【解決手段】温度23℃の条件で測定されるナノインデンター硬度(kPa)をX、温度23℃、周波数1Hzの条件で測定されるtanδをYとして、X及びYが、下記式(1)〜(3)を満たす、
温度23℃の条件で測定されるナノインデンター硬度(kPa)をX、温度23℃、周波数1Hzの条件で測定されるtanδをYとして、X及びYが、下記式(1)〜(3)を満たす、
ことを特徴とするホットメルト接着剤。
100≦X≦350・・・(1)
0.2≦Y≦0.6・・・(2)
Y≦1.56×10−3X+0.10・・・(3)
スチレン系ブロック共重合体(A)、粘着付与剤(B)、並びに、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物により変性された石油系樹脂(C)を含む、請求項1又は2に記載のホットメルト接着剤。
スチレン系ブロック共重合体(A)は、25%トルエン溶融粘度が250mPa・s以下、スチレン含有量が20〜60質量%であるスチレン系ブロック共重合体(A1)を含む、請求項3に記載のホットメルト接着剤。
【発明を実施するための形態】
【0018】
1.ホットメルト接着剤
本発明のホットメルト接着剤は、温度23℃の条件で測定されるナノインデンター硬度(kPa)をX、温度23℃、周波数1Hzの条件で測定されるtanδをYとして、X及びYが、下記式(1)〜(3)を満たす。
100≦X≦350・・・(1)
0.2≦Y≦0.6・・・(2)
Y≦1.56×10
−3X+0.10・・・(3)
ホットメルト接着剤が安定した剥離性を発現するには、高い凝集力を示すことが必要となる。ホットメルト接着剤の凝集力は、硬さを表すナノインデンター硬度、及び粘弾性特性を表すtanδの2つの指標により規定することができる。本発明のホットメルト接着剤は、ナノインデンター硬度(X)とtanδ(Y)とが上記式(1)〜(3)を満たす場合、高い凝集力を発現することができ、安定した剥離性を発現し、繰り返し開閉可能な袋体を製造するのに好適に機能することができる。
【0019】
本明細書において、ナノインデンター硬度(X)及びtanδは、以下の測定方法により測定される値である。
【0020】
(ナノインデンター硬度(X))
ナノインデンター(HYSITRON社製)を用いて、室温23℃環境下でバーコビッチ型圧子をホットメルト接着剤表面に、速度100nm/sec、3000nm、保持時間0secの条件で押し込んだ際の荷重μN(Pmax)を測定し、下記式より算出する。
ナノインデンター硬度(kPa)=(Pmax(μN))/(A(接触投影面積(m
2)))
【0021】
(tanδ)
動的粘弾性測定器(ティーエーインスツルエント社製ローテェーショナルレオメーター、商品名「AR−G2」)を用いて、周波数1Hz、昇温速度5℃/分、測定範囲−40℃〜100℃の条件で損失弾性率G”及び貯蔵弾性率G’を測定し、23℃における損失弾性率G”及び貯蔵弾性率G’から、下記式によって23℃におけるtanδを算出する。
(tanδ)= 損失弾性率G”/貯蔵弾性率G’
【0022】
本発明のホットメルト接着剤は、下記式(1)を満たす。
100≦X≦350・・・(1)
すなわち、本発明のホットメルト接着剤の温度23℃の条件で測定されるナノインデンター硬度(kPa)であるXは、100以上350以下である。Xが100未満であると、ホットメルト接着剤の凝集力が低下し、安定した剥離性を示せない。また、Xが350を超えると、被着体への密着性が低下し、粘着強度が低下する。ナノインデンター硬度(kPa)であるXは、150以上が好ましく、210以上がより好ましい。また、ナノインデンター硬度(kPa)であるXは、320以下が好ましい。上記式(1)は、下記式であることが好ましい。
150≦X≦350・・・(1)
また、上記式(1)は、下記式であることがより好ましい。
210≦X≦350・・・(1)
【0023】
本発明のホットメルト接着剤は、下記式(2)を満たす。
0.2≦Y≦0.6・・・(2)
すなわち、本発明のホットメルト接着剤の温度23℃、周波数1Hzの条件で測定されるtanδ(Y)は、0.2以上0.6以下である。Yが0.6を超えると、ホットメルト接着剤の凝集力が低下し、安定した剥離性を示せない。また、Yが0.2未満であると、被着体への密着性が低下し、粘着強度が低下する。tanδ(Y)は、0.2以上が好ましく、0.25以上がより好ましい。また、tanδ(Y)は、0.451以下が好ましく、0.395以下がより好ましい。上記式(2)は、下記式であることが好ましい。
