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特開2021-85770移動体の位置情報取得方法、移動体の位置情報取得システム及び移動体の位置情報取得のためのコンピュータプログラム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-85770(P2021-85770A)
(43)【公開日】2021年6月3日
(54)【発明の名称】移動体の位置情報取得方法、移動体の位置情報取得システム及び移動体の位置情報取得のためのコンピュータプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01C 15/00 20060101AFI20210507BHJP
【FI】
   G01C15/00 103A
   G01C15/00 103E
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-215102(P2019-215102)
(22)【出願日】2019年11月28日
(11)【特許番号】特許第6738585号(P6738585)
(45)【特許公報発行日】2020年8月12日
(71)【出願人】
【識別番号】390019998
【氏名又は名称】東亜道路工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096611
【弁理士】
【氏名又は名称】宮川 清
(74)【代理人】
【識別番号】100085040
【弁理士】
【氏名又は名称】小泉 雅裕
(72)【発明者】
【氏名】塚本 真也
(72)【発明者】
【氏名】梅田 隼
(72)【発明者】
【氏名】大場 拓也
(57)【要約】
【課題】位置情報を取得しようとする移動体が広い範囲に移動するときや、視準を遮断する障害物があるときにも確実に追尾し、効率よく移動体の位置情報を取得する。
【解決手段】第1の測量装置1を座標値が既知の位置に設定し、第2の測量装置2を、任意の位置に設定する。第1の測量装置及び第2の測量装置により移動体8に取り付けられたターゲット9を追尾し、移動体の移動前と移動後の2点において双方の測量装置が同時にターゲットの位置の方位角、仰角及び距離を測定する。第1の測量装置による測定値から移動前及び移動後のターゲットの位置の座標値を演算する。これらの座標値は第2の測量装置に入力し、これらの座標値と第2の測量装置によって測定された移動前及び移動後の測定値とから、第2の測量装置の設置位置の座標値を演算する。その後、第2の測量装置によるターゲットの追尾、ターゲットの位置の測定および座標値の演算を行う。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターゲットの位置の方位角、仰角及びターゲットまでの距離を計測する第1の測量装置を設置し、設定された座標系内における設置位置の座標値及び設置された第1の測量装置の方向と設定された座標軸の方向との関係を特定する工程と、
ターゲットの位置の方位角、仰角及びターゲットまでの距離を計測する第2の測量装置を、任意の位置に設置する工程と、
第1の測量装置及び第2の測量装置により移動体に取り付けられた前記ターゲットを追尾し、前記移動体の移動前と移動後の2点において第1の測量装置と第2の測量装置とが同時に前記ターゲットの位置の方位角、仰角及び距離を測定する工程と、
第1の測量装置によって測定された前記方位角、仰角及び距離のデータから移動前及び移動後の前記ターゲットの位置の座標値を演算する工程と、
演算された移動前及び移動後の前記座標値と、第2の測量装置によって測定された移動前及び移動後の前記ターゲットの位置の方位角、仰角及び距離の測定値とから、第2の測量装置の設置位置の座標値及び設置された方向を演算する工程と、
第2の測量装置によって前記ターゲットを追尾し、方位角、仰角及び距離の測定値に基づいて前記ターゲットの位置の座標値を演算する工程と、を含むことを特徴とする移動体の位置情報取得方法。
【請求項2】
第1の測量装置と第2の測量装置との双方によって前記ターゲットを追尾し、いずれか一方の測量装置による追尾が途切れたときに、他方の測量装置による測定値から演算された前記ターゲットの位置の座標値を一方の測量装置に提供する工程と、
前記座標値が提供された一方の測量装置が、提供された前記座標値の位置付近を探査し、前記ターゲットを再捕捉する工程と、を含むことを特徴とする請求項1に記載の移動体の位置情報取得方法。
【請求項3】
移動体とともに移動するターゲットの位置を追尾し、方位角、仰角及びターゲットまでの距離を計測する2台の測量装置と、
