(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-83223(P2021-83223A)
(43)【公開日】2021年5月27日
(54)【発明の名称】永久磁石式モータの回転子構造
(51)【国際特許分類】
H02K 1/27 20060101AFI20210430BHJP
【FI】
H02K1/27 501A
H02K1/27 501K
【審査請求】有
【請求項の数】8
【出願形態】OL
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2019-208888(P2019-208888)
(22)【出願日】2019年11月19日
(71)【出願人】
【識別番号】514150181
【氏名又は名称】大銀微系統股▲分▼有限公司
【氏名又は名称原語表記】HIWIN MIKROSYSTEM CORP.
(74)【代理人】
【識別番号】110001139
【氏名又は名称】SK特許業務法人
(74)【代理人】
【識別番号】100130328
【弁理士】
【氏名又は名称】奥野 彰彦
(74)【代理人】
【識別番号】100130672
【弁理士】
【氏名又は名称】伊藤 寛之
(72)【発明者】
【氏名】潘承訓
(72)【発明者】
【氏名】紀政徳
(72)【発明者】
【氏名】蕭瑞濱
【テーマコード(参考)】
5H622
【Fターム(参考)】
5H622AA03
5H622CA02
5H622CA05
5H622CA10
5H622CB02
5H622CB03
5H622CB05
(57)【要約】 (修正有)
【課題】モータのトルクを増大させ、漏れ磁束を減少すると共に鉄損を低減できる永久磁石式モータの回転子構造を提供する。
【解決手段】環状本体21を備え、複数の第1スロット22は、それぞれ互いに間隔を空けて前記本体の半径方向に沿って前記本体に放射状に配置され、複数の第2スロット23がそれぞれ隣接する各前記第1スロットの間に介在し、前記本体の円周方向に配置される回転子と、各前記第1スロット内に嵌設された複数の第1磁石30と、各前記第2スロット内に嵌設された複数の第2磁石40と、を含む永久磁石式モータの回転子構造であって、各前記第2磁石の前記本体の曲率中心から離れた側と前記本体の外周縁間の距離α、及び前記本体の内径と外径間の差βは、前記距離/前記径差の比を0.43〜0.48の範囲にさせる、永久磁石式モータの回転子構造。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状本体を備え、複数の第1スロットは、それぞれ互いに間隔を空けて前記本体の半径方向に沿って前記本体に放射状に配置され、複数の第2スロットがそれぞれ隣接する各前記第1スロットの間に介在し、前記本体の円周方向に配置される回転子と、
各前記第1スロット内に嵌設された複数の第1磁石と、
各前記第2スロット内に嵌設された複数の第2磁石と、
を含む永久磁石式モータの回転子構造であって、
各前記第2磁石の前記本体の曲率中心から離れた側と前記本体の外周縁間の距離、及び前記本体の内径と外径間の差は、前記距離/前記径差の比を0.43〜0.48の範囲にさせる、永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項2】
前記距離/前記径差の比は、0.44〜0.46の範囲である、請求項1に記載の永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項3】
各前記第1磁石及び各前記第2磁石は、いずれも矩形を呈し、各前記第1磁石の長軸を前記本体の半径方向に平行させ、各前記第2磁石の長軸を前記本体の半径方向に垂直させる、請求項1又は2に記載の永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項4】
各前記第2磁石の磁気強度は、各前記第1磁石の磁気強度より小さい、請求項1、2又は3に記載の永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項5】
各前記第2スロットは、前記第2磁石と同じ矩形形状を有する、請求項3に記載の永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項6】
前記回転子は、各前記第2スロットの短軸一側の両端にそれぞれ凹設され、各前記第2スロットの長軸に垂直する複数の凹み部を更に含む、請求項5に記載の永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項7】
各前記第1スロットは、それぞれ前記本体の外周面から内向きに延び、長さが各前記第1磁石の矩形形状より長くなるようにする、請求項3に記載の永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項8】
