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特開2021-88524リポソーム組成物、それを含有する皮膚外用剤、及びリポソーム組成物の製造方法
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  • 特開2021088524-リポソーム組成物、それを含有する皮膚外用剤、及びリポソーム組成物の製造方法 図000008
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-88524(P2021-88524A)
(43)【公開日】2021年6月10日
(54)【発明の名称】リポソーム組成物、それを含有する皮膚外用剤、及びリポソーム組成物の製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/9728 20170101AFI20210514BHJP
   A61K 8/14 20060101ALI20210514BHJP
   A61K 8/34 20060101ALI20210514BHJP
   A61K 8/49 20060101ALI20210514BHJP
   A61K 8/67 20060101ALI20210514BHJP
   A61Q 19/00 20060101ALI20210514BHJP
【FI】
   A61K8/9728
   A61K8/14
   A61K8/34
   A61K8/49
   A61K8/67
   A61Q19/00
【審査請求】未請求
【請求項の数】16
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2019-219186(P2019-219186)
(22)【出願日】2019年12月4日
(71)【出願人】
【識別番号】506167878
【氏名又は名称】株式会社FTC
(71)【出願人】
【識別番号】519432082
【氏名又は名称】君島 明
(74)【代理人】
【識別番号】100159628
【弁理士】
【氏名又は名称】吉田 雅比呂
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 千織
【テーマコード(参考)】
4C083
【Fターム(参考)】
4C083AA011
4C083AA012
4C083AA031
4C083AA032
4C083AA111
4C083AA112
4C083AC022
4C083AC092
4C083AC111
4C083AC122
4C083AC172
4C083AC302
4C083AC432
4C083AC582
4C083AD331
4C083AD332
4C083AD491
4C083AD492
4C083AD571
4C083AD572
4C083AD602
4C083AD641
4C083AD642
4C083AD661
4C083AD662
4C083BB11
4C083CC02
4C083CC05
4C083DD23
4C083DD27
4C083DD31
4C083DD45
4C083EE12
4C083FF05
(57)【要約】
【課題】肌への浸透性をより高めて、肌の改善効果に優れたリポソーム組成物、それを含有する皮膚外用剤、及びリポソーム組成物の製造方法を提供する。
【解決手段】このリポソーム組成物は、成分 として(a)リン脂質、(b)多価アルコール、(c)油脂、(d)酵母による米発酵液、(e)ビタミンC誘導体を含有し、リポソームが形成されている。このリポソーム組成物は、(a)リン脂質、(b)多価アルコール、(c)油脂を含む原料を混合し加熱溶解して、第1原料液を得る工程と、(d)酵母による米発酵液に、(e)ビタミンC誘導体を含む肌改善作用を有する物質を溶解して第2原料液を得る工程と、前記第1原料液に、前記第2原料液を添加混合して、高圧乳化処理を行う工程とにより製造できる。皮膚外用剤は、上記リポソーム組成物を含有する。
【選択図】図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(a)〜(f):
(a)リン脂
(b)多価アルコー
(c)油
(d)酵母による米発酵
(e)ビタミンC誘導体
を含有し、
リポソームが形成されていることを特徴とするリポソーム組成物。
【請求項2】
前記リポソームの平均粒径が80〜150nmである、請求項1記載のリポソーム組成物。
【請求項3】
