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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-8580(P2021-8580A)
(43)【公開日】2021年1月28日
(54)【発明の名称】インクジェットインク
(51)【国際特許分類】
   C09D 11/36 20140101AFI20201225BHJP
   C09D 11/38 20140101ALI20201225BHJP
   C08F 220/10 20060101ALI20201225BHJP
   B41M 5/00 20060101ALI20201225BHJP
   B41J 2/01 20060101ALI20201225BHJP
【FI】
   C09D11/36
   C09D11/38
   C08F220/10
   B41M5/00 120
   B41M5/00 112
   B41J2/01 501
   B41J2/01 129
【審査請求】未請求
【請求項の数】9
【出願形態】OL
【全頁数】36
(21)【出願番号】特願2019-123923(P2019-123923)
(22)【出願日】2019年7月2日
(71)【出願人】
【識別番号】306029349
【氏名又は名称】ゼネラル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002310
【氏名又は名称】特許業務法人あい特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】長江 賢吾
【テーマコード(参考)】
2C056
2H186
4J039
4J100
【Fターム(参考)】
2C056EA13
2C056EA14
2C056FB02
2C056FC01
2C056FD20
2C056HA44
2H186AB11
2H186BA08
2H186DA10
2H186FB03
2H186FB15
2H186FB29
2H186FB34
2H186FB35
2H186FB36
2H186FB38
2H186FB44
2H186FB46
2H186FB48
2H186FB58
4J039AB08
4J039AC01
4J039BE27
4J039CA04
4J039EA06
4J039EA39
4J039EA46
4J039GA24
4J100AL04Q
4J100AL05Q
4J100AL08Q
4J100AL09Q
4J100AL62P
4J100AL63P
4J100AL66P
4J100AL67P
4J100AQ06Q
4J100AQ08Q
4J100BA02P
4J100BA02Q
4J100BA03P
4J100BA03Q
4J100BA04Q
4J100BA08P
4J100BA08Q
4J100BA11Q
4J100BA15P
4J100BA16Q
4J100BA20Q
4J100BA64Q
4J100BC04P
4J100BC07Q
4J100BC12P
4J100BC12Q
4J100BC43Q
4J100BC45P
4J100BC65Q
4J100BC75P
4J100CA04
4J100FA08
4J100JA07
4J100JA37
(57)【要約】
【課題】連続印刷性や間欠印刷性に優れる上、とくにプラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面に、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷できる、光硬化性のインクジェットインクを提供する。
【解決手段】インクジェットインクは、2官能以上の多官能モノマーMmと単官能モノマーSmとを質量比Mm/Smで1.5以上の範囲で含むラジカル重合性成分、光ラジカル重合開始剤、水酸基価が20〜80mgKOH/gのテルペンフェノール樹脂、および/またはロジンエステルである粘着付与剤、ならびに炭素数1〜3のアルコールとアセトンとの混合溶剤を含む。
【選択図】なし
【特許請求の範囲】
【請求項1】
(I) 2官能以上の多官能モノマーと、単官能モノマーとを、多官能モノマーの質量をMm、単官能モノマーの質量をSmとした質量比Mm/Smで1.5以上の範囲で含むラジカル重合性成分、
(II) 光ラジカル重合開始剤、
(III) テルペンフェノール樹脂、およびロジンエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、水酸基価が20mgKOH/g以上、80mgKOH/g以下である粘着付与剤、ならびに
(IV) 溶剤を含み、
前記溶剤は、炭素数1〜3のアルコールのうちの少なくとも1種、およびアセトンの混合溶剤であるインクジェットインク。
【請求項2】
前記多官能モノマーは、
(i) エトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、
(ii) トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレート、および
(iii) ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、
である請求項1に記載のインクジェットインク。
【請求項3】
前記単官能モノマーは、N−ビニルラクタムモノマーである請求項1または2に記載のインクジェットインク。
【請求項4】
前記質量比Mm/Smは、2.5以上、8以下である請求項1〜3のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項5】
前記光ラジカル重合開始剤は、分子中に、2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド単位を含む化合物である請求項1〜4のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項6】
前記アルコールは、エタノールである請求項1〜5のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項7】
前記アセトンの割合は、前記アルコールと前記アセトンの総量の8質量%以上、30質量%以下である請求項1〜6のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項8】
さらに、シリコーンオイルを含む請求項1〜7のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【請求項9】
非吸収性の被印刷体の表面に、インクジェット印刷法によって文字などを印刷するために用いる請求項1〜8のいずれか1項に記載のインクジェットインク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、インクジェットインクに関するものである。
【背景技術】
【0002】
たとえば、プラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面に、インクジェット印刷法によって文字などを印刷するために、紫外線等の光の照射によって硬化反応する光硬化性のインクジェットインクが用いられる場合がある。
光硬化性のインクジェットインクとしては、たとえば、ラジカル重合性成分、光ラジカル重合開始剤、および溶剤を含むラジカル重合性のインクジェットインクが知られている(特許文献1等参照)。
【0003】
特許文献1では、ラジカル重合性成分として、多官能の光重合性化合物(多官能モノマー)と、単官能の光重合性化合物(単官能モノマー)とを併用している。また特許文献1では、多官能モノマーの質量をMm、単官能モノマーの質量をSmとしたときの質量比Mm/Smが1/19(≒0.05)以上、1/2.8(≒0.36)以下の単官能モノマーリッチに設定されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2019−31618号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
特許文献1に記載されているように、従来は、インクジェットインクに適度の流動性を付与するべく、多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Smが、単官能モノマーリッチとなるように設定されるのが一般的である。適度の流動性を付与することにより、インクジェットインクの、インクジェットプリンタのノズルからの吐出を安定させて、当該ノズルから、安定して連続的に吐出させることができる。そのため文字などを、良好な状態を維持しながら連続的に印刷できる枚数を増加させる、すなわち連続印刷性を向上することができる。
【0006】
しかし従来のインクジェットインクでは、光硬化後の架橋密度を十分に高めることができず、とくにプラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面に十分な物理的、化学的な強度を有し、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷できないという課題がある。
耐擦過性とは、たとえば、上記被印刷体の表面に印刷した文字などを、乾燥状態の綿棒などでこすった際に、当該文字などが欠けたりかすれたりしにくい特性を指す。また耐アルコール性とは、たとえば、上記被印刷体の表面に印刷した文字などを、2−プロパノール等のアルコールを染み込ませた綿布などでこすった際に、当該文字などが欠けたりかすれたりしにくい特性を指す。
【0007】
また、上記従来のインクジェットインクは、とくにオンデマンド型のインクジェットプリンタに使用して、デキャップタイムの終了後に印刷を再開した際に、ノズルで目詰まりして文字などのかすれ等を生じやすく、間欠印刷性が良好でないという課題もある。
本発明の目的は、連続印刷性や間欠印刷性に優れる上、とくにプラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面に、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷できる、光硬化性のインクジェットインクを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、
2官能以上の多官能モノマーと、単官能モノマーとを、多官能モノマーの質量をMm、単官能モノマーの質量をSmとした質量比Mm/Smで1.5以上の範囲で含むラジカル重合性成分、
(II) 光ラジカル重合開始剤、
(III) テルペンフェノール樹脂、およびロジンエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、水酸基価が20mgKOH/g以上、80mgKOH/g以下である粘着付与剤、ならびに
(IV) 溶剤を含み、
前記溶剤は、炭素数1〜3のアルコールのうちの少なくとも1種、およびアセトンの混合溶剤であるインクジェットインクである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、連続印刷性や間欠印刷性に優れる上、とくにプラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面に、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷できる、光硬化性のインクジェットインクを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明のインクジェットインクは、上述したように、
2官能以上の多官能モノマーと、単官能モノマーとを、多官能モノマーの質量をMm、単官能モノマーの質量をSmとした質量比Mm/Smで1.5以上の範囲で含むラジカル重合性成分、
