(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-801(P2021-801A)
(43)【公開日】2021年1月7日
(54)【発明の名称】木質建材製造装置
(51)【国際特許分類】
B27D 1/04 20060101AFI20201204BHJP
B27D 3/00 20060101ALI20201204BHJP
B27M 1/08 20060101ALI20201204BHJP
【FI】
B27D1/04 B
B27D3/00 B
B27M1/08 B
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-116474(P2019-116474)
(22)【出願日】2019年6月24日
(11)【特許番号】特許第6675661号(P6675661)
(45)【特許公報発行日】2020年4月1日
(71)【出願人】
【識別番号】507403160
【氏名又は名称】株式会社中東
(71)【出願人】
【識別番号】596170228
【氏名又は名称】株式会社 タガミ・イーエクス
(74)【代理人】
【識別番号】100148792
【弁理士】
【氏名又は名称】三田 大智
(72)【発明者】
【氏名】小坂 勇治
【テーマコード(参考)】
2B200
2B250
【Fターム(参考)】
2B200AA05
2B200BA04
2B200BA09
2B200EA06
2B200EF14
2B200EF16
2B200EF17
2B200EF23
2B200EF41
2B250AA01
2B250CA11
2B250DA04
2B250EA02
2B250EA13
2B250FA21
2B250FA23
2B250FA31
2B250FA37
2B250HA03
(57)【要約】
【課題】 単位木材の水平方向の重ね厚の異なる複数の木質建材を同時に製造することができると共に、特殊形状の木質建材をも適切に製造することができる木質建材製造装置の提供。
【解決手段】 本発明の木質建材製造装置1は、水平方向に重ねた複数の単位木材wを加圧しつつ接着して木質建材を製造する木質建材製造装置であって、上記重ねた複数の単位木材を支持する床部2aと該床部から対向して立設された第一・第二側壁部2b・2cと該第一・第二側壁部の上部同士を繋ぐ蓋部2dとで画成した直方体状の加圧室2と、該加圧室の上記第一側壁部に水平方向に進退動可能に設けられ、上記第二側壁部に向けて進動することにより当該第二側壁部と協働して上記重ねた複数の単位木材を加圧する加圧盤部3を有し、該加圧盤部を上記加圧室の上下方向に複数段設けると共に、該各段の加圧盤部を別々に進退動可能とする構成を有する。
【選択図】
図5
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平方向に並列して重ねた複数の単位木材を加圧しつつ接着して木質建材を製造する木質建材製造装置であって、上記重ねた複数の単位木材を支持する床部と該床部から対向して立設された第一・第二側壁部と該第一・第二側壁部の上部同士を繋ぐ蓋部とで画成した直方体状の加圧室と、該加圧室の上記第一側壁部に水平方向に進退動可能に設けられ、上記第二側壁部に向けて進動することにより当該第二側壁部と協働して上記重ねた複数の単位木材を加圧する加圧盤部を有し、該加圧盤部を上記加圧室の上下方向に複数段設けると共に、該各段の加圧盤部を別々に進退動可能としたことを特徴とする木質建材製造装置。
【請求項2】
上記各段の加圧盤部を上記加圧室の長手方向に沿って複数設け、それぞれの加圧盤部を別々に進退動可能としたことを特徴とする請求項1記載の木質建材製造装置。
【請求項3】
上記蓋部を開閉可能に設けると共に該蓋部に上記重ねた複数の単位木材を押さえつける複数の押さえ盤部を上記加圧室の長手方向に沿って等間隔を置いて昇降動可能に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の木質建材製造装置。
【請求項4】
上記第一側壁部の内面及び/又は上記第二側壁部の外面に温水用管を配管したことを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載の木質建材製造装置。
【請求項5】
