【解決手段】従来の体位固定システムは、下側体位固定具、上側体位固定具である体位固定シェルおよびシェル固定用のプレートの組み合わせから構成されている。これに対して、本発明の体位固定システム10は、下側体位固定具11と体位固定シェル12との組み合わせから構成されている。シェル固定部13は下側体位固定具11に配置されており、シェル固定用のプレートが不要である。プレートが備わっていないので、その分、従来に比べて放射線吸収を低減でき、より高精度な画像撮影、治療等を行うことができる。
治療台に載せた患者あるいは被験者の体における放射線を用いた診断、治療あるいは検査の対象となる人体対象部位を位置決め固定するために用いる体位固定システムにおいて、
前記治療台上の人体対象部位を、前記治療台の上下方向の下側から位置決め状態で保持するための下側体位固定具と、
前記治療台上の人体対象部位を、前記上下方向の上側から位置決め固定するための体位固定シェルと、
前記体位固定シェルを前記下側体位固定具に固定するためのシェル固定部と、
を備えており、
前記下側体位固定具は、前記人体対象部位を前記治療台の前後方向あるいは幅方向に位置決めした状態で載せるための保持面を備えており、
前記体位固定シェルは、前記人体対象部位を、前記上下方向の上側から、前記前後方向あるいは前記幅方向に位置決めした状態で前記保持面に固定するために、前記人体対象部位に沿った形状となるように成形可能な熱可塑性樹脂製のシートあるいはフィルムを備えていることを特徴とする体位固定システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ここで、熱可塑性樹脂製のシートあるいはフィルムからなる体位固定シェルを用いて人体の位置決め固定を行う現行の体位固定システムには、人体を位置決め固定した状態の体位固定シェルを取り付けるためのプレートが備わっている。プレートは、CT撮影等において、治療台の上に載せられ、その上に枕、クッション等の下側体位固定具が配置される。この状態で、被験者を例えば、仰臥位の姿勢で載せ、頭部、胸部等の療部位を上側から型取りした体位固定シェルによって位置決め固定し、この状態で体位固定シェルをプレートに固定している。
【0007】
既存の体位固定システムにおいては、人体の頭部、胸部等を位置決め固定する体位固定シェルを取り付けるためのシェル固定用のプレートが介在し、その構成部材が持つ放射線吸収が問題となる場合が多い。プレートの放射線吸収を低減するために、材質、形状等の改良を含め、様々な工夫がなされている。しかしながら、より高精度な治療、診断等を行うために、体位固定システムの放射線吸収を更に低減することが求められている。
【0008】
本発明の目的は、このような点に鑑みて、従来に比べて放射線吸収を低減可能な構成を備えた体位固定システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、既存の体位固定システムにおいて、体位固定シェルに対して、固定対象である人体対象部位を反対側から保持している枕、クッション、吸引式のビーズバッグ等の各種の下側体位固定具に着目し、体位固定シェルを固定するために用いているプレートを廃止し、体位固定シェルを下側体位固定具に対して直接に固定できる構成の体位固定システムによって、上記の課題を解決している。
【0010】
すなわち、本発明は、治療台に載せた患者あるいは被験者の体における放射線を用いた診断、治療あるいは検査の対象となる人体対象部位を位置決め固定するために用いる体位固定システムにおいて、
前記治療台上の人体対象部位を、前記治療台の上下方向の下側から位置決め状態で保持するための下側体位固定具と、
前記治療台上の人体対象部位を、前記上下方向の上側から位置決め固定するための体位固定シェルと、
前記体位固定シェルを前記下側体位固定具に固定するためのシェル固定部と、
を備えており、
前記下側体位固定具は、前記人体対象部位を前記治療台の前後方向あるいは幅方向に位置決めした状態で載せるための保持面を備えており、
