【解決手段】 基板30は吸口部15内に当該吸口部15の厚さ方向の略中央位置になるように嵌入してあり、吸口部15内は基板30の一面側である第1室15aと第2室15bとに水密状態を保って分離されている。基板30の一面であって長手方向の適宜位置にはセンサ部31が設けてあり、センサ部31には第1室15a内に導入された被験者の唾液が供給されるようになっている。基板30のセンサ部31の周囲には複数の排出孔32が貫通させてあり、排出孔32を通過して第2室15b内へ排出された唾液は排出路から第2室15bの外部へ排出されるようになっている。
前記本体は、所定の電圧に調整する調整部と、該調整部で調整された電圧を電極部に印加する動作を制御する制御部と、電極部から応答される電流を電圧に変換して前記制御部へ与える変換回路とを具備し、
前記制御部は、電極部から応答される電流のピーク値を決定するピーク値決定手段を有する
請求項1から9のいずれかに記載の検出用装置。
被験者の体液に含まれる被検出物を検出するための検出器と、該検出器を動作させる本体と、前記検出器を収納する収納部とを備える検出用装置に設けられる検出器であって、
適宜形状の基板と、該基板に設けてあり、前記被検出物を補足するセンサ部と、前記基板に設けてあり、センサ部の電気的変化を検出するための電極部とを備えることを特徴とする検出器。
前記センサ部は、電圧が印加される電極層と、該電極層上に設けられ、被検出物分子に応じた複数の分子鋳型が形成されたフィルム層とを具備する請求項12から14のいずれかに記載の検出器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような従来の装置にあっては、使用者が当該装置の使用中、使用者の口から唾液採取部へ、検出可能な量の唾液が確実に飛散することが保証されないため、検出装置としての信頼性が低い。また、携帯電話機たる本体を利用しているため、被験者が乳幼児である場合には適用することができず、また、安静時又は作業中のストレス、若しくはベッドに横臥している患者のストレス等の検出にも適用できない。一方、α−アミラーゼ活性の経時変化を分析するには、経時的に基質を供給する必要があることから繰り返しの検出操作が困難である。
【0007】
本発明は斯かる事情に鑑みてなされたものであって、被験者の体液中に分泌される被検出物を確実に検出し得、また繰り返し計測が可能な検出用装置、及び該検出用装置に適用する検出器を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
(1)本発明に係る検出用装置は、被験者の体液に含まれる被検出物を検出するための検出器と、該検出器を動作させる本体と、前記検出器を収納する収納部とを備え、前記検出器は、適宜形状の基板と、該基板に設けてあり、前記被検出物を補足するセンサ部と、前記基板に設けてあり、センサ部の電気的変化を検出するための電極部とを具備し、一方、前記収納部には、被験者の体液を前記センサ部へ導入するための1又は複数の導入孔が開設してあり、該収納部が被験者の体液中に浸漬され、又は、被験者の体液が収納部の導入孔へ誘導されるように構成してあることを特徴とする。
【0009】
本発明の検出用装置にあっては、被験者の体液に含まれる被検出物を検出するための検出器と、この検出器を動作させる本体と、検出器を収納する収納部とを備え、収納部には、被験者の体液を前記センサ部へ導入するための1又は複数の導入孔が開設してあるため、収納部を被験者の口腔内に挿入させて、収納部を被験者の体液中に浸漬させることによって、又は、被験者の口腔内に挿入させた管等にて、収納部の導入孔へ被験者の体液を誘導させることによって、収納部に開設した導入孔から検出器のセンサ部へ体液である唾液を確実に導入させることができ、これによって被験者の体液中に分泌される被検出物を確実に検出することができる。
【0010】
ここで、前述した検出器は、適宜形状に成形した基板を備えており、この基板に、被検出物を補足するセンサ部と、該センサ部の電気的変化を検出するための電極部とが設けてある。センサ部には電圧が印加されるようになっており、体液中の被検出物の濃度に応じて当該被検出物がセンサ部に補足され、その状態でセンサ部に電圧が印加されると、被検出物の補足量に応じた電気的変化が得られる。これによって、センサ部に被検出物が補足された量に応じた検出結果を繰り返し得ることができる。
【0011】
(2)本発明に係る検出用装置は、前記基板のセンサ部の近傍に、体液を通過させるための1又は複数の貫通孔が開設してあることを特徴とする。
【0012】
本発明の検出用装置にあっては、前述した基板のセンサ部の近傍に、体液を通過させるための1又は複数の貫通孔が開設してあるため、センサ部には新鮮な体液が供給され続ける。これによって、被検出物の検出を介して被験者の状態を時間差を生じることなく経時的に認識することができる。
【0013】
(3)本発明に係る検出用装置は、前記貫通孔の内径は、体液がセンサ部に導入される側が大きく、体液がセンサ部から排出される側が小さくなしてあることを特徴とする。