上記床部に該床部の上面から一定の間隔を置いて上記重ねた複数の単位木材を支持する複数の間座を上記加圧室の長手方向に沿って等間隔を置いて設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載の木質建材製造装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、接着剤を介して重ねた複数の単位木材を加圧しつつ接着して製造する木質建材の製造装置に関する。製造する木質建材としては、合板、LVL(Laminated Veneer Lumber、単板積層材)、CLT(Cross Laminated Timber)、集成材、接着重ね梁等である。なお、本書においては、合板、LVL、CLT及び集成材を構成するラミナ等の板状単位木材、接着重ね梁を構成するエレメント等の角柱状単位木材を併せて単位木材と称する。
【背景技術】
【0002】
複数の単位木材で構成される木質建材は、構造強度を予め設定できると共に木材の乾燥に基づく変形・割れ等が生じにくいことから、近年、構造材として多く利用されている。そして、構造材として利用する場合、構築する構造物のデザインや必要とされる強度に応じて、形状、断面積や長さが多種多様となる。そのため、デザイン、断面積、長さ等に応じて、接着剤を介して重ねた複数の単位木材を的確に且つ効率良く圧縮することができる木質建材製造装置が切望されている。
【0003】
ラミナ等の板状の単位木材で木質建材を製造する木質建材製造装置においては、複数の単位木材を垂直方向(上下方向)に積層して重ね、該重ねた単位木材を垂直方向の両端から加圧する縦型製造装置と、複数の単位木材を水平方向(左右方向)に並列して重ね、該重ねた単位木材を水平方向の両端から加圧する横型製造装置とに大別される。
【0004】
縦型製造装置よりも横型製造装置の方が重ねた単位木材を安定して支持できると共に、単位木材の重ね厚を確保しやすく、大容積の構造用木質建材を製造するのに最適である。そして、横型製造装置として、下記特許文献1に示す製造装置が既知である。
【0005】
下記特許文献1の製造装置は、対向する一対の側壁部を着脱可能に設け、当該一対の側壁部を相互に接近させることにより、水平方向に重ねた板状の単位木材を加圧することができると共に加圧状態の単位木材をそのまま別所に移動できる構成となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8―155913号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
上記特許文献1の製造装置にあっては、重ねた単位木材を一方の側壁部と他方の側壁部で加圧する、すなわち、単段の加圧手段しか備えていないため、上記特許文献1の〔請求項11〕、段落〔0015〕・〔0039〕・〔0051〕、
図1・2・8等に開示されているように、水平方向に重ねた単位木材を複数段に配して、複数の木質建材を同時に製造できるとしても、結局、単位木材の重ね厚は同じでなければならない制約がある。
【0008】
また、上記特許文献1の製造装置における一対の側壁部は、単に加圧スペースの長手方向に沿って延びる板状部材であるから、例えばアーチ状の木質建材の製造には対応することができない。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、上記従来の木質建材製造装置の問題点を有効に解決し、単位木材の水平方向の重ね厚の異なる複数の木質建材を同時に製造することができると共に、特殊形状の木質建材をも適切に製造することができる木質建材製造装置を提供する。
【0010】
要述すると、本発明に係る木質建材製造装置は、水平方向に重ねた複数の単位木材を加圧しつつ接着して木質建材を製造する木質建材製造装置であって、上記重ねた複数の単位木材を支持する床部と該床部から対向して立設された第一・第二側壁部と該第一・第二側壁部の上部同士を繋ぐ蓋部とで画成した直方体状の加圧室と、該加圧室の上記第一側壁部に水平方向に進退動可能に設けられ、上記第二側壁部に向けて進動することにより当該第二側壁部と協働して上記重ねた複数の単位木材を加圧する加圧盤部を有し、該加圧盤部を上記加圧室の上下方向に複数段設けると共に、該各段の加圧盤部を別々に進退動可能とする構成により、複数の木質建材を同時に製造できると共に当該複数の木質建材が単位木材の水平方向の重ね厚の異なるものであっても同時に製造することができる。また、加圧したい箇所の加圧盤部のみを制御することができ、特殊形状の木質建材を製造する際にも適切に対応することができる。
【0011】
好ましくは、上記各段の加圧盤部を上記加圧室の長手方向に沿って複数設け、それぞれの加圧盤部を別々に進退動可能とする構成により、さらに細かく上記加圧盤部を制御することができる。
【0012】
