【解決手段】タマリンドガムを含む冷菓であって、タマリンドガムの含有量が、冷菓に対して、0.5〜1.0質量%であり、オーバーランが50〜110%である、冷菓。タマリンドガムを含む冷菓ミックスに、冷菓のオーバーランが50〜110%になるように、空気を混入させる工程を含み、タマリンドガムの含有量が冷菓ミックスに対して0.5〜1.0質量%とする、冷菓の製造方法。
【背景技術】
【0002】
冷菓は、一般的に、乳製品、砂糖、乳化剤等の原料を混合したアイスクリームミックス
を、均質化、フリージング、及び冷凍硬化することによって製造される。冷菓の原料とし
て、追加成分を加えることによって、異なる食感等を与えることができる。例えば、特許
文献1及び2は、タマリンドガムを使用して、冷凍下でゼリー食感を有する冷菓の製造方
法を開示している。
【0003】
冷菓の製造においては、冷菓に所定量の空気を混入させることもあり、空気の混入率は
オーバーランと称される。例えば、特許文献3には、オーバーランが非常に高いことによ
り、食感が軽く、口溶けの良い冷菓が開示されている。また、特許文献4には、オーバー
ランを調節することにより、アイスクリーム表面の凹凸を適切に維持し、これによってア
イスクリーム表面にチョコレート等を被覆しやすくできることが開示されている。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<冷菓>
本発明の一実施形態は、タマリンドガムを含む冷菓であって、前記タマリンドガムの含
有量が、前記冷菓に対して、0.5〜1.0質量%であり、オーバーランが50〜110
%である、前記冷菓に関する。
【0012】
タマリンドガムとオーバーランとを前記数値範囲を満たすように組み合わせることによ
って、新たな食感を有する冷菓を提供することができる。本実施形態に係る冷菓が有する
新たな食感は、様々な感覚(例えば、マシュマロ感、チューイング感)から特定すること
ができる。これらの感覚は、新たな食感を異なる観点から別々に評価したものである。新
たな食感は、前記の様々な感覚が統合されて生じた、従来の冷菓とは大きく異なる食感で
ある。
【0013】
本明細書における「チューイング感」とは、ソフトキャンディのように弾力性があって
噛みごたえが良い食感を意味する。
【0014】
本実施形態に係る冷菓は、新たな食感に加えて、濃厚感にも優れる。本明細書における
「濃厚感」とは、バニラの香り、ミルク感、甘さ、及び脂肪感の総合的な感覚を意味する
。「濃厚感の持続」とは、前記濃厚感が口中や鼻腔において認識できる状態が持続するこ
とを意味する。「ミルク感」とは、ミルクの香り及び味を意味する。「脂肪感」とは、ク
リーミーな食感及び油脂のうま味を意味する。
【0015】
本明細書における「マシュマロ感」とは、マシュマロに似た食感を意味し、具体的な食
感としては、例えば、反発感、ふわふわ感を挙げることができる。
【0016】
本明細書における「冷菓」は、アイスクリーム類、氷菓等の冷凍下で保管する菓子であ
り、プリン等のチルド温度帯で保管する菓子は含まない。
アイスクリーム類には、アイスクリーム、アイスミルク、及びラクトアイスが包含され
る。本明細書における「アイスクリーム類」、「アイスクリーム」、「アイスミルク」、
及び「ラクトアイス」は、「乳及び乳製品の成分規格等に関する省令」(平成30年8月
8日厚生労働省令第106号)における定めに従う。
【0017】
具体的には、アイスクリーム類は、乳又はこれらを原料として製造した食品を加工し、
又は主要原料としたものを凍結させたものであつて、乳固形分3.0%以上を含むもの(
発酵乳を除く。)である。
アイスクリームは、乳固形分が15.0%以上であって、乳脂肪分が8.0%以上のも
のである。
アイスミルクは、乳固形分が10.0%以上であって、乳脂肪分が3.0%以上のもの
(アイスクリームを除く。)である。
ラクトアイスは、乳固形分が3.0%以上のもの(アイスクリーム及びアイスミルクを
除く。)である。
【0018】
氷菓は、糖液若しくはこれに他食品を混和した液体を凍結したもの、又は、食用氷を粉
砕し、これに糖液若しくは他食品を混和し再凍結したもので、凍結状のまま食用に供する