(II) 光ラジカル重合開始剤、
(III) テルペンフェノール樹脂、およびロジンエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、水酸基価が20mgKOH/g以上、80mgKOH/g以下である粘着付与剤、ならびに
(IV) 溶剤を含み、
前記溶剤は、炭素数1〜3のアルコールのうちの少なくとも1種、およびアセトンの混合溶剤であることを特徴とする。
【0011】
本発明のインクジェットインクによれば、ラジカル重合性成分として、2官能以上の多官能モノマーと単官能モノマーとを、上記のように質量比Mm/Smが1.5以上の多官能モノマーリッチとなるように併用している。そのため、多官能モノマーによって、光硬化後の文字などの架橋密度を十分に高めることができる。
また、多官能モノマーととともに併用した単官能モノマーによって、光硬化後の文字などの柔軟性と、それに伴う被印刷体の表面への密着性とを高めることもできる。
【0012】
また溶剤として、ラジカル重合性成分の良溶媒であるアルコールとともに、当該アルコールよりも揮発性の高いアセトンを併用することによって、インクジェットインクの乾燥性を高めることもできる。
インクジェットインクは、とくにプラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面では乾燥しにくく、印刷後にアルコールが残留することがある。そして、アルコールが残留すると光硬化後の文字などが脆くなって、当該文字などの耐擦過性や耐アルコール性が低下する場合がある。
【0013】
これに対し、アルコールとともにアセトンを併用すると、インクジェットインクの乾燥性を高め、アルコールの残留を抑制して、当該文字などの耐擦過性や耐アルコール性をさらに高めることができる。
したがって、これらの効果が相まって、とくにプラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面に、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷することが可能となる。
【0014】
また溶剤として、アセトンとともに、ラジカル重合性成分の良溶媒である、炭素数1〜3のアルコールのうちの少なくとも1種を用いることにより、多官能モノマーリッチであるにも拘らず、インクジェットインクの流動性を向上できる。そのため、インクジェットインクの吐出を安定させて連続印刷性を向上することもできる。
またアルコールとともに、特定の水酸基価を有する粘着付与剤、およびアセトンを併用することにより、インクジェットインクの間欠印刷性を向上することもできる。すなわち、印刷のデキャップタイムにインクジェットプリンタのノズルで目詰まりして、印刷再開時の文字などにかすれ等が生じるのを抑制することができる。
【0015】
デキャップタイムとは、インクジェットプリンタに複数設けられたノズルのうち、間欠印刷時に、印刷パターンに応じてインク滴が吐出されない待機状態とされたノズル内のインクジェットインクが、外気にさらされている時間を指す。
インクジェットプリンタには通常、運転停止時に、ノズル内のインクジェットインクが外気にさらされ続けることで乾燥して目詰まりしたりしないように、ノズルを閉じる(キャップする)機能が付与されているのが一般的である。
【0016】
しかし印刷時には、キャップは解除されている。そのため、とくに間欠印刷時に待機状態となるノズルは、次にインク滴が吐出されるまでの間、ノズルが閉じられていない状態(デキャップの状態)が続き、その間、ノズル内のインクジェットインクは外気にさらされ続けることになる。
したがって上記時間、つまりデキャップタイムが長いほど、ノズルの目詰まりを生じやすくなる傾向がある。
【0017】
デキャップタイムにノズルの目詰まりを生じにくい特性が、「間欠印刷性」の良否として評価される。目詰まりを生じないデキャップタイムが長ければ長いほど、インクジェットインクは、間欠印刷性が良好であると評価できる。
本発明では、上述した特定の水酸基価を有する粘着付与剤が、炭素数1〜3のアルコール、およびアセトンの混合溶剤に、溶解性に余裕を持たせないで溶解する。
【0018】
具体的には、アセトンが、上記特定の粘着付与剤を良好に溶解するのに対して、炭素数1〜3のアルコールは、アセトンと比較すると、上記粘着付与剤に対する溶解性がさほど良好ではない。そのため粘着付与剤は、アルコールおよびアセトンの混合溶剤に対して、溶解性に余裕を持たせないぎりぎりの状態で溶解する。
しかもアセトンは、前述したようにアルコールよりも揮発性が高い。そのため、デキャップタイムにインクジェットインクがノズル内で外気にさらされた際には、当該外気との界面、つまりノズル内のインクジェットインクの液面(メニスカス)でアセトンが揮発して、粘着付与剤の溶解性のバランスが崩れる。そして粘着付与剤が液面に析出して、ごく薄い膜を形成し、形成された薄い膜によって溶剤のさらなる揮発が抑制されて、膜の内側のインクジェットインクが、デキャップタイムの間、吐出可能な低粘度の状態に維持される。
【0019】
しかも粘着付与剤は、ほとんど造膜性のない硬脆い成分であり、当該粘着付与剤からなる膜は、次の吐出時にノズルに加わる吐出圧力によって簡単に破られる。また破られた膜は、インクジェットインク中に速やかに溶解する。そのため、デキャップタイムの直後から所定体積のインク滴を吐出させることができ、結果として間欠印刷性が向上する。
したがって、本発明によれば、上記各成分を含むことにより、連続印刷性や間欠印刷性に優れる上、とくにプラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面に、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷できるインクジェットインクを提供することが可能となる。
【0020】
《(I) ラジカル重合性成分》
ラジカル重合性成分としては、2官能以上の多官能モノマーと、単官能モノマーとを併用する。
〈多官能モノマー〉
多官能モノマーとしては、1分子中にラジカル重合性基を2つ以上有する種々のモノマーが使用可能である。多官能モノマーとしては、これに限定されないが、たとえば、下記の各種化合物等の1種または2種以上を用いることができる。
【0021】
(2官能アクリレート)
アルケマ(ARKEMA)社製のSARTOMER(サートマー、登録商標)シリーズのうち、SR212〔1,3−ブチレングリコールジアクリレート〕、SR213〔1,4−ブタンジオールジアクリレート〕、SR230〔ジエチレングリコールジアクリレート〕、SR238F〔1,6−ヘキサンジオールジアクリレート〕、SR238NS〔1,6−ヘキサンジオールジアクリレート〕、SR247〔ネオペンチルグリコールジアクリレート〕、SR259〔ポリエチレングリコール(200)ジアクリレート〕、SR268〔テトラエチレングリコールジアクリレート〕、SR272〔トリエチレングリコールジアクリレート〕、SR306H〔トリプロピレングリコールジアクリレート〕、SR306NS〔トリプロピレングリコールジアクリレート〕、SR344〔ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート〕、SR344NS〔ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート〕、SR349〔エトキシ化(3)ビスフェノールAジアクリレート〕、SR349NS〔エトキシ化(3)ビスフェノールAジアクリレート〕、CD406〔シクロヘキサンジメタノールジアクリレート〕、SR508〔ジプロピレングリコールジアクリレート〕、SR508NS〔ジプロピレングリコールジアクリレート〕、CD560〔アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート〕、CD561〔アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート〕、CD562〔アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート〕、CD563〔アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート〕、CD564〔アルコキシ化ヘキサンジオールジアクリレート〕、CD595〔ドデカンジアクリレート〕、SR601〔エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート〕、SR601NS〔エトキシ化(4)ビスフェノールAジアクリレート〕、SR602〔エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート〕、SR602NS〔エトキシ化(10)ビスフェノールAジアクリレート〕、SR610〔ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート〕、SR610NS〔ポリエチレングリコール(600)ジアクリレート〕、SR833NS〔トリシクロデカンジメタノールジアクリレート〕、SR833S〔トリシクロデカンジメタノールジアクリレート〕、SR9003〔プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート〕、SR9003NS〔プロポキシ化(2)ネオペンチルグリコールジアクリレート〕、SR9038〔エトキシ化(30)ビスフェノールAジメタクリレート〕、CD9043〔アルコキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート〕、SR9045〔アルコキシ化ネオペンチルグリコールジアクリレート〕、SR9209〔アルコキシ化脂肪酸ジアクリレート〕。
【0022】
日本化薬(株)製のKAYARAD(カヤラッド、登録商標)シリーズのうち、NPGDA〔ネオペンチルグリコールジアクリレート〕、PEG400DA〔ポリエチレングリコール(400)ジアクリレート〕、FM−400〔ネオペンチルグリコールヒドロキシピバリン酸エステルジアクリレート〕、R−167、HX−220、HX−620、R−551、R−712、R−604、R−684。
【0023】
共栄社化学(株)製のLIGHT ACRYLATE(ライトアクリレート、登録商標)シリーズのうち、3EG−A〔トリエチレングリコールジアクリレート〕、4EG−A〔PEG200#ジアクリレート〕、9EG−A〔PEG400#ジアクリレート〕、14−EG−A〔PEG600#ジアクリレート〕、PTMGA−250〔ポリテトラメチレングリコ―ルジアクリレート〕、NP−A〔ネオペンチルグリコールジアクリレート〕、MPD−A〔3−メチル−1,5−ペンタンジオールジアクリレート〕、1.6HX−A〔1,6−ヘキサンジオールジアクリレート〕、1.9ND−A〔1,9−ノナンジオールジアクリレート〕、DCP−A〔ジメチロール−トリシクロデカンジアクリレート〕、BP−4EAL〔ビスフェノールAのEO付加物ジアクリレート〕、BP-4PA〔ビスフェノールAのPO付加物ジアクリレート〕、HPP−A〔ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールアクリル酸付加物〕。
【0024】
(2官能メタクリレート)