前記(a)リン脂質として、水添レシチン及びリゾホスファチジン酸を含有する、請求項1又は2記載のリポソーム組成物。
【請求項4】
前記(e)ビタミンC誘導体が3−O−エチルアスコルビン酸であり、前記リポソーム組成物のpHが3.0〜5.0である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項5】
更に、(f)ステロール及びビタミンEを含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項6】
更に、(g)リョクトウ成長点培養細胞エキス、(h)リンゴ果実培養細胞エキス、(i)シロキクラゲ多糖体、(j)低分子ヒアルロン酸、(k)ワイルドタイムエキスから選ばれた少なくとも1種を含有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載のリポソーム組成物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか1項に記載のリポソーム組成物を含有することを特徴とする皮膚外用剤。
【請求項8】
肌の保湿性向上のために用いられる、請求項7記載の皮膚外用剤。
【請求項9】
肌の弾力性向上のために用いられる、請求項7記載の皮膚外用剤。
【請求項10】
肌のキメ改善のために用いられる、請求項7記載の皮膚外用剤。
【請求項11】
(a)リン脂質、(b)多価アルコール、(c)油脂を含む原料を混合し加熱溶解して、第1原料液を得る工程と
(d)酵母による米発酵液に、(e)ビタミンC誘導体を含む肌改善作用を有する物質を溶解して第2原料液を得る工程と、
前記第1原料液に、前記第2原料液を添加混合して、乳化処理を行う工程とを含むことを特徴とするリポソーム組成物の製造方法。
【請求項12】
前記乳化処理を、高圧乳化処理によって行う、請求項11記載のリポソーム組成物の製造方法。
【請求項13】
前記(a)リン脂質として、水添レシチン及びリゾホスファチジン酸を用いる、請求項11又は12記載のリポソーム組成物の製造方法。
【請求項14】
前記(e)ビタミンC誘導体が3−O−エチルアスコルビン酸であり、前記リポソーム組成物のpHを3.0〜5.0に調整する、請求項11〜13のいずれか1項に記載のリポソーム組成物の製造方法。
【請求項15】
前記第1原料液を得る工程において、更に(f)ステロール及びビタミンEを含有させる、請求項11〜14のいずれか1項に記載のリポソーム組成物の製造方法。
【請求項16】
前記第2原料液を得る工程において、前記肌改善作用を有する物質として、更に(g)リョクトウ成長点培養細胞エキス、(h)リンゴ果実培養細胞エキス、(i)シロキクラゲ多糖体、(j)低分子ヒアルロン酸、(k)ワイルドタイムエキスから選ばれた少なくとも1種を用いる、請求項11〜15のいずれか1項に記載のリポソーム組成物の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、化粧料をはじめとする皮膚外用剤に好適なリポソーム組成物、それを含有する皮膚外用剤、及びリポソーム組成物の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、親水性基及び新油性基を有するリン酸脂質などからなり単層状又は多層状の小胞として組織されたリポソームを含有する組成物を、医薬品、医薬部外品、化粧品などに配合して、人体の健康上において治癒又は改善をもたらす有効成分を、人体の外界との境界である表面、とりわけ皮膚を通じて体内に浸透させ、貯留させるようにした製品が種々提案されている。
【0003】
このような従来技術として、下記特許文献1には、米糠、米胚芽等の植物素材から得られたスフィンゴ糖脂質について、ナノリポソーム内包させ、或いはナノ分散水溶液とし、かかるナノ化製剤を皮膚に適用することによる、皮膚中に内因性セラミドを増加させることにより、効率よく皮膚のバリア機能、及び水分保持機能を発揮させることが記載されている。
【0004】
また、下記特許文献2には、成分として、(a)リン脂質、(b)コレステロール及び/又はフィトステロール、(c)白金族金属コロイド、(d)水を含有し、成分(c)が、成分(a)及び成分(b)により形成されるリポソームに内包されていることを特徴とするリポソーム組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2012−184166号公報
