【実施例】
【0039】
以下、本発明を具体化した実施例について図面を参照して説明する。なお、実施例で記す材料、構成、数値は例示であって、適宜変更できる。
【0040】
[実施例1]
図1〜
図9に示す実施例1のシート成形装置は、三次元形状の成形面を有する成形型1,2と、熱可塑性樹脂製のシート5を加熱して軟化させる加熱装置6と、シート5の周縁部をクランプして該シート5を成形型1に当接させるクランプ装置10とを備える。シート成形装置は、さらに、シート5をクランプして加熱装置6にかけるための、前記クランプ装置10とは別の加熱用クランプ枠7と、加熱用クランプ枠7を加熱装置6から前記クランプ装置10まで搬送する搬送装置8とを備え、シート5を加熱用クランプ枠7からクランプ装置10のクランパー12に受け渡すようにしている。
【0041】
成形型は真空成形型であり、下側の第1型1と、上側の第2型2とからなる。第1型1に対して、第2型2は上下方向に移動して型開き・型締め可能となっている。
【0042】
第1型1は、
図1、
図5等に示すように、上向きの周縁部の見切り面3に対して中央部の成形面4が突出したコア型(雄型)である。その見切り面3及び成形面4の高さは、
図5において、右側で高く、左側で低く2段状をなし、手前側と奥側で徐変している。また、左側の一部に内外方向に折曲した折曲箇所がある。
【0043】
第2型2は、
図6に示すように、下向きの周縁部の見切り面に対して中央部の成形面が凹んだキャビティ型(雌型)である。その見切り面及び成形面の高さは、第1型1の見切り面3及び成形面4の高さと対応して変化している。第2型2は、複数の真空吸引孔(図示略)を有し、型外部の真空吸引装置(図示略)が接続されている。
【0044】
クランプ装置10は、第1型1の周囲(成形面4の向きを中心線にした周囲)に分散配置された複数の部分クランプ装置11から構成されている。詳しくは、
図2に示すように、成形型の左側に4台の部分クランプ装置11が間隔をおいて配置され、そのうちの1台は第1型1の折曲箇所に正対するように他の3台に対して向きが変えられている。第1型1の右側には4台、手前側には1台、奥側には1台の部分クランプ装置11が配置されている。
【0045】
各部分クランプ装置11は、
図7〜
図9に示すように、シート5の周縁部の一部分をクランプするクランパー12と、該クランパー12をシート5面交差方向に任意量変位させる交差変位装置16と、該クランパー12をシート5面平行方向に任意量変位させる平行変位装置23とを備える。部分クランプ装置11間では、互いの交差変位装置16が相手のクランパー12を変位させない、また、互いの平行変位装置23が相手のクランパー12を変位させない。
【0046】
クランパー12は、シート5を下から突き刺してクランプする針13と、針13を上下させる上下用アクチュエータ14と、針13が遊挿する貫通穴を備えた保護板15とからなる。
【0047】
交差変位装置16は、下台17と、上台18と、下台17・上台18間に設けられたレージートング伸縮機構19と、レージートング伸縮機構19を伸縮させる交差変位用アクチュエータ20とからなる。上台18に前記上下用アクチュエータ14が取り付けられている。レージートング伸縮機構19は、平行クランク機構を複数上下に組み合わせてなり、下前端と上前端がそれぞれ下台17と上台18に固定されたブラケット21に軸着され、下後端と上後端がそれぞれ下台17と上台18に対して前後スライド可能に設けられたスライダ22に軸着されている。交差変位用アクチュエータ20は、下台17に取り付けられて、スライダ22を前後方向に駆動するものである。交差変位用アクチュエータ20によりスライダ22を任意量前進させると、レージートング伸縮機構19が伸び、クランパー12を上昇させてシートの面交差上方向に任意量変位させる。交差変位用アクチュエータ20によりスライダ22を任意量後退させると、レージートング伸縮機構19が縮み、クランパー12を下降させてシートの面交差下方向に任意量変位させる。
【0048】