アルケマ社製のサートマーシリーズのうち、SR101〔エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート〕、SR150〔エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート〕、SR205〔トリエチレングリコールジメタクリレート〕、SR205NS〔トリエチレングリコールジメタクリレート〕、SR206〔エチレングリコールジメタクリレート〕、SR206NS〔エチレングリコールジメタクリレート〕、SR209〔テトラエチレングリコールジメタクリレート〕、SR210〔ポリエチレングリコールジメタクリレート〕、SR210NS〔ポリエチレングリコールジメタクリレート〕、SR214〔1,4−ブタンジオールジメタクリレート〕、SR214NS〔1,4−ブタンジオールジメタクリレート〕、SR231〔ジエチレングリコールジメタクリレート〕、SR231NS〔ジエチレングリコールジメタクリレート〕、SR239〔1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート〕、SR239NS〔1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート〕、SR248〔ネオペンチルグリコールジメタクリレート〕、SR252〔ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート〕、SR252NS〔ポリエチレングリコール(600)ジメタクリレート〕、SR262〔1,12−ドデカンジオールジメタクリレート〕、SR297〔1,3−ブチレンジオールジメタクリレート〕、SR348〔エトキシ化(2)ビスフェノールAジメタクリレート〕、SR348NS〔エトキシ化(2)ビスフェノールAジメタクリレート〕、SR480〔エトキシ化(10)ビスフェノールAジメタクリレート〕、SR480NS〔エトキシ化(10)ビスフェノールAジメタクリレート〕、SR540〔エトキシ化(4)ビスフェノールAジメタクリレート〕、CD540〔エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート〕、SR541〔エトキシ化(6)ビスフェノールAジメタクリレート〕、CD541〔エトキシ化ビスフェノールAジメタクリレート〕、SR603〔ポリエチレングリコール(400)ジメタクリレート〕、SR644〔ポリプロピレングリコール(400)ジメタクリレート〕、SR740〔ポリエチレングリコール(1000)〕ジメタクリレート、SR9036〔エトキシ化(30)ビスフェノールAジメタクリレート〕。
【0025】
(アクリレート/メタクリレート(2官能))
共栄社化学(株)製のライトエステルG−201P〔2−ヒドロキシ−3−アクリロイロキシプロピルメタクリレート〕。
(3官能アクリレート)
アルケマ社製のサートマーシリーズのうち、SR351NS〔トリメチロールプロパントリアクリレート〕、SR351S〔トリメチロールプロパントリアクリレート〕、SR368〔トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート〕、SR368NS〔トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート〕、SR415〔エトキシ化トリメチロールプロパントリアクリレート〕、SR444〔ペンタエリスリトールトリアクリレート〕、SR444NS〔ペンタエリスリトールトリアクリレート〕、SR454〔エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート〕、SR454NS〔エトキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート〕、SR492〔プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート〕、SR492TFN〔プロポキシ化(3)トリメチロールプロパントリアクリレート〕、SR499〔エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート〕、SR499NS〔エトキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート〕、CD501〔プロポキシ化(6)トリメチロールプロパントリアクリレート〕、SR502〔エトキシ化(9)トリメチロールプロパントリアクリレート〕、SR9020〔プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート〕、SR9020NS〔プロポキシ化(3)グリセリルトリアクリレート〕、CD9021〔高プロポキシ化(5.5)グリセリルトリアクリレート〕、SR9035〔エトキシ化(15)トリメチロールプロパントリアクリレート〕。
【0026】
日本化薬(株)製のカヤラッドシリーズのうち、TMPTA〔トリメチロールプロパントリアクリレート〕、GPO−303、PET−30。
共栄社化学(株)製のライトアクリレートシリーズのうち、TMP−A〔トリメチロールプロパントリアクリレート〕、PE−3A〔ペンタエリスリトールトリアクリレート〕。
(3官能メタクリレート)
アルケマ社製のサートマーシリーズのうち、SR350〔トリメチロールプロパントリメタクリレート〕。
【0027】
(4官能以上のアクリレート)
アルケマ社製のサートマーシリーズのうち、SR295〔ペンタエリスリトールテトラアクリレート、4官能〕、SR295NS〔ペンタエリスリトールテトラアクリレート、4官能〕、SR355〔ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、4官能〕、SR355NS〔ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、4官能〕、SR399〔ジペンタエリスリトールペンタアクリレート、5官能〕、SR494〔エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、4官能〕、SR494NS〔エトキシ化(4)ペンタエリスリトールテトラアクリレート、4官能〕、SR399NS〔ジペンタエリスリトールペンタアクリレート〕、SR9041〔ペンタアクリレートエステル、5官能〕、DPHA NS〔ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、6官能〕。
【0028】
日本化薬(株)製のカヤラッドシリーズのうち、T−1420(T)〔ジペンタエリスリトールテトラアクリレート、4官能〕、RP−1040〔エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、4官能〕、DPHA〔4官能と6官能の混合物〕、DPEA−12〔6官能〕、D−310〔5官能〕、DPCA−20〔6官能〕、DPCA−30〔6官能〕、DPCA−60〔6官能〕、DPCA−120〔6官能〕。
【0029】
共栄社化学(株)製のライトアクリレートシリーズのうち、PE−4A〔ペンタエリスリトールテトラアクリレート、4官能〕、DPE−6A〔ジペンタエリスリトールヘキサアクリレート、6官能〕。
中でも、多官能モノマーとしては、とくに下記(i)〜(iii)に分類される多官能モノマーを併用することが好ましい。かかる(i)〜(iii)の多官能モノマーを併用することで、インクジェットインクに良好な連続印刷性を付与しつつ、プラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面等に、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷できる。
【0030】
(i) エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート、およびエトキシ化ペンタエリスリトールテトラメタクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種。4官能。たとえば、アルケマ社製のサートマーSR494、SR494NS、日本化薬(株)製のカヤラッドRP−1040等。
(ii) トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、およびトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリメタクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種。3官能。たとえば、アルケマ社製のサートマーSR368、SR368NS等。
【0031】
(iii) ネオペンチルグリコールジアクリレート、およびネオペンチルグリコールジメタクリレートからなる群より選ばれた少なくとも1種。2官能。たとえば、アルケマ社製のサートマーSR247、日本化薬(株)製のカヤラッドNPGDA、共栄社化学(株)製のライトアクリレートNP−A等。
上記(i)〜(iii)の多官能モノマーの併用系において、当該(i)〜(iii)の多官能モノマーの総量に占める、(i)〜(iii)のそれぞれの多官能モノマーの割合は、いずれも任意に設定することができる。
【0032】
ただし、(i)のエトキシ化ペンタエリスリトールテトラ(メタ)クリレートの割合は、15質量%以上、とくに17質量%以上であるのが好ましく、25質量%以下、とくに22質量%以下であるのが好ましい。また(ii)のトリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリ(メタ)アクリレートの割合は、37質量%以上、とくに39質量%以上であるのが好ましく、43質量%以下、とくに42質量%以下であるのが好ましい。さらに(iii)のネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレートの割合は、37質量%以上、とくに39質量%以上であるのが好ましく、43質量%以下、とくに42質量%以下であるのが好ましい。
【0033】
〈単官能モノマー〉
単官能モノマーとしては、上記多官能モノマーと共重合し得る、1分子中にラジカル重合性基を1つのみ有する種々のモノマーが使用可能である。単官能モノマーとしては、これに限定されないが、たとえば、下記の各種化合物等の1種または2種以上を用いることができる。
【0034】
(N−ビニルラクタムモノマー)
単官能モノマーとしては、式(1)
【0035】
【化1】
【0036】
〔式中nは1〜7を示す。〕
で表されるN−ビニルラクタムモノマーが好ましい。
N−ビニルラクタムモノマーの具体例としては、たとえば、式(1)中のnが3である、式(1−1):
【0037】
【化2】
【0038】
で表されるN−ビニル−2−ピロリドン、および式(1)中のnが5である、式(1−2):
【0039】
【化3】
で表されるN−ビニル−ε−カプロラクタム(以下「VCAP」と略記する場合がある。)等の少なくとも1種を用いることができる。
【0040】
N−ビニルラクタムモノマーは、前述した、光硬化後の文字などの柔軟性と、それに伴う被印刷体の表面への密着性とを高める効果に優れている。
またN−ビニルラクタムモノマーは、光ラジカル重合開始剤の増感剤として、インクジェットインクの光感度を向上して、硬化の速度を高める効果をも有している。
【0041】
とくに式(1−2)のVCAPは、これらの効果に優れており、単官能モノマーとして好適に用いることができる。
単官能モノマーとしては、N−ビニルラクタムモノマーとともに、あるいはN−ビニルラクタムモノマーに代えて、他の単官能モノマーを用いることもできる。
他の単官能モノマーとしては、たとえば、下記の各種化合物等が挙げられる。
【0042】
(単官能アクリレート)
