【実施例】
【0056】
以下、本発明を実施例により具体的かつ詳細に説明するが、これらの実施例は本発明の一態様にすぎず、本発明はこれらの例によって何ら限定されるものではない。
尚、実施例の記載において、特に記載がない限り、溶媒を考慮しない部分を、重量部及び重量%の基準としている。
【0057】
本実施例で使用した成分を以下に示す。
【0058】
(A)リグニン
(a1)リグニンスルホン酸ナトリウム(日本製紙社製、商品名:バニレックスN、化学組成(対固形分%)としてリグニンスルホン酸塩91%)
(a2)クラフトリグニン(針葉樹由来)(日本製紙社製)
(a3)溶解クラフトパルプ蒸解前加水分解物(日本製紙社製)
(a4)リグニンスルホン酸ナトリウム(低分子画分)(日本製紙社製、商品名:サンパールCP)
(a5)リグニンスルホン酸ナトリウム(日本製紙(株)製、商品名:バニレックスRN化学組成(対固形分%)としてリグニンスルホン酸塩97%)
【0059】
(B)アミン化合物
(b1)アミドール(和光純薬工業社製)
(b2)m−フェニレンジアミン(ヒドロキシル基を含まない芳香族アミン)
【0060】
(C)エチレンジアミン(和光純薬工業社製)
【0061】
<実施例1:青色発光炭素量子ドットの製造:CQD(Blue)>
0.1g/5mLの(a1)リグニン粉末(炭化処理なし)、2.5mLのエチレンジアミン(EDA)、0.1g/5mLのチオ尿素と0.4g/5mLのアミドールの混合物をボルテックスミキサーでよく撹拌すると黒青色の溶液となった。pHメーター F−53により、5mol/LのNaOHを用いて混合溶液のpH値が約12.0になるように調製した。この混合溶液を、PTFE製内筒容器と耐圧ステンレス製外筒の二重密閉方式になっている水熱合成用の耐圧金属容器に移し、オートクレーブの中で、230℃で5時間、ソルボサーマル合成(溶媒:ホルムアミド)を行った。加熱後、容器が室温になるまで一晩、冷却した。得られた溶液を2本の遠沈管に等分し、遠心機を用いて、6000rpmで10分間遠心分離をした。得られた上澄み液を、分画分子量3500の透析膜を用いて透析(24h)を行うことで、青色発光CQD(Blue)水溶液を得た。
【0062】
<実施例2:青色発光炭素量子ドットの製造:CQD(Blue)>
0.8gの(a1)リグニン粉末と5mLのEDAを混合し、25mL石英るつぼへと移し替えた後、真空電気炉で窒素雰囲気下(4.0L/min)、360℃、2.5時間加熱することで、炭化リグニンを得た。
【0063】
0.1g/5mLの炭化リグニン粉末、EDA 2.5mL、0.1g/5mLのチオ尿素と0.4g/5mLのアミドールの混合物をボルテックスミキサーでよく撹拌する黒青色の溶液となった。pHメーターF−53により、5mol/LのNaOHを用いて混合溶液のpH値が約12.0になるように調製した。この混合溶液を、PTFE製内筒容器と耐圧ステンレス製外筒の二重密閉方式になっている水熱合成用の耐圧金属容器に移し、オートクレーブの中で、230℃で5時間、ソルボサーマル合成(溶媒:ホルムアミド)を行った.加熱後、容器が室温になるまで一晩、冷却した。得られた溶液を2本の遠沈管に等分し、遠心機を用いて、6000rpmで10分間遠心分離をした。得られた上澄み液を、分画分子量3500の透析膜を用いて透析(24h)を行うことで、青色発光CQD(Blue)水溶液を得た。
【0064】
<実施例3:緑色発光炭素量子ドットの製造:CQD(Green)>
0.5g/5mLの(a1)リグニン粉末(炭化処理なし)、5.0mLのEDA、0.5g/5mLのチオ尿素と2.0g/5mLのアミドールの混合物をボルテックスミキサーでよく撹拌すると、暗褐色の溶液となった。pHメーターにより、5mol/LのNaOHを用いて混合溶液のpH値が約12.0になるように調製した。この混合溶液を、PTFE製内筒容器と耐圧ステンレス製外筒の二重密閉方式になっている水熱合成用の耐圧金属容器に移し、オートクレーブの中で、230℃で5時間、水熱合成(溶媒:水)を行った。得られた上澄み液を、分画分子量3500の透析膜を用いて透析(24h)を行うことで、緑色発光CQD(Green)水溶液を得た。
