(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-84840(P2021-84840A)
(43)【公開日】2021年6月3日
(54)【発明の名称】活性炭の製造方法
(51)【国際特許分類】
C01B 32/324 20170101AFI20210507BHJP
B29B 17/02 20060101ALI20210507BHJP
C08J 11/12 20060101ALI20210507BHJP
B29B 17/04 20060101ALI20210507BHJP
【FI】
C01B32/324ZAB
B29B17/02
C08J11/12
B29B17/04
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】OL
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2019-216484(P2019-216484)
(22)【出願日】2019年11月29日
(71)【出願人】
【識別番号】519228991
【氏名又は名称】株式会社BlueForce
(71)【出願人】
【識別番号】519229002
【氏名又は名称】田島 大輔
(74)【代理人】
【識別番号】100103850
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 秀▲てつ▼
(74)【代理人】
【識別番号】100105854
【弁理士】
【氏名又は名称】廣瀬 一
(74)【代理人】
【識別番号】100116012
【弁理士】
【氏名又は名称】宮坂 徹
(74)【代理人】
【識別番号】100066980
【弁理士】
【氏名又は名称】森 哲也
(72)【発明者】
【氏名】田島 大輔
【テーマコード(参考)】
4F401
4G146
【Fターム(参考)】
4F401AA13
4F401AA27
4F401BA12
4F401BB14
4F401CA14
4F401CA23
4F401CA27
4F401CA29
4F401CA47
4F401CA64
4F401CA70
4F401CA88
4F401CA90
4F401CB16
4G146AA06
4G146AD23
4G146BA17
4G146BA34
4G146BA38
4G146BB02
4G146BB03
4G146BB06
4G146BB08
4G146BC03
4G146BC23
4G146BD03
4G146CA16
4G146CB09
4G146DA05
4G146DA31
(57)【要約】
【課題】海洋プラスチックごみから活性炭を製造する方法として、塩素による加熱炉の破壊が防止できる方法を提供する。
【解決手段】本発明の活性炭の製造方法は、海洋から回収されて破砕されたプラスチック11を水中に入れて、浮遊物111と沈降物112とに分離する分離工程と、浮遊物111を活性炭ろ過装置3に導入して加圧加熱することにより、浮遊物111に含まれている塩素を除去する塩素除去工程と、塩素除去工程で塩素が除去された浮遊物111aを乾燥した後に加熱炉42,43に入れて不活性ガス下で加熱する炭化工程と、炭化工程で得られた炭化物6を賦活処理して活性炭61を得る工程と、を有する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
海洋から回収されて破砕されたプラスチックを水中に入れて、浮遊物と沈降物とに分離する分離工程と、
前記浮遊物を活性炭ろ過装置に導入して、加圧加熱することにより、前記浮遊物に含まれている塩素を除去する塩素除去工程と、
前記塩素除去工程で塩素が除去された前記浮遊物を、乾燥した後に加熱炉に入れて不活性ガス下で加熱する炭化工程と、
前記炭化工程で得られた炭化物を賦活処理して活性炭を得る賦活工程と、
を有する活性炭の製造方法。
【請求項2】
前記分離工程で、前記プラスチックに含まれるポリ塩化ビニルを沈降物として分離する請求項1記載の活性炭の製造方法。
【請求項3】
前記分離工程以外に前記プラスチックを種類で分離する工程を行わない請求項1記載の活性炭の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、海洋プラスチックごみから活性炭を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、海洋プラスチックごみ(廃棄されて海洋に漂うプラスチック)が大量に発生し、環境汚染や生物が傷つけられる等の問題が生じている。そのため、海洋プラスチックごみを回収して、再利用することが検討されている。例えば、回収された海洋プラスチックごみから、発泡スチロールのみを取り出して油化することが行われているが、得られる油の質が悪く、タールの発生や焼却灰の発生等の問題もある。