ものである。
【0019】
冷菓は、タマリンドガムを含む。タマリンドガムとは、マメ科タマリンド属のタマリン
ド(Tamarindus indica)の種子から得られる多糖類である。タマリン
ドガムは、具体的には、タマリンド種子の胚乳部分を温水から熱水、若しくはアルカリ性
水溶液で抽出すること、又は得られた抽出物を酵素処理すること等によって得ることがで
きる。タマリンドガムの商品としては、例えば、ビストップD−2032(三栄源エフ・
エフ・アイ株式会社製)、サンナイスKB191−S(D)(三栄源エフ・エフ・アイ株
式会社製)、ネオソフトTA(太陽化学株式会社製)を挙げることができる。
【0020】
タマリンドガムの含有量は、冷菓に対して、0.5〜1.0質量%であり、好ましくは
0.6〜0.9質量%であり、より好ましくは0.6〜0.8質量%である。タマリンド
ガムの含有量を前記範囲内とすることによって、マシュマロ感、チューイング感等に優れ
た新たな食感を有し、かつ、濃厚感の持続に優れた冷菓とすることができる。
【0021】
冷菓のオーバーランは、50〜110%であり、好ましくは50〜100%であり、よ
り好ましくは60〜80%である。オーバーランを前記範囲内とすることによって、マシ
ュマロ感等に優れた新たな食感を有する冷菓とすることができる。なお、オーバーランが
50%未満の場合及び110%超の場合には目的の品質とすることはできない。
【0022】
オーバーランの値は、原料ミックスの体積に対する含有空気体積の百分率である。例え
ば、オーバーラン100%の冷菓本体は、原料ミックスと同体積の空気が含まれているこ
とを意味する。また、下記の計算式によりオーバーランを求めることができる。
オーバーラン=((体積)×(比重)/(重量)−1)×100
具体的には、容器包装、コーンモナカ等の可食容器、チョコレートコーチングのような
容易に分離可能な食品においては、冷菓と分離し、電子天秤で冷菓の重量を秤量する。さ
らに、比重1.0に調整した溶液に容器から取り出した冷菓を浸漬し、増加した重量を測
定し冷菓の体積とする。比重は、冷菓ミックスの比重を意味し、振動密度計や浮ひょうを
使用して測定する。冷菓と分離不可能な可食部が含まれている場合は、得られた体積と重
量を成分値より推測される比重を勘案してオーバーランを算出する。
【0023】
冷菓は、タマリンドガムに加えて、アイスクリームミックスを含むことが好ましい。ア
イスクリームミックスとしては、特に限定されず、一般的な冷菓で使用されているものを
使用することができる。アイスクリームミックスに含まれる成分としては、例えば、乳タ
ンパク、動物性油脂、甘味料、乳化剤、香料、水を挙げることができる。
【0024】
<冷菓の製造方法>
本発明の一実施形態は、タマリンドガムを含む冷菓ミックスに、オーバーランが50〜
110%になるように、空気を混入させる工程を含み、前記タマリンドガムの含有量が、
前記冷菓ミックスに対して、0.5〜1.0質量%である、冷菓の製造方法に関する。
【0025】
本実施形態におけるタマリンドガムの含有量及びオーバーランの値は、前記<冷菓>の
項目において説明したとおりである。
【0026】
冷菓ミックスとは、冷菓の原料の混合物である。冷菓ミックスとしては、例えば、前記
<冷菓>の項目において説明したアイスクリームミックスを挙げることができる。
【0027】
所定の量のタマリンドガムを含む冷菓ミックスに所定の量の空気を混入させることによ
って、マシュマロ感、チューイング感等に優れた新たな食感を有し、かつ、濃厚感の持続
に優れた冷菓を製造することができる。空気の混入方法としては、例えば、冷菓ミックス
を空気中で撹拌する方法を挙げることができる。空気の混入率(オーバーラン)は、例え
ば、撹拌速度、撹拌時間等を適宜変更することによって調節することができる。
【実施例】
【0028】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明をより詳細に説明するが、本発明の技術的範囲
はこれに限定されるものではない。
【0029】
<冷菓の製造>
表1及び表2に記載の成分を混合し、規定のオーバーランとなるように空気を混入させ
