(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-80691(P2021-80691A)
(43)【公開日】2021年5月27日
(54)【発明の名称】建設機械
(51)【国際特許分類】
E02F 9/00 20060101AFI20210430BHJP
B60K 1/04 20190101ALI20210430BHJP
H01M 50/20 20210101ALI20210430BHJP
【FI】
E02F9/00 C
B60K1/04 Z
H01M2/10 U
【審査請求】未請求
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-207797(P2019-207797)
(22)【出願日】2019年11月18日
(71)【出願人】
【識別番号】505236469
【氏名又は名称】キャタピラー エス エー アール エル
(74)【代理人】
【識別番号】100075177
【弁理士】
【氏名又は名称】小野 尚純
(74)【代理人】
【識別番号】100113217
【弁理士】
【氏名又は名称】奥貫 佐知子
(74)【代理人】
【識別番号】100202496
【弁理士】
【氏名又は名称】鹿角 剛二
(74)【代理人】
【識別番号】100202692
【弁理士】
【氏名又は名称】金子 吉文
(72)【発明者】
【氏名】岸田 耕治
(72)【発明者】
【氏名】松村 和昌
(72)【発明者】
【氏名】西山 伸一
【テーマコード(参考)】
3D235
5H040
【Fターム(参考)】
3D235AA19
3D235BB02
3D235BB23
3D235BB25
3D235BB34
3D235CC15
3D235DD32
3D235EE63
3D235FF02
3D235HH44
5H040AA14
5H040AS06
5H040AY05
5H040CC25
5H040CC30
5H040CC35
5H040CC38
5H040NN03
(57)【要約】 (修正有)
【課題】機体フレームに搭載されたバッテリの損傷を防止することができるバッテリの支持板を提供する。
【解決手段】機体フレームと、弾性マウント42を介して機体フレームに装着された支持板54と、支持板の上面に固定されたバッテリ26とを備え、また、支持板は溶接加工が施されていない構造とした。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
機体フレームと、弾性マウントを介して前記機体フレームに装着された支持板と、前記支持板の上面に固定されたバッテリとを備え、
前記支持板には溶接加工が施されていない建設機械。
【請求項2】
前記機体フレームの後端部には上下方向に間隔をおいて配置された複数の棚板を有する棚が装着されており、前記支持板は複数設けられていて前記弾性マウントを介して前記複数の棚板のそれぞれの上面に装着されている、請求項1に記載の建設機械。
【請求項3】
前記棚は付加弾性マウントを介して前記機体フレームの後端部に装着されている、請求項2に記載の建設機械。
【請求項4】
前記棚の上方、後方および側方を覆うカバー部材を備える、請求項2または3に記載の建設機械。
【請求項5】
前記機体フレームの後端部には基板が固定されており、前記支持板は前記弾性マウントを介して前記基板の上面に装着されている、請求項1から4までのいずれかに記載の建設機械。
【請求項6】
前記支持板の上面には前記バッテリ以外の他の電装品も固定されている、請求項1から5までのいずれかに記載の建設機械。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、機体フレームに搭載されたバッテリの損傷を防止することができる建設機械に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、油圧ショベル等の建設機械は、環境への配慮や作業場所の制限により、駆動源としてエンジンおよび電動モータを備えるハイブリッド式建設機械や、駆動源として電動モータを備える電動式建設機械の需要が増加している。電動式建設機械においては、ケーブルを用いて商用電源から電動モータへ電力が供給され、あるいは電動式建設機械の機体フレームに搭載されたバッテリから電動モータへ電力が供給される(たとえば特許文献1参照。)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2012−202065号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、バッテリが固定される機体フレームは鋼板等の金属材料を溶接することにより形成されているので、バッテリが固定される部分が溶接により歪んでいると、バッテリが機体フレームに固定された際に局所的な高応力がバッテリに生じ、バッテリが損傷してしまうおそれがある。
