特開2021-88178(P2021-88178A)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特開2021088178-複合材料 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-88178(P2021-88178A)
(43)【公開日】2021年6月10日
(54)【発明の名称】複合材料
(51)【国際特許分類】
   B32B 27/22 20060101AFI20210514BHJP
   B32B 27/34 20060101ALI20210514BHJP
   B32B 27/20 20060101ALI20210514BHJP
   B29C 70/06 20060101ALI20210514BHJP
   B29C 70/42 20060101ALI20210514BHJP
   B29C 45/13 20060101ALI20210514BHJP
   B29K 101/12 20060101ALN20210514BHJP
   B29K 105/12 20060101ALN20210514BHJP
【FI】
   B32B27/22
   B32B27/34
   B32B27/20 Z
   B29C70/06
   B29C70/42
   B29C45/13
   B29K101:12
   B29K105:12
【審査請求】未請求
【請求項の数】18
【出願形態】OL
【外国語出願】
【全頁数】34
(21)【出願番号】特願2020-181873(P2020-181873)
(22)【出願日】2020年10月29日
(31)【優先権主張番号】01374/19
(32)【優先日】2019年10月30日
(33)【優先権主張国】CH
(71)【出願人】
【識別番号】520424630
【氏名又は名称】エムス−ケミー アーゲー
【氏名又は名称原語表記】EMS−Chemie AG
(74)【代理人】
【識別番号】100133503
【弁理士】
【氏名又は名称】関口 一哉
(72)【発明者】
【氏名】エティンネ エプリ
(72)【発明者】
【氏名】ボート ホフマン
【テーマコード(参考)】
4F100
4F205
4F206
【Fターム(参考)】
4F100AA03A
4F100AA08A
4F100AA13A
4F100AA14A
4F100AA19A
4F100AA21A
4F100AA22A
4F100AA23A
4F100AA25A
4F100AB01A
4F100AB31A
4F100AC05A
4F100AD00A
4F100AD11A
4F100AG00A
4F100AK04B
4F100AK07B
4F100AK12B
4F100AK29B
4F100AK47A
4F100AK48A
4F100AK64B
4F100AK65B
4F100AK68B
4F100AK71B
4F100AL02B
4F100AL04B
4F100AL07B
4F100BA02
4F100BA10A
4F100CA04B
4F100CA05A
4F100CA06A
4F100CA07A
4F100CA17A
4F100CA19A
4F100CA23A
4F100CA23B
4F100DG03A
4F100EH36
4F100GB32
4F100GB41
4F100JA04
4F100JA05
4F100JA06
4F100JA12A
4F100JB16A
4F100JB16B
4F100JG01A
4F100JK02
4F100JK06
4F100JK07
4F100JK08
4F100JK10
4F100YY00A
4F100YY00B
4F205AA03
4F205AA29
4F205AB06
4F205AB07
4F205AB25
4F205AC01
4F205AD16
4F205HA12
4F205HA27
4F205HA34
4F205HA36
4F205HB01
4F205HC16
4F205HF01
4F206AA03
4F206AA29
4F206AB06
4F206AB07
4F206AB08
4F206AB11
4F206AB16
4F206AB25
4F206JA07
4F206JB22
4F206JN12
4F206JQ81
(57)【要約】      (修正有)
【課題】優れた密着強度を有する熱可塑性複合材料を提供する。
【解決手段】直接隣接し堅固に接着する:(I)少なくとも1種のポリアミド(A)、ならびに任意で充填剤および補強材(C)、および添加剤(D)を含む、熱可塑性成形材料FM−1から形成される形材と、(II)少なくとも1種のオレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体(E)、ならびに任意で充填剤および補強剤(F)、可塑剤(G)、添加剤(H)を含む、熱可塑性成形材料から形成される形材とを含み、成形材料FM−1または成形材料FM−2が、0.1から5.0重量%のポリエチレンイミン(B)またはその共重合体もしくは誘導体を含む、複合材、ならびにこのような複合材を作製するための方法。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
直接隣接し堅固に接着する、
(I)少なくとも1種のポリアミド(A)、ならびに任意で充填剤および補強材(C)および添加剤(D)を含む、熱可塑性成形材料FM−1から形成される形材と、
(II)少なくとも1種のオレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体(E)、ならびに任意で充填剤および補強材(F)、可塑剤(G)、添加剤(H)を含む、熱可塑性成形材料FM−2から形成される形材と
を含み、
前記成形材料FM−1または前記成形材料FM−2が、0.1から5.0重量%のポリエチレンイミン(B)またはその共重合体もしくは誘導体を含む、複合材。
【請求項2】
前記熱可塑性成形材料FM−1が次の成分:
(A)30〜99.9重量パーセントの少なくとも1種のポリアミド、
(B)0.1〜5.0重量パーセントのポリエチレンイミンまたはその共重合体もしくは誘導体、
(C)0〜60重量パーセントの充填剤および/または補強材、
(D)0〜5.0重量パーセントの、(A)〜(C)以外の添加剤
を含み、
(A)〜(D)の合計が100重量パーセントの前記熱可塑性成形材料FM−1となることと、
前記熱可塑性成形材料FM−2が次の成分:
(E)45〜100重量パーセントの少なくとも1種のオレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体、
(F)0〜15重量パーセントの充填剤および/または補強材、
(G)0〜35重量%の可塑剤、
(H)0〜5.0重量%の、(E)、(F)、および(G)以外の添加剤
を含み、
(E)〜(H)の合計が100重量パーセントの前記熱可塑性成形材料FM−2となることと
を特徴とする、請求項1に記載の複合材。
【請求項3】
少なくとも1種の前記ポリアミド(A)が、前記成形材料FM−1の全重量に対して、31〜79.5重量パーセントの割合で、好ましくは40〜74重量パーセントの割合で存在すること、
ならびに/または
少なくとも1種の前記オレフィンおよび/もしくはビニル芳香族重合体(E)が、前記成形材料FM−2の全重量に対して、55〜94.9重量パーセントの割合で、特に好ましくは65〜89.8重量パーセントの割合で存在することと
を特徴とする、請求項1または2のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項4】
前記熱可塑性成形材料FM−1が次の成分:
(A)35〜100重量パーセントの少なくとも1種のポリアミド、
(C)0〜60重量パーセントの充填剤および/または補強材、
(D)0〜5.0重量%の、(A)および(C)以外の添加剤
を含み、
(A)、(C)、および(D)の合計が100重量パーセントの前記熱可塑性ポリアミド成形材料FM−1となることと、
前記熱可塑性成形材料FM−2が次の成分:
(E)40〜99.9重量パーセントの少なくとも1種のオレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体、
(B)0.1〜5.0重量パーセントのポリエチレンイミンまたはその共重合体もしくは誘導体、
(F)0〜15重量パーセントの充填剤および/または補強材、
(G)0〜35重量%の可塑剤、
(H)0〜5.0重量パーセントの、(E)、(F)、(G)、および(B)以外の添加剤
を含み、
(B)および(E)〜(H)の合計が100重量パーセントの前記熱可塑性成形材料FM−2となることと
を特徴とする、請求項1に記載の複合材。
【請求項5】
少なくとも1種の前記ポリアミド(A)が、前記成形材料FM−1の全重量に対して、35〜80重量パーセントの割合で、好ましくは43〜74.8重量パーセントの割合で存在すること、
ならびに/または
少なくとも1種の前記オレフィンおよび/もしくはビニル芳香族重合体(E)が、前記成形材料FM−2の全重量に対して、51〜94.4重量パーセントの割合で、特に好ましくは62〜89重量パーセントの割合で存在することと
を特徴とする、請求項4に記載の複合材。
【請求項6】
前記ポリエチレンイミン(B)が、前記成形材料FM−1またはFM−2の全重量に対して、0.5〜4.0重量パーセントの割合で、好ましくは0.8〜3.0重量パーセントの割合で存在することを特徴とする、請求項1〜5のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項7】
前記成形材料FM−1の少なくとも1種の前記ポリアミド(A)が、
46、56、66、66/6、69、610、612、614、616、618、810、1010、1012、1014、1016、1212、11、12、6/12、66/6/610からであって、好ましくは66、612、614、および616からなる群からの半結晶性非環式脂肪族ポリアミド類(A1)、
ならびに/または
6T/6I、6T/66、6T/6I/66、6T/610、6T/612、6T/614、6T/616、9T、9MT、10T、12T、10T/6T、11/10T、12/10T、11/9T、12/9T、10T/1010、10T/612からなる群からの半結晶性半芳香族ポリアミド類(A2)、
ならびに/または
MACM12/PACM12、MACM14/PACM14、MACM16/PACM16、MACM18/PACM18、6I/6T/MACMI/MACMT/12、6I/MACMI/MACMT、6I/PACMI/PACMT、6I/6T/MACMI、6I/6T/612/MACMI/MACMT/MACM12、MACMI/MACMT/12、6/IPDT、6I/6T/614/MACMI/MACMT/MACM14、6I/6T/616/MACMI/MACMT/MACM16、MACMI/MACM36、12/PACMI、12/MACMT、6I/PACMT、MACM10、MACM12、MACM14、MACM16、MACM18、MACMI/12、PACM10、PACM12、MACM14、PACM16、PACM18、PACMI/12、TMDC10、TMDC12、TMDC16、TMDC18、MACMT/MACMI/12、PACMT/PACMI/12からなる群からの脂環式ポリアミド類(A3)、
ならびに/または
5I、6I、6/6I、MXDI、MXDI/6I、MXD6/MXDI、5T/5I、6T/6I、10T/10I、3−6T(3−6=2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン)、もしくはその混合物からなる群であって、前記5T/5I、6T/6I、もしくは10T/10I系が、50モル%未満の割合の5T、6T、もしくは10Tユニットを有し、5T:5I、6T:6I、もしくは10T/10Iの組成範囲が、各対をモル%で明言すると、20:80から45:55、特に25:75から40:60であることが好ましい群からの非晶性半芳香族ポリアミド類(A4)
として選択されることを特徴とする、請求項1〜6のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項8】
前記成形材料FM−1の少なくとも1種の前記ポリアミド(A)が、次の成分:
20〜100重量パーセント、好ましくは40〜80重量パーセントの少なくとも1種の半結晶性非環式脂肪族ポリアミド(A1)および/もしくは少なくとも1種の半芳香族半結晶性ポリアミド(A2)、
0〜80重量パーセント、好ましくは20〜60重量パーセントの少なくとも1種の脂環式ポリアミド(A3)および/もしくは非晶性半芳香族ポリアミド(A4)
であって、
成分(A1)から(A4)の重量パーセントの合計が100重量パーセントの成分(A)となる成分、
または
20〜80重量パーセント、好ましくは25〜75重量パーセントの、PA66、PA610、PA612、PA614、およびPA616からなる群から選択される少なくとも1種の半結晶性非環式脂肪族ポリアミド(A1)、
