(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-85280(P2021-85280A)
(43)【公開日】2021年6月3日
(54)【発明の名称】門の止水構造
(51)【国際特許分類】
E06B 9/00 20060101AFI20210507BHJP
E06B 5/00 20060101ALI20210507BHJP
E04H 9/14 20060101ALI20210507BHJP
【FI】
E06B9/00 Z
E06B5/00 Z
E04H9/14 Z
【審査請求】未請求
【請求項の数】4
【出願形態】OL
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-216733(P2019-216733)
(22)【出願日】2019年11月29日
(71)【出願人】
【識別番号】518181888
【氏名又は名称】株式会社ケイ・メック
(74)【代理人】
【識別番号】110000464
【氏名又は名称】特許業務法人 いしい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】國澤 秀徳
【テーマコード(参考)】
2E039
2E139
2E239
【Fターム(参考)】
2E039AC04
2E139AA10
2E139AC19
2E239AC04
(57)【要約】
【課題】門から敷地内への水の侵入を簡素な構成で防止できる門の止水構造を提供する。
【解決手段】出入口Eを開閉する門扉2を備えた門1の止水構造は、門扉2と地面Gとの間の隙間S1、及び門扉2と出入口端部体3との間の隙間S2を塞ぐ止水部材5を着脱可能に構成している。止水部材5は、止水部材51,52,53に分割可能に構成されている。
【選択図】
図4
【特許請求の範囲】
【請求項1】
出入口を開閉する門扉を備えた門の止水構造であって、
前記門扉と地面との間の隙間、及び前記門扉と出入口端部体との間の隙間を塞ぐ止水部材を着脱可能に構成している、門の止水構造。
【請求項2】
前記止水部材は、前記隙間に沿って設けられるとともに分割可能に構成されている、請求項1に記載の門の止水構造。
【請求項3】
前記止水部材は、前記門扉、前記地面及び前記出入口端部体に固定される、請求項1又は2に記載の門の止水構造。
【請求項4】
前記地面及び前記出入口端部体は、前記止水部材との連結部に平坦面を備えている、請求項3に記載の門の止水構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願発明は、出入口を開閉する門扉を備えた門の止水構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、建物の外構や敷地境界部における門には、開閉するための門扉が設けられていることが多い。門を開閉する構造としては、例えば、門柱間を横方向に移動する門扉によって開閉する構成や、門柱に対して回動可能に取り付けた門扉によって開閉する構成がよく知られている(例えば特許文献1,2参照)。
【0003】
また、集中豪雨や洪水などの自然災害の際に、地下鉄駅や地下駐車場、建物などの構造物にその出入口から水が侵入するのを防止するために、該出入口に止水板を設置することが行われる(例えば特許文献3を参照)。特許文献3に開示された止水構造では、構造物の出入口の左右両側に支持体をそれぞれ設け、各支持体に設けられた対向溝に止水板を上方から落し込むことで、出入口に止水板が立設配置される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2016−065435号公報
【特許文献2】特開2006−063594号公報
【特許文献3】特開2008−169561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
水災害時に門から敷地内への水の侵入を防止するために、特許文献3に開示された止水板を適用すると、止水板を設置する際には、左右の支持体の対向溝に止水板を落し込むために、止水板を支持体の対向溝よりも高い位置まで持ち上げる必要がある。止水板は、高い水圧に耐えられるように十分な強度が必要なので、重量が大きい。したがって、止水板を支持体の対向溝よりも高い位置(例えば1メートル以上)まで人力で持ち上げるのは困難を伴い、例えば年配者や女性などの非力な作業者が止水板を設置するのは困難であるという問題があった。
【0006】
また、門間口が大きい場合には、門間口の中途部に止水板を支持するための支柱を設けて、間口方向に複数枚の止水板を並べて配置する必要があった。この場合、地面に支柱を配置するための穴を形成する工事が必要であったり、複数枚の止水板や支柱を保管する大きなスペースが必要になるなど、設置及び管理が煩雑になるという問題があった。
【0007】
本願発明は、このような現状を改善すべく、門から敷地内への水の侵入を簡素な構成で防止することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本願発明は、出入口を開閉する門扉を備えた門の止水構造であって、前記門扉と地面との間の隙間、及び前記門扉と出入口端部体との間の隙間を塞ぐ止水部材を着脱可能に構成しているものである。
【0009】
