特開2021-81174(P2021-81174A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021081174-真空冷却装置 図000003
  • 特開2021081174-真空冷却装置 図000004
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-81174(P2021-81174A)
(43)【公開日】2021年5月27日
(54)【発明の名称】真空冷却装置
(51)【国際特許分類】
   F25D 7/00 20060101AFI20210430BHJP
   A23L 3/36 20060101ALN20210430BHJP
【FI】
   F25D7/00 A
   A23L3/36 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2020-92793(P2020-92793)
(22)【出願日】2020年5月28日
(31)【優先権主張番号】特願2019-207621(P2019-207621)
(32)【優先日】2019年11月18日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000130651
【氏名又は名称】株式会社サムソン
(72)【発明者】
【氏名】西山 将人
(72)【発明者】
【氏名】明尾 伸基
【テーマコード(参考)】
3L044
4B022
【Fターム(参考)】
3L044AA01
3L044BA05
3L044CA04
3L044DD04
3L044FA08
3L044GA01
3L044HA01
3L044JA01
3L044JA03
3L044KA03
3L044KA04
4B022LB09
4B022LP03
4B022LT06
(57)【要約】      (修正有)
【課題】冷却工程に要する時間の短縮と過冷却の抑制を実現できる真空冷却装置を提供する。
【解決手段】被冷却物を収容する処理槽2と、処理槽2内を減圧する真空発生装置1と、処理槽内の被冷却物温度を計測する温度計測装置4と、処理槽内の圧力を検出する圧力計測装置5と、処理槽内圧力を調節するための外気取込弁10を設けておき、冷却工程時には前記温度計測装置で随時計測している現在品温に基づいて目標品温を定め、目標品温の飽和圧力を目標圧力とし、処理槽内の圧力が随時更新されている目標圧力になるように真空発生装置1と外気取込弁10で圧力制御を行う。また、冷却工程中に外気取込弁10を全閉とした場合は、その時点での品温が弁調整終了品温に達するまでは外気取込弁10を全閉で保持する制御を行い、現在品温が設定しておいた弁調整終了品温以下になると、前記の随時更新される目標圧力を目指す圧力制御に戻す。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
被冷却物を収容する処理槽と、処理槽内の気体を吸引する真空発生装置と、処理槽内の被冷却物温度を計測する温度計測装置と、処理槽内の圧力を検出する圧力計測装置と、処理槽内圧力を調節するための外気取込弁を設けておき、処理槽内を減圧することで処理槽内に収容した被冷却物を冷却する真空冷却装置であって、
冷却工程時には前記温度計測装置で計測した現在品温に基づいて目標品温を定め、目標品温の飽和圧力を目標圧力とし、処理槽内の圧力が目標圧力になるように真空発生装置と外気取込弁で圧力制御を行うようにしており、前記の現在品温の検出は随時更新することで目標圧力を随時更新しながら冷却を行う真空冷却装置において、
冷却工程中に処理槽内圧力調節のために外気取込弁を全閉とした場合は、前記の随時更新する目標圧力を目指す圧力制御から、その時点での現在品温に基づいて弁調整終了品温を定めて、計測した現在品温が弁調整終了品温に達するまでは外気取込弁を全閉で保持する制御に切り換え、現在品温が設定しておいた弁調整終了品温以下になると、前記の随時更新する目標圧力を目指す圧力制御に戻すものであることを特徴とする真空冷却装置。
【請求項2】
請求項1に記載の真空冷却装置において、冷却工程初期であって処理槽内の圧力が高い時期には、検出した現在品温に対して定める目標品温を比較的低くする急冷運転を行い、品温が設定温度まで低下すると現在品温に対して定める目標品温を比較的高くする徐冷運転を行うものであることを特徴とする真空冷却装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載の真空冷却装置において、冷却工程終了に近い時期では前記現在品温が目標品温より低くなって外気取込弁を開く操作を行う場合、外気取込弁を開方向に操作した際の単位時間あたりの外気取込弁開速度を大きくする過冷却抑制運転を行うものであることを特徴とする真空冷却装置。








