が異なる振動条件で駆動させる加振手段とを備えていることを特徴とする振動搬送装置。
【請求項2】
前記加振手段は、前記第1弾性体及び前記第2弾性体の共振周波数を相互に異ならせて一方ずつ駆動させるものである請求項1に記載の振動搬送装置。
【請求項3】
前記第1弾性体及び前記第2弾性体の振動角を相互に異ならせている請求項1または2に記載の振動搬送装置。
【請求項4】
前記加振手段により生成される異なる振動条件に基づく振動は、前記搬送対象物を前記リニア搬送面の長手方向に沿った正方向へ搬送する振動と逆方向へ搬送する振動の二種類の振動を含むものである請求項1乃至3の何れかに記載の振動搬送装置。
【請求項5】
前記第1質量体を前記第2質量体の上方に配置している請求項1乃至4の何れかに記載の振動搬送装置。
【請求項6】
前記第1弾性体の下端部を前記第2質量体の下端部に接続し、前記第2弾性体の上端部を前記第2質量体の上端部に接続している請求項5に記載の振動搬送装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、搬送対象物を所定方向に搬送可能な振動搬送装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来より、直線状をなす搬送路(リニア搬送路、トラフ)に沿ってワーク等の搬送対象物を搬送させる振動搬送装置が知られている。リニア搬送路上におけるワークの搬送方向は一方向であるため、例えば、ワークを搬送しながら姿勢を揃えて次工程へ搬送することが要求される場合には、リニア搬送路に並走するようにリターン搬送路を配置し、リニア搬送路の排出口に到達するまでに所望の姿勢でないと判定されたワークをリニア搬送路上からリターン搬送路上に移送し、リターン搬送路上においてリニア搬送路上のワークとは逆方向に搬送してリニア搬送路の上流側に戻す構成が採用されていた。
【0003】
このように、リニア搬送路を有する振動搬送装置では、リターン搬送路をリニア搬送路に並べて設けることでワークを送り方向(前進方向)と戻り方向(後退方向)の両方に搬送するという要求に対応することができる。さらに、リニア搬送路とリターン搬送路とを個別に振動制御するために、加振手段がそれぞれに必要となるため、このようなタイプの振動搬送装置には2つの加振手段を設けることが必須となる。
【0004】
しかしながら、リニア搬送路とリターン搬送路を幅方向に並べて配置する振動搬送装置であれば、リターン搬送路を備えずにリニア搬送路のみを備えた振動搬送装置と比較して、幅方向の設置面積が増大する。
【0005】
本出願人は、1つのリニア搬送路上でワークを前進方向へ搬送したり、後退方向へ搬送可能な振動搬送装置として、ドライブ回路が水平と垂直の2軸分を有し、振幅と位相制御を組み合わせて、楕円(直線)振幅の制御を行うデュアルモーションパーツフィーダを案出し、既に実用化を実現している(例えば特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第4977934号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、デュアルモーションパーツフィーダは、水平・垂直振幅をそれぞれ個別に制御することで適切な位相差を与えた水平・垂直2方向の振動を付与することができる構成であるため、ドライバ側の回路規模や負担が大きくなり、制御が困難であるという側面がある。以下に、詳細を述べる。デュアルモーションパーツフィーダは上記のように、水平・垂直2方向の振動を付与し、これらの適切な位相差を与えることで楕円振幅の制御を行う構成のため、水平・垂直方向それぞれ個別に信号を与える必要がある。反面、共振現象を利用して駆動制御するため、水平・垂直2方向の周波数は同一である必要がある。このような構成を採用するデュアルモーションパーツフィーダであれば、同一周波数で複数の振動条件を生成できるものの、複数の信号を水平・垂直2方向それぞれに与える必要があり、しかも互いの位相差を制御しなくてはならないため、制御負担が大きくなり、制御の複雑性を招来する。