また、上記蓋部を開閉可能に設けると共に該蓋部に上記重ねた単位木材を押さえつける複数の押さえ盤部を上記加圧室の長手方向に沿って等間隔を置いて昇降動可能に設ける構成により、接着剤を介して重ねた単位木材の上記加圧室への搬入と、製造した木質建材の上記加圧室からの搬出を容易にすることができる一方、加圧時には上記押さえ盤部が上記重ねた単位木材を適切に押さえつけることができると共に上記床部と協働した垂直方向の加圧をも可能とする。
【0013】
また、上記第一側壁部の内面及び/又は上記第二側壁部の外面に温水用管を配管する構成により、上記加圧室内の空気を加温又は保温して、接着剤の硬化を促進することができる。
【0014】
また、上記床部に該床部の上面から一定の間隔を置いて上記重ねた複数の単位木材を支持する複数の間座を上記加圧室の長手方向に沿って等間隔を置いて設ける構成により、搬入・搬出の際に用いるスリング(帯材)を受け入れる空間を確保すると共に、風通しを良好にして接着剤の硬化促進に貢献することができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明に係る木質建材製造装置によれば、各段の加圧盤部を個別に進動させることができるため、単位木材の水平方向の重ね厚の異なる複数の木質建材を同時に製造することできると共に、特殊形状の木質建材をも適切に製造することができる。
【0016】
また、全段の加圧盤部を同時進行させて大容積の木質建材を製造することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】本発明に係る木質建材製造装置の正面図である。
【
図2】本発明に係る木質建材製造装置の斜視図である。
【
図3】加圧盤部と押圧盤部の配設関係を示す説明図である。
【
図4】重ねた板状単位木材を加圧する際の加圧室の状態を示す正面図である。
【
図5】板状単位木材で構成される二つの木質建材を製造する場合の加圧例を示す正面図である。
【
図6】板状単位木材で構成される四つの木質建材を製造する場合の加圧例を示す正面図である。
【
図7】板状単位木材で構成される大容積の木質建材を製造する場合の加圧例を示す正面図である。
【
図8】二次接着して木質建材を製造する場合の加圧例を示す正面図である。
【
図9】板状単位木材で構成される特殊形状の木質建材を製造する場合の加圧例を示す正面図である。
【
図10】板状単位木材で構成される特殊形状の木質建材を製造する場合の加圧例を加圧室の上方から蓋部を省略して示す説明図である。
【
図11】板状単位木材で構成される木質建材を製造する場合の加圧例を示す正面図である。
【
図12】角柱状単位木材で構成される木質建材を製造する場合の加圧例を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明に係る木質建材製造装置の最適な実施例を
図1乃至
図12に基づき詳述する。
【0019】
〔木質建材製造装置の構造〕
本発明に係る木質建材製造装置1は、
図1・
図2に示すように、水平方向(左右方向)に並列し重ねた複数の単位木材wを加圧しつつ接着するための直方体状の加圧室2を備える。該加圧室2は、重ねた複数の単位木材wを支持する床部2aと該床部2aから対向して立設された第一・第二側壁部2b・2cと該第一・第二側壁部2b・2cの上部同士を繋ぐ蓋部2dとで画成する。換言すれば、加圧室2を床部2a、第一・第二側壁部2b・2c及び蓋部2dによって角筒状とし、重ねた複数の単位木材wの上下左右を長手方向に沿って覆うことができる。なお、床部2a、第一・第二側壁部2b・2c及び蓋部2dは、例えば鋼材を組み合わせて容易且つ強固に構築することができる。また、加圧室2の長手方向の長さは製造予定の木質建材に応じて自由に設定して構築することができる。また、蓋部2dは省略することも可能である。
【0020】
図1に示すように、加圧室2の蓋部2dは、開閉可能に軸支されており、既知のリンク機構を介した油圧ジャッキ等の開閉駆動装置M1によって開閉することができる。これにより、重ねた複数の単位木材wをクレーン等によって吊り下げて、容易に加圧室2へ搬入できると共に製造された木質建材の加圧室2からの搬出も容易にすることができる。また、このように、重ねた単位木材w又は製造された木質建材を加圧室2に上から出し入れすることができるため、加圧室2の長手方向に沿って、重ねた単位木材wや製造された木質建材を出し入れする必要はない。よって、特に単位木材wの長さが長いときには、製造装置1の側方に単位木材wを重ねて待機させることができ、製造された木質建材を製造装置1の側方に容易に移動できるから、木質建材製造に必要なスペースを可及的に小さくすることが可能となる。
