【課題】連続音を発生するブザーのような鳴動手段を設けた場合に違和感を与えることなく警報音を発生させることができるとともに、鳴動中における煙濃度の測定値のずれを抑制することができる煙感知器を提供する。
【解決手段】煙濃度に関連する物理量を測定する測定回路および制御回路が実装された回路基板が収納され連続音を発生する鳴動手段(24)が設けられてなる煙感知器において、前記回路基板(13)には、前記鳴動手段を駆動する駆動回路および記憶回路が設けられ、前記制御回路は、前記駆動回路を制御して鳴動手段の鳴動中に、前記測定回路を制御して測定を実行させる場合に、人の聴覚により認識されないように前記鳴動手段の鳴動音のレベルを段階的に変化させ、前記鳴動音が変動範囲内において最小レベルの期間で測定回路による濃度測定を実行させるように構成した。
本体ベースと該本体ベースの上側を覆うカバー部材とからなる筐体の内部に、監視対象の変化を検出する素子および該素子からの信号に基づいて煙濃度に関連する物理量を測定する測定回路および制御回路が実装された回路基板が収納され、前記筐体の内部に連続音を発生する鳴動手段が設けられてなる煙感知器において、
前記回路基板には、前記鳴動手段を駆動する駆動回路が設けられ、
前記制御回路は、前記駆動回路を制御して前記鳴動手段の鳴動中に、前記測定回路を制御して測定を実行させる場合に、人の聴覚により認識されないように前記鳴動手段の鳴動音の音量レベルを段階的に変化させ、前記鳴動音が変動範囲内おいて最小レベルの期間で前記測定回路による濃度測定を実行させるように構成されていることを特徴とする煙感知器。
前記制御回路は、前記駆動回路を制御して前記鳴動手段を鳴動させる際に、他の煙感知器に対して連携して鳴動することを要求する信号を出力可能に構成されていることを特徴とする請求項3に記載の煙感知器。
前記制御回路は、所定の周期で前記測定回路による濃度測定を実行させるとともに、前記測定回路の測定値が所定の第1レベルよりも高い場合に前記駆動回路を制御して前記鳴動手段を予備鳴動させ、該予備鳴動の開始後においても前記測定回路よる濃度測定を実行させて、前記測定回路の測定値が前記第1レベルよりも高い第2レベルよりも高い場合に前記駆動回路を制御して前記鳴動手段を本警報鳴動させるように構成されていることを特徴とする請求項1または2に記載の煙感知器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ブザーを内蔵した煙感知器においては、本警報の前の予備警報でブザーを鳴動させて警報音を発生させた場合、煙濃度が発報レベルに達するかどうか把握するため、ブザー鳴動中も煙の濃度測定を継続して行う必要がある。また、連携機能で、連携対象の他の煙感知器(住警器)での煙感知による警報発動で自身も警報を発動(鳴動)させた場合も、自身の煙感知器では濃度測定を継続したまま警報音を鳴動させることになる。
このように、ブザー鳴動中に煙濃度の測定を行う場合、非鳴動中の測定とは測定環境が異なることで、測定結果に影響が及ぶおそれがある。
【0006】
例えば、特許文献2には、「音圧を低下させないために、スピーカの側面周辺に通気孔を形成することが考えられるが、スピーカの鳴動によって生じる振動により、煙感知室内に空気が流入し、発光部と受光部の光軸が交わる一帯に構成される感煙領域に空気が流入すると、煙感知室内の煙濃度が一時的に低下して(測定に)悪影響を与えることが考えられる」との記載がある。このように、煙感知器においては、内蔵する鳴動手段の鳴動が煙濃度の測定結果に影響を及ぼし、煙濃度測定値が非鳴動中の測定値とずれるおそれがあることが知られている。
【0007】
