【解決手段】フレア管10の端末に形成されると共に被結合部材2に突き合わされたフレア部12をフレアナット3で押圧し、フレア管10を被結合部材2に結合するフレア継手構造1において、フレア管10は、素管41と、素管41の表面を覆うコーティング層42と、からなる円筒管40をフレア加工することで形成され、フレア部12は、被結合部材2に向き合うフレア傾斜面13を有し、フレア傾斜面13を、機械加工が施されて素管41が露出した機械加工部43によって形成する構成とした。
フレア管の端末に形成されたフレア部を被結合部材に突き合わせると共に、前記フレア部をフレアナットで押圧し、前記フレア管を前記被結合部材に結合するフレア継手構造において、
前記フレア管は、素管と、前記素管の表面を覆うコーティング層と、からなる円筒管をフレア加工することで形成され、
前記フレア部は、前記被結合部材に向き合うフレア傾斜面を有し、
前記フレア傾斜面は、機械加工が施されて前記素管が露出した機械加工部によって形成されている
ことを特徴とするフレア継手構造。
素管及び前記素管の表面を覆うコーティング層からなる円筒管の外周面のうち、端縁から軸方向の所定の範囲を機械加工によって削り、前記素管よりも外径が小さい機械加工部を前記円筒管の管端部に形成する機械加工工程と、
前記機械加工部をプレスして前記管端部にフレア部を形成し、前記機械加工部で被結合部材に向き合う前記フレア部のフレア傾斜面を形成するフレア加工工程と、
を備えたことを特徴とするフレア管の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明のフレア継手構造及びフレア管の製造方法を実施するための形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【0011】
(実施例1)
実施例1のフレア継手構造1は、例えば、内燃機関の高圧燃料供給経路やブレーキ液の圧送経路に用いられ、圧力がかかった液体が流通する経路におけるパイプの継手構造である。以下、
図1に基づいて、実施例1のフレア継手構造1の全体構成を説明する。
【0012】
実施例1のフレア継手構造1は、
図1に示すように、フレア管10と、フレア管10を結合する被結合部材2と、フレア管10を押圧するフレアナット3と、を備えている。
【0013】
被結合部材2は、例えばABSアクチュエータ等の車載機器であり、内部に形成された流路21と、流路21を外部に開放する結合ポート22と、が形成されている。結合ポート22は、流路21よりも大径に形成された空間であり、内周面にネジ溝22aが形成されている。また、結合ポート22の底部における流路21の開口周囲には、流路21を取り囲むシール面23が形成されている。シール面23は、フレア管10の後述するフレア傾斜面13が接触することで被結合部材2の流路21とフレア管10との結合部位を液密に保つための被接触面である。シール面23は、国際標準化機構(ISO)や日本自動車技術会規格(JASO)の規格に基づいたテーパ形状を呈している。
【0014】
フレア管10は、フレアナット3の貫通孔31を貫通する円筒状の一般管部11と、その一般管部11の端末に形成され、被結合部材2の結合ポート22に挿入されるフレア部12と、を有している。フレア部12は、国際標準化機構(ISO)や日本自動車技術会規格(JASO)の規格に基づいたフレア形状を呈している。すなわち、フレア部12は、一般管部11の端末近傍の径を拡大し、この端末近傍の全周を外側に突出させるようにプレス成形されている。
【0015】
フレアナット3は、被結合部材2の結合ポート22に挿入され、先端3aがフレア部12に接触する。また、フレアナット3の外周面には、ネジ溝32が形成されている。ネジ溝32は、フレアナット3が結合ポート22に挿入された際、結合ポート22の内周面に形成されたネジ溝22aに螺合する。
【0016】
そして、このフレア継手構造1では、まず、フレア管10のフレア部12を被結合部材2の結合ポート22に挿入し、フレア部12をシール面23に突き合わせる。そして、フレアナット3のネジ溝32と結合ポート22に形成したネジ溝22aとを螺合し、フレアナット3を締め付ける。これにより、フレアナット3の先端3aと流路21の開口周囲に形成されたシール面23との間にフレア部12が挟み込まれ、フレア管10が被結合部材2に結合される。
【0017】
以下、
図2から
図4に基づいて、フレア管10及びフレア部12の詳細構成を説明する。
【0018】
フレア管10は、上述したように、円筒状の一般管部11と、その一般管部11の端末に形成されたフレア部12と、を有している(
図1、