前記体位固定シェルは、前記人体対象部位を、前記上下方向の上側から、前記前後方向あるいは前記幅方向に位置決めした状態で前記保持面に固定するために、前記人体対象部位に沿った形状となるように成形可能な熱可塑性樹脂製のシートあるいはフィルムを備えていることを特徴としている。
【0011】
従来の体位固定システムは、上側体位固定具である体位固定シェルと、下側体位固定具と、シェル固定用のプレートの3部材の組み合わせから構成されている。これに対して、本発明の体位固定システムは、体位固定シェルと下側体位固定具の2部材の組み合わせから構成されている。シェル固定部を下側体位固定具に配置することで、シェル固定用のプレートを不要にしている。プレートが備わっていないので、その分、従来に比べて放射線吸収を低減でき、より高精度な画像撮影、治療等を行うことができる。また、構成部品が少ないので、その分、体位固定システムを廉価に構築できる。
【0012】
ここで、下側体位固定具には、例えば、人体の頭部を含む部位を載せるための頭部固定具、仰臥位あるいは伏臥位の人体の頭部および両腕を含む部位を載せるための頭部・腕部固定具、人体の胴部および腰部を含む部位を載せるための胴部・腰部固定具、仰臥位の人体の骨盤部を拘束できるようにするために両膝を含む部位を載せるための膝固定具等の各種のものがある。例えば、頭部固定具としては、後頭部の形状に沿った湾曲面状の保持面を備えた枕(ヘッドレスト)、後頭部の形状に沿って型取り可能な吸引式のビーズ入りバッグがある。胴部・腰部固定具としては、これらの人体部位の形状に沿って型取り可能な吸引式のビーズ入りバッグがある。頭部・腕部固定具としては、頭部、両腕部を保持する湾曲状の保持面を備えたクッションがある。また、膝固定具としては、両膝を載せるための湾曲状の保持面を備えたクッションがある。
【0013】
本発明において、シェル固定部は、下側体位固定具に組み付けて一体化することができる。また、シェル固定部を、下側体位固定具に対して着脱可能に取り付けることができる。シェル固定部を下側体位固定具に対して着脱可能にする機構としては、例えば、面ファスナを用いることができる。下側体位固定具の側に、例えば雄側の面ファスナを取り付けておき、シェル固定部の側に雌側の面ファスナを取り付けておき、ワンタッチで、シェル固定部を下側体位固定具に対して着脱できるようにする。
【0014】
一般に、体位固定シェルは、シートあるいはフィルムの幅方向の両側の縁部にそれぞれ取り付けたシェル側取付板と、このシェル側取付板に形成した複数個の取付穴とを備えている。この場合、シェル固定部は、例えば、取付穴に差込可能な複数個の係合突起が取付穴に対応する位置に形成されている下側取付板と、取付穴に係合突起が差し通された状態で、シェル側固定板を下側取付板に締結する締結具とを備えた構成とされる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下に、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。以下の実施の形態は本発明の一例を示すものであり、本発明を実施の形態に限定することを意図したものではない。
【0017】
[実施の形態1:胴部・腰部固定用の体位固定システム]
図1(a)は実施の形態1に係る体位固定システムを示す説明図であり、
図1(b)はそのシェル固定部を示す説明図である。体位固定システム10は、放射線治療、画像撮影等のための治療台1の天面1aに、インデクスバー(後述の実施の形態2参照)、両面テープ等から構成される位置決め部によって位置決め固定される下側体位固定具11と、上側体位固定具である体位固定シェル12と、下側体位固定具11に取り付けた着脱式のシェル固定部13との組み合わせから構成されている。
【0018】
下側体位固定具11は、治療台1に仰臥位の姿勢で載せた被験者あるいは患者の体(図示せず)における胴部、腰部を含む体部(人体対象部位)を下側から位置決めした状態で保持する吸引式バッグである。この形式の下側体位固定具11は、例えば、細かなポリスチレン製のビーズが気密性の可撓性プラスチックフィルムからなる長方形輪郭のバッグ111に収納され、バッグ111には空気抜き用の吸引口(図示せず)が取り付けられている。バッグ111の下面112が、両面テープ等の固定手段によって、治療台1の前後方向および左右方向に位置決めした状態で、治療台1の天面1aに固定される。
