【解決手段】プレス加工装置の一例は、帯状の金属板をその長手方向に沿って間欠的に搬送するように構成された送出機構と、金属板に形成された位置決め孔に対して挿抜可能に構成された位置決めピンとを備えていてもよい。位置決めピンは、位置決めピンの先端が前進した状態である進出位置と、位置決めピンの先端が後退した状態である後退位置との間で変位可能に構成されていてもよい。位置決めピンの先端は、位置決め孔に挿入される前までに進出位置に変位すると共に、位置決め孔から抜け出る前までに後退位置に変位するように構成されていてもよい。
前記位置決めピンの動作を制御することにより、位置決めピンの先端を前記進出位置と前記後退位置との間で変位させるように構成された駆動機構をさらに備える、請求項1〜4のいずれか一項に記載の装置。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0010】
[金属製品の製造装置の構成]
まず、
図1を参照して、金属製品の製造装置100の全体構成について説明する。製造装置100は、例えば、回転子積層鉄心、固定子積層鉄心、半導体パッケージの内部配線として用いられるリードフレーム、燃料電池用のセパレータなどの種々の金属製品1(
図2参照)を、帯状の金属板MSから製造するように構成されている。製造装置100は、アンコイラー110と、送出装置120(搬送装置)と、プレス加工装置130と、コントローラCtr(制御部)とを備える。
【0011】
アンコイラー110は、コイル材111を回転自在に保持するように構成されている。コイル材111は、金属板MSがコイル状(渦巻状)に巻回されたものである。送出装置120は、金属板MSを上下から挟み込む一対のローラ121,122を含む。一対のローラ121,122は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて回転及び停止し、金属板MSをプレス加工装置130に向けて間欠的に順次送り出すように構成されている。
【0012】
プレス加工装置130は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作するように構成されている。プレス加工装置130は、例えば、送出装置120によって送り出される金属板MSを複数のパンチにより順次打ち抜き加工するように構成されていてもよい。
【0013】
コントローラCtrは、例えば、記録媒体(図示せず)に記録されているプログラム又はオペレータからの操作入力等に基づいて、送出装置120及びプレス加工装置130を動作させるための指示信号を生成するように構成されている。コントローラCtrは、送出装置120及びプレス加工装置130に当該指示信号をそれぞれ送信するように構成されている。
【0014】
[プレス加工装置の詳細]
続いて、
図2を参照して、プレス加工装置130の詳細について説明する。プレス加工装置130は、下型140と、上型150と、プレス機160とを含む。下型140は、ベース141と、ダイホルダ142と、ダイプレート143と、複数のダイD1〜D3と、複数のガイドポスト144と、搬送装置145とを含む。
【0015】
ベース141は、例えば床面上に固定されており、プレス加工装置130全体の土台として構成されている。ダイホルダ142は、ベース141上に支持されている。ダイホルダ142には、複数の排出孔C1〜C3が形成されている。複数の排出孔C1〜C3は、ダイホルダ142の内部を鉛直方向に沿って延びていてもよい。複数の排出孔C1〜C3には、金属板MSから打ち抜かれた材料(例えば、打抜部材、廃材等)が排出される。
【0016】
ダイプレート143は、ダイホルダ142上に支持されている。ダイプレート143は、複数のダイD1〜D3をそれぞれ保持するように構成されている。ダイD1〜D3はそれぞれ、ダイプレート143に設けられた保持孔内に配置されている。複数のダイD1〜D3は、金属板MSの搬送方向において、上流側から下流側に向けてこの順に並んでいる。複数のダイD1〜D3にはそれぞれ、上下方向に貫通するダイ孔が設けられている。
【0017】
ダイD1のダイ孔は、排出孔C1と連通しており、後述するパンチP1と共に、金属板MSを打抜加工するための第1の加工ユニットを構成している。ダイD1のダイ孔内にパンチP1が挿抜されることにより、ダイD1のダイ孔の輪郭に沿った形状で金属板MSが打抜加工される。これにより金属板MSを貫通する位置決め孔H(後述の