【特許文献2】特開2008−266324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1の技術では、米糠、米胚芽等の植物素材から得られたスフィンゴ糖脂質を用いており、米に含まれる水溶性の有効成分については着眼されていない。また、特許文献2の技術では、分散媒として水を使用しており、肌への浸透性という点で更なる改良の余地があった。
【0007】
したがって、本発明の目的は、肌への浸透性をより高めて、肌の改善効果に優れたリポソーム組成物、それを含有する皮膚外用剤、及びリポソーム組成物の製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究した結果、酵母による米発酵液を分散媒として用いることにより、平均粒径が小さいリポソームが安定して形成されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明のリポソーム組成物は、次の成分(a)〜(f):
(a)リン脂
(b)多価アルコール
(c)油
(d)酵母による米発酵
(e)ビタミンC誘導体
を含有し、
リポソームが形成されていることを特徴とする。
【0009】
本発明のリポソーム組成物は、前記リポソームの平均粒径が80〜150nmであることが好ましい。
本発明のリポソーム組成物は、前記(a)リン脂質として、水添レシチン及びリゾホスファチジン酸を含有することが好ましい。
【0010】
本発明のリポソーム組成物は、前記(e)ビタミンC誘導体が3−O−エチルアスコルビン酸であり、前記リポソーム組成物のpHが3.0〜5.0であることが好ましい。
【0011】
本発明のリポソーム組成物は、更に、(f)ステロール及びビタミンEを含有することが好ましい。
【0012】
本発明のリポソーム組成物は、更に、(g)リョクトウ成長点培養細胞エキス、(h)リンゴ果実培養細胞エキス、(i)シロキクラゲ多糖体、(j)低分子ヒアルロン酸、(k)ワイルドタイムエキスから選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0013】
本発明の皮膚外用剤は、前述したいずれかのリポソーム組成物を含有することを特徴とする。
【0014】
本発明の皮膚外用剤は、肌の保湿性向上のために用いられるものであることが好ましい。
【0015】
本発明の皮膚外用剤は、肌の弾力性向上のために用いられるものであることが好ましい。
【0016】
本発明の皮膚外用剤は、肌のキメ改善のために用いられるものであることが好ましい。
【0017】
本発明のリポソーム組成物の製造方法は、(a)リン脂質、(b)多価アルコール、(c)油脂を含む原料を混合し加熱溶解して、第1原料液を得る工程と
【0018】
(d)酵母による米発酵液に、(e)ビタミンC誘導体を含む肌改善作用を有する物質を溶解して第2原料液を得る工程と、
前記第1原料液に、前記第2原料液を添加混合して、乳化処理を行う工程とを含むことを特徴とする。
【0019】
本発明のリポソーム組成物の製造方法においては、前記乳化処理を、高圧乳化処理で行うことが好ましい。
【0020】
本発明のリポソーム組成物の製造方法は、前記(a)リン脂質として、水添レシチン及びリゾホスファチジン酸を用いることが好ましい。
【0021】
本発明のリポソーム組成物の製造方法は、前記(e)ビタミンC誘導体が3−O−エチルアスコルビン酸であり、前記リポソーム組成物のpHを3.0〜5.0に調整することが好ましい。
【0022】
本発明のリポソーム組成物の製造方法は、前記第1原料液を得る工程において、更に(f)ステロール及びビタミンEを含有させることが好ましい。
【0023】
本発明のリポソーム組成物の製造方法は、前記第2原料液を得る工程において、前記肌改善作用を有する物質として、更に(g)リョクトウ成長点培養細胞エキス、(h)リンゴ果実培養細胞エキス、(i)シロキクラゲ多糖体、(j)低分子ヒアルロン酸、(k)ワイルドタイムエキスから選ばれた少なくとも1種を用いることが好ましい。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、酵母による米発酵液を分散媒として用いることにより、平均粒径が小さいリポソームを安定して形成することができ、それによってビタミンC誘導体などの肌改善作用を有する物質の肌への浸透性を高めて、肌改善効果を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
