【実施例】
【0120】
以降では、本発明は、実施例によってさらに詳細に記載される。これらの実施例は例示だけが目的であり、本発明の範囲を限定するものとみなすべきでないことは、当業者に明らかになる。
【0121】
(実施例1:各ヒト免疫グロブリンアイソタイプのためのヘテロダイマー形成のための抗体Fc CH3ドメイン改変体の設計(配列決定))
ヘテロダイマー形成を有利にするCH3ドメイン変異を導入することによって、各ヒト免疫グロブリンアイソタイプのためのヘテロダイマーFc断片を作製するために、ヘテロダイマー形成のための相互作用において主要な役割を演じるCH3ドメイン間のアミノ酸配列類似性を、先ず下記のように分析した。この点に関しては、CH3A:CH3Bのヘテロ二量体化が、Fc改変体がヘテロダイマーを高い収量で形成するように駆動するように、以前の文献または特許文書(Choiら2016年;韓国特許出願番号2015−0142181)において公開されている戦略によって、ヘテロダイマーのCH3A:CH3B対(本発明では、CH3AおよびCH3Bは、第1のFc領域のCH3ドメインおよび第2のFc領域のCH3領域をそれぞれ意味する)を生成するために、CH3ホモダイマー界面に非対称の変異を導入することによってヘテロダイマーFc改変体(A107)を生成した。
図3は、各ヒト抗体免疫グロブリンG(IgG)アイソタイプのためのCH3ドメインの配列を整列させ、比較する。各アミノ酸配列は、国際免疫遺伝学情報システム(IMGT;URL:http://www.imgt.org/)から得た。特に、様々なアロタイプの間で、血清中半減期が他のIgGアイソタイプのものと類似のレベルに維持されることが報告されたG3m(s,t)の配列をIgG3のために使用した(Stapleton NMら、2011年)。
【0122】
配列決定の結果は、IgG1、IgG2およびIgG3におけるものと異なり、A107変異が導入される位置のうちの409位のアミノ酸がアルギニンであることを除いて、IgG4が全てのアイソタイプにおいて保存されている配列を有することを示した。したがって、A107変異対をIgG1以外のアイソタイプに導入するための位置として、同じアミノ酸配列番号を有する位置を選択した。本発明における全てのアミノ酸の位置は、EUインデックスに従って番号付けされる。
【0123】
(実施例2:各ヒト免疫グロブリンアイソタイプのためのヘテロダイマー形成のための免疫グロブリンFc CH3ドメイン改変体の設計(構造的モデル化))
各アイソタイプのためのCH3ドメイン改変体を実際に構築する前に、ヘテロダイマーを形成するようにA107変異対を実施例1で選択された位置に安定して導入することができたかどうかを、
図3に示すような各変異で導入した改変体配列を使用した構造的モデル化を通して予測した。構造的モデル化は、既知の免疫グロブリンFcヘテロダイマー改変体構造(PDB ID:4X98)を鋳型として使用して、オンラインモデル化サーバー(URL:https://swissmodel.expasy.org/;Biasini Mら、2014年)を通して予測した。CH3ドメインの構造変化および変異の導入の後のA107変異の位置を観察するために、タンパク質構造を可視化することができるPymolソフトウェアを使用して、得られた構造の各々を重ねた。重ねた構造では、A107変異が各アイソタイプに導入されたときでも、IgG1アイソタイプに基づいて構築され、CH3A:CH3B Fcヘテロダイマーを形成する従来のA107改変体のモデル化構造と比較して、大きな変化なしで構造が維持されたことが分かった。特に、導入されたA107変異アミノ酸残基の方向はほとんど一貫していたこと、および変異したアミノ酸の間の相互作用の距離も類似のレベルに維持されたことが示された(
図4を参照されたい)。
【0124】
(実施例3:各ヒト免疫グロブリンアイソタイプのためのA107ヘテロダイマーFcアイソタイプ改変体の構築)
実施例1の配列決定および実施例2の構造的モデル化を通して設計したA107ヘテロダイマーFcアイソタイプ改変体を、当業者によって実行される部位特異的変異誘発方法により、NotI/HindIII制限酵素および合成オリゴヌクレオチド(Macrogen、Korea)を使用してシグナル配列−ヒンジ−CH2−CH3を有するように、動物細胞発現ベクターpcDNA3.1(+)(Invitrogen、USA)の中にインフレームでクローニングした(
図5を参照されたい)。
【0125】
使用したヒンジドメインでは、タンパク質融合の間のジスルフィド結合の生成を阻止するために、ヘテロダイマー形成のためのコアヒンジ領域の中のシステイン残基以外の、上部ヒンジ領域の中のシステイン残基をセリン残基で置換した。特に、IgG3の場合、IgG3の高い抗体エフェクター機能(ADCCおよびCDC)が、G3m(s,t)アロタイプのヒンジドメインの47アミノ酸のうちでコアヒンジドメインのC末端の15アミノ酸だけによっても維持されることが、文献で見出された(Dall’Acqua WFら、2006年)。したがって、
図5に示す配列のC末端の15アミノ酸だけを使用した。
【0126】
下の表2は、野生型および本発明のA107ヘテロダイマーのFc改変体対におけるCH3領域のアミノ酸配列情報を示す。
【表2-1】
【表2-2】
【0127】
(実施例4:各ヒト免疫グロブリンアイソタイプのためのA107ヘテロダイマーFc改変体のヘテロ二量体化能力の評価)
実施例3で構築されたA107ヘテロダイマーFcアイソタイプ改変体が野生型A107改変体のものに類似のヘテロ二量体化能力を実際に有するかどうかを調べるために、同じ種類の研究でFc改変体のヘテロ二量体化能力を評価するために主に使用される、scFv−Fc
CH3A/Fc
CH3B発現系を使用した(Choiら、2013年)。
図6は、scFv−Fc
CH3A/Fc
CH3B発現系を示す概略図である。scFv−Fc
CH3A/Fc
CH3B発現系において精製される抗体は、scFv−Fc
CH3Aホモダイマー(103kDa)、scFv−Fc
CH3A/Fc
CH3Bヘテロダイマー(78kDa)およびFc
CH3Bホモダイマー(53kDa)の間で異なる分子量を示すので、ヘテロダイマーの形成の程度は、SDS−PAGEで比較することができる。
【0128】
Fc
CH3Bベクターとして、実施例3で構築されたベクターを使用した。さらに、scFvをFc
CH3AのN末端だけに導入することによって、すなわち、pcDNA3.1(+)−scFv−ヒンジ−CH2−CH3A(scFv−Fc
CH3A)のフォーマットを提供することによってベクターをクローニングした。
図7は、scFv−Fc
CH3A/Fc
CH3B発現系において使用される動物細胞発現ベクターpcDNA3.1(+)−scFv−ヒンジ−CH2−CH3A(scFv−Fc
CH3A)の概略図である。使用されるscFv抗体は、DR4に特異的に結合するヒト化抗体hAY4の親和性強化バージョンであるhAY4aのVHおよびVL領域を連結することによって得られる抗体である(Lee, Parkら2010年)。ヒンジドメインの直前に位置するNotI制限酵素およびBsiWI制限酵素を使用して、クローニングを実行した。改変体のための対照として、野生型Fcを同じフォーマット(scFv−Fc/Fc)で構築した。
【0129】
(実施例5:各ヒト免疫グロブリンアイソタイプのためのA107ヘテロダイマーFc改変体を含む抗体の発現および精製)
構築されたscFv−Fc
CH3AおよびFc
CH3Bの同時発現を、HEK293−F細胞(Invitrogen)の中に発現ベクター(1:1の比)およびポリエチレンイミン(PEI)(Polyscience)の混合物を一時的にトランスフェクトし、無血清FreeStyle293発現培地を含有する振盪フラスコの中で細胞を培養することによって実行した。詳細な方法は、以下の通りである。
【0130】
振盪フラスコ(Corning)中の200mLのトランスフェクションのために、100mlの培地にHEK293−F細胞を2.0×10