図4及び
図5を参照)が金属板MSに形成されてもよい。金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C1を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0018】
ダイD2のダイ孔は、排出孔C2と連通しており、後述するパンチP2と共に、金属板MSをプレス加工(例えば、打抜加工、半抜き加工)するための第2の加工ユニットを構成している。ダイD2のダイ孔内にパンチP2が挿抜されることにより、ダイD2のダイ孔の輪郭に沿った形状で金属板MSがプレス加工される。金属板MSから打ち抜かれた金属片は、排出孔C2を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0019】
ダイD3のダイ孔は、排出孔C3と連通しており、後述するパンチP32と共に、金属板MSを打抜加工するための第3の加工ユニットを構成している。ダイD3のダイ孔内にパンチP3が挿抜されることにより、ダイD3のダイ孔の輪郭に沿った形状で金属板MSが打抜加工される。金属板MSからプレス加工によって得られた金属製品1は、排出孔C3を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。
【0020】
複数のガイドポスト144は、ダイホルダ142から上方に向けて直線状に延びている。複数のガイドポスト144は、ガイドブッシュ151a(後述する)と共に、上型150を上下方向に案内するように構成されている。なお、複数のガイドポスト144は、上型150から下方に向けて延びるように上型150に取り付けられていてもよい。
【0021】
搬送装置145は、コントローラCtrからの指示に基づいて動作し、金属板MSからプレス加工によって得られた金属製品1を後続の装置に送り出すように構成されている。搬送装置145の一端は排出孔C3内に位置しており、搬送装置145の他端はプレス加工装置130の外部に位置している。搬送装置145は、例えばベルトコンベアであってもよい。
【0022】
上型150は、パンチホルダ151(ホルダ)と、ストリッパ152と、複数のパンチP1〜P3とを含む。パンチホルダ151は、ダイプレート143と対面するようにダイプレート143の上方に配置されている。パンチホルダ151は、その下面側において複数のパンチP1〜P3及び位置決めピンB1〜B3を保持するように構成されている。
【0023】
パンチホルダ151には、複数のガイドブッシュ151aが設けられている。複数のガイドブッシュ151aはそれぞれ、複数のガイドポスト144に対応するように位置している。ガイドブッシュ151aは、円筒状を呈しており、ガイドポスト144がガイドブッシュ151aの内部空間をスライド可能に構成されている。なお、ガイドポスト144が上型150に取り付けられている場合には、ガイドブッシュ151aが下型140に設けられていてもよい。
【0024】
パンチホルダ151には、複数の貫通孔151bが設けられている。貫通孔151bの内周面には、階段状の段差が形成されている。そのため、貫通孔151bの上部の径は、貫通孔151bの下部の径よりも小さく設定されている。
【0025】
ストリッパ152は、パンチP1〜P3で金属板MSを打ち抜く際に、金属板MSをダイプレート143との間で挟持すると共に、パンチP1〜P3に食いついた金属板MSをパンチP1〜P3から取り除くように構成されている。金属板MSは、ストリッパ152とダイプレート143との間で挟持されることにより、プレス加工等の際の搬送方向における移動(位置ずれ)が規制される。ストリッパ152は、ダイプレート143とパンチホルダ151との間に配置されている。
【0026】
ストリッパ152は、接続部材153を介してパンチホルダ151と接続されている。接続部材153は、長尺状の本体部と、本体部の上端に設けられた頭部とを含む。接続部材153の本体部は、貫通孔151bの下部に挿通されており、貫通孔151b内を上下動可能である。接続部材153の本体部の下端は、ストリッパ152に固定されている。接続部材153の本体部の周囲には、パンチホルダ151とストリッパ152との間に位置するように、例えば圧縮コイルばね等の付勢部材154が取り付けられていてもよい。この場合、ストリッパ152は、付勢部材154によって、パンチホルダ151から離間する方向に付勢される。