【0005】
上記事実に鑑みてなされた本発明の課題は、機体フレームに搭載されたバッテリの損傷を防止することができる建設機械を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決するために以下の建設機械を提供する。すなわち、機体フレームと、弾性マウントを介して前記機体フレームに装着された支持板と、前記支持板の上面に固定されたバッテリとを備え、前記支持板には溶接加工が施されていない建設機械を本発明は提供する。
【0007】
好ましくは、前記機体フレームの後端部には上下方向に間隔をおいて配置された複数の棚板を有する棚が装着されており、前記支持板は複数設けられていて前記弾性マウントを介して前記複数の棚板のそれぞれの上面に装着されている。前記棚は付加弾性マウントを介して前記機体フレームの後端部に装着されているのが好適である。前記棚の上方、後方および側方を覆うカバー部材を備えるのが好都合である。前記機体フレームの後端部には基板が固定されており、前記支持板は前記弾性マウントを介して前記基板の上面に装着されているのが好ましい。前記支持板の上面には前記バッテリ以外の他の電装品も固定されているのが好適である。
【発明の効果】
【0008】
本発明の建設機械においては、バッテリが固定された支持板が弾性マウントを介して機体フレームに装着されているから、溶接によって機体フレームが歪んでいたとしても機体フレームと支持板との間に位置する弾性マウントによって、支持板への機体フレームの歪みの影響が軽減される。また、バッテリを支持する支持板には溶接加工が施されていないので、溶接に起因する歪みが支持板に発生することがない。したがって、本発明の建設機械においては、バッテリに局所的な高応力が生じるのを抑制してバッテリの損傷を防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明に従って構成された電動式油圧ショベルの側面図。
【
図2】(a)
図1に示す機体フレームおよび棚の斜視図、(b)(a)に示す機体フレームおよび棚の分解斜視図。
【
図3】(a)
図2に示す棚の斜視図、(b)(a)に示す棚にバッテリが収容された状態を示す斜視図。
【
図4】(a)
図2に示す棚板に弾性マウントが固定された状態の棚の一部斜視図、(b)(a)に示す弾性マウントに支持板が装着された状態の棚の一部斜視図、(c)(b)に示す支持板にバッテリが固定された状態の棚の一部斜視図。
【
図5】付加弾性マウントを介して機体フレームに棚が装着される電動式油圧ショベルの一部分解斜視図。
【
図6】機体フレームに固定された基板に、バッテリが固定された支持板が装着された電動式油圧ショベルを後方から見た斜視図。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明に従って構成された建設機械の好適実施形態について、駆動源として電動モータを備える電動式油圧ショベルを例に挙げ図面を参照しつつ説明する。
【0011】
図1を参照して説明すると、全体を符号2で示す電動式油圧ショベルは、下部走行体4と、下部走行体4に旋回自在に支持された上部旋回体6と、上部旋回体6に装着された作業腕装置8とを備える。
【0012】
作業腕装置8は、基端部が上部旋回体6に連結されたブーム10と、基端部がブーム10の先端部に連結されたアーム12と、アーム12の先端部に連結されたバケット14と、上部旋回体6に対してブーム10を揺動させるブームシリンダ16と、ブーム10に対してアーム12を揺動させるアームシリンダ18と、アーム12に対してバケット14を揺動させるバケットシリンダ20とを含む。そして、電動式油圧ショベル2においては、作業腕装置8のブーム10、アーム12およびバケット14を各シリンダ16、18、20で揺動させることにより掘削作業等の各種作業を行うようになっている。
【0013】