【0021】
加えて、蓋部2dには、該蓋部2dの長手方向、つまり加圧室2の長手方向に沿って等間隔を置いて複数の押さえ盤部4が既知の油圧ジャッキ等から成る昇降動駆動装置M3により軸部4aを介して昇降動可能に設けられている。該押さえ盤部4は、蓋部2dの内面において、後記する加圧盤部3の進退動スペースの上方を覆うように延びる帯状の部材であり、重ねた単位木材wを上から押さえつけ、重ねた単位木材wの並列状態が加圧時に乱れるのを適切に防止する。また、製造する木質建材によって水平方向(左右方向)の加圧のみならず、垂直方向(上下方向)の加圧が必要な場合には、床部2aと協働して垂直方向の両側から単位木材wを加圧することもできる。
【0022】
また、
図1・
図2に示すように、加圧室2の第一側壁部2bには、水平方向に進退動可能に加圧盤部3が設けられている。該加圧盤部3は第二側壁部2cに向けて水平方向に進動し当該第二側壁部2cと協働して、重ねた単位木材wの水平方向の両端を加圧することができる。
【0023】
本発明にあっては、加圧盤部3を加圧室2の上下方向に複数段設けると共に、該各段の加圧盤部3を別々に進退動可能とする。本実施例においては、加圧盤部3を上下二段に設けた例を示しており、3Aは上段の加圧盤部を示し、3Bは下段の加圧盤部を示している。なお、本発明にあっては、上下に三段以上の加圧盤部3を設けることも実施に応じ任意である。
【0024】
また、
図2に示すように、好ましくは、各段の加圧盤部3は加圧室2の長手方向に沿って等間隔を置いて複数設け、それぞれの加圧盤部3を別々に進退動可能とする。
【0025】
各加圧盤部3は、軸部3aを介して第一側壁部2bの外方に設けられた油圧ジャッキ等の進退動駆動装置M2とそれぞれ連結しており、当該各進退動駆動装置M2にて個別に制御されている。よって、各段の加圧盤部3を第二側壁部2cへ向けて同時に進動させることは勿論のこと、別々に進動させることや進動量を別々に設定することができる。また、当然に退動も同様に制御することができる。
【0026】
また、既述の押さえ盤部4は、
図3に示すように、加圧室2の長手方向に沿った加圧盤部3の配設間隔内に配設することが望ましい。これにより、押さえ盤部4の昇降動の軌道と加圧盤部3の水平方向の進退動の軌道とを交叉しないようにし、押さえ盤部4と加圧盤部3とを自由に動作させることができる。
【0027】
また、
図1乃至
図3に示すように、第一側壁部2bの内面に長手方向に沿って複数の温水用管5を配管すると共に、第二側壁部2cの外面に長手方向に沿って複数の温水用管5を配管して、加圧室2内の空気を温めて、或いは加圧室2内の空気の温度を保ち、接着剤の硬化を促進することができる。温水用管5として、好ましくは、内部に互い違いにフィンを有する管を用い、温水を蛇行させて効率良く空気を温めることができるようにする。なお、第一側壁部2bの内面のみ、又は、第二側壁部2cの外面のみに温水用管5を配管することを排除しない。
【0028】
また、加圧室2の床部2aには、重ねた単位木材を床部2aの上面から一定の間隔を置いて支持する間座6を設ける。間座6は床部2aの短手方向に伸びるリブ状を呈し、床部2aの長手方向、つまり加圧室2の長手方向に沿って等間隔を置いて複数設ける。これにより、単位木材搬入や木質建材搬出の際にクレーン等によって吊り下げるときに使用するスリング(帯材)を受け入れる空間を確保すると共に風通しを良好にして接着剤の硬化促進に貢献することができる。好ましくは、間座6に風通し孔6aを設けて、より風通しを良好にする。
【0029】
なお、
図3に示すように、加圧室2の長手方向に沿った押さえ盤部4及び間座6の設置間隔を同一に設定するのが望ましい。安定且つ効率的に単位木材wを整列させることができるためである。
【0030】
〔木質建材製造装置による木質建材の製造方法〕
次に、上記構成を備える本発明に係る木質建材製造装置1を用いた木質建材の製造方法について説明する。
【0031】
〔板状の単位木材で構成する木質建材の製造方法〕
ラミナや薄板等の板状の単位木材wで構成する木質建材、すなわち合板、LVL、CLT及び集成材等の木質建材を製造する場合について説明する。
【0032】
