【解決手段】地震発生に基づいて電力の供給を遮断する感震コンセントは、加速度センサと、加速度センサが出力する信号の時系列のデータに基づいて、地震発生を判断する手段と、地震発生が判断された後に、電力の供給を遮断する手段と、地震発生後に再送電が行われた時には、入力があるまで電力の供給を遮断した状態を継続させる手段と、電力の供給を遮断した状態において入力があったとき、電力の供給を開始させる手段と、地震発生を判定するモードを、複数のモードの中から切り替え可能な手段とを備える。
【発明を実施するための形態】
【0008】
図1は、本発明の実施の形態の1つにおける感震コンセントの構成を示すブロック図である。
【0009】
感震コンセントは、地震発生時、または地震発生後に、コンセントの電力供給を遮断(電力供給をオフにする)することで、地震による火災を防いだり、地震後(停電後)に再送電を行うときの火災(再送電火災)を防ぐ目的で使用される。また、感震コンセントは、内部に温度センサを備えており、コンセントの温度が所定温度以上に上昇した時にも、コンセントの電力出力を停止することで、温度上昇に伴う火災を防止する。
【0010】
図1を参照して、感震コンセントは、商用電源(例えば単相交流100ボルト)を入力し、それを端子(差込口)に送って出力するか、あるいは電力の供給を遮断するかを制御するリレー200と、商用電源から駆動電力を得て、リレー200のオン/オフを制御する制御部100とから構成される。
【0011】
制御部100は、商用電源を、マイコンを駆動するための電圧(例えば3.3V)に降圧させる電源回路102と、マイコン(CPU、プログラムを記録する不揮発性メモリ、ワーキングエリアを構成する揮発性メモリ、I/Oを含む。)を有した制御回路103と、ブザーの機能を果たす圧電サウンダ104と、アナログ出力を行う3軸加速度センサ105と、コンセント内部の温度を測定する温度センサ106とを備えている。
【0012】
制御回路103には、ユーザインタフェースとして、利用者が押下可能なリセットボタン121と、テストボタン122とが接続されている。これらは、押しボタンであり、誤って指などで触れてオンとならないように、先の細いドライバなどでのみ押下可能な形状、構成とされている。
【0013】
また、制御回路100には、ユーザインタフェースとして、利用者が目視可能な、正常状態を示す緑LED(正常ランプ)123と、異常状態を示す赤LED(異常ランプ)124とが接続されている。
【0014】
図示しないブレーカーがオンとされ、商用電源が感震コンセントに供給されると、正常ランプ123と異常ランプ124が交互に点滅することで、利用者に注意喚起を行う(初期状態)。この状態では、差込口はオフ状態であり、電源は差込口に供給されない(リレー200がオフとされるように、制御回路103はリレー200を制御する)。
【0015】
この状態で利用者がリセットボタン121を短押し(1秒程度)すると、制御回路103はそれを検知し、正常ランプ123のみを点灯状態とする。また、リレー200がオンとされるように、制御回路103はリレー200を制御する。これにより、差込口はオン状態となる。また、標準モード(震度5強相当の揺れでリレー200がオフとされるように、制御回路103がリレー200を制御するモード)での感知状態となる。
【0016】
拡張モード(震度4相当の揺れでリレー200がオフとされるように、制御回路103がリレー200を制御するモード)で使用する場合には、利用者は後述する切替設定を行う。
【0017】
制御回路103が地震の揺れ(標準モードであれば震度5強相当の揺れ、拡張モードであれば震度4相当の揺れ)を検出すると、または、差込プラグの異常発熱を検知すると、制御回路103は、リレー200をオフとする。これにより、コンセントからの電力出力が遮断される。同時に、制御回路103は、圧電サウンダ104を用いて警告音を出力し、異常ランプを点滅させる。
【0018】
異常原因が取り除かれ、安全が確認されると、利用者はリセットボタン121を押下する。制御回路103はそれを検知し、正常ランプ123のみを点灯状態とする。また、リレー200がオンとされるように、制御回路103はリレー200を制御する。これにより、差込口はオン状態となる。また、モードに応じた感知状態となる。
【0019】
停電が発生した場合について説明する。停電(またはブレーカーのオフ)が発生すると、コンセントに電源が供給されない。モードに応じた感知動作は停止する。停電から復帰すると(またはブレーカーがオンとなると)、コンセントは初期状態に戻る。すなわち、正常ランプと異常ランプが交互に点滅することで、利用者に注意喚起を行う。この状態では、差込口はオフ状態であり、電源は差込口に供給されない(リレー200がオフとされるように、制御回路103はリレー200を制御する)。この状態で安全が確認され、利用者がリセットボタンを短押し(1秒程度)すると、制御回路103はそれを検知し、正常ランプ123のみを点灯状態とする。また、リレー200がオンとされるように、制御回路103はリレー200を制御する。これにより、差込口はオン状態となる。