【0027】
接続部材153の頭部は、貫通孔151bの上部に配置されている。接続部材153の頭部の外形は、上方から見たときに、接続部材153の本体部の外形よりも大きく設定されている。そのため、接続部材153の頭部は、貫通孔151bの上部を上下動可能であるが、貫通孔151bの段差がストッパとして機能して、貫通孔151bの下部を通過できないようになっている。そのため、ストリッパ152は、パンチホルダ151に対して相対的に上下移動可能となるように、接続部材153によってパンチホルダ151に対して吊り下げ保持されている。
【0028】
ストリッパ152には、パンチP1〜P3及び位置決めピンB1〜B3に対応する位置にそれぞれ、貫通孔が設けられている。各貫通孔は、鉛直方向に沿って延びている。各貫通孔は、上方から見たときに、対応するダイ孔D13〜D63と連通する。パンチP1〜P3の下部及び位置決めピンB1〜B3の下端部はそれぞれ、対応する貫通孔内をスライド可能である。
【0029】
パンチP1〜P3は、プレス加工装置130の上流側から下流側に向けてこの順に並ぶように配置されている。パンチP1の下端部は、ダイD1のダイ孔に対応する形状を呈している。パンチP2の下端部は、ダイD2のダイ孔に対応する形状を呈している。パンチP3の下端部は、ダイD3のダイ孔に対応する形状を呈している。
【0030】
位置決めピンB1〜B3は、プレス加工装置130の上流側から下流側に向けてこの順に並ぶように配置されている。位置決めピンB1は、パンチP1とパンチP2との間に位置している。位置決めピンB2は、パンチP2とパンチP3との間に位置している。位置決めピンB3は、パンチP3の下流側に位置している。
【0031】
パンチP1及び位置決めピンB1の離間距離と、位置決めピンB1,B2の離間距離と、位置決めピンB2,B3の離間距離とは、略同一となるように設定されていてもよい。位置決めピンB1〜B3の下端部はそれぞれ、ダイプレート143に到達したときに、ダイプレート143に設けられた挿通孔E1〜E3内をスライド可能である。詳しくは後述するが、位置決めピンB1〜B3は、駆動機構155によって上下方向に変位可能に構成されている。
【0032】
プレス機160は、上型150を上下動させるように構成されている。プレス機160は、クランクシャフト161と、固定部材162と、連結部材163と、駆動機構164とを含む。クランクシャフト161は、主軸(クランクジャーナル)と、主軸から偏心して位置する偏心軸(クランクピン)と、これらを接続する接続部材(クランクアーム)とを含む。
【0033】
固定部材162は、固定壁等に固定されており、クランクシャフト161の主軸を回転可能に保持するように構成されている。連結部材163は、クランクシャフト161とパンチホルダ151とを連結している。連結部材163の一端部には、クランクシャフト161の偏心軸が回転可能に接続されている。連結部材163の他端部には、回転軸(図示せず)を介して、パンチホルダ151が接続されている。
【0034】
駆動機構164は、例えば、フライホイールやギアボックスなど(図示せず)を介して、クランクシャフト161の主軸に接続されている。駆動機構164は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて動作し、クランクシャフト161の主軸を回転させる。クランクシャフト161の主軸が回転すると、偏心軸が主軸周りを円運動する。これに伴い、パンチホルダ151が上死点と下死点との間を上下に往復運動する。
【0035】
[位置決めピン及び駆動機構の詳細]
ここで、
図2及び
図3を参照して、位置決めピンB1〜B3及び駆動機構155の詳細について説明する。位置決めピンB1〜B3の構造はいずれも同じであるので、以下では位置決めピンB1の構造について説明し、他の位置決めピンB2,B3の説明は省略する。
【0036】