【0014】
本発明の検出用装置にあっては、貫通孔の内径は、体液がセンサ部に導入される側が大きく、体液がセンサ部から排出される側が小さくなしてある。唾液といった粘性を有する体液が検出対象である場合、貫通孔の内径は、体液がセンサ部に導入される側が大きく、体液がセンサ部から排出される側が小さくなしてあるため、排出される側から導入される側への逆流を防止することができ、被検出物の経時的な検出を高精度に実施することができる。
【0015】
(4)本発明に係る検出用装置は、前記収納部の内部は、前記基板によって二室に分離されており、一方の室内に導入された体液が基板のセンサ部に接触しつつ、前記貫通孔内を通過して他方の室へ導入され、当該他方の室から収納部外へ排出されるように構成してあることを特徴とする。
【0016】
本発明の検出用装置にあっては、収納部の内部は、前記基板によって二室に分離されており、一方の室内に導入された体液が基板のセンサ部に接触しつつ、前記貫通孔内を通過して他方の室へ導入され、当該他方の室から収納部外へ排出されるように構成してあるため、一方の室内に導入された体液と他方の室内へ排出された体液とが混合することが防止され、被検出物の経時的な検出を高精度に実施することができる。
【0017】
(5)本発明に係る検出用装置は、前記収納部は、おしゃぶりを構成し、柔軟性を有する吸口部で構成してあり、前記基板は柔軟性を有する材料にて構成してあることを特徴とする。
【0018】
本発明の検出用装置にあっては、収納部は、おしゃぶりを構成し、柔軟性を有する吸口部で構成してあり、この収納部に収納される基板は柔軟性を有する材料にて構成してある。かかるおしゃぶりを被験者である乳児の口腔内に挿入した場合、いわゆるおしゃぶりとしての機能を発揮する。一方、かかる検出用装置にあっては、言葉で意思を表示することができない被験者であっても、その状態を経時的に検出することができ、その状態に応じた対応を即時に取ることができる。
【0019】
(6)本発明に係る検出用装置は、前記収納部は水密を保持する容器で構成してあり、該容器内の一方の室には、被験者から体液を採取するための採取管が前記導入孔に連結してあり、他方の室には体液を排出するための排出管が連結してあることを特徴とする。
【0020】
本発明の検出用装置にあっては、収納部は水密を保持する容器で構成してあり、この容器内の一方の室には、被験者から体液を採取するための採取管が前記導入孔に連結してあり、採取管にて採取された被験者の体液が、収納部の導入孔に誘導され、当該導入孔から収納部内に収納された検出器のセンサ部に導入される。採取管は、被験者の口腔内に挿入した場合は唾液を採取することができ、また、導尿カテーテルに連結した場合は体液である尿を採取することができ、人工心肺装置又は透析装置等に連結した場合は体液である血液を採取することができる。そして、他方の室に排出された体液は、他方の室に連結された排出管から外部へ排出される。なお、外部へ排出された体液は被験者の体内へ戻すように構成してもよい。
【0021】
(7)本発明に係る検出用装置は、前記排出管は吸引ポンプに連結してあることを特徴とする。
【0022】
本発明の検出用装置にあっては、排出管は吸引ポンプに連結してあるため、吸引ポンプの動作によって容器内を減圧させて、採取管による体液の採取を能動的に実施することができる。これによって、被験者の唾液を容易に採取することができる。
【0023】
(8)本発明に係る検出用装置は、前記排出管にて排出される体液を貯留するタンクを更に備えることを特徴とする。
【0024】
本発明の検出用装置にあっては、排出管にて排出される体液を貯留するタンクを更に備える。ここで、タンクとしては、プラスチック製の容器であっても、樹脂製バッグ等であってもよい。このような検出用装置は、検出用装置を被験者に装着させることによって、被験者を自由に行動させることができ、これによって例えば仕事中の被験者の状態を経時的に検出することができる。
【0025】
(9)本発明に係る検出用装置は、前記採取管を被験者の所定位置に取り付けるべく採取管を支持する支持具を更に備えることを特徴とする。
【0026】
本発明の検出用装置にあっては、採取管を被験者の所定位置に取り付けるべく採取管を支持する支持具を更に備える。ここで、支持具としては、例えば眼鏡フレーム、首パッド等を適用することができる。このような検出用装置は、採取管が被験者に与えるストレスといった影響を可及的に低減することができる。
【0027】
(10)本発明に係る検出用装置は、前記本体は、所定の電圧に調整する調整部と、該調整部で調整された電圧を電極部に印加する動作を制御する制御部と、電極部から応答される電流を電圧に変換して前記制御部へ与える変換回路とを具備し、前記制御部は、電極部から応答される電流のピーク値を決定するピーク値決定手段を有することを特徴とする。
【0028】
