【新規性喪失の例外の表示】特許法第30条第2項適用申請有り (1)掲載日:別紙(ウェブサイトの一覧)参照、掲載アドレス:別紙(ウェブサイトの一覧)参照 (2)掲載日:令和1年10月31日、掲載アドレス:https://www.makuake.com/project/drivebeast/ (3)集会名:第2回Startup Meeting in CLUE、開催日:令和1年5月22日、開催場所:愛知県豊橋市駅前大通一丁目135番地 COCOLA AVENUE(3F) (4)集会名・開催日:別紙(展示日、集会名および配布物の対応表)参照、開催場所:愛知県豊橋市駅前大通一丁目135番地 COCOLA AVENUE(3F) (5)集会名:イトコー、開催日:令和1年7月28日、開催場所:愛知県豊川市諏訪西町2−248 (6)集会名:武蔵夏祭り、開催日:令和1年8月31日、開催場所:愛知県豊橋市植田町字大膳39−5 (7)集会名:切削カンファレンス、開催日:令和1年9月26日、開催場所:愛知県名古屋市西区牛島町6−1 (8)集会名:デイサービススマイリング、開催日:令和1年9月28日、開催場所:愛知県豊田市上郷町3−8−5 (9)集会名:あいちスタートアップキャンプ2019、開催日:令和1年10月19日、開催場所:愛知県名古屋市中村区井深町1番1号 新名古屋センタービル (10)集会名:豊橋創造大学学園祭、開催日:令和1年10月26日から令和1年10月27日、開催場所:愛知県豊橋市牛川町松下20−1 豊橋創造大学・豊橋創造大学短期大学部・豊橋創造大学大学院 (11)掲載日:令和1年11月5日、掲載アドレス: https://youtu.be/9Vj5dbv73Dk (12)掲載日:令和1年11月6日、掲載アドレス: https://tasuki−inc.com/drive−beast/ (13)集会名:ジェネカフェ 第23回、開催日:令和1年11月8日、開催場所:愛知県豊橋市西幸町字浜池333−9 豊橋サイエンスコア (14)集会名:temiyo BAR〜クラフトビールで乾杯!地域×ビール×デザインのぶっちゃけトーク!〜、開催日:令和1年11月8日、開催場所:愛知県豊橋市駅前大通1丁目59 Cardamon (15)集会名:THE CREATOR’S BBQ PARTY 2019、開催日:令和1年11月9日、開催場所:愛知県豊橋市駅前大
【解決手段】手動型コーヒードリッパーは、貯留室Sと抽出孔104とが形成されたドリッパー本体を備える。貯留室は、ドリッパー本体の上方に開口している。抽出孔は、貯留室の底部から下方に開口している。ドリッパー本体は、貯留室における上端開口部と抽出孔との間に位置し、かつ、肉厚が上端開口部の肉厚よりも厚い肉厚部分を有する。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
例えば手動型のドリッパーに不慣れな使用者は、ドリッパーに注ぐ湯の温度、注ぐ量や速度をうまくコントロールできないため、沸騰した熱湯が多量にドリッパーに注がれることに起因して、コーヒーを美味しく抽出するのに適した温度より高い温度の熱湯で抽出されることがある。特に、従来のドリッパーは、保温性が高いセラミックス材料により形成されているため、特に、上記の問題が生じやすい。
【0005】
本発明は、上述した課題を解決することが可能な手動型コーヒードリッパーを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するために、本発明の手動型コーヒードリッパーは、金属製の手動型コーヒードリッパーであって、上方に開口した貯留室と、前記貯留室の底部から下方に開口した抽出孔と、が形成されたドリッパー本体を備え、前記ドリッパー本体は、前記貯留室における上端開口部と前記抽出孔との間に位置し、かつ、肉厚が前記上端開口部の肉厚よりも厚い肉厚部分を有する。本手動型コーヒードリッパーでは、ドリッパー本体の上端開口部に湯を注ぐと、湯またはコーヒー成分を含む抽出液(以下、「湯等」という)が、貯留室を構成する内壁面に沿って抽出孔へと流れる。この際、上端開口部から注がれた湯等が貯留室を通って抽出孔から滴下されるまでの間に、湯等から相対的に多くの熱量がドリッパー本体の肉厚部分に吸収される。このため、本手動型コーヒードリッパーによれば、例えば肉厚部分を有しない構成に比べて、湯等を効果的に冷却することができる。