移動する前記ターゲットの移動前と移動後の2点において2台の前記測量装置が同時に前記ターゲットを視準して方位角、仰角及び距離の測定値を取得するように制御する演算装置と、を有し、
前記測量装置は、座標値が既知の2以上の点を視準して測定された方位角、仰角及び距離から視準した測量装置の設置位置の座標値及び設置された測量装置の方向と設定されている座標軸の方向との関係を演算する機能と、 該測量装置の設置位置の座標値及び設置方向と任意の位置にあるターゲットを視準して測定される方位角、仰角及び距離とから前記ターゲットの位置の座標値を演算する機能と、を有し、
前記演算装置は、設置位置及び設置方向が既知となった第1の測量装置が、前記ターゲットの移動前と移動後とに該ターゲットを視準して演算された該ターゲットの位置の座標値を取得する機能と、 該ターゲットの2つの位置の座標値を第2の測量装置に入力し、これらの座標値と、第2の測量装置が第1の測量装置と同時に該ターゲットを視準して得られた方位角,仰角及び距離の測定値と、から第2の測量装置の設置位置の座標値及び設置方向を演算するように制御する機能と、を有するものであることを特徴とする移動体の位置情報取得システム。
【請求項4】
前記演算装置は、2台の前記測量装置のいずれか一方が前記ターゲットを視準して得られた該ターゲットの位置の座標値を、他方の測量装置に提供し、
前記ターゲットの位置の座標値が提供された他の測量装置は、提供された座標値が示す位置付近を探査して前記ターゲットを捕捉する機能を有するものであることを特徴とする請求項3に記載の移動体の位置情報取得システム。
【請求項5】
座標値が既知の2以上の点を視準し、測定された方位角、仰角及び距離のデータを取得して、視準した測量装置の設置位置の座標値及び設置された測量装置の方向と設定されている座標軸の方向との関係を演算する機能と、設置位置の座標値及び設置された方向が既知となったときに、任意の位置にあるターゲットを視準して測定される方位角、仰角及び距離とから該ターゲットの位置の座標値を演算する機能と、を有する2台の測量装置に対し、前記ターゲットが異なる2つの位置にあるときに、それぞれの位置で2台の前記測量装置が同時に前記ターゲットを視準して方位角、仰角及び距離の測定値を取得するように制御する工程と、
設置位置の座標値及び設置方向が既知となった第1の測量装置が2つの位置にある前記ターゲットを視準して演算された2つの位置の座標値を取得する工程と、
前記ターゲットの2つの位置の座標値を第2の測量装置に入力するとともに、第2の測量装置が2つの位置で前記ターゲットを視準して得た方位角、仰角及び距離の測定値と、入力された2つの位置の座標値とから、第2の測量装置が該第2の測量装置の設置位置の座標値及び設置された方向を演算するように制御する工程と、をコンピュータが実行可能とする移動体の位置情報取得のためのコンピュータプログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、移動体を追尾し、その位置情報を逐次に取得する方法、位置情報を取得するシステム及び位置情報を取得するためのコンピュータプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
測量装置として、レーザーを射出し、ターゲットによって反射した光を受光することによってターゲットまでの方位角、仰角及び距離を計測するものが広く用いられている。このような測量装置は、広い範囲で土地造成工事、盛土工事、切土工事、舗装工事等を行うときに用いることによって効率のよい作業が可能となっており、例えば特許文献1に記載される技術がある。
これは、パワーシャベル、バックホー、モーターグレーダー等の作業車両にターゲットを取り付け、作業車両の位置と当該位置の地盤の高さを検出するとともに、当該位置における計画高さと対比して作業車両の操作者に表示するものである。作業車両の操作者は、表示された情報に基づいて現況高さを計画高さに近づけるように作業を進めることができる。
【0003】
また、測量装置は、例えば特許文献2及び特許文献3に記載されているように、ターゲットを自動追尾する機能を備えるものが多く用いられている。これらの測量装置はレーザーの走査や画像処理等によって移動するターゲットの位置を検出し、測距用のレーザーが継続的にターゲットを捕捉するようにレーザーの射出方向を制御するものとなっている。このような測量装置を用いることにより、移動する作業車両等の位置情報を逐次に効率よく取得し、計画高さと現況高さとの対比を作業車両の操作者に表示して、効率の良い作業が可能となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−94550号公報
【特許文献2】特開平8−304545号公報