6細胞/mlの密度で播種し、8%のCO
2の下の150rpmで培養した。各ヒト化抗体を生成するために、各抗体のための重鎖および軽鎖プラスミドを、10mlのFreeStyle293発現培地(Invitrogen)に250μgの総量(2.5μg/ml)(軽鎖について125μgおよび重鎖について125μg)で希釈し、培地を、その中に希釈された750μgのPEIを含有する10mlの培地と混合した(7.5μg/ml)。培地混合物を、室温で10分間インキュベートした。次に、インキュベートした培地混合物を100mlの播種した細胞に加え、8%のCO
2の下の150rpmで4時間インキュベートし、その後、FreeStyle293発現培地の残りの100mlをそれに加え、続いて5〜7日間インキュベートした。このインキュベーションの間、細胞によって生成されたタンパク質、すなわちFc改変体を含む抗体を細胞から分泌させ、培地に蓄積させた。この理由から、細胞培養の後2500rpmで20分間の遠心分離によって収集した細胞培養上清から、プロテインAセファロースカラム(GE Healthcare)を使用してタンパク質を精製した。この場合、プロテインAカラムの会社によって提供された標準プロトコールを参照して、精製工程を実行した。BCAタンパク質アッセイキット(Thermo)における溶液を使用して562nmの波長で吸光度を測定し、作成した標準曲線によってその量を決定することによって、精製されたタンパク質を定量化した。
【0131】
(実施例6:各ヒト免疫グロブリンアイソタイプのためのA107ヘテロダイマーFc改変体のヘテロ二量体化能力の評価)
実施例5で精製され、各アイソタイプのA107ヘテロダイマーFc改変体を含む5μgの抗体を、非還元条件下において12%SDS−PAGEで分析した(
図8)。CH3A改変体のホモダイマーは、103kDで観察され;CH3B改変体のホモダイマーは、53kDで観察され;CH3B改変体のモノマーは、25kDで観察され;CH3A改変体およびCH3B改変体のヘテロダイマーは、78kDで観察された。ホモ二量体化の程度をより正確に調べるために、ウェスタンブロッティングも実行した。12%SDS−PAGE分析におけるものより小さかったタンパク質の0.1μgを非還元条件下で単離し、当技術分野で公知の従来の方法によってタンパク質を抗ヒトIgG−APコンジュゲート抗体(Sigma)で次に処理することによって、ウェスタンブロッティングを実行した(
図9)。
【0132】
図8および9に見られるように、対照である野生型CH3ドメインを導入したIgG1ヘテロダイマーでは、CH3AおよびCH3Bの各々のホモダイマーならびにCH3A:CH3BヘテロダイマーはSDS−PAGEで全て観察されたが、IgG1を除いてIgG2、IgG3およびIgG4の中にA107ヘテロ二量体化変異を導入することによって得られた、各ヒト免疫グロブリンアイソタイプのためのA107ヘテロダイマーFc改変体は、以前に報告されたIgG1に基づくA107改変体のものに類似のまたはより高い収量でヘテロダイマーを全て形成した。このときに、IgG4改変体については、CH3AまたはCH3Bを含むFcモノマー(半分のFc)も観察されたが、それは天然に存在するIgG4の特性の1つであり、血液中のFabアーム交換の発生の前にヒンジドメイン(特に、コアヒンジ領域の228位にセリン)に対して半分のFcを形成する特性から生じる(Liu Hら、2012年)。
【0133】
(実施例7:ヒト/マウスIL−12融合タンパク質の構築)
実施例1〜6のアイソタイプ改変体は、以前に報告されたIgG1に基づくA107ヘテロダイマーFc改変体のそれと類似のレベルで、それらのヘテロ二量体化能力を保持することが見出された。これらのアイソタイプ改変体の間で、IgG4に基づく改変体(γ4−A107)を使用して、長期持続IL−12融合タンパク質を構築した。天然に存在するIL−12は、2つのサブユニット、p35サブユニット(p35;IL−12A)およびp40サブユニット(p40;IL−12B)で構成され、2つのサブユニットは相互作用して活性を有するヘテロダイマーを形成する。2つのサブユニットは、2つのサブユニットの間に存在する単一のジスルフィド結合によってより強力におよび安定してカップリングするので、このヘテロダイマーの形成は達成される。したがって、天然に存在するサイトカインのヘテロダイマー形態を維持するために、IL12の2つのサブユニット(p35およびp40)を各ヘテロダイマーFc鎖のN末端に遺伝子的に融合させた。
【0134】
融合タンパク質の構築のためのヘテロダイマーFc改変体として、IgG4に基づき、A107変異の導入によってヘテロダイマーを形成し得るγ4−A107を使用した。以前に報告されたように、抗体およびサイトカインの融合であるイムノサイトカインの構築において、IgG1の抗体エフェクター機能(ADCC/CDCなど)はin vivoクリアランスをむしろ促進する。この理由から、IgG1と比較してADCC/CDC機能をほとんど示さないIgG4アイソタイプを使用して、融合タンパク質を構築した(Gillies SDら、1999年)。
【0135】
図10は、本発明におけるIL−12組換えタンパク質、γ4−A107を使用して得られた一価のIL−12融合タンパク質(一価IL−12−Fc)、および野生型Fcを使用して得られた二価のIL−12融合タンパク質(二価IL−12−Fc)の概略図を示す。特に、
図10(C)は、本発明におけるCH3改変体対を導入することによって構築された融合タンパク質を示す。シグナル配列を排除した成熟形態をコードする、ヒトIL−12(hIL−12、Uniprotエントリー名P29460、P29459;配列番号17〜18)およびマウスIL−12(mIL−12、Uniprotエントリー名P43432、P43431;配列番号19〜20)の各々のDNA配列を増幅し、各増幅生成物を、
図11(A)および11(B)に示すようにNotI/BsiWI制限酵素の使用によって、γ4−A107改変体を含有する動物細胞発現ベクターの中にインフレームでクローニングした。生じたタンパク質は、それぞれ、一価hIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcと命名した。特に、ヒト/マウスp35サブユニットがp40サブユニットと十分に相互作用できるように、15アミノ酸からなる可撓性ペプチドリンカーを、p35サブユニットとヒンジドメインの間に加えた(可撓性(G
4S)
3リンカー)。
図10(C)に示すタンパク質の比較例として、ヒトIL−12(hIL−12)およびマウスIL−12(mIL−12)の各々を野生型IgG4 Fc(wt IgG4)に融合することによって、二価hIL−12−Fcおよび二価mIL−12−Fcを構築した。単一のFcをヘテロダイマー形態においてのみ活性を有するIL−12に融合するために、IL−12の2つのサブユニットを15アミノ酸ペプチドリンカーによって互いに連結し、
図12に示すようにNotI/BsiWI制限酵素の使用によって、γ4−A107改変体を含有する動物細胞発現ベクターの中にインフレームで次にクローニングした。比較例は、IL−12融合タンパク質を作製するために以前の研究で使用された融合タンパク質である(Lisan S. Pengら、1999年)。
【0136】
下の表3は、融合タンパク質の構築のために使用されたヒトおよびマウスのIL−12のサブユニットの成熟形態のためのアミノ酸配列を示す。
【表3-1】
【表3-2】
【0137】
(実施例8:IL−12融合タンパク質の発現/精製)
図10(C)の一価IL−12−Fc融合タンパク質は、実施例5に記載の方法により、ヒト/マウスIL−12.p40−γ4−A107Aおよびヒト/マウスIL−12.p35−γ4−A107B発現ベクター(1:1の比)から発現させ/精製した。
