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特開2021-8396ジオポリマー組成物とその製造方法、ジオポリマー組成物用混和剤、及びジオポリマー硬化体
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-8396(P2021-8396A)
(43)【公開日】2021年1月28日
(54)【発明の名称】ジオポリマー組成物とその製造方法、ジオポリマー組成物用混和剤、及びジオポリマー硬化体
(51)【国際特許分類】
   C04B 28/26 20060101AFI20201225BHJP
   C04B 24/38 20060101ALI20201225BHJP
   C04B 18/10 20060101ALI20201225BHJP
   C04B 18/14 20060101ALI20201225BHJP
   C04B 24/16 20060101ALI20201225BHJP
   C04B 24/12 20060101ALI20201225BHJP
   C04B 22/08 20060101ALI20201225BHJP
【FI】
   C04B28/26
   C04B24/38 C
   C04B18/10 A
   C04B18/14 A
   C04B24/16
   C04B24/12 A
   C04B22/08 A
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2020-109407(P2020-109407)
(22)【出願日】2020年6月25日
(31)【優先権主張番号】特願2019-122937(P2019-122937)
(32)【優先日】2019年7月1日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】000188951
【氏名又は名称】松本油脂製薬株式会社
(72)【発明者】
【氏名】北野 健一
(72)【発明者】
【氏名】植村 和史
(72)【発明者】
【氏名】雑賀 正隆
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 良貢
【テーマコード(参考)】
4G112
【Fターム(参考)】
4G112MB02
4G112PA26
4G112PA29
4G112PB06
4G112PB20
4G112PB40
(57)【要約】      (修正有)
【課題】比重が均一で、収縮低減性に優れたジオポリマー硬化体を得ることができるジオポリマー組成物とその製造方法、該ジオポリマー組成物の製造に好適に用いられるジオポリマー組成物用混和剤及び該ジオポリマー組成物の硬化物であるジオポリマー硬化体の提供。
【解決手段】基材成分(A)と、水溶性セルロースエーテル(B)と、アニオン性界面活性剤(C)とを含むジオポリマー組成物であって、前記基材成分(A)が石炭灰及び/または高炉スラグを含み、20℃における前記水溶性セルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液の粘度が、100〜50000mPa・sである、ジオポリマー組成物。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材成分(A)と、水溶性セルロースエーテル(B)と、アニオン性界面活性剤(C)とを含むジオポリマー組成物であって、
前記基材成分(A)が石炭灰及び/または高炉スラグを含み、
20℃における前記水溶性セルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液の粘度が、100〜50000mPa・sである、
ジオポリマー組成物。
【請求項2】
ジオポリマー組成物の水不溶分の濃度82.5重量%の水分散液の20℃におけるpHが12以上14以下である、請求項1に記載のジオポリマー組成物。
【請求項3】
両性界面活性剤(D)をさらに含む、請求項1または2に記載のジオポリマー組成物。
【請求項4】
アルカリ金属珪酸塩を必須に含むアルカリ成分(E)をさらに含む、請求項1〜3のいずれかに記載のジオポリマー組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれかに記載のジオポリマー組成物の製造方法であって、
基材成分(A)と、ジオポリマー組成物用混和剤とを混合する工程を含み、
前記基材成分(A)が石炭灰及び/または高炉スラグを含み、
前記ジオポリマー組成物用混和剤が水溶性セルロースエーテル(B)と、アニオン性界面活性剤(C)とを含み、
20℃における前記水溶性セルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液の粘度が100〜50000mPa・sである、
ジオポリマー組成物の製造方法。
【請求項6】
前記ジオポリマー組成物用混和剤が両性界面活性剤(D)をさらに含む、請求項5に記載のジオポリマー組成物の製造方法。
【請求項7】
水溶性セルロースエーテル(B)と、アニオン性界面活性剤(C)とを含むジオポリマー組成物用混和剤であって、
20℃における前記水溶性セルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液の粘度が、100〜50000mPa・sである、
ジオポリマー組成物用混和剤。
【請求項8】
両性界面活性剤(D)をさらに含む、請求項7に記載のジオポリマー組成物用混和剤。
【請求項9】
請求項1〜4のいずれかに記載のジオポリマー組成物の硬化物である、ジオポリマー硬化体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ジオポリマー組成物とその製造方法、ジオポリマー組成物用混和剤、及びジオポリマー硬化体に関する。
【背景技術】
【0002】
コンクリートやモルタル等の硬化体は、それぞれ建設材料として世界中で広く使用されており、主原料であるセメントの世界需要は今後もその生産量が増すと予測されている。セメントは、石灰石の化学分解により製造されるが、その際に大量の二酸化炭素が排出されるため、地球温暖化へ繋がる可能性もあり、セメントに代わる原料が求められている。
なかでも、フランスのDavidovitsらによって提唱された石炭灰や高炉スラグ、メタカオリン等を用いたジオポリマーは、セメントに変わる原料としてだけでなく、二酸化炭素の低減や廃棄物の有効活用の観点からも、重要な技術として開発が行われている。
【0003】
ジオポリマーに関しては、吸水率が30wt%以上であり、最大空孔径が1mm以下であり、含まれる空孔のうち、40%以上が吸水に関与する空孔であることを特徴とする分散性に優れる吸水性ジオポリマー素材が特許文献1に例示されており、気泡導入のために発泡剤として、過酸化水素水、過酸化ナトリウム、過酸化カリウム、過ホウ酸ナトリウム等の過酸化物が好ましいとされている。
また、特許文献2では、水と、化学活性化剤と、セメント質反応性材料とを含み、化学活性化剤がアルカリ金属塩、アルカリ金属塩基、およびそれらの混合物からなる群より選択されるものであり、セメント質反応性材料が熱活性化アルミノケイ酸塩鉱物、アルミン酸カルシウムセメント、硫酸カルシウム二水和物、硫酸カルシウム半水和物、無水硫酸カルシウムおよびそれらの混合物からなる群より選択される硫酸カルシウムを含む、アルミノケイ酸塩ジオポリマー組成物が例示されており、ジオ成分とセメント質反応性材料の調製とそれに伴う急結反応の遅延・発熱緩和により、ジオポリマー硬化体にひび割れ等が発生する事を防止できるとしている。ただし、特許文献2に例示されるセメント系成分は通常流通しているセメントであり、二酸化炭素の削減効果は低い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2011−219281号公報