そこで、鳴動手段として圧電サウンダーを内蔵する煙感知器において、鳴動する警報音の音節間に聞き取れない程度の短い無音区間を設け、その無音区間で煙濃度の測定を行うことで、振動の影響による測定誤差をなくすようにした発明も提案されている(特許文献3)。しかしながら、ブザーのような連続音を発生する鳴動手段の場合には、音節として区切を設けて無音区間を作ると違和感を与えることとなる。そのため、連続音による鳴動の際には無音区間を作ることができないので、特許文献3の発明を、鳴動手段としてブザーを備えた感知器に適用することができない。
【0008】
本発明は上記のような課題に着目してなされたもので、その目的とするところは、連続音を発生するブザーのような鳴動手段を設けた場合に、違和感を与えることなく警報音を発生させることができるとともに、鳴動中における煙濃度の測定値のずれを抑制することができる煙感知器を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、
本体ベースと該本体ベースの上側を覆うカバー部材とからなる筐体の内部に、監視対象の変化を検出する素子および該素子からの信号に基づいて煙濃度に関連する物理量を測定する測定回路および制御回路が実装された回路基板が収納され、前記筐体の内部に連続音を発生する鳴動手段が設けられてなる煙感知器において、
前記回路基板には、前記鳴動手段を駆動する駆動回路が設けられ、
前記制御回路は、前記駆動回路を制御して前記鳴動手段の鳴動中に、前記測定回路を制御して測定を実行させる場合に、人の聴覚により認識されないように前記鳴動手段の鳴動音の音量レベルを段階的に変化させ、前記鳴動音が変動範囲内おいて最小レベルの期間で前記測定回路による濃度測定を実行させるように構成したものである。
【0010】
上記構成によれば、鳴動手段の鳴動音が最小レベルになったタイミングで濃度測定を実行するため、煙濃度の測定値が非鳴動中における測定値からずれるのを抑制することができる。また、平均的な人の聴覚により認識されないように鳴動手段の鳴動音の音量レベルを段階的に変化させるため、違和感を与えることなく警報音を発生させることができる。
ここで、鳴動音の音量レベルの変化を聴覚により認識されないようにするためには、鳴動音の1段階あたりの音圧変化は、5%以下に設定すると良い。
【0011】
また、望ましくは、前記回路基板には、外部の装置からの要求を受信可能な伝送回路および記憶回路が設けられ、
前記記憶回路には、前記鳴動音の音量変化の位相が異なる複数の変化パターンのデータが記憶され、
前記制御回路は、
所定の周期で前記測定回路による濃度測定を実行させるとともに、
外部の装置からの鳴動要求に応じて前記駆動回路を制御して前記鳴動手段を鳴動させる際に、前記鳴動要求から前記測定回路による濃度測定タイミングまでの時間に応じた変化パターンのデータを前記記憶回路より読み出し、読み出した変化パターンで前記駆動回路を制御して前記鳴動手段の鳴動音の音量レベルを変化させ、前記鳴動音が最小レベルの期間で前記測定回路による濃度測定を実行させるように構成する。
【0012】
上記のような構成によれば、感知器が、周期的に測定回路による濃度測定を行うとともに、外部の装置からの鳴動要求に応じて鳴動手段を鳴動させる機能を有する場合に、任意のタイミングで鳴動要求が入ってきたとしても鳴動音が最小レベルになったタイミングで濃度測定を実行して煙濃度の測定値が非鳴動中における測定値からずれるのを抑制することができる。
【0013】
さらに、望ましくは、前記制御回路は、前記駆動回路を制御して前記鳴動手段を鳴動させる際に、他の煙感知器に対して連携して鳴動することを要求する信号を出力可能に構成する。
かかる構成によれば、各感知器が他の感知器からの連携鳴動の要求に応じて鳴動音を発生することができる火災感知システムにおいて、鳴動中における煙濃度の測定値が非鳴動中における測定値からずれるのを抑制することができる。
【0014】
また、望ましくは、音圧が変化される前記鳴動音の各音量レベルにおける所要時間は同一であり、
前記駆動回路はパルス幅変調方式で前記鳴動手段を駆動するように構成され、前記変化パターンのデータは各パルスのデューティ比を表わす情報であるようにする。