図10(B)の二価IL−12−Fc融合タンパク質は、ヒト/マウスscIL−12−IgG4 Fc(wt)発現ベクターの単一のトランスフェクションを通して発現させ/精製した。全ての融合タンパク質は、100mlのHEK293F細胞培養物につき12〜13mgの量で発現させ/精製した。
【0138】
精製された一価IL−12−Fcおよび二価IL−12−Fc融合タンパク質の各々の5μgを、非還元条件下において12%SDS−PAGEで分析した(
図13)。IL−12.p40−CH3A改変体のモノマーは、60kDで観察され;IL−12.p40−CH3A改変体のホモダイマーは、120kDで観察され;IL−12.p35−CH3B改変体のモノマーは、50kDで観察され;IL−12.p35−CH3B改変体のホモダイマーは、100kDで観察され;IL−12.p40−CH3A改変体およびIL−12.p35−CH3B改変体のヘテロダイマーは、110kDで観察された。しかし、ヒトおよびマウスのインターロイキンサブユニットを連結することによって得られたタンパク質については、わずかに異なるサイズのバンドが観察され、これらのバンドは異なるグリコシル化パターンからもたらされることが文献で見出された(Loら、2007年)。さらに、上の実施例6の記載と同様に、IgG4に基づく全てのIL−12融合タンパク質においてモノマーが観察された。p35サブユニットがp40サブユニットの助けを借りずにモノマー形態で天然に発現されないという以前の報告に類似して、ヘテロダイマーFc改変体を使用して得られた一価IL−12−Fc融合タンパク質において、p40サブユニット連結CH3Aモノマーだけが観察された(Gilliesら、1998年b)。
【0139】
図14は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって融合タンパク質を分析した結果を示す。オリゴマーは、一価hIL−12−Fc融合タンパク質から部分的に観察された。
【0140】
(実施例9:IL−12受容体への一価hIL−12−Fc融合タンパク質の結合親和性の評価)
実施例8において発現および精製された、一価hIL−12−FcのIL−12受容体への結合親和性を、二価hIL−12−Fcのそれと比較分析した。
【0141】
図15は、構築された一価hIL−12−Fcが、二価hIL−12−Fcと比較して、IL−12受容体への結合親和性を示し得ることを決定するために実行したFACS−Calibur(BD Biosciences)分析の結果を示す。
【0142】
具体的には、ヒト末梢血から免疫細胞(PBMC)を単離するために、5mlのFicoll(GE Healthcare)を15ml試験管に充てんした。採取した血液をPBS(pH7.4)と1:1で混合し、振盪させ、次に、10mlの血液をとり、Ficollと混合しないように750gで20分の間「ブレーキなし」の状態でFicoll含有試験管の中で遠心分離した。次に、Ficollの上に形成したバフィーコートを回収し、PBS(pH7.4)で2回洗浄し、次に、T細胞、B細胞、NK細胞および単球を含むPBMCを得た。単離した正常なPBMCは、IL−12の結合が観察できるほど大量にIL−12Rを発現しなかった。この理由から、T細胞およびNK細胞を活性化できるように、マイトジェンPHA(Sigma−Aldrich)による処理によって細胞を72時間刺激した。細胞をPHAで処理するとき、免疫細胞が分裂する間にIL−12受容体がT細胞およびNK細胞で発現されることが報告された。PBMCを1×10
6細胞/mlの密度で10%FBS含有RPMI1640培地に加え、マイトジェンPHAを10μg/mlの濃度でそれに加え、その後細胞を37℃で72時間、5%CO
2インキュベーターの中で培養した。正常なPBMCおよびPHA活性化PBMCを冷PBS(pH7.4)で洗浄し、試料あたり5×10
5細胞を調製した。Fc(A107)、二価hIL−12−Fcおよび一価hIL−12−Fcの各々を1μMの濃度で各試料に加え、4℃で30分の間インキュベートし、次に冷PBS(pH7.4)で洗浄した。各試料をFITCコンジュゲートヒト抗IgG4二次抗体(Sigma−Aldrich)と4℃で30分間インキュベートし、PBS(pH7.4)で洗浄し、次にフローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Bioscience)によって分析した。分析の後、各試料のヒストグラムグラフを得、IL−12受容体への一価hIL−12−Fcの結合親和性を評価した。
【0143】
分析の結果は、二価hIL−12−Fcおよび一価hIL−12−Fcが、IL−12受容体を発現しない正常なPBMCに結合せず、IL−12受容体を発現するPHA活性化PBMCだけに結合したことを示した。したがって、IL−12受容体への一価hIL−12−Fcの結合親和性が、二価hIL−12−Fcのものと等しいことが判明した。
【0144】
(実施例10:PBMC増殖を誘導する一価hIL−12−Fc融合タンパク質の能力の評価)
IL−12融合タンパク質のIL−12部分が、IL−12受容体へのその結合によって実際の組換えIL−12(rIL−12)のものに同等の生理活性を保持するかどうかについて、組換えヒトIL−12(rhIL−12、Thermo Fisher Scientific)を対照として使用して調べた。
【0145】
図16は、PHA活性化PBMCにおける、Fc(A107)、rhIL−12、二価hIL−12−Fcおよび一価hIL−12−Fcの細胞増殖能力を調べるために実行したWST−1細胞増殖アッセイの結果を示す。
【0146】
具体的には、実施例9に記載されるのと同じ方法でPHAによって活性化されたPBMC(2×10
4細胞、50μl)を96ウェルプレート(SPL、Korea)に加え、続いて10%FBS含有RPMI1640培地で系列希釈した、50〜0.4pMのFc(A107)、rhIL−12、二価hIL−12−Fcおよび一価hIL−12−Fcの各々の50μlを加えた。次に、5%CO
2の下で細胞を37℃で72時間培養した。細胞増殖アッセイのために、10μlのWST−1(水溶性テトラゾリウム塩、Sigma−aldrich)試薬を次に各ウェルに加え、37℃で4時間インキュベートし、マイクロプレートリーダー(Molecular Devices)を使用して570nmの吸光度を測定した。
【0147】
その結果、一価hIL−12−Fcが、rhIL−12のものと類似であるかまたはそれより高いPBMC増殖能力を有することが示された。
【0148】
(実施例11:PBMCからのIFN−γ分泌を誘導する一価hIL−12−Fc融合タンパク質の能力の評価)
図17は、Fc(A107)、rhIL−12、二価hIL−12−Fcおよび一価hIL−12−FcによりPHA活性化PBMCから分泌されるIFN−γの量を測定するために実行したELISAの結果を示す。
【0149】
具体的には、実施例10で72時間培養した培養上清の中のIFN−γの濃度を測定するために、ELISAのための96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific、Korea)を、ヒトIFN−γ捕捉抗体(Thermo Fisher Scientific)で12時間コーティングし、PBSTで洗浄し、次に1%BSA(1%ウシ血清アルブミンを有するPBS)により室温で1時間ブロックした。PBST(0.1%Tween−20を有するPBS)による洗浄の後、実施例2で得られた培養上清を1%BSAで5倍に希釈し、100μlの希釈物を各ウェルに加え、室温で2時間インキュベートした。PBSTによる洗浄の後、各ウェルをビオチンコンジュゲートIFN−γ検出抗体(Thermo Fisher Scientific)と室温で1時間インキュベートした。PBST(0.1%Tween−20を有するPBS)による洗浄の後、各ウェルをアビジンコンジュゲート西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Thermo Fisher Scientific)と室温で30分の間インキュベートし、PBST(0.1%Tween−20を有するPBS)で洗浄し、次に3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質(TMB、sigma−aldrich)で処理した。マイクロプレートリーダーを使用して、405nmの吸光度を測定した。