図1】本発明の実施例で得られたリポソーム組成物の200,000倍の透過型電子顕微鏡による写真である。
【発明を実施するための形態】
【0026】
本発明のリポソーム組成物は、次の成分(a)〜(f):
(a)リン脂
(b)多価アルコール
(c)油
(d)酵母による米発酵
(e)ビタミンC誘導体
を含有し、リポソームが形成されていることを特徴とする。
【0027】
本発明に用いられる成分(a)リン脂質は、グリセリンやスフィンゴシンを中心骨格として脂肪酸とリン酸が結合し、更にリン酸にアルコールがエステル結合した構造を有し、脂肪酸やアルコールの種類等によって多くの種類が存在する。リン脂質は、リポソーム組成物の脂質二分子膜を形成させる主成分として含有される。このような成分(a)リン脂質としては、通常の化粧料に使用されるものであれば特に限定されず、例えば、ホスファチジルコリン(即ち、レシチン)、ホスファチジルエタノールアミン、ホスファチジルセリン、ホスファチジルイノシトール、ホスファチジルグリセロール、ジホスファチジルグリセロール、ホスファチジン酸などのグリセロリン脂質、リゾホスファチジン酸などのリゾリン脂質が挙げられるが、本発明においては、特に、水添レシチン及びリゾホスファチジン酸を含有することが好ましい。リゾホスファチジン酸は、毛細血管の新生発現を誘導し、肌の深部から健やかなキメ構築をサポートする成分である。セラミドの産生を高め、バリア機能を整える力も備えている。肌の保水力をキープし、毛穴を目立たなくする効果も期待できる。
【0028】
成分(b)多価アルコールとしては、通常の化粧料に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、グリセリン、プロパンジオール、プロピレングリコール、ブチレングリコール、ペンチレングリコール、ヘキシレングリコールなど挙げられ、これらは1種又は2種以上を併用できる。特に、グリセリン、プロパンジオール、ブチレングリコール、ペンチレングリコールが好ましく用いられる。
【0029】
成分(c)油脂としては、通常の化粧料に使用されるものであれば特に限定されないが、例えば、アボガド油、アマニ油、ツバキ油、アルモンド油、サザンカ油、マカデミアナッツ油、トウモロコシ油、キョウニン油、ブドウ油、グレープシード油、メドフォーム油、ホホバ油、オリーブ油、ヒマワリ油、ナタネ油、シナモン油、卵黄油、ゴマ油、小麦胚芽油、サザンカ油、ヒマシ油、サフラワー油、綿実油、大豆油、落花生油、茶実油、カヤ油、米胚芽油、コメヌカ油、カカオ脂、ヤシ油、月見草油、シア脂、水添ヤシ油、パーム油、パーム核油、モクロウ核油、水添ヒマシ油などが挙げられる。また、酢酸ラノリン、液状ラノリン、サトウキビロウ、還元ラノリン、POEラノリンアルコールエーテル等のロウ類や、流動パラフィン、オゾケライト、スクワレン、パラフィン、イソパラフィン、オクタン、デカン、ドデカン、イソドデカン、ヘキサデカン、イソヘキサデカン等の炭化水素や、ラウリン酸、ミリスチン酸、パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン(ベヘニン)酸、オレイン酸、12−ヒドロキシステアリン酸、ウンデシレン酸、トール酸、イソステアリン酸、リノール酸、リノレイン酸、エイコサペンタエン酸(EPA)、ドコサヘキサエン酸(DHA)、アラキドン酸等の高級脂肪酸も用いることができる。本発明においては、特に、水添ヒマシ油、スクワラン、シュガースクワラン、オレイルグリセリル、ダイズステロール、を用いることが好ましい。
【0030】
成分(d)酵母による米発酵液は、リポソームの水相を形成すると共に、リポソームの周囲に存在する分散媒となる成分である。米発酵液は、米由来の原料を含む培地を用いて酵母を培養し、その培養液から採取されたものである。米由来の原料としては、例えば、米全粒粉、米粉、米糠、発芽米、米麹などが挙げられるが、特に米麹が好ましく用いられる。酵母としては、一般的に使用されている酵母であればいずれでもよく、例えば、サッカロマイセス属(Saccharomyces)や、シゾサッカロマイセス属(Schizosaccharomyces)などに属する酵母を使用することができる。中でもサッカロマイセス属に属する酵母が好ましく、サッカロマイセス・ベロナ(Saccharomyces Veronae)が特に好ましい。米発酵液は、例えば商品名「コメエキスコーケンBG」(株式会社高研製)や、商品名「コメエキスコーケンMPN」(株式会社高研製)や、商品名「コメ発酵液PD」(丸善製薬株式会社製)などの市販品を用いることもできる。米発酵液中には、例えば各種水溶性のアミノ酸、油溶性のアミノ酸、微量ミネラル、乳酸などの豊富な栄養成分が含有されており、肌に対するキメ、ハリ・弾力効果を高めることができる。