【0007】
上記手動型コーヒードリッパーにおいて、前記肉厚部分の肉厚は、前記抽出孔に近づくほど厚くなっている構成としてもよい。本手動型コーヒードリッパーでは、肉厚部分の肉厚が、比較的に湯等が貯留しやすい抽出孔付近に近づくほど厚くなっているため、例えば肉厚部分の肉厚が抽出孔に近づくほど薄くなっている構成や肉厚に変化がない構成に比べて、抽出孔付近で貯留された湯等を効果的に冷却することができる。
【0008】
上記手動型コーヒードリッパーにおいて、前記ドリッパー本体のうち、前記貯留室を形成する内壁面は、前記抽出孔側に向かって傾斜する第1の内壁と、前記第1の内壁に対して前記ドリッパー本体の周方向に並び、かつ、前記第1の内壁より急峻な第2の内壁と、を有し、前記第1の内壁の少なくとも一部が前記肉厚部分になっている構成としてもよい。本手動型コーヒードリッパーでは、第2の内壁に比べて、湯等が緩やかに流れるよう傾斜した第1の内壁が肉厚になっており、湯等が肉厚部分で冷却される時間が長くなる。このため、本手動型コーヒードリッパーによれば、例えば第1の内壁が肉厚になっていない構成に比べて、湯等を効果的に冷却することができる。
【0009】
上記手動型コーヒードリッパーにおいて、前記第2の内壁における前記ドリッパー本体の肉厚は、前記第1の内壁における前記ドリッパー本体の肉厚より薄い構成としてもよい。本手動型コーヒードリッパーでは、比較的急峻で吸熱効果が低い第2の内壁におけるドリッパー本体の肉厚が、第1の内壁におけるドリッパー本体の肉厚より薄い。このため、本手動型コーヒードリッパーによれば、第2の内壁におけるドリッパー本体の肉厚が第1の内壁におけるドリッパー本体の肉厚と同程度である構成に比べて、ドリッパー本体自体の軽量化を図りつつ、湯等を効果的に冷却することができる。
【0010】
上記手動型コーヒードリッパーにおいて、前記ドリッパー本体の外周面に凹部が形成されている構成としてもよい。本手動型コーヒードリッパーによれば、ドリッパー本体の外周面に凹部が形成されていない構成に比べて、外周面が広い分だけ放熱効果が高く、また、ドリッパー本体の軽量化を図ることができる。
【0011】
上記手動型コーヒードリッパーにおいて、前記ドリッパー本体のうち、前記貯留室を形成する内壁面に、前記抽出孔側に向かって延びる第1の溝が形成されており、前記第1の溝の底面は、機械加工によって形成された切削痕を有する構成としてもよい。本手動型コーヒードリッパーでは、第1の溝の底面に微細な球状痕があり、球状痕が湯等の流れの抵抗となって流速が遅くなる分だけ、湯等を効果的に冷却することができる。
【0012】
上記手動型コーヒードリッパーにおいて、前記ドリッパー本体のうち、前記貯留室を形成する内壁面は、前記抽出孔側に向かって傾斜する第1の内壁と、前記第1の内壁に対して前記ドリッパー本体の周方向に並び、かつ、前記第1の内壁より急峻な第2の内壁と、を有し、前記第1の内壁に、前記抽出孔側に向かって延びる第1の溝が形成され、前記第2の内壁に、第2の溝が形成されており、前記第2の内壁に直交する方向視での前記第2の溝の傾斜角度は、前記第1の内壁に直交する方向視での前記第1の溝の傾斜角度に比べて小さい構成としてもよい。本手動型コーヒードリッパーでは、第2の内壁は、第1の第1の内壁に比べて急峻であるが、第2の内壁に形成された第2の溝の傾斜角度は、第1の内壁に形成された第1の溝の傾斜角度より小さい。このため、本手動型コーヒードリッパーによれば、例えば第2の溝の傾斜角度が第1の溝の傾斜角度と同程度である構成に比べて、湯等が第2の内壁を流れる時間が長くなるため、比較的急峻な第2の内壁においても湯等を効果的に冷却することができる。
【0013】
上記手動型コーヒードリッパーにおいて、前記ドリッパー本体のうち、前記貯留室を形成する内壁面は、前記抽出孔側に向かって傾斜する第1の内壁と、前記第1の内壁に対して前記ドリッパー本体の周方向に並び、かつ、前記第1の内壁より急峻な第2の内壁と、を有し、前記第2の内壁に、第2の溝が形成されており、前記第2の溝は、前記貯留室の底部に達していない構成としてもよい。本手動型コーヒードリッパーによれば、第2の溝が貯留室の底部に達している構成に比べて、湯等が第2の内壁を流れる時間が長くなるため、比較的急峻な第2の内壁においても湯等を効果的に冷却することができる。