て、サンプル1〜14及び16を製造した。サンプル15は、製造適性が他のサンプルと
比べて劣るため、評価対象に含めなかった。
【0030】
【表1】
【0031】
【表2】
【0032】
各サンプルにおけるタマリンドガム量とオーバーランとの関係を表3に示す。サンプル
4〜12は実施例に該当し、サンプル1〜3及び13〜16は比較例に該当する。
【0033】
【表3】
【0034】
<冷菓の官能評価>
5人の官能評価パネリストがサンプル1〜14及び16について評価した。サンプル3
をコントールとして使用した。
【0035】
(チューイング感)
チューイング感について評価した。評価基準は以下のとおりである。結果を表4及び表
5に示す。
[評価基準]
3点:コントロールよりもチューイング感が顕著に強い
2点:コントロールよりもチューイング感が強い
1点:コントロールよりもチューイング感が少し強い
0点:コントロールとチューイング感が同程度
【0036】
【表4】
【0037】
【表5】
【0038】
タマリンドガムが0.5〜1.5質量%であり、かつ、オーバーランが50〜110%
であるサンプル4〜14は、コントロール(サンプル3)と比較して、チューイング感に
優れていた。特に、タマリンドガムが0.5〜1.0質量%であり、かつ、オーバーラン
が50〜110%であるサンプル4〜12は、より優れたチューイング感を有しており、
噛みごたえが良かった。
【0039】
(濃厚感の持続)
濃厚感の持続について評価した。評価基準は以下のとおりである。結果を表6及び表7
に示す。
[評価基準]
3点:コントロールよりも顕著に濃厚感が持続し余韻が長い
2点:コントロールよりも濃厚感が持続し余韻が長い
1点:コントロールよりも少し濃厚感が持続し余韻が長い
0点:コントロールと同程度の濃厚感の持続及び余韻
【0040】
【表6】
【0041】
【表7】
【0042】
タマリンドガムが0.5〜1.5質量%であり、かつ、オーバーランが50〜110%
であるサンプル4〜14は、コントロール(サンプル3)と比較して、濃厚感の持続に優
れていた。特に、タマリンドガムが0.7質量%であり、かつ、オーバーランが50〜1
10%であるサンプル7〜9は、濃厚感の持続により優れていた。
【0043】
(マシュマロ感)
マシュマロ感について評価した。評価基準は以下のとおりである。結果を表8及び表9
に示す。
[評価基準]
5点:コントロールよりも反発感及びふわふわ感が顕著に強い
4点:コントロールよりも反発感及びふわふわ感が強く、反発感がふわふわ感よりも目立
つ
3点:コントロールよりも反発感及びふわふわ感が強く、ふわふわ感が反発感よりも目立
つ
2点:コントロールよりも反発感及びふわふわ感が少し強い
1点:コントロールと反発感及びふわふわ感が同程度
0点:コントロールと食感に差があるが、対象とする食感ではない
【0044】
【表8】
【0045】
【表9】
【0046】
タマリンドガムが0.5〜1.0質量%であり、かつ、オーバーランが50〜110%
であるサンプル4〜12は、コントロール(サンプル3)と比較して、マシュマロ感に優
れていた。タマリンドガムが0.7質量%であり、かつ、オーバーランが50〜70%で
あるサンプル7及び8、並びにタマリンドガムが1.0質量%であり、かつ、オーバーラ
ンが110%であるサンプル12、特に、タマリンドガムが0.7質量%であり、かつ、
オーバーランが70%であるサンプル8は、より優れたマシュマロ感を有していた。
なお、オーバーランが0%であるサンプル16は、ゼリーのような食感であって、歯切
れが良く、反発感やふわふわ感は有していなかった。
【0047】
(総合評価)
前記の各評価の結果に基づいて、総合評価を表10に示す。
【0048】
【表10】
【0049】
タマリンドガムが0.5〜1.0質量%であり、かつ、オーバーランが50〜110%
であるサンプル4〜12、特に、タマリンドガムが0.7質量%であり、かつ、オーバー
ランが50〜70%であるサンプル7及び8は、様々な感覚(例えば、マシュマロ感、チ
ューイング感)が統合されて生じた、従来の冷菓とは大きく異なる食感を有しており、か
つ、濃厚感の持続にも優れていた。