図3に例示されるように、位置決めピンB1は、管状部材10と、軸部材12と、付勢部材14とを含む。管状部材10は、上下方向において直線状に延びる主部10aと、主部10aの先端に設けられた先端部10bとを含む。管状部材10の先端部(下端部)10bは、先端(下方)に向かうにつれて窄まるテーパ形状を呈している。管状部材10の内周面には、階段状の段差が形成されている。そのため、管状部材10の先端側の内径は、管状部材10の基端側の内径よりも小さく設定されている。
【0037】
軸部材12は、管状部材10内をスライド可能に管状部材10内に配置されている。軸部材12は、上下方向において直線状に延びる主部12aと、主部12aの先端に設けられた先端部12bと、主部12aの基端に設けられた頭部12cとを含む。軸部材12の先端部(下端部)12bは、管状部材10の先端部から飛び出た位置(進出位置)と、管状部材10内に収容された位置(後退位置)との間で変位可能に構成されている。一方、軸部材12の頭部(上端部)12cは、軸部材12の先端部12bが進出位置にある場合に管状部材10の内部に位置し、軸部材12の先端部12bが後退位置にある場合に管状部材10の外部に位置するように構成されている。
【0038】
軸部材12の先端部12bは、先端に向かうにつれて窄まるテーパ形状を呈している。軸部材12の先端部12bが進出位置にある場合、
図3に例示されるように、軸部材12の先端部12bのテーパ面と管状部材10の先端部10bのテーパ面とが連続的に段差なく繋がるようにこれらのテーパ角が設定されていてもよい。
【0039】
付勢部材14は、管状部材10の内周面の段差と、軸部材12の頭部12cとの間に位置するように配置されている。付勢部材14は、軸部材12の頭部12cが管状部材10の先端部12bから離間する方向に頭部12cを付勢するように構成されている。
【0040】
駆動機構155は、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、位置決めピンB1〜B3の先端(下端)が相対的に前進した状態である進出位置と、位置決めピンB1〜B3の先端が相対的に後退した状態である後退位置との間で変位させるように構成されている。
【0041】
駆動機構155は、
図2に例示されるように、位置決めピンB1〜B3の全てを同時に変位させるように構成されていてもよい。駆動機構155は、位置決めピンB1〜B3の上方に配置されていてもよい。駆動機構155は、パンチホルダ151に設けられた収容空間151c内に配置されていてもよい。
【0042】
駆動機構155は、例えばカム機構であってもよい。この場合、
図3に例示されるように、駆動機構155は、カム部材155aと、アクチュエータ155bとを含んでいてもよい。カム部材155aは、水平方向に沿ってスライド可能に構成されている。カム部材155aの下面側には、上方に向けて窪む複数の凹部155cが設けられている。複数の凹部155cはそれぞれ、位置決めピンB1〜B3に対応するように配置されており、軸部材12の頭部12cを収容可能に構成されている。
【0043】
アクチュエータ155bは、コントローラCtrからの指示信号に基づいて、カム部材155aを水平方向において駆動させるように構成されている。アクチュエータ155bは、例えば、軸部材12の頭部12cが凹部155cの外側に位置し且つカム部材155aの下面と当接する第1の位置と、軸部材12の頭部12cが凹部155c内に収容される第2の位置との間で、カム部材155aを移動させるように構成されていてもよい。アクチュエータ155bは、パンチホルダ151内ではなく、上型150の外側に配置されていてもよい。
【0044】
[金属製品の製造方法]
続いて、
図2、
図4及び
図5を参照して、金属製品1の製造方法について説明する。まず、
図2に示されるように、金属板MSが送出装置120によって間欠的にプレス加工装置130に送り出され、金属板MSの所定部位が第1の加工ユニットに到達すると、プレス機160が動作して、上型150を下型140に向けて下方に押し出す。ストリッパ152が金属板MSに到達して、ストリッパ152とダイプレート143とで金属板MSが挟持された後も、プレス機160が上型150を下方に向けて押し出す。
【0045】
このとき、ストリッパ152は移動しないが、パンチホルダ151及びパンチP1〜P3は引き続き降下する。そのため、パンチP1〜P3の先端部はそれぞれ、ストリッパ152の各貫通孔内を下方に移動し、さらにダイD1〜D3のダイ孔に到達する。この過程で、パンチP1が金属板MSをダイD1のダイ孔に沿って打ち抜く。これにより、位置決め孔Hが金属板MSに形成される(