【特許文献2】特表2015−514675号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、特許文献1のジオポリマー素材では、発泡剤により導入される気泡の径の制御が困難であり、得られるジオポリマー硬化体の内部の気泡径が不均一となりがちであった。また、硬化体内部の気泡も偏在、局在しており、硬化体の比重の均一性が低くなることが確認され、さらに収縮低減性も劣ることが確認された。
また、特許文献2のジオポリマー組成物では、導入された気泡が、発熱による組成物の温度上昇により、偏在や粗大化、合一化し、得られるジオポリマー硬化体に導入される気泡径が不均一となり、硬化体の比重の均一性が低下することが確認された。また、硬化体の収縮低減性も不十分であった。
【0006】
このように、比重が均一で、収縮低減性に優れたジオポリマー硬化体を得ることができるジオポリマー組成物はこれまでなかった。
本発明の目的は、比重が均一で、収縮低減性に優れたジオポリマー硬化体を得ることができるジオポリマー組成物とその製造方法、該ジオポリマー組成物の製造に好適に用いられるジオポリマー組成物用混和剤及び該ジオポリマー組成物の硬化物であるジオポリマー硬化体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、特定の基材成分と、特定の水溶性セルロースエーテルと、アニオン性界面活性剤とを含むジオポリマー組成物であれば、比重が均一で、収縮低減性に優れたジオポリマー硬化体を得ることができることを見出し、本発明に到達した。
【0008】
すなわち本発明は、基材成分(A)と、水溶性セルロースエーテル(B)と、アニオン性界面活性剤(C)とを含むジオポリマー組成物であって、前記成分(A)が石炭灰及び/または高炉スラグを含み、20℃における前記セルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液の粘度が、100〜50000mPa・sである、ジオポリマー組成物である。
【0009】
ジオポリマー組成物の水不溶分の濃度82.5重量%の水分散液の20℃におけるpHが12以上14以下であると好ましい。
両性界面活性剤(D)をさらに含むと好ましい。
アルカリ金属珪酸塩を必須に含むアルカリ成分(E)をさらに含むと好ましい。
【0010】
本発明のジオポリマー組成物の製造方法は、上記のジオポリマー組成物の製造方法であって、基材成分(A)と、ジオポリマー組成物用混和剤とを混合する工程を含み、前記ジオポリマー組成物用混和剤が水溶性セルロースエーテル(B)と、アニオン性界面活性剤(C)とを含み、20℃における前記水溶性セルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液の粘度が100〜50000mPa・sである、ジオポリマー組成物の製造方法である。
前記混和剤が両性界面活性剤(D)をさらに含むと好ましい。
【0011】
本発明のジオポリマー組成物用混和剤は、水溶性セルロースエーテル(B)と、アニオン性界面活性剤(C)とを含むジオポリマー組成物用混和剤であって、20℃における前記セルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液の粘度が、100〜50000mPa・sである。
両性界面活性剤(D)をさらに含むと好ましい。
【0012】
本発明のジオポリマー硬化体は、上記のジオポリマー組成物の硬化物である。
【発明の効果】
【0013】
本発明のジオポリマー組成物は、比重が均一で収縮低減性に優れたジオポリマー硬化体を得ることができる。
本発明のジオポリマー組成物の製造方法は、比重が均一で収縮低減性に優れたジオポリマー硬化体を得ることができるジオポリマー組成物を効率的に製造することができる。
本発明のジオポリマー組成物用混和剤は、比重が均一で収縮低減性に優れたジオポリマー硬化体を得ることができるジオポリマー組成物を得ることができる。
本発明のジオポリマー硬化体は、比重が均一で収縮低減性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明のジオポリマー組成物は、基材成分(A)と、水溶性セルロースエーテル(B)と、アニオン性界面活性剤(C)とを含むものである。以下、ジオポリマー組成物に含まれる各材料を詳しく説明する。
【0015】
〔基材成分(A)〕
基材成分(A)(以下、単に成分(A)ということがある)は、SiO及びAlを含み、硬化する材料であり、石炭灰及び/または高炉スラグを必須に含む。成分(A)が石炭灰及び/または高炉スラグを含むことで、比重が均一で、収縮低減性に優れるジオポリマー硬化体(以下、単に硬化体ということがある)を得ることができる。
石炭灰としては、たとえば、流動床石炭灰、フライアッシュ、クリンカアッシュ等を挙げることができる。また、高炉スラグは、高炉で鉄を精製する際に副生する残渣である。
【0016】
成分(A)は、石炭灰及び/または高炉スラグ以外のものを含んでもよい。石炭灰及び/または高炉スラグ以外のものとしては、都市ごみ焼却灰溶融スラグ、下水汚泥焼却灰溶融スラグ、メタカオリン、製鋼スラグ等を挙げることができる。
成分(A)に占める石炭灰及び/または高炉スラグの重量割合は、特に限定されないが、好ましくは35〜100重量%、より好ましくは40〜100重量%、さらに好ましくは45〜100重量%、特に好ましくは47.5〜100重量%、最も好ましくは50〜100重量%である。成分(A)に占める石炭灰及び/または高炉スラグの重量割合が35重量%未満の場合、硬化体の硬化不良が発生し、また、粉吹きにより外観が損なわれることがある。
【0017】
〔水溶性セルロースエーテル(B)〕
水溶性セルロースエーテル(B)(以下、セルロースエーテル(B)ということがある)は、非イオン性のセルロース誘導体である。セルロースエーテル(B)を含むことで、ジオポリマー組成物に適度な粘性を付与することができ、ジオポリマー組成物に含まれる材料の材料不分離性が向上する。また、ジオポリマー組成物に導入される気泡の安定性も向上し、比重が均一で、収縮低減性に優れたジオポリマー硬化体を得ることができる。
セルロースエーテル(B)は、その水溶液が40℃以上90℃未満のゲル化点を示すと、本願効果を奏する点で、好ましい。なお、本発明におけるセルロースエーテル(B)の水溶液のゲル化点は、可視光線透過率測定装置を使用し、セルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液を一定の昇温速度で加熱し、セル長10mmにおける波長650nmの可視光の透過度を測定し、20℃での透過度を100%とし、90℃での透過度を0%とした際の50%透過度を示す温度をゲル化点とした。
【0018】
セルロースエーテル(B)としては、たとえば、メチルセルロース等のアルキルセルロース;ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース等のヒドロキシアルキルセルロース;ヒドロキシエチルメチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース等のヒドロキシアルキルアルキルセルロース等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