本発明の検出用装置にあっては、前述した本体は、所定の電圧に調整する調整部を具備し、制御部は、この調整部で調整された電圧を電極部に印加する動作を、例えば電圧を掃引するように制御する。検出器の電極部から応答される電流は変換回路によって電圧に変換して前記制御部へ与えられるようになっており、制御部に設けられたピーク値決定手段によって、電極部から応答される電流のピーク値が決定される。かかる電流のピーク値は被検出物の濃度に対応しており、このピーク値から被検出物の濃度を求めることができる。
【0029】
(11)本発明に係る検出用装置は、前記本体は決定されたピーク値を外部へ送信する送信部を更に具備することを特徴とする。
【0030】
本発明の検出用装置にあっては、本体は決定されたピーク値を外部へ送信する送信部を更に具備しているため、該送信部から例えば携帯端末器にピーク値が送信される。そして。携帯端末器に、電流のピーク値と被検出物の濃度との関係を示す数式を予め設定しておくことによって、携帯端末器の表示部に被検出物の濃度又は当該濃度に対応するレベル値等を表示することができる。これによって、検出用装置の構成をコンパクトにすることができる一方、製造コストを廉価にすることができる。
【0031】
(12)本発明に係る検出器は、被験者の体液に含まれる被検出物を検出するための検出器と、該検出器を動作させる本体と、前記検出器を収納する収納部とを備える検出用装置に設けられる検出器であって、適宜形状の基板と、該基板に設けてあり、前記被検出物を補足するセンサ部と、前記基板に設けてあり、センサ部の電気的変化を検出するための電極部とを備えることを特徴とする。
【0032】
本発明の検出器にあっては、被験者の体液に含まれる被検出物を検出するための検出器と、該検出器を動作させる本体と、前記検出器を収納する収納部とを備える検出用装置に設けられる検出器であって、適宜形状の基板と、該基板に設けてあり、前記被検出物を補足するセンサ部と、前記基板に設けてあり、センサ部の電気的変化を検出するための電極部とを備えるため、検出用装置に設けられた場合、前述した如く、センサ部に被検出物が補足された量に応じた検出結果を繰り返し得ることができる。
【0033】
(13)本発明に係る検出器は、前記基板のセンサ部の近傍に、体液を通過させるための1又は複数の貫通孔が開設してあることを特徴とする。
【0034】
本発明の検出器にあっては、基板のセンサ部の近傍に、体液を通過させるための1又は複数の貫通孔が開設してあるため、前述した如く、センサ部には新鮮な体液が供給され続ける。これによって、被検出物の検出を介して被験者の状態を時間差を生じることなく経時的に認識することができる。
【0035】
(14)本発明に係る検出器は、前記貫通孔の内径は、体液がセンサ部に導入される側が大きく、体液がセンサ部から排出される側が小さくなしてあることを特徴とする。
【0036】
本発明の検出器にあっては、貫通孔の内径は、体液がセンサ部に導入される側が大きく、体液がセンサ部から排出される側が小さくなしてあるため、前述した如く、唾液といった粘性を有する体液が検出対象である場合、貫通孔の内径は、体液がセンサ部に導入される側が大きく、体液がセンサ部から排出される側が小さくなしてあるため、排出される側から導入される側への逆流を防止することができ、被検出物の経時的な検出を高精度に実施することができる。
【0037】
(15)本発明に係る検出器は、前記センサ部は、電圧が印加される電極層と、該電極層上に設けられ、被検出物分子に応じた複数の分子鋳型が形成されたフィルム層とを具備することを特徴とする。
【0038】
本発明の検出器にあっては、センサ部は、電圧が印加される電極層と、この電極層上に設けられ、被検出物分子に応じた複数の分子鋳型が形成されたフィルム層とを具備するため、体液中に被検出物が微量に存在する場合であっても、当該被検出物を高精度に検出することができる。
【発明を実施するための形態】
【0040】
本発明に係る検出器及び検出用装置を図面に基づいて詳述する。
なお、本実施の形態で説明する検出器及び検出用装置は、本発明の趣旨を説明する一例であり、本発明はその趣旨を逸脱しない範囲での変形や改造を含むことはいうまでもない。
【0041】
(発明を実施するための第1の形態)
図1は本発明に係る検出用装置をおしゃぶりに適用した場合を示す模式的斜視図であり、図中、1Aはおしゃぶり本体、15はシリコンゴムといった柔軟な素材にて中空乳首状に成形された吸口部(収納部)である。また、
図2は、本検出用装置1を構成する検出器3を後述するカバー部12と共に示す斜視図である。
【0042】
おしゃぶり本体1Aは、ハート形様板の略中央に貫通孔を開設してなる止板部11の一面側に、前記貫通孔を塞止する箱状のカバー部12が着脱可能に取り付けてあり、このカバー部12の内部には、本検出用装置1の本体2が水密状態を保って配設されている。一方、止板部11の他面側には、乳児である被験者の口腔内に挿入される吸口部15が、前記貫通孔から止板部11と略直交する姿勢で突出させてあり、該吸口部15の開口した基部は、止板部11の他面側から前記貫通孔を通って、止板部11の一面側であって貫通孔の周囲部分に固着させてある。