かかる構成によれば、鳴動手段を駆動するパルスのデューティ比を変えるだけで鳴動音を段階的に変化させることができ、1段階あたりの音圧変化量を容易に設定することができる。また、音圧(音量レベル)が変化される鳴動音の各段階における所要時間は同一であるため、違和感を与えることが少なくなる。
【0015】
また、望ましくは、前記制御回路は、所定の周期で前記測定回路による濃度測定を実行させるとともに、前記測定回路の測定値が所定の第1レベルよりも高い場合に前記駆動回路を制御して前記鳴動手段を予備鳴動させ、該予備鳴動の開始後においても前記測定回路よる濃度測定を実行させて、前記測定回路の測定値が前記第1レベルよりも高い第2レベルよりも高い場合に前記駆動回路を制御して前記鳴動手段を本警報鳴動させるように構成する。
かかる構成によれば、感知器が予備鳴動と本警報の鳴動を実行する機能を有し予備鳴動中においても煙濃度の測定を行う場合に、煙濃度の測定値が非鳴動中における測定値からずれるのを抑制することができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、連続音を発生するブザーのような鳴動手段を設けた煙感知器において、違和感を与えることなく警報音を発生させることができるとともに、鳴動中における煙濃度の測定値のずれを抑制することができるという効果がある。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、図面を参照して、本発明を適用した煙感知器の一例としての光電式煙感知器の一実施形態について説明する。
本実施形態の光電式煙感知器(以下、単に感知器と記す)10は、火災に伴い発生した煙を感知可能な感知器であり、建造物の天井面などに設置されて使用されるように構成されている。なお、以下の説明では、感知器10を建造物の天井面に設置した状態で上になる側を下側、下になる側を上側とする。
【0019】
(第1実施例)
第1実施例の感知器10は、
図1に示すように、感知部を収容するための収容凹部11Aを有し建造物の天井面に取り付けるための円筒状の本体ベース11と、ドーム状をなし前記本体ベース11の上側全体を覆う感知器カバー12と、感知器カバー12の中央に形成されている開口部を覆うヘッドカバー21とを備え、本体ベース11と感知器カバー12とにより内部に収容空間を有する筐体が形成される。
【0020】
また、感知器10は、前記本体ベース11と感知器カバー12とにより形成される収容空間内に収容され固定される回路基板13と、ラビリンス構造の遮光壁を有し前記回路基板13に搭載される暗箱基台14と、該暗箱基台14に係合し暗箱を形成する暗箱カバー16とを備え、これらの構成部材が、上記筐体内に収納され本体ベース11と感知器カバー12とが結合されることで感知器が構成される。
【0021】
本体ベース11は感知器10の下側筐体壁を構成するもので、本体ベース11の下面には、予め天井面に設置された取付け基台(図示省略)と連結し、当該感知器10を天井面に固定するための3個の連結金具17が設けられている(
図1ではこのうち2個が見えている)。また、本体ベース11には、収容凹部11A内に収容された回路基板13を固定するネジ18が挿通されるボス部11bが設けられている(
図1ではこのうち1個が見えている)。
【0022】
暗箱基台14には、LED(発光ダイオード)のような発光素子19Aを収納する収納部と、フォトダイオードのような受光素子19Bを収納する収納部が設けられるとともに、該収納部の底壁には、発光素子19Aと受光素子19Bのリード端子19aと19bが挿通可能な細孔(図示省略)がそれぞれ形成されており、暗箱基台14の下面より突出した各素子のリード端子の先端が回路基板13を貫通し、フロー半田付け等によって接続される。
【0023】