共栄社化学(株)製のライトアクリレートシリーズのうちIAA〔イソアミルアクリレート〕、L−A〔ラウリルアクリレート〕、S−A〔ステアリルアクリレート〕、EC−A〔エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート〕、MTG−A〔メトキシ−トリエチレングリコールアクリレート〕、EHDG−AT〔2−エチルヘキシル−ジグリコールアクリレート〕、130A〔メトキシ−ポリエチレングリコールアクリレート〕、DPM−A〔メトキシジプロピレングリコールアクリレート〕、PO−A〔フェノキシエチルアクリレート〕、P2H−A〔フェノキシジエチレングリコールアクリレート〕、P−200A〔フェノキシ−ポリエチレングリコールアクリレート〕、THF−A〔テトラヒドロフルフリルアクリレート〕、IB−XA〔イソボルニルアクリレート〕、HOB−A〔2−ヒドロキシブチルアクリレート〕、HOA−HH(N)〔2−アクリロイロキシエチルヘキサヒドロフタル酸〕、BA-104〔ネオペンチルグリコール−アクリル酸−安息香酸エステル〕、P−1A(N)〔2−アクリロイロキシエチルアシッドフォスフェート〕。
【0043】
共栄社化学(株)製のライトエステルHOA(N)〔2−ヒドロキシエチルアクリレート〕、ライトエスエルHOP−A(N)〔2−ヒドロキシプロピルアクリレート〕、エポキシエステルM−600A〔2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート〕、HOA−MS(N)〔2−アクリロイロキシエチル−コハク酸〕、HOA−MPL(N)〔2−アクリロイロキシエチル−フタル酸〕、HOA−MPE(N)〔2−アクリロイロキシエチル−2−ヒドロキシエチル−フタル酸〕。
【0044】
日本化薬(株)製のカヤラッドR−128H〔2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピルアクリレート〕。
アルケマ社製のサートマーシリーズのうち、SR217NS〔4−tert−ブチルシクロヘキサノールアクリレート〕、SR256〔2−(2−エトキシエトキシ)エチルアクリレート〕、SR257〔ステアリルアクリレート〕、SR285〔テトラヒドロフルフリルアクリレート〕、SR335〔ラウリルアクリレート〕、SR339A〔2−フェノキシエチルアクリレート〕、SR339NS〔2−フェノキシエチルアクリレート〕、SR395〔イソデシルアクリレート〕、SR395NS〔イソデシルアクリレート〕、SR420NS〔3,3,5−トリメチルシクロヘキサノールアクリレート〕、SR440〔イソオクチルアクリレート〕、SR484〔オクチル/デシルアクリレート〕、SR489〔トリデシルアクリレート〕、SR489D〔トリデシルアクリレート〕、SR495〔カプロラクトンアクリレート〕、SR495NS〔カプロラクトンアクリレート〕、SR504〔エトキシ化ノニルフェニルアクリレート〕、SR504NS〔エトキシ化(4)ノニルフェニルアクリレート〕、SR506〔イソボニルアクリレート〕、SR506NS〔イソボニルアクリレート〕、SR531〔環状トリメチロールプロパンフォルマルアクリレート〕、SR551〔メトキシポリエチレングリコール(350)モノアクリレート〕、SR611〔アルコキシ化テトラヒドロフルフリルアクリレート〕、CD614〔アルコキシ化ノニルフェニルアクリレート〕、CD9075〔アルコキシ化ラウリルアクリレー〕、CD9087〔アルコキシ化2−フェノキシエチルアクリレート〕、SR9087〔アルコキシ化フェノールアクリレート〕。
【0045】
(単官能メタクリレート)
アルケマ社製のサートマーシリーズのうち、SR203〔テトラヒドロフルフリルメタクリレート〕、SR242〔イソデシルメタクリレート〕、SR313〔ラウリルメタクリレート〕、SR313NS〔ラウリルメタクリレート〕、SR324〔ステアリルメタクリレート〕、SR324NS〔ステアリルメタクリレート〕、SR340〔2−フェノキシエチルメタクリレート〕、CD421〔3,3,5−トリメチルシクロヘキシルメタクリレート〕、SR423〔イソボルニルメタクリレート〕、SR423NS〔イソボルニルメタクリレート〕、SR493〔トリデシルメタクリレート〕、SR493D〔トリデシルメタクリレート〕、CD535〔ジシクロペンタジエニルメタクリレート〕、CD545〔ジエチレングリコールメチルエーテルメタクリレート〕、CD550〔メトキシポリエチレングリコール(350)モノメタクリレート〕、SR550〔メトキシポリエチレングリコール(350)モノメタクリレート〕、CD552〔メトキシポリエチレングリコール(550)モノメタクリレート〕、SR604〔ポリプロピレングリコールモノメタクリレート〕、CD730〔トリエチレングリコールエチルエーテルメタクリレート〕。
【0046】
〈シリコン変性ポリエーテル(メタ)アクリレート〉
単官能モノマーとしては、N−ビニルラクタムモノマー等の他の単官能モノマーとともに、さらにシリコン変性ポリエーテル(メタ)アクリレートを用いることもできる。
シリコン変性ポリエーテル(メタ)アクリレートは単官能モノマーとして機能する他、界面活性剤として、後述するシリコーンオイルを配合したインクジェットインクの濡れ性をさらに微調整するためにも機能する。そしてシリコーンオイルとともに、パドリングの発生を抑制する。
【0047】
シリコン変性ポリエーテル(メタ)アクリレートの具体例としては、たとえば、いずれもシリコン変性ポリエーテルアクリレートである、エボニック(EVONIK)社製のTEGO(登録商標)Radシリーズのうち2010、2011、2100、2300等の1種または2種以上を用いることができる。
シリコン変性ポリエーテル(メタ)アクリレートの割合は、インクジェットインクの総量の0.05質量%以上であるのが好ましく、0.2質量%以下であるのが好ましい。
【0048】
〈質量比および割合〉
2官能以上の多官能モノマーと、単官能モノマーとの質量比Mm/Smは、前述したように1.5以上に限定される。この範囲より多官能モノマーの割合が少ない場合には、光硬化後の文字などの架橋密度が低くなって、前述したように、当該文字などの耐擦過性や耐アルコール性が不足する。
【0049】
これに対し、質量比Mm/Smを上記の範囲とすることにより、光硬化後の文字などの架橋密度を高めることができる。また、併用する単官能モノマーによって、光硬化後の文字などの柔軟性と、それに伴う被印刷体の表面への密着性とを高めることもできる。そのため、とくにプラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面に、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷することができる。なお、かかる効果をより一層向上することを考慮すると、質量比Mm/Smは、上記の範囲でも1.9以上、中でも2.5以上、とくに2.9以上であるのが好ましい。
【0050】
また、質量比Mm/Smは、上記の範囲でも9以下、とくに8以下であるのが好ましい。質量比Mm/Smがこの範囲を超える場合には、インクジェットインクの粘度が高くなり、流動性が低下して、インクジェットプリンタのノズルからの吐出が不安定になって連続印刷性が低下する場合がある。
質量比Mm/Smが上記の範囲を超える場合でも、溶剤の量を多くすれば、適度の流動性を確保することはできる。しかしその場合には、インクジェットインクの乾燥性が低下して、印刷後にアルコールが残留しやすく、アルコールが残留すると光硬化後の文字などが脆くなって、当該文字などの耐擦過性や耐アルコール性が低下する場合がある。
【0051】
これに対し、質量比Mm/Smを上記の範囲以下とすれば、溶剤量を多くすることなく適度の流動性を確保して、連続印刷性を良好に維持することができる。また、とくにプラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面に、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷することもできる。
2種以上の多官能モノマー、および/または単官能モノマーを併用する場合は、その合計量を基準として、質量比Mm/Smを上記の範囲とすればよい。
【0052】
インクジェットインクの総量に占める、多官能モノマーおよび単官能モノマーの割合は、それぞれ任意に設定することができる。
ただし、インクジェットインクに良好な光硬化性、連続印刷性、間欠印刷性を付与し、しかもプラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面に、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷することを考慮すると、それぞれ下記の割合で配合することが好ましい。
【0053】
すなわち、多官能モノマーの割合は、インクジェットインクの総量の3質量%以上、とくに6質量%以上であるのが好ましく、50質量%以下であるのが好ましい。また、単官能モノマーの割合は、インクジェットインクの総量の0.5質量%以上、とくに1質量%以上であるのが好ましく、12質量%以下であるのが好ましい。
2種以上の多官能モノマー、および/または単官能モノマーを併用する場合は、その合計の割合を、上記の範囲とすればよい。
【0054】
《(II) 光ラジカル重合開始剤》
光ラジカル重合開始剤としては、任意の波長の光の照射によってラジカルを発生させて、ラジカル重合性成分をラジカル重合反応させることができる種々の化合物が、いずれも使用可能である。
光ラジカル重合開始剤の具体例としては、たとえば、下記の各種化合物等が挙げられる。
【0055】
ベンゾフェノン、ヒドロキシベンゾフェノン、2−クロロベンゾフェノン、4,4′−ジクロロベンゾフェノン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4,4′−ビスジメチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)、4−メトキシ−4′−ジメチルアミノベンゾフェノン、特開2008−280427号公報の一般式(1)で表されるベンゾフェノン化合物等のベンゾフェノン類またはその塩。
【0056】
チオキサントン、2−クロロチオキサントン、2−メチルチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、4−イソプロピルチオキサントン、イソプロポキシクロロチオキサントン、特開2008−280427号公報の一般式(2)で表されるチオキサントン化合物等のチオキサントン類またはその塩。
【0057】
エチルアントラキノン、ベンズアントラキノン、アミノアントラキノン、クロロアントラキノン等のアントラキノン類。
アセトフェノン、2,2−ジエトキシアセトフェノン、2,2−ジメトキシフェニルアセトフェノン、4′−ジメチルアミノアセトフェノン、ジメチルヒドロキシアセトフェノン等のアセトフェノン類。
【0058】
2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(p−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−ジ(p−メトキシフェニル)−5−フェニルイミダゾール2量体、2−(2,4−ジメトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体等のイミダゾール類。
【0059】
ベンジルジメチルケタール、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ‐1‐(4−モルホリノフェニルブタン)−1−オン、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−モルフォリノプロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−1−オン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニル−プロパン−1−オン、1−[4−(2−ヒドロキシエトキシ)−フェニル]−2−ヒドロキシ−2−メチル−1−プロパン−1−オン、9,10−フェナンスレンキノン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾイン−n−プロピルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル、ベンゾイン−n−ブチルエーテル等のベンゾイン類。