前記回転子は、各前記第1スロットの延出端にそれぞれ突設され、前記本体の半径方向に沿って外方に延伸する複数の支持体を更に含み、かつ各前記支持体の延伸長さが各前記第1スロットの長さと各前記第1磁石の長さの差より短い、請求項7に記載の永久磁石式モータの回転子構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、モータに関し、特に、永久磁石式モータの回転子構造に関する。
【背景技術】
【0002】
電磁技術を用いたモータ装置の技術開発は成熟しているが、その性能を強化し、エネルギー消費を低減する方法の開発が続けられ、その中でハルバッハ(Halfback)型配列は、20世紀Klaus Halback氏が発明して以来、その特殊な磁石配列方式が従来の磁石配列方式に比べ、モータのコギングトルク及びリップルトルク影響の発生を大幅に低減でき、モータの振動及び騒音の問題をさらに改善し、かつ自己磁気シールド特性もモータの漏れ磁束現象を低減することができ、モータの外部環境に対する電磁干渉等も減らすことができ、均しくモータの性能を高めるために使用できることが明らかである。
【0003】
しかしながら、ハルバッハ型配列に関する研究は、公開された先行技術ではまだ比較的不足している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
これにより、本発明の主な目的は、モータのトルクを増大させ、漏れ磁束を減少すると共に鉄損を低減できる永久磁石式モータの回転子構造を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するため、本発明に係る永久磁石式モータの回転子構造は、環状回転子内のハルバッハ型配列で配置された磁石を平行配列の磁石と回転子外周縁の距離、及び環状回転子の内外径差の範囲にさせ、その距離/内外径差の比が0.43〜0.48の範囲であることを主な技術的特徴とする。
【0006】
前記距離/内外径差の比は、0.44〜0.46の範囲であることが好ましい。
【0007】
ハルバッハ型配列内の平行配列磁石の強度は、ハルバッハ型配列内の半径方向に配列磁石の強度よりも小さい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図2】本発明の好ましい実施形態の
図1内の部位Aの部分拡大図である。
【
図3】本発明の好ましい実施形態における異なるα/β値のトルク、鉄損及びコギングの曲線図である。
【
図4】本発明の好ましい実施形態におけるα/β値が0.45の場合の磁束密度図である。
【
図5】本発明の好ましい実施形態におけるα/β値が0.45の場合の磁路図である。
【
図6】本発明の好ましい実施形態におけるα/β値が0.48の場合の磁束密度図である。
【
図7】本発明の好ましい実施形態と従来技術の漏れ磁束比較図である。
【
図8】本発明の好ましい実施形態と従来技術の性能比較図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
まず、
図1及び
図2を参照すると、本発明の好ましい実施形態で提供される永久磁石式モータの回転子構造10は、主に回転子20と複数の第1磁石30と複数の第2磁石40と、を含む。
【0010】
前記回転子20は、環状を呈する本体21を備え、断面が矩形を呈する複数の第1スロット22が前記本体21外周縁から内側へ本体21の半径方向に沿って第1の長さL1延び、断面が矩形を呈する複数の第2スロット23が各々前記本体21の内に設けられ、隣接する2つの第1スロット22の間に介在し、かつ各前記第2スロット23の長軸が本体の半径方向に垂直であるため、各前記第1スロット22及び各前記第2スロット23は前記本体21において十字交差配置状態を形成し;
また、前記回転子20は、各々各前記第1スロット22の延出端に突設された複数の片状支持体24を更に含む。前記本体21の半径方向に沿って各第1スロット22の開口部方向に向かって前記第1の長さより短い第2の長さL2延び、複数の凹み部25は各前記第2スロット23の長軸両端の短軸一側にある隅角部にそれぞれ凹設され、また各前記第2スロット23の長軸に垂直である。
【0011】
各前記第1磁石30は、各々矩形ブロック状を呈し、各前記第1スロット22内に挿設され、長軸の一端を対応する支持体24の延出端に当接させ、並びに各前記第1磁石30の長さを前記第1の長さ(L1)と前記第2の長さL2の差より短くさせることで、各前記第1磁石30の長軸の他端が各前記第1スロット22の開口部内側に収め、前記本体21の外周側に突出していない。
【0012】
各前記第2磁石40は、各々矩形ブロック状を呈し、磁気強度が各前記第1磁石30の磁気強度よりも小さく、各前記第2スロット23内に各々嵌め込まれ、各前記第2磁石40の矩形形状を各前記第2スロット23の矩形形状と同一にさせることで、各前記第2磁石40が各前記第2スロット23内に安定して嵌め込まれる。