平行変位装置23は、基台24と、基台24上に設けられたガイドレール及びスライドブロックからなるリニアガイド25と、基台24上にリニアガイド25と平行に設けられた平行変位用アクチュエータ26とからなる。交差変位装置16の下台17が、リニアガイド25のスライドブロックに取り付けられるとともに、平行変位用アクチュエータ26に連結されている。平行変位用アクチュエータ26により交差変位装置16を任意量前進させると、クランパー12を前進させてシートの面内方向に任意量変位させる。平行変位用アクチュエータ26により交差変位装置16を任意量後退させると、クランパー12を後退させてシートの面外方向に任意量変位させる。
【0049】
加熱装置6は、
図1に示すように、第1型1の左方に離間して設置されている。加熱装置6は、例えば電熱ヒータによるものであり、加熱用クランプ枠7が通過しうる加熱空間を備えている。
加熱用クランプ枠7は、例えばシート5の周縁部を連続周状にクランプする枠状のものである。
搬送装置8は、例えば加熱用クランプ枠7をレール(図示略)上でスライドさせるものである。
【0050】
以上のように構成された実施例1のシート成形装置を用いて、次の方法でシート5を三次元形状に成形することができる。
(1)
図1に示すように、シート5を、加熱用クランプ枠7でクランプし、加熱用クランプ枠7ごと加熱装置6にかけて加熱し、軟化させる。
【0051】
(2)
図1に2点鎖線で示すように、シート5をクランプした加熱用クランプ枠7を、搬送装置8により加熱装置6からクランプ装置10のすぐ上方まで搬送する。このとき、全ての部分クランプ装置11のクランパー12は交差変位装置16により第1型1よりも上方に上昇しており、但しクランパー12の針13は上下用アクチュエータにより下降している。また、
図2に示すように、左側と手前側と奥側の部分クランプ装置11は平行変位装置23により後退しているが、右側の部分クランプ装置11は平行変位装置23により前進している。
【0052】
(3)次いで、
図1の吹き出し円内に示すように、針13を上下用アクチュエータ14により上昇させる(さらに必要であればクランパー12全体を交差変位装置16により上昇させる)ことにより、シート5の周縁部を針13で指して、シート5をクランパー12に受け渡す。
【0053】
(4)次いで、
図3及び
図4に示すように、全ての部分クランプ装置11のクランパー12を交差変位装置16によりシートの面交差下方向に任意量変位させるとともに、左側と手前側と奥側の部分クランプ装置11のクランパー12を平行変位装置23によりシートの面内方向に任意量変位させることにより、シート5の周縁部を第1型1の周縁部である見切り面3に当接させる。このとき、
図5に示すように、見切り面3の高さが異なるのに応じて、各クランパー12の下降量を任意に変え、各クランパー12をその任意変位量の位置で止める。
【0054】
(5)次いで、
図6に示すように、第1型1に第2型2を型締めしてシート5をプレスするとともに、第2型2の真空吸引孔を型外部の真空吸引装置により減圧してシート5を第2型2の成形面4に真空吸引し密着させる。冷却後、型開きしてシート5を取り出す。以上により、シート5が三次元形状に成形される。
【0055】
本実施例1によれば、次の作用効果が得られる。
(ア)クランプ装置10は、分散配置された複数の部分クランプ装置11のクランパー12で、シート5の周縁部の複数の部分をクランプし、各交差変位装置16で各クランパー12をシート5面交差方向に任意量変位させることにより、シート5の周縁部を第1型1の高低差のある見切り面3に合わせたり、シート5のたるみを三次元形状の成形面4に合わせて生じさせたりすることができる。これにより、第1型1の周縁部である見切り面3に高低差があるものや、三次元形状の成形面4の高低差が大きいものであり、かつ、それらの高低差が複雑に変化するものである場合であっても、シート5を見切り面3と成形面4に沿わすことができるため、シート5が局部的に過剰に伸ばされて薄くなりすぎたり破れたりする不具合が起こりにくくなり、もってシート5を余分に厚く設定したりサイズ増加させたりする必要がなくなり、原価を低減できる。また、成形品の品質向上・歩留まり向上になる。
【0056】
(イ)さらに、クランプ装置10が、各平行変位装置23で各クランパー12をシート5面平行方向に任意量変位させることができるようにしたものである場合には、各平行変位装置23で各クランパー12をシート5面平行方向に任意量変位させることにより、シート5の伸ばされやすい部分の伸びを緩和したり、シート5のしわになりやすい部分を緊張させたりすることができる。これにより、シート5の厚さを均一化でき、また、シート5のサイズ低減も可能となる。