【0060】
9−フェニルアクリジン、1,7−ビス(9,9′−アクリジニル)ヘプタン等のアクリジン誘導体。
ビスアシルフォスフィンオキサイド、ビスフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド、ビス(2,6−ジメトキシベンゾイル)−2,4,4−トリメチルペンチルフォスフィンオキサイド等のフォスフィンオキサイド類。
【0061】
2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−ヒドロキシ−1−{4−[4−(2−ヒドキシ−2−メチルプロピオニル)ベンジル]フェニル}2−メチルプロパン−1−オン、2−ジメチルアミノ−2−(4−メチルベンジル)−1−(4−モルフォリン−4−イル−フェニル)ブタン−1−オン、1−(4−イソプロピルフェニル)−2−ヒドロキシ−2−メチルプロパン−1−オン、メチルベンゾイルフォーメート、アゾビスイソブチロニトリル、ベンゾイルペルオキシド、ジ−tert−ブチルペルオキシド、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2,4,6−トリハロメチルトリアジン、ベンジル、メチルベンゾイル、ベンゾイル蟻酸メチル、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−4−モルフォリノブチロフェノン等。
【0062】
これら光ラジカル重合開始剤の1種または2種以上を用いることができる。
とくに光ラジカル重合開始剤としては、分子中に2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド単位を含む化合物が好ましい。分子中に2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド単位を含む化合物としては、たとえば、ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド、および2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド等の少なくとも1種が挙げられる。
【0063】
上記以外の、とくにアルコールに溶解しない、あるいは溶解性の低い光ラジカル重合開始剤は、インクジェットインク中に溶解しにくく、かつ析出しやすい。そのため、ラジカル重合性成分を良好にラジカル重合反応させて、光硬化後の文字などの架橋密度を十分に高めることができず、耐擦過性や耐アルコール性が不足する場合がある。
また、かかる光ラジカル重合開始剤はインクジェットインク中に溶解しにくく、かつ析出しやすい上、析出すると再溶解しにくいため、ノズル詰まりの原因となって、連続印刷性が低下する場合もある。
【0064】
さらに、インクジェットインク中に析出した光ラジカル重合開始剤が、先に説明した、デキャップタイムにノズル内の液面に粘着付与剤の膜が形成されるのを阻害して、間欠印刷性を低下させる原因となる場合もある。
これに対し、2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド単位を含む光ラジカル重合開始剤は、アルコールに対する溶解性に優れている。そのため、かかる光ラジカル重合開始剤を用いることにより、光硬化後の文字などの架橋密度を高めて、とくにプラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面に、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷することができる。また、インクジェットインクの連続印刷性や間欠印刷性を高めることもできる。
【0065】
光ラジカル重合開始剤の割合は、任意に設定することができる。ただし、インクジェットインクに良好な光硬化性を付与することを考慮すると、光ラジカル重合開始剤の割合は、インクジェットインクの総量の0.1質量%以上であるのが好ましく、12質量%以下であるのが好ましい。2種以上の光ラジカル重合開始剤を併用する場合は、その合計の割合を、上記の範囲とすればよい。
【0066】
《(III) 粘着付与剤》
粘着付与剤としては、テルペンフェノール樹脂、およびロジンエステルからなる群より選ばれた少なくとも1種の、水酸基価が20mgKOH/g以上、80mgKOH/g以下である化合物を用いる。
粘着付与剤としてのテルペンフェノール樹脂、およびロジンエステルの水酸基価が、いずれも上記の範囲に限定されるのは、下記の理由による。
【0067】
すなわち、水酸基価が20mgKOH/g未満である粘着付与剤は極性が低すぎるため、炭素数1〜3のアルコールとアセトンとの混合溶剤に対する溶解性が不十分でインクジェットインク中に良好に溶解させることができない。そのため、吐出が不安定になって連続印刷性が低下したり、間欠印刷性が不十分でデキャップタイムにノズルの目詰まりを生じたりしやすくなる。
【0068】
一方、水酸基価が80mgKOH/gを超える粘着付与剤は極性が高いため、上記混合溶剤に良好に溶解させることができ、連続印刷性は向上する。しかし、かかる粘着付与剤は、アセトンおよびアルコールに対する溶解性の差が小さいためか、ノズル内でインクジェットインクが外気にさらされてアセトンが揮発しても、液面に速やかに析出して、溶剤の揮発を抑制し得る良好な膜を形成することができない。そのため、デキャップタイムにインクジェットインクの粘度が上昇して、ノズルの目詰まりを生じやすくなり、間欠印刷性が低下する。また、とくに被印刷体の表面が、非多孔質でかつ極性の低いプラスチック等からなる場合には、文字などの密着性が低下しやすい傾向もある。
【0069】
これに対し、水酸基価が上記の範囲にある粘着付与剤は、炭素数1〜3のアルコールとアセトンとの混合溶剤に対して低すぎずかつ高すぎない適度の溶解性を有するため、インクジェットインク中に良好に溶解させることができる。そのため、インクジェットインクの連続印刷性を向上できる。また、間欠印刷性を向上してデキャップタイムにノズルの目詰まりを生じにくくできる。さらに、極性の低いプラスチック等からなる非印刷体の表面であっても、文字などの密着性を十分に確保することができる。
【0070】
テルペンフェノール樹脂としては、イソプレンが頭尾で順次結合した基本骨格(C)(ただしpは整数。)を有するテルペンとフェノール類との共重合体であって、水酸基価が上記の範囲にある種々のテルペンフェノール樹脂が使用可能である。
テルペンフェノール樹脂としては、たとえば、下記の各種化合物等が挙げられる。
ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターシリーズのうちU130(水酸基価:25mgKOH/g)、U115(水酸基価:30mgKOH/g)、T80(水酸基価:60mgKOH/g)、T100(水酸基価:60mgKOH/g)、T115(水酸基価:60mgKOH/g)、T130(水酸基価:60mgKOH/g)、T145(水酸基価:60mgKOH/g)。
【0071】
アリゾナケミカル(Arizona Chemical)社製のSylVares(シルバレス、登録商標)シリーズのうちTP95(水酸基価:40mgKOH/g)、TP105(水酸基価:40mgKOH/g)、TP115(水酸基価:50mgKOH/g)。
またロジンエステルとしては、一塩基性カルボン酸でアルキル化ヒドロフェナントレン核を有するアビエチン型またはピマリン型の樹脂酸を主体とするロジンとアルコール類とのエステルであって、水酸基価が上記の範囲にある種々のロジンエステルが使用可能である。
【0072】
なおロジンとしては、たとえばアビエチン酸、デキストロピマル酸等の不飽和結合を含む樹脂酸からなるものや、水素添加されたジヒドロアビエチン酸、テトラヒドロアビエチン酸等を主体とする水添ロジン等が挙げられる。またアルコール類としては、たとえばグリセリン、ペンタエリスリトール、トリエチレングリコール等が挙げられる。
ロジンエステルとしては、たとえば、下記の各種化合物等が挙げられる。
【0073】
ハリマ化成(株)製のKSU007(水酸基価:26.8mgKOH/g)、DS−822(水酸基価:29mgKOH/g)。
荒川化学工業(株)製のスーパーエステルA−125(水酸基価:25mgKOH/g)、ペンセル(登録商標)D−125(水酸基価:30mgKOH/g)、パインクリスタル(登録商標)KE−359(水酸基価:43mgKOH/g)。
【0074】
(株)理化ファインテク製のペンタリン(登録商標)CJ(水酸基価:40mgKOH/g)。
これら粘着付与剤の1種または2種以上を用いることができる。
粘着付与剤の割合は、インクジェットインクの総量の0.5質量%以上であるのが好ましく、3質量%以下であるのが好ましい。
【0075】
粘着付与剤の割合がこの範囲未満では、デキャップタイムにインクジェットインクがノズル内で外気にさらされた際に、溶剤の揮発を十分に抑制し得る良好な膜が形成されず、インクジェットインクの粘度が上昇して、間欠印刷性が低下する場合がある。
一方、粘着付与剤の割合が上記の範囲を超える場合には、当該粘着付与剤が、前述したように殆ど造膜性を有しないことから、光硬化後の文字などの耐擦過性や耐アルコール性が低下する場合がある。また、インクジェットインクの粘度が上昇して吐出が不安定になることで、連続印刷性が低下する場合もある。
【0076】
これに対し、粘着付与剤の割合を上記の範囲とすることにより、耐擦過性や耐アルコール性、連続印刷性の低下を抑制しながら、インクジェットインクの間欠印刷性をさらに向上することができる。2種以上の粘着付与剤を併用する場合は、その合計の割合を、上記の範囲とすればよい。
《(IV) 溶剤》
溶剤としては、炭素数1〜3のアルコールのうちの少なくとも1種と、アセトンとの混合溶剤を用いる。なお本発明では、溶剤として、炭素数1〜3のアルコール、およびアセトン以外の他の溶剤は含まない(除く)こととする。
【0077】
〈アルコール〉
混合溶剤のうちアルコールとしては、炭素数1〜3のアルコールが用いられる。炭素数4以上のアルコールは揮発性が低いため、アセトンと併用しても印刷後に残留しやすく、アルコールが残留すると光硬化後の文字などが脆くなって、当該文字などの耐擦過性や耐アルコール性が低下する。
【0078】
これに対し、炭素数1〜3のアルコールをアセトンと併用することで、インクジェットインクの乾燥性を高め、アルコールの残留を抑制して、当該文字などの耐擦過性や耐アルコール性をさらに高めることができる。
炭素数1〜3のアルコールとしてはメタノール、エタノール、1−プロパノールおよび2−プロパノールのうちの1種または2種以上が挙げられる。
【0079】
アルコール選定のポイントは、粘着付与剤の溶解性の良否である。またアルコールは、インクジェットインクを、とくにサーマル方式のインクジェットプリンタに使用して加熱した際に気泡の発生成分として機能するため、加熱時の揮発性、発泡性の良否も選定のポイントの一つとなる。
すなわち、サーマル方式のインクジェットプリンタでは、インクジェットインクを加熱して気泡を発生させ、その体積増加分のインクジェットインクを、ノズルを通してインク滴として吐出させることで、被印刷体の表面に文字などが印刷される。アルコールは、サーマル方式のインクジェットプリンタに使用して加熱した際に、気泡の生成成分として揮発、発泡して、所定体積のインク滴を生成させるとともに、ノズルを通して吐出させるために機能する。