【0008】
本発明は、このような問題に着目してなされたものであって、主たる目的は、幅方向の設置面積増大化や制御の複雑化を回避しつつ、1つのリニア搬送面上においてワークを異なる周波数における複数種類の振動条件で搬送可能な振動搬送装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
すなわち本発明は、振動によってリニア搬送面上の搬送対象物を搬送可能な振動搬送装置であって、リニア搬送面を有する第1質量体と、(第1質量体の下方に配置され且つ)リニア搬送面を有しない第2質量体と、第1質量体及び第2質量体を相互に接続する第1弾性体と、第2質量体及び他の質量体を相互に接続する第2弾性体と、第1弾性体と第2弾性体を相互に周波数が異なる振動条件で駆動させる加振手段とを備えていることを特徴としている。ここで、搬送対象物としては、例えば微小サイズの電子部品(ワーク)や医療用部品等を挙げることができるが、本発明の振動搬送装置によって搬送可能なものであれば特に限定されない。
【0010】
本発明者は、このような本発明に係る振動搬送装置であれば、第1質量体と第2質量体を接続する第1弾性体を加振手段によって駆動させて振動させると、第2質量体がウェイトとして機能し、第2弾性体が防振体として機能することで、第1質量体が振動し、リニア搬送面上の搬送対象物を所定の振動条件で搬送することができる。さらに、第2弾性体を加振手段によって第1弾性体とは異なる振動条件で駆動させて振動させると、他の質量体がウェイトとして機能し、第1質量体、第2質量体及び第1弾性体を一体的に振動させて、リニア搬送面上の搬送対象物を、第1弾性体の振動時とは異なる振動条件で搬送することができることを見出した。
【0011】
このような本発明に係る振動搬送装置では、リニア搬送面を有するパーツが第1質量体のみでありながら、当該第1質量体に直接または間接的に接続された第1弾性体及び第2弾性体を相互に異なる振動条件で加振手段によって駆動させることで、振動条件に応じて単独のリニア搬送面を振動させて搬送対象物をリニア搬送面上で異なる振動条件で搬送することができる。ここで、異なる振動条件とは、周波数が異なる振動条件を複数生成することを示すものであり、この条件下において、ワークの搬送方向、リニア搬送面の振幅や搬送速度等が挙げられる。例えば、搬送方向についていえば、単独のリニア搬送面の長手方向に沿った正方向(前進方向)または逆方向(後退方向)に搬送対象物を搬送することができ、各方向への搬送速度や振幅も異ならせることができる。したがって、従来の振動搬送装置であればリニア搬送路とリターン搬送路を幅方向に並べて設置することで搬送対象物を送り方向(前進方向)と戻り方向(後退方向)の両方に搬送する構成を実現していたが、本発明に係る振動搬送装置でよれば、リニア搬送面を有する第1質量体を単一のトラフとして機能させて、振動条件の異なる駆動を実現できるため、専用のリターン搬送路を設けなくても送り方向と戻り方向の両方に搬送することが可能となり、装置の幅寸法をコンパクトにすることができ、従来のものよりも設置面積が低減し、小型化を図ることができる。
【0012】
本発明に係る振動搬送装置において、第1弾性体と第2弾性体を相互に異なる振動条件で駆動させる加振手段の好適な一例としては、第1弾性体及び第2弾性体の共振周波数を相互に異ならせて一方ずつ駆動させる構成を挙げることができる。このような構成であれば、第1弾性体の共振周波数で第1弾性体を振動させた場合に、第2弾性体は共振周波数が異なるため振動せず、第1弾性体の振動によって搬送する搬送対象物の搬送処理に悪影響を及ぼすことがない。同様に、第2弾性体の共振周波数で第2弾性体を振動させた場合に、第1弾性体は共振周波数が異なるため振動せず、第2弾性体の振動によって搬送する搬送対象物の搬送処理に悪影響を及ぼすことがない。加えて、本実施形態に係る振動搬送装置は、第1弾性体、第2弾性体を一方ずつ駆動させる構成であるため、デュアルモーション制御と比較して制御の負荷を格段に低減することができる。
