(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-86871(P2021-86871A)
(43)【公開日】2021年6月3日
(54)【発明の名称】半導体レーザー装置
(51)【国際特許分類】
H01S 5/022 20210101AFI20210507BHJP
【FI】
H01S5/022
【審査請求】有
【請求項の数】5
【出願形態】OL
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2019-212911(P2019-212911)
(22)【出願日】2019年11月26日
(71)【出願人】
【識別番号】506247435
【氏名又は名称】株式会社エルムテクノロジー
(74)【代理人】
【識別番号】100178331
【弁理士】
【氏名又は名称】津田 宏二
(72)【発明者】
【氏名】栗原 郁夫
【テーマコード(参考)】
5F173
【Fターム(参考)】
5F173MB01
5F173MC01
5F173MD84
5F173ME03
5F173ME22
(57)【要約】 (修正有)
【課題】装置を大きくすることなく半導体レーザーを駆動する駆動回路を内部に一体化して備えた半導体レーザー装置を提供する。
【解決手段】半導体レーザー装置1は、レーザーを出力する出力側発光端及び当該出力側発光端の反対側の面に当該レーザーのモニター用のレーザーを出力するモニター側発光端を有するLDチップ23と、モニター側発光端から出射されたレーザーを受光する受光素子51と、受光素子51が受光したレーザーの強度を基にLDチップ23からのレーザーの出力を制御する駆動回路と、受光素子51及び駆動回路が形成される集積回路50と、を有し、受光素子51は、モニター側発光端から出射されたレーザーが照射される基板上の照射領域の一部領域に位置された受光面にてモニター側発光端から出力されたレーザーの一部を受光する。
【選択図】
図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーを出力する出力側発光端及び当該出力側発光端の反対側の面に当該レーザーのモニター用のレーザーを出力するモニター側発光端を有する端面発光半導体レーザー部と、
前記モニター側発光端から出射されたレーザーを受光する受光素子と、
前記受光素子が受光したレーザーの強度を基に端面発光半導体レーザー部を駆動し当該端面発光半導体レーザー部からのレーザーの出力を制御する駆動回路と、
前記受光素子及び前記駆動回路が形成される基板と、を有し、
前記受光素子は、前記モニター側発光端から出射されたレーザーが照射される前記基板上の照射領域の一部領域に位置された受光面にて前記モニター側発光端から出力されたレーザーの一部を受光する半導体レーザー装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、定電流の基準電流を発生させる基準電流源と、前記基準電流源が発生した基準電流と前記受光素子が受光に応じて出力する電流との差に応じた電圧値が入力されて電圧利得を1以下とした出力をする増幅部と、を有し、
前記端面発光半導体レーザー部は、前記増幅部からの出力電圧に応じた駆動電流によって駆動される請求項1に記載の半導体レーザー装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記増幅部からの出力を当該増幅部の入力に帰還する帰還部において当該増幅部を発振させる処理を行う請求項2に記載の半導体レーザー装置。
【請求項4】
前記受光素子、前記駆動回路、及び外部に接続するためのボンディングパッドが前記基板上に1つの集積回路として構成され、
前記ボンディングパッドは、当該ボンディングパッドに取り付けられるボンディングワイヤが前記モニター側発光端から前記受光素子に向けて出射されたレーザーをさえぎることなく、かつ当該ボンディングパッドにボンディングワイヤを取り付けるボンディング時にボンディング治具が前記基板の周囲の構造物に干渉しない位置に配置される請求項1乃至3の何れか1項に記載の半導体レーザー装置。
【請求項5】
前記受光素子はフォトトランジスタによって構成される請求項1乃至4の何れか1項に記載の半導体レーザー装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体レーザー装置の技術に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体レーザー装置は、半導体レーザーを駆動する駆動回路を外部に別途有することを前提としている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005-150684