20〜80重量パーセント、好ましくは25〜75重量パーセントの、5T/5I、6T/6I、および10T/10Iからなる群から選択される少なくとも1種の非晶性半芳香族ポリアミド(A4)
であって、
成分(A1)と(A4)との重量パーセントの合計が100重量パーセントの成分(A)となる成分
を含む、または前記成分から構成されることを特徴とする、請求項1〜7のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項9】
前記成形材料FM−2が、成分(E)として、それぞれが(E)の全重量に対して、好ましくは少なくとも50重量パーセント、特に少なくとも70重量パーセントの少なくとも1種のビニル芳香族重合体を含み、任意で少なくとも1種のポリオレフィンを含むことを特徴とする、請求項1〜8のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項10】
前記成形材料FM−2の少なくとも1種の前記オレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体(E)が、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SSBS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン(PB)、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−メチルヘキサジエン共重合体、プロピレン−メチルヘキサジエン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−メチルヘキサジエン共重合体、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元重合体、およびこれら重合体材料の混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1〜9のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項11】
前記成形材料FM−2の少なくとも1種の前記オレフィンおよび/もしくはビニル芳香族重合体(E)が、カルボン酸またはカルボン酸無水物基でグラフトされていること、
ならびに/または
少なくとも1種の前記オレフィンおよび/もしくはビニル芳香族重合体(E)が、アクリル酸、メタクリル酸、もしくは無水マレイン酸でグラフトされていること、
ならびに/または
グラフト重合度が、前記グラフト重合体(E)に対して、0.1から4.0重量パーセント、好ましくは0.4から2.5重量パーセント、特に好ましくは0.5から2.0重量パーセントであること
を特徴とする、請求項1〜10のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項12】
成分(B)の前記ポリエチレンイミンが、第一級対第二級アミンの比が1:2〜2:1の範囲、好ましくは1.2:1〜1:1.2の範囲、および/もしくは第一級対第三級アミンの比が3:1〜1:1の範囲、好ましくは2:1〜1.4:1の範囲、および/もしくは第二級対第三級アミンの比が3:1〜1:1の範囲、好ましくは2:1〜1.2:1の範囲を有することが好ましい、分枝状ポリエチレンイミンであること、
ならびに/または
成分(B)の前記ポリエチレンイミンが、数平均モル質量Mnが500〜50,000g/molの範囲、好ましくは1000〜2500g/molの範囲である分枝状ポリエチレンイミンであること、
ならびに/または成分(B)の前記ポリエチレンイミンが、第一級アミノ基の量が5000〜20,000μeq/gの範囲、好ましくは7,000〜12,000μeq/gの範囲である、分枝状ポリエチレンイミンであること、
ならびに/または
成分(B)の前記ポリエチレンイミンが、含水率が4重量パーセント未満、好ましくは3重量パーセント未満、特に好ましくは2重量パーセント未満である、分枝状ポリエチレンイミンであること
を特徴とする、請求項1〜11のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項13】
前記成形材料FM−1が、前記成分(C)の前記充填剤および前記補強材を20〜60重量パーセントの範囲、好ましくは25〜55重量パーセントの範囲の割合で含むこと、
ならびに/または
成分(F)の前記充填剤および前記補強材を0〜10重量パーセントの範囲の割合で含む前記成形材料FM−2が、好ましくは成分(F)をもたないこと、
ならびに/または
成分(C)および(F)が、
特に好ましくは、煤煙、タルク、雲母、ケイ酸塩類、水晶、珪灰石、カオリン、ケイ酸、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、胡粉、重質もしくは沈降炭酸カルシウム、石灰、長石、硫酸バリウムを含めた無機顔料類、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、二酸化チタン(ルチル、アナターゼ)、酸化鉄、鉄マンガン酸化物、金属酸化物類、特に銅鉄スピネルを含めたスピネル類、銅クロム酸化物、亜鉛−鉄酸化物、コバルト−クロム酸化物、コバルト−アルミニウム酸化物、マグネシウムアルミニウム酸化物、銅−クロム−マンガン混合酸化物類、銅−マンガン−鉄混合酸化物類、チタン亜鉛ルチルを含めたルチル顔料類、チタン酸ニッケルアンチモン、チタン酸クロムアンチモン、硬質もしくは軟質磁性金属類もしくは合金類もしくはセラミックス類、中空球状ケイ酸充填剤類、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、フッ化カルシウム、およびその混合物からなる群から選択される、粒子状充填剤(C1)および(F1)を含むこと、
ならびに/または
繊維補強材(C2)および(F2)が、好ましくはガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、アラミド繊維、ナノチューブ、もしくはそれらの混合物からなる群から選択され、成分(C2)および(F2)の前記繊維が、円形または非円形の断面積を有することができること
を特徴とする、請求項1〜12のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項14】
成分(D)の前記添加剤が、前記成形材料FM−1中に、0.1〜4.0重量パーセントの範囲、好ましくは0.2〜2.0重量パーセントの範囲の割合で存在すること、
ならびに/または
成分(H)の前記添加剤が、前記成形材料FM−2中に、0.1〜4.0重量パーセントの範囲、好ましくは0.2〜2.0重量パーセントの範囲の割合で存在すること、
ならびに/または
成分(D)および(H)の前記添加剤が、安定剤、老化抑制剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、UV安定剤、UV吸収剤、UV遮断剤、特にハロゲン化銅およびハロゲン化アルカリを基材とする無機熱安定剤、有機熱安定剤、導電性添加剤、蛍光増白剤、加工助剤、造核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、流動化剤、潤滑剤、離型剤、有機系顔料および染料、標識剤、およびそれらの混合物からなる群から選択されること
を特徴とする、請求項1〜13のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項15】
成分(G)の前記可塑剤が、前記成形材料FM−2中に5〜35重量パーセントの範囲の割合で、好ましくは10〜33重量パーセントの範囲の割合で存在すること、
ならびに/または
成分(G)の前記可塑剤が、パラフィン系およびナフテン系オイルからなる群から選択されること、
を特徴とする、請求項1〜14のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項16】
前記熱可塑性成形材料FM−1から形成される前記形材(I)が、それぞれが乾燥状態でISO7619−1(2012−02)に従って決定される、低くとも70D、好ましくは低くとも75D、特に好ましくは低くとも80Dのショア硬さを有すること、
および/または
前記熱可塑性成形材料FM−2から形成される形材(II)が、それぞれが乾燥状態でISO7619−1(2012−02)に従って決定される、高くとも60D、好ましくは高くとも50D、特に好ましくは高くとも39Dもしくは90Aのショア硬さを有すること
を特徴とする、請求項1〜15のいずれか1項に記載の複合材。
【請求項17】
次のステップ:
(i)少なくとも1種の形材(I)を成形するための、成形材料FM−1から形成した少なくとも1種の形材(I)を含む成形体の射出成形金型への挿入、または前記熱可塑性成形材料FM−1の射出成形金型への射出のステップ、
および
(ii)少なくとも1種の形材(II)を成形するための、熱可塑性成形材料FM−2の射出のステップ
を含み、
前記成形材料FM−1の溶融物とFM−2の溶融物とを、混合することなく、または実質的に混合することなく、並行または順番に射出成形金型に導入し、
前記形材(I)と(II)とが少なくとも1つの点で接触する、
射出成形加工で複合材を作製することを特徴とする、請求項1〜16のいずれか1項に記載の複合材を作製する方法。
【請求項18】
ポリアミドを含む成形材料FM−1から形成される形材(I)を含み、オレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体を含む成形材料FM−2から形成される形材(II)を含む複合材における、前記形材(I)と前記形材(II)との間の密着強度を向上させるための、ポリエチレンイミンまたはその誘導体もしくは共重合体の使用。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド類を基材とする形材とオレフィン/ビニル芳香族重合体を基材とする形材とが、中間層や接着剤なしで2つの形材の接触帯で互いに堅固に結合する複合材料、および前記複合材料を作製する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリアミド材料は、構造部品の生産の多くの領域において、とりわけその良好な機械的特性、化学物質に対する抵抗性、良好な加工性、比重の小ささ等によって、特に自動車部門、また例えば携帯型機器の筐体などの電子装置部門においても、その地位を確立してきた。
【0003】
軟質、高柔軟性の合成樹脂は、具体的には、自動車リモートコントロールキーの分野におけるスイッチカバー、また他の電気機器および電子機器の分野におけるスイッチカバーに、特に湿気や水の侵入からの防御が要求される場合に利用されている。高柔軟性オレフィン/ビニル芳香族重合体で作られるこれらのカバーは、剛性の筐体構成部品に接着しなければならず、密着強度はなるべく強力にすべきである。しばしばこの複合材は、より高い温度、および湿気/水が同時に存在することに対して抵抗性があるようにも要求される。通例、剛性のポリアミドと軟質のオレフィン/ビニル芳香族重合体との間の密着強度は、ある程度の量のオレフィン/ビニル芳香族重合体をポリアミド成形材料に添加することで、またはオレフィン/ビニル芳香族重合体をカルボン酸もしくは無水物基でグラフトすることで向上する。
【0004】
この結合における問題は、オレフィン/ビニル芳香族重合体と変性ポリアミドとの間の接着、または変性オレフィン/ビニル芳香族重合体とポリアミドとの間の接着が、高温および/または高湿での保管後では不十分になることである。変性オレフィン/ビニル芳香族重合体は、複合材が作製された直後は接着するが、温度70℃および相対湿度62%での保管後は急速にその密着強度を喪失する。ポリアミドを適合する量の柔軟性成分で修飾した場合は、上述のポリアミドの優れた機械的特性、良好な加工性、および他の特性が喪失する。この点が、本発明がその役割を果たすところである。
【発明の概要】
【0005】
したがって、本発明の目的は、先に挙げた用途のために適した機械的特性を有し、しかも同時に、高温で湿気が存在する中での保管後も、具体的には温度70℃で相対湿度少なくとも50%での保管後も、優れた密着強度を有する、熱可塑性ポリアミド類と熱可塑性オレフィン/ビニル芳香族重合体とを基材とする熱可塑性複合材料を提供することである。本出願の目的は、特許請求の範囲の本旨によって、具体的には、ポリアミドを基材とする少なくとも1種の形材と、隣接するオレフィン/ビニル芳香族重合体で作られる少なくとも1種の形材との複合材によって、および異なる形材間の密着強度を向上させるためのポリエチレンイミン類またはその共重合体もしくは誘導体の使用によって、達成される。
【0006】