【0013】
特に、本発明に係る振動搬送装置では、第1弾性体及び前記第2弾性体の振動角を相互に異ならせているため、前進搬送と後退搬送(送り・戻し)の切替や搬送速度の設定・変更を適切に行うことができる。
【0014】
すなわち、本発明では、図1に模式的に示すように、第1質量体を第2質量体の上方に配置し、第1弾性体を第1質量体及び第2質量体を介して高さ方向に並ぶレイアウトを採用することで、幅方向の空間と比較して装置の設置条件として制約の少ない高さ方向の空間を有効利用したコンパクトな振動搬送装置を実現できる。図1には、第1弾性体が加振手段によって駆動した場合における第1弾性体の振動方向V1と、第2弾性体が加振手段によって駆動した場合における第2質量体の振動方向V2を模式的に示し、振動方向V1の場合に第1質量体が有するリニア搬送面上の搬送対象物を前進方向に搬送し、振動方向V2の場合にリニア搬送面上の搬送対象物を後退方向に搬送する態様を例示している。
【0015】
本発明において、振動搬送装置全体の高さ方向のサイズを抑えるには、第1弾性体の下端部を第2質量体の下端部に接続し、第2弾性体の上端部を第2質量体の上端部に接続した構成にすることが望ましい。この場合、第1弾性体と第2弾性体が長手方向に並ぶ形態になり、図1に示す構成と比較して装置全体の高さを低くすることができる。
【0016】
なお、本発明に係る振動搬送装置には、第1質量体と第1弾性体の組、第2質量体と第2弾性体の組に加えてさらに別の質量体(第1オプション質量体)と弾性体(第1オプション弾性体)の組を備え、を3以上有する構成も含まれる。この場合、各組の弾性体を相互に異なる振動条件で加振手段によって駆動させることで、それぞれの振動条件に応じて単独のリニア搬送面を振動させて搬送対象物をリニア搬送面上で異なる振動条件で搬送することができる。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、簡単な構成でありながら幅方向(搬送方向に直交する方向)における省スペース化を図ることが可能であり、単独のリニア搬送面を相互に周波数が異なる複数の振動条件で振動させてリニア搬送面上の搬送対象物を例えばワーク搬送面の長手方向に沿って順方向(前進方向)、逆方向(後退方向)に切り換えて搬送したり、振動搬送の振幅や搬送速度の変更が可能な、搬送自由度の高い振動搬送装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明に係る振動搬送装置のモデル例を示す図。
図2】本発明の一実施形態に係る振動搬送装置の全体斜視図。
図3】同実施形態に係る振動搬送装置の分解斜視図。
図4】同実施形態に係る振動搬送装置の断面図。
図5】同実施形態に係る振動搬送装置の全体構成を図1に対応して示す図。
図6】同実施形態に係る振動搬送装置における第1弾性体駆動時の動作説明図。
図7】同実施形態に係る振動搬送装置における第1弾性体駆動時の動作説明図。
図8】同実施形態に係る振動搬送装置における第2弾性体駆動時の動作説明図。
図9】同実施形態に係る振動搬送装置における第2弾性体駆動時の動作説明図。
図10】同実施形態に係る振動搬送装置の一変形例を図1に対応して示す図。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明の一実施形態を、図面を参照して説明する。
【0020】
本実施形態に係る振動搬送装置Xは、図2乃至図4図2は振動搬送装置Xの全体斜視図であり、図3は振動搬送装置Xの分解斜視図であり、図4は振動搬送装置Xの断面図である)に示すように、直線状の搬送面であるリニア搬送面Lを上向き面に有する第1質量体1と、第1質量体1の下方に配置される第2質量体2と、下向き面が第2質量体2よりも下方となる位置に配置される第3質量体3(本発明の「他の質量体」に相当)と、第1質量体1と第2質量体2を接続する第1弾性体4と、第2質量体2と第3質量体3を接続する第2弾性体5と、第1弾性体4及び第2弾性体5を相互に周波数が異なる振動条件で駆動させる条件を生成する加振手段6(振動条件により、第1質量体1、第2質量体2が異なる駆動をするように加振させる加振手段6)と、を備えている。