本願発明の門の止水構造によれば、門扉を備えた門に対して、止水部材を取り付けるという簡素な構成で、門扉と止水部材とで敷地内への水の侵入を防止できる。本願発明の門の止水構造は、門扉を備えた既存の門に対して適用可能であり、既存の門扉を利用することで、低コストで門の止水構造を実現できる。また、通常時は止水部材を取り外しておくことで、可動堰や水門などの止水構造を常に備えている門に比べて門扉の開閉を容易に行えるとともに、取り外した止水部材を暗所等に保管しておくことで、止水部材の劣化を防止できる。
【0010】
本願発明の門の止水構造において、前記止水部材は、前記隙間に沿って設けられるとともに分割可能に構成されているようにしてもよい。
【0011】
このような態様によれば、個別の止水部材の大きさを小さくでき、製造コストを低減できるとともに、止水部材の保管及び移動が容易になる。このような態様は、大型の門に対して止水部材を取り付ける構成において特に有効である。
【0012】
本願発明の門の止水構造において、前記止水部材は、前記門扉、前記地面及び前記出入口端部体に固定されるようにしてもよい。
【0013】
このような態様によれば、水流や水圧、異物接触などによる止水部材の位置ズレを防止して、止水作用を良好に維持できる。また、門扉が止水部材を介して地面及び出入口端部体に固定されるので、水圧や異物接触などによる門扉の変位や変形を低減でき、止水に対する耐久性を向上できる。
【0014】
さらに、前記地面及び前記出入口端部体は、前記止水部材との連結部に平坦面を備えているようにしてもよい。
【0015】
このような態様によれば、止水部材と地面及び出入口端部体との密着性を向上でき、止水部材と地面及び出入口端部体との間の良好な水密性を確保できる。
【発明の効果】
【0016】
本願発明の門の止水構造によれば、門から敷地内への水の侵入を簡素な構成で防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】実施形態の門を示す図であり、(A)は平面図、(B)は正面図、(C)は側面図である。
【
図2】止水部材を取り付けた状態の門を示す平面図である。
【
図4】(A)は
図2に示すA−A断面図、(B)は
図3に示すB−B端面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本願発明を具体化した実施形態を図面に基づいて説明する。また、各方向を特定するため、前後・左右・上下の文言を使用するが、門の出入口の両側を構成する一対の出入口端部体が間隔を空けて設けられる方向(出入口の幅方向)を左右方向とし、これと水平面内で直交した方向を前後方向と定義している。
【0019】
図1に示すように、門1は、出入口Eを開閉する引戸式の門扉2を備えている。出入口Eは、敷地境界に立設された壁体Wの開口部に設けられており、出入口端部体としての左右一対の出入口端部体3を備えている。出入口E及び壁体Wの敷地内側の地面Gには、2条のレール4が敷設されている。
【0020】
門扉2は、門扉本体21と、門扉本体21の背面(敷地内側面)の下端部から敷地内向きに突設された下フレーム22と、下フレーム22の敷地内方端部と門扉本体21の背面中途部とを連結する複数の控柱23とを備えている。下フレーム22の下面の左右両端部と中央部のそれぞれに、前後で対をなす車輪24が設けられている。
【0021】
門扉2は、車輪24がレール4上を転動することで、出入口Eを閉じた状態にする閉鎖位置(
図1(A)実線参照)と、出入口Eを開いた状態にする退避位置(
図1(A)仮想線参照)との間で横方向移動可能に構成されている。
【0022】
図2から
図4に示すように、門1は、門扉本体21と地面Gとの間の下部隙間S1、及び門扉本体21と出入口端部体3との間の横隙間S2を塞ぐ止水部材5を着脱可能に構成している。本実施形態では、止水部材5は、隙間S1,S2に沿って設けられており、複数の止水部材51,52,53に分割されている。具体的には、止水部材5は、下部隙間S1を塞ぐ3つの下部止水部材51と、横隙間S2を塞ぐ左右2つの横止水部材52と、下部隙間S1と横隙間S2との交差部を塞ぐ左右2つのコーナー止水部材53とに分割されている。
【0023】
止水部材51,52,53は、断面L字形の弾性材料(例えばゴム)で構成されており、下部止水部材51及び横止水部材52は直線状に形成され、コーナー止水部材53はL字形に屈曲した形状に形成されている。
【0024】
3つの下部止水部材51は、長手方向を左右方向に向けて直線状に並べられて、地面Gと門扉本体21の下部とに取り付けられる。コーナー止水部材53は、下部止水部材51の端部に連続して出入口端部体3と地面Gとの交差部に配置されて、地面Gと門扉本体21と出入口端部体3とに取り付けられる。
【0025】
直線状の止水部材51,52には、断面L字係に交差する2面それぞれの両端部と中央部の3箇所ずつに、合計6つのボルト挿通孔54が設けられている。また、コーナー止水部材53には、地面G又は出入口端部体3と接触する2面の両端部と、門扉本体21と接触するL字形の面の両端部と中央部の3箇所とに、合計7つのボルト挿通孔54が設けられている。
【0026】
止水部材5を門1に取り付けた止水部材5は、止水部材51,52,53の各ボルト挿通孔54に挿通されるボルト8にて、門扉本体21、地面G及び出入口端部体3に着脱可能に固定される。隣り合う止水部材51,52,53の端部同士は、重なった状態でボルト8にて共締めされて、隣り合う止水部材51,52,53の間に隙間が形成されないように構成されている。