図4及び
図5参照)。打ち抜かれた廃材は、排出孔C1から排出される。その後、プレス機160が動作して、上型150を上昇させる。
【0046】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位が第2の加工ユニットに到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、位置決めピンB1,B2によって金属板MSが位置決めされた後に、パンチP2による金属板MSのプレス加工が行われる。打ち抜かれた廃材は、排出孔C2から排出される。
【0047】
ここで、パンチホルダ151が上死点から下死点へと降下する際に、コントローラCtrが駆動機構155を制御して、カム部材155aを第1の位置へと変位させている(
図4参照)。これにより、軸部材12の頭部12cが管状部材10内に位置すると共に、軸部材12の先端部12bが進出位置に変位する。そのため、位置決めピンB1,B2はそれぞれ、軸部材12の先端部12bが進出位置にある状態で、対応する位置決め孔H及び挿通孔E1,E2に挿入され、その結果、位置決め孔Hと係合される(同図参照)。すなわち、パンチホルダ151が上死点から下死点へと降下する際において、軸部材12の先端部12bが進出位置に変位する前は、位置決めピンB1が位置決め孔Hと係合されない。
【0048】
一方、パンチホルダ151が下死点から上死点へと上昇する際に、コントローラCtrが駆動機構155を制御して、カム部材155aを第2の位置へと変位させている(
図4参照)。これにより、軸部材12の頭部12cが、付勢部材14によって上方に付勢され、凹部153c内に収容されると共に、軸部材12の先端部12bが後退位置に変位する。位置決めピンB1は、軸部材12の先端部12bが後退位置にある状態で位置決め孔Hに挿入される。そのため、軸部材12の先端部12bが進出位置にある状態と比較して、位置決めピンB1がより早いタイミングで位置決め孔Hから完全に抜け出る。したがって、送出装置120は、より早いタイミングで金属板MSを送り出す。軸部材12の先端部12bが後退位置に変位するタイミングは、位置決めピンB1が位置決め孔Hから抜け出る前で、且つ、ストリッパ152とダイプレート143とで金属板MSが挟持された後であってもよい。
【0049】
次に、金属板MSが送出装置120によって間欠的に送り出され、金属板MSの所定部位が第3の加工ユニットに到達すると、上記と同様に、プレス機160によって上型150が上下動して、位置決めピンB1〜B3によって金属板MSが位置決めされた後に、パンチP3による金属板MSの打抜加工が行われる。こうして、金属板MSからプレス加工によって得られた金属製品1は、排出孔C3を通じてプレス加工装置130の外部に排出される。このときも、上記と同様に、位置決めピンB1〜B3における軸部材12の先端部12bが、進出位置と後退位置との間で変位する。
【0050】
[作用]
以上の例によれば、軸部材12の先端部12bは、位置決め孔Hに挿入される前までに進出位置に変位しているので、軸部材12の先端部12bが後退位置にある場合よりも早いタイミングで位置決めピンB1〜B3が位置決め孔Hに挿入される。そのため、軸部材12の先端部12bが位置決め孔Hにスムーズに入りやすくなっており、位置決めピンB1〜B3による金属板MSの位置決めが適切に行われる。一方、軸部材12の先端部12bは、位置決め孔Hから抜け出る前までに後退位置に変位しているので、軸部材12の先端部12bが進出位置にある場合よりも早いタイミングで位置決めピンB1〜B3が位置決め孔Hから完全に抜け出る。そのため、位置決めピンB1〜B3による金属板MSの位置決めが比較的に早く解除されるので、金属板MSの搬送開始のタイミングを早めることができる。したがって、金属板MSの加工時には金属板MSを適切に位置決めしつつ、金属板MSの搬送時には金属板MSの加工速度をより高速化することが可能となる。その結果、金属製品1の生産性の向上を図ることが可能となる。
【0051】
以上の例によれば、駆動機構155がカム部材155aを第1の位置と第2の位置との間で変位させることにより、軸部材12の先端部12bを進出位置と後退位置との間で変位させている。そのため、駆動機構155に基づいて、軸部材12の先端部12bの位置をより適切なタイミングで自動的に制御することが可能となる。