【0021】
第1質量体1は、上向き面にリニア搬送面Lを有する長尺の第1質量体メインブロック11と、第1質量体メインブロック11に一体的に固定され且つ長手方向両端に第1弾性体4を取り付ける第1取付部12を有する第1質量体サブブロック13とを備えているものである。図2乃至図4に示すように、第1質量体メインブロック11には下方に開口する第1開口部14を形成し、この第1開口部14に、第1質量体サブブロック13に設けた上方突出部15を収容した状態で、ビス等の固定具によって第1質量体メインブロック11及び第1質量体サブブロック13を相互に固定している。なお、第1開口部14はリニア搬送面Lに到達していない(上方には開口していない)形状である。このような主として2パーツからなる第1質量体1において、第1質量体メインブロック11はリニア搬送路(リニアトラック、トラフ)として機能し、第1質量体サブブロック13はシュート台として機能する。リニア搬送面Lには、図示しないホッパ等のワーク供給装置から搬送対象物であるワークが供給される。
【0022】
以下の説明では、リニア搬送面Lの延伸方向(長手方向)と同一方向を前後方向Hとし、リニア搬送面Lの延伸方向(長手方向)に対して水平面内で直交する方向を幅方向W(横断方向)とする(図2等参照)。
【0023】
第2質量体2は、長手方向両端に第1弾性体4を取り付ける第2取付部21を有する第2質量体メインブロック22と、第2質量体メインブロック22に一体的に固定され且つ長手方向両端に第2弾性体5を取り付ける第3取付部23を有する第2質量体サブブロック24とを備えたものである。第2質量体メインブロック22には上下方向及び何れか一方の幅方向W(図2乃至図4における紙面手前側)に開口する第2開口部25を形成し、この第2開口部25に、第2質量体サブブロック24全体を収容した状態で、ビス等の固定具によって第2質量体メインブロック22及び第2質量体サブブロック24を相互に固定している。本実施形態の第2質量体2は、第2質量体メインブロック22の第2開口部25に第2質量体サブブロック24を収容した状態で第2質量体メインブロック22との間に第2質量体サブブロック24を挟み込むカバー体26を備え、カバー体26も第2質量体メインブロック22及び第2質量体サブブロック24とともに一体的に固定している。第2質量体メインブロック22の第2開口部25に収容した状態にある第2質量体サブブロック24は、前後方向H及び幅方向Wにおいて第2質量体メインブロック22及びカバー体26に干渉しない(図4参照)。このような主として3パーツ(第2質量体メインブロック22、第2質量体サブブロック24及びカバー体26)を組み付けた第2質量体2において、第2質量体サブブロック24は、第2弾性体固定ブロックとして機能する。
【0024】
第3質量体3は、第2質量体2よりも前後方向Hの寸法を大きく設定した第3質量体メインブロック31と、第3質量体メインブロック31に一体的に固定され且つ長手方向両端に第2弾性体5を取り付ける第4取付部32を有する第3質量体サブブロック33とを備えているものである。第3質量体メインブロック31には上方に開口する第3開口部34を形成し、この第3開口部34に、第3質量体サブブロック33全体を収容した状態で、ビス等の固定具によって第3質量体メインブロック31及び第3質量体サブブロック33を相互に固定している。なお、第3開口部34は有底の開口部であり、第3開口部34に収容した状態にある第3質量体サブブロック33は、前後方向H及び幅方向Wにおいて第3質量体メインブロック31に干渉しない(図4参照)。第3質量体サブブロック33は、第2質量体サブブロック24と同様に、第2弾性体固定ブロックとして機能する。なお、第2質量体サブブロック24は第2弾性体5の振動に伴って可動するものであり、第3質量体サブブロック33は第2弾性体5の振動の有無に関係なく移動しないもの(固定されたもの)である。