図2参照)。ここで、フレア管10は、両端が開放した円筒管40の管端部40aをフレア加工することで形成される。円筒管40は、
図3に示すような、素管41と、素管41の表面を覆うコーティング層42と、から構成されている。
【0019】
素管41は、表面に銅めっきを施した鋼板を二重巻きにして管状に成形した二重巻き鋼管が用いられる。素管41の表面には、二重巻にした銅めっき鋼板の側縁に沿ってシーム部段差が生じる。このシーム部段差は、素管41の軸方向に延びる段差であり、素管41の全長にわたって生じる。素管41にシーム部段差が生じていることで、
図3に拡大して示すように、円筒管40の外周面には、軸方向に延びる凹凸部40cが形成される。なお、素管41の材料としては、鋼が好適であるが、これに限定されるものではなく、鉄合金、アルミニウム合金等の各種合金を材料とする金属管を素管41としてもよい。
【0020】
コーティング層42は、例えば、素管41の表面に亜鉛メッキ処理を行った後、三価クロメート処理を施すことで設けられる。このコーティング層42の厚みは、例えば10〜30μmに設定される。なお、コーティング層42の表面は、ナイロン等の樹脂層42aによって被覆されている。
【0021】
フレア部12は、
図2及び
図4に示すように、開口10aの周囲を取り囲む開口周縁部12aと、開口周縁部12aを取り囲み、被結合部材2のシール面23に向き合うフレア傾斜面13と、フレア外側面17と、フレアナット3の先端3aによって押圧される背面14と、フレア傾斜面13とフレア外側面17との間に位置する第1屈曲部15と、背面14と一般管部11との間に位置する第2屈曲部16と、を有する。
【0022】
そして、
図2に示すように、フレア部12のうち、少なくともフレア傾斜面13は、機械加工が施されて素管41の周面が露出した円筒管40の周面に形成された機械加工部43によって形成される。実施例1のフレア管10では、
図4に示すように、フレア傾斜面13と第1屈曲部15までの領域が機械加工部43によって形成され、素管41の周面が露出している。なお、開口周縁部12aは、素管41の端面によって形成されており、開口周縁部12aでは素管41の端面が露出している。
【0023】
また、フレア部12の背面14は、コーティング層42によって覆われている。さらに、第2屈曲部16から少し離れた一般管部11の領域は、表面が樹脂層42aによって覆われている。なお、機械加工部43は、円筒管40をフレア加工してフレア部12を形成する前に、予め円筒管40の管端部40aに設けられる。
【0024】
そして、実施例1のフレア部12では、フレア傾斜面13の径方向寸法Wが、素管41の外径寸法Dに対して、下記式1が成立する大きさに設定されている。
0.27D ≦ W ≦ 0.34D …式1
【0025】
さらに、実施例1のフレア部12では、フレア傾斜面13の肉厚寸法tが、素管41の肉厚寸法Tに対して、下記式2が成立する大きさに設定されている。
0.85T ≦ t ≦ 0.95T …式2
なお、フレア傾斜面13の肉厚寸法tは、フレア傾斜面13の径方向中央部の肉厚寸法とする。しかしながら、これに限らず、例えば、フレア傾斜面13の複数個所の肉厚寸法の平均値等であってもよい。
【0026】
以下、
図5及び
図6に基づいて、実施例1のフレア管10の製造方法を説明する。すなわち、実施例1のフレア管10の製造方法は、
図5(a)、(b)に示す機械加工工程と、
図6A〜
図6Cに示すフレア加工工程と、を備えている。
【0027】
機械加工工程では、円筒管40の外周面のうち、端縁40bから軸方向の所定の範囲を切削加工や研磨加工等の機械加工によって削る。このとき、前工程として、
図5(a)に示すように、樹脂層42aを剥離する剥離処理を施しておく。この前工程で剥離する樹脂層42aの軸方向長さは、機械加工部43を形成する領域の軸方向長さ(機械加工によって削る所定範囲)よりも長くなるように設定する。
【0028】
続いて、この機械加工工程では、
図5(b)に示すように、加工機Kを用いて円筒管40を機械加工し、端縁40bから軸方向の所定の範囲のコーティング層42及び素管41の外表面を除去する。これにより、素管41よりも外径が小さい機械加工部43が円筒管40の管端部40aに形成される。なお、機械加工工程では、素管41の外表面を、シーム部段差が削り取られ、機械加工部43の表面が平坦になる程度(例えば0.05〜0.15mm)まで削るが、削りすぎるとフレア部12の強度が低下する。そのため、機械加工時の素管41の削り量(削り深さ)は、機械加工部43の表面粗さと、フレア加工後のフレア部12の必要強度とに基づいて設定する。
【0029】