0.2≦Y≦0.395・・・(2)
【0024】
tanδは損失弾性率G”/貯蔵弾性率G’で表される。弾性及び粘性を併せ持つ高分子の力学的特性を分析する方法として動的粘弾性測定がある。動的粘弾性測定において、G”、G’が測定できる。G”は粘性に相当する特性値であり、G’は弾性に相当する特性値である。tanδはG”/G’で表される。tanδが1より小さいと、粘性の影響は相対的に、より一層小さくなり、繰り返し剥離を行っても、該接着剤の塗工部位はより一層凝集破壊しにくくなる。
【0025】
ホットメルト接着剤がスチレン系ブロック共重合体(A)、及び粘着付与剤(B)を含有する場合、スチレン系ブロック共重合体(A)の含有量MA(質量%)と、粘着付与剤(B)の含有量MB(質量%)との比MB/MAは、1.0以下が好ましく、0.80以下がより好ましい。ナノインデンター硬度は、ホットメルト接着剤の弾性率や粘着力が反映される。弾性率が高く粘着力が低いほど高硬度を示す。MB/MAの上限が上記範囲であることにより、ナノインデンター硬度がより一層高硬度となり、繰り返し剥離を行った際にホットメルト接着剤の凝集破壊がより一層抑制される。また、MB/MAの上限が上記範囲であることにより、tanδの値がより一層小さくなり、剥離性により一層優れたホットメルト接着剤とすることができる。MB/MAの下限は特に限定されず、0.5程度である。
【0026】
本発明のホットメルト接着剤は、更に、粘着抑制剤として、後述するカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物により変性された石油系樹脂(C)を併用することにより、ナノインデンター硬度をより一層高硬度化することができ、また、tanδの値をより一層小さくすることができる。
【0027】
本発明のホットメルト接着剤は、下記式(3)を満たす。
Y≦1.56×10
−3X+0.10・・・(3)
上記式(3)において、Yが上記範囲を超えると、ホットメルト接着剤の凝集力が低下し、安定した剥離性を示せない。
【0028】
本発明のホットメルト接着剤は、スチレン系ブロック共重合体(A)、粘着付与剤(B)、並びに、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物により変性された石油系樹脂(C)を含むことが好ましい。以下、各成分について説明する。
【0029】
(スチレン系ブロック共重合体(A))
スチレン系ブロック共重合体(A)は、スチレン由来の構造単位からなる重合体ブロックと、共役ジエン由来の構造単位からなる重合体ブロックとを有するブロック共重合体であることが好ましい。
【0030】
スチレン由来の構造単位からなる重合体ブロックには、スチレン以外のスチレン系モノマー由来の構造単位を含んでいてもよい。スチレン以外のスチレン系モノマーとしては、例えば、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−t−ブチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、ビニルナフタレン、ビニルアントラセン等が挙げられる。
【0031】
共役ジエン由来の構造単位からなる重合体ブロックにおける共役ジエンとしては、ブタジエン、イソプレン、クロロプレン、2,3−ジメチルブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等を例示できる。共役ジエン由来の構造は、特に制限されず、物性を損なわない範囲内で、共役ジエン由来の構造が水素添加されていてもよい。
【0032】
上記のスチレンモノマー、スチレン以外のスチレン系モノマー及び共役ジエンは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0033】
スチレン系ブロック共重合体(A)は、上記条件を満たしていれば特に限定されず公知の製造方法で得たもの、又は市販品を用いることができる。 市販品としては、例えば、クレイトンポリマー社製の商品名「クレイトンG1657」、旭化成社製の商品名「アサプレンT−438」等が挙げられる。
【0034】