【特許文献3】特開2010−38901号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記測量装置を用いて移動するターゲットの位置情報を取得するときには、次のような解決が望まれる課題がある。
道路工事等においては、作業車両が道路線形に沿って長い距離を移動して行くために、単一の測量装置で視準できる範囲を超えて作業車両が移動することがある。また、道路に沿って測量装置の視準を阻害する障害物が存在することも多く、単一の測量装置で視準することができる範囲が限定されることがある。このようなときには、作業車両の移動にともない、順次に作業車両を視準できる位置に測量装置を設置して行くことになる。しかし、測量装置を設置して、その設置位置の座標を特定するためには測量技術を修得した技術者による作業が必要となるとともに、座標値が既知となっている基準点上に測量装置を設置したり、基準点を視準したりすることが難しい場合もあり、作業の効率を阻害することになっている。
【0006】
また、道路に沿って存在する障害物の他にも他の作業車両等によって測量装置の視準が遮断され、一時的に作業が中断されることがある。そして、中断によって測量装置が移動するターゲットを見失うことがあると、探査して再捕捉するのに時間を要することになる。
【0007】
本発明は、上記のような事情に鑑みてなされたものであり、位置情報を取得しようとする移動体が広い範囲に移動するときや視準を遮断する障害物があるときにも確実にターゲットを追尾し、効率よく移動体の位置情報を取得することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記課題を解決するために、請求項1に係る発明は、 ターゲットの位置の方位角、仰角及びターゲットまでの距離を計測する第1の測量装置を設置し、設定された座標系内における設置位置の座標値及び設置された第1の測量装置の方向と設定された座標軸の方向との関係を特定する工程と、 ターゲットの位置の方位角、仰角及びターゲットまでの距離を計測する第2の測量装置を、任意の位置に設置する工程と、 第1の測量装置及び第2の測量装置により移動体に取り付けられた前記ターゲットを追尾し、前記移動体の移動前と移動後の2点において第1の測量装置と第2の測量装置とが同時に前記ターゲットの位置の方位角、仰角及び距離を測定する工程と、 第1の測量装置によって測定された前記方位角、仰角及び距離のデータから移動前及び移動後の前記ターゲットの位置の座標値を演算する工程と、 演算された移動前及び移動後の前記座標値と、第2の測量装置によって測定された移動前及び移動後の前記ターゲットの位置の方位角、仰角及び距離の測定値とから、第2の測量装置の設置位置の座標値及び設置された方向を演算する工程と、 第2の測量装置によって前記ターゲットを追尾し、方位角、仰角及び距離の測定値に基づいて前記ターゲットの位置の座標値を演算する工程と、を含む移動体の位置情報取得方法を提供する。
【0009】
この方法では、第1の測量装置によって移動するターゲットを追尾し、時間を追ってターゲットの位置の座標値を特定する作業を進行しながら、新たに第2の測量装置を設置して設置位置の座標値及び設置された方向と設定されている座標軸との関係を特定することができる。そして、この第2の測量装置でターゲットを追尾し、該ターゲットの位置の座標値を特定する作業を開始することが可能となる。したがって、ターゲットが第1の測量装置の視準が及ばない領域に移動しても第2の測量装置によって追尾し、ターゲットの位置の座標値を特定する作業を継続することができる。これにより、道路に沿って長い距離に及ぶ範囲に移動体が移動するときや、測量装置の視準を遮る障害物が多い領域においても効率よくターゲットを追尾し、移動体の位置情報を取得することができる。
また、第2の測量装置でもターゲットの位置の座標値を特定することが可能となり、第1の測量装置によるターゲットの視準が遮断されたときにも継続してターゲットの位置の特定が可能となる。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1に記載の移動体の位置情報取得方法において、 第1の測量装置と第2の測量装置との双方によって前記ターゲットを追尾し、いずれか一方の測量装置による追尾が途切れたときに、他方の測量装置による測定値から演算された前記ターゲットの位置の座標値を一方の測量装置に提供する工程と、 前記座標値が提供された一方の測量装置が、提供された前記座標値の位置付近を探査し、前記ターゲットを再捕捉する工程と、を含むものとする。
【0011】