【0057】
(ウ)さらに、シート成形装置が、クランプ装置10とは別の加熱用クランプ枠7と搬送装置8とを備え、シート5を加熱用クランプ枠7からクランプ装置10のクランパー12に受け渡すようにした場合には、加熱用クランプ枠7は加熱装置6にかけるためにコンパクトに形成する一方、クランプ装置10は加熱装置6に拘束されないので交差変位装置16と平行変位装置23を自由な大きさ・構造で形成でき、交差変位装置16と平行変位装置23による各変位の最大ストロークを大きくとることができる。このため、見切り面3や成形面4の高低差がより大きいものやより複雑なものであっても、上記(ア)(イ)で述べた作用を得ることができる。また、クランプ装置10は、加熱装置6の熱の影響を受けにくくなる。
【0058】
[実施例2]
次に、
図10に示す実施例2のシート成形装置は、三次元形状の成形面4を有する成形型31,32と、熱可塑性樹脂製のシート5を加熱して軟化させる加熱装置6と、シート5の周縁部をクランプして該シート5を成形型に当接させるクランプ装置40とを備えるものであるが、成形型31,32とクランプ装置40の内容において実施例1と相違し、また、加熱装置6は成形型31の正面と正面から退避した位置とに移動可能である。
【0059】
成形型はインサート射出成形型であり、左側の第1型31と、右側の第2型32とからなる。第2型32に対して、第1型31は左右方向に移動して型開き・型締め可能となっている。
【0060】
第1型31は、右向きの周縁部の見切り面33に対して中央部の成形面34が凹んだキャビティ型(雌型)である。その見切り面33は上側で凹んでいる。第1型31は、複数の真空吸引孔(図示略)を有し、型外部の真空吸引装置(図示略)が接続されている。
【0061】
第2型32は、左向きの周縁部の見切り面に対して中央部の成形面が突出したコア型(雄型)である。その見切り面は、第1型31の見切り面3と対応して上側で突出している。第2型32は、樹脂通路35を有し、樹脂通路の一方に射出口36を有し、他方に射出ノズルの接続口37を有している。
【0062】
クランプ装置40は、第1型31の周囲に分散配置された複数の部分クランプ装置41から構成されている。各部分クランプ装置41は、シート5の周縁部の一部分をクランプするクランパー42と、該クランパー42をシートの面交差方向に任意量変位させる交差変位装置46とを備える。クランパー42は、シート5をつかんでクランプする挟持機構である。交差変位装置46は、油圧シリンダーである。
【0063】
以上のように構成された実施例2のシート成形装置を用いて、次の方法でシート5を三次元形状に成形することができる。
(1)
図10(a)に示すように、シート5を、全ての部分クランプ装置41のクランパー42でクランプし、シート5に接近させた加熱装置6により加熱し、軟化させる。このとき、全ての部分クランプ装置41のクランパー42は交差変位装置46により第1型31よりも右方に変位している。
また、このクランプしたシート5の一部にスリット50を形成してもよい(実施例1においても同じ)。
【0064】
(2)
図10(b)に示すように、全ての部分クランプ装置41のクランパー42を交差変位装置46によりシート5の面交差左方向に任意量変位させることにより、シート5の周縁部を第1型31の見切り面33に当接させる。このとき、見切り面33の位置が異なるのに応じて、各クランパー42の変位量を任意に変え、各クランパー42をその任意変位量の位置で止める。
前記のようにシート5の一部にスリット50を形成した場合には、このときに又は次の真空成形時にスリット50が広がり、シート5の変形の自由度が大きくなる。
【0065】
(3)次いで、第1型31を減圧してシート5を第1型31の成形面34に真空吸引し密着させる。これによりシート5が三次元形状に成形される。
【0066】
(4)次いで、
図10(c)に示すように、第2型32に第1型31を型締めして、シート5と第2型32の成形面との間に樹脂を射出し樹脂基材9を成形する。冷却後、型開きしてシート5と樹脂基材9とが付着した成形品を取り出す。
【0067】
本実施例2によっても、実施例1による作用効果(a)と同様の作用効果が得られる。
【0068】
なお、本発明は前記実施例に限定されるものではなく、発明の要旨から逸脱しない範囲で適宜変更して具体化することができる。