【解決手段】基材から1又は2以上の放熱要素が延びるヒートシンクの製造方法であって、基材の法線を含む断面において放熱要素は延伸しており、断面における放熱要素の延伸形状について、ヒートシンクの総伝熱量と、断面における放熱要素の材料使用量とを目的関数として、総伝熱量と材料使用量の2つの目的変数の遺伝的アルゴリズムと応答曲面法を併用することによって、トポロジーを調整する。
前記断面において、前記放熱要素は前記基材から幹部が延出するとともに、前記幹部から2つ以上の枝部が延びていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のヒートシンクの製造方法。
前記基材の法線に沿って見たときに、隣り合う前記放熱要素は、互いの枝部が重ならないように設けられていることを特徴とする請求項1に記載のヒートシンクの製造方法。
前記ヒートシンクは、少なくとも前記放熱要素が積層造形法によって形成されることを特徴とする請求項1から請求項6のいずれか1項に記載のヒートシンクの製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施形態に係るヒートシンクの製造方法について図面を参照しつつ詳しく説明する。
本実施形態に係るヒートシンクは、基材(ベース)と、この基材から1又は2以上の放熱要素が延びる構成を有する。放熱要素は、少なくとも、板状の基材の法線(基材の主平面に直交する方向に沿った線)を含む断面において延伸している。例えば、
図1(a)〜(f)に示す例のように、X−Z面内で延びた放熱要素が、Y方向に沿って延びる形状のほか、X、Y、Zの各方向に3次元的に延びる構成も可能である。
【0016】
本実施形態のヒートシンクは、以下に説明するように、上記断面における放熱要素の延伸形状について、ヒートシンクの総伝熱量Qと、断面における放熱要素の材料使用量又は放熱要素の全長Lとを目的関数として、総伝熱量Qと、材料使用量又は全長Lとの2つの目的変数の遺伝的アルゴリズムと応答曲面法を併用することによって、トポロジーを調整し、材料コストと総伝熱量Qとが所望の組み合わせとなるように最適化を図ることができる。
【0017】
このようにトポロジーが最適化されたヒートシンクは、少なくとも放熱要素が、3Dプリンターその他の積層造形法によって形成される。基材については、放熱要素とともに積層造形法で形成することもできるが、放熱要素の形成の前に予め積層造形法以外の手法で形成してもよい。ここで、放熱要素の全長Lは、基材から延びる幹部、幹部から延びる枝部、及び、枝部からさらに延びる枝部のそれぞれが延びる方向の長さの合計値であり、幹部や枝部の太さや外周長さとは別個の数値である。
【0018】
コンピュータの演算能力の向上に伴い、数値流体力学(Computational Fluid Dynamics)(以下「CFD」という)などの数値計算技術が工学製品の設計と最適化に利用されるようになってきた。設計最適化は、寸法最適化、形状最適化、トポロジー最適化の3つに大別される。寸法最適化は、例えば梁の長さや厚みなどの代表的寸法を設計変数とするため、形状の大幅な変更には対応できない。形状最適化は、構造物の外縁・内縁の形状を設計変数とする現在最も一般的な方法であるが、穴の有無や領域の連結性などの形態(トポロジー)の変化には対応できない。特に、流路や熱交換器などの流体機械においては、トポロジーの変化が性能に及ぼす影響が大きいため、物体形状だけではなくそのトポロジーを含めて考慮した、形状表現自由度の高い最適化(トボロジー最適化)が望まれる。
【0019】
以上の点から、本実施形態に係るヒートシンクではトボロジー最適化により形状を設計している。ヒートシンクの性能向上に着目した先行研究は数多くなされているが、ここではそれに加えて材料コストにも着目して多目的最適化に取り組む。以下に説明する例ではヒートシンクのフィンの2次元分岐形態について、CFDによる性能評価と多目的最適化を実施する。
【0020】
ヒートシンクや流路の設計最適化問題において、最適構造は、木の枝、植物の葉脈、気管支などの自然物に似た構造をとることが知られている。本実施形態では、トポロジー手法のうち、少数のパラメータで多様な自然物の構造を表現できるLindenmayer systems(以下「L−systems」という)を用いて、ヒートシンクのフィンを表現する。
【0021】
