特開2021-83700(P2021-83700A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021083700-自動車内装部品取付け用ファスナ 図000003
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-83700(P2021-83700A)
(43)【公開日】2021年6月3日
(54)【発明の名称】自動車内装部品取付け用ファスナ
(51)【国際特許分類】
   A44B 18/00 20060101AFI20210507BHJP
【FI】
   A44B18/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-214826(P2019-214826)
(22)【出願日】2019年11月28日
(71)【出願人】
【識別番号】000124454
【氏名又は名称】河西工業株式会社
(71)【出願人】
【識別番号】504452789
【氏名又は名称】ニッタモールド株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100069431
【弁理士】
【氏名又は名称】和田 成則
(74)【代理人】
【識別番号】100102761
【弁理士】
【氏名又は名称】須田 元也
(72)【発明者】
【氏名】廣瀬 謙
(72)【発明者】
【氏名】茂呂 拓実
【テーマコード(参考)】
3B100
【Fターム(参考)】
3B100DA06
3B100DB08
(57)【要約】
【課題】応力集中による破損を防止するのに好適な自動車内装部品取付け用ファスナを提供する。
【解決手段】自動車内装部品取付け用ファスナ1は、係合の相手部材に対して引っ掛かり係合する面ファスナ部2と、面ファスナ部を支持する支持台部3と、を備え、支持台部は自動車内装部品Tに対して面ファスナ部を装着固定するための係合溝4を有し、係合溝は面ファスナ部に隣接する第1の面4Aと、第1の面と対向する第2の面4Bと、第1の面と第2の面とを連結する第3の面4Cとを備え、かつ、第1の面4Aに対して第2の面4Bが傾斜した構造になっている。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
係合の相手部材に対して引っ掛かり係合する面ファスナ部と、この面ファスナ部を支持する支持台部と、を備えた自動車内装部品取付け用ファスナであって、
前記支持台部は、自動車内装部品に対して前記面ファスナ部を装着固定するための係合溝を有し、
前記係合溝は、前記面ファスナ部に隣接する第1の面と、該第1の面と対向する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面とを連結する第3の面とを備え、かつ、前記第1の面に対して前記第2の面が傾斜した構造になっていること
を特徴とする自動車内装部品取付け用ファスナ。
【請求項2】
前記第2の面と前記第3の面との境界部に、C面形状又はR面形状の補強部が設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の自動車内装部品取付け用ファスナ。
【請求項3】
前記第1の面と前記第3の面との境界部に、C面形状又はR面形状の補強部が設けられていること
を特徴とする請求項1に記載の自動車内装部品取付け用ファスナ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車内装部品(例えばドアトリム、ピラーカバー、天井、インパネ、コンソール、シート)を自動車の車体パネルに固定する手段として用いられる自動車内装部品取付け用ファスナに関し、特に、応力集中による破損を防止するのに好適なものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の自動車内装部品を自動車の車体パネルに取付ける際は、クリップと併用して、例えば特許文献1に記載されているファスナ(以下「従来ファスナ」という)が用いられる場合がある。
【0003】
図5を参照すると、従来ファスナ100は、係合の相手部材に対して引っ掛かり係合する面ファスナ部2と、この面ファスナ部2を支持する支持台部3とを備えている。支持台部3はその両側に係合溝4を有しており、この両側の係合溝4が対応する自動車内装部品側の凸条部に嵌め込み係合することで、従来ファスナ100は、自動車内装部品に装着固定された状態になる。