セルロースエーテル(B)は、本願効果を奏する点で、水酸基を有すると好ましい。
【0019】
セルロースエーテル(B)において、20℃におけるセルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液の粘度は、100〜50000mPa・sである。濃度2重量%の水溶液の粘度が100mPa・s未満であると、材料不分離性が低下し、比重が均一な収縮低減性に優れた硬化体が得られない。一方、50000mPa・s超であると、均一な気泡を導入できず、得られる硬化体の比重が不均一になる。また、セルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液の粘度が上記範囲外であると、硬化体の製造効率が低下する。
20℃におけるセルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液の粘度は、好ましくは150mP〜45000mPa・s、より好ましくは200〜40000mPa・s、さらに好ましくは250〜35000mPa・s、特に好ましくは300〜30000mPa・s、最も好ましくは350〜25000mPa・sである。なお、20℃におけるセルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液の粘度は、B型粘度計を用いて測定した。
【0020】
ジオポリマー組成物において、セルロースエーテル(B)の含有量は、特に限定されないが、成分(A)100重量部に対して0.10〜2.5重量部であると好ましい。セルロースエーテル(B)の含有量が0.10重量部未満であると、材料不分離性が低下することがある。一方、セルロースエーテル(B)の含有量が2.5重量部超であると、均一な気泡を導入できず、得られる硬化体の比重が不均一になることがある。また、硬化体の製造効率も低下することがある。
セルロースエーテル(B)の含有量は、より好ましくは0.125〜2.25重量部、さらに好ましくは0.15〜2.0重量部、特に好ましくは0.175〜1.75重量部、最も好ましくは0.2〜1.50重量部である。
【0021】
〔アニオン性界面活性剤(C)〕
アニオン性界面活性剤(C)(以下、単に活性剤(C)ということがある)は、ジオポリマー組成物に均一な気泡を導入できる材料である。これにより、得られるジオポリマー硬化体は軽量で、比重が均一となる。また、得られる硬化体は凍害による割れを抑制することができる。
さらに、ジオポリマー組成物は活性剤(C)を含むことで、セルロースエーテル(B)と活性剤(C)が相互作用し、セルロースエーテル(B)が活性剤(C)により保護され、ジオポリマー組成物中でセルロースエーテル(B)の安定性を向上させることができると考えられ、導入される気泡の安定性が向上する。
【0022】
活性剤(C)としては、たとえば、カルボン酸塩、スルホン酸塩、硫酸エステル塩、リン酸エステル塩等を挙げることができる。
カルボン酸塩は、特に限定はないが、本願効果を奏する点で、炭素原子を8〜22個有するものであると好ましい。カルボン酸塩の有する炭素原子の数は、より好ましくは10〜20、最も好ましくは12〜18である。カルボン酸塩としては、たとえば、オレイン酸ナトリウム、パルミチン酸カリウム等の脂肪酸塩;N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等のアシルアミノ酸塩等を挙げることができる。
【0023】
スルホン酸塩は、特に限定はないが、本願効果を奏する点で、炭素原子を8〜20個有するものであると好ましい。スルホン酸塩の有する炭素原子の数は、より好ましくは8〜18個、特に好ましくは10〜16個である。スルホン酸塩としては、たとえば、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;2−スルホテトラデカン酸−1−メチルエステルナトリウム塩、2−スルホヘキサデカン酸−1−メチルエステルナトリウム塩等のα−スルホ脂肪酸エステル塩;テトラデセンスルホン酸ナトリウム等のα−オレフィンスルホン酸塩等を挙げることができる。
【0024】
硫酸エステル塩は、特に限定はないが、本願効果を奏する点で、炭素原子を8〜20個有するものであると好ましい。硫酸エステル塩の有する炭素原子の数は、より好ましくは10〜18個、特に好ましくは11〜17個である。硫酸エステル塩としては、たとえば、ラウリル硫酸ナトリウム塩、ラウリル硫酸アンモニウム塩、ステアリル硫酸ナトリウム塩、セチル硫酸ナトリウム塩のアルキル硫酸エステル塩等を挙げることができる。
リン酸エステル塩は、特に限定はないが、本願効果を奏する点で、炭素原子を8〜20個有するものであると好ましい。リン酸エステル塩の有する炭素原子の数は、より好ましくは8〜18個、特に好ましくは10〜16個である。リン酸エステル塩としては、ラウリルリン酸ナトリウム塩、ラウリルリン酸カリウム塩等の高級アルコールリン酸エステル塩やそのアルキレンオキシド付加物等を挙げることができる。
【0025】
活性剤(C)は上記の1種または2種以上を併用してもよい。また、活性剤(C)は、本願効果を奏する点で、アルカリ金属塩であると好ましい。
【0026】
ジオポリマー組成物における活性剤(C)の含有量は、特に限定されないが、成分(A)100重量部に対して0.10〜2.5重量部であると好ましい。活性剤(C)の含有量が0.10重量部未満であると、導入される気泡が不充分となり、また、導入される気泡の安定性が低下することがある。一方、活性剤(C)の含有量が2.5重量部超であると、導入される気泡が過剰となり、得られる硬化体の強度が低下することがある。
活性剤(C)の含有量は、より好ましくは0.125〜2.25重量部、さらに好ましくは0.15〜2.0重量部、特に好ましくは0.175〜1.75重量部、最も好ましくは0.20〜1.5重量部である。
【0027】
ジオポリマー組成物におけるセルロースエーテル(B)と活性剤(C)の含有量の比(セルロースエーテル(B)/活性剤(C))は、特に限定されないが、30/70〜90/10であると好ましい。セルロースエーテル(B)/活性剤(C)が30/70未満であると、ジオポリマー組成物に導入される気泡の安定性が低下することがある。一方、セルロースエーテル(B)と活性剤(C)の含有量の比が90/10を超えると、ジオポリマー組成物の材料不分離性が低下することがある。セルロースエーテル(B)/(C)は、より好ましくは32.5/67.5〜87.5/12.5、さらに好ましくは35/65〜85/15、特に好ましくは37.5/62.5〜82.5/17.5、最も好ましくは40/60〜80/20である。
【0028】
〔両性界面活性剤(D)〕
本発明のジオポリマー組成物は、さらに両性界面活性剤(D)(以下、単に活性剤(D)ということがある)を含んでもよい。ジオポリマー組成物が活性剤(D)を含むと、導入される気泡の発生、及び導入される気泡の安定性をさらに向上させることができ、好ましい。これは、活性剤(D)と活性剤(C)とが相互作用し、活性剤(C)の安定性が向上し、それに伴いセルロースエーテル(B)の安定性がさらに向上するためであると考えられる。
【0029】
活性剤(D)としては、たとえば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリル−β−アラニン、N−ステアリル−β−アラニン等のアミノ酸系両性界面活性剤等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