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、装置を大きくすることなく半導体レーザーを駆動する駆動回路を内部に一体化して備えた半導体レーザー装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、レーザーを出力する出力側発光端及び当該出力側発光端の反対側の面に当該レーザーのモニター用のレーザーを出力するモニター側発光端を有する端面発光半導体レーザー部と、前記モニター側発光端から出射されたレーザーを受光する受光素子と、前記受光素子が受光したレーザーの強度を基に端面発光半導体レーザー部を駆動し当該端面発光半導体レーザー部からのレーザーの出力を制御する駆動回路と、前記受光素子及び前記駆動回路が形成される基板と、を有し、前記受光素子は、前記モニター側発光端から出射されたレーザーが照射される前記基板上の照射領域の一部領域に位置された受光面にて前記モニター側発光端から出力されたレーザーの一部を受光する半導体レーザー装置である。
【0006】
本発明の第2の態様では、前記駆動回路は、定電流の基準電流を発生させる基準電流源と、前記基準電流源が発生した基準電流と前記受光素子が受光に応じて出力する電流との差に応じた電圧値が入力されて電圧利得を1以下とした出力をする増幅部と、を有し、前記端面発光半導体レーザー部は、前記増幅部からの出力電圧に応じた駆動電流によって駆動されることが好ましい。
【0007】
本発明の第3の態様では、前記駆動回路は、前記増幅部からの出力を当該増幅部の入力に帰還する帰還部において当該増幅部を発振させる処理を行うことが好ましい。
【0008】
本発明の第4の態様では、前記受光素子、前記駆動回路、及び外部に接続するためのボンディングパッドが前記基板上に1つの集積回路として構成され、前記ボンディングパッドは、当該ボンディングパッドに取り付けられるボンディングワイヤが前記モニター側発光端から前記受光素子に向けて出射されたレーザーをさえぎることなく、かつ当該ボンディングパッドにボンディングワイヤを取り付けるボンディング時にボンディング治具が前記基板の周囲の構造物に干渉しない位置に配置されることが好ましい。
【0009】
本発明の第5の態様では、前記受光素子はフォトトランジスタによって構成されることが好ましい。
【発明の効果】
【0010】
本発明の前記第1の態様によれば、半導体レーザー装置は、受光素子の受光面がモニター側発光端から出力されたレーザーの一部だけを受光するために足りる大きさになるため、受光素子が形成される同一基板上への駆動回路の形成を可能にしつつ、駆動回路の大きさを十分に確保できるようになる。このように、半導体レーザー装置は、装置を大きくすることなく半導体レーザーを駆動する駆動回路を内部に一体化して備えることができる。
【0011】
本発明の前記第2の態様によれば、半導体レーザー装置は、電圧利得が1以下であるために増幅部の発振が抑制されるため、外付けの部品点数を抑えることができる。
【0012】
本発明の前記第3の態様によれば、半導体レーザー装置は、半導体レーザーのノイズ低減のための高周波重畳動作と駆動回路の動作を同時に一つの回路で実現できる。
【0013】
本発明の前記第4の態様によれば、半導体レーザー装置は、受光素子を小さくしつつも当該受光素子でのレーザーの受光量を確保することと、ボンディング時にボンディング治具の動作経路を確保することを実現できる。
【0014】
本発明の前記第5の態様によれば、半導体レーザー装置は、受光の強度に応じた受光電流の出力がより大きいフォトトランジスタを用いることで、受光素子を小さくしつつも、大きい受光電流を確保できる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図1】
図1は、半導体レーザー装置の全体の構成例を示す斜視図である。
【
図2】
図2は、キャップを外した状態の半導体レーザー装置の全体の構成例を示す斜視図である。
【
図3】
図3は、集積回路の構成例を示す平面図である。
【
図5】
図5は、半導体レーザー装置の他の構成例を示す図である。
【
図6】
図6は、駆動回路の他の構成例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の実施形態を図面を参照しつつ説明する。
【0017】
本実施形態では、半導体レーザー装置を挙げている。
【0018】
(構成)
図1及び
図2は、本実施形態に係る半導体レーザー装置1の構成例を示す図である。