ホットメルト接着剤中のスチレン系ブロック共重合体(A)の含有量は、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましい。また、スチレン系ブロック共重合体(A)の含有量は、80質量%以下が好ましく、65質量%以下がより好ましい。スチレン系ブロック共重合体(A)の含有量が上記範囲であることにより、本発明のホットメルト接着剤がより一層高い凝集力を発現することができ、より一層安定した剥離性を発現することができる。
【0035】
本発明のスチレン系ブロック共重合体(A)は、より一層低温塗布が容易になる観点から、25%トルエン溶融粘度が250mPa・s以下、スチレン含有量が20〜60質量%であるスチレン系ブロック共重合体(A1)を含むことが好ましい。(A1)を含むことにより、低粘度化及び剥離性がより一層し易くなる。
【0036】
スチレン系ブロック共重合体(A1)の25%トルエン溶液粘度は250mPa.s以下がより好ましく、230mPa.s以下が更に好ましい。
【0037】
本明細書において、25%トルエン溶液粘度は、ブルックフィールドB型粘度計(スピンドルNo.2)を用いて、25℃の条件で測定される値である。
【0038】
スチレン系ブロック共重合体(A1)のスチレン含有量は20〜60質量%が好ましく、25〜55質量%がより好ましく、30〜50質量%がより好ましい。当該スチレン含有量が20質量%以上であるとホットメルト接着剤の凝集破壊を抑制できる。また、60質量%以下であると低温接着性が向上し易い。
【0039】
なお、本発明においてスチレン系ブロック共重合体(A1)中のスチレン含有量とは、ブロック共重合体(A1)中におけるスチレンブロックの総含有割合をいう。
【0040】
スチレン系ブロック共重合体(A1)は、前記の条件を満たしていれば特に限定されず公知の製造方法で得たもの、又は市販品を用いることができる。 市販品としては、例えば、クレイトンポリマー社製の商品名「クレイトンG1726」、商品名「クレイトンD1162」;旭化成社製の商品名「アサプレンT−439」、商品名「タフテックAT−10」;DEXCO社製の商品名「ベクター4411A」;JSR社製の商品名「TR2000」;ファイヤーストン社製の商品名「ステレオン841」、商品名「ステレオン857」等が挙げられる。
【0041】
(粘着付与剤(B))
粘着付与剤(B)は、本発明のホットメルト接着剤を得ることができれば特に限定されず、ホットメルト接着剤に通常用いられるものを使用することができる。
【0042】
粘着付与剤(B)としては、例えば、天然ロジン、変性ロジン、水添ロジン、天然ロジンのグリセロールエステル、変性ロジンのグリセロールエステル、天然ロジンのペンタエリスリトールエステル、変性ロジンのペンタエリスリトールエステル、水添ロジンのペンタエリスリトールエステル、天然テルペンのコポリマー、天然テルペンの3次元ポリマー、水添テルペンのコポリマーの水素化誘導体、ポリテルペン樹脂、フェノール系変性テルペン樹脂の水素化誘導体、脂肪族石油炭化水素樹脂、脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、芳香族石油炭化水素樹脂、芳香族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体、環状脂肪族石油炭化水素樹脂、環状脂肪族石油炭化水素樹脂の水素化誘導体等が挙げられる。
【0043】
粘着付与剤(B)としては、また、液状タイプの粘着付与剤も使用できる。液状タイプの粘着付与剤は、色調が無色から淡黄色であって、臭気が実質的に無く、熱安定性が良好な粘着付与剤が好ましい。このような液状タイプの粘着付与剤としては、例えば、イーストマンケミカル社製の商品名「リガライト8010」、「リガライトR1010」;ヤスハラケミカル社製の商品名「YSレジンLP」等が挙げられる。
【0044】
粘着付与剤(B)としては、樹脂等の水素化誘導体が好ましい。
【0045】
粘着付与剤(B)として、市販品を用いることができる。そのような市販品としては、例えば、荒川化学社製の商品名「アルコンP−100」、商品名「アルコンM−100」;JXTG社製の商品名「T−REZ HA103」、商品名「T−REZ HB103」、商品名「T−REZ RC093」;ヤスハラケミカル社製の商品名「YSレジンPX1000」、商品名「YSレジンTO−105」;クレイトン社製の商品名「シルバレスTP7042」;Kolon社製の商品名「スコレッツSU400」;GUANGDONG KOMO社製の商品名「KS−2100W」;イーストマンケミカル社製の商品名「リガライトC6100」、「リガライトR1090」等が挙げられる。