【0150】
その結果、PBMCからのIFN−γ分泌を誘導する一価hIL−12−Fcの能力は、rhIL−12のものと類似であるかまたはそれより高いことが示された。
【0151】
(実施例12:IL−12受容体への一価mIL−12−Fcの結合親和性の評価)
実施例8において発現/精製された、一価mIL−12−FcのIL−12受容体への結合親和性を、二価mIL−12−Fcのものと比較分析した。
【0152】
図18は、構築された一価mIL−12−Fcが、二価mIL−12−Fcと比較して、IL−12受容体への結合親和性を示すことを決定するために実行したフローサイトメトリーの結果を示す。
【0153】
具体的には、マウスIL−12がマウスIL−12受容体だけでなく、ヒトIL−12受容体にも結合することが報告された。したがって、実施例9に記載されるのと同じ方法で分析を実行した。分析の結果は、二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcが、IL−12受容体を発現しない正常なPBMCに結合せず、IL−12受容体を発現するPHA活性化PBMCだけに結合したことを示した。したがって、IL−12受容体への一価mIL−12−Fcの結合親和性が、二価mIL−12−Fcのものと同じであることが示された。
【0154】
(実施例13:PBMC増殖を誘導する一価mIL−12−Fcの能力の評価)
図19は、PHA活性化PBMCの細胞増殖に及ぼす、Fc(A107)、組換えマウスIL−12(rmIL−12)、二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcの能力の影響を調べるために実行したWST−1細胞増殖アッセイの結果を示す。
【0155】
具体的には、実施例9に記載されるのと同じ方法でPHAによって活性化されたPBMC(2×10
4細胞、50μl)を96ウェルプレートに加え、続いて10%FBS含有RPMI1640培地で系列希釈した、50〜0.4pMのFc(A107)、rmIL−12、二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcの各々の50μlを追加した。次に、5%CO
2の下で細胞を37℃で72時間培養し、その後、実施例10に記載されるのと同じ方法でWSTアッセイを実行した。その結果、一価mIL−12−FcがrmIL−12と同様にPBMC増殖を誘導する能力を有することが示された。
【0156】
(実施例14:in vivo腫瘍増殖を阻害する一価mIL−12−Fcの能力の評価)
実施例13では、PHA活性化PBMCの増殖を誘導する一価mIL−12−Fcの能力を評価した。一価mIL−12−Fcの同じ作用もin vivoで出現するかどうかを調べた。
【0157】
図20(A)および20(B)は、生きているマウスの100mm
3の腫瘍への一価mIL−12−Fcの腫瘍増殖阻害活性を測定した結果を示す。
【0158】
具体的には、4週齢雌Balb/cマウス(NARA Biotech、Korea)の毛を剃り、150μLのPBSに希釈したCT26
HER2/Neu結腸直腸がん細胞(1×10
6細胞/マウス)をマウスの皮下に移植した。類似の腫瘍体積(平均体積:100〜120mm
3)を有するマウスをランダムにグループ化し、Fc(A107)、rmIL−12)(Thermo Fisher Scientific)、二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcの各々を各マウスの腹腔内に1μgのIL−12の等モル量に対応する用量で合計6回(週に2回)注射した。腫瘍を週に2回測定し、腫瘍体積(V)を以下の式を使用して計算した:V=長さ×幅
2/2。
【0159】
図20(A)に示すように、対照と比較して、1μgのrmIL−12の投与は腫瘍増殖の阻害に影響を及ぼさなかったが、等モル濃度の一価mIL−12−Fcおよび二価mIL−12−Fcは腫瘍増殖を阻害した。さらに、
図20(B)に示すように、一価mIL−12−Fcおよび二価mIL−12−Fcの投与は、対照と比較してマウス体重の変化をほとんど示さないか、変化を示さず、一価mIL−12−Fcおよび二価mIL−12−Fcは毒性でないことを示した。
【0160】
図21(A)、21(B)および21(C)は、生きているマウスの300mm
3の腫瘍への一価mIL−12−Fcの様々な濃度の腫瘍増殖阻害活性を測定した結果を示す。
【0161】
具体的には、4週齢雌Balb/cマウス(NARA Biotech、Korea)の毛を剃り、150μLのPBSに希釈したCT26
HER2/Neu結腸直腸がん細胞(1×10
6細胞/マウス)をマウスの皮下に移植した。類似の腫瘍体積(平均体積:300mm
3)を有するマウスをランダムにグループ化し、二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcの各々を各マウスの腹腔内に0.1〜2μgのrmIL−12と等モルの濃度で合計6回(週に2回)注射した。腫瘍を週に2回測定し、腫瘍体積(V)を以下の式を使用して計算した:V=長さ×幅
2/2。
【0162】
図21(A)、21(B)および21(C)に示すように、1μgのIL−12またはそれ未満の等モル量に対応する用量で、一価mIL−12−Fcは、二価IL−12−Fcと比較して大きな腫瘍の増殖を阻害する高い作用を示した。0.25μgのIL−12の等モル量に対応する濃度で、二価mIL−12−Fcは腫瘍増殖を阻害する作用を示したが、腫瘍を除去しなかった。しかし、同一の投与レジメンの下で、一価mIL−12−Fcは、マウスの40%において腫瘍を除去する作用を示した。さらに、二価mIL−12−Fcが腫瘍の除去に失敗した0.5μgのIL−12の等モル量に対応する濃度で、一価mIL−12−Fcは、わずか5回投与したときでもマウスの73%において腫瘍を除去した。
【0163】
(実施例15:一価mIL−12−Fcのin vivo毒性の評価)
図21(D)は、様々な濃度で投与した一価mIL−12−Fcのin vivo毒性を決定するために体重変化を測定した結果を示す。
【0164】
具体的には、
図21(A)に示すように、体重が低減するかどうかを、週に2回一価mIL−12−Fcを投与したマウスの体重を測定することによって観察した。対照群において腫瘍体積の増加と共に体重が増加したが、二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcの全ての濃度で投与されたマウスは、投与前と比較して体重の減少を示さなかったことが示された。したがって、一価mIL−12−Fcは体重の低減を誘導せず、したがって、有意なin vivo毒性を有しないと決定された。
【0165】
図21(D)は、肝毒性マーカーであるアラニンアミノ基転移酵素(ALT)を測定した結果を示す。
【0166】
具体的には、最後の投与から24時間後に