【0065】
<実施例4:橙色発光炭素量子ドットの製造:CQD(Orange)>
0.8gの(a1)リグニン粉末と5mLのエチレンジアミン(EDA)を混合し、25mL石英るつぼへと移し替えた後、真空電気炉で窒素雰囲気下(4.0L/min)、360℃、2.5時間加熱することで、炭化リグニンを得た。
【0066】
0.5g/5mLの炭化リグニン粉末、5.0mLのEDA、0.5g/5mLのチオ尿素と2.0g/5mLのアミドールの混合物をボルテックスミキサーでよく撹拌すると、黒青色の溶液となった。pHメーターにより、5mol/LのNaOHを用いて混合溶液のpH値が約12.0になるように調製した。この混合溶液を、PTFE製内筒容器と耐圧ステンレス製外筒の二重密閉方式になっている水熱合成用の耐圧金属容器に移し、オートクレーブの中で、230℃で5時間、水熱合成(溶媒:水)を行った。得られた上澄み液を、分画分子量3500の透析膜を用いて透析(24h)を行うことで、橙色発光CQD(Orange)水溶液を得た。
【0067】
<実施例5:緑色発光炭素量子ドットの製造:CQD(Green)>
(a1)リグニンスルホン酸ナトリウム(リグニン粉末、商品名:バニレックスN)の代わりに、(a2)クラフトリグニン(針葉樹由来)を用いたこと以外は、実施例3の製造法に従って、CQDを合成した。
得られた上澄み液を、分画分子量3500の透析膜を用いて透析(24h)を行うことで、緑色発光CQD(Green)水溶液を得た。
【0068】
<実施例6:緑色発光炭素量子ドットの製造:CQD(Green)>
(a1)のリグニン粉末(商品名:バニレックスN)の代わりに、(a3)溶解クラフトパルプ蒸解前加水分解物を用いたこと以外は、実施例3の製造法に従って、CQDを合成した。
得られた上澄み液を、分画分子量3500の透析膜を用いて透析(24h)を行うことで、緑色発光CQD(Green)水溶液を得た。
【0069】
<実施例7:青色発光炭素量子ドットの製造:CQD(Blue)>
(a1)のリグニン粉末(商品名:バニレックスN)の代わりに、(a4)リグニンスルホン酸ナトリウム(低分子画分、商品名:サンパールCP)を用いたこと以外は、実施例3の製造法に従って、CQDを合成した。
得られた上澄み液を、分画分子量3500の透析膜を用いて透析(24h)を行うことで、緑色発光CQD(Blue)水溶液を得た。
【0070】
<実施例8:緑色発光炭素量子ドットの製造:CQD(Green)>
(a1)のリグニン粉末(商品名:バニレックスN)の代わりに、(a5)リグニンスルホン酸ナトリウム(商品名:バニレックスRN)を用いたこと以外は、実施例3の製造法に従って、CQDを合成した。
得られた上澄み液を、分画分子量3500の透析膜を用いて透析(24h)を行うことで、緑色発光CQD(Green)水溶液を得た。
【0071】
<実施例9:緑色発光炭素量子ドットの製造:CQD(Green)>
0.5g/5mLの(a1)リグニン粉末(炭化処理なし)、5.0mLの分岐ポリエチレンイミン(Branched−PEI、シグマアルドリッチ社、型番468533、数平均分子量423)、0.5g/5mLのチオ尿素と2.0g/5mLのアミドールの混合物をボルテックスミキサーでよく撹拌すると、暗褐色の溶液となった。pHメーターにより、5mol/LのNaOHを用いて混合溶液のpH値が約12.0になるように調製した。この混合溶液を、PTFE製内筒容器と耐圧ステンレス製外筒の二重密閉方式になっている水熱合成用の耐圧金属容器に移し、オートクレーブの中で、230℃で5時間、水熱合成(溶媒:水)を行った。得られた上澄み液を、分画分子量3500の透析膜を用いて透析(24h)を行うことで、発光性CQD水溶液を得た。
【0072】
<比較例1:炭素量子ドットの製造:m−フェニレンジアミンを使用>
アミドールのヒドロキシル基を含まない芳香族アミンであるm−フェニレンジアミンを用いたこと以外は、実施例3の製造法に従って、CQDを合成した。
この比較例1で得られた水溶液のUV−Visスペクトルと蛍光スペクトルを