製造する木質建材が集成材の場合は、まず、フィンガージョイント等の既知の接合方法により接合し又は既知の切断方法により切断して所望の長さにした板状の単位木材wを作製し、該作製した多数の単位木材wを水平方向に並列して重ねる。この際に隣接する単位木材w間にはエポキシ樹脂等から成る既知の接着剤を介在させる。なお、製造する木質建材がCLTの場合には、水平方向に隣り合う単位木材wは直交するように並列して重ねつつ接着剤を介在させることとなる。また、製造する木質建材が合板やLVLの場合には、単に板状の単位木材wを接着剤を介して重ねる。
【0033】
そして、木質建材製造装置1の開閉駆動装置M1により蓋部2dを開放し加圧室2内に、上記のように重ねた単位木材wをスリングを利用してクレーン等で吊り下げながら搬入する。
【0034】
次に、開閉駆動装置M1により蓋部2dを閉じ、
図4に示すように、重ねた単位木材wを床部2aに間座6を介して支持すると共に押さえ盤部4を降動させて、重ねた単位木材wの上部を押さえつけた後、加圧盤部3を進動させることによって、当該加圧盤部3と第二側壁部2cとが協働して、重ねた単位木材wを水平方向の両端から加圧する。また、この際には温水用管5内に温水を流すと共に、好ましくは、加圧室2の長手方向の両端を板材等で塞いで、接着剤の硬化促進を図る。
【0035】
図4に示すように、接着する板状の単位木材wが低背の場合(垂直方向の幅が狭い場合)には、下段の加圧盤部3Bのみを進動させることにより、加圧盤部3Bが第二側壁部2cと協働して、重ねた単位木材wを適切に加圧し接着することができる。
【0036】
また、
図5に示すように、上段の加圧盤部3Aと下段の加圧盤部3Bとを別々の進動量で進動させて、単位木材wの重ね厚が異なる二つの木質建材を同時に製造することもできる。さらに、
図6に示すように、上段の加圧盤部3Aと下段の加圧盤部3Bとを別々の進動量で進動させると共に、加圧盤部3Aと加圧盤部3Bのそれぞれが二つの木質建材を同時製造するようにすれば、合計四つの木質建材を同時に製造することもできる。このように、複数の木質建材を製造する場合、上段の重ねた単位木材wと下段の重ねた単位木材w間には角柱状又は帯状のスペーサー7を介在させることができる。
【0037】
また、
図7に示すように、接着する板状の単位木材wが高背の場合(垂直方向の幅が広い場合)には、上段の加圧盤部3Aと下段の加圧盤3Bの双方を同時に進動させることにより、加圧盤部3A及び加圧盤部3Bが第二側壁部2cと協働して、重ねた単位木材wを適切に加圧し接着することができる。
【0038】
また、
図8に示すように、製造した木質建材W同士を接着する、いわゆる二次接着も行うことができ、この二次接着の場合も加圧盤部3Aと加圧盤部3Bの双方が第二側壁部2cと協働して加圧することができる。なお、
図8においては、木質建材Wとして集成材を示しているが、その他の合板、LVL、CLT等の木質建材においても同様に二次接着することができることは勿論である。
【0039】
さらに、
図9・
図10に示すように、上段の加圧盤部3Aでアーチ状のような特殊形状の木質建材を製造することができ、同時に別形状の木質建材を下段の加圧盤部3Bで製造することができる。すなわち、
図9に示すように、上段の各加圧盤部3Aの進動量を調整しつつ当て木8を介して単位木材wをアーチ状に加圧することにより、アーチ状の木質建材を製造することができる一方、下段の加圧盤部3Bで直接単位木材wを加圧することができ、別形状の木質建材を同時に製造することができる。
【0040】
また、
図10に示すように、製造する木質建材がCLTの場合には、上段の加圧盤部3A及び下段の加圧盤部3Bと第二側壁部2cによる水平方向の加圧と、押さえ盤部4と床部2aによる垂直方向の加圧を同時に行うことができる。この場合、シート状のスペーサー7により押さえ盤部4及び床部2aによる加圧が効率良く伝わるようにする。
【0041】
〔角柱状の単位木材で構成する木質建材の製造方法〕
本発明に係る木質建材製造装置1においては、具体的には図示しないが、無垢材のエレメント等の角柱状の単位木材wで構成する木質建材、すなわち接着重ね梁等の木質建材を製造する場合においても、板状単位木材で木質建材を製造するときと同様に、水平方向に並列して重ねた角柱状単位木材wを適切に加圧することができる。また、接着剤を介在させる工程、温水を流す工程、加圧室2の長手方向の両端を板材等で塞ぐ工程については、板状単位木材で木質建材を製造する場合と同様であるので、ここでは説明を割愛する。
【0042】
また、下段の加圧盤部3Bと第二側壁部2cによる水平方向の加圧と、押さえ盤部4と床部2aによる垂直方向の加圧を同時に行うことにより、例えば
図11に示すように、テトラポール型の接着重ね梁(木質建材)とツインビーム型の接着重ね梁(木質建材)とを同時に製造することができる。この場合においても、シート状のスペーサー7を利用すれば加圧が効率良く伝わる。