【0020】
なお、利用者はテストボタン122を押下することで、感知動作が正常に働くかを確認することができる。
【0021】
地震発生後に、感震コンセントへの電力供給が停止され(停電)、その後再度商用電源が感震コンセントに供給されると、正常ランプ123と異常ランプ124が交互に点滅することで、利用者に注意喚起を行う初期状態に戻る。この状態では、差込口はオフ状態であり、電源は差込口に供給されない(リレー200がオフとされるように、制御回路103はリレー200を制御する)。利用者は安全確認をした後、リセットボタン121を短押し(1秒程度)することで、リレー200がオンとなり、電力がコンセントから出力される状態となる。これにより、再送電火災を防止することができる。
【0022】
次に、標準モードと拡張モードとの切替方法について説明する。
【0023】
初期状態において、利用者がリセットボタン121を所定時間以上押し続けると、制御回路103はそれを検知し、異常ランプ124の点滅を開始させる。1〜4回の点滅中か点滅後にリセットボタン121が離されると、正常ランプ123が点灯する。これにより、拡張モード(震度4相当)がセットされ、拡張モードでの感知状態となる。なお、感知状態においてリセットボタン121が押されると、初期状態に戻る。
【0024】
地震が発生したときに、建物の高層階では低層階に比べて揺れが長周期となり、下層階の震度4が高層階の震度5強程度となる。従って、コンセントの設定として、建物の高層階では拡張モードをセットし、低層階では標準モードをセットすることで、正確な地震検知を行うことができる。
【0025】
なお、本実施の形態では2段階のモード切替としたが、さらに多段階のモード切替ができるように装置を構成してもよい。
【0026】
また、建物によっても揺れが異なるので、建物の種類に応じたモードを設定可能としてもよい。
【0027】
地震発生が検出されて直ぐにリレー200をオフにすると、例えば夜中であるにもかかわらず照明装置が消えてしまい、避難が困難になる可能性がある。そこで、地震発生が検出されて直ぐにリレー200をオフにするのではなく、地震発生が検出されてから所定時間(数分)経過したときにリレー200がオフとなるように、制御回路103を設計することが好ましい。タイマー回路を制御回路103に設けるものである。
【0028】
なお、トラック(重い車両)が近くを通ったときなどの揺れを地震と誤検出することは避けるべきである。本実施の形態では、制御回路103は、アナログ出力3軸加速度センサ105の3軸それぞれの情報を用い、揺れが地震によるものであるか、それ以外の要因によるものかを判定し、揺れが地震によるものである場合にのみ、リレー200のオフを行う。
【0029】
揺れが地震によるものであるか、それ以外の要因によるものかを判定については、学習済みのニューラルネットワークを用いることができる。すなわち、アナログ出力3軸加速度センサ105の3軸それぞれの値の時間変化(時系列データ)をニューラルネットワークに入力し、揺れが地震によるものであるか、それ以外の要因によるものかを出力させるものである。
【0030】
ニューラルネットワークの学習においては、教師データとして過去に起こった地震の3軸加速度の時系列データを用い、そのデータが入力されたときに地震であると判断するようにニューラルネットワークの学習を行う。また、教師データとして過去に起こった地震以外の揺れの3軸加速度の時系列データを用い、そのデータが入力されたときに地震ではないと判断するようにニューラルネットワークの学習を行う。これら教師データは、多数のデータが教師データとして用いられる。
【0031】
なお、
図1の感震コンセントのアナログ出力3軸加速度センサ105から得られた、その設置場所での揺れの3軸加速度の時系列データについて、その揺れが地震以外のものであった場合には、その揺れは地震ではないことを利用者の入力によって学習させてもよい(設置場所特有の状況の学習)。
【0032】
また、アナログ出力3軸加速度センサ105の3軸それぞれの値の時間変化について、地震特有のパターンであるか、それ以外のパターンであるかのマッチングを行うことで、揺れが地震によるものであるか、それ以外の要因によるものかを判定してもよい。
【0033】