回路基板13は、上面および下面に火災感知のための電子回路を構成する抵抗や容量、IC(半導体集積回路)などの電子部品が実装されるプリント配線基板により構成され、該基板にはネジ挿通穴が形成されており、連結金具17のネジ穴および本体ベース11の底壁のボス部11bを貫通して回路基板13のネジ挿通穴に挿通されたネジ18によって本体ベース11の底壁に固定される。
【0024】
一方、感知器カバー12のドーム状の周壁部には、
図1(A)に示すように、暗箱内の煙検知部に連通する開口12Bが円周方向に沿って複数個形成され、該開口12Bが外部の煙をケース内部に流入可能にする煙流入口として機能するように構成されている。また、
図1(B)に示すように、感知器カバー12の中央には、暗箱の上部が露出可能な円形状の開口部12Aが形成されるとともに、該開口部12Aより露出した暗箱カバー16の円板状の蓋部の縁部にヘッドカバー21が係合されている。
【0025】
また、感知器カバー12の中央の上記開口部12Aの縁には、リング状に形成された透明部材からなる光放出部材23が嵌合されるように構成されている。そして、この光放出部材23には、下方へ向かって垂下するように形成された一対の棒状の光ガイド部(図示省略)が結合されており、該光ガイド部のうち一方の先端(下端)の光入射部(端面)が、回路基板13上に実装される図示しない動作状態報知用の発光ダイオード(LED)と対向するように構成されている。この発光ダイオードと光放出部材23とにより、後述の表示灯22が構成される。
【0026】
さらに、ヘッドカバー21には、圧電素子を駆動手段とする圧電ブザー24が設けられているとともに、暗箱基台14の中央には上方へ向って突出する遮光壁部14Aが形成され、該遮光壁部14Aの内側に、上記回路基板13から延設されたリード線25Aおよび圧電ブザー24から延設されたリード線25Bと、これらのリード線同士を接続するためのコネクタ26とが収納され、リード線25A,25Bを介して回路基板13から圧電ブザー24の駆動信号が伝送され、圧電ブザー24が鳴動されるように構成されている。また、上記ヘッドカバー21と感知器カバー12の上壁との間に音孔21Aが設けられ、圧電ブザー24の鳴動音が外部へ広がり易くなるように構成されている。なお、上記「圧電ブザー」には、圧電サウンダーと呼ばれるものも含まれる。また、本明細書では、音程を変えられる鳴動手段であって、一定の音程で連続音を発生するものをブザーと称する。
【0027】
図2には、上記回路基板13上に実装されるICなどの電子部品により構成される煙感知器の回路の機能ブロック図が示されている。
図2に示すように、煙感知器の回路(13)は、CPU(中央処理装置)とROMやRAMなどのメモリおよび発振器を内蔵しROMに格納されているプログラムに従って動作するMCU(マイクロコンピュータユニット)などからなる制御回路31と、図示しない火災受信機から延設された伝送線40からの電圧を受けて制御回路31を含む内部回路の動作電圧を生成する電源回路としての定電圧回路(電圧レギュレータ)32と、暗箱内に配設された上記受光素子19Bの信号に基づいて煙濃度を測定する煙濃度測定回路33と、該煙濃度測定回路33の出力信号を増幅する増幅回路34と、伝送線40を介して火災受信機との間で信号の送受信を行う伝送回路(I/F)35を備える。
【0028】
制御回路31は、周期的(例えば3秒ごと)に煙濃度測定回路33と増幅回路34を動作させて増幅回路34からの信号に基づいて煙濃度値を演算しデジタル値に変換してメモリに記憶し、記憶した煙濃度値を火災受信機から要求に応じて伝送回路(I/F)35より火災受信機へ送信する。煙濃度測定回路33と増幅回路34を連続して動作させておいて、周期的に濃度測定値を取得するように構成しても良い。なお、煙濃度測定は、3秒ごとに限定されず、8秒ごと等であっても良い。
また、本実施形態の煙感知器は、発光ダイオードと光放出部材23とからなる表示灯22を点灯駆動する表示灯駆動回路36と、鳴動手段としての圧電ブザー24を鳴動駆動するブザー駆動回路37と、圧電ブザー24を鳴動させて発生する音圧(音量レベル)の変化パターンを記憶するパターン記憶回路38を備えている。音圧変化パターンは、制御回路31のメモリ(ROM)に記憶しても良い。