【0043】
以上のとおり、本発明に係る木質建材製造装置1は、各段の加圧盤部3を個別に進動させることができるため、単位木材wの重ね厚の異なる複数の木質建材を同時に製造することできると共に、特殊形状の木質建材をも適切に製造することができる。
【0044】
加えて、加圧盤部3は加圧室2の長手方向に沿って複数設け、同じ段の加圧盤部3であっても、長手方向に沿ったそれぞれの加圧盤部3を別々に制御することができる。よって、単位木材wの長手方向の長さや製造する木質建材の形状に応じて、必要な加圧盤部3のみを制御することができる。
【0045】
また、全段の加圧盤部3を同時進行させて大容積の木質建材を製造することや二次接着することもできる。
【符号の説明】
【0046】
1…木質建材製造装置、2…加圧室、2a…床部、2b…第一側壁部、2c…第二側壁部、2d…蓋部、3…加圧盤部、3A…上段の加圧盤部、3B…下段の加圧盤部、3a…軸部、4…押さえ盤部、4a…軸部、5…温水用管、6…間座、6a…風通し孔、7…スペーサー、8…当て木、M1…開閉駆動装置、M2…進退動駆動装置、M3…昇降動駆動装置、w…単位木材、W…木質建材。
【手続補正書】
【提出日】2019年12月9日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項1
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項1】
水平方向に並列して重ねた複数の単位木材を加圧しつつ接着して木質建材を製造する木質建材製造装置であって、上記重ねた複数の単位木材を支持する床部と該床部から対向して立設された第一・第二側壁部と該第一・第二側壁部の上部同士を繋ぐ蓋部とで画成した直方体状の加圧室と、該加圧室の上記第一側壁部に水平方向に進退動可能に設けられ、上記第二側壁部に向けて進動することにより当該第二側壁部と協働して上記重ねた複数の単位木材を加圧する加圧盤部を有し、該加圧盤部を上記加圧室の上下方向に複数段設けると共に、該各段の加圧盤部を別々に進退動可能とし、且つ、上記蓋部を開閉可能に設けたことを特徴とする木質建材製造装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】請求項3
【補正方法】変更
【補正の内容】
【請求項3】
上記蓋部に上記重ねた複数の単位木材を押さえつける複数の押さえ盤部を上記加圧室の長手方向に沿って等間隔を置いて昇降動可能に設けたことを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の木質建材製造装置。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
要述すると、本発明に係る木質建材製造装置は、水平方向に重ねた複数の単位木材を加圧しつつ接着して木質建材を製造する木質建材製造装置であって、上記重ねた複数の単位木材を支持する床部と該床部から対向して立設された第一・第二側壁部と該第一・第二側壁部の上部同士を繋ぐ蓋部とで画成した直方体状の加圧室と、該加圧室の上記第一側壁部に水平方向に進退動可能に設けられ、上記第二側壁部に向けて進動することにより当該第二側壁部と協働して上記重ねた複数の単位木材を加圧する加圧盤部を有し、該加圧盤部を上記加圧室の上下方向に複数段設けると共に、該各段の加圧盤部を別々に進退動可能とする構成により、複数の木質建材を同時に製造できると共に当該複数の木質建材が単位木材の水平方向の重ね厚の異なるものであっても同時に製造することができる。また、加圧したい箇所の加圧盤部のみを制御することができ、特殊形状の木質建材を製造する際にも適切に対応することができる。
さらに、上記蓋部を開閉可能に設けたことにより、接着剤を介して重ねた単位木材の上記加圧室への搬入と、製造した木質建材の上記加圧室からの搬出を容易にすることができる。
【手続補正4】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0012
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0012】
また、
上記蓋部に上記重ねた単位木材を押さえつける複数の押さえ盤部を上記加圧室の長手方向に沿って等間隔を置いて昇降動可能に設ける構成により、加圧時には上記押さえ盤部が上記重ねた単位木材を適切に押さえつけることができると共に上記床部と協働した垂直方向の加圧をも可能とする。