この方法では、2つの測量装置でターゲットを追尾しているときに、障害物等によって一方の測量装置の追尾が途絶え、ターゲットを見失うことがあっても、他方の測量装置で得られた情報から一方の測量装置が迅速にターゲットを再捕捉することができる。したがって、測量装置の視準を阻害する障害物や、他の作業車両が多く行き交っている領域でも、移動体の位置情報を途切れることなく取得することができる。
【0012】
請求項3に係る発明は、 移動体とともに移動するターゲットの位置を追尾し、方位角、仰角及びターゲットまでの距離を計測する2台の測量装置と、 移動する前記ターゲットの移動前と移動後の2点において2台の前記測量装置が同時に前記ターゲットを視準して方位角、仰角及び距離の測定値を取得するように制御する演算装置とを有し、 前記測量装置は、座標値が既知の2以上の点を視準して測定された方位角、仰角及び距離から視準した測量装置の設置位置の座標値及び設置された測量装置の方向と設定されている座標軸の方向との関係を演算する機能と、 該測量装置の設置位置の座標値及び設置方向と任意の位置にあるターゲットを視準して測定される方位角、仰角及び距離とから前記ターゲットの位置の座標値を演算する機能と、を有し、 前記演算装置は、設置位置及び設置方向が既知となった第1の測量装置が、前記ターゲットの移動前と移動後とに該ターゲットを視準して演算された該ターゲットの位置の座標値を取得する機能と、 該ターゲットの2つの位置の座標値を第2の測量装置に入力し、これらの座標値と、第2の測量装置が第1の測量装置と同時に該ターゲットを視準して得られた方位角,仰角及び距離の測定値と、から第2の測量装置の設置位置の座標値及び設置方向を演算するように制御する機能と、を有するものである移動体の位置情報取得システムを提供するものである。
【0013】
このシステムでは、2台の測量装置のいずれか一方によって座標値が既知の2以上の基準点を視準することによって該測量装置が設置された位置の座標値及び設置された方向を特定することができる。そして、設置位置が既知となった第1の測量装置と設置位置の座標値が未知の第2の測量装置との双方で、移動するターゲットを異なる2点で同時に視準し、方位角、仰角及び距離を取得すると、第1の測量装置で取得したデータから同時に視準した2点の座標値を得ることができ、これら2点の座標値と第2の測量装置で取得された測定値とから第2の測量装置の設置位置の座標値及び設置された方向を特定することができる。これにより、任意の位置に設置した第2の測量装置でもターゲットを追尾し、その座標値を特定することが可能となる。したがって、第1の測量装置によってターゲットを追尾しながら第2の測量装置を設置し、設置位置の座標値を特定することができ、移動体の位置情報を取得する作業を行いながら、新たな測量装置を設置して視準可能な領域を拡大することが可能となる。
【0014】
請求項4に係る発明は、請求項3に記載の移動体の位置情報取得システムにおいて、 前記演算装置は、2台の前記測量装置のいずれか一方が前記ターゲットを視準して得られた該ターゲットの位置の座標値を、他方の測量装置に提供し、 前記ターゲットの位置の座標値が提供された他の測量装置は、提供された座標値が示す位置付近を探査して前記ターゲットを捕捉する機能を有するものとする。
【0015】
このシステムでは、2つの測量装置でターゲットを追尾しているときに、一つの測量装置の追尾が途絶えたときにも、ターゲットの位置情報を継続して取得することができる。そして、追尾が可能となっている測量装置で得られた情報にもとづいて、追尾が途絶えた測量装置は迅速にターゲットを再捕捉することができる。したがって、測量装置の視準を阻害する障害物や、他の作業車両が多く行き交っている領域でも、追尾が途切れることなく効率のよい作業が可能となる。
【0016】
請求項5に係る発明は、 座標値が既知の2以上の点を視準し、測定された方位角、仰角及び距離のデータを取得して、視準した測量装置の設置位置の座標値及び設置された測量装置の方向と設定されている座標軸の方向との関係を演算する機能と、設置位置の座標値及び設置された方向が既知となったときに、任意の位置にあるターゲットを視準して測定される方位角、仰角及び距離とから該ターゲットの位置の座標値を演算する機能と、を有する2台の測量装置に対し、前記ターゲットが異なる2つの位置にあるときに、それぞれの位置で2台の前記測量装置が同時に前記ターゲットを視準して方位角、仰角及び距離の測定値を取得するように制御する工程と、 設置位置の座標値及び設置方向が既知となった第1の測量装置が2つの位置にある前記ターゲットを視準して演算された2つの位置の座標値を取得する工程と、 前記ターゲットの2つの位置の座標値を第2の測量装置に入力するとともに、第2の測量装置が2つの位置で前記ターゲットを視準して得た方位角、仰角及び距離の測定値と、入力された2つの位置の座標値とから、第2の測量装置が該第2の測量装置の設置位置の座標値及び設置された方向を演算するように制御する工程と、をコンピュータが実行可能とする移動体の位置情報取得のためのコンピュータプログラムを提供するものである。