【0029】
なお、伝送線40は2本の配線で構成され、伝送線40を介して火災受信機から動作電圧が供給される。1本の伝送線40には、複数(例えば255個)の感知器が接続可能であり、各感知器には重複しないようにアドレスが付与され、火災受信機はそのアドレスを使用してポーリング方式で各感知器から煙濃度測定値を順次取得する。
火災受信機は感知器から煙濃度測定値を受信すると、煙濃度値またはその変化率が予め設定しておいたしきい値を超える場合に火災発生と判断して、警告表示処理や警報用ベルの鳴動処理、連動処理を実行して火災発生を報知する。具体的には、火災受信機は伝送線40を介して各感知器へコマンドを送信することで、圧電ブザー24を鳴動させたり、停止させたりすることができる。
【0030】
制御回路31は、火災受信機は伝送線40を介して鳴動コマンドを受信すると、ブザー駆動回路37を動作させて圧電ブザー24を鳴動させる。このとき、火災受信機からの鳴動コマンドは任意のタイミングで送られてくる。なお、制御回路31は、煙濃度測定回路33によって測定された煙濃度が所定のしきい値を超えた場合に火災発生と判断して、自らブザー駆動回路37を制御して圧電ブザー24を鳴動させる処理も実行可能である。火災受信機又は他の煙感知器からの鳴動コマンドにより圧電ブザー24を鳴動させるのは連動制御の場合であり、鳴動コマンドを受けた感知器は鳴動開始後も煙濃度測定を実行することとなる。
【0031】
そのため、煙濃度測定回路33によって煙濃度を測定するタイミングと圧電ブザー24が鳴動している期間が重なることがあり、測定タイミングが鳴動期間と重なると、煙濃度測定値が、圧電ブザー24が鳴動していないときの測定値からずれてしまうおそれがある。そこで、本実施例では、パターン記憶回路38から所定の変化パターンを読み出してブザー駆動回路37を動作させることで、圧電ブザー24の鳴動音の音圧(音量レベル)を変化させ、音圧が最も低い期間で煙濃度測定を実行するように構成されている。
【0032】
次に、上記制御回路31による煙濃度測定動作について、
図3のタイミングチャートを用いて説明する。なお、ここでは、ブザーの鳴動要求コマンドをブザー鳴動制御信号として説明する。
図3(a),(c)に示すように、タイミングt1で煙感知器へのブザー鳴動制御信号が立ち上がると、制御回路31よりブザー駆動回路37へ供給される鳴動制御信号がハイレベルに変化される。これにより、圧電ブザー24は例えば3m離れた位置で65dBとなるような音量レベルで鳴動を開始する。
【0033】
また、
図3(b)に示すように、上記ブザーの鳴動制御とは全く非同期に、タイミングt2で、タイマー割込み信号(パルス)により受信機からの濃度測定要求が発生すると、制御回路31は、パターン記憶回路38から所定の音圧変化パターンを読み出してブザー駆動回路37へ供給する。
すると、ブザー駆動回路37は、供給された音圧変化パターンに応じて例えばPWM(パルス幅変調)方式の鳴動駆動信号を生成して圧電ブザー24を駆動し、鳴動音の音圧を変化させる。そして、
図3(e)に示すように、鳴動音の音圧レベルが最も低くなる期間Tsの開始直後のタイミングt3で、測定制御信号(パルス)が煙濃度測定回路33へ供給されて煙濃度測定が実行される。
【0034】
鳴動音の音圧が最も低くなる期間Tsは、読み出す音圧変化パターンによって決まっているとともに濃度測定要求タイミングt2から測定タイミングt3までの遅延時間Tdも一定であるので、制御回路31は、遅延時間Tdに応じた音圧変化パターンを読み込んで音圧変化を開始させ、タイミングt3で煙濃度測定回路33に対する測定制御信号(パルス)を生成し出力することにより、鳴動音の音圧が最も低くなる期間Tsで煙濃度測定を実行させることができる。