本発明の核心は、究極的には、熱可塑性ポリアミド成形材料と、オレフィン/ビニル芳香族重合体、具体的にはSEBSおよびSEBS−g−MAHなどポリスチレンブロック共重合体を含むオレフィン/ビニル芳香族重合体を基材とする熱可塑性成形材料との間の接着を、ポリエチレンイミン類が極めて向上させることを予想外に発見したことである。ポリエチレンイミン類を、ポリアミド成形材料またはオレフィン/ビニル芳香族重合体を基材とする成形材料に添加することは可能である。そしてこれは、ポリアミド類やオレフィン/ビニル芳香族重合体を基材とする成形材料の有益な機械的特性を喪失させることはない。加えて驚くべきことに、この高密着強度は、熱と湿気の影響下でさえ長時間保持される。本発明に従った複合材は、好ましくは、少なくとも50N、具体的には少なくとも70Nの密着強度(剥離力)を(保管しない状態でまたは作製直後に)達成する。さらに、本発明に従った複合材の密着強度は、70℃かつ相対湿度62%での120時間の保管の間に、保管前の初期値に対して、好ましくは30%未満、特に好ましくは20%未満しか低下しない。密着強度は、測定用に使用される複合材成形体の30mm幅形材(II)が、ローラー上を角度90°、引張速度50mm/分で移動して形材(I)から剥離する、23℃でのローラー剥離試験によって決定される。測定形材上にわたる平均剥離力[N]を密着強度とする。
【0007】
ポリエチレンイミン類をポリアミド成形材料に添加することはできるが、密着強度の問題との関係で、熱可塑性エラストマー類、具体的にはオレフィン/ビニル芳香族重合体を基材とする成形材料に添加することができないことが、他の分野から基本原理として知られている。
【0008】
先行技術に関して、次の文献を参照する。
国際公開第2015/024912号および同様に国際公開第2015/024911号は、第1合成樹脂成分および第2合成樹脂成分を有し、これらの間の接着を向上させるポリエチレンイミンを含む、複合合成樹脂成形品について記載している。これらの先行技術文献はまた、この複合合成樹脂成形品を作製する方法、複合合成樹脂成形品の第1合成樹脂成分と第2合成樹脂成分との間の接着を向上させる方法、および複合合成樹脂成形品の第1合成樹脂成分と第2合成樹脂成分との間の接着を向上させるためのポリエチレンイミン類の使用に関する。両合成樹脂成分は、ポリアミドで作られる。加えて、1つの合成樹脂成分は三次元補強織物を含み、したがって射出成形または押出し成形によって熱可塑的に加工することができない。ポリアミドを基材とする補強繊維のないフィルムが、2つの合成樹脂成分間の接着を強化する層として使用される。したがって、記載される全ての接触帯は、ポリアミドを基材とする成形材料によって形成される。
【0009】
国際公開第2011/138300号は、ポリアミド成形材料で作られる少なくとも1つの形材と、加硫エラストマー、例えば単独または組み合わせでのEPDM、EPM、ACM、フッ素ゴム、NBR、H−NBR、またはAEMで作られる少なくとも1つの形材とから構成される、複合材成形品について記載している。ポリアミド成形材料は、次の構成成分:a)60から99重量部のポリアミドと、b)次の単量体:a)グラフト共重合体に対して0.5から25重量%の、少なくとも4個の窒素原子を有するポリアミン、ならびにb)グラフト共重合体に対して75から99.5重量%の、ラクタム類およびω−アミノカルボン酸類および/または等モルのジアミンとジカルボン酸との組み合わせから選択されるポリアミドを形成する単量体を使用して調製することができる1から40重量部のグラフト共重合体であって、a)とb)との重量部の合計が100であるグラフト共重合体との、少なくとも40重量%の混合物から構成される。グラフト共重合体の存在は、形材間の接着の向上を提供するとされている。
【0010】
本出願の観点から、本明細書で提案される熱可塑性ポリアミド成形材料または複合材成形品には、例えばEPDM、EPM、ACM、フッ素ゴム、NBR、H−NBR、またはAEMなどを単独または組み合わせで含むことができる架橋または加硫エラストマー要素といった類はない。エラストマー類は、例えば加硫剤、加硫活性剤、油剤、および/または充填剤などを含むゴム化合物の形態で使用することができる。本明細書で提案される熱可塑性ポリアミド成形材料にはまた、a)グラフト共重合体に対して0.5から25重量%の、少なくとも4個の窒素原子をもつポリアミンと、b)グラフト共重合体に対して75から99.5重量%の、ラクタム類、ω−アミノカルボン酸類、および/または等モルのジアミンとジカルボン酸類との組み合わせから選択されるポリアミドを形成する単量体とを使用して調製することができるグラフト共重合体であって、a)とb)との重量部の合計が100であるグラフト共重合体が、存在しないことが好ましい。
【0011】
本出願の観点から、グラフトされていないポリエチレンイミン類を専ら成分(B)として使用すること、すなわち、成形材料は全体として、グラフトされているポリエチレンイミン類を含まないことが好ましい。
【0012】
欧州特許出願公開第1541336号明細書は、フッ素重合体を基材とする少なくとも1つの第1層、およびこの第1層に少なくとも部分において直接隣接する少なくとも1つのさらなる第2層で構成される、熱可塑性多層複合材に関する。そのような多層複合材では、2つの層の間の接着は、第2層の基材をポリアミド/ポリアミン共重合体にすることによって達成される。そのような第2層は、ポリアミドを基材とするさらなる第3層のための接着促進層として特に有益に使用することができる。中空体または中空形の形態では、少なくとも3つの層で構成される構造が、自動車部門の燃料配管として使用することができる。
【0013】
本出願の観点から、アミドを形成するいかなる共重合体単位も含まない成分(B)として、ポリエチレンイミン類を独占的に使用すること、すなわち全体として、成形材料にアミドを形成する共重合体単位を含むポリエチレンイミン類が含まれないことが好ましい。
【0014】
独国特許出願公開第19736345号明細書は、少なくとも部分的に互換性のない独立した構成成分で作られ、この独立した構成成分、すなわちポリアミド成形材料と変性ブロック共重合体とが、射出成形または押出し成形によって互いに堅固に接着する熱可塑性多成分射出成形材料に関する。ブロック共重合体は、ビニル芳香族単量体とオレフィン単量体に基づき、カルボキシ基またはこれから誘導される基でグラフトされる。ポリアミド成形材料は、接着を向上させるための変性ブロック共重合体を含む。密着強度は、射出成形直後は良好であるが、標準的気候(70℃/相対湿度62%)で保管した場合、1日から2日で不適切な数値まで低下する。
【0015】
したがって本発明は、詳細には、直接隣接し堅固に接着する、
(I)少なくとも1種のポリアミド(A)、ならびに任意で充填剤および/または補強材(C)および添加剤(D)を含む、熱可塑性成形材料FM−1から形成される形材と、
(II)少なくとも1種のオレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体(E)、ならびに任意で充填剤および補強材(F)、可塑剤(G)、および添加剤(H)を含む、熱可塑性成形材料FM−2から形成される形材と
を含み、
成形材料FM−1または成形材料FM−2が、0.1から5.0重量%のポリエチレンイミン(B)またはその共重合体もしくは誘導体を含む、複合材に関する。
【0016】
成形材料FM−1またはFM−2は、ポリエチレンイミン(B)を、それぞれが成形材料FM−1またはFM−2の総重量に対して、好ましくは0.5〜4.0重量パーセントの割合、特に好ましくは0.8〜3.0重量パーセントの割合で含む。
【0017】
したがって本発明に従った複合材は、接着を促進する中間層または接着剤の関与なしで、少なくとも1つの点または少なくとも1つの接触面で互いに堅固に接着する少なくとも1つの形材(I)と少なくとも1つの形材(II)がある成形体を意味する。すなわち、形材(I)と形材(II)とは、少なくとも1つの点で直接接触し、この接触を介して互いに結合する。例えば、1つのまたは両方の形材が平面である場合、接触面は、対象となる形材の狭い一側面のみに限ることもできるし、1つの形材の全側面にわたることもできるし、両形材の上面または下面の部分的または完全な重なり合いを特徴とすることもできる。例えば形材(II)は、側面の1つまたは全てで、および上側面または下側面の一部でも形材(I)に結合することができる。
【0018】
本発明に従った複合材料は、好ましくは、それぞれをISO7619−1(2012−02)に従って乾燥状態で決定すると、形材(I)が形材(II)より高いショア硬さDまたはAを有する硬軟質複合材である。この観点では、それぞれを乾燥状態でISO7619−1(2012−02)に従って決定すると、形材(I)が少なくとも70D、好ましくは少なくとも75D、特に好ましくは少なくとも80Dのショア硬さを有し、および/または形材(II)が高くとも60D、好ましくは高くとも50D、特に好ましくは高くとも39Dもしくは90Aのショア硬さを有する場合が、特に好ましい。
【0019】
さらに、それぞれを乾燥状態でISO527(2012)に従って決定すると、形材(I)の弾性係数が形材(II)の弾性係数より大きいことが好ましい。形材(I)が小さくとも1000MPa、好ましくは小さくとも4000MPa、特に好ましく小さくとも8000MPaの弾性係数を有することが好ましく、および/または形材(II)が大きくとも500MPa、大きくとも300MPa、特に好ましくは大きくとも200MPaの弾性係数を有することが好ましい。
【0020】
本発明に従った複合材料は、好ましくは、剛性(硬質)と柔軟性(軟質)の形材が互いに隣り合って存在し、少なくとも1つの点または1つの接触面で互いに結合する、硬軟質複合材を意味する。剛性(硬質)形材(I)と柔軟性(軟質)形材(II)は、好ましくは、独立して成形体の異なる部位を形成し、この形材間の接触転位部、すなわち上記で説明した通りの接触点または接触面でのみで、例えば当接および/または重なり合うことによって、互いに結合することができる。このようにして複合材の独立した形材(I)および(II)の特殊で非常に異なる材料特性が十分に作用する。これは、様々な形材を作製するためには完全に異なる成形材料を使用しなければならないことを意味する。ポリアミド類を基材とする成形材料FM−1は硬質形材(I)を作製するために使用され、オレフィン/ビニル芳香族重合体を基材とする成形材料FM−2は形材(II)を作製するために使用される。
【0021】
本発明の目的のために、用語「オレフィン/ビニル芳香族重合体」および「オレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体」は、同義で使用され、ビニル芳香族単量体およびオレフィン単量体から作られた単独重合および共重合のポリオレフィン類と共重合体の両方、ならびにカルボン酸またはカルボン酸無水物基でグラフトされたその修飾体を含めた総称が含まれる。
【0022】
本発明の観点から、用語「ポリアミド」(略称PA)は、単独重合ポリアミド類および共重合ポリアミド類を含めた総称であると認識される。ポリアミド類とその単量体の選択された綴りおよび略称は、ISO16396−1(2015(D))に規定されるものと一致する。次において、使用される略称は単量体のIUPAC名と同義で使用され、具体的には単量体を表す次の略称が存在する。ビス(4−アミノ−3−メチル−シクロヘキシル)メタン、(3,3’−ジメチル−4,4’−ジアミノジシクロ−ヘキシルメタンとしても知られる、CAS No.6864−37−5)を表すMACM、ビス(4−アミノ−シクロヘキシル)メタン、(4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタンとしても知られる、CAS No.1761−71−3)を表すPACM、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチル−シクロヘキシル)メタン、(3,3’,5,5’−テトラメチル−4,4’−ジアミノ−ジシクロヘキシルメタンとも呼ばれる、CAS No.65962−45−0)を表すTMDC、テレフタル酸(CAS No.100−21−0)を表すT、イソフタル酸(CAS No.121−95−5)を表すI。
【0023】
半結晶性ポリアミド類と比較して、非晶性ポリアミド類には融解熱が全くないか、極度に低くほとんど検出不可能である。ISO11357(2013)に従った、加熱速度20K/分での示差走査熱量測定(DSC)では、非晶性ポリアミド類は、好ましくは最大5J/g、特に好ましくは最大3J/g、非常に好ましくは0から1J/gの融解熱を示す。非晶性ポリアミド類には、その非晶性の性質により融点がない。
【0024】
本発明の目的のために、半結晶性ポリアミド類は、加熱速度20K/分でのISO11357(2013)に従った示差走査熱量測定(DSC)では、好ましくは5J/gより高い、特に好ましくは少なくとも25J/g、非常に好ましくは少なくとも30J/gの融解熱を有するポリアミド類である。
【0025】
第1の好ましい実施形態によれば、本発明に従った複合材は、熱可塑性成形材料FM−1が次の成分:
(A)30〜99.9重量パーセントの少なくとも1種のポリアミド、