【0025】
本実施形態の振動搬送装置Xは、第3質量体3を当該振動搬送装置Xの導入先現場において適宜の装置に直置きした状態(接続状態)で使用することが可能である。図2等には、導入先の接続対象装置と同等に見做すことができる台板7に、防振バネ8を介して第3質量体3を接続した態様を示している。具体的には、第3質量体メインブロック31の長手方向両端に防振バネ8を取り付ける防振バネ取付部35を設け、この防振バネ取付部35に上端部を固定した防振バネ8の下端部を、台板7の長手方向両端に設けた防振バネ取付部71に固定している。
【0026】
第1弾性体4は、第1質量体サブブロック13に設けた第1取付部12によって上端部が第1質量体1に固定され、第2質量体メインブロック22に設けた第2取付部21によって下端部が第2質量体2に固定された板バネである。
【0027】
第2弾性体5は、第2質量体サブブロック24に設けた第3取付部23によって上端部が第2質量体2に固定され、第3質量体サブブロック33に設けた第4取付部32によって下端が第3質量体3に固定された板バネである。
【0028】
ここで、本実施形態に係る振動搬送装置Xの全体構成は、図5に示すモデル例として捉えることができる。同図における振動搬送装置X全体を1つの建物と見做した場合、第3質量体3を基礎として捉えると、第2質量体2は1階部分に相当し、第1質量体1は2階部分に相当する。2階部分に相当する第1質量体1は、第1弾性体4が駆動した場合と、第2弾性体5が駆動した場合で異なる挙動(振動)を起こす。
【0029】
本実施形態の振動搬送装置Xでは、図4に示すように、第1弾性体4の下端部を第2質量体2の下端部に接続し、第2弾性体5の上端部を第2質量体2の上端部に接続した構成を採用している。このような構成を実現すべく、本実施形態では、前後方向Hにおいて対をなす第1弾性体4の間に1対の第2弾性体5を配置している。これにより、図5に示すように第1弾性体4と第2弾性体5を高さ方向に並ぶように配置する構成と比較して、高さ寸法を抑えることができる。
【0030】
本実施形態の振動搬送装置Xにおいて、第1弾性体4の傾斜姿勢(向き、角度)と第2弾性体5の傾斜姿勢は異なる。すなわち、本実施形態の振動搬送装置Xは、第1弾性体4の振動角と、第2弾性体5の振動角を相互に異ならせている。特に、本実施形態では、第1弾性体4の傾斜方向(第1弾性体4の上端が向く方向)とは逆方向に第2弾性体5の傾斜方向を設定している。このように本実施形態に係る振動搬送装置Xでは、第1弾性体4の振動角と第2弾性体5の振動角を相互に異ならせて、第1弾性体4を振動させた場合におけるリニア搬送面L上の搬送物の搬送方向と、第2弾性体5を振動させた場合におけるリニア搬送面L上のワークの搬送方向が逆方向(前進方向と後退方向)になるように設定している。
【0031】
そして、本実施形態に係る振動搬送装置Xは、第1弾性体4と第2弾性体5のそれぞれの共振周波数を互いに異ならせ、加振手段6によって第1弾性体4を振動させる加振状態と、第2弾性体5を振動させる加振状態とに切換可能に構成している。本実施形態では、第1弾性体4の共振周波数を500Hzに設定し、第2弾性体5の共振周波数を200Hzに設定している。加振手段6は図示していないが、コイルや圧電素子等、適宜のパーツを用いて構成することができ、加振状態の切換等を制御するコントローラも加振手段6に含まれる。このように、本実施形態の加振手段6は、振動条件により第1弾性体4、第2弾性体5が異なる駆動をするように第1弾性体4、第2弾性体5を加振させるものである。
【0032】