【0035】
また、位相の異なる複数の音圧変化パターンのデータを予めパターン記憶回路38に記憶しておいて、ブザー鳴動要求タイミング(t1)の時点で、タイマーを参照して濃度測定要求タイミングt2までの時間を取得し、t1から濃度測定タイミングt3までの時間を算出してその時間に応じてt3で鳴動音の音圧レベルが最も低くなる位相の音圧変化パターンを読み込んで音圧変化を開始させ、タイミングt3で煙濃度測定を実行させるようにしても良い。
【0036】
ここで、
図3(e)に示す音圧制御レベルの変化と
図3(f)に示す鳴動駆動信号のデューティ比の変化パターンとの関係について説明する。
図3(f)に示すデューティ比A,B,C,Dは、それぞれ鳴動駆動パルスのデューティ比すなわち周期Tsに対するパルス幅が異なることを意味しており、
図4に示すように、A→B→C→Dの順に、デューティ比(パルス幅)が小さくなるように設定されている。そのため、
図3(F)に示すように鳴動駆動信号のデューティ比を変化させると、
図3(e)に示すように音圧のレベルが周期的に大小変化することとなる。また、デューティ比の変化周期は濃度測定周期と同じであり、濃度測定周期が例えば5秒の場合、音圧1段階あたり0.625秒の鳴動期間となるように設定される。
【0037】
なお、音圧変化パターンのレベルは4段階の変化に限定されず、5段階以上であっても良い。また、音圧変化パターンの周期も1つに限定されず、周期の異なる複数の音圧変化パターンをパターン記憶回路38に記憶しておいて、濃度測定周期に応じた音圧変化パターンを読み出すようにしても良い。パターン記憶回路38には、
図3(f)のようにAから開始するパターンの他、B→C→D→C→B→A→B……のようにBから開始するパターンや、Cから開始するパターンなどが記憶されており、濃度測定要求タイミングt2からの遅延時間Tdに応じたパターンが読み出される。
また、デューティ比と音圧との関係は使用するデバイスの特性によって異なり、デューティ比が25%と75%で最も音圧が高くなり、50%で最も音圧が低くなるものもあるので、デューティ比の変化は使用するデバイスの特性に応じて決定すれば良い。
【0038】
ここで、音圧レベルの1段階の変化量は、圧電ブザー24の鳴動音の音量レベルが65dBの場合、3dB(約5%)以下とされる。このように1段階の変化量を3dB(約5%)以下に抑えることで、平均的な人の聴覚では音量に変化があったことを認識させないようにすることができる。また、聴覚が優れている人の場合、音圧レベルの変化量が1.5dB程度まで認識できることがあるので、圧電ブザー24の鳴動音の音圧レベルの1段階の変化量を1.5dB以下に抑えるようにすることで、より望ましい結果が得られる。
【0039】
さらに、一定時間(例えば5秒)以内の音圧レベルの変化量が所定量(例えば3dB)を越えないようにブザー鳴動音を制御しても良い。また、人が聞き分けられる音量変化は環境すなわち周囲の騒音レベルによっても異なる。そこで、感知器内に騒音レベルを測定するセンサを設け、測定した周囲の騒音レベルに応じて音圧レベルの1段階の変化量の大きさを変えるようにしても良い。具体的には、周囲の騒音レベルが大きい場合には、音量変化を認識しにくくなるので、1段階の変化量を3dB以上に設定しても良い。
さらに、周囲音の周波数によっても聴き取り易さが異なるので、周囲音の周波数に応じて1段階の変化量を変えるように制御しても良い。また、周囲音の周波数に応じて、発生する鳴動音の周波数を変えるようにしても良い。
【0040】
図5には、制御回路31が
図3に示すようなタイミングに従って煙濃度を測定して圧電ブザー24を鳴動する制御を実施するコマンド処理の手順の一例が示されている。以下、
図5のフローチャートに従って処理手順について説明する。