【0014】
上記手動型コーヒードリッパーにおいて、前記第2の内壁に直交する方向視での前記第2の溝の形状は、略U字状である構成としてもよい。本手動型コーヒードリッパーによれば、第2の溝が略U字状であり、湯等が第2の内壁を抽出孔へ流れるとき、第2の溝を横断するために流れが阻害され、湯等が第2の内壁を流れる時間が長くなるため、湯等を効果的に冷却することができる。
【0015】
上記手動型コーヒードリッパーにおいて、前記ドリッパー本体は、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されている構成としてもよい。本手動型コーヒードリッパーでは、熱伝導率を高く、かつ、冷却効果を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
A.実施形態:
本実施形態における手動型コーヒードリッパー(以下、「ドリッパー」という)100は、手動で湯を注ぎ、コーヒーを抽出するために用いられる。ドリッパー100は、金属材料により形成されている。具体的には、ドリッパー100は、アルミニウムまたはアルミニウム合金により形成されている。
【0018】
A−1.ドリッパー100の構成:
図1は、本実施形態におけるドリッパー100の構成を示す斜視図であり、
図2は、ドリッパー100の上面図であり、
図3は、ドリッパー100の側面図であり、
図4は、ドリッパー100の下面図である。各図には、方向を特定するための互いに直交するXYZ軸が示されている。本明細書では、便宜的に、Z軸正方向を上方向といい、Z軸負方向を下方向というものとする。
図5以降も同様である。
【0019】
A−1−1.ドリッパー100の全体構成:
図1から
図4に示すように、本実施形態に係るドリッパー100は、全体として略円柱状であり、ドリッパー100の上面102側には、上方に開口した貯留室Sが形成されている。また、ドリッパー100には、ドリッパー100における貯留室Sの底部136から下方に開口した複数(本実施形態では4つ)の抽出孔104が形成されている。なお、ドリッパー100の貯留室Sにおける上端開口部103は、湯の注ぎ口として機能する。上端開口部103の上下方向視での形状は、略円状である(
図2参照)。なお、各抽出孔104の開口面積は、上端開口部103の開口面積より小さく、全抽出孔104の開口面積の合計も、上端開口部103の開口面積より小さい。本実施形態では、ドリッパー100は、ドリッパー本体の一例である。
【0020】
図1および
図2に示すように、ドリッパー100のうち、貯留室Sを形成する内壁面130は、一対の平面壁132と、曲面壁134と、底部136の上面(底面)とを有する。各平面壁132は、表面が略平面状であり、底部136に向かって傾斜している。具体的には、一対の平面壁132は、底部136に近づく程、互いの距離が近づくように傾斜している。各平面壁132の形状は、略半円状である(
図2参照)。平面壁132は、特許請求の範囲における第1の内壁の一例である。
【0021】
曲面壁134は、表面が曲面状であり、底部136に向かって傾斜している。曲面壁134は、平面壁132よりも急峻な角度で傾斜している。すなわち、曲面壁134の水平方向に対する傾斜角度θ2(
図5参照)は、平面壁132の水平方向に対する傾斜角度θ1(
図6参照)より大きい。また、曲面壁134は、平面壁132に対してドリッパー100の周方向に並ぶ部分を有する。本実施形態では、曲面壁134は、一対の平面壁132の外周を囲むように配置されている(
図2参照)。曲面壁134のうち、平面壁132に周方向に並ぶ部分は、特許請求の範囲における第2の内壁の一例である。
【0022】
図4に示すように、ドリッパー100の下面106には、4つの抽出孔104を囲むように配置された環状の凸部107が形成されている。
【0023】
A−1−2.ドリッパー100の肉厚部分の構成:
図5は、
図2のV−Vの位置におけるドリッパー100のXZ断面構成を示す説明図であり、