図21(A)のマウスの顔面静脈から血液を採取した。血液凝固を誘導するように血液を室温で2時間静置し、次に8000rpmで10分間遠心分離し、上清の血清を収集した。血清中のALTの濃度を測定するために、IL−12−Fc融合タンパク質の最後の投与の24時間後に、マウス顔面静脈から血液を採取した。血液凝固を誘導するように血液を室温で2時間静置し、次に8000rpmで10分間遠心分離し、上清の血清を収集した。血清中のALTの濃度を測定するために、ALT測定のための基質溶液(アラニンおよびα−ケトグルタレートの混合物)を15ml試験管にとり、37℃の一定温度の水浴の中で5分間インキュベートした。二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcの各々を投与した腫瘍移植マウスの血液から単離した血清を10倍に希釈し、200μlの希釈物を基質溶液に加え、振盪し、37℃の一定温度の水浴の中で30分間インキュベートした。一定温度の水浴から取り出した試験管に1mlの発色試薬(2,4−ジニトロフェニル−1−ヒドラゾン)を加え、試験管を室温で20分間静置した。次に、10mlの0.4N水酸化ナトリウム溶液を試験管に加えて混合し、次に、試験管を室温で10分間静置した。光電分光光度計(GeneQuant100、GE Healthcare)を使用して、505nmの吸光度を測定した。血清の代わりに標準曲線試薬を加えることによって作成した標準曲線を使用して、ALTを単位に変換した。二価mIL−12−Fcまたは一価mIL−12−Fcを投与したマウスから採取した血液由来の血清は、対照または正常なBalb/cマウスの血液試料から分離された血清のものと類似のALT活性を示すことが示された。これは、二価mIL−12−Fcまたは一価mIL−12−Fcを0.5μgまたは1μgのIL−12に等モルの濃度で腫瘍移植マウスに投与するとき、それは肝毒性を誘導しないことを示唆する。
【0167】
(実施例16:in vivoで免疫細胞増殖を誘導する一価mIL−12−Fcの能力の評価)
実施例15に示すように、二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcが2μgのIL−12の等モル量に対応する濃度で投与されたとき、二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcは全て腫瘍を除去したが、それらが1μgのIL−12より低いモル濃度で投与されたとき、一価mIL−12−Fcの腫瘍増殖阻害作用は二価mIL−12−Fcのそれより有意に高かった。実際、一価mIL−12−Fcの高い腫瘍増殖阻害作用が、IL−12受容体を有するNK細胞、CD4
+T細胞およびCD8
+T細胞などの固有のエフェクター細胞の数の増加に関連するかどうかを決定するために、分析を実行した。
【0168】
図22(A)は、
図21(A)の最終投与から3日目に屠殺したマウスの脾臓における、CD4
+T細胞、CD8
+T細胞およびNK細胞の数の増加を測定した結果を示す。
【0169】
具体的には、
図21(A)に示す処置の後、腫瘍移植の34日後にマウス脾臓を解剖し、ペトリ皿の中でワイヤメッシュ(wide mesh)を使用して砕き、次に10mlの2%FBS含有培地で洗浄した。次に、1mlの赤血球溶解緩衝液をそれに加えて赤血球を溶解し、生じた細胞をPBSで洗浄して脾細胞懸濁物を調製し、細胞の数を血球計数器で計数した。APC、FITC、PEまたはPE−cy5コンジュゲート抗CD45、抗CD3、抗CD4、抗CD8および抗CD49b抗体を脾臓リンパ球に加え、それは、次に4℃で30分間染色し、冷PBS(pH7.4)で洗浄し、次にフローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Bioscience)およびFlow jo(Thermo Fisher Scientific)によって分析した。各試料をドットプロットによって分析し、CD45
+CD3
+CD4
+細胞集団、CD45
+CD3
+CD8
+細胞集団およびCD45
+CD3
−CD49b
+細胞集団を、それぞれCD4
+T細胞、CD8
+T細胞およびNK細胞と規定し、全体の脾細胞に対するその割合を計算し、血球計数器で計数した細胞数を掛け算し、一価mIL−12−Fcの投与の後に増加したCD4
+T細胞、CD8
+T細胞およびNK細胞の数を分析した。
【0170】
その結果、対照と比較して、一価mIL−12−Fcが、腫瘍移植マウスにおけるCD4
+T細胞およびCD8
+T細胞の数を濃度依存的に増加させたことが分かった。しかし、二価mIL−12−Fcは、0.5μgのIL−12の等モル量に対応した濃度でそれを投与した群においてだけCD8
+T細胞の数を増加させ、1μgのIL−12の等モル量に対応した濃度でそれを投与した群では、それはCD4
+T細胞およびCD8
+T細胞の数を増加させなかった。NK細胞は腫瘍移植マウスにおいてメモリー細胞を形成しないという以前の研究結果(CerwenkaおよびLanier、2016年;Schreiberら、2011年)と一貫して、腫瘍移植の34日後に、一価mIL−12−Fcおよび二価mIL−12−Fcを投与した群におけるNK細胞の数が対照群におけるそれと類似していたことが観察された。その結果、一価mIL−12−FcがCD4
+T細胞およびCD8
+T細胞のより大きな拡大増殖(expansion)を引き起こすことが示されたが、これは、二価mIL−12−Fcと比較してより強い腫瘍増殖阻害を説明する。
【0171】
腫瘍に浸潤した適応性免疫細胞(CD4
+T細胞およびCD8
+T細胞)の数の増加が腫瘍増殖の阻害において重要であるという報告(Schreiberら、2011年)に基づいて、一価mIL−12−Fcが腫瘍に浸潤した適応性免疫細胞の数を増加させるかどうかを分析した。一価mIL−12−Fcを6回投与したとき、腫瘍を有しない多くのマウスがあった。この理由から、一価mIL−12−Fcを3回投与し、次に、マウス腫瘍に浸潤した免疫細胞の数を分析した。
【0172】
図22(B)は、
図21(A)の3回目の投与から3日後に屠殺したマウスの腫瘍に浸潤した、全免疫細胞、CD4
+T細胞およびCD8
+T細胞の数を測定した結果を示す。
【0173】
具体的には、
図21(A)に示す処置の後、腫瘍移植の24日後にマウス腫瘍を解剖し、計量した。次に、ペトリ皿の中でワイヤメッシュおよびコラゲナーゼ(100μg/ml)を使用して腫瘍を砕き、50gで5分間、10mlの2%FBS含有培地の中で遠心分離して実質組織を取り出した。次に、1mlの赤血球溶解緩衝液をそれに加えて赤血球を溶解し、生じた細胞をPBSで洗浄して細胞懸濁物を調製し、細胞の数を血球計数器で計数した。APC、FITCまたはPE−cy5コンジュゲート抗CD45、抗CD3、抗CD4および抗CD8抗体を腫瘍から単離した細胞に加え、それを、次に4℃で30分間染色し、冷PBS(pH7.4)で洗浄し、次にフローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Bioscience)およびFlow jo(Thermo Fisher Scientific)によって分析した。各試料をドットプロットによって分析し、次に、CD45
+細胞集団、CD45
+CD3
+CD4
+細胞集団およびCD45
+CD3
+CD8
+細胞集団およびCD45
+CD3
−CD49b
+細胞集団を、それぞれ全腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍浸潤CD4
+T細胞および腫瘍浸潤CD8
+T細胞と規定した。全腫瘍から単離した細胞に対するこれらの細胞の割合を計算し、血球計数器で計数した細胞数を掛け算し、次に、一価mIL−12−Fcの投与の後に増加した全腫瘍浸潤免疫細胞、腫瘍浸潤CD4
+T細胞および腫瘍浸潤CD8
+T細胞の数を分析した。
【0174】
その結果、対照と比較して、二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcが、腫瘍に浸潤した全免疫細胞、CD4
+T細胞およびCD8
+T細胞の数を濃度依存的に増加させたことが分かった。等モル濃度では、二価mIL−12−Fcと比較して、一価mIL−12−Fcは、腫瘍に浸潤した全免疫細胞、CD4
+T細胞およびCD8
+T細胞を有意に増加させた。その結果、一価mIL−12−Fcが腫瘍においてCD4
+T細胞およびCD8
+T細胞のより大きな浸潤を引き起こすことが示されたが、これは、二価mIL−12−Fcと比較してより強い腫瘍増殖阻害を説明する。
【0175】