【0017】
このコンピュータプログラムによってコンピュータを動作させることにより、移動体とともに移動するターゲットを追尾する第1の測量装置によってターゲットが移動した2つ位置の座標値が得られる。これらの座標値を用いて、任意の位置に新たに設置された第2の測量装置は、その設置位置及び設置された方向を特定することができる。これにより、第2の測量装置は、移動するターゲットを視準し、測定値からターゲットの位置の座標値を演算することが可能となる。したがって、新たな測量装置の設置によって位置情報取得が可能な領域を拡大するとともに、複数の測量装置によって位置情報を取得することにより、効率よく広い範囲の位置情報を取得することが可能となる。
【発明の効果】
【0018】
以上説明したように 本発明の移動体の位置情報取得方法又は本発明の移動体の位置情報取得システムでは、位置情報を取得しようとする移動体が広い範囲に移動するときや視準を遮断する障害物があるときにも確実にターゲットを追尾し、効率よく移動体の位置情報を取得することができる。また、本発明のコンピュータプログラムによってコンピュータを動作させ、複数の測量装置を制御することによって確実にターゲットを追尾し、効率よく移動体の位置情報を取得することができる。
【図面の簡単な説明】
【0019】
図1】本発明の一実施形態である移動体の位置情報取得システムを示す概略構成図である。
図2図1に示す位置情報取得システムを用いて移動体の位置情報を取得する方法を示す概略図である。
図3図1に示す位置情報取得システムを用いて位置情報を取得する工程を示すフロー図である。
図4図1に示す位置情報取得システムを用いて位置情報を取得する工程を示すフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下本発明の実施形態を図に基づいて説明する。
図1は、本発明の一実施形態である移動体の位置情報取得システムを示す概略構成図である。
この移動体の位置情報取得システムは、複数の測量装置1,2,3と、これらの測量装置と無線で情報の送受信が可能となった演算装置4とを備えている。また、演算装置には取得した位置情報を表示する表示装置5が接続されている。
【0021】
上記測量装置1,2,3は、トータルステーションとして広く知られているものであり、レーザーを射出してターゲットからの反射光からターゲットの位置の方位角、仰角及びターゲットまでの距離を計測することができるものである。また、これらの測量装置は自動追尾機能を有するものであり、移動体に取り付けられたターゲットが移動したときに、該ターゲットを追尾し、レーザーが継続的にターゲットを補足するようにレーザーの射出方向を制御する機能を備えたものである。
この自動追尾機能は、ターゲットの追尾用のレーザーをターゲットの周辺に向けて継続的に走査しており、捜査するレーザーの反射光が強くなる位置に向けて測距用のレーザーを照射するように制御するものである。
【0022】
また、上記測量装置は演算部11,12,13を備えており、この演算部は次のような機能を備えている。
1.測量装置が、座標値が既知となっている位置上に据え付けられているときに、座標値が既知の他の点を視準し、その測定値から座標軸の方向と据え付けられた測量装置の方向との関係を特定する機能
2.測量装置が任意の位置に据え付けられているときに、座標値が既知の2以上の点を視準し、これらの測定値から設定されている座標系における該測量装置が据え付けられている位置の座標値及び座標軸の方向と据え付けられた測量装置の方向との関係を特定する機能
3.測量装置の据え付け位置及び方向が既知となっているときに、ターゲットを視準したときの測定値から、該ターゲットの位置の座標値を演算する機能
4.測量装置の据え付け位置及び方向が既知となっているときに、入力された座標値の方向に向けてレーザーを射出し、ターゲットを捕捉する機能
【0023】
一方、演算装置は、例えばパーソナルコンピュータを用いることができ、これに無線通信機能を付加したものを用いることができる。そして、コンピュータプログラムによって次のような機能を備えるものとする。
1.無線によって複数の測量装置と座標値の送受信をする機能
2.複数の測量装置に対して、ターゲットを視準して同時に測定値を取得するように制御する機能
3.一の測量装置から受信した座標値のデータを他の測量装置に送信する機能
4.土工事等を行う範囲の平面座標値と各平面座標値の位置の計画高さとを関連付けて記憶する機能