図10に示す。アミドールを使用した場合と異なり、緑色蛍光は観測されず、490nmに蛍光ピーク波長を示す水色発光であった。また、蛍光量子収率は、非常に低く1%以下であった。
【0073】
<炭素量子ドットの評価>
上記のとおり製造した炭素量子ドットについて、下記の測定を行って評価した。
【0074】
<炭素量子ドット溶液の形態の評価方法>
製造された炭素量子ドット溶液の状況を目視で観察した。
溶液が均一な溶液又は分散液である場合:良好(G)
均一な溶液を得ることができず、大量の凝集物を得た場合:不可(NG)
【0075】
<UV−vis吸収スペクトルの測定方法>
炭素量子ドットの溶液を波長460nmで吸光度が0.1程度になるように希釈した。2面型石英セルに炭素量子ドット溶液を2mL入れた。紫外可視近赤外分光光度計を用いて、紫外可視吸収スペクトル(UV−vis吸収スペクトル)を測定した。
300〜800nmの近赤外から紫外領域に渡り、幅広い吸収が認められた:良好(G)
300〜800nmの近赤外から紫外領域に渡る、吸収が認められなかった:不可(NG)
【0076】
<蛍光スペクトルの測定方法>
約1mLの炭素量子ドットの溶液を4面型石英セルに入れた。蛍光光度計を用いて、蛍光スペクトルを測定した。
発光が観察されて、蛍光スペクトルが測定された:良好(G)
発光が観察されて、蛍光スペクトルが測定できない:不可(NG)
【0077】
<IRスペクトルの測定方法>
炭素量子ドットの溶液の水分を、減圧乾燥により除去し、炭素量子ドットの固体を得た。フーリエ変換赤外分光光度計を用いて、得られた炭素量子ドットの固体の赤外吸収スペクトル(IRスペクトル)を測定した。炭素量子ドットの表面にアミン基(−NH
2)、ヒドロキシ基(−OH)及びカルボキシ基(−COOH)等の親水基が存在するか否かを調べた。
【0078】
<原子間力顕微鏡(AFM)による観察方法>
原子間力顕微鏡(AFM)を用いて、炭素量子ドットを観察して、そのサイズを評価した。
AFM画像の断面図から、粒子の高さを炭素量子ドットのサイズとした。
【0079】
<XRDスペクトルの測定方法>
炭素量子ドットの固体についてX線回折装置を用いて、XRDスペクトル(X線回折パターン)を測定した。回折ピークから格子面間隔を見積もった。
【0080】
<ゼータ電位の測定方法>
炭素量子ドットの表面電荷状態を調べるために、ゼータ電位測定を実施した。
各種炭素量子ドットのゼータ電位測定を実施し、粒子表面電荷を評価した。吸収波長が360nmで吸光度が0.1程度の炭素量子ドット溶液を調製した.この溶液600μLと、あらかじめ作製しておいた10mM NaCl水溶液100μLをゼータ電位測定用のセルに入れ、マルバーン社製ゼータサイザーナノZSPを用いて表面電位(ゼータ電位)を測定した。
【0081】
実施例1〜4および9の結果を、まとめて表1に示す。
【0082】
【表1】
【0083】
<実施例2〜4:紫外可視(UV−vis)吸収スペクトル測定の結果>
実施例2〜4で得られた水溶液は、いずれもCQDに特有の茶褐の水溶液であった。それらのUV−Visスペクトルを
図1に示す。
図1において、横軸は波長(Wavelength)を示し、縦軸は吸光度(Absorbance)またはフォトルミネッセンス強度(PL Intensity)を示す。また、破線はUV−Vis(紫外−可視)吸収スペクトルを示し、実線は蛍光スペクトルを示す。
【0084】
CQDに特徴的な700nm付近からの吸収端がみられた。π共役系が伸びたグラフェン構造を有するカーボン材料は、長波長側に吸収端がみられることから、合成したCQDにはグラフェン構造を内部に有することが示唆された。実施例2のCQD(Blue:青)溶液は、約350nm付近でピーク(ショルダー)を示す。このピークは、生成物のベンゼン環とn電子をもつ発色基によるn→π
*遷移由来のピークと一致する。また、実施例3のCQD(Green:緑)と、実施例4のCQD(Orange:橙)では400〜600nmまでの範囲でブロードなピークが確認され、これはCQDの有する広い共役二重結合や、NやOといった元素を含む豊富な官能基が粒子表面に存在し、これら官能基が作る表面準位への電子遷移により生じたものであると考えられる。