海洋プラスチックごみから活性炭を製造する方法としては、龍谷大学と企業との共同で研究が行われている。この研究は、PET(ポリエチレンテレフタレート)を主原料として使用するものであり、海洋プラスチックごみに大量に含まれているポリ塩化ビニルは使用していない。
【0003】
一方、廃棄された農業用ポリ塩化ビニル(ハウス栽培用のビニルフィルム)を安全に処理するリサイクル技術として、活性炭として再利用することが検討され、特許文献1には、塩素含有熱可塑性樹脂から比表面積が高い活性炭を製造する方法が記載されている。
この方法は、脱塩素化率90%以上に脱塩素化された塩素含有熱可塑性樹脂を、酸化性ガス雰囲気中で加熱保持することにより酸化する酸化工程と、酸化された塩素含有熱可塑性樹脂を不活性ガス雰囲気中で加熱保持することにより炭化物を得る炭化工程と、得られた炭化物とアルカリ賦活剤とを混合して不活性ガス雰囲気中で加熱保持するアルカリ賦活工程と、を有する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2004−175638号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
海洋プラスチックごみを加熱炉に入れて炭化すると、海水に漂っている間に海洋プラスチックごみに付着した塩分や、海洋プラスチックごみに大量に含まれているポリ塩化ビニル等の塩素含有樹脂を構成する塩素が、加熱炉を破壊するという問題がある。
本発明の課題は、海洋プラスチックごみから活性炭を製造する方法として、塩素による加熱炉の破壊が防止できる方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明の一態様は、海洋から回収されて破砕されたプラスチックを水中に入れて、浮遊物と沈降物とに分離する分離工程と、浮遊物を活性炭ろ過装置に導入して、加圧加熱することにより、浮遊物に含まれている塩素を除去する塩素除去工程と、塩素除去工程で塩素が除去された浮遊物を乾燥した後に加熱炉に入れて不活性ガス下で加熱する炭化工程と、炭化工程で得られた炭化物を賦活処理して活性炭を得る賦活工程と、を有する活性炭の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、海洋プラスチックごみから活性炭を製造する方法として、塩素による加熱炉の破壊が防止できる方法が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】実施形態の活性炭の製造方法を説明する図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施形態について説明するが、本発明は以下に示す実施形態に限定されない。以下に示す実施形態では、本発明を実施するために技術的に好ましい限定がなされているが、この限定は本発明の必須要件ではない。
【0010】
[構成]
図1に示すように、実施形態の方法では、先ず、海洋から回収されたプラスチックごみ1を粉砕して、最大寸法が10mm〜50mm程度の大きさの破片11とする。次に、破片11を水が入った容器2に入れて、分離工程を行う。これにより、水より比重の小さな破片11は浮遊物111となり、水より比重の大きな破片11は沈降物112になる。
次に、浮遊物111を活性炭ろ過装置3に導入して、加圧加熱することにより、浮遊物111に含まれている塩素を活性炭31により除去する。この工程が塩素除去工程である。
次に、塩素が除去された浮遊物111aを乾燥機41のホッパー41aに導入する。乾燥機41の下流には、炭化炉として、第一の加熱炉42および第二の加熱炉43が接続されている。第二の加熱炉43の下流には、磁気分離器44、サイクロン分級器45、および粉体落下装置46が、この順に接続されている。
【0011】
これにより、ホッパー41aから乾燥機41に入った浮遊物111aは、60〜80℃で熱風乾燥された後に、第一の加熱炉42内に入り、窒素ガス下で100〜300℃で1〜3時間加熱される。その後、第二の加熱炉43内に入り、窒素ガス下で400〜600℃で1〜3時間加熱される。この二段階の加熱により、浮遊物111aとして回収された後に塩素が除去された破片11が、炭化される。この工程が炭化工程である。