【0046】
上述の粘着付与剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0047】
ホットメルト接着剤中の粘着付与剤(B)の含有量は、スチレン系ブロック共重合体(A)100質量部に対して、40〜100質量部が好ましく、50〜80質量部がより好ましい。粘着付与剤(B)の含有量の下限が上記範囲であると、低温、常温及び高温でのホットメルト接着剤の接着力がより一層向上する。また、粘着付与剤(B)の含有量の上限が上記範囲であると、ホットメルト接着剤がより一層凝集破壊し難くなる。
【0048】
(カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物により変性された石油系樹脂(C))
本発明のホットメルト接着剤は、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物により変性された石油系樹脂(C)を含んでいてもよい。上記石油系樹脂(C)を含有することにより、本発明のホットメルト接着剤の凝集力がより一層向上するため、ホットメルト接着剤がより一層凝集破壊し難くなる。
【0049】
カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物により変性された石油系樹脂(C)は、本発明のホットメルト接着剤を得ることができれば特に限定されない。上記石油樹脂(C)としては、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物がグラフト重合されたワックスやエチレンコポリマー、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物が共重合されたワックスやエチレンコポリマー等が挙げられる。上記石油系樹脂(C)は、種々の反応により、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物が導入されて、結果的に変性されたものであってもよい。
【0050】
石油系樹脂を変性するために用いられるカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物は、本発明が目的とするホットメルト接着剤を得ることができるものであれば、特に限定されない。具体的には、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸、コハク酸、無水コハク酸、フタル酸、無水フタル酸、グルタル酸、無水グルタル酸、イタコン酸、アクリル酸及びメタクリル酸;酢酸エチル、酢酸ビニル等のカルボン酸エステル等のカルボン酸誘導体等が挙げられる。これらの中でも、ホットメルト接着剤の凝集力がより一層向上する点で、酢酸ビニルが好ましい。
【0051】
上記カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0052】
カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物により変性された石油系樹脂(C)は、公知の製造方法で得たもの、又は市販品を用いることができる。市販品としては、例えば、ハネウェル社製の商品名「A−C400」;Clariant社製の商品名「リコセンPPMA6252」;東ソー社製の商品名「ウルトラセン685」、日本精蝋社製の商品名「MAW−0300」等が挙げられる。
【0053】
(可塑剤)
本発明のホットメルト接着剤は、可塑剤を含んでいてもよい。
【0054】
可塑剤としては、例えば、ナフテン系プロセスオイル、パラフィン系プロセスオイル等が挙げられる。これらの中でも、ホットメルト接着剤の熱安定性、色調がより一層向上し、臭気がより一層抑制される観点から、パラフィン系プロセスオイルが好ましい。上記可塑剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0055】