活性剤(D)は、本願効果を奏する点から、ベタイン系両性界面活性剤及び/またはアミノ酸系両性界面活性剤であると好ましい。
【0030】
本発明のジオポリマー組成物が活性剤(D)を含む場合、ジオポリマー組成物における活性剤(D)の含有量は、特に限定されないが、成分(A)100重量部に対して0.050〜1.0重量部であると好ましい。活性剤(D)の含有量が0.050重量部未満であると、導入される気泡が不充分となり、また、導入される気泡の安定性が低下することがある。一方、活性剤(D)の含有量が1.0重量部超であると、導入される気泡が過剰となり、得られる硬化体の強度が低下することがある。活性剤(D)の含有量は、より好ましくは0.10〜0.93重量部、さらに好ましくは0.13〜0.85重量部、特に好ましくは0.15〜0.77重量部、最も好ましくは0.17〜0.70重量部である。
【0031】
本発明のジオポリマー組成物が活性剤(D)を含む場合、ジオポリマー組成物における活性剤(C)と活性剤(D)の含有量の比(活性剤(C)/活性剤(D))は、本願効果を奏する点で、(1)30/70〜70/30、(2)32.5/67.5〜67.5/32.5、(3)35/65〜65/35、(4)37.5/62.5〜62.5/37.5、(5)40/60〜60/40の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるほど、好ましい)。
【0032】
〔アルカリ成分(E)〕
本発明のジオポリマー組成物は、アルカリ金属珪酸塩を必須とするアルカリ成分(E)(以下、単に成分(E)ということがある)をさらに含むと、得られる硬化体は収縮低減性が向上するため、好ましい。
アルカリ金属珪酸塩としては、たとえば、珪酸リチウム、珪酸ナトリウム、珪酸カリウム等を挙げることができ、1種または2種以上併用してもよい。また、成分(E)において、アルカリ金属珪酸塩以外のものとしては、たとえば、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ金属の水酸化物;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等のアルカリ土類金属の水酸化物等を挙げることができ、1種または2種以上併用してもよい。
【0033】
成分(E)に占めるアルカリ金属珪酸塩の重量割合は、特に限定されないが、20〜100重量%であると好ましい。アルカリ金属珪酸塩の重量割合が20重量%未満であると、得られる硬化体の収縮低減性が低下することがある。成分(E)に占めるアルカリ金属珪酸塩の重量割合は、より好ましくは25〜95重量%、さらに好ましくは30〜90重量%、特に好ましくは35〜85重量%、最も好ましくは40〜80重量%である。
【0034】
本発明のジオポリマー組成物が成分(E)を含む場合、ジオポリマー組成物における成分(E)の含有量は、特に限定されないが、成分(A)100重量部に対して5.0〜50重量部であると好ましい。成分(E)の含有量が2.5重量部未満であると、得られる硬化体は硬化が不十分で、硬化体の収縮低減性が低下することがある。一方、成分(E)の含有量が50重量部超であると、得られる硬化体の表面に粉吹きや塩の析出が発生し、外観が損なわれることがある。成分(E)の含有量は、より好ましくは7.5〜45.7重量部、さらに好ましくは10〜45重量部、特に好ましくは12.5〜42.5重量部、最も好ましくは15〜40重量部である。
【0035】
〔水〕
本発明のジオポリマー組成物は、材料の分散性や硬化体の成形性の観点から、水を含むと好ましい。水としては、水道水、イオン交換水、軟水、蒸留水等が挙げられる。
本発明のジオポリマー組成物が水を含む場合、ジオポリマー組成物全体に占める水の重量割合は、特に限定されないが、15〜30重量%であると好ましい。水の重量割合が15重量%未満の場合、ジオポリマー組成物の粘度が大きくなり、成形性が低下することがある。また、均一な気泡を導入できないことがある。一方、水の重量割合が30重量%超の場合、硬化体の寸法安定性が低下することがある。水の重量割合は、より好ましくは18〜28重量%、特に好ましくは20〜25重量%である。
【0036】
また、ジオポリマー組成物は、アルコール、ポリアルキレングリコール、ポリグリセリン等を含んでもよい。アルコールとしては、たとえば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセンリン等を挙げることができる。ポリアルキレングリコールとしては、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレンプロピレングリコール等を挙げることができる。
【0037】
〔骨材〕
本発明のジオポリマー組成物はさらに骨材を含んでもよい。骨材としては、川砂利、山砂利、海砂利、砕石、火山礫軽量骨材、珪砂、珪石粉、シリカフューム、石灰石粉等の天然骨材;スラグ骨材、人工軽量骨材、重量骨材等の人工骨材を挙げることができ、1種または2種以上併用してもよい。また、骨材の粒度は、所望の硬化体にあわせて適宜調整することができる。
本発明のジオポリマー組成物は骨材を含む場合、ジオポリマー組成物において、骨材の含有量は、特に限定されないが、成分(A)100質量部に対して50〜600重量部であると好ましく、より好ましくは75〜500質量部、さらに好ましくは100〜400重量部である。
【0038】
〔その他成分〕
本発明のジオポリマー組成物は、上記で説明した材料以外に、本願効果を損なわない範囲で、繊維、軽量化剤、充填剤、セメント成分、凝結調整剤、粘度調整剤、保水剤、消泡剤、膨張剤、防水剤、撥水剤、防錆剤、着色剤等をさらに含んでもよい。
繊維としては、たとえば、ガラス繊維、炭素繊維等の無機繊維;パルプ、ビニロン繊維、ポリプロピレン繊維等の有機繊維等を挙げることができる。
軽量化剤としては、たとえば、パーライト等の無機軽量剤;ポリスチレン系等の有機発泡剤;有機質中空微小球等の有機軽量化材を挙げることができる。
充填剤としては、たとえば、有機充填剤や無機充填剤を挙げることができる。有機充填剤としては、たとえば、アラビアゴム、トラガントガム、グアーガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、クインスシード、ゼラチン、セラック、ロジン、カゼイン、スターチ等の天然高分子化合物;アルギン酸ナトリウム、エステルガム、ニトロセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、結晶セルロース、デキストリン等の半合成高分子化合物;ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、ポリアクリル酸ナトリウム、カルボキシビニルポリマー、ポリビニルメチルエーテル、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、尿素樹脂、ポリアミド樹脂、シリコーン、ナイロン、ポリアクリル酸エステル、ポリメタクリル酸エステル、架橋ポリスチレン、ウレタン、ポリエチレン、フッ素樹脂等の樹脂等を挙げることができる。無機充填剤としては、たとえば、非晶質シリカ粉体、パーライト、ゼオライト、珪藻土、ベントナイト、タルク、カオリン、マイカ、クレー、ヒドロキシアパタイト、セラミックパウダー、金属石鹸、炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸アルミニウム、酸化チタン、焼成硫酸カルシウム(焼セッコウ)、リン酸カルシウム、酸化鉄、酸化亜鉛、ケイ酸バリウム、ケイ酸カルシウム、ケイ酸マグネシウム、硫酸バリウム等を挙げることができる。