炭化工程後に、第二の加熱炉43から出た物は、磁気分離器44に入り、金属は磁石に引きつけられて落下して回収容器47に回収される。炭化物は、磁石に引きつけられずにサイクロン分級器45に入る。
【0012】
サイクロン分級器45に入った炭化物は比重で分級されて、塊状の炭化物がボトムノズルから排出され、粒状の炭化物がトップノズルから粉体落下装置46に入る。サイクロン分級器45および粉体落下装置46の下方となる部分に、ジェットミル5に向かうベルトコンベヤ15が配置されている。サイクロン分級器45のボトムノズルから排出された塊状の炭化物は、最大寸法が0.5mm〜1.0mm程度の大きさ(粒状)に粉砕された後に、ベルトコンベヤ15に載る。また、粉体落下装置46から落下した粒状の炭化物もベルトコンベヤ15に載る。
【0013】
ベルトコンベヤ15に載った粒状の炭化物6は、チャンバー7内を通過する。このチャンバー7内に二酸化炭素を供給しながら、炭化物6に対してレーザ照射による三段階の加熱処理を行う。これにより、炭化物6は賦活処理されて活性炭61となる。この工程が賦活工程であり、本実施形態では賦活工程をレーザ照射下でのガス賦活で行っているが、加熱炉内でのガス賦活で行ってもよいし、ガス賦活に代えてアルカリ賦活を行ってもよい。
得られた活性炭61は、塩酸による中和処理、純水による洗浄処理が行われた後、乾燥工程を経て、ジェットミル5に入って、粉砕される。
【0014】
一方、炭化工程で生じたタールは、第一の加熱炉42および第二の加熱炉43に接続されたタール排出管70から加熱炉71内に導入される。加熱炉71内に供給速度700mL/minで窒素ボンベ72から窒素ガスを供給しながら、600℃で60分間加熱することにより、タールは炭化物となる。その後、加熱炉71内に二酸化炭素ボンベ73から二酸化炭素を供給速度700mL/minで供給しながら、850℃で60分間加熱することにより、炭化物が賦活されて、カーボンブラックが得られる。このカーボンブラックは、導電性材料として市販されているアセチレンブラックやケッチェンブラックと比較して嵩密度に優れたものとなる。
【0015】
また、炭化工程で生じた一酸化炭素は、第一の加熱炉42および第二の加熱炉43に接続された一酸化炭素排出管74から、燃焼チャンバー81内に導入される。燃焼チャンバー81には、ウォータービット82からの水も導入される。燃焼チャンバー81内での水と一酸化炭素との反応により生じた熱は、加熱炉71へ供給されるとともに、活性炭ろ過装置3、高温空気発生器83、および蒸気タービン84へも供給される。高温空気発生器83で発生した高温空気が乾燥機41に供給される。蒸気タービン84は発電機85のモータを駆動する。
【0016】
[作用、効果]
本実施形態の方法によれば、分離工程により、ポリ塩化ビニルからなる破片11は沈降物112になるため、ポリ塩化ビニルは活性炭ろ過装置3に導入されない。よって、ポリ塩化ビニルは第一の加熱炉42および第二の加熱炉43に導入されない。また、浮遊物111に付着している塩素も活性炭ろ過装置3で除去されるため、第一の加熱炉42および第二の加熱炉43に導入されない。これにより、塩素による第一の加熱炉42および第二の加熱炉43の破壊が防止できる。
【0017】
また、賦活工程の加熱をレーザ照射で行うことで、加熱炉を用いて行うよりも熱効率が高くなるため、製造効率を高めることができる。
また、「海洋から回収されて破砕されたプラスチックを水中に入れて、浮遊物と沈降物とに分離する分離工程」以外に、プラスチックを種類(材質)で分離する工程を行わないため、プラスチックを種類で分離する手間が軽減できる。
さらに、本実施形態の方法で得られた活性炭61は、カルボキシル基の数が多く、比表面積も大きいため、電極用として好適なものとなる。
【符号の説明】
【0018】
1 海洋から回収されたプラスチックごみ
11 プラスチックごみの破片
111 浮遊物
111a 塩素が除去された浮遊物
112 沈降物
2 水が入った容器
3 活性炭ろ過装置
41 乾燥機
41a 乾燥機のホッパー
42 第一の加熱炉
43 第二の加熱炉
44 磁気分離器
45 サイクロン分級器
46 粉体落下装置
5 ジェットミル
6 粒状の炭化物
61 活性炭
7 チャンバー
70 タール排出管
71 加熱炉
72 窒素ボンベ
73 二酸化炭素ボンベ
74 一酸化炭素排出管
81 燃焼チャンバー
82 ウォータービット
83 高温空気発生器
84 蒸気タービン
85 発電機
15 ベルトコンベヤ