可塑剤は市販品を用いることができる。パラフィン系プロセスオイルの市販品としては、例えば出光興産社製の商品名「ダイアナプロセスオイルPW32」、商品名「ダイアナプロセスオイルPW90」、商品名「ダイアナプロセスオイルPS32」、商品名「ダイアナプロセスオイルPS90」;ウィトコ社製の商品名「Kaydol」等が挙げられる。ナフテン系プロセスオイルの市販品としては、例えば、出光興産社製の商品名「ダイアナフレシアN28」、商品名「ダイアナフレシアU46」、の商品名「ダイアナフレシアN90」、商品名「ダイアナプロセスオイルNR」;シェル化学社製の商品名「シェルフレックス371N」;ペトロチャイナ社製「KN4010」等が挙げられる。
【0056】
ホットメルト接着剤中の可塑剤の含有量は、特に制限されないが、20〜50質量%が好ましく、25〜40質量%がより好ましい。可塑剤の含有量が上記範囲であると、本発明のホットメルト接着剤がより一層高い凝集力を発現することができ、より一層安定した剥離性を発現することができる。
【0057】
(酸化防止剤)
本発明のホットメルト接着剤は、酸化防止剤を含んでいてもよい。
【0058】
酸化防止剤としては、例えば、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、n−オクタデシル−3−(4'−ヒドロキシ−3',5'−ジ−t−ブチルフェニル)プロピオネート、2,2'−メチレンビス(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、2,2'−メチレンビス(4−エチル−6−t−ブチルフェノール)、2,4−ビス(オクチルチオメチル)−o−クレゾール、2−t−ブチル−6−(3−t−ブチル−2−ヒドロキシ−5−メチルべンジル)−4−メチルフェニルアクリレート、2,4−ジ−t−アミル−6−〔1−(3,5−ジ−t−アミル−2−ヒドロキシフェニル)エチル〕フェニルアクリレート、2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ぺンチルフェニル)]アクリレート、テトラキス〔メチレン−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート〕メタン等のヒンダードフェノール系酸化防止剤;ジラウリルチオジプロピオネート、ラウリルステアリルチオジプロピオネート、ペンタエリスリトールテトラキス(3−ラウリルチオプロピオネート)等のイオウ系酸化防止剤;トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト等のリン系酸化防止剤が挙げられる。上記酸化防止剤は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0059】
ホットメルト接着剤中の酸化防止剤の含有量は、特に制限されないが0.1〜3.0質量%が好ましく、0.2〜2.0質量%がより好ましい。酸化防止剤の含有量が上記範囲であると、本発明のホットメルト接着剤がより一層高い加熱安定性、耐候性を示すことができる。
【0060】
(液状ゴム)
本発明のホットメルト接着剤は、液状ゴムを含んでいてもよい。
【0061】
液状ゴムとしては、例えば、液状ポリブテン、液状ポリブタジエン、液状ポリイソプレン及びこれらの水添樹脂等が挙げられる。なお、本発明における液状ゴムとは、常温(23℃)において流動性を有するゴムを意味する。上記液状ゴムは、1種単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0062】
本発明のホットメルト接着剤は、本発明の目的を損なわない範囲において、充填剤、増量剤、熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、着色剤、難燃剤、帯電防止剤、糸引き抑制剤などの公知の添加剤が含有されていてもよい。
【0063】
(ホットメルト接着剤の製造方法)
ホットメルト接着剤の製造方法としては、特に限定されず、例えば、スチレン系ブロック共重合体(A)、粘着付与剤(B)、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物により変性された石油系樹脂(C)、及び必要に応じて可塑剤等の任意の添加剤を、加熱装置を備えた撹拌混練機中に投入し、加熱しながら混練する方法等が挙げられる。
【0064】
混練の際の加熱温度は特に限定されず、100〜180℃が好ましく、110〜170℃がより好ましい。また、混練時間は特に限定されず、30〜120分が好ましく、40〜110分がより好ましい。
【0065】
本発明のホットメルト接着剤は、下記粘着力(リクローザブル性)の測定方法により測定される粘着強度の平均強度が、0.05N/25mm〜10.00N/25mmであることが好ましく、また、剥離形態が界面剥離であることが好ましい。