【0043】
前記本体2には、板片状の基台13が前記止板部11と平行な姿勢で着脱可能に固定してあり、基台13には、適宜の柔軟性を有する材料を短寸帯板状に成形してなる基板30の一端が、基台13と略直交するように固定してある。基板30は吸口部(収納部)15内に当該吸口部15の厚さ方向の略中央位置になるように嵌入してあり、これによって吸口部15内は、当該基板30の一面側である第1室15aと基板30の他面側である第2室15bとに水密状態を保って分離されている。
【0044】
この基板30の一面であって長手方向の適宜位置には、唾液といった体液内の微量物質を検出するためのセンサ部31が設けてあり、センサ部31には後述するように第1室15a内に導入された被験者の唾液が供給されるようになっている。また、基板30のセンサ部31の周囲には、第1室15aからセンサ部31に供給された唾液を第2室15bへ排出するための複数の排出孔(貫通孔)32,32,…が、センサ部31の周方向へ互いに適宜距離を隔てて基板30を貫通させてあり、排出孔32,32,…を通過して第2室15b内へ排出された唾液は、吸口部15の第2室15bに対向する部分に設けた排出路、又は止板部11若しくは、止板部11及びカバー部12に設けた排出路(何れも図示せず)から第2室15bの外部へ排出されるようになっている。
【0045】
基板30の一面にはプリント等によって当該基板30の基端側から延設した3本の電極部33,34,35が基板30の幅方向へ互いに距離を隔てて配線してあり、各電極部33,34,35の基端側は前述した基台30を貫通して本体2に接続されるようになっている。一方、中央の電極部34の先端は前記センサ部31に接続して作用電極になしてあり、その両側の電極部33,35の先端は、センサ部31を取り囲むように成形して、一方は参照電極に、他方は対極になしてある。なお、作用電極、参照電極及び対極の素材としては順に例えば、炭素、銀及び白金を用いることができる。
【0046】
図3は
図1に示した検出用装置1の吸口部15の部分を示す部分平面図であり、
図4は
図3に示した吸口部15のIV−IV線による断面図である。なお、両図中、
図1及び
図2に示した部分に対応する部分には同じ番号が付してある。また、
図3にあっては、前述した電極部33,34,35は省略してある。
【0047】
図3及び
図4に示したように、吸口部15の第1室15aに対向する部分には、当該吸口部15を口腔内に挿入した被験者の唾液を第1室15a内へ導入する1又は複数(
図3にあっては4つ)の楔状の導入孔17,17,17,17が、吸口部15の天井から側部に亘って開設してあり、導入孔17,17,17,17を通って第1室15a内へ導入された唾液は基板30の一面上を経てセンサ部31上に供給される。
【0048】
基板30のセンサ部31の周囲には、第1室15a内に導入された唾液を第2室15bへ排出させるべく、平面視が楔形状の1又は複数(
図3にあっては4つ)の排出孔32,32,32,32が、センサ部31の周方向へ互いに適宜距離を隔てて貫通させてある。これら各排出孔32,32,32,32はその内径が、第1室15a側から第2室15b側へ向かうに従って小さくなるように形成してある。唾液は粘性を有しているので、第2室15bに排出された唾液が排出孔32,32,32,32を通って第1室15a側へ逆流することが防止される。そして、第2室15bへ排出された唾液は前述したように、吸口部15の第2室15bに対向する部分に設けた排出路、又は止板部11若しくは、止板部11及びカバー部12に設けた排出路(何れも図示せず)から第2室15bの外部へ排出される。
【0049】
なお、本形態では、楔形状の導入孔17を設けた場合について説明したが、導入孔32の形状は円形、多角形又は不定形等、種々の形状であってよいことは言うまでもない。また、導入孔32を開設する位置は、本形態のようにセンサ部31に対して鉛直方向に対向する位置から距離を隔てた位置でもよいが、センサ部31に対して鉛直方向に対向する位置であってもよい。一方、吸口部15の天井領域であって導入孔17,17,17,17の周囲の部分を凹部とすることによって、該凹部内に唾液を一時的に溜めて、導入孔17,17,17,17内へ導入し易くすることもできる。また、唾液を一時的に溜める手段は、吸口部15の内部の適宜位置に設けておくこともできる。
【0050】
また、本形態では、基板30によって吸口部15の内部を第1室15aと第2室15bとに分割した場合について説明したが、本発明はこれに限らず、基板30の幅及び長さを吸口部15の内の幅及び長さより小さくして、吸口部15の内部を一部連通した構成になしてもよい。この場合、導入孔17は吸口部15の基板30の一面に対向する領域から基板30の他面に対向する領域に亘って設けることができる。一方、センサ部31は基板30の厚さ方向の中途位置に設けてもよい。このとき、排出孔32,32,…は基板30の厚さ方向に対して傾斜させることができる。
【0051】