図1は、半導体レーザー装置1の全体の構成例を示す斜視図であり、
図2は、キャップ30を外した状態の半導体レーザー装置1の全体の構成例を示す斜視図である。
【0019】
図1及び
図2に示すように、半導体レーザー装置1は、ステム10、マウント部20、キャップ30、リード(ピンともいう。)41,42,43,44、集積回路50を有している。
【0020】
ステム10は、略円盤形状をなしている。ステム10は、Fe合金等の金属材料によって形成されている。ステム10の外周面11には、位置決め用の切り欠き部11a,11b,11cが複数形成されている。ステム10の上面12に、キャップ30、マウント部20、及び集積回路50が設けられている。また、ステム10の下面側に、4本のリード41,42,43,44が配置されている。
【0021】
キャップ30は、金属製で略楕円の略円筒形状をなしている。キャップ30は、ステム10上に設けられているマウント部20、集積回路50を覆っている。キャップ30には、上面31の中央部分にレーザー光を透過するガラス板が接合されて形成されたガラス窓32が設けられている。出力側発光端から出射されたレーザー光は、ガラス窓32を通過して外部に出力される。キャップ30は、下端部の外周に設けられたフランジ部33によってステム10の上面12に固定されている。
【0022】
4本のリード41,42,43,44は、ステム10の中心軸を中心とした円上に等間隔に配置されている。第1乃至第3リード41,42,43は、各端部41a,42a,43aがステム10を貫通してステム10の上面12側で露出している。第1乃至第3リード41,42,43は、ガラス材等の絶縁部材45が介在されてステム10を貫通しつつ当該ステム10に取り付けられている。第1乃至第3リード41,42,43の端部41a,42a,43aは、マウント部20の後述の取り付け面21の前方向、及び前方向の両側にそれぞれ位置している。また、第4リード44は、図示しない端部がステム10の下面にロウ材等によって固定されている。これにより、第4リード44は、ステム10に電気的に接続されており、ステム10は、第4リード44を介して接地されている。ステム10の上面12には、この第4リード44の取り付け位置に略対応して、マウント部20が設けられている。
【0023】
マウント部20は、横断面が略扇形状をなし、ステム10の上面12に立設されている。マウント部20は、Cu等の熱伝導性が良好な金属材料によって形成されている。マウント部20は、ロウ材等によってステム10の上面12に接合されている。マウント部20には、ステム10の中心軸側に向いて取り付け面21が形成されている。マウント部20の取り付け面21には、サブマウント部22が設けられている。集積回路50は、ステム10の上面12において、このマウント部20の取り付け面21の前方かつ近傍に設けられている。
【0024】
サブマウント部22は、LDチップ23が搭載される部位である。サブマウント部22におけるステム10の中心軸側に向く面にLDチップ23が半田等によって取り付けられている。サブマウント部22は、LDチップ23の発光時に発生する熱を当該LDチップ23から外部に放散するための放熱板の機能と、LDチップ23を支持するための基板の機能とを兼ねている。サブマウント部22は、例えば、AlN、SiC、CuW等のセラミックで構成されている。サブマウント部22は、ボンディングワイヤ75によって集積回路50と電気的に接続されている。
【0025】
LDチップ23は、端面発光半導体レーザーである。LDチップ23は、出力側発光端及びモニター側発光端を有している。出力側発光端は、ステム10の上面12が向く方向、すなわち、キャップ30のガラス窓32側に向けてレーザー光を出射する。一方、モニター側発光端は、出力側発光端とは反対側、すなわち、ステム10の上面12側に向きレーザー光を出射する。LDチップ23は、モニター側発光端から出射される略楕円錐形状のレーザー光の中心が集積回路50の受光素子(モニター受光素子ともいう。)51の受光面51aの中心と一致するように位置決めされている。LDチップ23は、ボンディングワイヤ71を介してマウント部20に電気的に接続されている。
【0026】
集積回路50は、ステム10の上面12で当該ステム10の中心領域に設けられている。
【0027】
図3は、集積回路50の構成例を示す平面図である。
【0028】
図2及び
図3に示すように、集積回路(基板)50には、受光素子51と駆動回路60とが集積されている。また、集積回路50には、ボンディングパッド52,53,54,55,56が形成されている。
【0029】