【0052】
ところで、ストリッパ152とダイプレート143との間で金属板MSが挟持された後は、位置決めピンB1〜B3による金属板MSの位置決めが不要となる。以上の例によれば、軸部材12の先端部12bは、ストリッパ152とダイプレート143との間で金属板MSが挟持された後に後退位置に変位しうる。この場合、位置決めピンB1〜B3による金属板MSの位置決めをより早く解除することができる。そのため、金属板MSの加工速度をいっそう高速化することが可能となる。
【0053】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0054】
(1)駆動機構155は、位置決めピンB1〜B3を個々に独立して変位させるように構成されていてもよい。例えば、プレス加工装置130が、位置決めピンと同数の複数の駆動機構155を含んでおり、複数の駆動機構155がそれぞれ、対応する位置決めピンを駆動するように構成されていてもよい。この場合、個々の駆動機構155を小型化・軽量化することができる。そのため、駆動機構155によって駆動される位置決めピンの応答性を高めることが可能となる。
【0055】
(2)軸部材12の先端部12bのテーパ角が、管状部材10の先端部10bのテーパ角と異なっていてもよい。例えば、
図6に示されるように、軸部材12の先端部12bが、管状部材10の先端部10bよりも尖っていてもよい。この場合、位置決めピンの先端が位置決め孔によりスムーズに入りやすくなる。
【0056】
(3)位置決めピンB1〜B3の主部10aが位置決め孔Hに挿入されると、金属板MSは、位置決めピンB1〜B3によって位置決めされる。そのため、ストリッパ152の状態によらずに、位置決めピンB1〜B3の主部10aが位置決め孔Hに挿入された後に、軸部材12の先端部12bが後退位置に変位してもよい。この場合も、位置決めピンB1〜B3による金属板MSの位置決めをより早く解除することができる。そのため、金属板MSの加工速度をいっそう高速化することが可能となる。
【0057】
(4)軸部材12の先端部12bが進出位置にある場合、軸部材12の先端部12bと管状部材10の先端部10bとの間に段差があってもよい。この場合、軸部材12の先端部12bのテーパ面が完全に管状部材10の先端部10bから露出していてもよい。
【0058】
(5)管状部材10が、他の管状部材の内側に配置されていてもよい。すなわち、位置決めピンB1〜B3は、多重管構造を呈していてもよい。この場合、位置決めピンB1〜B3の先端部12bの伸縮量が増えるので、位置決めピンB1〜B3による金属板MSの位置決めがより早く解除される。そのため、金属板MSの搬送時には金属板MSの加工速度をさらに高速化することが可能となる。
【0059】
(6)
図7に例示されるように、駆動機構155は、位置決めピンB1〜B3の全体をパンチホルダ151に対して進退させるように構成されていてもよい。この場合、位置決めピンB1〜B3は、管状部材10及び付勢部材14を含んでおらず、軸部材12によって構成されていてもよい。軸部材12の頭部12cは、パンチホルダ151に設けられた収容空間151c内に配置されていてもよい。この場合、位置決めピンの部品点数が減るので、プレス加工装置130の構造が簡略化される。そのため、プレス加工装置130の低コスト化を図ることが可能となる。
【0060】
(7)多重管構造の位置決めピンが、駆動機構によって全体的に変位されるように構成されていると共に、内部の軸部材が他の駆動機構によって変位されるように構成されていてもよい。この場合、位置決めピンの先端のストローク量をより大きくすることが可能となる。
【0061】
(8)位置決めピンB1〜B3は、上型150に設けられていてもよい。下型140に設けられていてもよいし、上型150及び下型140の双方に設けられていてもよい。
【0062】
(9)アクチュエータ155bは、電磁ソレノイド、リニアガイド、ボールネジなどであってもよい。あるいは、プレス加工装置130は、アクチュエータ155bに代えて、上型150の上下動に連動して機械的に位置決めピンB1〜B3の位置を変位させる機構を含んでいてもよい。
【0063】
[他の例]