L−systemsは、初期の文字列と文字置き換え規則による文法であり、自然物によく見られる周期的な自己相似構造(フラクタル)を表現できる。文法はG={V,S,ω,P}の形式で表される。ここで、Vは置換規則により順次置き換えられてゆく文字であり、FまたはXをとる。Sは定数の集合であり、+、一、[ 、 ]で構成される。ωは初期状態を示すVの要素からなる集合である。PはVを変化させる置換規則の集合である。Pの反復回数は、分岐形態が設計領域内に収まるよう4回とした。
【0022】
上記の各記号の意味は次の通りである。
(1)V
F 長さdのステップで前進(延伸)
X 分岐の進展を制御する文字
(2)S
+ :角度δ(dv
1)だけ右へ回転
− :角度δ(dv
1)だけ左へ回転
[ :新しい枝部(放熱要素)を生成(]までの文字列によって表現)
]:新しい枝部(放熱要素)を生成([からの文字列によって表現)
【0023】
(3)ω
X 上記(1)Vで定義されているXと同一
(4)P
F→FF
X→dv
2〜dv
11によって与えられる10文字の列
【0024】
図1(a)〜(f)にヒートシンクの例を示す。
図1(a)は例1のヒートシンクの断面図、(b)は例1のヒートシンクの斜視図、(c)は例2のヒートシンクの断面図、(d)は例2のヒートシンクの斜視図、(e)は例3のヒートシンクの断面図、(f)は例3のヒートシンクの斜視図である。
図1(a)、(c)、(e)は、基材10の法線を含む断面である。ここで、基材10は、
図1(a)〜(f)に示すX−Y面に広がる板材であり、その法線方向はZ方向に沿っている。
【0025】
図1(a)、(b)に示す例1では、基材10から幹部11が法線方向(Z方向)に沿って延出し、この幹部11から2つの枝部12、13が互いに別の方向に延びている。さらに、一方の枝部12からは2つの枝部21、22が延び、それぞれの先端においてさらなる枝部(符号省略)が延びている。他方の枝部13についても、2つの枝部23、24が延び、それぞれの先端においてさらなる枝部(符号省略)が延びている。
【0026】
ここで、
図1(a)〜(f)においては、基材10の法線方向に沿って幹部11が延びる例を示したが、法線方向とは異なる方向に幹部が延びる構成も可能である。
【0027】
図1(c)、(d)に示す例2においても、基材10から幹部11が法線方向(Z方向)に沿って延出し、この幹部11から2つの枝部12、13が互いに別の方向に延びている。幹部11はさらに延び、その先端から、さらなる枝部14が延びている。
【0028】
図1(e)、(f)に示す例3においても、基材10から幹部11が法線方向(Z方向)に沿って延出し、この幹部11の途中から2つの枝部12、13が互いに別の方向に延びている。これらの枝部12、13からはさらなる枝部(符号省略)が延びている。また、幹部11はさらに上側(Z方向)に延びており、2つの枝部14、15が互いに別の方向に延び、枝部15からはさらなる枝部(符号省略)が延びている。
【0029】
本実施形態では、
図2に示すように、閉空間内に置かれたヒートシンクを想定し、ヒートシンクの放熱面での総伝熱量Q[w]と、材料コスト(放熱要素の体積)に着目する。ここでは、材料コストを抑えながらヒートシンクの総伝熱量(放熱量)が最大となる形状を探索する。ここで、放熱要素は、参考例においては平板状のフィンであり、本実施形態のヒートシンクにおいてはフィンの幹部と枝部を含む。
【0030】
以下の評価においては、体積に代えて、2次元断面上でのフィンの幹部及び枝部の全長L[mm]を用いている。設計変数は計11個としており、dv
1は枝の折れ曲がり回転角として、dv
2〜dv
11は以下に示すように0から1の範囲で離散値として与えている。
【0031】
0≦dv
n<1/6 の場合:F
1/6≦dv
n<2/6 の場合:X
2/6≦dv
n<3/6 の場合:+
3/6≦dv
n<4/6 の場合:−
4/6≦dv
n<5/6 の場合:[
5/6≦dv
n≦1 の場合: ]
ただし、n=2,3,・・・,11
【0032】
本実施形態における最適化に関しては次の定義を用いている。
(1)客観的機能(目的関数)
最大化:総伝熱量Q(単位W)
最小化:幹部と枝部の全長L(単位mm)
(2)設計変数
dv
1:実験値に基づく
0≦dv
n≦1
ただし、n=2,3,・・・,11
【0033】