(B)0.1〜5.0重量パーセントのポリエチレンイミンまたはその共重合体もしくは誘導体、
(C)0〜60重量パーセントの充填剤および/または補強材、
(D)0〜5.0重量パーセントの、(A)〜(C)以外の添加剤
を含み、
(A)〜(D)の合計が100重量パーセントの熱可塑性ポリアミド成形材料FM−1となることと、
熱可塑性成形材料FM−2が次の成分:
(E)45〜100重量パーセントの少なくとも1種のオレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体、
(F)0〜15重量パーセントの充填剤および/または補強材、
(G)0〜35重量パーセントの可塑剤、
(H)0〜5.0重量パーセントの、(E)、(F)、および(G)以外の添加剤
を含み、
(E)〜(H)の合計が100重量パーセントの熱可塑性成形材料FM−2となることと
を特徴とする。成形材料FM−2は、成分(B)を含まない。
【0026】
第2の好ましい実施形態によれば、複合材は、熱可塑性成形材料FM−1が次の成分:
(A)35〜100重量パーセントの少なくとも1種のポリアミド、
(C)0〜60重量パーセントの充填剤および/または補強材、
(D)0〜5.0重量パーセントの、(A)および(C)以外の添加剤
を含み、
(A)、(C)、および(D)の合計が100重量パーセントの熱可塑性ポリアミド成形材料FM−1となることと、
熱可塑性成形材料FM−2が次の成分:
(E)40〜99.9重量パーセントの少なくとも1種のオレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体、
(B)0.1〜5.0重量パーセントのポリエチレンイミンまたはその共重合体もしくは誘導体、
(F)0〜15重量パーセントの充填剤および/または補強材、
(G)0〜35重量パーセントの可塑剤、
(H)0〜5.0重量パーセントの、(E)、(F)、(G)、および(B)以外の添加剤
を含み、
(B)および(E)〜(H)の合計が100重量パーセントの熱可塑性成形材料FM−2となることと
を特徴とする。成形材料FM−1は、成分(B)を含まない。
【0027】
成形材料FM−1の少なくとも1種のポリアミド(A)は、成形材料FM−1が成分(B)を含む場合(第1の好ましい実施形態)、成形材料FM−1の総重量に対して、好ましくは31〜79.5重量パーセントの割合、特に好ましくは40〜74重量パーセントの割合で存在し、または成形材料FM−1が成分(B)を含まない場合(第2の好ましい実施形態)、成形材料FM−1の総重量に対して、好ましくは35〜80重量パーセントの割合、特に好ましくは43〜74.8重量パーセントの割合で存在する。
【0028】
成形材料FM−2の少なくとも1種のオレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体(E)は、成形材料FM−2が成分(B)を含む場合(第2の好ましい実施形態)、成形材料FM−2の総重量に対して、好ましくは51〜94.4重量パーセントの割合、特に好ましくは62〜89重量パーセントの割合で存在し、または成形材料FM−2が成分(B)を含まない場合(第1の好ましい実施形態)、成形材料FM−2の総重量に対して、好ましくは55〜94.9重量パーセントの割合、特に好ましくは65〜89.8重量パーセントの割合で存在する。
【0029】
成形材料FM−2が、成分(E)として、少なくとも1種のビニル芳香族重合体および任意で少なくとも1種のポリオレフィンを含むことも好ましい。成形材料FM−2が、それぞれが(E)の総量に対して、少なくとも50重量パーセント、特に少なくとも70重量パーセントのビニル芳香族重合体を含む場合が特に好ましい。
【0030】
成形材料FM−2の少なくとも1種のオレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体(E)が、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SSBS)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン(PB)、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−メチルヘキサジエン共重合体、プロピレン−メチルヘキサジエン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−メチルヘキサジエン共重合体、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元重合体、およびこれら重合体材料の混合物からなる群から選択されることが好ましい。
【0031】
さらに、成形材料FM−2の少なくとも1種のオレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体(E)が、カルボン酸もしくはカルボン酸無水物基でグラフトされており、このグラフトが、特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、もしくは無水マレイン酸でなされており、および/またはグラフト重合度が、それぞれがグラフト重合体(E)に対して、好ましくは0.1から4.0重量パーセント、より好ましくは0.4から2.5重量パーセント、特に好ましくは0.5から2.0重量パーセントである場合が好ましい。
【0032】
成分(A)のポリアミド類は、半結晶性非環式脂肪族ポリアミド類、半結晶性半芳香族ポリアミド類、脂環式ポリアミド類、非晶性半芳香族ポリアミド類、またはこれらのポリアミド類の混合物であって、特に好ましくはそれぞれがAABB型、すなわちジカルボン酸類とジアミン類とで構成されており、付加的、付随的な割合のラクタム類およびアミノ酸類が成分として存在することができる。
【0033】
例えば次の単量体:1,4−ブタンジアミン、2−メチル−1,5−ペンタンジアミン、2−ブチル−2−エチル−1,5−ペンタンジアミン、1,6−ヘキサンジアミン、2,2,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、2,4,4−トリメチルヘキサメチレンジアミン、1,7−ヘプタンジアミン、1,8−オクタンジアミン、2−メチル−1,8−オクタンジアミン、1,9−ノナンジアミン、1,10−デカンジアミン、1,11−ウンデカンジアミン、1,12−ドデカンジアミン、1、13−トリデカンジアミン、1,14−テトラデカンジアミン、m−キシリレンジアミン、およびp−キシリレンジアミンは、成分(A)のジアミン類として適しており、1,6−ヘキサンジアミン、1,10−デカンジアミン、および1,12−ドデカンジアミンが好ましい。
【0034】
例えば次の単量体:アジピン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、ヘキサデカン二酸、ヘプタデカン二酸、オクタデカン二酸、C36−二量体脂肪酸、ならびに/またはシス−および/もしくはトランス−1,4−シクロヘキサンカルボン酸および/もしくはシクロヘキサンカルボン酸、トランス−シクロヘキサン−1,3−ジカルボン酸(CHDA)、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、特に1,5−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、ならびにこれらの混合物は、成分(A)のジカルボン酸類として使用することができる。アジピン酸、セバシン酸、テトラデカン二酸、ヘキサデカン二酸、およびドデカン二酸が好ましい。
【0035】
さらに、ポリアミド類(A)はまた、ラクタム類またはアミノカルボン酸、特にα,ω−アミノ酸または6から12個の炭素原子を有するラクタム類を含むことができ、次の抜粋が例として挙げられる:m−アミノ安息香酸、p−アミノ安息香酸、カプロラクタム(CL)、α,ω−アミノカプロン酸、α,ω−アミノヘプタン酸、α,ω−アミノオクタン酸、α,ω−アミノノナン酸、α,ω−アミノデカン酸、α,ω−アミノウンデカン酸(AUA)、ラウロラクタム(LL)、およびα,ω−アミノドデカン酸(ADA)。カプロラクタム、アミノカプロン酸、α,ω−アミノウンデカン酸、ラウロラクタム、およびα,ω−アミノドデカン酸が特に好ましい。しかし、これらラクタム類やアミノ酸類の割合は、ポリアミド(A)の総質量に対して、好ましくは50重量パーセント未満、より好ましくは20重量パーセント未満、特に好ましくは10重量パーセント未満である。
【0036】
半結晶性非環式脂肪族ポリアミド類(A1)は、46、56、66、66/6、69、610、612、614、616、618、810、1010、1012、1014、1016、1212、11、12、6/12、66/6/610からなる群から選択されることが好ましく、66、610、612、614および616が特に好ましい。ここでの、および以下において、例えば表示「46」は、ポリアミド46または簡潔にPA46として理解する。
【0037】
成分(A)の半結晶性半芳香族ポリアミド類(A2)は、好ましくは、6T/6I、6T/66、6T/6I/66、6T/610、6T/612、6T/614、6T/616、9T、9MT(M=2−メチルオクタン−1,8−ジアミン)、10T、12T、10T/6T、11/10T、12/10T、11/9T、12/9T、10T/1010、10T/106、10T/612からなる群から選択され、ジカルボン酸の総容量に対するテレフタル酸の割合は、好ましくは30モル%より高く、特に好ましくは50モル%より高い。
【0038】
成分(A)のポリアミド類はまた、好ましくは、脂環式ポリアミド類(A3):MACM12/PACM12、MACM14/PACM14、MACM16/PACM16、MACM18/PACM18、6I/6T/MACMI/MACMT/12、6I/6T/612/MACMI/MACMT/MACM12、6I/6T/614/MACMI/MACMT/MACM14、6I/6T/616/MACMI/MACMT/MACM16、6I/MACMI/MACMT、6I/PACMI/PACMT、MACMI/MACMT/12、6I/6T/MACMI、MACMI/MACM36、12/PACMI、12/MACMT、6I/PACMT、6/IPDT、MACM10、MACM12、MACM14、MACM16、MACM18、MACMI/12、PACM10、PACM12、MACM14、PACM16、PACM18、PACMI/12、TMDC10、TMDC12、TMDC16、TMDC18、MACMT/MACMI/12、PACMT/PACMI/12、またはその混合物からなる群から選択される。
【0039】
非晶性半芳香族ポリアミド類(A4)も、成分(A)として使用することができ、好ましくは、MXDI、MXDI/6I、MXD6/MXDI、5I、5T/5I、6I、6/6I、6T/6I、10T/10I、3−6T(3−6=2,2,4−または2,4,4−トリメチルヘキサンジアミン)、またはその混合物からなる群から選択され、5T/5I、6T/6I系、または10T/10I系が、50モル%未満の割合の5T、6T、または10Tユニットを有し、5T:5I、6T:6I、または10T/10Iの組成範囲が、20:80から45:55、特に25:75から40:60であることが好ましい。
【0040】
脂環式ポリアミド類(A3)のジアミン類は、好ましくは、ビス(4−アミノ−3−メチル−シクロヘキシル)メタン(MACM)およびビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、ビス−(4−アミノ−3−エチル−シクロヘキシル)メタン(EACM)、ビス(4−アミノ−3,5−ジメチル−シクロヘキシル)メタン(TMDC)、2,6−ノルボルナンジアミン(2,6−ビス(アミノメチル)ノルボルナン)、1,3−ジアミノシクロヘキサン、1,4−ジアミノシクロヘキサンジアミン、イソホロンジアミン、1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、2.2−(4,4’−ジアミノジシクロヘキシル)プロパン、メタ−キシリレンジアミン、パラ−キシリレンジアミン、ならびにその混合物からなる群から選択される。ジアミン類は、特に好ましくは、ビス(4−アミノ−3−メチル−シクロヘキシル)メタン(MACM)およびビス(4−アミノシクロヘキシル)メタン(PACM)、ならびにその混合物からなる群から選択される。
【0041】
脂環式ポリアミド類成分(A3)のジカルボン酸類は、好ましくは、テレフタル酸、イソフタル酸、ナフタレンジカルボン酸類(NDA)、特に1,5−ナフタレンジカルボン酸および2,6−ナフタレンジカルボン酸、1,6−ヘキサン二酸、1,9−ノナン二酸、1,10−デカン二酸、1,11−ウンデカン二酸、1,12−ドデカン二酸、1,13−トリデカン二酸、1,14−テトラデカン二酸、1,16−ヘキサデカン二酸、1,18−オクタデカン二酸、ならびにその混合物からなる群から選択される。1,6−ヘキサン二酸、1,10−デカン二酸、1,12−ドデカン二酸、テレフタル酸、イソフタル酸、およびその混合物が特に好ましい。さらにカプロラクタムおよびラウロラクタムが、成分(A3)の脂環式ポリアミド類の作製に好ましい単量体である。