【0066】
(粘着力(リクローザブル性の測定方法))
ホットメルト接着剤を180℃に加熱することにより溶融させた後、スロットダイ塗工によって50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上にホットメルト接着剤を幅50mm、30μm厚で塗布する。次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムのホットメルト接着剤塗布面上に、表面に離型処理が施された紙を積層して積層体を作製し、23℃雰囲気下にて1日養生する。次いで、23℃雰囲気下にて、積層体から離型処理が施された紙を剥離した後、ホットメルト接着剤と所定の被着体とを貼り合わせ、2kgのローラーを1往復させて圧締し、試験片を調製する。試験片を調製して30分後に、引っ張り試験機(島津製作所社製AGS−100NX)を用いて、引張速度300mm/分の条件で180°剥離試験を0℃、23℃、40℃の雰囲気下で行うことにより、接着強度(N/25mm)を測定する。測定は3回行い、測定値の平均を平均強度とする。また、剥離形態を目視で観察する。被着体には50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、25μm厚の二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、50μm厚のポリエチレンフィルム(PE)を用いる。
【0067】
本発明のホットメルト接着剤は、下記リシール性(20回後の剥離強度)の測定方法による20回後の剥離形態が界面剥離であることが好ましい。
【0068】
(リシール性(20回後の剥離強度))
ホットメルト接着剤を180℃に加熱することにより溶融させた後、スロットダイ塗工によって50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上にホットメルト接着剤を幅50mm、30μm厚で塗布する。次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムのホットメルト接着剤塗布面上に、表面に離型処理が施された紙を積層して積層体を作製し、23℃雰囲気下にて1日養生する。次いで、23℃雰囲気下にて、積層体から離型処理が施された紙を剥離する。次いで、以下の手順を20回繰り返す。ホットメルト接着剤と所定の被着体とを貼り合わせ、2kgのローラーを1往復させて圧締し、試験片を調製する。試験片を調製して30分後に、引っ張り試験機(島津製作所社製AGS−100NX)を用いて、引張速度300mm/分の条件で180°剥離試験を23℃の雰囲気下で行うことにより、接着強度(N/25mm)を測定する。これまでの手順を1回とし、当該手順を20回繰り返す。測定は3回行い、測定値の平均を平均強度とする。また、剥離形態を目視で観察する。被着体には50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、25μm厚の二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、50μm厚のポリエチレンフィルム(PE)を用いる。
【0069】
本発明のホットメルト接着剤は、ラベルやテープの用途に好適に用いられ、種々の被着体に接着することができる。被着体を形成する材料としては特に限定されず、例えば、ポリエチレン、ポリエステル、ポリ塩化ビニル、ポリウレタン、ポリプロピレン、ABS樹脂、ポリメタクリレート、ポリカーボネート等の合成樹脂;紙、ボード、段ボールなどのセルロース系材料等が挙げられる。
【0070】
本発明のホットメルト接着剤により接着剤層を形成する際は、接着剤層の厚さは1〜200μmが好ましく、1〜100μmがより好ましい。但し、厚さはこれらに限定されず、テープ、ラベル製品等の用途に応じて、好ましくは1〜200μmの範囲内から適宜設定することができる。
【実施例】
【0071】
以下に本発明を実施例により具体的に説明するが、本発明はこれに限定されない。
【0072】
実施例及び比較例で用いたスチレン系ブロック共重合体(A)、粘着付与剤(B)、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物により変性された石油系樹脂(C)、可塑剤、酸化防止剤のは、以下のとおりである。