【0031】
成分(e)ビタミンC誘導体は、製品の安定性や、肌に対する浸透性を高めるためにビタミンC(L-アスコルビン酸)を改良した誘導体であり、例えば3−O−エチルアスコルビン酸、パルミチン酸アスコルビルリン酸3ナトリウム、リン酸アスコルビルナトリウム、リン酸アスコルビルマグネシウム、2−O−エチルアスコルビン酸などが挙げられるが、特に3−O−エチルアスコルビン酸が好ましく用いられる。ビタミンC誘導体は、肌に対する美白効果、直接的なメラニンを還元し、表皮ヒアルロン酸産生促進効果などをもたらす作用を有している。
【0032】
本発明のリポソーム組成物は、更に、成分(f)ステロール及びビタミンEを含有することが好ましい。ステロールとしては動物ステロール、植物ステロール(フィトステロール)、菌類ステロール等が挙げられる。動物ステロールとしては例えばコレステロール、コレスタノール、7−デヒドロコレステロールが挙げられる。また、植物ステロール(フィトステロール)としてはシトステロール、スチグマステロール、フコステロール、スピナステロール、ブラシカステロール等が挙げられる。また、植物ステロールの水素添加物であるフィトスタノールが挙げられる。菌類ステロールとしては例えばエルゴステロールが挙げられる。本発明に用いるステロールとして、商業的に入手可能な市販品を用いることができる。例えば、タマ生化学株式会社製の商品名「フィトステロールS」(フィトステロール)、日本精化株式会社製の商品名「コレステロールJSCI」(コレステロール)、コグニスジャパン株式会社製の商品名「GENEROL 122N」(フィトステロール)、Lipoid社製の商品名「LIPOID P75, LIPOID P100」等が挙げられる。
【0033】
本発明のリポソーム組成物は、更に、(g)リョクトウ成長点培養細胞エキス、(h)リンゴ果実培養細胞エキス、(i)シロキクラゲ多糖体、(j)低分子ヒアルロン酸、(k)ワイルドタイムエキスから選ばれた少なくとも1種を含有することが好ましい。
【0034】
成分(g)リョクトウ成長点培養細胞エキスについて説明すると、リョクトウ(緑豆)は、ヤエナリ(八重成)というマメ科植物にできる種子を指し、日本でも古くから食用されていたといわれている。リョクトウ成長点培養細胞エキスは、リョクトウ(緑豆)の幹細胞から抽出して培養した幹細胞エキスであり、高いエイジングケア効果を発揮し、光ダメージを軽減し、細胞を攻撃する炎症を鎮める。リョクトウ成長点培養細胞エキスは、市販されており、例えばInnovacos社の商品名「Plant C Stem」などを用いることができる。
【0035】
成分(h)リンゴ果実培養細胞エキスは、しなびにくく、長期保存が利く優れた特徴を有するスイス産のリンゴの品種ウトビラースパトラウバー(UttwilerSpatolauber)の幹細胞を培養したエキスであり、表皮幹細胞に栄養を与えて、表皮再生能力を助けるアンチエイジング効果を有する。リンゴ果実培養細胞エキスは、市販されており、例えばエイチ・ホルスタイン株式会社製、商品名「フィトセルテック マルス ドメスティカ」を用いることができる。
【0036】
成分(i)シロキクラゲ多糖体は、シロキクラゲから抽出された高い保湿力を持った純天然の植物性酸性多糖体である。分子量が100万以上と高いので、高い粘性と保湿効果が期待できる。シロキクラゲ多糖体は、市販されており、例えば日本精化株式会社製、商品名「Tremoist-SL、Tremoist-SLB、Tremoist-TP」、オリザ油化株式会社製、商品名「白キクラゲ多糖体-P」を用いることができる。
【0037】
成分(j)低分子ヒアルロン酸(オリゴヒアルロン酸)は、皮膚表面を覆うだけでなく、角質層に深く浸透することで、皮膚の内側からのうるおいに寄与する。低分子ヒアルロン酸(オリゴヒアルロン酸)は、角質に浸透し、長時間留まるため、保湿力が持続する。低分子ヒアルロン酸(オリゴヒアルロン酸)は、市販されており、例えばキューピー株式会社製、商品名「ヒアロオリゴR」を用いることができる。
【0038】
成分(k)ワイルドタイムエキスは、シソ科植物ワイルドタイム(学名:Thymus serpyllum 英名:Creeping thyme)の全草から水、エタノール、1,3-ブチレングリコール又はこれらの混合液で抽出して得られるエキスである。メラニンを表皮細胞に運搬し、表面化させるタンパク質「キシネン」を抑制する効果に優れ、メラニンの輸送を抑制することで美白効果を発揮する。