また、機械加工部43の軸方向長さ(機械加工によって削る端縁40bからの長さ)は、機械加工部43によってフレア傾斜面13を形成可能な長さに適宜設定される。つまり、フレア傾斜面13の径方向寸法に依存して機械加工部43の軸方向長さは決められる。さらに、機械加工工程を実施した後には、後工程として、機械加工部43の先端43aの外周角部を面取り処理し、先端43aを先細り形状とする。
【0030】
フレア加工工程では、まず、円筒管40を固定チャックK1と可動チャックK2の間に挟み込み、機械加工部43が設けられた管端部40aを拡径パンチP1に向けた状態で保持する。(
図6A参照)。なお、このとき、円筒管40は水平方向に保持される。
【0031】
円筒管40を固定チャックK1と可動チャックK2に挟み込んだら、前工程(予備成形)として、
図6Bに示すように、円筒管40の管端部40aに拡径パンチP1を押圧しながら差し込み、管端部40aの径を素管41の径よりも広げる拡径処理を施す。この拡径処理では、円筒管40の端縁40b(機械加工部43の先端43a)から、フレア部12を形成したときに最大外径となる部分までの領域を拡径する。フレア部12では、最大外径が素管41の外径以上に拡大することから、この拡径処理を行うことで、フレア加工したときに、フレア部12を所期の形状に導くことができる。
【0032】
拡径処理後、
図6Cに示すように、固定チャックK1と可動チャックK2によって円筒管40を挟み込んだまま、成形パンチP2で円筒管40の管端部40aを軸方向に沿って冷間プレスし、塑性変形させる。これにより、円筒管40のうち、成形パンチP2でプレスされた部分がフレア部12となり、固定チャックK1と可動チャックK2によって挟まれた部分が一般管部11となって、フレア管10が製造される。ここで、円筒管40の管端部40aには、予め機械加工部43が設けられている。そのため、円筒管40のうち、成形パンチP2でプレスされた際にフレア傾斜面13となる領域と機械加工部43が形成された領域とを一致させておくことで、フレア傾斜面13を機械加工部43によって形成することができる。
【0033】
以下、フレア継手構造1における課題を説明する。
【0034】
フレア継手構造1に用いられるフレア管10は、二重巻鋼管からなる素管41をコーティング層42で覆った円筒管40を用いて形成される。このとき、素管41が二重巻鋼管であるため、素管41の表面には、二重巻にした鋼板の側縁に沿ってシーム部段差が素管41の全長にわたって生じる。そのため、この素管41をコーティング層42で覆って円筒管40を形成しても、この円筒管40の外周面に凹凸部40cが生じてしまう。
【0035】
これにより、円筒管40の管端部40aをフレア加工してフレア部12を形成した際、被結合部材2の流路21の開口周囲に形成されたシール面23に向かい合うフレア傾斜面13には、凹凸部40cの影響で凹凸が生じる。
【0036】
さらに、フレア加工では、円筒管40の管端部40aを冷間プレスすることでフレア部12を形成するが、このとき、フレア傾斜面13を形成するために管端部40aが斜めに圧縮される。これにより、円筒管40の管端部40aには、円筒管40の内側に向かう力が作用し、フレア傾斜面13に環状のへこみが発生する。このへこみは、フレア傾斜面13の凹凸の原因となる。
【0037】
そして、フレア傾斜面13に凹凸が生じていると、フレア部12をフレアナット3で押圧し、フレア傾斜面13をシール面23に押し付けた際、フレア傾斜面13とシール面23との間に隙間が生じ、フレア管10と流路21との間を流れる液体の漏れを発生させることがある。
【0038】
なお、フレア傾斜面13のうち、フレア管10の開口周囲の所定範囲(例えば、素管41の端面が露出した領域)のみをシール面23に接触するシール面とする場合では、フレア傾斜面13に生じた凹凸の影響を受けにくく、必要なシール性を確保することが可能である。しかしながら、開口周囲の所定範囲のみをシール面とする場合では、フレア傾斜面13の全域をシール面とする場合と比べて、シール面の面積が少なくなる。そのため、フレア管10の軸芯が規定の位置からずれると、有効なシール面が被結合部材2から外れてしまい、フレア管10及び流路21を流れる液体の漏れが発生するおそれがある。すなわち、フレア傾斜面13に設定するシール面の面積は広い方が望ましく、シール面の面積が少なければ安定したシール性を確保することが困難になるという問題が生じる。
【0039】
以下、実施例1のフレア継手構造1及びフレア管10の製造方法における作用を説明する。
【0040】
実施例1のフレア継手構造1では、