【0013】
各前記第1磁石30及び各前記第2磁石40は、ハルバッハ型配列に配置され、放射状に配置された各前記第1磁石30が半径方向配列であり、前記本体21の円周方向に沿って配置された各前記第2磁石40が平行配列である。さらに、平行配列において、各前記第2磁石40が短軸方向において前記本体21の曲率中心から離れた端と前記本体21の外周面間の距離α、及び前記本体21内径と外径の差βの二者間には一定の比例関係が存在する。
図3に示すよう、前記距離α/前記内外径差βの値が0.43〜0.48の範囲であり、トルクTの増大、鉄損CL及びコギングCGの低減効果を持つ。その最適な比率はニーズに応じて異なるが、一般的に0.44〜0.46範囲の比はより好ましい。ただし、これに限定されず、例えばトルク増大を目的とする時、前記α/β値は0.45であることが好ましく、この際の磁束密度及び磁路図は
図4及び
図5に示す通りである。ただし、コギングの低減を目的とする時、α/β値は0.48であることが好ましく、この際の磁束密度が
図6に示す通りである。
【0014】
さらに効果の観点から、
図7及び
図8の比較図を参照すると、この2つの図内において、実線で本発明を示し、破線で従来技術を示し、
図7の漏れ磁束比較図からも分かるように、前記永久磁石式モータの回転子構造10は、漏れ磁束の抑止効果において、従来技術に比べても顕著な効果を有し、モータの出力及び効率をアップできる。また
図8の性能比較図でも前記永久磁石式モータの回転子構造(10)は従来技術よりも優れた性能を有すことを証明できる。したがって、本発明で提供する技術は、従来技術に対比して、モータトルクの増大、漏れ磁束の減少及び鉄損低減の効果を大幅に向上できることを証明できる。
【符号の説明】
【0015】
10 永久磁石式モータの回転子構造
20 回転子
21 本体
22 第1スロット
23 第2スロット
24 支持体
25 凹み部
30 第1磁石
40 第2磁石
CL 鉄損
CG コギング
L1 第1の長さ
L2 第2の長さ
T トルク
α 距離
β 径差
【手続補正書】
【提出日】2021年2月26日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
環状本体を備え、複数の第1スロットは、それぞれ互いに間隔を空けて前記本体の半径方向に沿って前記本体に放射状に配置され、複数の第2スロットがそれぞれ隣接する各前記第1スロットの間に介在し、前記本体の円周方向に配置される回転子と、
各前記第1スロット内に嵌設された複数の第1磁石と、
各前記第2スロット内に嵌設された複数の第2磁石と、
を含む永久磁石式モータの回転子構造であって、
各前記第2磁石の前記本体の曲率中心から離れた側と前記本体の外周縁間の距離、及び前記本体の内径と外径間の差は、前記距離/前記径差の比が0.43〜0.48である、永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項2】
前記距離/前記径差の比は、0.44〜0.46である、請求項1に記載の永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項3】
各前記第1磁石及び各前記第2磁石は、いずれも矩形を呈し、各前記第1磁石の長軸が前記本体の半径方向に平行であり、各前記第2磁石の長軸が前記本体の半径方向に垂直である、請求項1又は2に記載の永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項4】
各前記第2磁石の磁気強度は、各前記第1磁石の磁気強度より小さい、請求項1、2又は3に記載の永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項5】
各前記第2スロットは、前記第2磁石と同じ矩形形状を有する、請求項3に記載の永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項6】
前記回転子は、各前記第2スロットの短軸一側の両端にそれぞれ凹設され、各前記第2スロットの長軸に垂直する複数の凹み部を更に含む、請求項5に記載の永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項7】
各前記第1スロットは、それぞれ前記本体の外周面から内向きに延び、長さが各前記第1磁石の矩形形状より長い、請求項3に記載の永久磁石式モータの回転子構造。
【請求項8】
前記回転子は、各前記第1スロットの延出端にそれぞれ突設され、前記本体の半径方向に沿って外方に延伸する複数の支持体を更に含み、かつ各前記支持体の延伸長さが各前記第1スロットの長さと各前記第1磁石の長さの差より短い、請求項7に記載の永久磁石式モータの回転子構造。