セメント成分としては、普通ポルトランドセメント、早強ポルトランドセメント、超早強ポルトランドセメント、中庸熱ポルトランドセメント、低熱ポルトランドセメント、耐硫酸塩ポルトランドセメント、シリカセメント、等を挙げることができる。
凝結調整剤として、たとえば、ケイフッ化マグネシウム等のケイフッ化物、ホウ酸等のホウ酸類、グルコン酸、グルコヘプトン酸、クエン酸、酒石酸等のオキシカルボン酸類およびその塩。リグニンスルホン酸、フミン酸、タンニン酸等の高分子有機酸類およびその塩等を挙げることができる。
粘度調整剤としては、たとえば、カルボキシメチルセルロース及びその塩;ヒドロキシプロピル化デンプン等のデンプン系高分子;ポリビニルアルコール、ポリアクリルアミド、ポリアクリル酸及びその塩等の水溶性高分子;キサンタンガム、グアガム等のバイオポリマー;エチレン−酢酸ビニル共重合体のエマルジョン、ポリアクリル酸エステルエマルジョン、ポリ酢酸ビニルエマルジョン、酢酸ビニル−ビニルバーサテート共重合体のエマルジョン等の樹脂エマルジョン等を挙げることができる。
【0039】
保水剤としては、アルコキシポリプロピレングリコールアクリレート等を挙げることができる。
消泡剤としては、エチレンオキシド、プロピレンオキシドを主成分とするポリオキシアルキレン系消泡剤;ポリプロピレングリコール系消泡剤や鉱物油系消泡剤;変性シリコーン系消泡剤;ジメチルポリシロキサン等を挙げることができる。
膨張剤としては、アルミニウム粉体、反応性シリコーン粉体等を配合できる。
防水剤や撥水剤としては、塩化カルシウム;ジルコニウム化合物;脂肪酸石鹸、脂肪酸、脂肪酸エステル、またはこれらをエマルジョン化した脂肪酸系化合物;シリコーンオイル;シリコーンエマルジョン;パラフィンエマルジョン;アスファルトエマルジョン;油含有廃白土;ゴムラテックス等を挙げることができる。
【0040】
上記各材料は、水や有機溶媒等の液状物に分散させた状態または溶液となった状態のものを使用してもよい。
【0041】
〔ジオポリマー組成物、ジオポリマー組成物の製造方法〕
本発明のジオポリマー組成物は、上述の成分(A)、セルロースエーテル(B)、活性剤(C)を必須に含むため、比重が均一で収縮低減性に優れたジオポリマー硬化体を得ることができる。
また、本発明のジオポリマー組成物は耐凍結融解性に優れるジオポリマー硬化体を得ることができる。
【0042】
本発明のジオポリマー組成物の水不溶分の濃度82.5重量%の水分散液の20℃におけるpHは、特に限定されないが、本願効果を奏する点で、12以上14以下であると好ましい。pHが12未満であると、得られる硬化体は硬化が不十分となることがある。ジオポリマー組成物の水不溶分の濃度82.5重量%の水分散液の20℃におけるpHは、より好ましくは12.25以上14以下、さらに好ましくは12.5以上14以下である。
なお、本発明における「ジオポリマー組成物の水不溶分」とは、ジオポリマー組成物を120℃で加熱し、恒量となった時の残留物を意味する。また、ジオポリマー組成物の水不溶分の濃度82.5重量%の水分散液の20℃におけるpHの測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0043】
本発明のジオポリマー組成物は、セルロースエーテル(B)と活性剤(C)を必須としているため、上述のとおり、活性剤(C)によりセルロースエーテル(B)の安定性が向上すると考えられる。これによりジオポリマー組成物の水不溶分の濃度82.5重量%のpHが12以上14以下である、強いアルカリ性を示すジオポリマー組成物である場合でも、ジオポリマー組成物に含まれる材料の材料不分離性や、導入される気泡の安定性が損なわれず、比重が均一で、収縮低減性に優れた硬化体を得ることができ、さらに、得られる硬化体は通常のセメントによるコンクリートやモルタルと同様の性能を得ることができると考えられる。
【0044】
本発明のジオポリマー組成物の水不溶分の濃度82.5重量%の水分散液の20℃における粘度は、特に限定されないが、本願効果を奏する点で、2000〜40000mPa・sであると好ましい。粘度が2000mPa・s未満であると、ジオポリマー組成物に含まれる材料の材料不分離性や導入される気泡の安定性が低下することがある。一方、粘度が40000mPa・s超であると、均一な気泡を導入できず、得られる硬化体の比重が不均一となり、また、外観が損なわれることがある。ジオポリマー組成物の水不溶分の濃度82.5重量%の水分散液の20℃における粘度は、より好ましくは2500〜35000mPa・s、さらに好ましくは3000〜30000mPa・s、特に好ましくは3500〜25000mPa・sである。なお、ジオポリマー組成物の水不溶分の濃度82.5重量%の水分散液の20℃における粘度の測定方法は、B型粘度計を用いて測定した。
【0045】
本発明のジオポリマー組成物における製造方法としては、上述の成分(A)、セルロースエーテル(B)及び活性剤(C)を必須として混合する工程(成分(A)、セルロースエーテル(B)及び活性剤(C)を必須とする混合物を得る工程)を含む。混合物はさらに上述の活性剤(D)、成分(E)、骨材及び水から選ばれる少なくとも1つを含むと好ましい。混合物は、また、上述のその他成分を含んでもよい。
【0046】
上述の材料を混合する順番としては、たとえば、下記の1)〜5)の順で添加し、混合する方法を挙げることができる。また、材料については水分散液の状態のもの、または水溶液の状態のものを用いてもよい。
1)成分(A)にセルロースエーテル(B)と活性剤(C)を添加、混合し、混合物1を得る。
2)混合物1に、骨材と活性剤(D)を添加、混合し、混合物2を得る。
3)混合物2に水が所定量となるように添加、混合し、混合物3を得る。
4)混合物3に、成分(E)の水溶液を添加、混合し、混合物4を得る。
5)混合物4を更に撹拌して気泡を導入し、ジオポリマー組成物を得る。
【0047】
上記1)〜3)に用いる装置としては、液添加機構が備わった混合機が挙げられ、たとえば、主羽根による浮遊拡散混合とチョッパー羽根による高速剪断分散の2つの機能を備えた混合機、プロシェアミキサー、アイリッヒミキサー、レーディゲミキサー等を挙げることができる。また、上記4)〜5)に用いる装置としては、混練槽内に2本の撹拌ロータを並列に設け、各撹拌ロータを相対的に逆方向に回転させて内容物を混練する装置;双腕式ニーダー、混合容器内面を自転する撹拌羽根で混合を行う装置(惑星回転機構を持った装置);モルタルミキサー、ホバートミキサー等を挙げることができる。また混合物4の入った容器にモルタルハンドミキサー等で直接混合することも可能である。
【0048】
成分(A)、セルロースエーテル(B)及び活性剤(C)を必須として混合する工程としては、セルロースエーテル(B)と活性剤(C)を必須に含むジオポリマー組成物用混和剤と、成分(A)とを混合する工程であると、材料の分散性を向上させることができ、好ましい。
【0049】
〔ジオポリマー組成物用混和剤、ジオポリマー組成物用混和剤の製造方法〕
本発明のジオポリマー組成物用混和剤(以下、単に混和剤ということがある)は、水溶性セルロースエーテル(B)と、アニオン性界面活性剤(C)とを含み、20℃におけるセルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液の粘度が、100〜50000mPa・sであるものである。
【0050】
本発明のジオポリマー組成物用混和剤において、セルロースエーテル(B)と活性剤(C)の含有量の比(セルロースエーテル(B)/活性剤(C))は、特に限定されないが、上述の範囲であると好ましい。