(実施例17:in vivoでの免疫細胞からのサイトカイン分泌および細胞毒性の増加に及ぼす一価mIL−12−Fcの作用の評価)
IL−12は、T細胞およびNK細胞からのIFN−γの分泌を増加させることによってがん細胞の増殖を阻害することが知られている(Trinchieri、2003年)。さらに、IL−12は、がん細胞に対する細胞傷害性T細胞およびナチュラルキラー細胞の直接的な細胞傷害作用を増強することによって抗がん作用を示す。したがって、一価IL−12−Fcの高い抗がん作用が、腫瘍移植マウスの血清中IFN−γ濃度の増加に、ならびにがん細胞に対する細胞傷害性T細胞およびナチュラルキラー細胞の直接的な細胞傷害作用の増強に起因するかどうかを決定するために、分析を実行した。
【0176】
図23(A)は、
図21(A)の最終投与の24時間後にマウス顔面静脈から採取した血液から分離した血清中のIFN−γの濃度を測定するために実行したELISAの結果を示す。
【0177】
具体的には、
図20(A)のmIL−12−Fc融合タンパク質の最終投与の24時間後に、マウスの顔面静脈から血液を採取した。血液凝固を誘導するように血液を室温で2時間静置し、次に8000rpmで10分間遠心分離し、上清の血清を収集した。血清中のIFN−γの濃度を測定するために、ELISAのための96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific)を、マウスIFN−γ捕捉抗体で12時間コーティングし、PBST(0.1%Tween−20を有するPBS)で洗浄し、次に1%BSA(1%ウシ血清アルブミンを有するPBS)により室温で1時間ブロックした。PBST(0.1%Tween−20を有するPBS)による洗液の後、血清を1%BSAで10倍に希釈し、室温で2時間インキュベートした。PBST(0.1%Tween−20を有するPBS)による洗浄の後、各ウェルをビオチンコンジュゲートマウスIFN−γ検出抗体(Thermo Fisher Scientific)と室温で1時間インキュベートした。PBST(0.1%Tween−20を有するPBS)による洗浄の後、各ウェルをアビジンコンジュゲート西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Thermo Fisher Scientific)と室温で30分間インキュベートし、PBST(0.1%Tween−20を有するPBS)で洗浄し、次に3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質(TMB、sigma−aldrich)で処理した。マイクロプレートリーダーを使用して、450nmの吸光度を測定した。
図23(A)に示すように、二価mIL−12−Fcを投与したマウスの血清中IFN−γ濃度は、対照群のものと比較して増加しなかった。しかし、対照群のものと比較して、1mgのrmIL12の等モル量までの用量に比例した一価mIL12−Fc処置を受けたマウスでは、血清中IFN−γレベルが増加することが観察された。さらに、一価mIL−12−Fcが一部のがん細胞の増殖を阻害する作用を有することが知られているIFN−γの分泌を増加させたので、一価mIL−12−Fcの腫瘍形成阻害作用があったことが示された。
【0178】
二価mIL12−Fcで処置した腫瘍移植マウスでは、IFN−γの血清中レベルは低かった(
図23(A))。したがって、二価mIL−12−FcがNK細胞およびT細胞からのIFN−γの分泌を誘導する能力が低いかどうかを決定するために、一価mIL−12−Fcおよび二価mIL−12−Fcの単一の投与の後の示した時点で血清中IFN−γ濃度を測定した。
【0179】
図23(B)は、CT26
HER2/Neu結腸直腸がん細胞を移植したBalb/cマウスへの二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcの単一の腹腔内投与の後の様々な示した時点で、血清中のIFN−γの濃度を測定するために実行したELISAの結果を示す。
【0180】
具体的には、CT26
HER2/Neu結腸直腸がん細胞を移植したBalb/cマウスの腫瘍体積が300mm
3に到達したときに、二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcを1μgのrmIL−12と等モルの濃度で腹腔内に投与した。1、3および5日後に、マウスの顔面静脈から血液を採取した。血液凝固を誘導するように血液を室温で2時間静置し、8000rpmで10分間遠心分離し、上清の血清を収集した。血清中のIFN−γの濃度を測定するために、ELISAのための96ウェルプレート(Thermo Fisher Scientific)を、マウスIFN−γ捕捉抗体で12時間コーティングし、PBST(0.1%Tween−20を有するPBS)で洗浄し、次に1%BSA(1%ウシ血清アルブミンを有するPBS)により室温で1時間ブロックした。PBST(0.1%Tween−20を有するPBS)による洗液の後、血清を1%BSAで10倍に希釈し、室温で2時間インキュベートした。PBST(0.1%Tween−20を有するPBS)による洗浄の後、各ウェルをビオチンコンジュゲートマウスIFN−γ検出抗体(Thermo Fisher Scientific)と室温で1時間インキュベートした。PBST(0.1%Tween−20を有するPBS)による洗浄の後、各ウェルをアビジンコンジュゲート西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)(Thermo Fisher Scientific)と室温で30分間インキュベートし、PBST(0.1%Tween−20を有するPBS)で洗浄し、次に3,3’,5,5’−テトラメチルベンジジン基質(TMB、sigma−aldrich)で処理した。マイクロプレートリーダーを使用して、450nmの吸光度を測定した。
図23(B)に示すように、腫瘍移植マウスでは、二価mIL−12−Fcを投与した群は、5日目まで一価mIL−12−Fc群のものと類似の血清中IFN−γ濃度を示し、二価mIL−12−Fcが、エフェクター細胞からのIFN−γの分泌を誘導する能力に固有の欠陥を有しないことを示唆した。
【0181】
図23(C)は、CT26
HER2/Neuがん細胞に対する、
図21(A)の最終投与から3日後に屠殺したマウスの脾臓から単離した、細胞傷害性T細胞の細胞傷害作用を測定した結果を示すグラフである。
【0182】
具体的には、
図21(A)のサイトカインの最終投与から72時間後に、マウスを屠殺し、脾臓をそこから解剖し、70ミクロンメッシュおよびPBSを含有する60mm皿の中で砕いた。遠心分離によって得た細胞に、赤血球溶解緩衝液を加えて赤血球を溶解した。次に、細胞をPBSで洗浄し、APCコンジュゲート抗CD3抗体(Thermo Fisher Scientific)およびPEコンジュゲート抗CD8抗体と4℃で30分間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄した後、FACS Aria III(BD biosciences、Korea)を使用して、細胞傷害性T細胞(CD3
+CD8
+)を単離した。標的CT26
HER2/Neuがん細胞に対する細胞傷害性T細胞の細胞傷害作用を測定するために、CT26
HER2/Neuがん細胞をカルセインAM(Thermo Fisher Scientific Inc.、10μM)で染色した。CT26
HER2/Neuがん細胞(2×10
6)を2mlのDPBSに懸濁し、2μlのカルセインAM(10mM)と混合し、次に5%CO
2の下の37℃で45分間インキュベートした。10mlの10%FBS含有RPMI1640による洗浄の後、細胞をウェルにつき2×10
4細胞の密度で96ウェルプレートの各ウェルに加え、細胞傷害性T細胞(1×10
5/100μl/ウェル)を各ウェルに加え、5%CO