【0019】
下側体位固定具11の上に、例えば、仰臥位姿勢で被験者あるいは患者を載せた後に、バッグ111の吸引口から吸引パイプ114を介して空気を吸引する。この結果、吸引式のバッグ111は患者の体型に沿った形状に型取りされる。吸引口を封鎖することにより、型取り状態が維持され、バッグ111の上面には、患者の体形に沿った型取り形状の保持面113が維持される。この保持面113によって、患者の体部の前後方向(頭尾方向)および幅方向の位置決めがなされる。
【0020】
体位固定シェル12は、矩形輪郭をした熱可塑性樹脂製のネット状のシートあるいはフィルムからなるシェル本体部121と、このシェル本体部121の幅方向の両側の縁部にそれぞれ固定した前後方向(頭尾方向)に細長い長方形の樹脂製のシェル側取付板122とを備えている。本例では、シェル本体部121の両側の縁部において、それぞれ、前後方向に一定の間隔で2枚のシェル側取付板122が配置されている。各シェル側取付板122には、その長さ方向に、一定の間隔で複数個、本例では3個の取付穴123が一列状態に形成されている。
【0021】
ここで、下側体位固定具11のバッグ111において、幅方向の両側の側面部分には、それぞれ、着脱式のシェル固定部13が取り付けられている。シェル固定部13は、前後方向に一定の間隔で配置された2枚の樹脂製の下側取付板131を備えている。
図1(b)から分かるように、下側取付板131の上半部分には、前後方向に一定の間隔で3個の係合突起132が一列状態で形成されている。係合突起132は、シェル側取付板122の取付穴123に差し込み可能であり、各取付穴123に対応する位置となるように配置されている。また、下側取付板131の下半部分には、前後の部位に、一対の締結用のつまみ133が取り付けられている。
【0022】
下側取付板131の裏面には雄側の面ファスナ(図示せず)が貼り付けられている。雄側の面ファスナを取り付け可能な雌側の面ファスナ(図示せず)が、下側体位固定具11のバッグ111の両側の側面部分に貼り付けられている。したがって、下側取付板131を備えたシェル固定部13は、下側体位固定具11に対してワンタッチで着脱可能となっている。
【0023】
熱可塑性樹脂製のシートあるいはフィルムからなる体位固定シェル12のシェル本体部121を加熱して柔軟な状態にする。これを、下側体位固定具11の上に載せた患者の胴部・腰部を含む部位に被せて密着させる。この状態で、体位固定シェル12の両側のシェル側取付板122を、下側体位固定具11の両側のシェル固定部13に固定する。すなわち、シェル側取付板122の取付穴123に、下側取付板131の係合突起132を位置決めして差し込み、シェル側取付板122を下側取付板131に重ね合わせる。この状態で、前後の締結用のつまみ133を回す。つまみ133の外周面はカム面となっており、偏心回転して、シェル側取付板122を上方に押し上げることで、シェル側取付板122が下側取付板131に締結固定される。
【0024】
体位固定シェル12のシェル本体部121が患者の体型に沿った形状に型取りされた状態で硬化する。この結果、型取りされた下側の吸引式の固定バッグからなる下側体位固定具11と上側の体位固定シェル12とによって、上下から、患者の人体対象部位が固定される。このように患者を位置決めした拘束状態で、放射線治療用の移動式の治療台1に載せて放射線治療などが行われる。
【0025】
[実施の形態2:頭部用の体位固定システム]
図2A(a)は頭部用の体位固定システムの一例を示す説明図であり、
図2A(b)は着脱式のシェル固定部を備えた頭部用の下側体位固定具を示す説明図である。これらの図を参照して説明すると、本例の頭部用の体位固定システム20は、頭部用の下側体位固定具21と、頭部用の体位固定シェル22と、下側体位固定具21に取り付けた着脱式のシェル固定部23との組み合わせから構成されている。