または、単にアナログ出力3軸加速度センサ105の3軸それぞれの加速度出力をしきい値と比較することで、揺れが地震によるものであるか、それ以外の要因によるものかを判定してもよい。
【0034】
制御回路103に、WIFI、3G、5Gなどの通信機能を設けてもよい。これにより、地震か否かの判定を、外部サーバで行うこととしてもよい。すなわち、アナログ出力3軸加速度センサ105の出力値を外部サーバに送信し、その判定結果を制御回路105が受信することで、地震であるか否かの判断を行うものである。外部サーバでは、複数の感震コンセントから送られてきた情報に基づいて判定を行うことができるため、地震の判定処理の精度が向上する。
【0035】
また、地震時またはそれ以外の時の複数個所の感震コンセントから送られてきた情報を外部サーバで記録することができるため、地震の揺れデータなどを効率よく取得することができる。このようなデータは、将来の地震の判定や予測に有効に用いることができる。地震波の経時的な伝わり方のデータとしても活用できる。
【0036】
もちろん、地震が起きていない平常時の複数個所の感震コンセントから送られてきた情報を外部サーバで記録することで、地震ではない揺れデータも効率よく取得することができる。このようなデータも、将来の地震の判定や予測に有効に用いることができる。
【0037】
また、外部サーバで複数個所の感震コンセントを一元管理し、地震の発生が検知されたときには、対象エリア内の複数の感震コンセントを一斉にオフするよう、外部サーバから信号を送ってもよい。
【0038】
外部サーバは、別途外部から提供される緊急地震速報のデータなどを用いて感震コンセントごとに(位置ごとに)地震の判定を行ってもよい。各感震コンセントの位置は、感震コンセントにGPS機能を持たせるによって取得し、その情報を外部サーバに送信することとしてもよいし、それ以外の位置特定方法によって位置情報を取得し、その情報を外部サーバに送信してもよい。
【0039】
また、利用者が自分の携帯端末やコンピュータから、外部サーバに送られた自宅の感震コンセントで得られたデータ(揺れの波形など)を見ることができるようにしてもよい。また、地震の発生が検知されたときには、利用者の携帯端末やコンピュータに地震の発生と状況を、外部サーバまたは感震コンセントから送信してもよい。
【0040】
また、地震の発生が検知されたときには、地震波の到達前に、感震コンセントに情報を送信し、警告を音声などで出力することとしてもよい。地震波の到達前に、感震コンセントによる電力の出力を停止させることとしてもよい。
【0041】
設置された感震コンセントで得られる揺れデータをもとに、適切なモードが自動で設定されてもよい。または、地震判定のしきい値が自動で設定されてもよい。
【0042】
図2は、本発明の実施の形態の1つにおける感震コンセントのマイコンなどの動作を示すフローチャートである。
【0043】
図を参照して、ステップS101において、利用者は検知する地震震度のしきい値(モード)を設定する。
【0044】
ステップS103において、アナログ出力3軸加速度センサ105の出力、および温度センサ106の出力を制御回路103に入力する。制御回路103は、それらデータを外部サーバに送信する。
【0045】
ステップS105において、(所定の震度以上の)地震発生、テストボタン押下、温度の所定値を超えた上昇のいずれかが生じたときに、ステップS107へ移行する。いずれも生じていないのであれば、ステップS103からの処理を繰り返す。
【0046】
ステップS107において、所定時間(数分間)の計時を開始する。ステップS109で所定時間が経過したのであれば、ステップS111でリレー200をオフにする。
【0047】
上述の実施の形態、およびそれに含まれる要素(一部の構成、一部の処理)を組み合わせたり、入替えたりすることで新たな別の実施の形態とすることもできる。
【0048】
上述の実施の形態における処理は、ソフトウェアにより行っても、ハードウェア回路を用いて行ってもよい。また、上述の実施の形態における処理を実行するプログラムを提供することもできるし、そのプログラムをCD−ROM、フレキシブルディスク、ハードディスク、ROM、RAM、メモリカードなどの記録媒体に記録してユーザーに提供することにしてもよい。プログラムは、CPUなどのコンピューターにより実行される。また、プログラムはインターネットなどの通信回線を介して、装置にダウンロードするようにしてもよい。
【0049】
上記実施の形態は、すべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。本発明の範囲は上記した説明ではなくて特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。