例1.プレス加工装置(130)の一例は、帯状の金属板(MS)をその長手方向に沿って間欠的に搬送するように構成された送出機構(120)と、金属板(MS)に形成された位置決め孔(H)に対して挿抜可能に構成された位置決めピンと(B1〜B3)を備えていてもよい。位置決めピン(B1〜B3)は、位置決めピン(B1〜B3)の先端(12b)が前進した状態である進出位置と、位置決めピン(B1〜B3)の先端(12b)が後退した状態である後退位置との間で変位可能に構成されていてもよい。位置決めピン(B1〜B3)の先端(12b)は、位置決め孔(H)に挿入される前までに進出位置に変位すると共に、位置決め孔(H)から抜け出る前までに後退位置に変位するように構成されていてもよい。この場合、位置決めピンの先端は、位置決め孔に挿入される前までに進出位置に変位しているので、位置決めピンの先端が後退位置にある場合よりも早いタイミングで位置決めピンが位置決め孔に挿入される。そのため、位置決めピンの先端が位置決め孔にスムーズに入りやすくなっており、位置決めピンによる金属板の位置決めが適切に行われる。一方、位置決めピンの先端は、位置決め孔から抜け出る前までに後退位置に変位しているので、位置決めピンの先端が進出位置にある場合よりも早いタイミングで位置決めピンが位置決め孔から抜け出る。そのため、位置決めピンによる金属板の位置決めが比較的に早く解除されるので、金属板の搬送開始のタイミングを早めることができる。したがって、金属板の加工時には金属板を適切に位置決めしつつ、金属板の搬送時には金属板の加工速度をより高速化することが可能となる。その結果、金属製品の生産性の向上を図ることが可能となる。
【0064】
例2.例1の装置(130)は、金型(143)との間で金属板(MS)を挟持して金属板(MS)の移動を規制するように構成されたストリッパ(152)をさらに備えていてもよい。位置決めピンの先端は、ストリッパと金型との間で金属板が挟持された後に後退位置に変位するように構成されていてもよい。ストリッパと金型との間で金属板が挟持された後は、位置決めピンによる金属板の位置決めが不要となる。そのため、このタイミングで位置決めピンの先端が後退位置に変位することで、位置決めピンによる金属板の位置決めがより早く解除される。したがって、金属板の加工速度をいっそう高速化することが可能となる。
【0065】
例3.例1又は例2の装置(130)において、位置決めピン(B1〜B3)は、管状部材(10)と、管状部材(10)内をスライドすることで位置決めピン(B1〜B3)の先端(12b)が進出位置と後退位置との間で変位するように構成された軸部材(12)とを含んでいてもよい。
【0066】
例4.例1〜例3のいずれかの装置(130)は、位置決めピン(B1〜B3)を保持するように構成されたホルダ(151)をさらに備え、位置決めピン(B1〜B3)の全体がホルダ(151)に対して進退することにより、位置決めピン(B1〜B3)の先端(12b)が進出位置と後退位置との間で変位するように構成されていてもよい。
【0067】
例5.例1〜例4のいずれかの装置(130)は、位置決めピン(B1〜B3)の動作を制御することにより、位置決めピン(B1〜B3)の先端(12b)を進出位置と後退位置との間で変位させるように構成された駆動機構(155)をさらに備えていてもよい。この場合、駆動機構に基づいて、位置決めピンの先端位置をより適切なタイミングで自動的に制御することが可能となる。
【0068】
例6.金属製品(1)の製造方法の一例は、帯状の金属板(MS)をその長手方向に沿って間欠的に搬送しつつプレス加工することを含んでいてもよい。当該方法の一例は、金属板(MS)に位置決め孔(H)を形成することと、位置決めピン(B1〜B3)の先端(12b)が前進した進出位置に位置決めピン(B1〜B3)が変位している状態で、位置決めピン(B1〜B3)を位置決め孔(H)に係合させることとをさらに含んでいてもよい。また、当該方法の一例は、位置決めピン(B1〜B3)が位置決め孔(H)に係合されている状態で、金属板(MS)をプレス加工することと、位置決めピン(B1〜B3)の先端(12b)が後退した後退位置へと位置決めピン(B1〜B3)が変位している状態で、位置決めピン(B1〜B3)を位置決め孔(H)から抜き出すこととを含んでいてもよい。この場合、例1と同様の作用効果が得られる。