図1に示すように、フレア管10の端末に形成されたフレア部12を被結合部材2に形成した流路21を取り囲むシール面23に突き合わせ、フレア部12をフレアナット3で押圧し、フレア管10を被結合部材2に結合する。ここで、フレア管10は、素管41と、素管41の表面を覆うコーティング層42とからなる円筒管40の管端部40aをフレア加工することで形成される。フレア部12は、シール面23に向き合うフレア傾斜面13を有しているが、このフレア傾斜面13は、機械加工が施されて素管41の周面が露出した機械加工部43によって形成されている。
【0041】
ここで、機械加工部43は、フレア管10を形成する円筒管40の外周面のうち、端縁40bから軸方向の所定の範囲を機械加工(切削加工や研削加工等)によって削り、コーティング層42と、素管41の外表面を除去することで形成されている。このとき、素管41の外表面は、シーム部段差が削り取られ、表面が平坦になる程度まで削られる。
【0042】
そのため、フレア傾斜面13を機械加工部43によって形成することで、フレア傾斜面13では、シーム部段差が削り取られた素管41の周面が露出し、平坦な面になる。これにより、フレア傾斜面13の全域が凹凸のない平坦面になり、フレア傾斜面13に凹凸が生じることを防止できる。そして、フレア傾斜面13を被結合部材2に形成されたシール面23に押し付けたときに隙間が生じず、高いシール面圧を確保することができる。また、フレア傾斜面13の全域を凹凸のない平坦面としたことで、フレア傾斜面13の全域がシール面23に密接可能となり、フレア傾斜面13の全域をシール面とすることが可能となる。これにより、フレア管10の開口周囲の所定範囲(例えば、素管41の端面が露出した領域)のみをシール面とする場合よりも、シール面の面積を拡大することができる。そして、フレア管10の軸芯が規定の位置からずれても、有効なシール面積を確保することができる。この結果、フレア管10を流れる液体の漏れの防止性能を向上することができる。
【0043】
また、素管41は二重巻鋼管によって形成されているため、素管41の全長にわたってシーム部段差が生じており、この影響によって円筒管40の表面に凹凸部40cが形成される。しかし、機械加工によって素管41の外表面を削ることで、凹凸部40cやシーム部段差が削り取られる。そのため、フレア加工によってフレア部12を形成した際、フレア傾斜面13に凹凸部40cの影響によるへこみが残らず、フレア傾斜面13に凹凸が生じることを防止できる。
【0044】
そして、フレア管10の製造方法は、円筒管40の外周面のうち、端縁40bから軸方向の所定の範囲を機械加工によって削り、素管41よりも外径が小さい機械加工部43を円筒管40の管端部40aに形成する機械加工工程と、機械加工部43を冷間プレスして管端部40aにフレア部12を形成し、機械加工部43によってフレア傾斜面13を形成するフレア加工工程と、を備えている。
【0045】
つまり、機械加工部43は、フレア部12が形成される前に円筒管40の管端部40aに形成されており、機械加工部43を円筒管40の管端部40aに形成した後、この機械加工部43が形成された管端部40aを冷間プレスすることでフレア傾斜面13は形成される。この結果、フレア傾斜面13を機械加工部43によって適切に形成することができ、フレア傾斜面13に凹凸が生じることを防止できる。
【0046】
また、実施例1では、機械加工工程の後工程として、機械加工部43の先端43aの外周角部を面取り処理し、先端43aを先細り形状としている。このため、フレア加工工程において円筒管40の管端部40aを冷間プレスする際、素管41の端面と周面との境界をなだらかにし、開口10aの周囲を取り囲む開口周縁部12aと、フレア傾斜面13とを滑らかに連続させることができる。これにより、フレア傾斜面13に生じる凹凸を、さらに抑制することができる。
【0047】
さらに、実施例1では、フレア加工工程の前工程として、円筒管40の管端部40aを拡径する拡径処理を施している。ここで、円筒管40の管端部40aに形成された機械加工部43では、素管41が削られているため肉厚寸法が素管41の一般部(機械加工部43以外の部分)よりも薄くなっている。これに対し、一般的に、冷間プレス時に成形部分に圧縮を掛けた際、成形部分の肉厚が薄いと、成形部分を外に膨らませる力が不足し、成形部分が波打ったりうねったりして適切な成形ができないことが分かっている。つまり、機械加工部43は素管41の一般部よりも肉厚が薄くなっているため、フレア加工後のフレア傾斜面13の平面度が出にくい。また、フレア部12が適切な形状でないと、フレアナット3を締め込んだ際に所望の軸力を掛ける前にフレア部12が潰れてしまい、シール機能を発揮でなくなる。しかし、フレア加工工程の前工程として拡径処理を施し、予め管端部40aの径を拡大しておくことで、冷間プレスを行った際、フレア部12を所期の形状に導くことができる。