加振手段6によって第1弾性体4が共振周波数で振動すると、第1質量体1に設定したリニア搬送面Lは、図6及び図7の矢印A,Bで示すように、紙面左下から紙面右上に向かう振動を繰り返し、ワークを紙面右方向に搬送することができる。この場合の搬送方向を前進方向とする。したがって、第1弾性体4は、前進用弾性体ともいえる。第1弾性体4が500Hzでワークを前進させる動作をする際、第2弾性体5は共振周波数が第1弾性体4と異なるため第1弾性体4ほど弾性変形することなく、ワークの前進搬送に影響はしない。また、第2質量体2及び第3質量体3はこのような第2弾性体5に接続されているため、1つの剛体のように振動する。第1弾性体4が共振周波数で振動している際に、第2質量体2はウェイトとして機能し、第2弾性体5は防振体(補助的な防振バネ)として作用し、第1質量体1がリニア搬送面L上のワークを前進方向へ搬送するように振動する。
【0033】
一方、加振手段6によって第2弾性体5が共振周波数で振動すると、第1質量体1に設定したリニア搬送面Lは、図8及び図9の矢印C,Dで示すように、紙面右下から紙面左上に向かう振動を繰り返し、ワークを紙面左方向、すなわち後退方向に搬送することができる。第2弾性体5が200Hzでワークを後退させる動作をする際、第1弾性体4は共振周波数が第2弾性体5と異なるため本来の役割(ワークを前方へ搬送させる弾性変形)を果たさないため、ワークの後退搬送に影響はしない。また、第1質量体1及び第2質量体2はこのような第1弾性体4に接続されているため、1つの剛体として振動する。第2弾性体5が共振周波数で振動している際に、第3質量体3はウェイトとして機能し、第1質量体1、第2質量体2及び第1弾性体4が一体的にリニア搬送面L上のワークを前進方向へ搬送するように振動する。図5には、第1弾性体4の駆動時の振動方向を矢印V1で示し、第1弾性体4の駆動時の振動方向を矢印V2で示している。
【0034】
リニア搬送面Lを有する第1質量体1の振幅を最も大きくするには、下方の質量体を重くすることが望ましく、上方から第1質量体1、第2質量体2、第3質量体3の順に段状に並ぶ本実施形態の振動搬送装置Xでは、第1質量体1、第2質量体2、第3質量体3の質量の関係が、[第1質量体の質量≦第2質量体の質量]であって、且つ[(第1質量体の質量+第2質量体の質量)≦第3質量体]となるように設定している。第1質量体1の振幅を大きくするほどリニア搬送面L上のワークの搬送速度が増すことになる。本実施形態では、第3質量体3がウェイトとしての機能を担うことで、上述の重量比を確保できるように構成している。
【0035】
このように、本実施形態に係る振動搬送装置Xによれば、異なる振動条件、つまりワークを前進搬送する振動と後退搬送する振動を1つのトラフを用いて実現することができ、従来であればワークの前進搬送と後退搬送をそれぞれ個別のトラフ(幅方向Wに並べて配置した2本のトラフ)で実現していた態様と比較して、装置全体のコンパクト化、特に幅方向Wにおけるコンパクト化を図ることができるとともに、1質量系とみなすことができる比較的シンプルな構造でありながら、前進搬送用の駆動と、後退搬送用の駆動が互いに干渉しない構造を実現できる。また、本実施形態に係る振動搬送装置Xは、1つのドライブ回路で前進搬送と後退搬送とを切り換えて振動を制御する構成が可能であるため、デュアルモーション制御と比較してドライバ側の回路規模及び負荷を抑えることができる。
【0036】
さらに、本実施形態に係る振動搬送装置Xによれば、第1弾性体4と第2弾性体5の共振周波数を相互に異ならせて、一方ずつ振動させて駆動する構成であり、このことも制御面での煩雑化を回避する上で有用な構成である。
【0037】
加えて、本実施形態に係る振動搬送装置Xによれば、第1弾性体4の振動角と第2弾性体5の振動角を異ならせているため、前進搬送と後退搬送(送り・戻し)の切替やトラフ上のワークの搬送速度設定・変更を適切に行うことができる。
【0038】
特に、本実施形態に係る振動搬送装置Xによれば、第1弾性体4、第2弾性体5の共振周波数や振動角を調整することで、トラフとしての役割を担う第1質量体1のリニア搬送面L上で滑らかに振動させたり、粗く振動させることを選択でき、前者であればワークをスムーズに整列させながら搬送することが可能であり、後者であればワークをトラフ上でばらしながら搬送することができる。また、本実施形態に係る振動搬送装置Xによれば、トラフ上のワークを前進方向または後退方向に搬送している途中でワークが詰まった場合には逆方向に戻す(後退方向または前進方向に搬送する)ことでワーク詰まりを解消することができる。