比較対象の参考例として、
図3(a)に断面形状を示す、LSIクーラー株式会社製のFシリーズ21F50(型番)を用いた。このヒートシンクの各部のサイズ(断面形状)、仕様は次の通りである。
(1)ベース101:横幅50mm、高さ6mm
(2)フィン111(放熱要素、平板状):厚み2.6mm、間隔7.9mm、ベース101を含む高さ21mm
(3)単位重量1.513kg/m、アルミニウムの押し出し成形品
【0034】
これに対して、本実施形態のヒートシンクでは、
図3(b)(断面図)に示すように、ベース(基材)は横幅50mm、高さ6mmの板形状で固定とした。さらに、L−systemにより、ベースの中心から延びるフィン(放熱要素)が、
図3(a)に示す参考例のヒートシンク全体の外形形状(横幅50mm、ベース高さ6ミリ、ベースから延びる高さ15mm)に対応するように、設計領域に制約をかけた。
【0035】
さらに、この断面形状を奥行き方向(
図3(b)の紙面に垂直な方向)に50mm延ばすことで3次元形状を作成し、上記定義に従ってフィンを最適化する。なお、最適化過程で、+−、一+、[]、+]、−]、といった文法的に正しくても形状に対して意味をなさない文法を持つ個体や、最後の文字が+、−、[である個体や、Xなし、[ 、 ]なし、+、一なしといった分岐形態を持たない個体には、枝部の全長に10000mmを与えることによって無効な個体とみなす。最適化における個体については以下に述べる。
【0036】
本実施形態では、生物の進化をモデル化したアルゴリズムである遺伝的アルゴリズム(Genetic Algorithm)(以下「GA」と言う)を用いる。GAは現在の世代から親として個体を選択し、交叉と突然変異を行うことにより子として新しい個体を生成し、次の世代に優れた個体を残す。
【0037】
GAは以下の2点で好ましい。1つ目に、GAは勾配法のように目的関数の勾配を求める必要がなく、目的関数値そのものを評価して最適化を実現できるため、目的関数の微分可能性や凹凸性に関係なくあらゆる設計最適化問題にも適用できる。このことは、適用先に関する数学的背景や理論に対する深い知識や経験を必要としないため、GAの優れた汎用性に通じる。
【0038】
2つ目に、勾配法のように1つの点から逐次的に解探索を進めるのではなく、GAは集団ベースの多点同時探索を行うため、局所最適解に陥ることなく大域的最適解の発見が期待されることが挙げられる。
これらの特徴から、流体問題のトボロジー最適化のように、目的関数が強い非線形性と多峰性を有する最適化問題に対して、GAは有力な解法となる。
【0039】
本実施形態では、多目的最適化のための有名なGAであるNon−Dominated Sorting Genetic Algorithm(以下「NSGA−II」という)を採用する。上述のように、NSGA−II(GA)は集団ベースの多点同時探索で大域的最適解の発見能力に優れている。さらにNSGA−IIは、多目的最適化問題におけるPareto最適解の集合を探索するために、解集団の多様性を維持できる点でも優れている。
【0040】
その一方で、集団中のそれぞれの解について目的関数の評価が必要であるため、結果として計算コストが膨大となる。特に本実施形態のように、CFD等の大規模数値計算によって目的関数を評価する場合には、NSGA−IIを単独利用することは、計算コストの面から見ると現実的ではない。そこで本実施形態では、計算コストを削減するために応答曲面法を併用している。
【0041】
応答曲面法とは、入力(設計変数値)の異なるいくつかのケースで出力(目的関数値)を評価(サンプル)した後、これらのサンプル点を補間する代数式を構築する手法である。この代数式を最適化に用いることで、サンプル点が与えられていない任意の入力に対する出力を瞬時に推定できるため、目的関数評価そして最適化全体に要する計算時間を大幅に削減できる。
【0042】
本実施形態では、応答曲面法のうち、非線形かつ多峰性関数の近似に適している応答曲面法であるKrigingモデルを用いている。他の応答曲面法は目的関数の推定値だけをモデル化するのに対し、Krigingモデルは推定値(「数1」)と推定値の不確かさ(「数2」)を併せてモデル化できる。この不確かさの情報に基づいて、モデルを改善するために次に追加すべきサンプル点の位置を特定するための指標を算出できる。
【0045】