【0073】
〔スチレン系ブロック共重合体(A)〕
・スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック(SEBS)共重合体(A1−1)
(クレイトンポリマー社製 商品名「クレイトンG1726」、スチレン含有量:30重量%、25%トルエン溶液粘度:200mPa・s)
・スチレン−ブタジエン−スチレンブロック(SBS)共重合体(A1−2)
(旭化成社製 商品名「T−439」、スチレン含有量:45重量%、25%トルエン溶液粘度:170mPa・s)
・スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック(SEBS)共重合体(A2)
(クレイトンポリマー社製 商品名「クレイトンG1.567」、スチレン含有量:13重量%、25%トルエン溶液粘度:4,200mPa・s)
・スチレン−ブタジエン−スチレンブロック(SBS)共重合体(A3)
(旭化成社製 商品名「T−438」、スチレン含有量:35重量%、25%トルエン溶液粘度:470mPa・s)
【0074】
〔粘着付与剤(B)〕
・脂環族系石油樹脂(B1)(Kolon社製 商品名「SU400」)
・芳香族系石油樹脂(B2)(荒川化学社製 商品名「アルコンP−100」
・テルペン樹脂(B3)(ヤスハラケミカル社製 商品名「PX−1000」)
【0075】
〔カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物により変性された石油系樹脂(C)〕
・エチレン酢酸ビニル変性ポリエチレンワックス(C1)(ハネウェル社製 商品名「A−C400」)
・無水マレイン酸変性ポリプロピレンワックス(C2)(クラリアントジャパン社製 商品名「リコセンPPMA6252」)
・エチレン酢酸ビニル共重合体(C3)(東ソー社製 商品名「ウルトラセン685」)
・フィッシャートロップシュワックス(C’1)(サゾール社製 商品名「サゾールC80」)
【0076】
〔可塑剤〕
・パラフィン系プロセスオイル(ウィトコ社製 商品名「Kaydol」)
【0077】
〔酸化防止剤〕
ヒンダードフェノール系酸化防止剤(BASF社製 商品名「IRGANOX1010」)
【0078】
実施例1〜13及び比較例1〜4
上述した、スチレン系ブロック共重合体(A)、粘着付与剤(B)、カルボン酸及び/又はカルボン酸無水物により変性された石油系樹脂(C)、可塑剤、及びヒンダードフェノール系酸化防止剤を、それぞれ表1〜表4に示した配合量で、加熱装置を備えた撹拌混練機中に投入した後、145℃で90分に亘って加熱しながら混練することにより、ホットメルト接着剤を製造した。
【0079】
(評価)
得られたホットメルト接着剤について、以下に示す測定方法により140℃粘度(溶融粘度)、粘着力、リシール性、糊残り性、ナノインデンター硬度、tanδを測定した。
【0080】
(140℃粘度(溶融粘度))
日本接着剤工業会規格 JAI−7に準拠した測定方法により、ブルックフィールドRVF型粘度計及びサーモセルを用いて、No.27スピンドルにて、140℃におけるホットメルト接着剤の粘度(溶融粘度)(mPa・s)を測定した。
【0081】
(粘着力(リクローザブル性))
ホットメルト接着剤を180℃に加熱することにより溶融させた後、スロットダイ塗工によって50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上にホットメルト接着剤を幅50mm、30μm厚で塗布した。次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムのホットメルト接着剤塗布面上に、表面に離型処理が施された紙を積層して積層体を作製し、23℃雰囲気下にて1日養生した。次いで、23℃雰囲気下にて、積層体から離型処理が施された紙を剥離した後、ホットメルト接着剤と所定の被着体とを貼り合わせ、2kgのローラーを1往復させて圧締し、試験片を調製した。試験片を調製して30分後に、引っ張り試験機(島津製作所社製AGS−100NX)を用いて、引張速度300mm/分の条件で180°剥離試験を0℃、23℃、40℃の雰囲気下で行うことにより、接着強度(N/25mm)を測定した。測定は3回行い、測定値の平均を平均強度とした。また、剥離形態を目視で観察した。被着体には50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、25μm厚の二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、50μm厚のポリエチレンフィルム(PE)を用いた。