受光素子51は、受光量(受光の強さ)に応じた電流(以下、受光電流という。)を出力する。受光素子51は、フォトトランジスタから構成されている。例えば、フォトトランジスタは、受光量に対して、より大きい受光電流を出力する特性を有している。さらに、フォトトランジスタは、フォトダイオードに比べて入射光に対する受光電流の出力の応答速度が遅い特性を有している。受光素子51の受光面51aは、面積が極力小さくなるように形成されている。具体的には、受光素子51は、LDチップ23のモニター側発光端から出射されるレーザー光の一部だけを積極的に受光するように小さく形成されている。これにより、受光素子51は、LDチップ23のモニター側発光端から出射されるレーザー光が照射される集積回路50上の照射領域の一部の領域に位置された受光面51aにて当該レーザー光の一部を受光する。集積回路50の面積は、例えば、0.25平方mm〜1平方mm程度である。
【0030】
ボンディングパッド52,53,54,55,56は、集積回路50を外部に電気的接続をするための部位になる。本例では、ボンディングパッド52,53,54,55,56は、5カ所形成されている。ボンディングパッド52,53,54,55,56には、ボンディングワイヤ72,73,74,75,76が電気的に接続されており、ボンディングワイヤ72,73,74,75,76が外部の構成と電気的に接続されている。本例では、
図2に示すように、各ボンディングパッド52,53,54,55,56は、ボンディングワイヤ72,73,74,75,76を介して、ステム10、第1乃至第3リード41,42,43、サブマウント部22と電気的に接続されている。
【0031】
集積回路50におけるボンディングパッド52,53,54,55,56の位置については、
図3に示すように、ボンディングパッド52,53,54,55,56は、受光素子51及び駆動回路60の外周に略等間隔に形成されている。具体的には、ボンディングパッド52,53,54,55,56は、当該ボンディングパッド52,53,54,55,56に取り付けられるボンディングワイヤ72,73,74,75,76がモニター側発光端から受光素子51に向けて出射されたレーザー光をさえぎることなく、かつ当該ボンディングパッド52,53,54,55,56にボンディングワイヤ72,73,74,75,76を取り付けるボンディング時にボンディング治具が基板の周囲の構造物、例えば、マウント部20に干渉しない位置に配置されている。そのため、ボンディングパッド52,53,54,55,56は、マウント部20からある程度の距離を確保して配置されている。
【0032】
駆動回路60は、LDチップ23の出力を制御するAPC(Auto Power Control)駆動回路である。
【0033】
図4は、駆動回路60の構成例を示す図である。駆動回路60は、基準電流源61、及び増幅回路(増幅器)62を有している。
【0034】
基準電流源61は、基準電源及び基準抵抗を有し、定電流を発生するように構成されている。
【0035】
増幅回路62は、ボルテージフォロア増幅回路であり、すなわち、電圧利得が1以下になっている。この増幅回路62は、基準電流源61からの定電流、及び受光素子51からの電流(受光電流)がそれぞれ入力されている。ここで、基準電流源61からの定電流値に対して受光素子51からの電流値が大きいほど、基準電流源61と受光素子51のカソードとの接続点の電位値は小さくなる。この場合、増幅回路62の出力電圧値も小さくなり、当該増幅回路62が出力するLDチップ23の駆動電流値は小さくなる。一方、基準電流源61からの定電流に対して受光素子51からの電流が小さいほど、基準電流源61と受光素子51のカソードとの接続点の電位値は大きくなる。この場合、増幅回路62の出力電圧値も大きくなり、当該増幅回路62が出力する駆動電流値は大きくなる。
【0036】
駆動回路60は、このように、基準電流源61からの定電流値に対して受光素子51からの電流値が大きくなると、LDチップ23の駆動電流値を小さくし、その逆に、基準電流源61からの定電流値に対して受光素子51からの電流値が小さくなると、LDチップ23の駆動電流値を大きくし、当該駆動電流値が一定になるようにしている。これにより、LDチップ23から出射されるレーザー光の強さが一定に維持される。
【0037】
また、高周波重畳が必要とされる場合、駆動回路60は、増幅回路62からの出力を当該増幅回路62の入力に帰還する帰還部において当該増幅回路62を発振させる処理が可能である。そのための構成として、駆動回路60は、100%負帰還の帰還路に特定周波数において位相利得が発振条件を満たすように回路素子である帰還回路63を挿入し、増幅回路62を発振させている。