【0042】
脂環式ポリアミド類(A3)および非晶性半芳香族ポリアミド類(A4)は、ガラス転移点Tgが90℃超、好ましくは110℃超、特に好ましくは120℃超であることが好ましい。
【0043】
ポリアミド類(A1)および(A2)は、融点が少なくとも170℃、好ましくは180〜340℃の範囲、または脂肪族(すなわち成分A1)の場合、好ましくは180〜230℃の範囲であることが好ましい。
【0044】
成分(A)のポリアミド類、特にポリアミド類(A1)、(A2)、(A3)、および(A4)はまた、m−クレゾール(0.5重量%、20℃)で測定すると、相対粘度が1.4から3.0の範囲、好ましくは1.45からら2.70の範囲、特に好ましくは1.50から2.40の範囲であることが好ましい。
【0045】
さらなる実施形態では、成形材料FM−1の少なくとも1種のポリアミド(A)が、次の成分:
20〜100重量パーセント、好ましくは40〜80重量パーセントの少なくとも1種の半結晶性非環式脂肪族ポリアミド(A1)および/または少なくとも1種の半芳香族半結晶性ポリアミド(A2)、
0〜80重量パーセント、好ましくは20〜60重量パーセントの少なくとも1種の脂環式ポリアミド(A3)および/または非晶性半芳香族ポリアミド(A4)
を含む、または前記成分から構成され、
成分(A1)から(A4)の重量パーセントの合計が、100重量パーセントの成分(A)となることが、特に好ましい。
【0046】
複合材の特に好ましい別の実施形態では、成形材料FM−1の少なくとも1種のポリアミド(A)が、次の成分:
(A1)20〜80重量パーセント、好ましくは25〜75重量パーセントの、PA66、PA610、PA612、PA614、およびPA616からなる群から選択される少なくとも1種の半結晶性非環式脂肪族ポリアミド、
(A4)20〜80重量パーセント、好ましくは25〜75重量パーセントの、5T/5I、6T/6I、および10T/10Iからなる群から選択される少なくとも1種の非晶性半芳香族ポリアミド
を含む、または前記成分から構成され、
成分(A1)と(A4)との重量パーセントの合計が、100重量パーセントの成分(A)となる。
【0047】
成形材料FM−1は、好ましくは、グラフトされた形態でもグラフトされない形態でも、いかなるオレフィン/ビニル芳香族重合体をも含まない。すなわち成形材料FM−1は、好ましくは、成分(E)を含まない。
【0048】
成形材料FM−2は、成分(E)として、少なくとも1種のオレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体を含む。すなわち、成分(E)は、少なくとも1種のオレフィン重合体、または少なくとも1種のビニル芳香族重合体、または少なくとも1種のオレフィン重合体と少なくとも1種のビニル芳香族重合体との組み合わせを含むことができる。オレフィン重合体とは、単独重合または共重合のポリオレフィン、特に好ましくは、エチレン、プロピレン、およびブチレンに基づいた重合体またはそれらの共重合体、および他のαオレフィン単量体、具体的には1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、および1−デセンとの共重合体のことである。ビニル芳香族重合体とは、好ましくは、スチレンと、少なくとも1つのオレフィン性二重結合を有する他の単量体、例えばαオレフィン類であるエチレン、プロピレン、およびブチレン、またはアクリル酸もしくはアクリル酸エステル、またはブタジエン等との共重合体である。ビニル芳香族単量体から形成される少なくとも1つのブロック(ブロックA)と、オレフィン単量体から形成される少なくとも1つのブロック(ブロックB)とを有するブロック共重合体が、例えばスチレンブロック共重合体のように含まれていることが特に好ましい。さらに、スチレンブロック共重合体とポリオレフィン類との混合物も好ましい。
【0049】
成分(E)の構成物として使用されるオレフィンおよび/またはビニル芳香族重合体は、天然ゴム、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリイソブチレン、ブタジエンおよび/またはイソプレンとスチレンまたはスチレン誘導体および他の共単量体との共重合体、水素化共重合体であることができ、および/または、酸無水物類、(メタ)アクリル酸、およびこれらのエステルでのグラフト重合または共重合によって形成された共重合体であることもできるし、含むこともできる。重合体(E)はまた、ブタジエン、イソプレン、またはアクリル酸アルキルから構成される架橋エラストマーコアと、ポリスチレン、無極性もしくは極性オレフィン単独重合体および共重合体(例えばエチレン−プロピレンゴム、エチレン−プロピレン−ジエンゴム、およびエチレン−オクテンゴム、もしくはエチレン−ビニルアセテートゴムなど)、または無極性もしくは極性オレフィン単独重合体および共重合体(酸無水物類、(メタ)アクリル酸、およびこれらのエステルでのグラフト重合もしくは共重合によって形成されている)で作られたグラフトシェルとをもつ、グラフトゴムとすることができる。重合体(E)はまた、ポリ(エテン−コ−(メタ)アクリル酸)や、1−オレフィンが4個より多い原子があるアルケンまたは不飽和(メタ)アクリル酸エステルである、ポリ(エテン−コ−1−オレフィン−コ−(メタ)アクリル酸)など、カルボン酸によって官能化する共重合体とすることができ、酸性基が金属イオンで部分中和したこれらの共重合体を含めることができる。
【0050】
重合体(E)は、好ましくは、スチレン単量体(スチレンおよびスチレン誘導体)および他のビニル芳香族単量体に基づき、複数のアルケニル芳香族化合物と1つの共役ジエンとのブロック共重合体として、および1つのアルケニル芳香族化合物と複数の共役ジエンとの水素化ブロック共重合体として、またはこれら重合体型の組み合わせとして作り上げられる。このブロック共重合体は、アルケニル芳香族化合物由来の少なくとも1つのブロック(ブロックA)と、共役ジエン由来の少なくとも1つのブロック(ブロックB)とを含む。水素化ブロック共重合体では、水素化によって脂肪族不飽和である炭素間二重結合の割合が減少した。直鎖構造がある2、3、4、およびマルチブロック共重合体がブロック共重合体として適している。しかし、分枝状および星形構造も本発明に従って使用することができる。分枝状ブロック共重合体は、既知の方法、例えば重合体の「側枝」を重合体主鎖に付けるグラフト反応によって得ることができる。
【0051】
アルケニル芳香族単量体として、スチレンの他に、またはスチレンとの組み合わせで、C1〜20炭化水素ラジカルまたはハロゲン原子で芳香環および/またはC=C二重結合上で置換されるビニル芳香族単量体も使用することができる。好ましいアルケニル芳香族単量体の例には、スチレン、p−メチルスチレン、αメチルスチレン、エチルスチレン、tert−ブチルスチレン、ビニルトルエン、1,2−ジフェニルエチレン、1,1−ジフェニルエチレン、ビニルキシレン類、ビニルトルエン類、ビニルナフタレン類、ジビニルベンゼン類、ブロモスチレン類、クロロスチレン類、およびそれらの組み合わせがある。好ましくは、スチレン、p−メチルスチレン、αメチルスチレン、およびビニルナフタレンである。
【0052】
ジエン単量体の例には、1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、イソプレン、クロロプレン、およびピペリエンが含まれる。1,3−ブタジエンおよびイソプレンが好ましく、特に1,3−ブタジエン(以降は簡潔にブタジエンと呼ぶ)が好ましい。
【0053】
好ましいアルケニル芳香族単量体は、スチレンとジエン単量体であるブタジエンである。すなわちスチレン−ブタジエンブロック共重合体が好ましい。通例、これらのブロック共重合体は、陰イオン重合によって、本来知られている重合方法で調製される。
【0054】
スチレンとジエン単量体の他に、さらなる共単量体も使用することができる。共単量体の割合は、好ましくは、使用する単量体の総量に対して、0から50重量%、特に好ましくは0から30重量%、特に0から15重量%である。適した共単量体には、例えば、アクリル酸エステル、特にアクリル酸n−ブチルまたはアクリル酸2−エチルヘキシルなどのC1−12−アクリル酸アルキル、および相当するメタクリル酸エステル、特にメタクリル酸メチル(MMA)などのC1−12−メタクリル酸アルキルがある。さらなる可能な共単量体には、(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリル酸グリシジル、ビニルメチルエーテル、二官能性アルコールといったジアリルおよびジビニルエーテル、ジビニルベンゼン、ならびに酢酸ビニルがある。
【0055】
共役ジエンの他に、水素化ブロック共重合体も、エチレン、プロピレン、1−ブテン、ジシクロペンタジエン、または非共役ジエンなどの低級炭化水素の部分を含むことがある。水素化ブロック共重合体では、Bブロックに起因する非還元性脂肪族不飽和結合の割合は、50%未満、好ましくは25%未満、特に好ましくは10%未満である。ブロックAの芳香族の割合は、好ましくは最大25%まで減少する。水素化ブロック共重合体であるスチレン(エチレン−ブチレン)2ブロック共重合体およびスチレン(エチレン−ブチレン)−スチレン3ブロック共重合体は、スチレン−ブタジエン共重合体およびスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体を水素化することによって得られる。
【0056】
ブロック共重合体は、好ましくは20から90重量%のブロックA、特に25から60重量%のブロックAから構成される。ジエンをBブロック内に1,2または1,4位置で組み込むことができる。
【0057】
ブロック共重合体の分子量は、5,000〜500,000g/mol、好ましくは20,000〜300,000g/mol、特に40,000〜200,000g/molである。
【0058】
適した水素化ブロック共重合体には、例えばKRATON(登録商標)(Kraton Polymers)G1650、G1651、G1652、およびTUFTEC(登録商標)(旭化成工業株式会社)H1041、H1043、H1052、H1062、H1141、H1272などの市販の製品が含まれる。
【0059】
水素化されていないブロック共重合体の例には、ポリスチレン−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)、ポリスチレン−ポリイソプレン、ポリ(α−メチルスチレン)−ポリブタジエン、ポリスチレン−ポリブタジエン−ポリスチレン(SBS)、ポリスチレン−ポリ(エチレン−プロピレン)−ポリスチレン(SEPS)、ポリスチレン−ポリイソプレン−ポリスチレン、およびポリ(a−メチルスチレン−ポリブタジエン−ポリ(α−メチルスチレン)、ならびにそれらの組み合わせがある。
【0060】
適した市販の水素化されていないブロック共重合体には、商標名SOLPRENE(登録商標)(Phillips)、KRATON(登録商標)(Shell)、VECTOR(登録商標)(Dexco)、およびSEPTON(登録商標)(株式会社クラレ)の様々な製品が含まれる。
【0061】
さらなる好ましい実施形態によれば、本発明に従った成形材料は、成分(E)がポリオレフィン単独重合体またはエチレンα−オレフィン共重合体、特に好ましくはEPおよび/またはEPDMエラストマー(エチレン−プロピレンゴムまたはエチレン−プロピレンージエンゴム)を含むことを特徴とする。例えば、これは、C3−12−α−オレフィンがプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、および/または1−ドデセンからなる群から選択されるオレフィンである、20から96重量%、好ましくは25から85重量%のエチレンを有するエチレンC3−12α−オレフィン共重合体を基幹とするエストラマ−とすることができ、成分(E)は、特に好ましくは、エチレン−プロピレンゴム、エチレン−ブチレンゴム、エチレン−オクテンゴムならびに/またはLLDPEおよび/もしくはVLDPEである。
【0062】
代替的にまたは追加的に(例えば混合物で)、(E)は、非共役ジエンを有するエチレン−C3−12−αオレフィンに基づく三元重合体を含むことができ、これは25から85重量%のエチレンと最大10重量%の非共役ジエンを含むことが好ましく、C3−12−αオレフィンについては、オレフィンがプロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−オクテン、1−デセン、および/もしくは1−ドデセンからなる群から選択されることが特に好ましく、ならびに/または非共役ジエンが、ビシクロ(2,2,1)ヘプタジエン、ヘキサジエン−1.4、ジシクロペンタジエン、および/もしくは特に5−エチリデンノルボルネンからなる群から選択されることが好ましい。