【0080】
揮発性、発泡性はメタノール>エタノール>2−プロパノール>1−プロパノールの順であり、粘着付与剤の溶解性は1−プロパノール>2−プロパノール>エタノール>メタノールの順である。そのため、これらの特性の両立と、環境への負荷を低減することとを合わせ考慮すると、アルコールとしてはエタノールが好ましい。
アルコールの割合は、インクジェットインクの総量の17質量%以上、とくに19質量%以上であるのが好ましく、74質量%以下、とくに71質量%以下であるのが好ましい。
【0081】
アルコールの割合がこの範囲未満では、インクジェットインクの粘度が高くなり、流動性が低下して、インクジェットプリンタのノズルからの吐出が不安定になって連続印刷性が低下する場合がある。
アルコールの割合が上記の範囲未満でも、単官能モノマーの量を多くすれば、適度の流動性を確保することはできる。しかしその場合には、光硬化後の架橋密度が不足して、とくにプラスチック等の非吸収性の被印刷体の表面に、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷できないことがある。
【0082】
またアルコールは、前述したようにサーマル方式のインクジェットプリンタに使用して加熱した際に、気泡の生成成分として機能するが、アルコールの割合が上記の範囲未満では、加熱しても気泡を良好に発生させて、適正なインク滴を吐出できない場合もある。
一方、アルコールの割合が上記の範囲を超える場合には、過剰のアルコールが印刷後に残留しやすく、アルコールが残留すると光硬化後の文字などが脆くなって、当該文字などの耐擦過性や耐アルコール性が低下する場合がある。
【0083】
これに対し、アルコールの割合を上記の範囲とすることにより、耐擦過性や耐アルコール性、連続印刷性の低下を抑制しながら、とくにサーマル方式のインクジェットプリンタに使用した際に、ノズルを通して適正なインク滴を吐出させることができる。2種以上のアルコールを併用する場合は、その合計の割合を、上記の範囲とすればよい。
〈アセトン〉
アセトンより分子量の大きいケトンは揮発性が低いため、インクジェットインクの乾燥性を高めて、印刷後にアルコールが残留するのを抑制する効果が十分に得られない場合がある。そして、アルコールが残留すると光硬化後の文字などが脆くなって、当該文字などの耐擦過性や耐アルコール性が低下する場合がある。
【0084】
これに対し、炭素数1〜3のアルコールとともにアセトンを併用することで、インクジェットインクの乾燥性を高め、アルコールの残留を抑制して、当該文字などの耐擦過性や耐アルコール性をさらに高めることができる。
アセトンの割合は、アルコールとアセトンの総量の5質量%以上、中でも7質量%以上、とくに8質量%以上であるのが好ましく、40質量%以下、中でも37質量%以下、とくに30質量%以下であるのが好ましい。また、アセトンの割合は、インクジェットインクの総量の3質量%以上であるのが好ましく、10質量%以下であるのが好ましい。
【0085】
アセトンの割合が上記の範囲未満では、溶剤として、炭素数1〜3のアルコールとともにアセトンを併用することによる前述した効果が十分に得られない場合がある。
すなわち、アセトンの揮発によってインクジェットインクの乾燥性を高めて、印刷後にアルコールが残留するのを抑制する効果が十分に得られない場合がある。そして、アルコールが残留すると光硬化後の文字などが脆くなって、当該文字などの耐擦過性や耐アルコール性が低下する場合がある。
【0086】
またアセトンによる、粘着付与剤の溶解性が不十分になって、インクジェットインク中に良好に溶解させることができず、連続印刷性が低下したり、間欠印刷性が不十分でデキャップタイムにノズルの目詰まりを生じたりしやすくなる場合もある。
一方、アセトンは、プラスチック等に対する溶解性が強すぎるため、インクジェットプリンタのヘッドのプラスチック部品や接着剤等を侵食したり溶解したりしやすい。そのため、アセトンの割合が上記の範囲を超える場合には、インクジェットインクの、部材との相性、すなわちマテリアルコンパチビリティが低くなって、ヘッドに使用できる部材の材質が制限される場合がある。
【0087】
また、ノズル内でのインクジェットインクの乾燥が著しくなって、たとえばヘッドを構成する接着剤など、侵食によってインクジェットインク中に混入した不溶解分が析出しやすくなる。
そして、析出した不溶解分によってインクジェットインクの吐出が不安定になって連続印刷性が低下して、ノズル詰まりの原因となる場合がある。また、析出した不溶解分がインク滴の吐出を妨げて、吐出されたインク滴の軌道が変化したり、それによって文字などの欠けを生じたりする場合もある。さらに、インクジェットインク中に析出した不溶解分が、デキャップタイムにノズル内の液面に粘着付与剤の膜が形成されるのを阻害して、間欠印刷性を低下させる原因となる場合もある。
【0088】
これに対し、アセトンの割合を上記の範囲とすることにより、耐擦過性や耐アルコール性、連続印刷性の低下、あるいは文字などの欠けの発生を抑制しながら、インクジェットインクの間欠印刷性をさらに向上することができる。またインクジェットインクの、部材とのマテリアルコンパチビリティを高めて、ヘッドに使用できる部材の材質が制限されるのを抑制することもできる。2種以上のアルコールを併用する場合は、その合計量を基準として、アルコールとアセトンの総量中のアセトンの割合を、上記の範囲とすればよい。
【0089】
〈溶剤の合計の割合〉
溶剤の合計の割合、すなわちアルコールとアセトンの合計の割合は、インクジェットインクの総量の25質量%以上、中でも27質量%以上、とくに30質量%以上であるのが好ましく、85質量%以下、中でも83質量%以下、とくに80質量%以下であるのが好ましい。
【0090】
溶剤の合計の割合が上記の範囲未満では、インクジェットインクの粘度が高くなりすぎて、連続印刷性が低下する場合がある。一方、溶剤の合計の割合が上記の範囲を超える場合には、印刷して乾燥後の固形分量(印刷濃度)が不足したり、過剰の溶剤、とくにアルコールが残留することで、光硬化後の文字などが脆くなったりしやすくなる。その結果、文字などの耐擦過性や耐アルコール性が低下する場合がある。
【0091】
《着色剤》
インクジェットインクには、さらに着色剤を配合できる。
着色剤としては、インクジェットインクの色味に応じた各色の、種々の顔料、染料等を用いることができる。
とくに、文字などの耐光性や耐擦過性、耐アルコール性を向上することを考慮すると、種々の無機顔料および/または有機顔料が好ましい。
【0092】
このうち無機顔料としては、たとえば、酸化チタン、酸化鉄等の金属化合物や、あるいはコンタクト法、ファーネス法、サーマル法等の公知の方法によって製造された中性、酸性、塩基性等の種々のカーボンブラックが挙げられる。
また有機顔料としては、たとえば、アゾ顔料(アゾレーキ、不溶性アゾ顔料、縮合アゾ顔料、またはキレートアゾ顔料等を含む)、多環式顔料(たとえば、フタロシアニン顔料、ペリレン顔料、ペリノン顔料、アントラキノン顔料、キナクリドン顔料、ジケトピロロピロール顔料、ジオキサジン顔料、チオインジゴ顔料、イソインドリノン顔料、またはキノフタロン顔料等)、染料キレート(たとえば、塩基性染料型キレート、酸性染料型キレート等)、ニトロ顔料、ニトロソ顔料、アニリンブラック等が挙げられる。
【0093】
顔料の具体例としては、下記の各種顔料が挙げられる。
(イエロー顔料)
C.I.ピグメントイエロー1、2、3、12、13、14、14C、16、17、20、24、73、74、75、83、86、93、94、95、97、98、109、110、114、117、120、125、128、129、130、137、138、139、147、148、150、151、154、155、166、168、180、185、213、214
(マゼンタ顔料)
C.I.ピグメントレッド5、7、9、12、48(Ca)、48(Mn)、49、52、53、57(Ca)、57:1、97、112、122、123、149、168、177、178、179、184、202、206、207、209、242、254、255
(シアン顔料)
C.I.ピグメントブルー1、2、3、15、15:1、15:3、15:4、15:6、15:34、16、22、60
(ブラック顔料)
C.I.ピグメントブラック7
(オレンジ顔料)
C.I.ピグメントオレンジ36、43、51、55、59、61、71、74
(グリーン顔料)
C.I.ピグメントグリーン7、36
(バイオレット顔料)
C.I.ピグメントバイオレット19、23、29、30、37、40、50
顔料は、インクジェットインクの色味に応じて、1種または2種以上を用いることができる。
【0094】
たとえば、カーボンブラックで黒色を表現する場合、より青黒く見せるためにシアン顔料を添加してもよい。
顔料は、インクジェットインク中での分散安定性を向上するために、表面を処理してもよい。
また顔料は、前述した炭素数1〜3のアルコールや単官能モノマー等を分散媒として用いて、当該分散媒中に分散させた顔料分散液の状態で、インクジェットインクの製造に用いてもよい。分散媒がアルコールであるとき、当該アルコールとしては、炭素数1〜3のアルコールを用いる。分散媒が炭素数1〜3のアルコールであるとき、前述したアセトンの割合や、アルコールとアセトンの合計の割合などは、かかる顔料分散媒中に含まれるアルコールの量を加えた割合が前述した範囲となるようにすればよい。
【0095】
顔料分散液には、顔料を良好に分散させるために、分散剤等を添加してもよい。
分散剤としては、たとえば、高分子系分散剤、界面活性剤等の種々の分散剤が、いずれも使用可能である。
顔料等の着色剤の割合は、当該着色剤の種類やインクジェットインクの色味等に応じて、任意に設定することができる。
【0096】
《その他の成分》
インクジェットインクには、上記各成分に加えて、さらに各種の添加剤を配合してもよい。添加剤としては、たとえば、シリコーンオイル、増感剤、ラジカル重合禁止剤等が挙げられる。
〈シリコーンオイル〉
シリコーンオイルは、パドリングの発生を抑制するために機能する。
【0097】
パドリングとは、ノズルを通してインク滴が吐出される際に当該インク滴から分離してノズル側に残ったインクジェットインクが、ノズルが形成されたプレートの、ノズルの出口の周囲に濡れ拡がってインク溜まり(パドル)を形成する現象である。
とくに多官能モノマーは、単官能モノマーに比べて、プレート等に対する濡れ性が高いため、多官能モノマーリッチのインクジェットインクはパドリングを生じやすい。
【0098】
パドリングを生じると、インク滴の吐出が妨げられて、吐出されたインク滴の軌道が変化したり、所定体積のインク滴が吐出されなかったり、あるいはインク滴が全く吐出されなかったりする結果、良好な文字などを印刷できなくなるおそれがある。
これに対し、インクジェットインクにシリコーンオイルを配合すると、当該インクジェットインクの表面張力を低下させて、プレート等に対する濡れ性を抑制することができる。そのため、インクジェットインクをノズルの出口の周囲に濡れ拡がりにくくして、パドリングの発生を抑制することができる。
【0099】
シリコーンオイルとしては、ポリシロキサン骨格を有する種々のシリコーンオイルが使用可能である。
シリコーンオイルとしては、たとえば、直鎖状のジメチルシリコーンオイル、環状ジメチルシリコーンオイル、メチルフェニルシリコーンオイル、メチルハイドロジェンシリコーンオイル等のストレートシリコーンオイルや、非反応性の変性シリコーンオイル等の1種または2週以上を用いることができる。
【0100】
とくに、直鎖状のジメチルシリコーンオイルが好ましい。
シリコーンオイルの割合は、インクジェットインクの総量の0.05質量%以上であるのが好ましく、0.3質量%以下であるのが好ましい。