本実施形態では、最大化すべき目的関数f(x)について、次式(1)、(2)で定義される、現在の最適値f
maxからの改善量I(x)の期待値(Expected Improvement:EI)E[I(x)]を算出する。
【0048】
ここで、Fは正規分布(「数5」)に従う確率変数、φ(F)は変数Fの確率密度関数である。
【0050】
元の目的関数f(x)を最大化する代わりに、Krigingモデル上で目的関数のEI値E[I(x)]を最大化する設計変数値xを探索する。このxにおいて真の目的関数f(x)の値を評価した後、サンプル点を追加し、Krigingモデルを更新する。以上の作業を繰り返すことで、大域的最適解の探索と応答曲面の精度向上を同時に実現できる。
【0051】
本実施形態における最適化の手順を
図4に示す。この手順は、本実施形態における、ヒートシンクの製造方法のうち、
図3(b)に例示する放熱要素(枝部及び幹部)の延伸形状についてのトポロジーの調整(最適化)に係る手順である。
図4において実線の枠で示す処理(ステップS1、S2)では、CFDによって評価される実測値が出力され、破線の枠で示す処理(ステップS3、S4)では、Krigingモデルによって推定値(近似値)が出力される。
【0052】
ここでは、遺伝的アルゴリズム(GA)の1つであるNSGA−IIを用い、1つ目の目的関数である総伝熱量Qを、応答曲面法の1つであるKrigingモデルで近似し、2つ目の目的関数である枝部及び幹部の全長Lを解析的に評価している。
【0053】
最初に、Latin Hypercube Sampling(LHS)(14)を用いて設計空間内に一様に初期サンプル点(計42点)を作成する(ステップS1)。つづいて、作成した各点についてCFDを実施した後、総伝熱量Qを近似するKrigingモデルを構築する(ステップS2)。
【0054】
次に、Krigingモデル上でQのEI値が最大かつLの解析値が最小となるPareto最適解をNSGA−II(集団サイズ512、世代数100)で探索する(ステップS3)。ここで得られる無数のPareto最適解のうち、Pareto面の両端2点と中央1点の計3点のサンプルについてCFDを実施する(ステップS4)。
【0055】
つづいて収束判定を行う(ステップS5)。この収束判定としては、例えば、EI値が既定の閾値未満になって収束したか否か、又は、放熱要素の形状のトポロジーが更新されなくなり収束したか否かを判定する。
【0056】
収束判定において、収束していないと判定した場合(ステップS5でNo)、サンプルを現在のサンプル点に追加してKrigingモデルを更新する(ステップS1)。
【0057】
一方、収束判定において、収束したと判定した場合(ステップSでYes)は最適化の処理を終了する。以上の手順により、必要最小限の回数のCFDで効率的にPareto解を探索することができる。
【0058】
本実施形態では、市販のCFDソフトウエアANSYS FLUENT 17.2の圧力ベースソルバーを用いて、ヒートシンクの総伝熱量を評価する。支配方程式は、連続の式、定常非圧縮性ナビエ・ストークス方程式、定常エネルギー方程式である。
【0059】
また、Pseudo transient法を用いて圧力ベース連成型ソルバーの疑似非定常アルゴリズムを有効にする。その結果、解析方程式に非定常項が効率的に追加され、安定性と収束性が向上する。
【0060】
表1に本実施形態で用いた計算スキームを示す。作動流体は空気である。ヒートシンク底面を熱源とし、第一種温度境界条件として一定温度323.15Kを与える。
領域壁は周囲(293.15K)へ熱を充分に逃がすように第三種境界条件を設定する。ここでは、自然対流をモデル化するためにブシネスク近似を用いる。
【0062】
CFD格子はカットセル法によって生成する。一般的な物体適合格子法に比べて、カットセル法はトポロジー最適化の過程で探索される複雑なフィン形状に対しても、格子を自動生成できる。また、物体表面を単純な階段状のセルで表現する直交格子法に対して、物体表面と交差するセルを切断して物体に沿った格子を抽出するカットセル法は、壁面の隣でも検査体積が定義されるため、保存則が満たされる。
【0063】
図5(a)はリファレンスモデルについて物体適合格子を用いた場合の各位置での局所熱伝達率を算出した結果を示し、
図5(b)はカットセル法を用いた場合の各位置での局所熱伝達率を算出した結果を示している。