図5のコマンド処理においては、先ず火災受信機からコマンドを受信したか否か判定する(ステップS1)。ここで、コマンドを受信した(Yes)と判定するとステップS2へ進み、ブザー鳴動コマンドを受信したか否か判定し、ブザー鳴動コマンドを受信した(Yes)と判定するとステップS3へ進み、煙濃度測定回路33による煙濃度の測定中であるか否か判定する。
【0041】
そして、煙濃度の測定中でない(No)と判定するとステップS4へ進み、ブザー駆動回路37に対して例えば3m離れた位置で65dBとなるような音量で圧電ブザー24を鳴動させる制御信号を出力する。次に、制御回路31は、割込みによる煙濃度測定要求があったか否か判定する(ステップS5)。そして、煙濃度測定要求があった(Yes)と判定するとステップS6へ進み、パターン記憶回路38から遅延時間Tdに応じて所定の音圧変化パターンを読み込み、ブザー駆動回路37に対して読み込んだ音圧変化パターンのデューティ比順に鳴動させる指令を出力する(ステップS7)。続いて、タイマーが遅延時間Tdを計時したか否か判定し(ステップS8)、Tdを計時した(Yes)と判定するとステップS9へ進み、煙濃度測定回路33に対して測定を許可する指令を出力する。
【0042】
その後、タイマーをTsにセットして煙濃度測定回路33による煙濃度測定および測定値の記憶(ステップS10)を実施してステップS11へ進む。ステップS11では、ブザー鳴動停止コマンドを受信したか否か判定し、受信していない(No)と判定するとステップS3へ戻り、上記動作を繰り返す。一方、ステップS11でブザー鳴動停止コマンドを受信した(Yes)と判定するとステップS12へ進み、ブザー駆動回路37に対して鳴動を禁止する指令を出力してコマンド処理を終了する。
【0043】
一方、上記ステップS2で、受信コマンドがブザー鳴動コマンドでない(No)と判定するとステップS13へ進み、測定値要求コマンドであるか否か判定する。そして、測定値要求コマンドである(Yes)と判定するとステップS14へ進み、ステップS10で測定し記憶していた煙濃度測定値を受信機へ送信してコマンド処理を終了する。また、ステップS13で、測定値要求コマンドでない(No)と判定すると、ステップS15へ移行してその他のコマンド処理を実行する。
上記のような手順に従った制御を行うことで、鳴動中における煙濃度測定による測定値のずれを抑制することができる。なお、図示しないが、動作クロックの誤差によりに測定周期がずれてしまわないように、コマンドを受信するたびにタイマーをリセットして、周期を維持できるようにしても良い。
【0044】
(第2実施例)
第2実施例の感知器は、火災発生を検知した他の感知器からの鳴動要求(連携信号)に応じてブザーを鳴動させるとともに、連携による鳴動中においても煙濃度測定を実施できるように構成したものであり、感知器10の構成は
図1に示すものとほぼ同じである。
図6には、第2実施例の煙感知器の回路の機能ブロック図が示されている。
図2に示されている第1実施例の煙感知器の回路との差異は、第1実施例の煙感知器では伝送線(感知器回線)40に接続され受信機との間で信号の伝送を行う伝送回路(I/F)35が設けられているのに対し、第2実施例の煙感知器では他の感知器からの連携信号を受けるとともに他の感知器へ連携信号を送信する連携信号送受信回路35’が設けられている点にある。
【0045】
また、特に限定されるものでないが、この第2実施例の煙感知器では、バッテリーを備えた電源回路32’が設けられている。
煙感知器の動作手順は、
図3のタイミングチャートや
図5のフローチャートと同様であり、本実施例では、連携信号送受信回路35’が他の感知器からの連携信号を受けると、制御回路31がブザー駆動回路37を駆動制御して圧電ブザー24を鳴動させるとともに、連携によるブザー鳴動中も煙濃度測定を実施するように構成されており、第1実施例と同様に、煙濃度測定の割込みが入ると、所定の音圧変化パターンを読み込んで圧電ブザー24の鳴動音の音圧を段階的に下げ、音圧が最も低くなったタイミングで煙濃度測定を実行する。煙感知器の煙濃度測定が一定時間毎に定期的に行われる場合は、煙濃度測定タイミングに音圧が最も低くなるパターンを設定し、煙濃度測定を実行する。そして、このような制御を行うことで、鳴動中における煙濃度測定による測定値のずれを抑制することができる。なお、連携信号の送信元と送信先の「他の感知器」は同一の感知器でも良いし、異なる感知器でも良い。