図6は、
図2のVI−VIの位置におけるドリッパー100のYZ断面構成を示す説明図である。
【0024】
図5および
図6に示すように、ドリッパー100は、肉厚部分108を有する。肉厚部分108は、貯留室Sにおける上端開口部103と抽出孔104との間に位置する。また、肉厚部分108の肉厚は、上端開口部103の肉厚よりも厚い。具体的には、ドリッパー100の外周面120における上端側の外径(後述の上側面122の外径)と下端側の外径(後述の下側面124の外径)とは略同一であるのに対し、ドリッパー100の内壁面130は、全体として、下側に向かって縮径している。その結果、肉厚部分108が形成されている。肉厚部分108の肉厚は、抽出孔104に近づくほど厚くなっている。また、肉厚部分108は、ドリッパー100の全周にわたって形成されている。
【0025】
本実施形態では、肉厚部分108は、ドリッパー100における平面壁132を構成する部分と曲面壁134を構成する部分との両方に存在する。また、曲面壁134におけるドリッパー100の肉厚は、平面壁132におけるドリッパー100の肉厚より薄い。
【0026】
また、
図3、
図5および
図6に示すように、ドリッパー100の外周面120に凹部が形成されている。具体的には、ドリッパー100の外周面120は、上側面122と下側面124と中間面126とを有する。上側面122と下側面124とは、いずれも、ドリッパー100のZ軸方向(以下、「軸方向」という)の全長にわたって略同径である。但し、上側面122の軸方向の幅は、下側面124の軸方向の幅より広い。中間面126は、上側面122と下側面124とをつなぐ面であり、軸方向の中央側がドリッパー100の径方向内側に凹んだ曲面形状になっている。
【0027】
A−1−3.ドリッパー100の内周側の構成:
図1,
図2および
図5に示すように、ドリッパー100の内壁面130のうち、各平面壁132には、互いに平行な複数本の直線溝200が形成されている。複数本の直線溝200は、水平方向に等間隔に配列され、かつ、抽出孔104が形成された底部136に向かって互いに平行に延びている。各直線溝200は、底部136まで達している。直線溝200は、特許請求の範囲における第1の溝の一例である。
【0028】
ドリッパー100の内壁面130のうち、曲面壁134には、複数本の曲線溝300が形成されている。曲面壁134に直交する方向視(
図5における曲面壁134の外形線に対して直交する方向視)での各曲線溝300の形状は、略U字状である。具体的には、曲線溝300は、下側に向かうに連れて互いの距離が短くなるように傾斜する一対の溝部分が最下点で繋がっている形状である。曲面壁134に直交する方向視での曲線溝300の傾斜角度θ4(水平方向に対する傾斜角度)は、平面壁132に直交する方向視での直線溝200の傾斜角度θ3に比べて小さい(
図5および
図6参照)。具体的には、直線溝200の傾斜角度θ3は、略90度であり、曲線溝300の傾斜角度θ4は、90度より小さい。各曲線溝300は、上記直線溝200とは異なり、貯留室Sの底部136に達しておらず、離間している。換言すれば、曲線溝300の最下点が、底部136より上側に位置している。曲線溝300は、特許請求の範囲における第2の溝の一例である。
【0029】
図5で拡大して示すように、直線溝200を構成する底面(内壁面)は、直線溝200に沿って並ぶ複数の凹凸形状を有する。複数の凹凸形状は、直線溝200の全長にわたって形成されている。具体的には、複数の凹凸形状は、後述するように、機械加工によって形成された切削痕である。また、
図6で拡大して示すように、曲線溝300を構成する底面(内壁面)は、曲線溝300に沿って並ぶ複数の凹凸形状を有する。複数の凹凸形状は、曲線溝300の全長にわたって形成されている。具体的には、複数の凹凸形状は、後述するように、機械加工によって形成された切削痕である。
【0030】
A−2.ドリッパー100の製造方法:
図7は、本実施形態におけるドリッパー100の製造方法を示すフローチャートである。本実施形態のドリッパー100は、金属製(アルミニウムまたはアルミニウム合金)の母材に切削加工を施すことにより作製される。以下、具体的に説明する。