【0038】
例えば、帰還回路63は、増幅回路62の帯域幅の3dB減衰周波数と同じ3dB減衰周波数の2段のCR遅延回路である。これにより、3dB減衰周波数近傍において正帰還となり発振条件を満たすことができ、増幅回路62は発振する。これにより、APCの制御ループにおいて、受光素子51の周波数特性により発振高周波が帰還されずレーザー出力の平均値を一定に維持する負帰還動作が実現される。
【0039】
(本実施形態における効果)
(1)半導体レーザー装置1は、受光素子51の受光面(受光部)51aがLDチップ23のモニター側発光端から出力されたレーザー光の一部だけを受光するために足りる大きさのため、従来の受光素子の受光面の面積よりも小さくなる。
【0040】
これにより、本実施形態に係る半導体レーザー装置1は、受光素子51が形成される同一基板上への駆動回路60の形成を可能にしつつ、駆動回路60の大きさを十分に確保できるようになる。このように、半導体レーザー装置1は、装置を大きくすることなく半導体レーザーを駆動する駆動回路60を一体化することができる。
【0041】
さらに、半導体レーザー装置1は、低価格、小形軽量の半導体レーザー装置として提供される。
【0042】
また、受光素子51の受光面51aの面積を小さくすることは、当該受光素子51が出力する受光電流の減少を招く。しかし、半導体レーザー装置1は、駆動回路60が受光素子51と同じ集積回路において形成されて同一基板上において構成されているため、外部ノイズの影響が減りS/N比を確保できる。これにより、LDチップ23の駆動電流値への受光電流の減少の影響に対し担保を確保できる。さらに、半導体レーザー装置1は、増幅回路62によって、受光電流の減少分を補うことができる。
【0043】
(2)半導体レーザー装置1は、電圧利得が1以下であるために増幅部の発振が抑制されるため、外付けの部品点数を抑えることができる。
【0044】
例えば、従来の半導体レーザー装置では、受光素子の受光電流を電流電圧変換回路により電圧変換しその電圧が基準電圧と同じになるように、LDチップの駆動電流を増減させる回路が使用されている。しかし、このような構成では、増幅する回路の発振を防ぐために、モノリシック集積化が困難な大容量のコンデンサが必要となり、外部にそのコンデンサを接続する必要があった。その結果、従来の半導体レーザー装置は、外付けの部品のための外部接続端子が必要となり、コスト高となっていた。
【0045】
これに対して、本実施形態に係る半導体レーザー装置1は、増幅部の発振が抑制されるため、外部のコンデンサ等が不要となり、外付けの部品点数を抑えることができる。
【0046】
(3)半導体レーザー装置1は、増幅部を発振させることで、半導体レーザーのノイズ低減のための高周波重畳動作と駆動回路の動作を同時に一つの回路で実現できる。
【0047】
(4)半導体レーザー装置1は、ボンディングパッド52,53,54,55,56を適切に配置したことで、受光素子を小さくしつつも当該受光素子でのレーザーの受光量を確保することと、ボンディング時にボンディング治具の動作経路を確保することを実現できる。
【0048】
(5)半導体レーザー装置1は、受光素子51として受光強度に対して受光電流の出力がより大きいフォトトランジスタを用いることで、受光素子51を小さくしつつも、大きい受光電流値を確保できる。
【0049】
(6)半導体レーザー装置1は、モニター側発光端から出射される楕円錐形状のレーザー光の中心が受光素子51の受光面51aの中心と一致するように位置決めされて、受光素子51がレーザー光の光束中心付近に配置されている。これにより、半導体レーザー装置1は、レーザー光の光束中心と受光素子51の相対位置がダイボンディングの際の位置誤差によってずれても、当該レーザー光を受光素子51が十分受光できる。
【0050】
なお、前記の実施形態において、増幅回路60は、例えば、増幅部を構成している。
【0051】
(変形例等)
前記の実施形態の他の例として、半導体レーザー装置1は、樹脂モールドにより形成される樹脂モールド型のパッケージの半導体レーザー装置として構成されることもできる。
【0052】
図5は、半導体レーザー装置1の他の構成例を示す図である。