【0026】
頭部用の下側体位固定具21は、全体として前後に長い長方形の樹脂発泡体からなる成形品である。
図2A(b)から分かるように、下側体位固定具21は、その前端側に、患者の頸部分を前後方向(頭尾方向)に位置決めした状態で載せるための凸状の頸保持面211が形成されている。この後側には、頸保持面211の後端に滑らかに連続して患者の後頭部を載せるための湾曲状の後頭部保持面212が形成されている。下側体位固定具21の幅方向の両側は上下方向に延びる側面213、214となっており、底面は平坦な面となっている。側面213、214のそれぞれの下端縁部には、着脱式のシェル固定部23が着脱可能に取り付けられている。
【0027】
頭部用の体位固定シェル22は、
図2A(a)に示すように、矩形輪郭をした熱可塑性樹脂製のネット状のシートあるいはフィルムからなるシェル本体部221と、このシェル本体部221の幅方向の両側の縁部にそれぞれ固定した前後方向(頭尾方向)に細長い長方形の樹脂製のシェル側取付板222とを備えている。シェル側取付板222には、その長さ方向に、一定の間隔で複数個、本例では3個の取付穴223が一列状態に形成されている。
【0028】
シェル固定部23は、
図2A(b)に示すように、前後方向に延びる樹脂製の下側取付板231を備えている。下側取付板231には、前後方向に一定の間隔で例えば3個の係合突起232が一列状態に形成されている。係合突起232は、シェル側取付板222の取付穴223に差し込み可能であり、各取付穴223に対応する位置となるように配置されている。また、下側取付板231の前後の端には、一対の締結用のつまみ233が取り付けられている。
【0029】
下側取付板231の裏面には雄側面ファスナ(図示せず)が貼り付けられている。雄側面ファスナを取り付け可能な雌側面ファスナ(図示せず)が、頭部用の下側体位固定具21の側面213、214の下縁部に沿って前後方向に延びる状態に貼り付けられている。したがって、下側取付板231を備えたシェル固定部23は、頭部用の下側体位固定具21の側面213、214に対してワンタッチで着脱可能となっている。
【0030】
熱可塑性樹脂フィルムからなる頭部用の体位固定シェル22のシェル本体部221を加熱して柔軟な状態にする。これを、頭部用の下側体位固定具21の上に載せた患者の頭部の部位に被せて密着させる。この状態で、体位固定シェル22の両側のシェル側取付板222を、頭部用の下側体位固定具21の両側のシェル固定部23に固定する。すなわち、シェル側取付板222の取付穴223に、下側取付板231の係合突起232を位置決めして差し込み、シェル側取付板222を下側取付板231に重ね合わせる。この状態で、前後の締結用のつまみ233を、
図2A(b)に示す状態から180°回転させると、
図2A(a)に示すように、前後のつまみ233によって、シェル側取付板222が下側取付板231に締結固定される。
【0031】
体位固定シェル22のシェル本体部221が患者の頭部に沿った形状に型取りされた状態で硬化する。この結果、下側の頭部用の下側体位固定具21と上側の体位固定シェル22とによって、上下から挟まれた状態で、患者の人体対象部位である頭部から頸部に掛けての部位が固定される。
【0032】
ここで、
図2Bには、頭部用の下側体位固定具21を治療台の天面に位置決め固定する位置決め部の一例を示してある。
図2B(a)は、位置決め部の構成部品であるインデクスバーの一例を示す上面側説明図であり、
図2B(b)はその下面側説明図である。
図2B(c)は下側体位固定具21の裏面に形成したインデクスバー取付け部分を示す説明図であり、
図2B(d)はインデクスバーを用いて治療台の天面に下側体位固定具21を位置決め固定した状態を示す説明図である。なお、
図2B(c)、2B(d)においてはシェル固定部23の省略している。
【0033】
これらの図を参照して説明すると、インデクスバー90は、細長い一定厚さの板状のバー本体91を備えている。バー本体91には、複数個のピン取付穴92が形成されている。これらのうち、左右一対のピン取付穴92に、下側体位固定具位置決め用のピン93が取り付けられている。バー本体91の下面の両端には、インデクスバー90を治療台1の天面1aに位置決め固定するための位置決め用のピン94が取り付けられている。