【0031】
図7に示すように、まず、略円柱状の金属製の母材を準備する(S110)。母材は、例えば公知の製法(鋳造やプレス加工等)により作製することができる。
【0032】
次に、切削加工装置(例えば、立体マシニングセンタ、汎用フライス盤、CNC複合加工装置等)を用いて、母材の一方の端面に、上述の貯留室Sとなる凹所を形成する(S120)。例えば、立体マシニングセンタの主軸に装着され、回転駆動されるフライス工具(エンドミル等)による切削加工によって母材に凹所を形成する。詳細には、まず、母材の他方の端部(以下、「下端部」という)の外周面を立体マシニングセンタのチャック部に固定し、母材の一方の端部(以下、「上端部」という)の端面に対して、フライス工具による荒加工を施して、母材に凹所を形成する。次に、その凹所を構成する内壁面に対して、フライス工具による追い込み加工および仕上げ加工を施す。その結果、上述の直線溝200と曲線溝300と抽出孔104とが形成される前の凹所を有する母材が成形される。すなわち、該凹所を構成する内壁面は、直線溝200が形成される前の上記一対の平面壁132と、曲線溝300が形成される前の上記一対の曲面壁134とを有する。
【0033】
次に、母材の下端部の端面に加工を施して、凸部107を形成する(S130)。例えば、母材の上端部(凹所が形成された側の端部)の外周面を立体マシニングセンタのチャック部に固定し、母材の下端部の端面に対して、フライス工具による切削加工を施して、凸部107を形成する。
【0034】
次に、母材の外周面に上述のくびれ状の中間面126を形成する(S140)。例えば、母材の上端部の外周面を立体マシニングセンタのチャック部に固定したまま、母材を回転させつつ、母材の外周面に対してフライス工具による切削加工を施すことにより、中間面126を形成する。
【0035】
次に、母材に抽出孔104を形成する(S150)。例えば、母材の上端部の外周面を立体マシニングセンタのチャック部に固定したまま、母材を回転させつつ、母材の下端部の端面に対してフライス工具による孔空け加工を施すことにより、母材の下端部の端面から凹所まで貫通する複数の抽出孔104を形成する。
【0036】
次に、母材の凹所を構成する内壁面に溝加工を施して、各種の溝(直線溝200、曲線溝300)を形成する(S160)。例えば、母材の下端部の外周面を立体マシニングセンタのチャック部に固定し直す。そして、フライス工具を回転駆動させつつ、母材の軸方向視で所定の第1の方向に移動させることにより、母材の軸方向視で略直線状に連続する溝を内壁面に形成する。この直線状の溝加工を、母材の内壁面に対して、第1の方向に垂直な第2の方向において互いに等間隔の複数の位置で繰り返す。その結果、母材の内壁面のうち、平面壁132に直線溝200が形成され、曲面壁134に曲線溝300が形成される。
【0037】
このように各溝200,300は、回転駆動されるフライス工具により形成されるため、各溝200,300を構成する底面(内壁面)は、機械加工によって形成された切削痕(ツールマーク等)を有する。なお、切削痕には、フライス工具の外形形状による切削痕と、表面粗さ(びびり)による切削痕とがある。フライス工具の外形形状による切削痕は、フライス工具の外形形状が母材の表面に転写されてできるものである。例えばボールエンドミドルによる切削では、各溝200,300の底面は、半球状の複数の凹部が該溝200,300に沿って並んだ形状になる。表面粗さによる切削痕は、上記仕上げ加工により残存する各溝200,300の底面の粗さ(表面の凹凸)である。
【0038】
以上の工程により、ドリッパー100の製造が完了する。なお、上述したように、本実施形態では、母材の下端部の端面から抽出孔104の形成(S150)を行い、その後に、母材の凹所を構成する内壁面に各種の溝の形成(S160)を行う。これにより、抽出孔104の形成の際に生じたバリを、各種の溝の形成の過程で除去できる。このため、バリ取りのための専用の工程を設ける必要がなく、ドリッパー100の製造工程の効率化を図ることができる。
【0039】
A−3.本実施形態の作用効果:
本実施形態のドリッパー100は、例えば次のように使用される。すなわち、ドリッパー100をコーヒーカップ(図示しない)上に配置し、ドリッパー100の貯留室Sにペーパーフィルタを配置し、そのペーパーフィルタ内にコーヒー粉を入れて手動で湯を注ぐ。すると、湯またはコーヒー成分を含む抽出液(以下、「湯等」という)が、貯留室Sを構成する内壁面に沿って抽出孔104へと流れ、抽出孔104からコーヒーが抽出され、コーヒーカップに滴下する。
【0040】
ここで、ドリッパー100は、金属材料により形成されている。これにより、セラミックスにより形成されたドリッパーに比べて、熱伝導率が高いため、上端開口部103に注がれた湯等を効果的に冷却することができる。しかも、ドリッパー100は、肉厚部分108を有する(
図5および
図6参照)。このため、上端開口部103から注がれた湯等が貯留室Sを通って抽出孔104から滴下されるまでの間に、湯等から相対的に多くの熱量がドリッパー100の肉厚部分108に吸収される。このため、本実施形態によれば、例えば肉厚部分を有しない構成に比べて、湯等を効果的に冷却することができる。また、本実施形態によれば、ドリッパー100の全体を一律に肉厚に形成した構成に比べて、ドリッパー100の軽量化を図ることができる。なお、ドリッパー100の軽量化により、ドリッパー100の取り扱いが容易になる。
【0041】
本実施形態では、肉厚部分108の肉厚が、比較的に湯等が貯留しやすい抽出孔104付近に近づくほど厚くなっている(
図5および
図6参照)。このため、例えば肉厚部分の肉厚が抽出孔に近づくほど薄くなっている構成や肉厚に変化がない構成に比べて、抽出孔104付近で貯留された湯等を効果的に冷却することができる。
【0042】
本実施形態では、曲面壁134に比べて、湯等が緩やかに流れるよう傾斜した平面壁132が肉厚になっている(
図5および
図6参照)。すなわち、ドリッパー100の内壁面130のうち、最も緩やかに傾斜する部分に肉厚部分108が存在しており、湯等が肉厚部分108で冷却される時間が長くなる。このため、本実施形態によれば、例えば平面壁132が肉厚になっていない構成に比べて、湯等を効果的に冷却することができる。
【0043】
本実施形態では、比較的急峻で吸熱効果が低い曲面壁134におけるドリッパー100の肉厚が、平面壁132におけるドリッパー100の肉厚より薄い(
図5および
図6参照)。このため、本実施形態によれば、曲面壁134におけるドリッパー100の肉厚が平面壁132におけるドリッパー100の肉厚と同程度である構成に比べて、ドリッパー100自体の軽量化を図りつつ、湯等を効果的に冷却することができる。
【0044】
本実施形態では、ドリッパー100の外周面120に凹部(中間面126)が形成されている(
図3、
図5および
図6参照)。本実施形態によれば、ドリッパー100の外周面120に凹部が形成されていない構成に比べて、外周面120の面積が広い分だけ放熱効果が高く、また、ドリッパー100の軽量化を図ることができる。特に、本実施形態では、ドリッパー100における肉厚部分108の外周面に凹部が形成されているため、放熱効果がより向上している。
【0045】
本実施形態では、直線溝200の底面に微細な球状痕があり(
図5参照)、球状痕が湯等の流れの抵抗となって流速が遅くなる分だけ、湯等を効果的に冷却することができる。さらに、本実施形態では、曲線溝300の底面にも、微細な球状痕があり(
図6参照)、球状痕が湯等の流れの抵抗となって流速が遅くなる分だけ、湯等を効果的に冷却することができる。
【0046】
本実施形態では、曲面壁134は、平面壁132に比べて急峻であるが、曲面壁134に形成された曲線溝300の傾斜角度θ4は、平面壁132に形成された直線溝200の傾斜角度θ3より小さい(
図5および
図6参照)。このため、本実施形態によれば、例えば曲線溝300の傾斜角度θ4が直線溝200の傾斜角度θ3と同程度である構成に比べて、湯等が比較的に急峻な曲面壁134を流れる時間が長くなるため、湯等を効果的に冷却することができる。
【0047】
本実施形態では、各曲線溝300は、上記直線溝200とは異なり、貯留室Sの底部136に達していない。本実施形態によれば、曲線溝300が貯留室Sの底部136に達している構成に比べて、湯等が比較的に急峻な曲面壁134を流れる時間が長くなるため、湯等を効果的に冷却することができる。