【0051】
本発明のジオポリマー組成物用混和剤は、さらに上述の両性界面活性剤(D)を含んでもよい。混和剤が活性剤(D)を含むと、ジオポリマー組成物の保存安定性を向上させることができるため、好ましい。
混和剤が活性剤(D)を含む場合、混和剤における活性剤(C)と活性剤(D)の含有量の比(活性剤(C)/活性剤(D))は、特に限定されないが、上述の範囲であると好ましい。
【0052】
本発明のジオポリマー組成物用混和剤の形態としては、下記の6)〜8)のいずれでもよい。
6)構成する材料が混合され、一体となったもの。
7)構成する材料の一部が混合された物とそれ以外の材料が、別個に包装(パッケージ)されたキット。
8)構成する材料が別個に包装(パッケージ)されたキット。
【0053】
本発明のジオポリマー組成物用混和剤としては、混和剤を構成する材料のうちの少なくとも1種が液状物である場合、その液状物と粒状物との混合物である湿化物が混和剤に含まれていてもよい。
粒状物としては、上記骨材及び上記その他成分から選ばれる少なくとも1種であってもよく、成分(A)であってもよい。また、粒状物としては、JIS−K5101−13に準拠した精製アマニ油法の吸油量が200〜500g/100gであると好ましい。粒状物の吸油量が200g/100g未満であると、混和剤がべとつき、均一に分散しないことがある。一方、粒状物の吸油量が500g/100g超であると、ジオポリマー組成物の製造コストが大きくなり過ぎることがある。粒状物の吸油量は、より好ましくは200〜400g/100g、特に好ましくは200〜300g/100gである。
【0054】
本発明のジオポリマー組成物用混和剤の製造方法としては、たとえば、上記1)〜5)に用いられる装置、ナウターミキサー、リボンミキサー等の一般的な混合機を使用して、混合することにより製造することができる。
【0055】
〔ジオポリマー硬化体、ジオポリマー硬化体の製造方法〕
本発明のジオポリマー硬化体は、上述のジオポリマー組成物の硬化物であるので、比重が均一で、収縮低減性に優れる。また、本発明のジオポリマー硬化体は耐凍結融解性に優れるようになる。
【0056】
本発明のジオポリマー硬化体の比重は、特に限定されないが、1.0〜1.9であると好ましい。硬化体の比重が1.0未満であると、著しく強度が不足し、ワレやカケが発生し、外観が損なわれることがある。一方、硬化体の比重が1.9超であると、導入される気泡が不充分となり、耐凍結融解性が低下することがある。硬化体の比重は、より好ましくは1.05〜1.85、さらに好ましくは1.10〜1.80、特に好ましくは1.15〜1.75、最も好ましくは1.20〜1.70である。なお、ジオポリマー硬化体の比重の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0057】
本発明のジオポリマー硬化体全体に占める水の含有量は、特に限定されないが、5重量%以下であると好ましい。含水量が5重量%超であると、硬化が不十分となり、強度が低くなることがある。水の含有量は、4.9重量%以下、さらに好ましくは4.8重量%以下、特に好ましくは4.7重量%以下、最も好ましくは4.6重量%以下である。また、含水量の好ましい下限は2.0重量%以上である。実施例で測定される方法によるものである。
【0058】
ジオポリマー硬化体の製造方法としては、たとえば、ジオポリマー組成物を遠心注型等の注型や押出等により成型体を作製し、作製した成型体を加熱して、成型体を硬化させる方法が挙げられる。また、必要に応じて脱型し、さらに加熱して、水分を所定量まで除去してもよい。
【0059】
成型体を作製する際に用いる装置としては、型内にジオポリマー組成物を注型するディスペンサーや定容量移送ポンプ、余剰の気泡を脱泡するタッピングマシーン、バイブレーター、真空脱気装置等を挙げることができる。
成型体の加熱温度は、特に限定されないが、40〜90℃であると好ましく、42.5〜87.5℃であるとより好ましく、45〜85℃であるとさらに好ましく、47.5〜82.5であると特に好ましく、50〜80℃であると最も好ましい。
成型体の加熱時間は、特に限定されないが、24〜96時間であると好ましい。
成型体の加熱時に用いる装置としては、たとえば、オーブンや圧力容器で高温の蒸気をもって庫内を加温できるオートクレーブ等を挙げることができる。
【0060】
本発明のジオポリマー硬化体は、セメント・コンクリートやモルタル製品の類似物として、各種建築用資材、土木用資材、舗装道路用資材等に利用することができる。
【実施例】
【0061】
以下に、本発明のジオポリマー組成物の実施例について、具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例及び比較例において、断りのない限り、「部」とは「重量部」を意味するものであり、「%」とは「重量%」を意味するものとする。
【0062】
〔水溶性セルロースエーテル(B)のゲル化点の測定〕
可視光線透過率測定装置(日本分光株式会社製、型式:V−750)を使用し、セルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液を1分間に0.5℃の昇温速度で加熱し、セル長10mmにおける波長650nmの可視光の透過度を測定し、20℃での透過度を100%とし、90℃での透過度を0%とした際の50%透過度を示す温度をゲル化点とした。
【0063】
〔pHの測定〕
ジオポリマー組成物・水不溶分の濃度82.5重量%での20℃におけるpHを、pHメーター(株式会社堀場製作所製、卓上型pHメーターF−71型)を用いて測定した。
【0064】
〔粘度の測定〕
ジオポリマー組成物の水不溶分の濃度82.5重量%の水分散液の20℃における粘度の測定、及びセルロースエーテル(B)の濃度2重量%の水溶液の粘度の測定はB型粘度計(東機産業株式会社製、TVB型)を用いて測定した。
【0065】
〔ジオポリマー硬化体の水の含有量の測定〕
得られたジオポリマー硬化体をオーブンにて120℃で24時間加熱し、下記式(1)よりジオポリマー硬化体の水の含有量(含水量)を測定した。
ジオポリマー硬化体の含水量(重量%)=100×[(加熱前のジオポリマー硬化体の重量)−(加熱後のジオポリマー硬化体の重量)]/(加熱前のジオポリマー硬化体の重量) (1)
【0066】
〔ジオポリマー硬化体の比重の測定〕
電子比重計(アルファーミラージュ株式会社製、ALFA MIRAGE MDS−3000)を用い、20℃で得られたジオポリマー硬化体の比重を測定した。測定開始はジオポリマー硬化体を水中埋没させ、30秒経過してから測定を開始した。
【0067】
〔ジオポリマー硬化体の外観評価1〕
得られたジオポリマー硬化体表面の黒斑状物の有無を確認した。
○:黒斑状物は確認されず、材料の分散性、安定性が良好。
△:わずかに黒斑状物が確認され、材料の分散性、安定性がやや不良。
×:黒斑状物が多く確認され、材料の分散性、安定性が不良。
【0068】
〔ジオポリマー硬化体の外観評価2〕
得られたジオポリマー硬化体上面の泡状物の有無を確認した。
○:上面に泡状物はなく、気泡の安定性が良好。
△:上面に薄い泡状物が確認され、気泡の安定性がやや不良。
×:上面に泡状物が層となる状態が確認され、気泡の安定性が不良。
【0069】
〔ジオポリマー硬化体の外観評価3〕
得られたジオポリマー硬化体表面のツヤの有無を確認した。
○:ツヤが確認され、材料の分散性が良好。
△:わずかにツヤが確認され、材料の分散性がやや不良。