【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、加熱調理された食品などの被冷却物を処理槽内に収容し、処理槽内を減圧することによって被冷却物内の水分を蒸発させ、蒸発による気化熱によって被冷却物を急速に冷却する真空冷却装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
特開2018−204860号公報に記載があるように、被冷却物を収容している処理槽内の気体を外部へ排気し、処理槽内を減圧することで、処理槽内の圧力を処理槽内に収容している被冷却物の飽和蒸気圧力よりも低下させ、被冷却物内から水分を蒸発させることにより、その気化熱を利用して被冷却物の冷却を図る真空冷却装置が知られている。被冷却物を収容している処理槽内を減圧し、処理槽内での沸点を被冷却物の温度よりも低下させると、被冷却物中の水分が蒸発し、その際に被冷却物から気化熱を奪うため、被冷却物を短時間で冷却することができる。給食センターなどにおいては、加熱調理食品を冷却する際に細菌が繁殖しやすい温度帯をできるだけ早く通過させることが要望されており、真空冷却装置であれば短時間で被冷却物の中心部まで冷却が可能であるために広く用いられている。
【0003】
真空冷却装置には、目標とする被冷却物の冷却温度を設定しておき、処理槽内に収容した被冷却物の温度が目標温度になるまで処理槽内を減圧しての真空冷却を行う。被冷却物の温度検出は、処理槽に被冷却物の温度を検出する温度計測装置を設置しておき、温度計測装置の検温部を被冷却物内に差し込むことで被冷却物の温度を直接検出する。冷却工程では、被冷却物の温度が冷却終了温度になるまで処理槽内の減圧を行い、被冷却物の温度が冷却終了温度以下になると、冷却を終了する。冷却工程終了後は処理槽内へ外気を導入し、処理槽内を大気圧まで復圧してから被冷却物を取り出す。
【0004】
真空冷却装置では、真空ポンプなど処理槽内の空気を排出する真空発生装置を作動させて処理槽内の圧力を低下させるものであり、被冷却物をできるだけ早く冷却するものであるが、真空発生装置の100%の能力で減圧すると減圧速度が速くなり過ぎる場合がある。減圧速度が速すぎた場合は、被冷却物内で水分が激しく沸騰し、被冷却物が液体であれば容器から吹きこぼれたり、固体であれば形状を破壊したりすることがある。そのため、突沸や吹きこぼれが発生しない範囲でできるだけ早く冷却することが望まれており、冷却工程では処理槽内の圧力を調節しながら冷却を行う。
【0005】
真空冷却装置では、検出した被冷却物の現在品温に基づいて目標品温を設定し、目標品温に対応する飽和圧力を目標圧力として処理槽内の実圧力が目標圧力になるように処理槽内の圧力を調節する。処理槽内での減圧速度の調節は、処理槽内へ外気を取り込むための外気取込弁を設置しておき、処理槽内への外気取り込み量を調節することによって行う。真空発生装置では一定の運転量で排気を行っている状態において、外気取込弁による処理槽内への外気取り込み量を調節することで、処理槽内での減圧速度を調節する。
【0006】
外気取込弁による外気取り込み量を少なくすると処理槽内の圧力低下速度は上昇し、外気取り込み量を多くすると圧力低下速度は低下することになり、外気の取り込み量が多ければ処理槽内の実圧力は少し上昇することにもなる。時間経過に伴って低下している目標圧力に対して外気取り込み量を調節しながら圧力制御を行っているため、処理槽内の実圧力は目標圧力に対し、ある程度の制御幅を持って低下していくようになる。このとき、実圧力が高く品温が高い領域では、品温1℃変化での飽和圧力の変化は大きいため、現在品温の変化に対して目標圧力は大きく変化し、実圧力は大きく増減しながら低下していく。しかし、実圧力が低く品温が低くなってきた領域では、品温1℃変化での飽和圧力の変化は小さいため、実圧力の増減幅は小さな状態で低下していくことになる。
【0007】