【0034】
治療台1の天面1aの両側の縁部には、その上下方向の所定の位置に、位置決め用のピン94の頭部を装着可能な装着溝(図示せず)が形成されている。インデクスバー90の両端のピン94の頭部を、天板1aの両側の縁部の装着溝に装着すると、天面1aにおいて、その前後方向の所定の位置において、幅方向に延びる状態に、インデクスバー90を位置決め固定できる。下側体位固定具21の裏面215には、その幅方向に延びるバー装着溝216が形成されており、バー装着溝216の底面には、一定の間隔で、ピン93の頭部を嵌め込み可能な2個の嵌合穴217が形成されている。下側体位固定具21の裏面215のバー装着溝216を天面1aに取り付けたインデクスバー90に位置決めし、嵌合穴217にピン93を嵌め込む。これにより、インデクスバー90はバー装着溝216に収まり、下側体位固定具21は、裏面215が天面1aに接した状態で、ピン93によって位置決めされる。このように、インデクスバー90を介して、下側体位固定具21が天面1aに位置決めされた状態で取り付けられる。
【0035】
[実施の形態3:頭部用の位置固定システム]
図3A(a)は実施の形態3の頭部用の体位固定システムを示す説明図であり、
図3A(b)は着脱式のシェル固定部を備えた頭部用の下側体位固定具を示す説明図である。これらの図を参照して説明すると、本例の頭部用の体位固定システム30は、頭部用の下側体位固定具31と、頭部用の体位固定シェル32と、下側体位固定具31に取り付けた着脱式のシェル固定部33との組み合わせから構成されている。
【0036】
頭部用の下側体位固定具31は吸引式のバッグである。この形式の下側体位固定具31は、細かなビーズが気密性の可撓性プラスチックフィルムからなる長方形輪郭のバッグ311に収納され、バッグ311には空気抜き用の吸引口312が取り付けられている。バッグ311の下面313が治療台1の天面1aに対して、インデクスバー、両面テープ等によって位置決め固定される。
【0037】
下側体位固定具31の上に、例えば、仰臥位姿勢の被験者あるいは患者の頭部を載せた後に、バッグ311の吸引口312から空気を吸引する。この結果、吸引式のバッグ311は患者の後頭部に沿った形状に型取りされる。吸引口312を封鎖することにより、型取り状態が維持され、バッグ311の上面には、患者の後頭部の形状が型取りされた保持面314が形成される。この保持面314によって、患者の頭部の前後方向(頭尾方向)および幅方向の位置決めがなされる。下側体位固定具31のバッグ311における幅方向の両側の縁部分には、着脱式のシェル固定部33が取り付けられている。
【0038】
頭部用の体位固定シェル32は、矩形輪郭をした熱可塑性樹脂製のネット状のシートあるいはフィルムからなるシェル本体部321と、このシェル本体部321の幅方向の両側の縁部にそれぞれ固定した前後方向(頭尾方向)に細長い長方形の樹脂製のシェル側取付板322とを備えている。シェル側取付板322には、その長さ方向に、一定の間隔で複数個、本例では3個の取付穴323が一列状態に形成されている。
【0039】
シェル固定部33は、前述の実施の形態2のシェル固定部23と同一構成であり、前後方向に延びる樹脂製の下側取付板331を備えている。下側取付板331には、前後方向に一定の間隔で例えば3個の係合突起332が一列状態に形成されている。係合突起332は、シェル側取付板322の取付穴323に差し込み可能であり、各取付穴323に対応する位置となるように配置されている。また、下側取付板331の前後の端には、一対の締結用のつまみ333が取り付けられている。
【0040】
下側取付板331の裏面には雄側面ファスナ(図示せず)が貼り付けられている。雄側面ファスナを取り付け可能な雌側面ファスナ(図示せず)が、頭部用の下側体位固定具31の両側の縁部分に前後方向に延びる状態に貼り付けられている。したがって、下側取付板331を備えたシェル固定部33は、頭部用の下側体位固定具31に対してワンタッチで着脱可能となっている。