【0048】
以下、
図7に基づいて、実施例1のフレア継手構造1及び比較例のフレア継手構造におけるシール試験の結果を説明する。
【0049】
このシール試験では、実施例1のフレア継手構造1において、
図7に示す試料1〜試料7のフレア管10を使用し、比較例のフレア継手構造において
図7に示す試料11〜試料13のフレア管を使用した。各フレア継手構造を流れる流体の条件については同一とする。
【0050】
ここで、試料1〜試料7のフレア管10は、フレア傾斜面13が、機械加工が施されて素管41の周面が露出した機械加工部43によって形成されている。一方、試料11〜試料13のフレア管は、フレア傾斜面に機械加工が施されておらず、フレア管の開口周縁部に素管の端面が露出したことで形成されるシール面を有している。
【0051】
このような試料1〜試料7のフレア管10を用いた実施例1のフレア継手構造1では、いずれも液漏れを認めなかった。一方、比較例のフレア継手構造では、一部のフレア管(試料11)を使用した場合に液漏れを生じた。
【0052】
そして、
図7に示すように、試料1〜試料7では、フレア傾斜面13の径方向寸法W(
図4参照)が1.30mm〜1.60mmであり、素管41の外径寸法D(
図4参照)が4.76mm〜4.78mmとなっている。そのため、フレア傾斜面13の径方向寸法Wは、素管41の外径寸法Dに対して、下記式1が成立する大きさに設定されている。すなわち、フレア傾斜面13の径方向寸法Wを下記式1が成立する大きさに設定することで、実施例1のフレア継手構造1ではシール性を確保でき、液漏れの発生を防止することができる。
0.27D ≦ W ≦ 0.34D …式1
【0053】
さらに、
図7に示すように、試料1〜試料7では、フレア傾斜面13の肉厚寸法t(
図4参照)が0.60mm〜0.65mmであり、素管41の肉厚寸法T(
図4参照)が0.70mm〜0.69mmとなっている。そのため、フレア傾斜面13の肉厚寸法tは、素管41の肉厚寸法Tに対して、下記式2が成立する大きさに設定されている。すなわち、フレア傾斜面13の肉厚寸法tを下記式2が成立する大きさに設定することで、実施例1のフレア継手構造1ではシール性を確保でき、液漏れの発生を防止することができる。
0.85T ≦ t ≦ 0.95T …式2
【0054】
以上、本発明のフレア継手構造及びフレア管の製造方法を実施例1に基づいて説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加などは許容される。
【0055】
実施例1では、フレア管10を結合する被結合部材2として、ABSアクチュエータ等の車載機器とし、この被結合部材2の内部に形成した流路21の開口周囲を取り囲むシール面23にフレア管10のフレア部12を突き合わせる例を示した。しかしながら、これに限らない。例えば、
図8に示すように、被結合部材として、端末にダブルフレア部101を形成した第2フレア管100を用いてもよい。この場合、第2フレア管100のダブルフレア部101の内側面101aにフレア管10のフレア部12を突き合わせる。第2フレア管100は、フレアナット3が挿入される雌ナット102に差し込まれ、ダブルフレア部101の背面101bは、雌ナット102の内周面に形成された段差面102aに干渉する。そして、フレアナット3は、ネジ溝32が雌ナット102の内周面に形成されたネジ溝102bに螺合することで締め付けられる。この結果、フレア部12は、フレアナット3の先端3aと第2フレア管100のダブルフレア部101との間に挟み込まれ、フレア管10が被結合部材である第2フレア管100に結合される。
【0056】
また、実施例1では、素管41として二重巻鋼管を用いる例を示した。しかしながら、これに限らず、一重巻鋼管やシームレスパイプ等を用いてもよい。
【0057】
また、実施例1では、フレア管10に成形される円筒管40の管端部40aに機械加工を施して機械加工部43を形成した後、この機械加工部43が形成された管端部40aにフレア加工を実施することで、フレア傾斜面13を機械加工部43で形成する例を示した。しかしながら、フレア傾斜面13が素管41の周面が露出した機械加工部43によって形成されていればよいため、フレア加工を行って円筒管40の管端部40aにフレア部12を形成した後、フレア傾斜面13に機械加工を施すことで、フレア傾斜面13を機械加工部43によって形成するようにしてもよい。