シリコーンオイルの割合がこの範囲未満では、上述した、パドリングの発生を抑制する効果が十分に得られないおそれがある。
【0101】
一方、シリコーンオイルの割合が上記の範囲を超える場合には、印刷後に過剰のシリコーンオイルが残留することがある。そして、シリコーンオイルが残留すると光硬化後の文字などが脆くなって、当該文字などの耐擦過性や耐アルコール性が低下する場合がある。
これに対し、シリコーンオイルの割合を上記の範囲とすることにより、耐擦過性や耐アルコール性の低下を抑制しながら、パドリングの発生を良好に抑制することができる。
【0102】
〈増感剤〉
増感剤は、紫外線の照射によって励起状態となり、光ラジカル重合開始剤と相互作用して、当該光ラジカル重合開始剤におけるラジカルの発生を助けるために機能する。
とくに、光源としてLEDを使用する場合には、その波長域が狭いことから、インクジェットインクが感度を有する波長域を広げて感度を向上する、すなわち増感するために増感剤を配合するのが好ましい。
【0103】
増感剤としては、前述した光ラジカル重合開始剤のうち、たとえば、2−イソプロピルチオキサントン、2,4−ジエチルチオキサントン、1−クロロ−4−プロポキシチオキサントン、2−イソプロピルチオキサントンと4−イソプロピルチオキサントンの混合物などのチオキサントン類またはその塩や、ベンゾフェノンと2,3−および4−メチルベンゾフェノンの共晶混合物、メチル−2−ベンゾフェノン、ベンゾフェノン、4−ベンゾイル−4′−メチルフェニルサルファイド、4−メチルベンゾフェノン、4−フェニルベンゾフェノン等のベンゾフェノン類またはその塩、2−エチルアントラキノン、4,4′−ビスジエチルアミノベンゾフェノン(ミヒラーケトン)などが挙げられる。
【0104】
また、その他の増感剤としては、たとえば、エチル−4−(ジメチルアミノ)ベンゾエート、2−エチル−4−(ジメチルアミノベンゾエート)等のベンゾエート化合物、ナフタレンベンゾオキサゾリル誘導体、チオフェンベンゾオキサゾリル誘導体、スチルベンベンゾオキサゾリル誘導体、クマリン誘導体、スチレンビフェニル誘導体、ピラゾロン誘導体、スチルベン誘導体、ベンゼン及びビフェニルのスチリル誘導体、ビス(ベンザゾールー2−イル)誘導体、カルボスチリル、ナフタルイミド、ジベンゾチオフェン−5,5’−ジオキシドの誘導体、ピレン誘導体、ピリドトリアゾール、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等が挙げられる。
【0105】
増感剤としては、以上で説明した各種の増感剤の中から、光源からの光の波長域、および光ラジカル重合開始剤の吸収波長域に応じて増感に適した吸収波長域を有する化合物を、それぞれ1種または2種以上用いることができる。
増感剤の割合は、任意に設定することができる。
〈ラジカル重合禁止剤〉
ラジカル重合禁止剤は、インクジェットインクを貯蔵中、あるいはパッケージに封入して保管中などに、ラジカル重合性成分がラジカル重合反応してインクジェットインクがゲル化するのを防止するために機能する。
【0106】
ラジカル重合禁止剤としては、上記の機能を有する種々の化合物がいずれも使用可能である。
ラジカル重合禁止剤としては、たとえば、ニトロソアミン系化合物、ハイドロキノン類、カテコール類、ヒンダードアミン類、フェノール類、フェノチアジン類、縮合芳香族環のキノン類、あるいはジ−2−エチルヘキシルマレエート等の1種または2種以上が挙げられる。
【0107】
このうち、ニトロソアミン系化合物としては、たとえば、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアンモニウム塩(アンモニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン)、N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミンのアルミニウム塩(アルミニウム−N−ニトロソフェニルヒドロキシルアミン)等の1種または2種以上が挙げられる。
ハイドロキノン類としては、たとえば、ハイドロキノン、ハイドロキノンモノメチルエーテル、1−o−2,3,5−トリメチロールハイドロキノン、2−tert−ブチルハイドロキノン等の1種または2種以上が挙げられる。
【0108】
カテコール類としては、たとえば、カテコール、4−メチルカテコール、4−tert−ブチルカテコール等の1種または2種以上が挙げられる。
ヒンダードアミン類としては、重合禁止効果を有する任意のヒンダードアミン類の1種または2種以上が好ましい。
フェノール類としては、たとえば、フェノール、ブチルヒドロキシトルエン、ブチルヒドロキシアニソール、ピロガロール、没食子酸アルキルエステル、ヒンダードフェノール類等の1種または2種以上が挙げられる。
【0109】
フェノチアジン類としては、たとえば、フェノチアジン等が挙げられる。
さらに縮合芳香族環のキノン類としては、たとえば、ナフトキノン等が挙げられる。
ラジカル重合禁止剤の割合は、インクジェットインクの総量の0.01質量%以上であるのが好ましく、3質量%以下であるのが好ましい。
上記各成分を含む本発明のインクジェットインクは、先述したオンデマンド型のインクジェットプリンタに、好適に使用することができる。
【0110】
とくにオンデマンド型の、サーマル方式やピエゾ方式のインクジェットプリンタに使用して、各種プラスチック等の、非吸収性の被印刷体の表面に、文字などを印刷することができる。
【実施例】
【0111】
以下に本発明を、実施例、比較例に基づいて説明するが、本発明の構成は、必ずしもこれらの例に限定されるものではない。
〈実施例1〉
(顔料分散液の調製)
下記の各成分を、表1に示す割合で配合し、撹拌したのちビーズミルを用いて分散させて顔料分散液を調製した。
【0112】
顔料:カーボンブラック
分散剤:リューブリゾール(Lubrizol)社製のソルスパース(SOLSPERSE、登録商標)32000
【0113】
【表1】
【0114】
(インクジェットインクの調製)
下記の各成分を、表2に示す割合で配合して十分に溶解するまで撹拌し、次いで、先に調製した顔料分散液を表2に示す割合で加えてさら撹拌したのち、5μmのメンブランフィルタを用いてろ過してインクジェットインクを調製した。
(I) ラジカル重合性成分
・ 多官能モノマー
(i) エトキシ化ペンタエリスリトールテトラアクリレート〔日本化薬(株)製のカヤラッドRP−1040〕
(ii) トリス(2−ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート〔アルケマ社製のサートマーSR368NS〕
(iii) ネオペンチルグリコールジアクリレート〔日本化薬(株)製のカヤラッドNPGDA〕
・ 単官能モノマー
N−ビニル−ε−カプロラクタム(VCAP)
シリコン変性ポリエーテルアクリレート〔エボニック社製のTEGO Rad 2300〕
(II) 光ラジカル重合開始剤
2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイド〔ランブソンジャパン(Lambson Japan)(株)製のSpeedCure(スピードキュア、登録商標)TPO〕
ビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)−フェニルフォスフィンオキサイド〔IGM Resin社製のOMNIRAD(オムニラッド、登録商標)819〕
(III) 粘着付与剤
テルペンフェノール樹脂〔水酸基価:30mgKOH/g、ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターU115〕
(IV) 溶剤
エタノール(炭素数:2、沸点:78.32℃)
アセトン(沸点:56.12℃)
(V) その他
シリコーンオイル:ジメチルシリコーンオイル〔直鎖状、信越化学工業(株)製のKF−96−10cs〕
増感剤:2−イソプロピルチオキサントン〔ランブソンジャパン(株)製のスピードキュア2−ITX〕
ラジカル重合禁止剤:ハイドロキノンモノメチルエーテル〔東京化成工業(株)製〕
【0115】
【表2】
【0116】
多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、アセトンの割合は、顔料分散液に含まれるエタノール(13.4質量部)を加えたアルコールと、アセトンの総量の11.3質量%であった。
〈実施例2〜6、比較例1〉
3種の多官能モノマー、および2種の単官能モノマーを、それぞれ表3に示す量として、多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Smを同表に示す値としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。アセトンの割合は、いずれも、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、アセトンの総量の11.3質量%であった。
【0117】
【表3】
【0118】
〈実施例7〉
多官能モノマーのうち(iii)のNPGDAに代えて、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート〔共栄社化学(株)製のライトアクリレート1.6HX−A〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、アセトンの割合は、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、アセトンの総量の11.3質量%であった。
【0119】
〈実施例8〉
単官能モノマーのうちVCAPに代えて、エトキシ−ジエチレングリコールアクリレート〔共栄社化学(株)製のライトアクリレートEC−A〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、アセトンの割合は、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、アセトンの総量の11.3質量%であった。
【0120】
〈実施例9〜12〉
3種の多官能モノマー、2種の単官能モノマー、エタノール、およびアセトンを、それぞれ表4に示す量として、多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm、およびアセトンの割合を同表に示す値としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
【0121】
【表4】
【0122】
〈実施例13〉
エタノールの量を40.0質量部、アセトンの量を4.0質量部としたこと以外は実施李1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、アセトンの割合は、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、アセトンの総量の7.0質量%であった。
【0123】
〈実施例14〉
エタノールの量を38.0質量部、アセトンの量を5.0質量部としたこと以外は実施李1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、アセトンの割合は、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、アセトンの総量の8.9質量%であった。
【0124】
〈実施例15、16〉
3種の多官能モノマー、2種の単官能モノマー、エタノール、およびアセトンを、それぞれ表5に示す量として、多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm、およびアセトンの割合を同表に示す値としたこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。