【0063】
成分(E)は、主鎖重合体と、不飽和ジカルボン酸無水物、不飽和ジカルボン酸、または不飽和ジカルボン酸モノアルキルエステルとの加熱反応またはラジカル反応を通じて、好ましくはこの目的のために次の群から選択される試薬:アクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、マレイン酸モノブチルエステル、フマル酸、アコニット酸、および/または無水イタコン酸と共に使用される、カルボン酸基またはカルボン酸無水物基から構成されることが好ましい。
【0064】
好ましくは、0.1から4.0重量%の不飽和無水物または不飽和ジカルボン酸を、重合体(E)にグラフトする。一般に、グラフト重合度は、好ましくは0.4〜2.5%の範囲、特に好ましくは0.5〜2.0%の範囲である。
【0065】
無水マレイン酸グラフト重合度(MAHグラフト重合度)が0.4〜2.5重量%の範囲である、エチレン−プロピレン共重合体とエチレン−ブチレン共重合体との混合物も、成分(E)の構成物として可能である。
【0066】
ポリオレフィンエラストマーは、直鎖、分枝、またはコアシェル構造をもつ、統計、交互、またはセグメント化共重合体とすることができ、好ましくは官能基を含み、したがってエチレン、プロピレン、ブテン−1などオレフィンの単独重合体もしくは共重合体、または酢酸ビニル、(メタ)アクリル酸エステル、およびメチルヘキサジエンなどオレフィン類および共重合可能な単量体の共重合体が含まれる。
【0067】
結晶性オレフィン重合体の例には、低密度、中密度、高密度ポリエチレン類、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレンブロックまたは統計共重合体、エチレン−メチルヘキサジエン共重合体、プロピレン−メチルヘキサジエン共重合体、エチレン−プロピレンブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−メチルヘキサジエン共重合体、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)(EVA)、ポリ(エチレン−アクリル酸エチル)(EEA)、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元重合体、およびこれら重合体の組み合わせが含まれる。
【0068】
また、重合体に結合したカルボキシル基が金属イオンによって全体的または部分的に互いに結合した、イオノマーも好ましい。
【0069】
無水マレイン酸でグラフトすることによって官能化したブタジエンとスチレンとの共重合体、無水マレイン酸でグラフトすることによって形成された無極性または極性オレフィン単独重合体および共重合体、ならびにポリ(エテン−コ−(メタ)アクリル酸)またはポリ(エテン−コ−1−オレフィン−コ−(メタ)アクリル酸)などカルボン酸によって官能化した共重合体であって、酸性基が金属イオンで部分中和した共重合体が特に好ましい。
【0070】
重合体(E)は、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SSBS)、エチレン/プロピレン共重合体、エチレン/プロピレン/ジエン共重合体(EPDM)、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリブタジエン(PB)、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−メチルヘキサジエン共重合体、プロピレン−メチルヘキサジエン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−メチルヘキサジエン共重合体、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元重合体、およびこれら重合体材料の混合物からなる群から有利に選択される。これらの重合体(E)は、特に好ましくは、アクリル酸、メタクリル酸、または無水マレイン酸でグラフトされ、グラフト重合度はグラフト重合体(E)に対して、0.1から4.0重量パーセントである。
【0071】
成分(E)の特に好ましいビニル芳香族重合体は、スチレン−エチレン/ブチレン−スチレン共重合体(SEBS)および/または無水マレイン酸(MAH)でグラフトされたSEBS(SEBS−g−MAH)である。SEBSおよびSEBS−g−MAHそれぞれは、好ましくは、20から70重量%のスチレンを含む。SEBS−g−MAHは、好ましくは、275℃、荷重5kgで、少なくとも80ml/10分、好ましくは90から200ml/10分、特に好ましくは100から160ml/10分のメルトボリュームフローレイト(melt volume flow rate)(MVR)を有する。SEBS−g−MAH中の無水マレイン酸の量は、好ましくは0.1から4.0重量%、より好ましくは0.4から2.5重量%、特に好ましくは0.5から2.0重量%である。
【0072】
成分(E)のオレフィン重合体として特に好ましいものは、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、エチレン−プロピレン共重合体(EP)、エチレン−ブチレン共重合体(EB)、およびこれらが無水マレイン酸(MAH)またはアクリル酸(AA)でグラフト修飾されたPE−g−MAH、PE−g−AA、PP−g−MAH、PP−g−AA、EP−g−MAH、EP−g−AA、EB−g−MAH、EB−g−AA、ならびにそれらの混合物である。PE−g−MAH、PE−g−AA、PP−g−MAH、PP−g−AA、EP−g−MAH、EP−g−AA、EB−g−MAH、およびEB−g−AA中のアクリル酸または無水マレイン酸の量は、好ましくは0.1から4.0重量%、より好ましくは0.4から2.5重量%、特に好ましくは0.5から2.0重量%である。
【0073】
成分(E)はまた、好ましくは先に挙げたビニル芳香族とオレフィン重合体との混合物、特に好ましくはSEBS−g−MAHとPP、SEBSとPP−g−MAH、SEBS−g−MAHとPP−g−MAHとの混合物で構成され、PP−g−MAHおよび/またはSEBS−g−MAH中の無水マレイン酸の量は、好ましくは0.1から4.0重量%、より好ましくは0.4から2.5重量%、特に好ましくは0.5から2.0重量%である。
【0074】
この成分のために上で示した可能な系は、混合物でも使用することができる。
【0075】
本発明によれば、成形材料FM−1またはFM−2は、成分(B)としてある特定の割合のポリエチレンイミンを含む。成形材料FM−1またはFM−2内の成分(B)の割合は、好ましくは0.5〜4.0重量%の範囲、好ましくは0.8〜3.0重量%の範囲である。成形材料FM−1のみが成分(B)としてポリエチレンイミンを定量内で含み、成形材料FM−2は成分(B)を含まないことが好ましい。
【0076】
本発明の観点からの成分(B)のポリエチレンイミン類は、例えばEncycl.Polym.Sci.Eng.1、680〜739で説明されている通り、主鎖にNH基またはN基が存在し、それぞれが2つのメチレン基によって互いに隔離される重合体を意味すると理解する。本発明の目的のために、単独重合体と共重合体の両方およびこれらの誘導体が含まれる。分枝状ポリエチレンイミン類を使用することが好ましい。
【0077】
単独重合体は、一般に、エチレンイミン(アジリジン)を、酸遊離化合物、酸、またはルイス酸の存在下で、水溶液または有機溶液中で重合することによって得られる。このような単独重合体は、通例、第一級、第二級、および第三級アミノ基を約30%対40%対30%の比で含む、分枝状重合体である。13C−NMR分光法を用いて決定されたアミノ基の配分は、第一級対第二級対第三級アミノ基の比で、好ましくは1:0.7:0.5から1:1.5:1の範囲、特に1:0.8:0.6から1:1.2:0.8の範囲である。
【0078】
少なくとも2つのアミノ官能基を有する化合物を、好ましくは、共単量体として使用する。適した共単量体は、例えばアルキレン基中に2から10個の炭素原子があるアルキレンジアミン類であり、エチレンジアミンおよびプロピレンジアミンが好ましい。他の適した共単量体は、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ジプロピレントリアミン、トリプロピレントリアミン、ジヘキサメチレントリアミン、アミノプロピルエチレンジアミン、およびビスアミノプロピルエチレンジアミンである。
【0079】
同様に、本発明の目的のためのポリエチレンイミン類には、ポリエチレンイミン類と、カルボン酸類、そのエステルもしくは無水物類、カルボン酸アミド類、またはカルボン酸ハロゲン化物類とを反応させることによって通常得られる、アミド化重合体が含まれる。
【0080】
加えて、例えばポリエチレンイミンと酸化エチレンおよび/または酸化プロピレンとを反応させることによって得ることができるアルコキシ化ポリエチレンイミン類が適している。本発明に従った、他の適したポリエチレンイミン類には、水酸基を含むポリエチレンイミン類および両性ポリエチレンイミン類(陰イオン基の組込み)、ならびに一般に長鎖炭化水素基を高分子鎖に組み込むことによって得られる親油性ポリエチレンイミン類が含まれる。
【0081】
ポリエチレンイミン類は、通常、600から3,000,000、好ましくは700から2,000,000の重量平均分子量(重量平均)Mwを有する。好ましいMwは800から50,000、特に1,100から25,000である。重量平均分子量Mwは、ASTM D4001に従った光散乱によって決定される。
【0082】
成分(B)のポリエチレンイミンは、500〜50,000または500〜25,000g/molの範囲、好ましくは1000〜2500または600〜2000g/molの範囲の数平均モル質量Mnをもつ、分枝状ポリエチレンイミンとすることができる。
【0083】
成分(B)のポリエチレンイミンは、具体的には、第一級対第二級アミンの比が1:2〜2:1の範囲、好ましくは1.2:1〜1:1.2の範囲、および/または第一級対第三級アミンの比が3:1〜1:1の範囲、好ましくは2:1〜1.4:1の範囲、および/または第二級対第三級アミンの比が3:1〜1:1の範囲、好ましくは2:1〜1.2:1の範囲を有する、分枝状ポリエチレンイミンが好ましい。
【0084】
成分(B)のポリエチレンイミンは、第一級アミノ末端基の量が5000〜20,000μeq/g(mmol/kg)の範囲、好ましくは7,000〜12,000μeq/g(mmol/kg)の範囲である、分枝状ポリエチレンイミンが好ましい。
【0085】
成分(B)のポリエチレンイミンは、さらに、含水率が4重量パーセント未満、好ましくは3重量パーセント未満、特に好ましくは2重量パーセント未満である、分枝状ポリエチレンイミンが好ましい。
【0086】
加えて、提案されている成形材料FM−1およびFM−2は、ポリアミドやオレフィン/ビニル芳香族重合体およびポリエチレンイミンの他に、充填剤および/または補強材の形態での添加剤、すなわち成分(C)または(F)を含むことができる。成分(C)は、20〜60重量パーセントの範囲、好ましくは25〜55重量パーセントの範囲の割合で成形材料FM−1内に存在することが好ましい。成分(F)は、0〜10重量パーセントの範囲の割合で成形材料FM−2内に存在することが好ましく、成形材料FM−2は、成分(F)をもたないことが好ましい。成形材料FM−2はさらに、繊維状補強材(F2)をもたないことが好ましい。
【0087】
成分(C)および(F)は、
特に好ましくは、煤煙、タルク、雲母、ケイ酸塩類、水晶、珪灰石、カオリン、ケイ酸、炭酸マグネシウム、水酸化マグネシウム、胡粉、重質もしくは沈降炭酸カルシウム、石灰、長石、硫酸バリウムを含めた無機顔料類、酸化亜鉛、硫化亜鉛、リトポン、二酸化チタン(ルチル、アナターゼ)、酸化鉄、鉄マンガン酸化物、金属酸化物類、特に銅鉄スピネルを含めたスピネル類、銅クロム酸化物、亜鉛−鉄酸化物、コバルト−クロム酸化物、コバルト−アルミニウム酸化物、マグネシウムアルミニウム酸化物、銅−クロム−マンガン混合酸化物類、銅−マンガン−鉄混合酸化物類、チタン亜鉛ルチルを含めたルチル顔料類、チタン酸ニッケルアンチモン、チタン酸クロムアンチモン、硬質もしくは軟質磁性金属類もしくは合金類もしくはセラミックス類、中空球状ケイ酸充填剤類、酸化アルミニウム、窒化ホウ素、炭化ホウ素、窒化アルミニウム、フッ化カルシウム、および他の無機顔料類、ならびにそれらの混合物からなる群から選択される粒子状充填剤(C1)または(F1)、
ならびに/あるいは
好ましくはガラス繊維、炭素繊維、グラファイト繊維、アラミド繊維、ナノチューブ、またはそれらの混合物からなる群から選択される繊維補強材成分(C2)または(F2)であって、成分(C2)および(F2)の繊維が円形または非円形の断面積を有することができる繊維補強材成分(C2)または(F2)
から構成されることが好ましい。