【0041】
ここで、
図3B(a)、3B(b)は、吸引式の下側体位固定具31を治療台1の天面1aに位置決め固定するための位置決め部の一例を示す説明図である。位置決め部は、インデクスバー90(
図2B(a)、2B(b)参照)と、細長い一定厚さの位置決め用のプレート100とを備えている。プレート100には、インデクスバー90のピン93の頭部を嵌め込み可能な嵌合穴101が両側の端部に形成されている。プレート100は、バッグ裏面に、接着固定、両面ファスナ等によって着脱可能に固定、あるいは、バッグに一体化されている。
【0042】
天面1aに位置決め状態で取り付けたインデクスバー90のピン93に対して、下側体位固定具31のバッグ311の裏面に取り付けたプレート100の両側の嵌合穴101を位置決めして、嵌合穴111にピン93を嵌め込む。これにより、下側体位固定具31は天面1aに対して位置決め固定された状態になる。
【0043】
[実施の形態4:頭部用の体位固定システム]
図4(a)は実施の形態4の頭部用の体位固定システムを示す説明図であり、
図4(b)は着脱式のシェル固定部を備えた頭部用の下側体位固定具を示す説明図である。これらの図を参照して説明すると、本例の頭部用の体位固定システム40は、頭部用の下側体位固定具41と、頭部用の体位固定シェル42と、下側体位固定具41に取り付けた着脱式のシェル固定部43との組み合わせから構成されている。
【0044】
頭部用の下側体位固定具41は吸引式のバッグであり、前述の実施の形態3の下側体位固定具31と同様な構成であるので、詳細な説明は省略する。下側体位固定具41のバッグ411の上面における幅方向の両側の縁端部分および前後方向の前側の縁端部分に亘って、U字形状をした着脱式のシェル固定部43が、複数枚の面ファスナ44を介して、着脱可能な状態で取り付けられている。
【0045】
頭部用の体位固定シェル42は、矩形輪郭をした熱可塑性樹脂製のネット状のシートあるいはフィルムからなるシェル本体部421と、このシェル本体部421の幅方向の両側の縁端部および前後方向の前側の縁端部に亘って固定したU字形状の樹脂製のシェル側取付板422とを備えている。シェル側取付板422には、その左右の板部分に、それぞれ、取付穴423が形成されている。
【0046】
シェル固定部43は、U字形状をした樹脂製の下側取付板431を備えている。下側取付板431には、その両側の板部分に1個ずつ係合突起432が形成されている。係合突起432は、シェル側取付板422の取付穴423に差し込み可能であり、取付穴423に対応する位置に配置されている。また、下側取付板431の両側の板部分における前後の端には、それぞれ、一対の締結用のつまみ433が取り付けられている。
【0047】
[着脱式のシェル固定部を備えた頭部・腕部用の下側体位固定具の例]
図5は頭部・腕部用の下側体位固定具の例を示す説明図である。本例の頭部・腕部用の下側体位固定具51と、不図示の頭部・腕部用の体位固定シェルと、下側体位固定具51に取り付けた着脱式のシェル固定部53とを組み合わせて、頭部・腕部用の体位固定システムが構成される。
【0048】
下側体位固定具51は、放射線治療、CT検査、MRI検査において、治療ベッドに、挙上位で伏臥位状態にさせた患者あるいは被験者の頭部および両腕が移動しないように、頭部および両腕を載せるために用いる患者固定具である。下側体位固定具51は、インデクスバー、両面テープなどからなる位置決め部によって、治療台に固定して用いられる。下側体位固定具51は、発泡体などの弾性素材が充填された外周側クッション511および、当該外周側クッション511の中央部分に形成した凹部に装着された頭部位置決め用の逆U字状の中央側クッション512とを備えている。中央側クッション512の上面部分に、患者あるいは被験者の顔を含む前頭部を埋めた状態で保持するための保持面部分513が形成される。外周側クッション511の前後方向の後側の中央部分には頸部を保持するための湾曲部514が形成されており、その両側には、両腕を保持するための湾曲部515が形成されている。