2の下の37℃で4時間インキュベートした。緑色蛍光を示しているCT26
HER2/Neuがん生細胞および緑色蛍光を示していないCT26
HER2/Neuがん死細胞をフローサイトメトリーによって分析し、細胞傷害性T細胞の細胞傷害作用を、百分率で表した。二価mIL−12−Fcを投与した腫瘍移植マウスから単離した細胞傷害性T細胞または対照群から単離した細胞傷害性T細胞と比較して、一価mIL−12−Fcを投与した腫瘍移植マウスから単離した細胞傷害性T細胞が、標的CT26
HER2/Neuがん細胞に対してより高い細胞傷害作用を示したことが示された。さらに、一価mIL−12−Fcの腫瘍形成阻害作用が、がん細胞に対する一部の細胞傷害性T細胞の直接的細胞傷害作用に帰されたことが示された。
【0183】
図23(D)は、腫瘍移植マウスへの一価IL−12−Fcの投与によって増強された細胞傷害性T細胞の細胞傷害作用が腫瘍抗原特異的であるかどうかを決定するために、腫瘍抗原を発現するCT26
HER2/Neuがん細胞および腫瘍抗原を発現しない4T1細胞を使用して、
図21(A)の3回目の投与から3日後に屠殺したマウスの脾臓から単離した、細胞傷害性T細胞の細胞傷害作用を測定した結果を示す。
【0184】
具体的には、
図20(A)の一価IL−12−Fcの3回目の投与から72時間後に、マウスを屠殺し、脾臓をそこから解剖し、70ミクロンメッシュおよびPBSを含有する60mm皿の中で砕いた。標的CT26
HER2/Neuがん細胞および非標的4T1細胞に対する細胞傷害性T細胞の細胞傷害作用を測定するために、
図21(C)で使用した方法によって、CT26
HER2/Neuがん細胞および4T1がん細胞をカルセインAM(Thermo Fisher Scientific Inc.、10μM)で染色した。10mlの10%FBS含有RPMI1640による3回の洗浄の後、細胞をウェルにつき2×10
4細胞の密度で96ウェルプレートの各ウェルに加え、細胞傷害性T細胞(1×10
5/100μl/ウェル)を各ウェルに加え、5%CO
2の下の37℃のインキュベーターの中で4時間インキュベートした。緑色蛍光を示しているCT26
HER2/Neuがん生細胞および緑色蛍光を示していないCT26
HER2/Neuがん死細胞または4T1がん細胞をフローサイトメトリーによって分析し、細胞傷害性T細胞の細胞傷害作用を百分率で表した。その結果、一価mIL−12−Fcの投与によって増強された細胞傷害性T細胞の細胞傷害作用が標的細胞特異的であることが示された。
【0185】
図23(E)は、CT26
HER2/Neuがん細胞に対する、
図21(A)の3回目の投与から3日後に屠殺したマウスの脾臓から単離した、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害作用を測定した結果を示す。
【0186】
具体的には、
図21(A)のサイトカインの3回目の投与から3日後に、マウスを屠殺し、脾臓をそこから解剖し、70ミクロンメッシュおよびPBSを含有する70mm皿の中で砕いた。遠心分離によって得た細胞に、赤血球溶解緩衝液を加えて赤血球を溶解した。次に、細胞をPBSで洗浄し、APCコンジュゲート抗CD3抗体(Thermo Fisher Scientific)およびPEコンジュゲート抗CD49b抗体と4℃で30分間インキュベートした。細胞をPBSで洗浄した後、FACS Aria III(BD biosciences、Korea)を使用して、ナチュラルキラー細胞(CD3
−CD49b
+)を単離した。標的CT26
HER2/Neuがん細胞に対するナチュラルキラー細胞の細胞傷害作用を測定するために、CT26
HER2/Neuがん細胞をカルセインAM(Thermo Fisher Scientific Inc.、10μM)で染色した。CT26
HER2/Neuがん細胞(2×10
6)を2mlのDPBSに懸濁し、2μlのカルセインAM(10mM)と混合し、次に5%CO
2の下の37℃で45分間インキュベートした。10mlの10%FBS含有RPMI1640による洗浄の後、細胞をウェルにつき2×10
4細胞の密度で96ウェルプレートの各ウェルに加え、ナチュラルキラー細胞(1×10
5/100μl/ウェル)を各ウェルに加え、5%CO
2の下の37℃で4時間インキュベートした。緑色蛍光を示しているCT26
HER2/Neuがん生細胞および緑色蛍光を示していないCT26
HER2/Neuがん死細胞をフローサイトメトリーによって分析し、ナチュラルキラー細胞の細胞傷害作用を百分率で表した。二価mIL−12−Fcを投与した腫瘍移植マウスから単離したナチュラルキラー細胞または対照群から単離した細胞傷害性T細胞と比較して、一価mIL−12−Fcを投与した腫瘍移植マウスから単離したナチュラルキラー細胞が、標的CT26
HER2/Neuがん細胞に対してより高い細胞傷害作用を示したことが示された。さらに、一価mIL−12−Fcの腫瘍形成阻害作用が、がん細胞に対する一部のナチュラルキラー細胞の直接的細胞傷害作用に帰されたことが示された。
【0187】
(実施例18:in vivoでエフェクターCD8
+T細胞およびメモリーCD8
+T細胞を形成する一価mIL−12−Fcの能力の評価)
腫瘍移植マウスでの適応免疫の生成は、エフェクターメモリーCD8
+T細胞およびメモリーCD8
+T細胞が生成されるかどうかによって評価する。一価mIL−12−Fcの腫瘍除去作用を、エフェクターメモリーCD8
+T細胞およびメモリーCD8
+T細胞の生成に帰されるかどうかについて、測定した。
【0188】
図24(A)、24(B)および24(C)は、一価mIL−12−Fcを担腫瘍マウスに投与したときに生成された、エフェクターCD8
+T細胞、エフェクターメモリーCD8
+T細胞およびメモリーCD8
+T細胞の数を測定した結果を示す。
【0189】
具体的には、
図21(A)に示す処置の後、腫瘍移植の34日後にマウス脾臓を解剖し、ペトリ皿の中でワイヤメッシュを使用して砕き、次に10mlの2%FBS含有培地で洗浄した。次に、1mlの赤血球溶解緩衝液をそれに加えて赤血球を溶解し、生じた細胞をPBSで洗浄して脾細胞懸濁物を調製し、細胞の数を血球計数器で計数した。APC、FITC、PEまたはPE−cy5コンジュゲート抗CD3、抗CD8、抗CD62Lおよび抗IL−7受容体(IL−7R)抗体を脾細胞に加え、それは、次に4℃で30分間染色し、冷PBS(pH7.4)で洗浄し、次にフローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Bioscience)およびFlow jo(Thermo Fisher Scientific)によって分析した。各試料をドットプロットによって分析し、CD3
+CD8
+CD62L
lowIL−7R
low細胞集団、CD3
+CD8
+CD62L
lowIL−7R
hi細胞集団およびCD3
+CD8
+CD62L
hiIL−7R
hi細胞集団を、それぞれエフェクターCD8
+T細胞、エフェクターメモリーCD8
+T細胞およびメモリーCD8
+T細胞と規定し、全体の脾細胞に対するその割合を計算し、血球計数器で計数した細胞数を掛け算し、一価mIL−12−Fcの投与の後に増加したエフェクターCD8
+T細胞、エフェクターメモリーCD8
+T細胞およびメモリーCD8
+T細胞の数を分析した。
【0190】
その結果、対照と比較して、一価mIL−12−Fcが腫瘍移植マウスにおけるエフェクターメモリーCD8
+T細胞およびメモリーCD8
+T細胞の数を濃度依存的に増加させたことが分かった。しかし、二価mIL−12−Fcは、0.5μgのIL−12の等モル量に対応した濃度で投与した群においてだけエフェクターメモリーCD8
+T細胞およびメモリーCD8
+T細胞の数を増加させ、1μgのIL−12の等モル量に対応した濃度でそれを投与した群では、エフェクターメモリーCD8
+T細胞およびメモリーCD8