×:ツヤがなく、材料の分散性が不良。
【0070】
〔ジオポリマー硬化体の外観評価4〕
得られたジオポリマー硬化体の表面及び切断面のφ1mm以上の粗大泡の有無を確認した。
○:φ1mm以上の粗大泡が表面・切断面に観察されず、泡が均一。
△:φ1mm以上の粗大泡は表面には観察されなかったが、切断面に観察され、泡がやや不均一。
×:φ1mm以上の粗大泡が表面及び切断面に観察され、泡が不均一。
【0071】
〔ジオポリマー硬化体の外観評価5〕
得られたジオポリマー硬化体表面のワレ、ヒビの有無を確認した。
○:硬化体表面にヒビやワレが確認されなかった。
△:硬化体の表面にヒビやワレが僅かに確認された。
×:硬化体の表面にヒビやワレが確認された。
【0072】
〔ジオポリマー硬化体の収縮低減性の評価〕
得られたジオポリマー硬化体の底部の径の最大値を使用した型の底面の直径で除した値を収縮率(%)とし、得られた収縮率(%)より下記の基準に従い、ジオポリマー硬化体の収縮低減性を評価した。
○:97.5%以上
△:95.0%以上、97.5%未満
×:95.0%未満
【0073】
〔ジオポリマー硬化体の比重の均一性の評価〕
得られたジオポリマー硬化体を均等になるよう上下に二分割し、それぞれの比重の差の絶対値より下記の基準に従い、ジオポリマー硬化体の比重の均一性を評価した。
○:|比重の差|<0.050
△:0.050≦|比重の差|<0.10
×:|比重の差|≦0.10
【0074】
〔実施例1〕
ポリディスカップに、フライアッシュ(II種)80重量部、高炉スラグ微粉末20重量部、珪砂100重量部(5号:6号:7号=1:1:0.5の重量比)を投入し、均一になるよう混合した。続いて、マーポローズ90MP−4000(松本油脂製薬株式会社製、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、20℃における2重量%水溶液の粘度が4696mPa・s)1.0重量部を添加、混合しつつ、ラバノールCK(松本油脂製薬株式会社製、ヤシ脂肪酸カリ石鹸、濃度40重量%、水分60重量%の水溶液)を0.60重量部投入し、均一になるよう混合した。さらに、水53.2重量部を投入、均一になるよう混合し、続けて工業用苛性ソーダ水溶液(水酸化ナトリウム 濃度48重量%、水分52重量%の水溶液)を10重量部(水酸化ナトリウム4.8重量部、水5.2重量部)添加し、水ガラス(JIS−1号、珪酸ナトリウム 濃度55重量%、水分45重量%の水溶液)を37.6重量部(珪酸ナトリウム20.7重量部、水16.9重量部)添加し、均一になるよう混合し、混合物4−1を得た。なお、材料の混合にはTKホモディスパー(プライミクス株式会社製、T.K. AUTO HOMO MIXER MODEL M TYPE A)を使用し、回転数1000rpmで実施した。
得られた混合物4−1をTKホモディスパー(プライミクス株式会社製、T.K. AUTO HOMO MIXER MODEL M TYPE A)を使用し、3000rpmで30秒攪拌し、その際に気泡を導入して、ジオポリマー組成物を得た。得られたジオポリマー組成物の水の含有量は75.7重量部であり、混合物4−1全体に占める水の含有量は、25.0重量%であった。また、得られたジオポリマーの水不溶分の濃度82.5重量%の水分散液の20℃における粘度は8000mPa・s(NO4、3rpm)であり、水不溶分の濃度82.5重量%の水分散液の20℃におけるpHは12.6であった。
得られたジオポリマー組成物を内径22mm、高さ35mmのポリカーボネート製の円柱状の型に注型し、オーブンにて80℃で4時間加熱し、その後脱型して、引続きオーブンにて80℃で24時間加熱してジオポリマー硬化体を得た。なお、同じ形状の別個の型に合計3回注型し、上記と同様の方法でジオポリマー硬化体を作製し、評価は作製した3個の硬化体をもって実施した。なお、硬化体の水の含有量は3個の硬化体における水の含有量の平均値とし、硬化体の上下の比重の差の絶対値は3個の硬化体それぞれの上下の比重の差の絶対値の平均値とし、硬化体の収縮率は3個の硬化体の収縮率の平均値とした。
得られたジオポリマー硬化体の水の含有量は4.6重量%、比重は注型1個目が1.28、2個目が1.30、3個目が1.32となり、収縮低減性は97.8%で良好であり、比重の均一性は比重の差の絶対値が0.04で良好であった。また、得られたいずれのジオポリマー硬化体の表面に黒斑状物が確認されず、ツヤが確認され、材料の分散性が良好であり、ワレやカケが確認されなかった。また、硬化体の上面に泡状物がなく、気泡の安定性が良好であった。
【0075】
〔実施例2〜16、比較例1〜30〕
実施例2〜16及び比較例1〜30では、表1、2、4、5及び6に示すように材料をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様にジオポリマー組成物及びジオポリマー硬化体をそれぞれ得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表1、2、4,5及び6に示す。
【0076】
〔実施例17〕
ラバノールCKを2.0重量部とマーポビスターMLS(松本油脂製薬株式会社製、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン 濃度33重量%、水分67重量%の水溶液)を2.0重量部とを予め均一に混合したものを用い、その他の材料は表2に示すように変更する以外は、実施例1と同様にジオポリマー組成物とジオポリマー硬化体を得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表2に示す。
【0077】
〔実施例18〜20〕
実施例18〜20では、表2〜3に示すように材料をそれぞれ変更する以外は、実施例17と同様にジオポリマー組成物及びジオポリマー硬化体をそれぞれ得て、物性等も実施例17と同様に評価した。その結果を表2〜3に示す。
【0078】
〔実施例21〕
マーポローズ90MP−4000を1.0重量部とラバノールCKを4.0重量部が別個に包装されたジオポリマー組成物用混和剤を用い、その他の材料は表3に示すように変更する以外は実施例と同様にジオポリマー組成物とジオポリマー硬化体を得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0079】
〔実施例22〕
ポリディスカップにカープレックス#80(エボニックジャパン社製、非晶質シリカ粉体、吸油量:220g/100g)を4重量部投入し、続いてTKホモディスパー(プライミクス株式会社製、T.K. AUTO HOMO MIXER MODEL M TYPE A)を使用して800rpmで攪拌しながら、ラバノールCK4重量部をゆっくり添加し、さらに続けて3000rpmで30秒間攪拌し、湿粉状物を得た。得られた湿粉状物を用い、その他の材料は表3示すように変更する以外は、実施例1と同様にジオポリマー組成物とジオポリマー硬化体を得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0080】
〔実施例23〕
ポリディスカップにカープレックス#80を4重量部投入し、続いてTKホモディスパー(プライミクス株式会社製、T.K. AUTO HOMO MIXER MODEL M TYPE A)を使用して800rpmで攪拌しながら、ラバノールCK4重量部をゆっくり添加し、湿粉状物となったことを確認し、その後マーポローズ90MP−4000を1重量部添加し、さらに続けて3000rpmで30秒間攪拌し、湿粉状のジオポリマー組成物用混和材を得た。得られたジオポリマー組成物用混和剤を用い、その他の材料は表3示すように変更する以外は、実施例1と同様にジオポリマー組成物とジオポリマー硬化体を得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0081】