【0039】
本実施形態に係る振動搬送装置Xでは、第1質量体1を第2質量体2の上方に配置しているため、装置X全体の幅方向Wのサイズが増大することを回避し、装置Xの導入現場において幅方向Wと比較してサイズの制約が少ない高さ方向の空間を利用して振動搬送装置Xを設置することができる。
【0040】
さらに、本実施形態に係る振動搬送装置Xは、第1弾性体4の下端部を第2質量体2の下端部に接続し、第2弾性体5の上端部を第2質量体2の上端部に接続した構成を採用しているため、高さ方向にもコンパクトな装置Xである。
【0041】
なお、本発明は上述した実施形態に限定されるものではない。例えば、上述の実施形態では、図5に示すように2階建て構造の振動搬送装置Xを例示したが、3階建て構造、4階建て構造等、3階以上の構造とする振動搬送装置にすることもできる。階数は、共振周波数の異なる弾性体の数で決定される。例えば、図10に示す3階建て構造の振動搬送装置Xであれば、第1質量体1と第2質量体2を接続する第1弾性体4の駆動時の振動V1によってリニア搬送面上のワークを前進方向へ搬送し、第2質量体2と第3質量体3を接続する第2弾性体5の駆動時の振動V2によってリニア搬送面上のワークを後退方向へ搬送し、第3質量体3と第4質量体3’を接続する第3弾性体5’の駆動時の振動V3によってリニア搬送面上のワークを後退方向へ搬送し、第3弾性体5’の駆動時の振動V3が第2弾性体5の駆動時の振動V2よりも大きくなるように設定することができる。図10に示す3階建て構造(3段構造)の場合であれば、最上階(最上段)の弾性体4が前進搬送用弾性体としての役割を担い、上から2段目の弾性体5が後退(弱)搬送用弾性体、上から3段目の弾性体5’が後退(強)搬送用弾性体としての役割を担うことになる。
【0042】
上述の実施形態では、第1弾性体(前進用弾性体)、第2弾性体(後退用弾性体)の共振周波数を500Hz、200Hzとしたが、弾性体の前進と後退の役割を逆にしてもよい。また、各弾性体の共振周波数(駆動周波数)も各弾性体が一斉に振動する(共振する)事態が生じない範囲において任意の値に設定しても構わない。
【0043】
上述の実施形態では、防振バネ8を利用して前進、後退の振動を設置面(大地)に伝わらないようにしていたが、防振バネ8を取り除いて直接設置面(大地)等に設置することもできる(例えば図1参照)。この場合、下部を最も重くするためのウェイトを備える必要もなくなり、部品点数の削減や装置全体の軽量化を図ることができる。
【0044】
上述の実施形態は前進と後退を同時に振動させない態様であったが、ドライブ回路を複数設けて同時に振動させた態様を採用することもできる。例えば、前進用弾性体と後退用弾性体を同時に振動させ、後退方向への搬送振動を通常の後退搬送振動よりも増強させる効果(複合的効果)が得られる場合、例えば図10に示す3階建て構造を採用して後退方向への搬送振動を2段階(強・弱)に制御可能にする構成と比べて、2階建て構造でありながら後退方向への搬送振動を2段階に変更することができ、装置の小型化及び部品点数の削減の効果が得られる。
【0045】
本発明の振動搬送装置で搬送可能な搬送対象物は医療用部品や電子部品等に限定されない。
【0046】
その他、回動機構等、各部の具体的構成についても上記実施形態に限られるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
【符号の説明】
【0047】
1…第1質量体
2…第2質量体
4…第1弾性体
5…第2弾性体
6…加振手段
L…リニア搬送面
X…振動搬送装置
図1
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