5.計測された位置の座標値が測量装置から入力されたときに、該当する位置の記憶されている計画高さと計測された現況の高さとを対比する機能
6.計画高さと計測された現況高さとの関係を表示装置に表示させる機能
なお、上記ターゲットは、例えば入射されたレーザーを入射方向に反射する反射鏡を用いることができる。
【0024】
次に上記のような移動体の位置情報取得システムを用いて移動する作業車両の位置情報を取得する方法を、図2に示す概略図及び図3及び図4に示すフロー図に基づいて説明する。
この方法は、計画道路の線形に沿って路床又は路盤をあらかじめ定められた計画高さに仕上げるために採用されたものであり、移動体であるモーターグレーダー8にターゲット9を取り付け、これを複数の測量装置1,2,3で追尾する。そして、モーターグレーダー8で路床又は路盤を敷き均す時の現況高さを測量装置1,2,3によって計測し、計画高さと対比するものである。演算装置4及び表示装置5はモーターグレーダー8に搭載し、モーターグレーダー8の操作者が表示装置5に表示された現況高さと計画高さとの対比を視認して、現況高さを計画高さに近づけるように作業を進める。
【0025】
このような工事において移動するモーターブレーダー8に取り付けらえたターゲット9を次のような工程で追尾し、位置情報を取得しながら表示装置5を介してその情報をモーターグレーダー8の操作者に提示する。
まず、第1の測量装置1を任意の位置に水平に据え付け(S1)、図2に示すように座標値が既知となっている2つの基準点6,7を視準する。そして、基準点6、7までの距離を測定し、その方位角、仰角及び基準点までの距離を計測する。これらの計測値から設定されている座標系における第1の測量装置1が据え付けられた位置のxy平面上の座標値及び座標軸の方向と据え付けられた第1の測量装置の方向との関係を特定することができる。また、基準点のいずれかを視準したときの仰角によって高さ方向(z軸方向)の位置を特定することができ、第1の測量装置1を設置した位置の座標値を特定することができる(S2)。
なお、第1の測量装置1を基準点上に据え付けることができるときには、他の基準点を視準した計測値から第1の測量装置1の高さ方向の位置を特定するとともに座標軸の方向との関係を特定することができる。
【0026】
第1の測量装置1が設置された位置の座標値及び設置された方向が特定されると、第1の測量装置1でモーターグレーダー8に取り付けられたターゲット9を視準し、反射光を検知して得られた測定値からターゲット9の位置の座標を特定することができる。そして、モーターグレーダー8の移動にともない、逐次に座標値を特定して演算装置4に送信する(S3)。演算装置4では、ターゲット9がモーターグレーダー8に取り付けられた位置の情報からモーターグレーダー8がある位置の現況高さを算定するとともに、記憶されている計画高さの情報から、測定されたターゲット9の位置の平面座標における計画高さを抽出し、測定値と対比する。この情報をモーターグレーダー8の操作者が認識できるように表示装置5に表示する(S4)。この情報で現況高さが計画高さより高いときには地表面を切削するようにモーターグレーダー8を操作し、現況高さより低いと表示されたときには土を盛って計画高さに近づけるように操作することができる。
【0027】
上記のように移動体であるモーターグレーダー8の位置情報の取得は、1台の測量装置すなわち第1の測量装置1だけでも可能ではあるが、第2の測量装置2を併用するのが望ましい。特に、図2に示すように第1の測量装置1からの視準が障害物21や他の作業車両等によって遮断される可能性があるときに、複数の測量装置によって位置情報を取得するのが望ましい。
第2の測量装置2を用いるときには、次のような工程で設置することができる。
第2の測量装置2は、広い範囲を視準することができる任意の位置に、水平に設置する(S5)。この第2の測量装置2と第1の測量装置1との双方で第1の点にあるモーターグレーダー8aに取り付けられたターゲット9を視準し、同時に位置情報を取得する(S6)。すなわち、ターゲット9を視準したときの方位角、仰角及びターゲット9までの距離を測定する。さらに、モーターグレーダー8が移動して(S7)第2の点にあるときに、モーターグレーダー8bに取り付けられたターゲット9を同様に第1の測量装置1と第2の測量装置2との双方で同時に視準し、ターゲットまでの方位角、仰角及び距離を測定する(S8)。第1の測量装置1は設置位置の座標値が既知となっており、取得した計測値からモーターグレーダー8が第1の点及び第2の点にあるときのターゲット9の位置の座標値を演算部111において演算することができる(S9)。
【0028】