【0049】
着脱式のシェル固定部53は、外周側クッション511の幅方向の両側の側面に、それぞれ前後方向に延びる状態に取り付けられている。シェル固定部53は、前述のシェル固定部23(
図2)およびシェル固定部33(
図3)と同一構成であり、前後方向に延びる樹脂製の下側取付板531を備えている。下側取付板531には、前後方向に一定の間隔で例えば3個の係合突起532が一列状態に形成されている。係合突起532は、不図示の体位固定シェルのシェル側取付板の取付穴に差し込み可能であり、各取付穴に対応する位置となるように配置されている。また、下側取付板531の前後の端には、一対の締結用のつまみ533が取り付けられている。
【0050】
下側取付板531の裏面には雄側面ファスナ(図示せず)が貼り付けられている。雄側面ファスナを取り付け可能な雌側面ファスナ(図示せず)が、頭部・腕部用の下側体位固定具51の両側の縁部分に前後方向に延びる状態に貼り付けられている。したがって、下側取付板531を備えたシェル固定部53は、頭部・腕部用の下側体位固定具51に対してワンタッチで着脱可能となっている。
【0051】
[着脱式のシェル固定部を備えた膝部用の下側体位固定具の例]
図6Aは膝部用の下側体位固定具の例を示す説明図である。本例の膝部用の下側体位固定具61と、不図示の膝部用の固定シェルと、下側体位固定具61に取り付けた着脱式のシェル固定部63とを組み合わせて、膝部用の体位固定システムが構成される。
【0052】
下側体位固定具61は、放射線治療、CT検査、MRI検査において、治療ベッドに仰臥させた患者あるいは被験者の骨盤部を拘束できるようにするために両膝を載せるための膝固定具である。下側体位固定具61は、両面テープなどによって、治療台の天面に固定して用いられる。下側体位固定具61は、発泡体などの弾性素材が充填されたクッション611および、当該クッション611の底面に必要に応じて積層される高さ調整用板612とを備えている。クッション611は膝の折り曲げ状態に沿う山形形状の上面を備えており、当該上面の頂部には一定の間隔で左右に膝載せ用の湾曲面状の保持面613が形成されている。
【0053】
着脱式のシェル固定部63は、クッション611の幅方向の両側の側面の中程の部位において、それぞれ前後方向に延びる状態に取り付けられている。シェル固定部63は、前述のシェル固定部23(
図2)、33(
図3)、53(
図5)と同一構成であり、前後方向に延びる樹脂製の下側取付板631を備えている。下側取付板631には、前後方向に一定の間隔で例えば3個の係合突起632が一列状態に形成されている。係合突起632は、不図示の膝部用の体位固定シェルの両側の縁部に取り付けたシェル側取付板の取付穴に差し込み可能であり、各取付穴に対応する位置となるように配置されている。また、下側取付板631の前後の端には、一対の締結用のつまみ633が取り付けられている。
【0054】
下側取付板631の裏面には雄側面ファスナ(図示せず)が貼り付けられている。雄側面ファスナを取り付け可能な雌側面ファスナ(図示せず)が、膝用の下側体位固定具61の両側の縁部分に前後方向に延びる状態に貼り付けられている。したがって、下側取付板631を備えたシェル固定部63は、膝部用の下側体位固定具61に対してワンタッチで着脱可能となっている。
【0055】
ここで、
図6B(a)、
図6B(b)は、この構成の下側体位固定具61を天面1aに位置決め固定するための位置決め部の一例を示す説明図である。位置決め部はインデクスバー90を備えている。両面テープを備えた位置決め部、その他の構成の位置決め部を用いることも可能である。図に示すように、下側体位固定具61の裏面614には、幅方向に延びる複数条のバー装着溝615が形成されている。各バー装着溝615の底面には、幅方向に一定の間隔で、ピン頭部嵌め込み用の嵌合穴616が形成されている。この場合においても、先に述べた例の場合と同様に、天面1aに位置決め固定したインデクスバー90および2本のピン93に対して、下側体位固定具61の裏面の一条のバー装着溝615、一対の嵌合穴616を位置決めして、下側体位固定具61をインデクスバー90に取り付ける。インデクスバー90を介して、下側体位固定具61が天面1aに位置決め固定される。