【0027】
ここで、地面Gには、止水部材51,53が取り付く箇所に、上面が平坦な下平坦部材6が埋め込まれている。下平坦部材6は、例えば金属板からなり、出入口Eの左右一端から左右他端にわたって配設されている。これにより、止水部材51,53が地面G(下平坦部材6の平坦面)に密着しやすくなり、水密性が向上する。
【0028】
また、左右の出入口端部体3の互いに対向する側面には、止水部材52,53が取り付く箇所に、出入口Eの中央側に向く面が平坦な横平坦部材7が設けられている。横平坦部材7は、出入口端部体3の下端部から上下中途部にわたって配設されている。これにより、止水部材52,53が出入口端部体3(横平坦部材7の平坦面)に密着しやすくなり、水密性が向上する。
【0029】
このように、水災害が発生しそうなときには、門1に、門扉2と地面Gとの間の下部隙間S1、及び門扉2と出入口端部体3との間の横隙間S2を塞ぐ止水部材5を取り付けることで、敷地外から出入口Eを介して敷地内へ水が侵入するのを防止できる。門1の敷地外側が浸水したときには、弾性材料からなる止水部材51,52,53は、水圧によって門扉2、地面G及び出入口端部体3に向けて押圧されることで、門扉2、地面G及び出入口端部体3との密着性が向上し、漏水を抑制する。そして、水災害の危険がなくなったときには、止水部材5を取り外すことで、門1を通常の門として使用できる。
【0030】
本実施形態の門1の止水構造は、出入口Eを開閉する門扉2を備えた門1に対して、門扉2と地面Gとの間の隙間S1、及び門扉2と出入口端部体3との間の隙間S2を塞ぐ止水部材5を着脱可能に構成しているので、止水部材5を取り付けるという簡素な構成で、門扉2と止水部材5とで敷地内への水の侵入を防止できる。本実施形態は、門扉2を備えた既存の門1に対して適用可能であり、既存の門扉2を利用することで、低コストで門の止水構造を実現できる。また、通常時は止水部材5を取り外しておくことで、止水構造を常に備えている可動堰などの門に比べて門扉2の開閉を容易に行えるとともに、取り外した止水部材5を暗所等に保管しておくことで、止水部材5の劣化を防止できる。
【0031】
本実施形態では、止水部材5は、隙間S1,S2に沿って設けられるとともに分割可能に構成されている。これにより、個別の止水部材51,52,53の大きさを小さくでき、製造コストを低減できるとともに、止水部材51,52,53の保管及び移動が容易になる。
【0032】
また、本実施形態では、止水部材5は、門扉2、地面G及び出入口端部体3に固定されるようにしている。これにより、水流や水圧、異物接触などによる止水部材5の位置ズレを防止して、止水作用を良好に維持できる。また、門扉2が止水部材5を介して地面G及び出入口端部体3に固定されるので、水圧や異物接触などによる門扉2の変位や変形を低減でき、止水に対する耐久性を向上できる。
【0033】
さらに、地面G及び出入口端部体3は、止水部材5との連結部に平坦面を有する平坦部材6,7を備えている。これにより、止水部材5と地面G及び出入口端部体3との密着性を向上でき、止水部材5と地面G及び出入口端部体3との間の良好な水密性を確保できる。
【0034】
図5は、他の実施形態の門を示す正面図である。この実施形態では、出入口E内にて突き合わせられる左右2つ門扉2が左右両開きに設けられている。左右の門扉2を突き合わせて門1を閉じた状態で、
図1から
図4に示した実施形態と同様にして止水部材51,52,53が着脱可能に取り付けられる。
【0035】
2つの門扉2の突合せ部分に、上下方向に延びる突合せ部止水部材55が、左右の門扉本体21に跨って、着脱可能に取り付けられる。本実施形態では、突合せ部止水部材55の下端部を下部止水部材51と重ねた状態で、左右のボルト8にて、左右の門扉本体21に固定している。また、突合せ部止水部材55の中央部と上端部をボルト8にて固定している。
【0036】
本実施形態では、出入口E内にて突き合わせた左右2つ門扉2の突合せ部分の隙間を突合せ部止水部材55にて塞ぐことで、突合せ部分の隙間からの水の浸入を防止できる。このように、本発明の門の止水構造は、複数の門扉を備えた門にも適用可能である。
【0037】
本願発明は、前述の実施形態に限らず、様々な態様に具体化できる。例えば、本願発明において、門扉は、1本のレール上を走行する門扉であってもよいし、地面上にレールを備えていない横スライド方式の門扉であってもよいし、門柱(出入口端部体)に対して回動可能に取り付けた門扉であってもよい。
【0038】
また、止水部材5は、小さな門であれば、1つの部材で構成されてもよい。また、止水部材5(止水部材51,52,53)の材料は、ゴムなどの弾性材料に限定されず、鉄などの金属や、炭素繊維強化プラスチックやガラス繊維強化プラスチックなどの硬質プラスチックであってもよい。止水部材として金属や硬質プラスチックを用いる場合、止水部材には、地面、門扉及び出入口端部体との接触箇所に止水材などの弾性部材を設けることが好ましい。
【符号の説明】
【0039】
1 門
2 門扉
3 出入口端部体
4 レール
5 止水部材
6 下平坦部材
7 横平坦部材
8 ボルト
21 門扉本体
22 下フレーム
23 控柱
24 車輪
51 下部止水部材
52 横止水部材
53 コーナー止水部材
54 ボルト挿通孔
E 出入口
G 地面
L 断面
S1 下部隙間
S2 横隙間
W 壁体