【0004】
ところで、自動車の車体パネルP側には、係合の相手部材として、従来ファスナ100の面ファスナ部2と同タイプの面ファスナ部21が設けられている。そして、その車体パネルP側の面ファスナ部21と従来ファスナ1の面ファスナ部2とを対向させ、この状態で、車体パネル側の面ファスナ部21に対して従来ファスナ1の面ファスナ部2を所定の力で押し付けると、それぞれの面ファスナ部2、21が互いに係合し、車体パネルPに対して自動車内装部品Tが固定された状態になる。
【0005】
しかしながら、従来ファスナ1に設けられている前述の係合溝4は、面ファスナ部2に隣接する第1の面4Aと、該第1の面4Aと対向する第2の面4Bと、第1の面4Aと第2の面4Bとを連結する第3の面4Cとで構成されており、これらの面4A、4B、4Cの境界部BD1、BD2で応力集中が生じるため、従来ファスナ1は応力集中による破損という問題点を有している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2018−64964号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、前記問題点を解決するためになされたものであり、その目的は、応力集中による破損を防止するのに好適な自動車内装部品取付け用ファスナを提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記目的を達成するために、本発明は、係合の相手部材に対して引っ掛かり係合する面ファスナ部と、この面ファスナ部を支持する支持台部と、を備えた自動車内装部品取付け用のファスナであって、前記支持台部は、自動車内装部品に対して前記面ファスナ部を装着固定するための係合溝を有し、前記係合溝は、前記面ファスナ部に隣接する第1の面と、該第1の面と対向する第2の面と、前記第1の面と前記第2の面とを連結する第3の面とを備え、かつ、前記第1の面に対して前記第2の面が傾斜した構造になっていることを特徴とする。
【0009】
前記本発明において、前記第2の面と前記第3の面との境界部に、C面形状又はR面形状の補強部が設けられていることを特徴としてもよい。
【0010】
前記本発明において、前記第1の面と前記第3の面との境界部に、C面形状又はR面形状の補強部が設けられていることを特徴としてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明にあっては、自動車内装部品取付け用ファスナの具体的な構造として、前述の通り、第1の面に対して第2の面が傾斜した構造を採用した。このため、その傾斜を第3の面に向って上り勾配の傾斜となるように構成することで、第2の面と第3の面との境界部付近の肉厚増量を図れるので、境界部付近での応力集中による破損を防止するのに好適である。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】本発明の第1の実施形態である自動車内装部品取付け用ファスナとこれを装着固定した自動車内装部品の断面図。
図2】本発明の第2の実施形態(R面形状の補強部)である自動車内装部品取付け用ファスナの断面図。
図3】本発明の第2の実施形態(C面形状の補強部)である自動車内装部品取付け用ファスナの断面図。
図4図5は本発明の第1および第2の実施形態に適用できる共通の構成の説明図であり、同図(a)は自動車内装部品取付け用ファスナ1の裏面図、同図(b)は同図(a)のA矢視断面図。
図5図5(a)は従来のファスナの斜視図、同図(b)は同図(a)のB矢視断面図。
【発明を実施するための最良の形態】
【0013】
以下、本発明を実施するための最良の形態について、添付した図面を参照しながら詳細に説明する。
【0014】
《第1の実施形態》
図1は、本発明の第1の実施形態である自動車内装部品取付け用ファスナとこれを装着固定した自動車内装部品の断面図である。
【0015】
図1の自動車内装部品取付け用ファスナ1は、係合の相手部材に対して引っ掛かり係合する面ファスナ部2と、この面ファスナ部2を支持する支持台部3と、を備えた構造になっている。
【0016】
面ファスナ部2の具体的な構造・形態として、図1の自動車内装部品取付け用ファスナ1では、いわゆる周知のマッシュルーム形状タイプのものを採用しているが、このタイプに限定されることはない。