図5に示すように、半導体レーザー装置1は、サブマウント基板上100に、受光素子111と駆動回路112とを一体化した集積回路110が配置されており、その集積回路11上にLDチップ120が配置されている。集積回路110には、受光素子51及び駆動回路60の外周にボンディングパッド131,132,133,134,135が形成されている。半導体レーザー装置1は、適宜、各リード141,142,143等とボンディングパッド131,132,133,134,135等とがボンディングワイヤ151,152,153,154,155によって電気的に接続されている。そして、半導体レーザー装置1において、受光素子111は、LDチップ23のモニター側発光端から出射されるレーザー光の一部だけを積極的に受光するように小さく形成されている。また、半導体レーザー装置1は、サブマウント基板を廃して集積回路110のみの構成とされることもできる。
【0053】
また、前記の実施形態の他の例として、受光素子51がフォトダイオードとされることができる。
【0054】
また、前記の実施形態の他の例として、駆動回路60は、
図6に示すように、高周波重畳を必要としない場合に、帰還回路に周波数依存性を有しない構成とされることもできる。
【0055】
また、本発明の実施形態を開示したが、当業者によっては本発明の範囲を逸脱することなく変更が加えられうることは明白である。すべてのこのような修正及び等価物が次の請求項に含まれることが意図されている。
【符号の説明】
【0056】
1 半導体レーザー装置、10 ステム、20 マウント部、23 LDチップ、41,42,43,44 リード、50 集積回路、51 受光素子、51a 受光面、60 駆動回路、61 基準電流源、62 増幅回路、63 帰還回路
【手続補正書】
【提出日】2020年4月10日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
レーザーを出力する出力側発光端及び当該出力側発光端の反対側の面に当該レーザーのモニター用のレーザーを出力するモニター側発光端を有する端面発光半導体レーザー部と、
前記モニター側発光端から出射されたレーザーを受光する受光素子と、
前記受光素子が受光したレーザーの強度を基に端面発光半導体レーザー部を駆動し当該端面発光半導体レーザー部からのレーザーの出力を制御する駆動回路と、
前記受光素子及び前記駆動回路が形成される基板と、を有し、
前記受光素子は、前記モニター側発光端から出射されたレーザーが照射される前記基板上の照射領域の一部領域だけに位置された受光面にて前記モニター側発光端から出力されたレーザーの一部を受光する半導体レーザー装置。
【請求項2】
前記駆動回路は、定電流の基準電流を発生させる基準電流源と、前記基準電流源が発生した基準電流と前記受光素子が受光に応じて出力する電流との差に応じた電圧値が入力されて電圧利得を1以下とした出力をする増幅部と、を有し、
前記端面発光半導体レーザー部は、前記増幅部からの出力電圧に応じた駆動電流によって駆動される請求項1に記載の半導体レーザー装置。
【請求項3】
前記駆動回路は、前記増幅部からの出力を当該増幅部の入力に帰還する帰還部において当該増幅部を発振させる処理を行う請求項2に記載の半導体レーザー装置。
【請求項4】
前記受光素子、前記駆動回路、及び外部に接続するためのボンディングパッドが前記基板上に1つの集積回路として構成され、
前記ボンディングパッドは、当該ボンディングパッドに取り付けられるボンディングワイヤが前記モニター側発光端から前記受光素子に向けて出射されたレーザーをさえぎることなく、かつ当該ボンディングパッドにボンディングワイヤを取り付けるボンディング時にボンディング治具が前記基板の周囲の構造物に干渉しない位置に配置される請求項1乃至3の何れか1項に記載の半導体レーザー装置。
【請求項5】
前記受光素子はフォトトランジスタによって構成される請求項1乃至4の何れか1項に記載の半導体レーザー装置。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0005
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0005】
前記課題を解決するために、本発明の第1の態様は、レーザーを出力する出力側発光端及び当該出力側発光端の反対側の面に当該レーザーのモニター用のレーザーを出力するモニター側発光端を有する端面発光半導体レーザー部と、前記モニター側発光端から出射されたレーザーを受光する受光素子と、前記受光素子が受光したレーザーの強度を基に端面発光半導体レーザー部を駆動し当該端面発光半導体レーザー部からのレーザーの出力を制御する駆動回路と、前記受光素子及び前記駆動回路が形成される基板と、を有し、前記受光素子は、前記モニター側発光端から出射されたレーザーが照射される前記基板上の照射領域の一部領域
だけに位置された受光面にて前記モニター側発光端から出力されたレーザーの一部を受光する半導体レーザー装置である。