次に、センサ部31について説明する。
本発明に係るセンサ部31は例えば次のようにして形成することができる。
【0052】
すなわち、センサ部31を形成するには、基板30一面の適宜位置に、前述した作用電極と同じ材料で電極層を形成した後、0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬させて電圧を掃引することによって電極層の表面を洗浄し、次いで、脱イオン水にて電極層を洗浄することによって硫酸水溶液を除去し、電極層を乾燥しておく。なお、電圧の掃引は、例えば電気化学アナライザー(BAS社製、ALS−660B)を用いて、−1.5V〜1.5Vの範囲、100mV/sの掃引速度で10回程度行うとよい。なお、掃引手法としてはサイクリックボルタンメトリーを用いるとよい。
【0053】
次に、例えば、10mMリン酸緩衝液(pH7.4)にピロールが0.2M、コルチゾールが5mM、塩化カリが0.1Mとなるように溶解させて反応溶液を作成する。この反応溶液中に、前述した如く洗浄した電極層を浸漬させ、例えば、0V〜0.9Vの範囲、50mV/sの掃引速度で7回程度、掃引することによって、電極層の表面にコルチゾールを含むフィルム層を形成する。なお、被験者の体液中に分泌される被検出物としてコルチゾール以外の物質を検出する場合は、コルチゾールに替えて当該物質を溶解させた反応溶液を用いる。
【0054】
このようにしてコルチゾールを含むフィルム層を形成した後、例えば、10mMリン酸緩衝液(pH7.4)中に10容量%になるようにエタノールを添加した溶出用溶液中に前記フィルム層を浸漬させ、例えば、−0.2V〜0.8Vの範囲、50mV/sの掃引速度で20回程度、掃引することによって、被検出物たるコルチゾールを溶出させる。これによって、被検出物の分子に応じた複数の分子鋳型が生じたフィルム層及び電極層を有するセンサ部31を得る。
【0055】
このようなセンサ部31にあってはフィルム層に設けられた分子鋳型に被検出物が補足されると、電圧掃引に応答する電流値が大きく変化することから、微量の被検出物を高精度に検出することができる。また、センサ部31に体液が供給されると、体液中の被検出物の濃度に応じた数の分子鋳型に被検出物が補足されるため、被検出物の濃度も検出することができる。ここで、検出時の掃引条件としては例えば、−0.1V〜0.6Vの範囲、50mV/sの掃引速度、3〜5回程度の掃引回数を適用することができる。このとき、初めの1〜2回程度の掃引結果は、検出操作の安定化のために被検出物の濃度検出に使用せず、それ以降の掃引結果を用いて被検出物の濃度を検出するようにするとよい。
【0056】
次に、本検出用装置1の本体2について説明する。
図5は本検出用装置1の本体2の構成を説明するブロック図であり、図中、22はバッテリといった電源部である。電源部22は調整部23に接続してあり、電源部22からの出力は調整部23にて予め定めた電圧に調整されて、本体2の後述する各部の動作を制御する制御部21に与えられるようになっている。
【0057】
制御部21にはタイマ機能が設けられており、制御部21は予め定められた時間が経過する都度、前述した検出時の掃引条件になるように電圧を前述したセンサ部31に与える。このセンサ部31と制御部21との間には、例えば遮断周波数が16MHz程度のローパスフィルタ25が介装してあり、ローパスフィルタ25にてノイズが除去された電圧が前述した電極部33,34,35(
図1及び
図2参照)を介してセンサ部31に与えられるようになしてある。
【0058】
電圧が掃引されたセンサ部31からの応答電流は電極部33,34,35(
図1及び
図2参照)を介してI−V変換増幅回路26に与えられるようになっており、I−V変換増幅回路26は与えられた応答電流を対応する電圧に変換するとともに増幅する。そして、図示しないコンバータによってアナログデジタル変換されて、応答電流に対応する値として制御部21に与えられるようになっている。制御部21はセンサ部31に掃引した電圧値を有しているので、制御部21に設けられたピーク値決定手段21aは、この電圧値とI−V変換増幅回路26を介して与えられた応答電流に対応する値とからサイクリックボルタモグラムを作成し、ピーク電流値を決定する。
【0059】
一方、制御部21には電流値と被検出物の濃度との関係を示す検量式が予め設定されており、制御部21はこの検量式と、前述した如く検出したピーク電流値とから、被験者の唾液中の被検出物の濃度を得、ブルートゥース(登録商標)といった適宜の通信プロトコルによって信号を送信する送信部24から外部へ、得られた濃度の値を送信する。
【0060】
送信部24から経時的に送信される被検出物の濃度値は、例えばスマートフォン及びタブレット等、同じ通信プロトコルが設定された携帯端末器に与えられるようになっている。携帯端末器は、例えばストレスといった被験者の状態を被検出物の濃度値に応じて段階分けして自身の表示部に表示し得るようになっており、前述した如く検出用装置1の送信部24から送信された被検出物の濃度の値を受信する都度、被験者の状態を段階分けして自身の表示部に表示する。