【0085】
<実施例2〜4:蛍光スペクトル測定の結果>
実施例2〜4で得られた水溶液の蛍光スペクトルを
図1に示す。
図1において、横軸は波長(Wavelength)を示し、縦軸は吸光度(Absorbance)またはフォトルミネッセンス強度(PL Intensity)を示す。また、実線は蛍光スペクトルを示し、破線はUV−Vis(紫外−可視)吸収スペクトルを示す。
【0086】
蛍光スペクトルから各種CQDの蛍光波長は、実施例2のCQD(Blue:青)で425nm(Ex=337nm)、実施例3のCQD(Green:緑)は518nm(Ex=389nm)、実施例4のCQD(Orange:橙)は594nm(Ex=480nm)であった。また、各種CQD溶液の励起スペクトルと蛍光スペクトルの差(Stokes Shift:ストークスシフト)は約120nmだった。この大きなストークシフトは、有機蛍光分子では見られないものであり、CQDの特徴的である。
【0087】
<実施例2〜4:FT−IRスペクトル測定の結果>
実施例2〜4のCQDのIRスペクトルを
図2に示す。
図2において、横軸は波数(Wavenumber)を示し、縦軸は透過率(Transmittance)を示す。
【0088】
実施例3のCQD(Green)と実施例4のCQD(Orange)が同様のピークを示す一方で、実施例2のCQD(Blue)は他二つと大きく異なるピークを示していることが明らかである。CQD(Blue)は、3300cm
-1の幅広いピークはO−H結合の伸縮振動、2830〜2900cm
-1のピークはC−H(アルカン)の伸縮振動、1465cm
-1のピークはC−H(アルカン)の変角、1650cm
-1、1100cm
-1ピークはC=Cの伸縮振動、1180cm
-1ピークはC−O−C(環状)の伸縮振動と帰属した。実施例2のCQD(Blue)の表面は、非解離性の親水基であるヒドロキシル基が存在していると考えられた。
【0089】
実施例3のCQD(Green)は、3300cm
-1の幅広いピークはN−H結合の伸縮振動、3050cm
-1ピークはC−H(ピリジン)の伸縮振動、2770cm
-1のピークはC−H(アルカン)の伸縮振動、1650cm
-1ピークはC=Cの伸縮振動、1630cm
-1のピークは芳香族アミンのN−H変角、1330cm
-1のピークは芳香族アミンのC−Nの伸縮振動、1520cm
-1ピークはC=C、またはC=Nの伸縮振動、1230cm
-1、1034cm
-1のピークは、−SO
3Hの伸縮振動、1150cm
-1ピークはC−O−C(環状)の伸縮振動と帰属した。実施例4のCQD(Orange)も上に同様であった。これらの結果から、実施例3のCQD(Green)の表面は、解離性の親水基であるアミノ基(−NH
2)、スルホン基(−SO
3H)が表面官能基として存在していると考えられた。
【0090】
<実施例2〜4:セータ電位測定の結果>
実施例2〜4のCQD水溶液のゼータ電位のpH依存性を調査した結果を、
図3−1、
図3−2、および
図3−3に示す。実施例2のCQD(Blue)のゼータ電位は、ほぼゼロであった。これは、実施例2のCQD(Blue)表面は、解離性官能基は存在していないことを示す。これは、IRスペクトル測定で明らかとなった実施例2のCQD(Blue)の主な表面官能基がpHに依存しないヒドロキシル基であることと矛盾しない。
【0091】
実施例3のCQD(Green)は+1.44mV(水)、+13.4mV(pH3.0)、−22.4mV(pH11.0)であり、実施例4のCQD(Orange)は+1.44mV(水)、+5.48mV(pH3.0)、−14.8mV(pH11.0)となった。実施例2のCQD(Blue)とは異なり、実施例3のCQD(Green)、及び実施例4のCQD(Orange)は、ゼータ電位の値や符号がpHに依存することが判明した。これは、CQD表面に解離性官能基が存在し、pHによってプロトン化や脱プロトン化が起こっていることを示す。実施例3のCQD(Green)、及び実施例4のCQD(Orange)は共に、酸性条件下(pH3)では粒子表面の電荷は正に帯電し、塩基性条件下(pH11)では負に帯電したと考えられる。これは、IRスペクトル測定で明らかとなったCQD(Green/Orange)の主な表面官能基がアミノ基やスルホン基であることと矛盾しない。