【0039】
本発明のリポソーム組成物は、上記化合物のほかに、本発明の効果を損なわない範囲であれば、通常、皮膚外用組成物に使用できる成分を配合することができる。例えば、界面活性剤、加脂剤、シリコーン類、保湿剤、高分子類、紫外線吸収剤、金属封鎖剤、溶剤、pH調節剤、ビタミン類、酸化防止剤、酸化防止助剤、防腐剤、香料などが挙げられる。
【0040】
本発明のリポソーム組成物のpHは、3.0〜8.0であることが好ましく、3.0〜5.0であることがより好ましい。
【0041】
本発明のリポソーム組成物は、米発酵液を分散媒として用いたことにより、平均粒径の小さなリポソームを安定して形成することができる。リポソームの平均粒径は、50〜500nmであることが好ましく60〜150nmであることがより好ましい。リポソームの平均粒径が上記の範囲にあることにより、ビタミンC誘導体などの肌改善作用を有する物質の肌への浸透性を高めることができる。なお、リポソームの平均粒径は、レーザ回折式粒子径分布測定装置、例えば商品名「SALD-7500」(株式会社 島津製作所製)を用いて測定することができ、メディアン径として求めることができる。
【0042】
本発明の皮膚外用剤は、上記リポソーム組成物を含有することを特徴とする。本発明の皮膚外用剤としては、例えば、化粧水、乳液、クリーム、美容液、ジェル状化粧料、パック料、育毛剤、日焼け止め化粧料、下地化粧料、リキッドファンデーション、クリームファンデーション、ヘアトリートメント、ヘアリンス、ボデイ用化粧料等が挙げられる。
【0043】
皮膚外用剤中の成分(a)リン脂質の含有量は、0.1〜1.0質量%が好ましく、0.1〜0.5質量%がより好ましい。また、成分(b)多価アルコールの含有量は、1〜20質量%が好ましく、1〜8質量%がより好ましい。また、成分(c)油脂の含有量は、0.05〜30.0質量%が好ましく、0.05〜10.0質量%がより好ましい。更に、成分(d)酵母による米発酵液の含有量は、40〜99.0質量%が好ましく、80〜99.0質量%がより好ましい。更にまた、成分(e)ビタミンC誘導体の含有量は、0.1〜5.0質量%が好ましく、0.3〜2.0質量%がより好ましい。
【0044】
本発明の皮膚外用剤は、後述する試験例に示されるように、肌の保湿性向上、肌の弾力性向上、肌のキメ改善効果に優れており、肌の保湿性向上用、肌の弾力性向上用、肌のキメ改善用の組成物として使用することができる。
【0045】
なお、本発明の皮膚外用剤の上記効果をもたらすための成人1日当たりの使用量は、例えば顔全体の面積当たりの使用量に換算すると、1〜10gが好ましく、1〜3gがより好ましい。
【0046】
次に、本発明のリポソーム組成物の製造方法は、(a)リン脂質、(b)多価アルコール、(c)油脂を含む原料を混合し加熱溶解して、第1原料液を得る工程と、(d)酵母による米発酵液に、(e)ビタミンC誘導体を含む肌改善作用を有する物質を溶解して第2原料液を得る工程と、前記第1原料液に、前記第2原料液を添加混合して、乳化処理を行う工程を含むことを特徴とする。
【0047】
第1原料液を得る工程は、例えば、(a)リン脂質、(b)多価アルコール、(c)油脂を含む原料を、プロペラ攪拌機等の攪拌機に投入し、80〜85℃にて、10〜15分間攪拌することによって行うことができる。
【0048】
第2原料液を得る工程は、(d)酵母による米発酵液に、(e)ビタミンC誘導体などを含む肌改善作用を有する物質や、その他の水溶性の原料を、プロペラ攪拌機等の攪拌機に投入して、攪拌溶解することによって行うことができる。第2原料液を得る工程は、いくつかの原料毎に分けて、複数段階で行うことができる。
【0049】
第1原料液に、第2原料液を添加混合して、乳化処理を行う工程は、例えば高圧乳化処理、超音波処理法、凍結融解法などによって行うことができる。高圧乳化処理を行う場合は、例えば「ナノマイザー」又は「ナノヴェイタ」(商品名、ナノマイザー株式会社製)や、「マイクロフルイダイザー」(商品名、株式会社パウレック製)を用いて、好ましくは圧力50Mpa〜200Mpaの条件で行うことができる。超音波処理法を行う場合は、例えば「ハンドヘルド超音波装置 UP50H(50W、30kHz)」(商品名、BRANSON 社製)、「VialTweeter 超音波反応器 UTR200」(商品名、hielScher Ultrasound Technology 社製)を用いて調製を行うことができる。この場合、前述したように、第2原料液を得る工程を、いくつかの原料毎に分けて複数段階で行い、それぞれの原料毎に順次、第1原料液に添加してもよい。