【0082】
(糊残り性)
上述の粘着力の測定において調製した試験片を50mm四方に裁断し、40℃雰囲気下において500g/50mm四方の荷重をかけ、24時間養生した。養生後、引っ張り試験機(島津製作所社製AGS−100NX)を用いて、引張速度300mm/分の条件で180°剥離試験を23℃の雰囲気下で行い、接着強度(N/25mm)を測定し、下記式に従って糊残り率を算出した。測定は3回行い、測定値の平均を平均強度及び糊残り率とした。また、剥離形態を目視で観察した。
糊残り率(%)=凝集破壊面積(mm
2)/接着面積(mm
2)
【0083】
(リシール性(20回後の剥離強度))
ホットメルト接着剤を180℃に加熱することにより溶融させた後、スロットダイ塗工によって50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム上にホットメルト接着剤を幅50mm、30μm厚で塗布した。次いで、ポリエチレンテレフタレートフィルムのホットメルト接着剤塗布面上に、表面に離型処理が施された紙を積層して積層体を作製し、23℃雰囲気下にて1日養生した。次いで、23℃雰囲気下にて、積層体から離型処理が施された紙を剥離した。次いで、以下の手順を20回繰り返す。ホットメルト接着剤と所定の被着体とを貼り合わせ、2kgのローラーを1往復させて圧締し、試験片を調製した。試験片を調製して30分後に、引っ張り試験機(島津製作所社製AGS−100NX)を用いて、引張速度300mm/分の条件で180°剥離試験を23℃の雰囲気下で行うことにより、接着強度(N/25mm)を測定した。これまでの手順を1回とし、当該手順を20回繰り返した。測定は3回行い、測定値の平均を平均強度とした。また、剥離形態を目視で観察した。被着体には50μm厚のポリエチレンテレフタレートフィルム(PET)、25μm厚の二軸延伸ポリプロピレンフィルム(OPP)、50μm厚のポリエチレンフィルム(PE)を用いた。
【0084】
(ナノインデンター硬度)
ナノインデンター(HYSITRON社製)を用いて、室温23℃環境下でバーコビッチ型圧子をホットメルト接着剤表面に、速度100nm/sec、3000nm、保持時間0secの条件で押し込んだ際の荷重μN(Pmax)を測定し、下記式より算出した。
ナノインデンター硬度(kPa)=(Pmax(μN))/(A(接触投影面積(m
2)))
【0085】
(tanδ)
動的粘弾性測定器(ティーエーインスツルエント社製ローテェーショナルレオメーター、商品名「AR−G2」)を用いて、周波数1Hz、昇温速度5℃/分、測定範囲−40℃〜100℃の条件で損失弾性率G”及び貯蔵弾性率G’を測定し、23℃における損失弾性率G”及び貯蔵弾性率G’から、下記式によって23℃におけるtanδを算出した。
(tanδ)= 損失弾性率G”/貯蔵弾性率G’
【0086】
結果を表1〜表4及び
図1に示す。
【0087】
【表1】
【表2】
【表3】
【表4】
【0088】
実施例2、5、6及び比較例1の結果から、(粘着付与剤(B)の含有量MB(質量%))/(スチレン系ブロック共重合体(A)の含有量MA(質量%)が1より小さく、また、より小さい程、ナノインデンター硬度がより一層高硬度になり易く、tanδがより一層小さくなり易いことが分かった。これにより、ホットメルト接着剤がより一層凝集破壊し難くなり、剥離安定性がより一層向上することが分かった。
【0089】
実施例1、2及び比較例4の結果から、ホットメルト接着剤がカルボン酸及び/又はカルボン酸無水物により変性された石油系樹脂(C)を含有すると、ナノインデンター硬度がより一層高硬度になり易く、tanδがより一層小さい値になり易いことが分かった。これにより、ホットメルト接着剤がより一層凝集破壊し難くなり、剥離安定性がより一層向上することが分かった。
【0090】
実施例2、11、12、13の結果から、スチレン系ブロック共重合体(A)として25%トルエン溶融粘度が250mPa・s以下、スチレン含有量が20〜60質量%であるスチレン系ブロック共重合体(A1)を用いることにより、より一層低粘度化と剥離安定性とを両立し易くなることが分かった。