【0061】
これによって、携帯端末器を所持する両親といった所持者は、乳児である被験者と会話ができなくても、携帯端末器の表示部を視認することによって当該被験者の状態を把握することができ、遅滞なく適切な対応を取ることができる。
【0062】
また、このような検出用装置にあっては、基質等が不要であるため被験者の体液中に分泌される被検出物を確実に検出し得、また、新鮮な被検出物を経時的に供給することができるため、経時的に繰り返し被検出物を検出することができる。
【0063】
なお、本形態では、被験者の状態の判定は携帯端末器にて実施するようにしてあるが、本発明はこれに限らず、前述した本体2の制御部21で実施し、その結果を予め定めた複数の色又は音等から対応する色又は音等で出力する出力部を本体2に設けておいてもよい。
【0064】
また、本形態では、送信部24から被検出物の濃度値を送信するようになしてあるが、本発明はこれに限らず、I−V変換増幅回路26から制御部21に与えられる電流値をそのまま送信部24から送信させるようになしてもよい。この場合、携帯端末器にはピーク電流値の検出機能、及び検量式を予め与えておき、前記電流値を受信する都度、被検出物の濃度値を得られるようになしておく。
【0065】
更に、電源は外部から供給するように構成することもできる。
【0066】
(発明を実施するための第2の形態)
図6は本発明の第2の形態に係る検出用装置の吸口部部分を示す模式的部分縦断面図であり、唾液が導入排出される方向を第1の形態のそれとは逆にしてある。なお、
図6中、
図1〜
図4に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。
【0067】
図6に示したように、基板30の他面であって長手方向の適宜位置にセンサ部31が設けてある。この基板30の他面には、前述した各電極部が前同様に配線してあるが、
図6にあっては省略してある。一方、吸口部15(収納部)の第2室15bに対向する部分には、該吸口部15を口腔内に挿入した被験者の唾液を第2室15b内へ導入する1又は複数(
図6にあっては1つ)の導入孔17aが、前記センサ部31に対向して開設してあり、導入孔17aを通って第2室15b内へ導入された唾液はセンサ部31上に供給され得るようになっている。
【0068】
基板30のセンサ部31の周囲には、第2室15b内に導入された唾液を第1室15aへ排出させるための1又は複数(
図6にあっては複数)の排出孔(貫通孔)32a,32a,…が、センサ部31の周方向へ互いに適宜距離を隔てて貫通させてある。各排出孔32a,32a,…はその内径が、第2室15b側から第1室15a側へ向かうに従って小さくなるように形成してあり、これによって第1室15aに排出された唾液が排出孔32a,32a,…を通って第2室15b側へ逆流することが防止される。
【0069】
なお、吸口部15の第1室15aに対向する部分、好ましくは基板30近傍の位置、又は、止板部11若しくは、止板部11及びカバー部12(いずれも
図1参照)に、第1室15a内の唾液を排出するための排出路(何れも図示せず)を設けておく。このとき、吸口部15の吸引用孔18,18,…を設けた部分に、前記排出路を構成する排出用孔を設けてもよい。
【0070】
一方、吸口部15の基板30の一面側の適宜位置に対向する部分には1又は複数(
図6にあっては複数)の吸引用孔18,18,…が第1室15aまで貫通してある。これによって、吸口部15を口腔内に挿入した被験者が吸口部15を吸った場合、吸引用孔18,18,…を介して第1室15a内が負圧になり、更に、排出孔32a,32a,…を介して第2室15b内が負圧になるため、被験者の唾液が導入孔17aから第2室15b内へ導入され、当該唾液が排出孔32a,32a,…を通って第1室15a内へ排出されるとともにセンサ部31に供給され、当該センサ部31にて前同様に唾液中の被検出物が検出される。そして、第1室15a内の唾液は前述した排出路から排出される。
【0071】
このような検出用装置にあっては、前同様、基質等が不要であるため被験者の体液中に分泌される被検出物を確実に検出し得、また、新鮮な被検出物を経時的に供給することができるため、繰り返し経時的に被検出物を検出することができる。
【0072】
一方、被験者の吸い動作によって被検出物がセンサ部31に供給されるため、より新鮮な被検出物を検出することができる。
【0073】
なお、本形態では、導入孔17aを吸口部15のセンサ部31に対向する位置に設けた場合について説明したが、本発明はこれに限らず、吸口部15のセンサ部31に対向する位置から距離を隔てた位置でもよいことは言うまでもない。
【0074】
(発明を実施するための第3の形態)
図7は本発明の第3の形態に係る検出用装置の使用様態を示す模式的斜視図であり、前述したおしゃぶりに替えて吸引管を用いている。なお、
図7中、
図1〜
図4に示した部分に対応する部分には同じ番号が付してある。