【0017】
図1の自動車内装部品取付け用ファスナ1(以下「ファスナ1」という)は射出成形によって製造されている。その製造方法は、まず樹脂製の面ファスナ部2と、支持台部3を射出成形するための金型とを用意し、その金型に対して用意した面ファスナ部2をセットした後、同金型内に溶融樹脂を射出することで、面ファスナ部2の裏面に支持台部3が一体化された状態のファスナ1を得るというものである。
【0018】
支持台部3は、自動車内装部品T(例えば、天井)に対して面ファスナ部2を装着固定するための係合溝4を有しており、かかる係合溝4は、面ファスナ部2に隣接する第1の面4Aと、該第1の面4Aと対向する第2の面4Bと、第1の面4Aと第2の面4Bとを連結する第3の面4Cとを備えている。
【0019】
自動車内装部品Tに対する図1のファスナ1の具体的な装着固定構造例として、図1のファスナ1では、前述の係合溝4を支持台部3の両側に1つずつ形成する一方、これら両側の係合溝4に対応する凸条部5を自動車内装部品T側に設け、それぞれの係合溝4を対応する凸条部5に対して嵌め込み係合させる構成を採用している。
【0020】
第2の面4Bは第1の面4Aに対して傾斜した構造になっている。第2の面4Bと第3の面4Cとの境界部BD1には応力が集中し易い。このため、図1のファスナ1では、第1の面4Aに対する第2の面4Bの傾斜が第3の面4Cに向って上り勾配の傾斜となるように構成することで、境界部BD1付近の肉厚を増やし、境界部BD1付近の曲げ強度を高めて、境界部BD1付近での応力集中による破損を防止している。
【0021】
前記上り勾配の角度、すなわち第2の面の傾斜角度は、図1の例に限定されることはなく、必要に応じて適宜変更することができる。
【0022】
自動車の車体パネルP側には、係合の相手部材として、図1のファスナ1の面ファスナ部2と同タイプ(具体的にはマッシュルーム形状タイプ)の面ファスナ部21(以下「車体パネル側面ファスナ部21」という)が設けられている。この車体パネル側面ファスナ部21に対して図1のファスナ1の面ファスナ部2が引っ掛かり係合することにより、図1のファスナ1は、車体パネルPに対して自動車内装部品Tをしっかり固定する手段として機能する。
【0023】
以上説明した図1のファスナ1によると、その具体的な構造として、前述の通り、第1の面4Aに対して第2の面4Bが傾斜した構造を採用し、その傾斜を第3の面4Cに向って上り勾配の傾斜となるように構成することで、第2の面4Bと第3の面4Cとの境界部BD1付近の肉厚増量を図ったため、境界部BD1付近の曲げ強度が高まり、境界部BD1付近での応力集中による破損を防止するのに好適である。
【0024】
《第2の実施形態》
図2は、本発明の第2の実施形態(R面形状の補強部)である自動車内装部品取付け用ファスナの断面図、図3は、本発明の第2の実施形態(C面形状の補強部)である自動車内装部品取付け用ファスナの断面図である。
【0025】
図2において、第1の面4Aに対して第2の面4Bが傾斜した構造になっている等、図2の自動車内装部品取付け用ファスナ1(以下「ファスナ1」という)の基本的な構成については、図1のファスナ1と同様であるため、同一部材には同一符号を付し、その詳細説明は省略する。この点は図3でも同様である。
【0026】
図2のファスナ1では、第2の面4Bと第3の面4Cとの境界部に、R面(円弧面)形状の補強部51(以下「第1の補強部61」という)が設けられる構成、および、第1の面4Aと第3の面4Cとの境界部に、R面(円弧面)形状の補強部62(以下「第2の補強部62」という)が設けられる構成を採用している。
【0027】
図1図2のファスナ1の横断面形状、すなわち、係合溝4と直交する線に沿ってそのファスナ1全体を切断した面の形状は、係合溝4の部分でくびれた形状になっており、そのくびれの根元、すなわち、第2の面4Bと第3の面4Cとの境界部BD1、および、第1の面4Aと第3の面4Cとの境界部BD2には、比較的応力が集中し易い。
【0028】
このため、図2のファスナ1では、第2の面4Bと第3の面4CとのBD1境界部、および第1の面4Aと第3の面4Cとの境界部BD2を、R面(円弧面)形状とすることで補強し、境界部BD1、BD2付近における応力集中の緩和を図り、境界部BD1、BD2付近での応力集中による破損を防止している。