【0092】
<実施例2〜4:原子間力顕微鏡(AFM)による観察の結果>
実施例2〜4の原子間力顕微鏡(AFM)で観察したCQDの画像を
図4に示す。図中の断面図は、画像中の直線A地点からB地点までの断面プロファイル(
図4下側)である。AFMの断面プロファイルからCQDのサイズは、約2〜3nmの粒子であることがわかった。
【0093】
<実施例2〜4:XRDスペクトルの測定結果>
実施例2〜4のCQDのX線回折パターンを
図5に示す。実施例2のCQD(Blue)は、2θ=27°及び2θ=40°近傍に回析ピークがあらわれた。2θ=27°のシャープなピークはグラファイトの(002)面の解析ピークと一致する(2θ=25°)。またブラックの式から算出した格子面間隔はCQD(Blue)がd=3.4Åとなり、グラファイトの面間隔が3.34Åと一致していた。従って、CQD(Blue)の粒子部分は結晶性の高いグラファイト構造を有していると考えられた。
【0094】
実施例3のCQD(Green)、及び、実施例4のCQD(Orange)はどちらも2θ=25°近傍にブロードな回析ピークがあらわれた。実施例2のCQD(Blue)で見られた結晶性グラファイト構造由来のピークは観測されなかった。実施例3のCQD(Green)及び実施例4のCQD(Orange)の粒子内部は、主にアモルファス構造を有していると考えられた。このアモルファス構造の影響で、格子面間隔は実施例3のCQD(Green)で3.80Å、実施例4のCQD(Orange)は3.75Åと、グラファイト(d=3.4Å)よりも広い面間隔を示した。
【0095】
<実施例5:UV−Visスペクトルと蛍光スペクトルの測定結果>
実施例5(リグニンとして(a2)を使用)で得られた水溶液のUV−Visスペクトルと蛍光スペクトルを
図6に示す。リグニン源として、(a1)と(a2)を比較した場合、両者に蛍光スペクトルに有意な差は見られなかった。
【0096】
<実施例6:UV−Visスペクトルと蛍光スペクトルの測定結果>
実施例6(リグニンとして(a3)を使用)で得られた水溶液のUV−Visスペクトル(左グラフ)と蛍光スペクトル(右グラフ)を
図7に示す。リグニン源として、(a1)と(a3)を比較した場合、(a1)を用いた方が、蛍光ピークの強度が増加することが明らかとなった。
【0097】
<実施例7:UV−Visスペクトルと蛍光スペクトルの測定結果>
実施例7(リグニンとして(a4)を使用)で得られた水溶液のUV−Visスペクトル(左グラフ)と蛍光スペクトル(右グラフ)を
図8に示す。リグニン源として、(a1)と(a4)を比較した場合、(a1)を用いた方が、蛍光ピークの強度が増加した。
【0098】
<実施例8:UV−Visスペクトルと蛍光スペクトルの測定結果>
実施例8(リグニンとして(a5)を使用)で得られた水溶液のUV−Visスペクトル(左グラフ)と蛍光スペクトル(右グラフ)を
図9に示す。リグニン源として、(a1)と(a5)を比較した場合、(a1)を用いた方が、蛍光ピークの強度が増加した。
【0099】
<実施例9:UV−Visスペクトルと蛍光スペクトルの測定結果>
実施例9で得られた水溶液のUV−Visスペクトル(左グラフ)と蛍光スペクトル(右グラフ)を
図10に示す。脂肪族ポリアミンとしてポリエチレンアミンを用いて緑色(Green)のCQDを得ることができた。実施例9のCQDは、526nmに蛍光ピーク波長を有し、蛍光量子収率は、1.5%であった。
【0100】
<比較例1:UV−Visスペクトルと蛍光スペクトルの測定結果>
比較例1(アミドールの代わりにm−フェニレンジアミンを使用)で得られた水溶液のUV−Visスペクトル(左グラフ)と蛍光スペクトル(右グラフ)を
図10に示す。アミドールを使用した場合と異なり、緑色蛍光は観測されず、490nmに蛍光ピーク波長を示す水色発光であった。また、蛍光量子収率は、非常に低く1%以下であった。