【0075】
図7に示したように、幼児以上の被験者にあっては眼鏡を装着することが可能であるので、これら被験者に対応する眼鏡型フレームで構成した第1支持具5が被験者Mの顔面に装着されている。第1支持具5の一方のつる部52からリム部51に亘る部分には、被験者Mから唾液を採取するための採取管4の一部が固定してあり、採取管4の一端部は、リム部51の下縁から垂下させて、被験者Mの口腔内へ挿入されるようになしてある。この採取管4のリム部51から垂下させた領域は、樹脂材又は金属材を用いてその形状姿勢を維持し得るようになしてあり、採取管4の被験者Mの口腔内へ挿入される先端部分は比較的柔らかい素材で形成してある。
【0076】
一方、採取管4の他端は、第1支持具5の一方のつる部52から外方へ延設して、厚板殻形状の筐体(収納部)10に連結してある。筐体10内はその長さ方向の適宜位置に配設した仕切り壁10dで2つの領域に水密状に仕切られており、一方の領域には前述した本体2が格納してある。
【0077】
また、筐体10の他方の領域は、その厚さ方向の中途位置に着脱可能に配設した検出器3の基板30(
図2参照)によって、基板30の一面側である第1室10aと、基板30の他面側である第2室10bとに水密状態を保って分離されている。なお、
図7に示した基板30にあっては、
図2に示した電極33,34,35は省略してあるが、本体2から各電極に給電されるようになっている。
【0078】
前述した採取管4の他端は筐体10の第1室10aに対向する領域に開設した導入孔に連結してあり、被験者から採取管4内に採取された唾液は、第1室10a内へ導入されるようになっている。一方、第2室10bには吸引管(排出管)7の一端が接続してあり、吸引管7の他端は廃液を貯留するタンク8に連結してある。この吸引管7の中途位置には吸引ポンプPが介装してあり、吸引ポンプPの動作によって筐体10及びこれに連結させた採取管4内を陰圧にして、被験者の口腔から採取した唾液を筐体10の第1室10a内へ導入させるとともに、基板30に開設した排出孔32,32,…及び第2室10bへ排出された唾液をタンク8内へ排出させるようになっている。
【0079】
このような検出用装置1aにあっては、前同様、基質等が不要であるため被験者の体液中に分泌される被検出物を確実に検出し得、また、新鮮な被検出物を経時的に供給することができるため、繰り返し経時的に被検出物を検出することができる。
【0080】
一方、前述した如き第1支持具5を具備する検出用装置1aにあっては、幼児から大人まで幅広い被験者Mに適用することができるのに加え、作業中の被験者Mに適用して当該被験者Mの状態をリアルタイムで検出することができる。更に、被験者Mが筐体10、吸引ポンプP及びタンク8を持ち運ぶことができるため、24時間の検出を実施することができる。
【0081】
(発明を実施するための第4の形態)
図8は本発明の第4の形態に係る検出用装置の使用様態を示す模式的斜視図であり、他の支持具を用いた場合を示している。なお、
図8中、
図7に示した部分に対応する部分には同じ番号を付してその説明を省略する。
【0082】
図8に示したように、本検出用装置1bにあっては、前述した第1支持具5(
図7参照)に替えて第2支持具6を具備した以外は、
図7に示した検出用装置1aの構成と同じ構成になしている。
【0083】
第2支持具6は略U字状をなしており、被験者Mの背部から被験者Mの首に外嵌させて被験者Mの両肩上に載置するようになっている。第2支持具6には採取管4の一部が固定してあり、採取管4の一端部は第2支持具6の一端近傍の適宜位置から立ち上げて、被験者Mの口腔内へ挿入されるようになしてある。
【0084】
一方、採取管4の他端部は第2支持具6の長手方向の適宜位置から外方へ延設して、検出用装置1bの筐体10に連結してある。
【0085】
このような検出用装置にあっては、前同様、基質等が不要であるため被験者の体液中に分泌される被検出物を確実に検出し得、また、新鮮な被検出物を経時的に供給することができるため、繰り返し経時的に被検出物を検出することができる。
【0086】
一方、前述した如き第2支持具6を具備する検出用装置1bにあっては、前同様、幼児から大人まで幅広い被験者Mに適用することができるのに加え、作業中の被験者Mに適用して当該被験者Mの状態をリアルタイムで検出することができる。更に、被験者Mが筐体(収納部)10、吸引ポンプP及びタンク8を持ち運ぶことができるため、24時間の検出を実施することができる。
【0087】
一方、第2支持具6は前述した如く被験者Mの首及び両肩に装着するようになしてあるため、眼鏡が苦手な、又は眼鏡を装着しない被験者に対して、よりストレスを与えることなく検出操作を実施することができる。
【0088】