【0029】
前記R面(円弧面)形状は、前述の通り、応力集中を緩和する手段として意図的ないしは積極的に付与されたものであり、金型成形や機械加工等の製造上必然的に形成されるR面形状とはその用途ないしは機能が異なるものである。この点は後述のC面形状も同様である。
【0030】
先に説明した第1および第2の補強部51、52は図3のようにC面形状となるように構成してもよく、この場合も同様の作用効果が得られる。
【0031】
また、第1および第2の補強部51、52のうちいずれか一方を省略することも可能であり、さらに、第1の補強部51をR面形状とし、かつ、第2の補強部52をC面形状とする、あるいは、第1の補強部51をC面形状とし、かつ、第2の補強部52をR面形状としてもよい。また、補強部51、52の形状はC面形状やR面形状に限定されず、必要に応じて適宜変更することができる。
【0032】
《第1および第2の実施形態に適用できる共通の構成》
図5は本発明の第1および第2の実施形態に適用できる共通の構成の説明図であり、同図(a)は自動車内装部品取付け用ファスナ1の裏面図、同図(b)は(a)中のB矢視断面図である。
図1から図3のファスナ1において、その支持台部3は、例えば、図5(a)(b)に示したように外周枠体31と、この外周枠体31の内側に設けた複数のリブ32とで構成することができる。この構成において、複数のリブ32は、外周枠体31の中央部付近で十字状にクロスした形状のリブ32A(以下「十字リブ32A」という)と、縦縞格子形状または横縞格子形状のリブ32B(以下「格子リブ32B」という)とで構成されるとともに、格子リブ32Bに比べて、十字リブ32Aの高さの方が高くなるように構成してある。
【0033】
前述の射出成形によって図1から図3のファスナ1を製造する場合は、支持台部3の外面付近とその内部とで溶融樹脂の冷え方ないしは固まり方に差が生じるため、支持台部3において許容できない湾曲が発生し、その影響によって面ファスナ部2に歪みが生じる等、図1から図3のファスナ1では成形不良の発生が想定される。
【0034】
それに対し、図1から図3のファスナ1において図4の支持台部3を適用した場合は、外周枠体31よりも先に複数のリブ32が冷えて固まることで、外周枠体31の収縮が低減することから、射出成形の過程でファスナ1全体が湾曲し難くなる。
【0035】
車体パネルPに対して自動車内装部品Tを固定する際は、ファスナ1の面ファスナ部2と車体パネル側面ファスナ部21とを図1のように対向させ、車体パネル側面ファスナ部21に対してファスナ1の面ファスナ部2を所定力で押し付けることで、それぞれの面ファスナ部2、21を互いに係合させる。
【0036】
この際、例えば、図1から図3のファスナ1においてその片側又は両側が車体パネル側面ファスナ部21に向って反り上がって湾曲した形状になっている場合、前述の押付け力により、前記反りは一旦無くなる。しかしながら、その押付け力が解除された途端に、元の反りの状態に戻ろうとする下向きの力(具体的には、面ファスナ部2から見て支持台部3の方向を向いた力)が発生する。支持台部3と面ファスナ部2との境界面は射出成形による接合面になっているので、前記のような下向きの力によって、その接合面付近から面ファスナ部2と支持台部3が分離し、ファスナ部2は支持台部3から剥がれやすくなるものと考えられる。
【0037】
この点、図1から図3のファスナ1において図4の支持台部3を適用した場合は、前述の通りファスナ1全体の湾曲や歪みが減るから、先に説明した下向きの力は減少し、面ファスナ部2が支持台部3から剥がれるといった前述の不具合は生じ難い。
【0038】
本発明は、以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当分野において通常の知識を有する者により多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0039】
1 自動車内装部品取付け用ファスナ
2 面ファスナ部
21 係合相手の面ファスナ部
3 支持台部
31 外周枠体
32A リブ(十字リブ)
32B リブ(格子リブ)
4 係合溝
4A 第1の面
4B 第2の面
4C 第3の面
5 凸条部
BD1、BD2 境界部
P 車体パネル
T 自動車内装部品
図1
図2
図3
図4
図5