【0088】
充填剤(C1)および(C2)、ならびに(F1)および(F2)はまた、表面処理済みとすることができる。
【0089】
成分(C2)および(F2)は、好ましくは、実質的には構成成分である二酸化ケイ素、酸化カルシウム、酸化マグネシウム、および酸化アルミニウムである、またはそれから構成されるガラス繊維であり、重量比SiO/(CaO+MgO)は2.7未満、好ましくは2.5未満、特に2.1と2.4の間である。具体的には、成分(C2)または(F2)は、ASTM D578−00に従ったEガラス繊維である。
【0090】
本発明によれば、ガラス繊維(成分C2、F2)はまた、高強度ガラス繊維とすることができ、好ましくは、三元系である二酸化ケイ素−酸化アルミニウム−酸化マグネシウムまたは四元系である二酸化ケイ素−酸化アルミニウム−酸化マグネシウム−酸化カルシウムを基材とし、58〜70重量%の二酸化ケイ素(SiO)、15〜30重量%の酸化アルミニウム(Al)、5〜15重量%の酸化マグネシウム(MgO)、0〜10重量%の酸化カルシウム(CaO)、および0〜2重量%の二酸化ジルコニウム(ZrO)、酸化ホウ素(B)、二酸化チタン(TiO)、または酸化リチウム(LiO)などさらなる酸化物からなる組成物が好ましい。高強度ガラス繊維は、好ましくは、4000MPa以上の引張強度、および/または少なくとも5%の破断伸度、および80GPaより大きい引張弾性係数を有する。これら成分(C2)の高強度ガラス繊維の具体的な例には、オーエンスコーニング(Owens Corning)社製Sガラス繊維サイズ910または995、日東紡(Nittobo)社製Tガラス繊維、3B社製HiPertex、Sinoma Jinjing Fiberglass社製HS4ガラス繊維、Vetrotex社製Rガラス繊維、ならびにAGY社製S−1およびS−2ガラス繊維がある。
【0091】
成分(C2)および(F2)のガラス繊維は、短繊維の形態、好ましくは長さが0.2から20mmの範囲のカットガラスの形態または連続繊維(粗糸)の形態とすることができる。
【0092】
本発明に従った成分(C2)および(F2)のガラス繊維は、好ましくは円形または非円形の断面積を有する。
【0093】
円形断面積があるガラス繊維、すなわち円形ガラス繊維は、典型的には直径が5〜20μmの範囲、好ましくは6〜17μmの範囲、特に好ましくは6〜13μmの範囲である。これらは、好ましくは、短ガラス繊維(長さが0.2から20mm、好ましくは2〜12mmであるカットガラス)として使用される。
【0094】
成分(C2)および(F2)が扁平ガラス繊維である場合、すなわち非円形断面積をもつガラス繊維である場合、主断面径とこれに直角な第二断面径の寸法比が、2より大きい、好ましくは2から8、特に2から5である扁平ガラス繊維が使用されることが好ましい。これらいわゆる扁平ガラス繊維は、卵形、楕円形、狭窄(1つまたは複数)がある楕円形(いわゆる繭繊維)、多角形、方形、またはほとんど方形の断面積を有する。使用する扁平ガラス繊維の他の特徴は、主断面径の長さが好ましくは6から40μmの範囲、特に15から30μmの範囲であり、第二断面径の長さが3から20μmの範囲、特に4から10μmの範囲であることである。扁平ガラス繊維は、最大級の充填密度を有する。すなわち、ガラス繊維の断面積は、このガラス繊維断面を包囲するみかけ上の方形をなるべく精確に、少なくとも70%、好ましくは少なくとも80%、特に好ましくは少なくとも85%まで占有する。
【0095】
円形または非円形の断面があるガラス繊維の混合物も、本発明に従った成形材料を補強するために使用することができ、好ましくは、扁平ガラス繊維の割合の方が優勢、すなわち繊維の総質量の50重量%より高い割合で構成する。
【0096】
本発明に従ったガラス繊維は、例えばアミノやエポキシシラン化合物を基材とする接着促進剤を含んでいるなど、各熱可塑性物質、特にポリアミドに適したサイズで提供されることが好ましい。
【0097】
さらなる好ましい実施形態に従った、成分(C2)および(F2)内の粗糸として使用されるEガラス繊維または高強度ガラス繊維は、直径8から20μm、好ましくは12から18μmを有することが好ましく、ガラス繊維の断面は円形、卵形、楕円形、狭窄(1つまたは複数)がある楕円形、多角形、方形、またはほとんど方形である。断面径の比率が2対5である、いわゆる扁平ガラス繊維が特に好ましい。これらの連続繊維、特に好ましくは成分(C2)および(F2)内の連続繊維は、長繊維強化棒状粒子(繊維の長さと粒子の長さが同一)の作製で知られている加工法、具体的には、末端のない繊維ストランド(粗糸)を溶融重合体に完全に浸み込ませ、次に冷却し、切断する押出し加工によって、本発明に従ったポリアミド成形材料に組み込まれる。この方法で得られた、好ましくは粒子の長さが3から25mm、特に4から12mmである長繊維強化棒状粒子は、さらに通常の加工方法(射出成形や加圧)を利用して成形材に加工される。本発明に従った成形材料を強化するために、末端のない繊維(ガラス長繊維)をカット繊維(ガラス短繊維)と結合させることもできる。
【0098】
最後に、提案されている成形材料FM−1はまた、成分(D)などの添加剤を含むことができ、成形材料FM−2はまた、成分(H)などの添加剤を含むことができる。成形材料FM−1のための成分(D)は、0.1〜4.0重量パーセントの範囲、好ましくは0.2〜2.0重量パーセントの範囲の割合で存在することが好ましい。成形材料FM−2のための成分(H)は、0.1〜4.0重量パーセントの範囲、好ましくは0.2〜2.0重量パーセントの範囲の割合で存在することが好ましい。
【0099】
成分(D)および(H)である添加剤は、安定剤、老化抑制剤、酸化防止剤、オゾン劣化防止剤、光安定剤、UV安定剤、UV吸収剤、UV遮断剤、特にハロゲン化銅およびハロゲン化アルカリならびに/またはランタノイド化合物を基材とする無機熱安定剤、有機熱安定剤、導電性添加剤、蛍光増白剤、加工助剤、造核剤、結晶化促進剤、結晶化遅延剤、流動化剤、潤滑剤、離型剤、有機系染料、標識剤、ならびにそれらの混合物からなる群から選択することができる。
【0100】
成形材料FM−2はまた、0〜35重量パーセントの可塑剤を成分(G)として含むことができる。成形材料FM−2は、好ましくは5〜35重量%、特に好ましくは10〜33重量%の可塑剤を含む。好ましくは芳香族留分のないパラフィン系および/またはナフテン系配合のオイルが成分(G)として使用されることが好ましい。用語「パラフィン系」は、非環式飽和炭化水素類を意味する一方、用語「ナフテン系」は、環式飽和炭化水素類を意味する。したがって、脂肪族炭化水素を基材とする可塑剤(G)、特に非環式および/または環式脂肪族炭化水素が好ましい。通例、液状、オイル状、ペースト状、または固形のパラフィン系および/またはナフテン系炭化水素の混合物がある。粘度および融点に応じて液状パラフィン類(流動パラフィン(paraffinum perliquidum))、オイル状またはペースト状パラフィン類(準流動パラフィン(paraffinum subliquidum))、および固形パラフィン(固体パラフィン(paraffinum solidum))に分類される、パラフィン系オイル類が好ましい。流動パラフィンが特に好ましい。
【0101】
複合材の好ましい実施形態では、本発明に従った熱可塑性ポリアミド成形材料FM−1は、
(A)40〜74重量パーセントの成分(A)であって、
20〜100重量パーセント、好ましくは40〜80重量パーセントの少なくとも1種の半結晶性非環式脂肪族ポリアミド(A1)および/または少なくとも1種の半芳香族半結晶性ポリアミド(A2)、
0〜80重量パーセント、好ましくは20〜60重量パーセントの少なくとも1種の非晶性半芳香族ポリアミド(A4)および/または少なくとも1種の脂環式ポリアミド(A3)
から構成され、成分(A1)から(A4)の重量パーセントの合計が100重量パーセントとなる成分(A)、
(B)0.8〜3.0重量パーセントのポリエチレンイミン、
(C)25〜55重量パーセントの充填剤および/または補強材、
(D)0.2〜2.0重量パーセントの、(A)〜(C)以外の添加剤
から構成され、
(A)〜(D)の合計が100重量パーセントの熱可塑性ポリアミド成形材料となり、本発明に従った熱可塑性成料FM−2は、
(E)55〜94.9重量パーセトの少なくとも1種のビニル芳香族重合体であって、特に好ましくはアクリル酸、メタクリル酸、または無水マレイン酸でグラフトされた、スチレン−エチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SEBS)、スチレン−エチレン−プロピレン−スチレンブロック共重合体(SEPS)、スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SBS)、スチレン−スチレン−ブチレン−スチレンブロック共重合体(SSBS)からなる群から選択される少なくとも1種のビニル芳香族重合体、および/またはポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブタジエン、ポリ−4−メチルペンテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−ブテン共重合体、エチレン−メチルヘキサジエン共重合体、プロピレン−メチルヘキサジエン共重合体、エチレン−オクテン共重合体、エチレン−プロピレン−ブテン共重合体、エチレン−プロピレン−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−メチルヘキサジエン共重合体、ポリ(エチレン−酢酸ビニル)(EVA)、エチレン−アクリル酸エチル共重合体(EEA)、エチレン−ヘキセン共重合体、エチレン−プロピレン−ジエン三元重合体からなる群から選択され、グラフト重合度がグラフト重合体(E)に基づくと、0.1から4.0重量パーセントである、ビニル芳香族重合体、
(F)0〜10重量パーセントの充填剤および/または補強材、
(G)5〜35重量%の可塑剤、
(H)0.1〜4.0重量パーセントの、(E)、(F)、および(G)以外の添加剤
から構成され、
(E)〜(H)の合計が100重量パーセントの熱可塑性成形材料FM−2となる。
【0102】
本発明はまた、このような複合材を作製するための、上述通りの熱可塑性成形材料FM−1およびFM−2の使用にも関する。本発明に従った複合材は、射出成形または押出し成形によって作製することができる。
【0103】
上記に説明した複合材を作製するための本発明に従った方法は、好ましくは射出成形に基づいており、次の段階:
(i)少なくとも1種の形材(I)を成形するための、成形材料FM−1から形成された少なくとも1種の形材(I)を含む成形体の射出成形金型への挿入または熱可塑性成形材料FM−1の射出成形金型への射出の段階、
および
(ii)少なくとも1種の形材(II)を成形するための、熱可塑性成形材料FM−2の射出の段階
を含み、
成形材料FM−1の溶融物およびFM−2の溶融物を、混合することなく、または実質的に混合することなく、並行または順番に射出成形金型に導入し、
形材(I)および(II)が少なくとも1つの点で接触する、方法である。
【0104】
この場合、成形材料FM−2が、成形材料FM−1から形成する形材(I)と、好ましくは狭い側面および/または部分的な上面もしくは下面で、特に好ましくは両側面のみで接触する、完成射出成形品における平面形材(II)を形成することが好ましい。
【0105】
本発明の記述の観点から、定義「混合することなく、または実質的に混合することなく」とは、複合材料のための熱可塑性成形材料FM−1およびFM−2が、押出し流れ的に、または並行流れで成形器具に入ることを意味する。
【0106】
本発明に従った加工では、ステップ(i)において、形材(I)を含む成形体を、成形材料FM−1から少なくとも部分的に作製した独立した予備成形物として、射出成形金型に挿入することができる。代替実施形態によれば、この成形体はステップ(i)における射出成形金型で作製される。
【0107】
複合材を1回の射出成形加工で、つまりステップ(i)およびステップ(ii)を並行して、作製することができる。この手法は、その有効性と簡潔性のために有利である。しかし本発明の観点から、一番目のステップにおいて熱可塑性成形材料FM−1を射出成形金型に射出し、続いて二番目のステップ(ステップii)において2番目の熱可塑性成形材料FM−2を射出することも可能であり、多くの場合で有利である。
【0108】
シングルステップ手順では、当業者に知られているシングルステップ標準サンドイッチ射出加工またはシングルステップモノサンドイッチ加工を有利に利用することができる。
【0109】
しかし本発明の観点から、2つの異なるホットランナーシステムから成形材料FM−1およびFM−2である2つの溶融物を射出成形金型に射出する、マルチチャンネルサンドイッチ射出成形加工を利用することもできる。
【0110】