〔実施例24〕
ラバノールCKを2.0重量部とマーポビスターMLSを2.0重量部とを予め均一に混合し、混合物を作製した。次にポリディスカップにカープレックス#80を4重量部投入し、続いてTKホモディスパー(プライミクス株式会社製、T.K. AUTO HOMO MIXER MODEL M TYPE A)を使用して800rpmで攪拌しながら作製した混合物をゆっくり添加し、さらに続けて3000rpmで30秒間攪拌し、湿粉状物を得た。得られた湿粉状物と、マーポローズ90MP−4000がそれぞれ別個に包装されたジオポリマー組成物用混和剤を用い、その他の材料は表3に示すように変更する以外は、実施例1と同様にジオポリマー組成物とジオポリマー硬化体を得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0082】
〔実施例25〕
テイカパワーLN2050D(テイカ株式会社製、アルキルベンゼンスルホン酸ナトリウム 濃度50重量%、水50重量%の水溶液)を2.0重量部とマーポビスターMLを2.0重量部とを予め均一に混合し、混合物を作製した。次にポリディスカップにカープレックス#80を4重量部投入し、続いてTKホモディスパー(プライミクス株式会社製、T.K. AUTO HOMO MIXER MODEL M TYPE A)を使用して800rpmで攪拌しながら、作製した混合物をゆっくり添加し、さらに続けて3000rpmで30秒間攪拌し、湿粉状物を得た。得られた湿粉状物と、マーポローズ90MP−4000がそれぞれ別個に包装されたジオポリマー組成物用混和剤を用い、その他の材料は表3に示すように変更する以外は、実施例1と同様にジオポリマー組成物とジオポリマー硬化体を得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0083】
〔実施例26〕
ラバノールSF−7K(松本油脂製薬株式会社製、ポリオキシエチレンセカンダリーアルキルエーテル硫酸エステルナトリウム塩 濃度33重量%、水60重量%の水溶液)を2.0重量部とマーポビスターMLを2.0重量部とを予め均一に混合し、混合物を作製した。次にポリディスカップにカープレックス#80を4重量部投入し、続いてTKホモディスパー(プライミクス株式会社製、T.K. AUTO HOMO MIXER MODEL M TYPE A)を使用して800rpmで攪拌しながら、作製した混合物をゆっくり添加し、さらに続けて3000rpmで30秒間攪拌し、湿粉状物を得た。得られた湿粉状物と、マーポローズ90MP−4000がそれぞれ別個に包装されたジオポリマー組成物用混和剤を用い、その他の材料は表3に示すように変更する以外は、実施例1と同様にジオポリマー組成物とジオポリマー硬化体を得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0084】
〔実施例27〕
リポランLB−440(ライオンスペシャリティケミカルズ株式会社製、α−オレフィン(C14)スルホン酸ナトリウム塩 濃度35重量%、水63重量%の水溶液)を2.0重量部とマーポビスターMLを2.0重量部とを予め均一に混合し、混合物を作製した。次にポリディスカップにカープレックス#80を4重量部投入し、続いてTKホモディスパー(プライミクス株式会社製、T.K. AUTO HOMO MIXER MODEL M TYPE A)を使用して800rpmで攪拌しながら、作製した混合物をゆっくり添加し、さらに続けて3000rpmで30秒間攪拌し、湿粉状物を得た。得られた湿粉状物と、マーポローズ90MP−4000がそれぞれ別個に包装されたジオポリマー組成物用混和剤を用い、その他の材料は表3に示すように変更する以外は、実施例1と同様にジオポリマー組成物とジオポリマー硬化体を得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表3に示す。
【0085】
【表1】
【0086】
【表2】
【0087】
【表3】
【0088】
【表4】
【0089】
【表5】
【0090】
【表6】
【0091】
使用した材料の詳細を、表7に示す。
【0092】
【表7】
【0093】
<圧縮強度、耐凍結融解性の評価>
実施例1、20、比較例1、18で得られるジオポリマー組成物を内径48mm、高さ70mmのポリプロピレン製の円柱状の型に注型した。また、比較例30で得られるジオポリマー組成物は内径48mm、高さ140mmのポリプロピレン製の円柱状の型に注型した。それぞれ注型したものをオーブンにて80℃で8時間加熱し、その後脱型して、引続きオーブンにて120℃で4時間加熱を行った後、更に80℃で24時間加熱してジオポリマー硬化体を得た。
なお、比較例30のジオポリマー組成物から得られたジオポリマー硬化体については、ジオポリマー組成物の注ぎ口側を上部として、高さ基準で上部50%を切り取り、残った硬化体を評価した。
ジオポリマー硬化体の圧縮強度の測定、耐収縮低減性の評価については下記のとおりに行い、ジオポリマーの比重についても上述の方法で測定した。また、耐収縮低減性の評価、圧縮強度及び比重の測定は、上記実施例と比較例それぞれで3個の硬化体を準備し、それぞれを評価・測定し、その平均値を採用した。その結果を表8に示す。
【0094】
〔ジオポリマー硬化体の圧縮強度の測定〕
アムスラー式圧縮試験機(MIC−101−0−02型、株式会社マルイ製)を使用し、JIS A1108に準拠した方法で圧縮強度の測定を行った。なお、測定した試験体は、上記方法にて得られた硬化体を20℃、65%の恒温室にて、48時間エージングしたものを使用した。
【0095】
〔ジオポリマー硬化体の耐凍結融解性の評価〕
恒温恒湿機(PL−2型、タバイエスペック株式会社製)を使用し、JIS A1148の水中凍結融解試験法に準拠した方法で行った。試験温度範囲は+20〜−20℃で、300サイクルまで凍結融解を繰り返し、硬化体の評価前後の質量残存率を下記の式(1)より算出した。質量残存率の値が大きいほど耐凍結融解性が優れることを示す。
なお、質量残存率(W)は50サイクル毎で測定される下記スケーリングの累積質量から算出した。
nサイクル目のスケーリング:50サイクル毎に硬化体を載せたパンを引き上げ、パンに残ったスケールと流水で硬化体から脱落するスケールを採取した。採取されたスケールは、オーブンにて120℃×24時間で乾燥させた。得られたnサイクル目のスケーリングの質量を測定した。
nサイクル目の質量残存率(%):W=(w−w)×100/w (1)
:0サイクル目(評価前)の硬化体の質量
:nサイクル目までのスケーリングの累積質量
【0096】
【表8】
【0097】
表1〜3から分かるように、実施例1〜27のジオポリマー組成物は、石炭灰及び/または高炉スラグを必須に含む基材成分(A)と、20℃における濃度2重量%の水溶液の粘度が100〜50000mPa・sである水溶性セルロースエーテル(B)と、アニオン性界面活性剤(C)とを含むジオポリマー組成物であるため、得られるジオポリマー硬化体は比重が均一で、収縮低減性に優れることを確認した。
一方、表4〜6から分かるように、ジオポリマー組成物が水溶性セルロースエーテル(B)を含まない場合(比較例1〜2、9〜30)、ジオポリマー組成物がアニオン性界面活性剤(C)を含まない場合(比較例3〜8)、本願課題を解決できていない。