【0048】
本実施形態では、曲面壁134に直交する方向視での各曲線溝300の形状は、略U字状である。本実施形態によれば、曲線溝300によって、湯等が曲面壁134を抽出孔104へ流れるとき曲線溝300を横断するために流れが阻害され、湯等が曲面壁134を流れる時間が長くなり、湯等を効果的に冷却することができる。なお、本実施形態では、約100℃の熱湯を上端開口部103へ注ぎ、コーヒー成分を含む抽出液が抽出孔104から滴下するまでに、75℃〜85℃に冷却されるように設定しているが、好みによって適宜設定の変更が可能である。
【0049】
B.変形例:
本発明は、上述の実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の形態に変形することができ、例えば次のような変形も可能である。
【0050】
上記実施形態におけるドリッパー100の構成は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態において、ドリッパー100に形成された抽出孔104の数は、1つでもよいし、4つ以外の複数であってもよい。また、ドリッパー100の全体的な形状は、円柱状に限らず、例えば、角柱状や、下方に向かって径が小さくなる円錐状などであってもよい。また、ドリッパー100における上端開口部103の上下方向視での形状は、略円状に限らず、例えば矩形状などであってもよい。
【0051】
上記実施形態では、貯留室Sを構成する内壁面130の形状は、台形状の濾過用部材(ペーパーフィルタ)に対応した形状であったが、例えば円錐状の濾過用部材に対応した円錐形状であってもよい。また、上記実施形態では、ドリッパー100は、貯留室S内に濾過用部材を配置する構成であったが、貯留室の底部に形成された抽出孔に濾過用部材が装着されるタイプのものであっても、本発明を適用することにより同様の効果を得ることができる。
【0052】
上記実施形態では、第1の内壁として、平面壁132を例示したが、例えば曲面状の内壁であってもよい。また、上記実施形態では、第2の内壁として、曲面壁134を例示したが、例えば平面状の内壁であってもよい。
【0053】
上記実施形態において、ドリッパー100に、凸部107と中間面126との少なくとも一方が形成されていなくてもよい。
【0054】
上記実施形態では、肉厚部分108がドリッパー100の全周にわたって形成されていたが、肉厚部分108が、ドリッパー100の周方向の一部分(例えば平面壁132を構成する部分)だけに形成された構成であってもよい。また、平面壁132を構成する部分の一部だけに肉厚部分108が形成された構成であってもよい。
【0055】
上記実施形態では、第1の溝として、直線溝200を例示したが、例えば、平面壁132に直交する方向視で、抽出孔104に向かって斜めに傾斜した溝であってもよいし、曲線状の溝であってもよい。また、第2の溝として、曲線溝300を例示したが、例えば、曲面壁134に直交する方向視で、抽出孔104に向かって延びる直線状の溝であってもよいし、貯留室Sの底部136に達した溝であってもよい。また、上記実施形態において、直線溝200と曲線溝300との少なくとても一方が形成されていない構成であってもよい。また、上記実施形態において、直線溝200と曲線溝300との少なくとても一方の底面が、凹凸形状を有しない構成であってもよい。
【0056】
上記実施形態のドリッパー100を形成する材料は、あくまで例示であり、アルミニウムやアルミニウム合金以外の金属材料により形成されてもよい。
【0057】
上記実施形態におけるドリッパー100の製造方法は、あくまで一例であり、種々変形可能である。例えば、上記実施形態において、各種の溝の形成(S160)を、母材への凹所の形成(S120)後、母材への凸部107の形成(S130)の前に行ってもよい。これにより、上述の実施形態におけるS160において立体マシニングセンタのチャック部に母材の下端部を固定し直す工程を省略できる。また、上記実施形態において、母材への凸部107の形成(S130)と母材への中間面126の形成(S140)との順序を入れ替えてもよい。