モノサンドイッチ加工では、軟質層用の熱可塑性成形材料FM−2を単純押出し機から、ウォームが納められているメインシリンダーの中、例えばプッシャースクリュー押出し機の中に、その中にある硬質層用に配置された熱可塑性成形材料FM−1の前に射出する。配列の観点からおよびレオロジー的にメインシリンダー内で縦に配置された材料は、シングル射出成形加工で成形金型の中に射出され、そこで本発明に従った複合材が形成される。
【0111】
形材(I)を用いた成形体を、成形材料FM−1と別に先に作ることもできるし、そのままで、言わば同じ射出成形金型で作製することもできる。
【0112】
別に前もって作製した形材(I)または形材(II)を用いた成形体を成形金型に挿入するインサート加工は、特に少バッチ数または大寸法のキャリアの作製に適している。
【0113】
射出成形加工で形材(I)を用いた複合材部品を作製する場合、コアバック成形加工を利用することが有利である。この方法では、成形材料FM−2からの複合材部品のためのキャビティを作り出すために、予備成形体、すなわち成形材料FM−1を基材とする形材(I)を用いた成形体の射出成形後に、1つまたは複数のスライドをその中で引き出す器具を使用する。この器具は「マルチスライドツール(multislide tool)」とも呼ばれる。あるいは、キャリアを旋削用工具で作製することも可能である。
【0114】
本発明に従った複合材では、形材(I)と形材(II)との優れた接着が達成される。
【0115】
本発明はまた、形材(I)と(II)との間の密着強度を向上させるため、ポリアミドを含む成形材料から形成される形材(I)と、オレフィン/ビニル芳香族重合体を含む成形材料から形成される形材(II)とを含む複合材における、ポリエチレンイミンまたはその共重合体もしくは誘導体の使用に関する。ここでも、ポリアミド成形材料の全重量に対して、ポリエチレンイミンが、0.5〜4.0重量パーセントの割合、好ましくは0.8〜3.0重量パーセントの割合で成形材料内に存在することが好ましく、ポリエチレンイミンの場合、好ましくは、第一級対第二級アミンの比が1:2〜2:1の範囲、好ましくは1.2:1〜1:1.2の範囲、および/または第一級対第三級アミンの比が3:1〜1:1の範囲、好ましくは2:1〜1.4:1の範囲、および/または第二級対第三級アミンの比が3:1〜1:1の範囲、好ましくは2:1〜1.2:1の範囲を有する、分枝状ポリエチレンイミンが好ましい。
【0116】
さらに好ましくは、ポリエチレンイミンは、数平均モル質量Mnが500〜50,000または500〜25,000g/molの範囲、好ましくは600〜2000または1000〜2500g/molの範囲である分枝状ポリエチレンイミンである。
【0117】
ポリエチレンイミンは、好ましくは、熱可塑性ポリアミド成形材料に関してすでに上述した他の特性を有することができる。
【0118】
複合材料の好ましい用途には、車のイグニッションキー、車のイグニッションキー用ファンクションキー、例えばテレビ、クレーンおよび天井クレーンなど全種類の遠隔操作、様々なプライヤーおよび電動手工具の持ち手部分、湿気および水に対するシーリング用筐体シール、可撓膜またはシールリップ付き筐体、可撓性膜カバー付き電気用スイッチ、防水シールリップ付き電気プラグ等がある。さらなる実施形態を従属請求項に明記する。
【図面の簡単な説明】
【0119】
図1】剥離力を測定するローラー剥離試験用に使用する複合材試験片およびホルダーを示す図である。これらは説明のためにのみ提供されており、限定的に解釈するものではない。
【0120】
【発明を実施するための形態】
【0121】
ポリアミド成形材料FM−1の作製
ポリアミド粒子と添加剤を供給ゾーンにメーターを通じて入れ、ガラス繊維をノズルの前のサイドフィーダー3ハウジングユニットを介してこの溶融重合体に添加し、表1の成分を表2の割合で、所定のプロセスパラメーター(表3参照)に対応する25mmスクリュー径を用いたWerner and Pfleiderer社製二軸押出し機内で混合した。表2で概要を示した化合物を直径3mmのノズルからストランドとして流し出し、水で冷却した後、粒子状にした。この粒子状物質を、30mbarの真空下、100℃で24時間、乾燥させた。
【0122】
表1:実施例および比較例で使用する材料
【0123】
表2:成形材料FM−1(B1、B2、およびVB1からVB5)、ならびに成形材料FM−2(I)〜(III)に対する密着強度
【0124】
表3:化合のプロセスパラメーター
【0125】
機械的特性を決定するため、Arburg Allrounder 320−210−750射出成形機を用いて、ゾーン1から4の規定シリンダー温度240から280℃、金型温度100℃で化合物を試験片に射出した。
【0126】
成形材料FM−2の作製
成分(I):Kraton G1651(SEBS)42.7重量%
Polybond 3200(PP−g−MAH)24.0重量%
可塑剤(Paraffinum Perliquidum)33.0重量%
Irganox HP2921 0.3重量%
成分(II):Kraton FG1901 GT(SEBS−g−MAH)99.7重量%
Irganox HP2921 0.3重量%
成分(III):Kraton G1651(SEBS)42.7重量%
Polybond 3200(PP−g−MAH)23.0重量%
可塑剤(Paraffinum Perliquidum)33.0重量%
Lupasol G20 1.0重量%
Irganox HP2921 0.3重量%
【0127】
SEBS、PP、および添加剤を供給ゾーンにメーターを用いて入れ、可塑剤を定量ポンプを用いて、加熱ゾーン3レベルのシリンダーのボアを通じて溶融重合体に添加し、これらの成分を指定された割合で、スクリュー直径25mmのWerner and Pfleiderer社製二軸押出し機内で、平均ゾーン温度200から230℃、スクリュー速度250rpm、スループット8kg/hで混合した。溶融重合体を、直径3mmのノズルからストランドとして流し出し、水で冷却した後、粒子状にした。この粒子を、30mbar真空下、80℃で24時間乾燥させた。この粒子状物質で作製した試験片のショア硬さは、成形材料FM−2(I)でショア硬さ80A、成形材料FM−2(II)でショア硬さ70A、および成形材料FM−2(III)でショア硬さ78Aであった。
複合材試験片の作製
【0128】
3ゾーンの30mm標準スクリューを備えたArburg Allrounder 520A射出成形機を使用して、複合材試験片、いわゆるフレームとタブから作った2Kピールプレートを作製した。この目的のために、1番目のステップ(i)において、成形材料FM−1(すなわちポリアミド成形材料B1、B2、およびVB1からVB5)から、フレームプレート(形材(I))を射出成形した。フレームプレートの射出の開始から25秒後に、段階(i)の間形材(II)のためのキャビティを占有していたスライドを、器具から引き出した。2番目のステップ(ii)において、今や空いたこのキャビティに成形材料FM−2を射出し、よって柔軟性のタブ(形材(II))を成形した。使用する射出成形パラメーターを、下記の表にまとめて示す。複合材試験片1は、図1で見ることができる。フレームは、辺長a120mm、幅b90mm、厚さg3mmである一方、タブ4は、辺長e150mm、幅f30mm、厚さh1mmである。フレーム2は、タブ4との重複部分が面積50×30mmになるようにフレーム2内に配置された、辺長c55mm、幅d50mmの開口部3を含む。スプルーから離れたタブ4の側を、フレーム開口部3の上方に位置付ける。
【0129】
【0130】
測定方法
他に指定のない限り、試験片を乾燥状態で使用した。この目的のために、射出成形後室温で少なくとも48時間、乾燥環境すなわちシリカゲル上で試験片を保管した。
【0131】
次の測定方法を、本出願のために使用した。
融点(Tm)および溶融エンタルピー(ΔHm):
ISO11357−3(2013)に従って、粒子状物質の融点および溶融エンタルピーを決定した。加熱速度20K/分でDSC(示差走査熱量測定)方法を実行した。
【0132】
ガラス転移温度、Tg:
ISO11357−2(2013)に従って、示差走査熱量測定(DSC)を用いて粒子状のガラス転移温度Tを決定した。これを加熱速度20K/分で、2回の加熱それぞれに対して実行した。1回目の加熱後、サンプルをドライアイスで急冷した。ガラス転移温度(T)を2回目の加熱中に決定した。「半値」方法で、ガラス転移温度とするガラス転移領域の中点を特定した。
【0133】
相対粘度、ηrel
ISO307(2007)に従って、20℃で相対粘度を決定した。この目的のために、重合体粒子0.5gをm−クレゾール100ml(他に指定のない限り)内で秤量し、該規格の11章に基づいて、RV=t/tに従った相対粘度(RV)を計算した。
【0134】
引張弾性係数:
ISO527(2012)に従って、23℃、引張速度1mm/分、規格:ISO/CD3167(2003)に従ったISO引張ロッド(A1型、寸法170×20/10×4)で、引張弾性係数を決定した。
【0135】
破壊応力および破断伸度:
ISO527(2012)に従って、23℃、引張速度5mm/分、ISO規格/CD3167(2003)に従って作製したISO引張ロッドA1型(寸法170×20/10×4mm)で、破壊応力および破断伸度を決定した。
【0136】
シャルピー衝撃強さ:
ISO179/2eU(1997、2=計装化)に従って、23℃、ISO/CD3167(2003)に従って作製したISO試験ロッドB1型(寸法80×10×4mm)で、シャルピー衝撃強さを決定した。
【0137】
ノッチ付きシャルピー衝撃強さ:
ISO179/2eA(1997、2=計装化)に従って、23℃、ISO/CD3167(2003)に従って作製したISO試験ロッドB1型(寸法80×10×4mfm)で、ノッチ付きシャルピー衝撃強さを決定した。
ショア硬さ
【0138】
測定方法AおよびDに従って、ISO7619−1(2012−02)に従ったKarl Franknach社製硬さ試験機を使用して、ショア硬さを決定した。5つの測定から算術平均値を得た。使用する試験片の寸法は60×60×4mmであり、試験の直前まで、しかし作製後少なくとも48時間は、乾燥した場所で23℃で試験片を保管した。測定も23℃で実施し、15秒後に値を読み取った。
【0139】
密着強度:
図1に従った密着強度を決定するための複合材試験片(2Kピールプレート)を、異なる時間、70℃および相対湿度62%で保管した。試験片を、23℃/相対湿度50%の空調環境で一晩(12時間)、剥離試験まで保管した。保管時間0時間とは、作製した複合材試験片を射出成形後室温(23℃)で48時間、乾燥環境すなわちシリカゲル上で保管したことを意味する。ローラー剥離試験のための複合材試験片およびホルダーに関係して以下で使用する用語は、図1に関する。
【0140】
測定用に使用する複合材試験片1の30mm幅広タブ4(形材II)を、引張試験機を使用して引張速度50mm/分でフレーム2(形材I)から剥離しながら偏向ローラー7上を90°の角度で移動させる、23℃でのローラー剥離試験によって密着強度を決定した。表2は、測定形材の5つの独立した測定から決定した平均剥離力[N]の平均値を示す。スプルーから離れたタブ部分を引張試験機の試験片ホルダー上方に付け、試験片用ホルダー6を試験片ホルダー下方に付けた。使用する偏向ローラー7の直径は20mmであった。複合材試験体のフレーム2は、引張軸Zに対し垂直な面を自由に移動することができ、定着ローラー8によって安定する。剥離試験中、フレーム2は、破壊ゾーン(まだ接着している部分とすでに離れた部分との間のゾーン)が常に引張軸Z面上にあるように、ホルダーの全測定域にわたって継断続的に移動した。
【0141】
結果に対する論議:
本発明に従った、ポリアミド成形材料B1から作られる形材(I)と成形材料FM−2(I)から作られる形材(II)との複合材は、良好な密着強度を有し、70℃、相対湿度62%での保管5日後でもこの良好な接着をほぼ同じレベルで保持する。比較では、B1とは対照的に成分(B)のないVB4のFM−2(I)に対する密着強度は、作製後ですでに10%低く、保管後では不十分である。同じ状況が成分B2/FM−2(I)とVB5/FM−2(I)との比較でも現れ、優れた接着がB2に作製後と保管後に測定できる一方、VB5の接着は保管後は不十分である。成形材料FM−2(II)に対する密着強度を見てみると、本発明に従った成形材料B1が保管前後で優れた密着強度を有する一方、VB4の密着強度は、作製後がB1と比較してすでに2.5の倍数で低下し、保管後では不十分であることが判明する。先行技術に従った、ポリアミド成形材料のMAHでグラフトしたポリオレフィンでの修飾では、VB1とVB3との比較例が示す通り、複合材に十分な接着をもたらさない。成分(B)が同時に複合材の両方の成形材料または形材(I)と(II)とに含まれる場合、密着強度は観察されないか、非常に弱い密着強度しか観察されなかった。
図1
【外国語明細書】
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