上部旋回体6のフレーム22(以下「機体フレーム22」という。)には、キャブ24と、駆動源としての電動モータ(図示していない。)と、電動モータの出力軸に接続された油圧ポンプ(図示していない。)とが搭載されている。機体フレーム22は、鋼板等の適宜の金属材料を溶接することにより形成されている。そして、電動式油圧ショベル2においては、電動モータで油圧ポンプを駆動することにより、高圧の作動油を油圧ポンプからブームシリンダ16等の油圧アクチュエータに供給するようになっている。
【0014】
図2に示すとおり、機体フレーム22の後端部には、電動モータに電力を供給するための複数のバッテリ26を収納した棚28が配置されている。バッテリ26としては、たとえばリチウムイオンバッテリが用いられ得る。
図3を参照して説明すると、鋼材等の適宜の金属材料を溶接することにより形成され得る棚28は、実質上水平に延びる天板30と、天板30の下方において上下方向に間隔をおいて配置された複数(図示の実施形態では4枚)の棚板32と、天板30および複数の棚板32を連結する連結部材34とを含む。各棚板32は実質上水平に配置され、最下段の棚板32が機体フレーム22の後端部に複数のボルト36(
図2(b)参照。)により固定される。
【0015】
図示の実施形態の連結部材34は、
図3に示すとおり、天板30の幅方向両端部から下方に延びる一対の側板38と、一対の側板38間において天板30と棚板32との間および上下方向において隣接する棚板32間に配置された複数(図示の実施形態では8枚)の仕切り板40とを有する。一方の側板38は、天板30の幅方向一端部および各棚板32の幅方向一端部に溶接され、他方の側板38は、天板30の幅方向他端部および各棚板32の幅方向他端部に溶接されている。
図3を参照することによって理解されるとおり、各仕切り板40の下端部は棚板32の上面に溶接され、各仕切り板40の上端部は天板30の下面または棚板32の下面に溶接されている。
【0016】
図4(a)を参照して説明すると、各棚板32の上面には複数の弾性マウント42が固定されている。弾性マウント42は公知の構成でよいが、図示の実施形態の弾性マウント42は、棚板32の上面にボルト44で固定された金属製の菱形形状の下板46と、下板46の上面に固着された円柱状のゴム48と、ゴム48の上面に固着された金属製の菱形形状の上板50とを有する。上板50の下面にはナット52が溶接されている。
【0017】
図4(b)に示すとおり、各棚板32の上方には矩形状の支持板54が実質上水平に配置されており、ボルト56と弾性マウント42のナット52とを締結することにより、各支持板54が弾性マウント42に装着されている。すなわち、支持板54は複数設けられていて弾性マウント42を介して棚板32のそれぞれの上面に装着されている。各支持板54は、鋼板等の適宜の金属材料から形成されている。支持板54には、ボルト56を通す穴を形成するための穴あけ加工や、雌ねじを形成するためタッピング加工は施されているが、溶接加工は施されていない。
【0018】
図4(c)を参照することによって理解されるとおり、図示の実施形態では、複数のバッテリ26がボルト58により各支持板54の上面に固定されている。なお、各支持板54に固定されているバッテリ26の数量は1個でもよい。また、バッテリ26の支持板54への固定はボルト58に限定されず、図示していないが、たとえば、バッテリ26の側面に凹所が形成され、バッテリ26の凹所に嵌合する突起が形成された固定具が支持板54に取り付けられるようになっていてもよい。
【0019】
図示の実施形態のように1枚の支持板54に複数のバッテリ26が固定されている場合には、1枚の支持板54に1個のバッテリ26が固定されている場合よりも、隣接するバッテリ26同士の間隔を小さくすることができるので、1枚の支持板54に複数のバッテリ26が固定されているのが好ましい。1枚の支持板54に1個のバッテリ26が固定されている場合には、電動式油圧ショベル2が走行する際等に生じた振動に起因してバッテリ26が棚板32に対して揺動する時、複数のバッテリ26がそれぞれ異なる動きをすることになるため、隣接するバッテリ26同士の間隔を比較的大きくして、隣接するバッテリ26同士が干渉するのを防止する必要がある。一方、1枚の支持板54に複数のバッテリ26が固定されている場合には、同一の支持板54に固定されたバッテリ26は同一の動きをするため、隣接するバッテリ26同士が干渉することがなく、隣接するバッテリ26同士の間隔を比較的小さくすることができる。
【0020】
支持板54の上面にはバッテリ26以外の他の電装品が固定されていてもよい。図示の実施形態では