演算された2つの座標値は第1の測量装置1の演算部11から演算装置4に向けて出力され、演算装置4は入力された2つの座標値を第2の測量装置2に出力する(S10)。第2の演算装置2は、第1の点及び第2の点にあるターゲット9を視準して方位角、仰角及び距離を計測しており、第1の点及び第2の点にあるターゲット9の座標値を取得して既知となることによって演算部12は第2の測量装置2の設置位置の座標値及び設置された方向を演算することができる(S11)。このように設置位置が特定された第2の測量装置2は、モーターグレーダー8に取り付けられたターゲット9を追尾し、ターゲット9の位置の座標値を特定することができる。したがって、第1の測量装置1と第2の測量装置2との双方がターゲット9の位置情報を取得することが可能となる(S12)。
これにより、第1の測量装置1と第2の測量装置2との双方又はいずれか一方から得られる位置情報に基づき、現況高さと計画高さとの対比を表示装置5に表示することができる(S13)。
【0029】
このように第1の測量装置1と第2の測量装置2との双方がターゲット9を追尾して位置情報を取得することができる状態では、ターゲット9の視準が障害物や他の作業車両等によって一時的に遮断されたときにも、移動体であるモーターグレーダー8の操作者に位置情報を途切れることなく提供することができる。したがって、作業を中断することなく継続させることができる。
【0030】
また、いずれか一方の測量装置によるターゲットの視準が遮断され、ターゲットを見失ったとき(S14)には、次のような対応によって追尾が遮断された測量装置も迅速に追尾を復活させることができる。
いずれか一方の測量装置例えば第1の測量装置1によるターゲット9の視準が遮断された時には、他方の測量装置である第2の測量装置2でターゲット9の位置情報を取得し、その座標値を演算装置4に出力する。演算装置4は、この座標値を第1の測量装置1の演算部11に入力する(S15)。第1の測量装置1は、入力された座標値の方向に向けて追尾用のレーザーを走査し、ターゲットの位置を探査する。そして、追尾用レーザーで検知された情報に基づいて測距用のレーザーを射出することによって迅速にターゲット9を再捕捉することができる(S16)。
【0031】
一方、移動体が広い範囲に移動し、いずれかの測量装置が視準可能な範囲を逸脱する懸念が生じたとき(S17)には、さらに新たに第3の測量装置3を設置し(S18)、この第3の測量装置3によって移動体に取り付けたターゲット9を追尾し、位置情報を取得することができる。新たに第3の測量装置3を設置し、ターゲット9を追尾する工程は、第2の測量装置2を設置して設置位置の座標値等を特定し、ターゲット9の位置情報の取得を可能にする工程、すなわち図3に符号S6から符号S11で示す工程(破線枠部Dの工程)と同様に行うことができる(S19)。これにより、第3の測量装置でターゲット9を追尾し、位置情報を取得することが可能となる(S20)。このように移動体が移動する範囲が広範囲に及ぶ場合においても順次に複数の測量装置を設置し、効率よく広範囲で位置情報を取得することが可能となる。
【0032】
なお、以上のような工程を実行するために用いられる演算装置は、専用の装置であってもよいが汎用的なパーソナルコンピュータに上記工程を実行するためのコンピュータプログラムをインストールして用いることができる。
【0033】
以上に説明した移動体の位置情報取得方法、位置情報取得システムは、本発明の一実施形態であり、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の範囲内で適宜に変更して実施することができる。
例えば、上記実施の形態では道路の路床又は路盤を所定の高さに調整するものであるが、これに限定されるものではなく、公園、グラウンド、宅地、埋め立て地等の整地、盛土又は切土による法面の形成、アスファルト混合物層の仕上げ等、広い範囲に適用することができる。また、ターゲットが取り付けられた移動体は、モーターグレーダーの他、パワーシャベル、バックホー、ブルドーザー、アスファルトフィニッシャー等とすることができる。さらに、上記実施の形態ではモーターグレーダー8の操作者が表示装置5に表示された現況高さと計画高さとの対比を視認して、現況高さを計画高さに近づけるように作業を進めるものであるが、これに限定されるものではなく、演算装置4から出力される現況高さと計画高さとの対比結果に基づき、移動体である作業装置を自動制御することもできる。
【符号の説明】
【0034】
1:第1の測量装置, 2:第2の測量装置, 3:第3の測量装置, 4:演算装置, 5:表示装置, 6:基準点, 7:基準点, 8:モーターグレーダー, 9:ターゲット,
11:第1の測量装置の演算部, 12:第2の測量装置の演算部, 13:第3の測量装置の演算部,
21:障害物, 22:障害物
図1
図2
図3
図4