図5(a)、(b)において、縦軸は局所熱伝達率(単位W/m
−1・K)であり、横軸はモデルの1方向における位置を示している。また、
図5(c)は
図5(a)、(b)に対応する凡例を示し、
図5(d)は
図5(a)、(b)の横軸に示す位置を示す図である。
図5(a)、(b)では、
図5(c)に示す、位置「Z+1」における算出結果を丸印で示し、位置「Z0」における算出結果を三角印で示し、位置「Z−1」における算出結果を四角印で示している。
【0064】
図5(a)に示す物体適合格子を用いた場合は、高い精度で演算を行うことができる一方で、演算に1ケース約1時間を要した。これに対して、
図5(b)に示すカットセル法を用いた場合には、1ケース約10分で演算を行うことができた。したがって、カットセル法を用いることで計算時間を大幅に削減しながら物体適合格子と同じ傾向を捉えるが可能であることが分かった。
【0065】
図4に示す最適化の手順に従って、Krigingモデルを4回更新して追加サンプル点を12点追加したところ、
図6に示す結果が得られた。
【0066】
図6は、縦軸を1つ目の目的関数である総伝熱量Q(単位W)、横軸を2つ目の目的関数である枝部と幹部の全長L(単位mm)として、初期サンプル(
図6における「initial sample points」、丸印)、追加サンプル(同図における「additional sample points」、三角印)、及び、リファレンスモデル(同図における「Reference model」、*(アスタリスク)印)の評価値をプロットしたグラフである。
【0067】
図6では、Pareto最適解となるサンプル点のうちの4点(SA、SB、SC、SD)について、2次元断面形状(基材の法線を含む断面、ただし、基材は非表示)を併せて示してある。ここで、各点における総伝熱量Qと全長Lは次の通りである。
SA:総伝熱量Q:0.6943W、全長L:12.05mm
SB:総伝熱量Q:1.3268W、全長L:73.86mm
SC:総伝熱量Q:1.4468W、全長L:80.69mm
SD:総伝熱量Q:1.4351W、全長L:100.66mm
【0068】
図6に示すように、上記4点(SA、SB、SC、SD)のモデルの総伝熱量Qの平均値は、リファレンスモデルと比較して、性能はやや劣っている。具体的には、点SCに示すサンプルにおける総伝熱量Qは、リファレンスモデルと比較して約18%低くなっている。しかしながら、複数の平板のフィンを平行に配置したリファレンスモデルに対して、点SCに示すサンプルでは、材料コストを約30%削減することができた。
【0069】
さらに、上記4点において、幹部に対して枝部が1本であるサンプルSAに対して、枝部が複数延びている3つのサンプルSB、SC、SDは、総伝熱量Qが大幅に向上している。さらに、2つのサンプルSB、SCにおいては、全長Lの増加量に比べて総伝熱量Qが大幅に増加していることが分かる。以上の結果から、pareto最適解は、枝部を左右に広く伸ばして対流が滞らないような形状が好ましいことが分かる。さらに、枝部と幹部の全長Lの調整により、総伝熱量Qを大幅に向上させることが可能であることも分かった。
【0070】
以下に変形例について説明する。
以上の説明では、枝部と幹部の全長Lを目的関数の一つとしていたが、全長Lに代えて、ヒートシンクにおける空気の流量を所定以上、例えばヒートシンクに要求される仕様に応じた流量、とする太さを考慮した上で、放熱要素としての枝部と幹部の材料使用量を目的関数とすることもできる。
【0071】
上記説明では、遺伝的アルゴリズムとして、Non−Dominated Sorting Genetic Algorithm(NSGA−II)を例に挙げたが、これ以外の遺伝的アルゴリズム、例えば、Multi−Objective Genetic Algorithm(MOGA)、Adaptive Range Multi−Objective Genetic Algorithm(ARMOGA)、Strength Pareto Evolutionary Algorithm(SPEA)などを用いることもできる。
【0072】
本発明について上記実施形態を参照しつつ説明したが、本発明は上記実施形態に限定されるものではなく、改良の目的又は本発明の思想の範囲内において改良又は変更が可能である。