処理槽内の被冷却物は、処理槽内の実圧力が低下すると品温も低下していくが、品温の低下にはタイムラグがある。実圧力が大きく増減しながら低下している場合、実圧力増減の間隔は大きいために品温低下にタイムラグがあっても品温は順調に低下していく。しかし、実圧力の変化幅が小さな状態で圧力を低下させていく場合、実圧力増減の間隔が小さいために品温低下のタイムラグによって品温が低下する前に実圧力が上昇することがあった。この場合、品温が低下しない品温低下の停滞が発生するため、冷却時間は長くなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2018−204860号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明が解決しようとする課題は、処理槽内を減圧することで処理槽内の被冷却物を冷却する真空冷却装置であって、品温低下の停滞が発生することなく適切な冷却運転を行わせ、従来よりも冷却時間を短くすることのできる真空冷却装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
請求項1に記載の発明は、被冷却物を収容する処理槽と、処理槽内の気体を吸引する真空発生装置と、処理槽内の被冷却物温度を計測する温度計測装置と、処理槽内の圧力を検出する圧力計測装置と、処理槽内圧力を調節するための外気取込弁を設けておき、処理槽内を減圧することで処理槽内に収容した被冷却物を冷却する真空冷却装置であって処理槽内の被冷却物温度を計測する温度計測装置と、処理槽内の圧力を検出する圧力計測装置と、処理槽内圧力を調節するための外気取込弁を設けておき、処理槽内を減圧することで処理槽内に収容した被冷却物を冷却する真空冷却装置であって、冷却工程時には前記温度計測装置で計測した現在品温に基づいて目標品温を定め、目標品温の飽和圧力を目標圧力とし、処理槽内の圧力が目標圧力になるように真空発生装置と外気取込弁で圧力制御を行うようにしており、前記の現在品温の検出は随時更新することで目標圧力を随時更新しながら冷却を行う真空冷却装置において、冷却工程中に処理槽内圧力調節のために外気取込弁を全閉とした場合は、前記の随時更新する目標圧力を目指す圧力制御から、その時点での現在品温に基づいて弁調整終了品温を定めて、計測した現在品温が弁調整終了品温に達するまでは外気取込弁を全閉で保持する制御に切り換え、現在品温が設定しておいた弁調整終了品温以下になると、前記の随時更新する目標圧力を目指す圧力制御に戻すものであることを特徴とする真空冷却装置。
【0011】
請求項2に記載の発明は、前記の真空冷却装置において、冷却工程初期であって処理槽内の圧力が高い時期には、検出した現在品温に対して定める目標品温を比較的低くする急冷運転を行い、品温が設定温度まで低下すると現在品温に対して定める目標品温を比較的高くする徐冷運転を行うものであることを特徴とする。
【0012】
請求項3に記載の発明は、前記の真空冷却装置において、冷却工程終了に近い時期では前記現在品温が目標品温より低くなって外気取込弁を開く操作を行う場合、外気取込弁を開方向に操作した際の単位時間あたりの外気取込弁開速度を大きくする過冷却抑制運転を行うものであることを特徴とする真空冷却装置。
【発明の効果】
【0013】
本発明を実施することにより、突沸や吹きこぼれの発生を防止、過冷却を抑制しながらより早く食品を冷却することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明を実施している真空冷却装置のフロー図
図2】本発明を実施している真空冷却装置の圧力制御のフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の一実施例を図面を用いて説明する。図1は本発明を実施している真空冷却装置のフロー図、図2は本発明を実施している真空冷却装置の圧力制御のフローチャートである。
【0016】
真空冷却装置は、処理槽2と真空を発生するための装置などからなる。真空ポンプ1は真空配管9で処理槽2と接続しており、処理槽2内の気体は真空ポンプ1を作動することで真空配管9を通して排出する。真空配管9の途中には、処理槽2から吸引してきた気体を冷却するための熱交換器8を設けておく。処理槽から吸引している気体は被冷却物内から蒸発させた蒸気を含んでおり、水分は蒸気になると体積が大幅に大きくなる。蒸気をそのまま真空ポンプ1へ送ったのでは、大容積の蒸気を真空ポンプ1で処理しなければならず、それでは真空ポンプ1の効率が悪くなる。そのために真空配管9の途中に熱交換器8を設けており、熱交換器8で吸引気体の冷却を行うことで蒸気を凝縮させ、真空ポンプ1で排出しなければならない気体の体積を縮小している。熱交換器8には冷却用の冷水を供給する冷水ユニット3を接続しており、冷水ユニット3と熱交換器8の間で冷水の循環を行わせるようにしている。熱交換器8で分離した凝縮水は、熱交換器8の下方に設置している凝縮水タンクにためておき、冷却運転終了後に凝縮水タンクから排出する。
【0017】