【0056】
[一体式のシェル固定部を備えた頭部用の下側体位固定具の例]
図7は、シェル固定部が組み込まれて一体化された構成の頭部用の下側体位固定具の例を示す説明図である。頭部用の下側体位固定具71と、
図2A(b)に示す頭部用の体位固定シェル22と、下側体位固定具71に組み込まれた一体式のシェル固定部73とを組み合わせて、頭部用の体位固定システムが構成される。
【0057】
頭部用の下側体位固定具71は、基本的に
図2Aに示す下側体位固定具21と同一であり、全体として前後に長い長方形の樹脂発泡体からなる成形品である。下側体位固定具71は、その前端側に、患者の頸部分を前後方向(頭尾方向)に位置決めした状態で載せるための凸状の頸保持面711が形成されている。この後側には、頸保持面711の後端に滑らかに連続して患者の後頭部を載せるための湾曲状の後頭部保持面712が形成されている。下側体位固定具71の幅方向の両側は上下方向に延びる側面713、714となっており、底面は平坦な面となっており、治療台に両面テープ等によって固定される。側面713、714のそれぞれの下端縁部には、シェル固定部73が組み込まれている。
【0058】
シェル固定部73は、下側体位固定具71の側面713、714の下端縁部に沿って、前後方向に一定の間隔で固定した樹脂製の係合突起732を備えている。例えば、前後方向に一定の間隔で3個の係合突起732が一列状態に配列されている。係合突起732は、不図示の体位固定シェルのシェル側取付板の取付穴に差し込み可能であり、各取付穴に対応する位置となるように配置されている。また、下側体位固定具71の側面713、714の下端縁部における前後の端には、一対の締結用のつまみ733が取り付けられている。
【0059】
[一体式のシェル固定部を備えた頭部用の下側体位固定具の例]
図8(a)はシェル固定部が組み込まれて一体化された構成の頭部用の下側体位固定具を示す説明図であり、
図8(b)はそのシェル固定部を示す説明図である。これらの図に示す頭部用の下側体位固定具81と、
図3A(b)に示す頭部用の体位固定シェル32と、下側体位固定具81に組み込まれて一体化されたシェル固定部83とを組み合わせて、頭部用の体位固定システムが構成される。
【0060】
頭部用の下側体位固定具81は吸引式のバッグであり、
図3Aに示す下側体位固定具31と同一であるので、その説明を省略する。
【0061】
シェル固定部83は、前述のシェル固定部23(
図2A)と同様な構成であり、前後方向に延びる樹脂製の下側取付板831を備えている。下側取付板831には、前後方向に一定の間隔で例えば3個の係合突起832が一列状態に形成されている。係合突起832は、固定シェルのシェル側取付板の取付穴に差し込み可能であり、各取付穴に対応する位置となるように配置されている。また、下側取付板831の前後の端には、一対の締結用のつまみ833が取り付けられている。
【0062】
ここで、下側取付板831は、下側体位固定具81における幅方向の両側の縁部分の内部に組み込まれて一体化されている。係合突起832およびつまみ833は、下側体位固定具81の縁部分から外部に突出している。
【0063】
シェル固定部83が一体化された構成の下側体位固定具81を用いた場合においても、
図3Aに示す着脱式のシェル固定部33を備えた下側体位固定具31の場合と同様に、下側体位固定具81に体位固定シェルを固定できる。
【0064】
[その他の実施の形態]
なお、上記の各体位固定システムを組み合わせて用いることもできる。例えば、
図1の体位固定システム10と
図2Aに示す体位固定システム20の組み合わせ、
図1の体位固定システム10と
図3Aの体位固定システム30の組み合わせ、
図1の体位固定システム10と、
図2Aの体位固定システム20と
図6Aに示す下側体位固定具61を備えた体位固定システムとの組み合わせ等、各種の組み合わせからなる複合型体位固定システムを用いることができる。