図3(b)に示すとおり、支持板54の上面にバッテリディスコネクトユニット60が固定されている。バッテリディスコネクトユニット60は、コンタクタ、ヒューズ、電流計測器、バッテリ26のセル温度や電圧等の情報をバッテリ26から取得する機器(いずれも図示していない。)等を含む。
【0021】
図1に示すとおり、機体フレーム22には、棚28の上方、後方および側方を覆うカバー部材62が装着されている。適宜の金属材料から形成され得るカバー部材62には扉等が設けられていて、メンテナンスの際に扉を開けて棚28に収納されたバッテリ26等にアクセス可能に構成されていてもよい。
【0022】
以上のように構成された電動式油圧ショベル2においては、バッテリ26が固定された支持板54が弾性マウント42を介して棚28の各棚板32に装着されているから、溶接によって棚板32が歪んでいたとしても棚板32と支持板54との間に位置する弾性マウント42によって、支持板54への棚板32の歪みの影響が軽減される。また、バッテリ26を支持する支持板54には溶接加工が施されていないので、溶接に起因する歪みが支持板54に発生することがない。したがって、電動式油圧ショベル2においては、バッテリ26に局所的な高応力が生じるのを抑制してバッテリ26の損傷を防止することができる。
【0023】
また、電動式油圧ショベル2においては、走行時等に生じた振動が弾性マウント42によって減衰されるので、バッテリ26の許容振動を超過することによるバッテリ26の機能不良や内部破損を防止することができる。
【0024】
電動式油圧ショベル2を組み立てる際は、バッテリ26を棚28に取り付けたバッテリ棚組立体(
図3(b)参照。)を予め準備しておき、
図2に示すとおり、バッテリ棚組立体を機体フレーム22の後端部に固定することにより、複数のバッテリ26を機体フレーム22に容易に装着させることができる。
【0025】
なお、上述の棚28は機体フレーム22の後端部にボルト36で固定されているが、
図5に示すとおり、棚28は付加弾性マウント64を介して機体フレーム22の後端部に装着されていてもよい。
図5に示す例では、複数の付加弾性マウント64を保持する保持板66が機体フレーム22の後端部にボルト68で固定され、棚28の最下段の棚板32が付加弾性マウント64にボルト70で固定されることによって、付加弾性マウント64を介して機体フレーム22の後端部に棚28が装着されている。
図5に示す例においては、付加弾性マウント64によってバッテリ26に伝達される振動が一層低減される。付加弾性マウント64としては、たとえば液体封入型ビスカスマウントが用いられ得る。
【0026】
図示の実施形態では、弾性マウント42を介して棚板32の上面に支持板54が装着されており、機体フレーム22と支持板54との間に棚28および弾性マウント42が介在されている例を説明したが、本発明においては、機体フレーム22と支持板54との間に弾性マウント42のみが介在される構成であってもよい。
【0027】
あるいは、
図6に示すとおり、機体フレーム22の後端部に1枚以上の基板72がボルト74で固定され、弾性マウント42を介して基板72の上面に支持板54が装着されていてもよく、すなわち、機体フレーム22と支持板54との間に基板72および弾性マウント42が介在されていてもよい。基板72には、穴あけ加工やタッピング加工だけでなく、溶接加工が施されていてもよい。基板72の上方には、複数のバッテリ26が装着された棚28が配置され得る。
【0028】
そして、
図6に示す例においても、バッテリ26に局所的な高応力が生じるのを抑制してバッテリ26の損傷が防止されると共に、バッテリ26の許容振動を超過することによるバッテリ26の機能不良や内部破損が防止される。また、複数のバッテリ26を基板72に取り付けたバッテリ基板組立体を予め準備しておき、バッテリ基板組立体を機体フレーム22の後端部に固定することにより、複数のバッテリ26を機体フレーム22に容易に装着させることができる。
【0029】
図示の実施形態では本発明が電動式油圧ショベルに適用された場合について説明したが、本発明が適用されるのは電動式建設機械に限定されず、たとえば駆動源としてエンジンおよび電動モータを備えるハイブリッド式建設機械にも適用され得る。
【符号の説明】
【0030】
2:電動式油圧ショベル(建設機械)
22:フレーム(機体フレーム)
26:バッテリ
28:棚
32:棚板
42:弾性マウント
54:支持板
60:バッテリディスコネクトユニット(他の電装品)
62:カバー部材
64:付加弾性マウント
72:基板