なお、本発明に係る検出器及び検出用装置は、被験者の唾液以外にも尿又は血液等の他の体液にも適用し得ることは言うまでもない。例えば、採取管4を導尿カテーテルに連結した場合は体液である尿を採取することができ、採取管4を人工心肺装置又は透析装置等に連結した場合は体液である血液を採取することができる。なお、外部へ排出された体液は被験者の体内へ戻すように構成してもよい。ここで、尿及び血液といった体液にあっては、唾液より粘性が低いため、逆流を防止すべく逆止弁を適用することができる。
【実施例】
【0089】
(実施例1)
次に、本発明に係る検出器によってコルチゾールを検出した結果について説明する。
【0090】
[センサ部の作成]
センサ部は次のようにして作成した。
すなわち、プラスチック製の基板一面の適宜位置に、炭素材の電極層及び作用電極部を形成する一方、銀にて参照電極を、また白金にて対極を作成した。この基板を0.5Mの硫酸水溶液中に浸漬させて電圧を掃引することによって電極層の表面を洗浄し、次いで、脱イオン水にて電極層を洗浄することによって硫酸水溶液を除去し、電極層を乾燥した。なお、電圧の掃引は、電気化学アナライザー(BAS社製、ALS−660B)を用いて、−1.5V〜1.5Vの範囲、100mV/sの掃引速度で10回行った。なお、掃引手法としてはサイクリックボルタンメトリーを用いた。
【0091】
次に、10mMリン酸緩衝液(pH7.4)にピロールが0.2M、コルチゾールが5mM、塩化カリが0.1Mとなるように溶解させた反応溶液中に、前述した如く洗浄した電極層を浸漬させ、0V〜0.9Vの範囲、50mV/sの掃引速度で7回、掃引することによって、電極層の表面にコルチゾールを含むフィルム層を形成した。このようにしてコルチゾールを含むフィルム層を形成した後、10mMリン酸緩衝液(pH7.4)中に10容量%になるようにエタノールを添加した溶出用溶液中に前記フィルム層を浸漬させ、−0.2V〜0.8Vの範囲、50mV/sの掃引速度で20回、掃引することによって、被検出物たるコルチゾールを溶出させて、被検出物に応じた複数の分子鋳型を形成させた電極層上にフィルム層を有するセンサ部を得た。
【0092】
[コルチゾールの定量]
まず、センサ部の較正を行った。
すなわち、10mMリン酸緩衝液(pH7.4)にK
3[Fe(CN)
6]及びK
2[Fe(CN)
6]がそれぞれ5mM、塩化カリが0.1Mとなるように溶解させた測定用溶液中にセンサ部を浸漬させ、電気化学アナライザー(BAS社製、ALS−660B)を用いて、−0.1V〜0.6Vの範囲、50mV/sの掃引速度で複数回掃引して、ピーク電流値に変化がないことを確認した後、予め0.003μg/ml、0.004μg/ml、0.005μg/mlの濃度に調製したコルチゾール溶液をセンサ部に滴下・静置し、センサ部を脱イオン水で洗浄・乾燥させた。乾燥後、センサ部を前記測定用溶液に浸漬させ、−0.1V〜0.6Vの範囲、50mV/sの掃引速度で3回掃引して、サイクリックボルタンメトリー法によってピーク電流値をそれぞれ求め、得られたピーク電流値とコルチゾール濃度との関係を求めた。
【0093】
図9は前述した各濃度のコルチゾールを対象として掃引して得られたサイクリックボルタモグラフであり、縦軸は電流を、横軸は電圧を示している。また、
図9中、Aはコルチゾール濃度が0.005μg/mlの結果を、Bはコルチゾール濃度が0.004μg/mlの結果を、Cはコルチゾール濃度が0.003μg/mlの結果をそれぞれ示している。
【0094】
図9から明らかな如く、コルチゾールの濃度に応じてピーク電流値が大きくなっている。
【0095】
図10はコルチゾールの濃度とピーク電流値との関係を示すグラフであり、縦軸はピーク電流値を、横軸はコルチゾールの濃度をそれぞれ示している。
【0096】
図10から明らかな如く、コルチゾールの濃度とピーク電流値とは直線的な正比例の関係にあった。従って、かかる関係を検量式として予め求めておくことによって、計測したピーク電流値からコルチゾールの濃度を検出し得ることが分かる。
【0097】
(実施例2)
次に、被験者のコルチゾールを検出した結果について説明する。
健康な成人男性を被験者として、8時から23時までの適宜の時刻に唾液を採取し、センサ部によるコルチゾールの検出を前同様に実施した。
【0098】
図11は被験者から各時刻に採取した唾液を対象として掃引して得られたサイクリックボルタモグラフであり、縦軸は電流を、横軸は電圧を示している。また、
図11中、aは8時に検出操作を行った結果を、bは9時に検出操作を行った結果を、cは10時に検出操作を行った結果を、dは15時に検出操作を行った結果を、eは17時に検出操作を行った結果を、fは19時に検出操作を行った結果を、gは21時に検出操作を行った結果を、hは23時に検出操作を行った結果をそれぞれ示している。
【0099】
また、
図12はサイクリックボルタモグラフで得られたピーク電流値から被験者の唾液中に含まれるコルチゾールを求めた結果を示すグラフであり、縦軸は唾液中のコルチゾールの濃度を、横軸は唾液を採取した時刻をそれぞれ示している。
【0100】
図11及び
図12から明らかな如く、同一の被験者であっても、一日の内の時刻によって、コルチゾールの濃度に比較的大きな変化が見られた。