処理槽2には処理槽内の圧力を計測する圧力計測装置5と、被冷却物7の温度を計測する温度計測装置4を設けておく。圧力計測装置5で計測した処理槽内の圧力と温度計測装置4で計測した被冷却物の温度は、真空冷却装置の運転を制御する運転制御装置6へ出力する。運転制御装置6は、真空ポンプ1や外気取込弁10など、真空冷却装置の各機器を制御することで真空冷却装置の運転を制御する。運転制御装置6では、経過時間や温度計測装置5で計測している被冷却物7の温度、圧力計測装置5で計測している処理槽内圧力などに基づいて各装置を制御する。
【0018】
真空冷却を行う場合、先に冷水ユニット3を作動し、熱交換器8のタンクに冷水を準備しておく。そして処理槽2内に被冷却物7を収容し、処理槽2の扉を閉じて処理槽2内を密閉した状態で真空ポンプ1の作動を行う。真空ポンプ1を作動すると、処理槽2内の空気が真空配管9を通して真空ポンプ1へ送られ、真空ポンプ1から系外へ空気を排出する。真空配管9を通して送られる空気は、熱交換器8を通る際に冷却されて体積を縮小する。特に空気中に蒸気が含まれていた場合、気体を冷却することで凝縮させると体積は大幅に縮小させることができる。
【0019】
冷却工程では、温度計測装置4で検出している被冷却物7の現在品温に基づいて目標品温を算定する。目標品温の算定には、現在品温から目標品温を算定するための値である設定1を定めておき、目標品温=現在品温+設定1として算出する。目標品温は現在品温に等しい温度から現在品温より2℃程度低い温度が適切であるが、被冷却物の形状によって適切な現在品温からの差分は異なる。例えば油分が多くて水分が蒸発しづらいものであれば、目標品温は現在品温からの低下幅を大きめの値にした方がよいなど、特性にあわせる必要があるため、予め試験して適切な値を調べておく。
【0020】
被冷却物を冷却する場合、算定した目標品温となるように制御するのであるが、真空冷却装置の運転は、処理槽内の圧力を制御することで行うものであるため、目標品温から目標圧力を定めるようにしている。目標圧力は、目標品温の飽和圧力に設定する。目標品温が定まればその温度における飽和圧力は一義的に定まるため、目標圧力は目標品温からの換算で求めることができる。温度計測装置では現在品温は随時計測し、目標品温は随時更新していく。目標品温が更新されると目標圧力も更新され、更新された目標圧力を目指して処理槽内の圧力を調節する。目標品温の更新は予め設定されている冷却終了温度になるまで繰り返し更新され、現在品温が冷却終了温度になると冷却工程を終了する。
【0021】
目標圧力が与えられると、現時点での処理槽内圧力の計測値である実圧力と目標圧力を比較し、実圧力が目標圧力より高ければ処理槽内の圧力を低下させる操作を行い、逆に実圧力が目標圧力より低ければ処理槽内の圧力を戻す操作を行うことによる圧力調節を行う。圧力調節は、真空ポンプ1では一定の能力で運転を行っている状態で、外気取込弁10の開度を調節することで行う。外気取込弁の開度を小さくして処理槽2内へ入る外気量を少なくしておくと、処理槽2内圧力の低下速度は大きくなり、外気取込弁の開度を大きくして処理槽2内へ入る外気量を多くすると処理槽2内の圧力低下速度は小さくなる。また、真空ポンプ1で吸引する排気量よりも外気取込弁で取り込む外気量が多ければ、処理槽2内の圧力は上昇することになる。実圧力が目標圧力に等しい場合には外気取込弁10の開度は変更しない。
【0022】
設定1は−2℃と定めておいた場合、現在品温より常に2℃低い目標品温を目指した運転が行われ、現在品温が低下すると目標品温及び目標圧力も低下していくため、現在品温は低下し続けることになる。しかしこの場合においては、ある程度冷却が進むと品温低下が停滞する事態となることがあった。品温低下の停滞が発生すると、品温が冷却終了温度まで低下するのに要する時間が長くなる。
【0023】
そこで品温低下の停滞を防止する制御として、外気取込弁10が全閉になった場合には、より長い時間全閉を維持することで実圧力が目標圧力より低くなる時間を長くする制御を行う。具体的には、外気取込弁10を全閉とした場合は、現在品温が全閉となった時点の温度より設定2だけ低い品温(弁調整終了品温)となるまで外気取込弁10の全閉を維持する。現在品温が弁調整終了品温になるまでは外気取込弁10を全閉としておき、弁調整終了品温に到達すると本来の現在品温+設定1を目標品温に設定して圧力調節を行う制御に戻るようにする。
【0024】
図2は上記制御のフローチャートであり、図2のフローチャートに基づいて説明する。フローチャートでは、ST1で現在品温と設定1の値から目標品温を設定し、ST2で目標品温の飽和圧力から目標圧力を設定する。ST3のAは、外気取込弁10の開度であり、前回の外気取込弁の開度が基準となる。次のST4では、ST2で定めた目標圧力と圧力計測装置5で計測した処理槽内の実圧力を比較し、実圧力が目標圧力より高い場合はST6へ、そうでない場合はST5へ分岐する。ST5では、更に実圧力が目標圧力と等しいかを確認し、実圧力が目標圧力に等しい場合はST8へ、そうでない場合つまり実圧力が目標圧力より低い場合はST7に移行する。