【実施例】
【0050】
<実施例1>(美容液の製造)
下記表1の配合により、リポソーム組成物を作成した。
【0051】
【表1】
手順としては、まず、グリセリン、ペンチレングリコールを、プロペラ攪拌機を有するミキサーに投入して攪拌混合し、これに、水添加レシチン、リゾホスファチジン酸を添加混合して、加熱溶解した。
更に、上記混合液に、オクチルドデカノール、スクワラン、オレイルグリセリルエーテル、フィトステロール、水添ヒマシ油、トコフェロールを添加混合して、80℃で加熱溶解し、第1原料液を得た。
【0052】
次に、米発酵液に、アミノ酸混合物、リンゴ果実培養細胞エキス、ロドデンドロンフェルギネウム葉培養細胞エキス、アデノシン三リン酸2Na、ワイルドタイムエキス、1,3ブチレングルコール、フェノキシエタノール、シロキクラゲ多糖体、ヒアロオリゴ糖、3−O−エチルアスコルビン酸、クエン酸を添加混合して、80〜85℃で加熱溶解し、第2原料液を得た。
【0053】
第1原料液に第2原料液を添加して、「ナノマイザー」(商品名、ナノマイザー株式会社製)を用いて、50〜150mPaにて高圧乳化処理を行い、リポソーム組成物を得た。このリポソーム組成物の200,000倍の透過型電子顕微鏡による写真を図1に示す。この写真に示されるように、このリポソーム組成物は、単層状又は多層状の小胞として組織されたリポソームを有していることがわかる。また、レーザ回折式粒子径分布測定装置「SALD-7500」、「SALD-7100」(株式会社 島津製作所製)を用いて測定した平均粒径(メディアン径)は、60〜150nmの範囲であった。
【0054】
一方、下記表2の配合原料を80℃で加熱攪拌して溶解させ、粘度調整液を作成した
【0055】
【表2】
次に、表1の配合からなるリポソーム組成物と、表2の配合からなる粘度調整液とを、質量比で2.5:1.0の割合で混合して、美容液を製造した。
【0056】
<試験例>
実施例1で得た美容液を、40歳以上49歳以下11名、50歳以上59歳以下11名の合計22名の日本人女性に使用してもらい、使用開始前と、使用開始4週間後の肌の状態を観察し、皮膚水分量、皮膚弾力性、キメレプリカ画像の数値解析を行った。
【0057】
皮膚水分量は、皮膚計測器「コルネオメーターCM825」(商品名、株式会社インテグラル製)を用い、頬骨の上と左右5mmずつずらした部位の3箇所を測定し、その平均値で表した。
【0058】
皮膚弾力性は、皮膚粘弾性測定装置「キュートメーターMPA580」(商品名、株式会社インテグラル製)を用い、耳朶下の付根と唇端とを結んだ直線上の、耳朶下の付根から4cmの部位を3回測定し、統計解析によって、皮膚弾力性の振幅最大値、振幅最小値、戻り率を求めた。
キメレプリカ画像の数値解析は、耳朶下の付根と小鼻を結んで、耳朶下の付根から7cmの部分でレプリカを採取し、統計学的P検定によって、キメ体積率、キメ平均深度、キメ個数を測定した。
【0059】
キメ画像の撮影は、耳朶下の付根と小鼻を結んで、耳朶下の付根から7cmの部分を、60倍拡大カメラを使用し、反射画像で撮影した。
【0060】
皮膚水分量の推移を下記表3に示す。
【0061】
【表3】
平均値±標準偏差 n=22
塗布前と塗布4週間後を対応のある検体で統計解析を行った。
*:P<0.05 **:P<0.01 ***:P<0.001
【0062】
皮膚弾力性の推移を下記表4に示す。
【0063】
【表4】
平均値±標準偏差 n=22
塗布前と塗布4週間後を対応のある検体で統計解析を行った。
*:P<0.05 **:P<0.01 ***P<0.001
表4に示されるように、塗布前よりも塗布後の方が、皮膚弾力性の振幅最大値、振幅最小値も小さくなっており、また、戻り率も大きくなっているので、皮膚の弾力性が向上したことがわかる。
【0064】
キメレプリカ画像・数値解析の推移を下記表5に示す
【0065】
【表5】
平均値±標準偏差 n=22
塗布前と塗布4週間後を対応のある検体で統計解析を行った。
*:P<0.05 **:P<0.01 ***:P<0.001
表5に示されるように、塗布前よりも塗布4週間後の方が、キメ体積率、キメ平均深度、キメ個数が大きくなっており、肌のキメが細かくなっていることがわかる。
図1