【0046】
(第3実施例)
第3実施例の感知器は、外部からの鳴動要求に応じてブザーを鳴動させる機能は備えていない代わりに、測定した煙濃度が火災発生と判断するレベルよりも低い所定のレベルに達したときに予備鳴動を実行し、この予備鳴動中においても煙濃度測定を実施するように構成したものであり、感知器10の構成は、
図1に示すものとほぼ同じである。
図7には、第3実施例の煙感知器の回路の機能ブロック図が示されている。
図2に示されている第1実施例や
図6の第2実施例の煙感知器との差異は、伝送回路(I/F)35も連携信号送受信回路35’も設けられていない点とパターン記憶回路38を有していない点にある。また、この第3実施例の煙感知器では、第2実施例と同様、バッテリーを備えた電源回路32’が設けられている。
【0047】
図8には、第3実施例の感知器の動作タイミングが示されている。
第3実施例の感知器の制御回路31は、
図8(a)に示したタイミングt1で煙濃度測定のタイマー割込み(濃度測定要求)が入ると、
図8(a)に示したタイミングt1に合わせて煙濃度測定制御が入り煙濃度の測定が行われる。煙濃度の測定結果として予備鳴動に対応した所定レベルが得られた時には、
図8(b)に示されるようにブザー駆動回路37を駆動してタイミングt2でブザー鳴動制御信号を立ち上げ、圧電ブザー24を鳴動させる。
【0048】
また、煙濃度の測定結果として予備鳴動に対応した所定レベルが得られなかった時には処理を終了する。圧電ブザー24の鳴動中は、
図8(a)のタイミングt4の煙濃度測定のタイマー割込み(濃度測定要求)から、
図8(d)に示すように音圧の測定周期の半分の時間(Tdの時間幅)をかけてブザーの鳴動音の音圧を段階的に下げる制御を開始する(タイミングt4−t5)。そして、遅延時間Td経過後の音圧が最も低くなったタイミングt5で次の(ブザー鳴動中の)煙濃度測定が実行される。その後、測定周期内で一旦音圧を段階的に上昇させてから再び音圧を段階的に下げ、音圧が最も低くなるタイミングで煙濃度測定を実行する。このような動作を、鳴動停止ボタンが操作されるまで繰り返し実行する。
【0049】
受信機や他の感知器など外部装置からの鳴動要求を受け付ける機能のない本実施例の感知器では、煙濃度測定の実行タイミングとブザー鳴動タイミングの関係を一義的に設定することができるため、遅延時間Tdの大小に応じて音圧を変化させるための複数の変化パターンは不要であり、プログラム処理で音圧を変化させることができる。そして、このような制御を行うことで、鳴動中における煙濃度測定による測定値のずれを抑制することができる。
なお、本実施例では、音圧変化の各段の期間Tsを一定にした制御の場合、音圧レベルが最も高い期間Taは煙濃度測定周期Tfに応じて適宜な長さ(可変長)に設定される。
【0050】
以上、本発明を実施形態に基づいて説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。例えば、上記実施形態の煙感知器においては、鳴動手段として圧電素子を駆動手段とする圧電ブザーを使用したものを示したが、ソレノイドを駆動手段とする電磁ブザーを使用したものに適用しても良い。
また、上記実施形態では、本発明を、発光素子と受光素子を有する煙感知器に適用したものを説明したが、本発明はそれに限定されず、赤外線を検知する焦電素子、サーミスタのような感熱素子あるいはCOなどの有害ガスを検知するガスセンサ等の素子およびこれらの素子からの信号を増幅する増幅回路が実装された感知器にブザーを設ける場合に広く利用することができる。