【0025】
実圧力が目標圧力よりも高いことでST6を実行することなった場合、処理槽内の圧力を低下する必要があるため、外気取込弁10の開度を閉方向に調節し、処理槽2内への外気取り込み量を減少させることで処理槽2内の圧力を下げる操作を行う。逆に実圧力が目標圧力よりも低くなることでST7となった場合、処理槽内の圧力が低下しすぎているものであるため、外気取込弁10の開度を開方向に調節し、処理槽2内への外気取り込み量を増加することで減圧速度を低下させ、さらには下がりすぎていた処理槽2内の圧力を上げる操作を行う。実圧力が目標圧力に等しい場合には、外気取込弁10の開度変更は行わない。
【0026】
次のST8では、外気取込弁10の開度によって分岐する。外気取込弁10が全閉となっていた場合はST9に移行し、ST9で弁調整終了品温を現在品温から設定2低い値に定める。
【0027】
次のST10では、弁調整終了品温と現在品温を比較し、現在品温が弁調整終了品温より高い場合は、現在品温が弁調整終了品温以下になるまで外気取込弁10を全閉としたままで継続する。現在品温が弁調整終了品温以下になった場合は、ST11で弁調整制御を終了することで、外気取込弁10の開度は変更することができる状態に戻す。
【0028】
この弁調整制御では、現在品温が弁調整終了品温以下になるまでは外気取込弁10を全閉とするものであり、外気取込弁10を全閉としておくことで処理槽2内の圧力は低下し、品温は低下することになる。そのため、品温低下が停滞することを防止することができる。
【0029】
外気取込弁10を全閉とするのは、処理槽内の圧力が低くなることで圧力が下がりにくくなっている状態であり、この時期は品温低下の停滞が発生しやすい時期に重なる。外気取込弁10が全閉となったタイミングで、外気取込弁10を全閉で保持する弁調整制御を行い、品温が設定2の分だけ低下するまでは外気取込弁の全閉を継続することで、品温低下の停滞を防止でき、品温を順調に低下させていくことができる。
【0030】
また、冷却工程初期であって処理槽内の圧力が高い時期には、検出した現在品温に対して定める目標品温を比較的低くする急冷運転を行い、品温が設定温度まで低下すると現在品温に対して定める目標品温を比較的高くする徐冷運転を行うことで、突沸を抑えつつ冷却運転に要する時間を短くすることができる。被冷却物内の水分による沸騰が発生する前の時間帯であれば、急速に減圧しても被冷却物の形状などに影響はないため、その間は急冷運転することで冷却工程時間を短縮することができる。
【0031】
そして、冷却工程での圧力制御では、外気取込弁10を開方向に操作することで減圧能力を低下させて処理槽内の圧力を上昇させ、外気取込弁10を閉じる方向に操作することで減圧能力を増加させて処理槽内の圧力を低下させている。その際、外気取込弁10を閉じる方向に行う操作量と、外気取込弁10を開く方向に行う操作量は異ならせておくことも好適である。高真空状態にある場合は、外気取込弁10の開度を少し拡大するだけでも処理槽内の圧力はすぐに上昇するのに対し、処理槽内の圧力を低下させようとした場合には、外気取込弁10の開度を少し閉じてもなかなか処理槽内の圧力は低下しない。そのため外気取込弁10を開く場合の操作量は小さくし、外気取込弁10を閉じる場合の操作量は大きくように重みづけを行っておくと、より適正な圧力制御を行うことができる。
【0032】
なお、外気取込弁10の単位時間あたりの開度(開くスピード)については、冷却工程終了に近い時期には、外気取込弁10を開方向に操作した際の単位時間あたりの開度を大きくすることによって、処理槽内の圧力上昇を早めている。現在の品温と冷却終了温度の差が所定温度以下になった冷却工程終盤では、過冷却が問題となってくる。処理槽内圧力が上昇しても品温が上がることはなく、圧力上昇時間を速めることで品温が目標品温から下がりすぎることを抑制でき、過冷却を抑制することができる。
【0033】
なお、本発明は以上説明した実施例に限定されるものではなく、多くの変形が本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により可能である。
【符号の説明】
【0034】
1 真空ポンプ
2 処理槽
3 冷水ユニット
4 温度計測装置
5 圧力計測装置
6 運転制御装置
7 被冷却物
8 熱交換器
9 真空配管
10 外気取込弁
図1
図2