【0125】
【表5】
【0126】
〈実施例17〉
エタノールに代えて、2−プロパノール(炭素数:3、沸点:82.4℃)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、アセトンの割合は、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、アセトンの総量の11.3質量%であった。
【0127】
〈比較例2〉
エタノールに代えて、1−ブタノール(炭素数:4、沸点:117.7℃)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、アセトンの割合は、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、アセトンの総量の11.3質量%であった。
【0128】
〈比較例3〉
アセトンに代えて、2−ペンタノン(MPK、沸点:102.26℃)を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、MPKの割合は、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、MPKの総量の11.3質量%であった。
【0129】
〈比較例4〉
エタノールの量を44.0質量部として、アセトンを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、アセトンの割合は0質量%であった。
〈比較例5〉
粘着付与剤として、水酸基価が10mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、アセトンの割合は、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、アセトンの総量の11.3質量%であった。
【0130】
〈実施例17〉
粘着付与剤として、水酸基価が50mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂〔アリゾナケミカル社製のシルバレスTP115〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、アセトンの割合は、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、アセトンの総量の11.3質量%であった。
【0131】
〈実施例18〉
粘着付与剤として、水酸基価が60mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂〔ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターT145〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、アセトンの割合は、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、アセトンの総量の11.3質量%であった。
【0132】
〈比較例6〉
粘着付与剤として、水酸基価が100mgKOH/gであるテルペンフェノール樹脂〔ヤスハラケミカル(株)製のYSポリスターS145〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、アセトンの割合は、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、アセトンの総量の11.3質量%であった。
【0133】
〈実施例19〉
光ラジカル重合開始剤のうちOMNIRAD 819に代えて、2,4−ジエチルチオキサントン〔ランブソンジャパン(株)製のスピードキュアDETX〕を同量配合したこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.90、アセトンの割合は、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、アセトンの総量の11.3質量%であった。
【0134】
〈実施例20〉
単官能モノマーのうちTEGO Rad 2300の量を2.0質量部として、シリコーンオイルを配合しなかったこと以外は実施例1と同様にしてインクジェットインクを調製した。多官能モノマーと単官能モノマーの質量比Mm/Sm=4.80、アセトンの割合は、顔料分散液に含まれるエタノールを加えたアルコールと、アセトンの総量の11.3質量%であった。
【0135】
〈インクジェットプリンタ、紫外線照射〉
上記各実施例、比較例で調製したインクジェットインクについて、後述する各試験を実施して、その特性を評価した。なお各試験では、サーマル方式のインクジェットプリンタを使用して、下記の条件で文字などを印刷した。
(印刷条件)
パルス電圧:10V
パルス幅:1.7μm
パルス余熱:オン、40℃
設定解像度:300×600dpi
また、印刷した文字などを光硬化させる際は、下記の条件で紫外線を照射した。
【0136】
(照射条件)
ピーク波長(λmax):385nm
ピーク放射照度:9W/cm
〈耐アルコール性評価〉
実施例、比較例で調製したインクジェットインクをインクジェットプリンタに使用して、塩化ビニル樹脂製の表面に文字などを印刷し、紫外線を照射して光硬化させた。
【0137】
次いで、光硬化させた文字などに、2−プロパノールを染み込ませた綿布を200gfの荷重をかけて接触させた状態で10往復こすった後に、文字などの状態を観察した。そして、下記の基準で耐アルコール性を評価した。
○:文字などに全く変化は見られなかった。
△:文字などの一部に欠けが見られたが、判読することはできた。
【0138】
×:文字などに大きな欠けが見られ、判読することはできなかった。
〈間欠印刷性評価〉
実施例、比較例で調製したインクジェットインクをインクジェットプリンタに使用して、インク滴が吐出されない状態でノズル内のインクジェットインクが外気にさらされているデキャップタイムを再現しながら印刷をして、間欠印刷性を評価した。
【0139】
具体的には、デキャップタイムの長さを変えながら印刷した際に、当該デキャップタイムの終了直後でも、ノズルの目詰まり等を生じることなく明瞭な印刷が可能であったか否かを観察した。詳細には、1/2インチ四方の正方形を印刷し、当該正方形のうち最初に印刷される一辺側が明瞭に、はっきりとした境界線を表現して印刷されているか否かを観察した。そして、下記の基準で間欠印刷性を評価した。
【0140】
○:デキャップタイムが15分間以上でも明瞭な印刷が可能であった。
△:デキャップタイムが5分間以上、15分間未満であれば明瞭な印刷が可能であった。
×:デキャップタイムが5分間未満でないと明瞭な印刷ができなかった。
〈乾燥性評価〉
実施例、比較例で調製したインクジェットインクをインクジェットプリンタに使用して、塩化ビニル樹脂製の表面に印刷した際の、インクジェットインクの乾燥性を評価した。
【0141】
具体的には1/2インチ四方の正方形を印刷後、紫外線を照射するまでの時間(乾燥時間)を変えながら紫外線を照射して光硬化させた際に、光硬化させた正方形の耐擦過性を十分に向上できるのに要した乾燥時間を記録した。つまり、光硬化させた正方形の表面を綿棒でこすった際に印刷がとれなくなるまでに要した乾燥時間を記録した。そして、下記の基準で乾燥性を評価した。
【0142】
○:乾燥時間が5秒未満でも十分に乾燥して、光硬化後の耐擦過性を向上することができた。
△:乾燥時間が5秒を超え、10秒以下の範囲で十分に乾燥して、光硬化後の耐擦過性を向上することができた。
×:光硬化後の耐擦過性を向上するのに要した乾燥時間は、10秒を超えていた。
【0143】
〈連続印刷性評価〉
実施例、比較例で調製したインクジェットインクをインクジェットプリンタに使用して、1ポイント×2cmの罫線を50000回に亘って連続印刷した。そして、インクジェットインクがノズルから安定して吐出されなくなる等して、罫線の印刷不良が発生するのに要した連続印刷回数を記録して、下記の基準で連続印刷性を評価した。
【0144】
○:50000回の連続印刷の間、罫線は常に良好に印刷され、印刷不良は発生しなかった。
△:20000回以上、50000回未満の範囲で罫線の印刷不良が発生した。
×:20000回未満の範囲で罫線の印刷不良が発生した。
以上の結果を表6〜表12に示す。
【0145】
【表6】
【0146】
【表7】
【0147】
【表8】
【0148】
【表9】
【0149】
【表10】
【0150】
【表11】
【0151】
【表12】
【0152】
表6〜表12の実施例1〜20、比較例1の結果より、特にプラスチック等の被吸収性の被印刷体の表面に、耐アルコール性に優れた文字などを印刷するためには、ラジカル重合性成分としての多官能モノマーと単官能モノマーとを、質量比Mm/Smで1.5以上の範囲で併用する必要があることが判った。
また実施例1〜6の結果より、かかる効果をより一層向上するとともに、粘度上昇を抑えて連続印刷性を良好に維持することを考慮すると、質量比Mm/Smは、上記の範囲でも1.9以上、中でも2.5以上、とくに2.9以上であるのが好ましく、9以下、とくに8以下とするのが好ましいことが判った。
【0153】
さらに実施例1、7、8の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると、ラジカル重合性成分としては、(i)〜(iii)の3種の多官能モノマーと、VCAP等のN−ビニルラクタムモノマーとを併用するのが好ましいことが判った。
実施例1〜20、比較例2〜4の結果より、インクジェットインクの乾燥性を高めて、上記非吸収性の被印刷体の表面に、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷するためには、溶剤として、炭素数1〜3のアルコールとアセトンとを併用して、他の溶剤は含まない必要があることが判った。
【0154】
また実施例1、13〜16の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると、アセトンの割合は、炭素数1〜3のアルコールとアセトンの総量の5質量%以上、中でも7質量%以上、とくに8質量%以上であるのが好ましく、40質量%以下、中でも37質量%以下、とくに30質量%以下であるのが好ましいことが判った。
さらに実施例1、17の結果より、上記の効果をより一層向上することを考慮すると、炭素数1〜3のアルコールとしては、エタノールが好ましいことが判った。
【0155】
実施例1〜20、比較例5、6の結果より、粘着付与剤としては、水酸基価が20mgKOH/g以上、80mgKOH/g以下であるテルペンフェノール樹脂、および/またはロジンエステルを用いる必要があることが判った。
実施例1、9〜12の結果より、インクジェットインクの乾燥性を高めて、上記非吸収性の被印刷体の表面に、耐擦過性や耐アルコール性に優れた文字などを印刷するためには、溶剤の合計の割合は、インクジェットインクの総量の25質量%以上、中でも27質量%以上、とくに30質量%以上であるのが好ましく、85質量%以下、中でも83質量%以下、とくに80質量%以下であるのが好ましいことが判った。
【0156】
実施例1、19の結果より、光ラジカル重合開始剤としては、分子中に、2,4,6−トリメチルベンゾイルホスフィンオキシド単位を含み、アルコールに対する溶解性に優れた化合物を用いるのが好ましいことが判った。
さらに実施例1、20の結果より、パドリングの発生を抑制して連続印刷性を高めるためには、シリコーンオイルを配合するのが好ましいことが判った。