+T細胞の数を増加させなかった。したがって、一価mIL−12−Fcのより高い腫瘍形成阻害作用が、二価mIL−12−Fcと比較して、エフェクターメモリーCD8
+T細胞およびメモリーCD8
+T細胞の数の増加に帰されたことが見出された。
【0191】
図24(D)は、
図21(A)の1μgの一価IL−12−Fcの投与から120日後の生存マウスにCT26
HER2/Neuがん細胞を再移植し、マウスにおける腫瘍体積の変化を測定することによって得られた結果を示す。
【0192】
具体的には、
図21(A)の雌Balb/cマウス(NARA Biotech、Korea)への1μgの一価IL−12−Fcの最終投与から120日後に、生存マウスの毛を剃り、150μLのPBSに希釈したCT26
HER2/Neu細胞(1×10
6細胞/マウス)をマウスの皮下に移植した。次に、1μgの一価IL−12−Fcのさらなる投与なしに腫瘍を週に2回測定し、腫瘍体積(V)を以下の式を使用して計算した:V=長さ×幅
2/2。その結果、対照群と比較して、1μgの一価mIL−12−Fcの投与の後に生存したマウスの腫瘍は、11日から縮小し始めたことが分かった。したがって、一価mIL−12−Fcを腫瘍移植マウスに投与したとき、それがエフェクターメモリーCD8
+T細胞およびメモリーCD8
+T細胞を生成したことが判明し、したがって腫瘍をマウスに再び移植したときでさえ、それは除去されるであろう。
【0193】
(実施例19:in vivoでメモリー前駆体エフェクターCD8
+T細胞を形成する一価mIL−12−Fcの能力の評価)
実施例16および18では、腫瘍移植マウスにおいてCD8
+T細胞、エフェクターメモリーCD8
+T細胞およびセントラルメモリーCD8
+T細胞の数の増加に及ぼす二価mIL−12−Fcの作用が、一価mIL−12−Fcのものより低いことが観察された。活性化CD8
+T細胞が腫瘍細胞を直接的に破壊するエフェクター段階の後、エフェクターCD8
+T細胞はメモリー前駆体エフェクター細胞(MPEC)に、次にメモリーCD8
+T細胞に部分的に分化し、大部分は短寿命エフェクター細胞(SLEC)に分化することが報告された。したがって、二価mIL−12−Fcの投与によって活性化されるCD8
+T細胞が短寿命エフェクター細胞に分化し、したがって生成されるメモリーCD8
+T細胞の数が小さく、そのためそれらが腫瘍を除去できないかどうかを決定するために分析を実行した。
【0194】
図24(E)は、
図21(A)の3回目の投与から3日後に屠殺したマウスの脾臓に存在するCD8
+T細胞の中のメモリー前駆体エフェクター細胞(KLRG1
−IL−7R
+)および短寿命エフェクター細胞(KLRG1
+IL−7R
−)の割合を分析した結果を示す。
【0195】
具体的には、
図21(A)に示す処置の後、腫瘍移植の24日後にマウス脾臓を解剖し、ペトリ皿の中でワイヤメッシュを使用して砕き、次に10mlの2%FBS含有培地で洗浄した。次に、1mlの赤血球溶解緩衝液をそれに加えて赤血球を溶解し、生じた細胞をPBSで洗浄して細胞懸濁物を調製した。APC、FITC、PEまたはPE−cy5コンジュゲート抗CD3、抗CD8、抗KLRG1および抗IL−7受容体(IL−7R)抗体を脾臓細胞に加え、それを、次に4℃で30分間染色し、冷PBS(pH7.4)で洗浄し、次にフローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Bioscience)およびFlow jo(Thermo Fisher Scientific)によって分析した。各試料をドットプロットによって分析し、CD3
+CD8
+KLRG1
−IL−7R
+細胞集団およびCD3
+CD8
+KLRG1_
+IL−7R
−細胞集団を、それぞれメモリー前駆体エフェクター細胞および短寿命エフェクター細胞と規定し、全脾細胞と比較したその割合を分析した。
【0196】
その結果、対照と比較して、一価mIL−12−Fcが腫瘍移植マウスにおけるメモリー前駆体エフェクター細胞の割合を濃度依存的に増加させたことが分かった。しかし、二価mIL−12−Fcの投与は、対照と比較してメモリー前駆体エフェクター細胞の割合を増加させなかったが、短寿命エフェクター細胞の数をむしろ増加させた。したがって、二価mIL−12−Fcと比較して、一価mIL−12−Fcが、メモリー前駆体エフェクター細胞の生成を促進することによってエフェクターメモリーCD8
+T細胞およびメモリーCD8
+T細胞の数を有意に増加させたことが見出され、それが腫瘍除去により高い作用を有することを示した。
【0197】
(実施例20:メモリー細胞分化の誘導に関与する転写因子の発現に及ぼす一価mIL−12−Fcの作用の評価)
CD8
+T細胞を高濃度のIL−12と投与したとき、または2日間もしくはそれより長くIL−12を頻繁に投与することによって活性化したとき、CD8
+T細胞が短寿命エフェクター細胞に分化することを可能にする転写因子T−betの発現が増加し、CD8
+T細胞がメモリー前駆体エフェクター細胞に分化することを可能にする転写因子eomesodermin(Eomes)の発現が低下することが報告された。したがって、一価mIL−12−Fcおよび二価mIL−12−Fcが、短寿命エフェクター細胞に分化するCD8
+T細胞の割合を変化させるようにCD8
+T細胞においてT−betおよびEomesの発現を差次的に調節するかどうかを決定するために、分析を実行した。
【0198】
図25(A)および25(B)は、
図21(A)の3回目の投与から3日後に屠殺したマウスの脾臓の中の、CD8
+T細胞(メモリー細胞の分化を阻害するT−betの高い発現を示す)およびCD8
+T細胞(メモリー細胞の分化を促進するEomesの低い発現を示す)の割合を測定するために実行したフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【0199】
具体的には、
図21(A)に示す処置の後、腫瘍移植の24日後にマウス脾臓を解剖し、ペトリ皿の中でワイヤメッシュを使用して砕き、次に10mlの2%FBS含有培地で洗浄した。次に、1mlの赤血球溶解緩衝液をそれに加えて赤血球を溶解し、生じた細胞をPBSで洗浄して細胞懸濁物を調製した。脾細胞をPE−cy5またはFITCコンジュゲート抗CD3および抗CD8抗体により4℃で30分間染色し、冷PBS(pH7.4)で洗浄した。次に、Foxp3/転写因子染色緩衝液セット(Thermo Fisher Scientific)(細胞核内転写因子染色試薬である)で細胞を固定し、透過処理した。次に、細胞をPEまたはefluor660コンジュゲート抗T−betまたは抗Eomes抗体により4℃で30分間染色し、次に透過処理緩衝液でのフローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Bioscience)およびフローサイトメトリーデータ分析のためのFlow jo(Thermo Fisher Scientific)によって分析した。各試料をドットプロットによって分析し、CD3
+CD8
+T−bet
high細胞集団およびCD3
+CD8
+Eomes
+T−bet
low細胞集団の割合を分析した。その結果、対照と比較して、一価mIL−12−FcがCD3
+CD8
+T−bet
high細胞集団の割合を濃度依存的に低減させ、CD3
+CD8
+Eomes
+T−bet
low細胞集団の割合を濃度依存的に増加させたことが見られた。しかし、二価mIL−12−Fcは、0.5μgのIL−12の等モル量に対応した濃度でそれを投与した群においてだけCD3
+CD8
+T−bet
high細胞集団の割合を低減させ、群の中のCD3
+CD8
+Eomes
+T−bet
low細胞集団の割合を増加させた。さらに、二価mIL−12−Fcを1μgのIL−12の等モル量に対応した濃度で投与した群においては、二価mIL−12−FcはCD3
+CD8
+T−bet
high細胞集団の割合を低減させる作用も、CD3
+CD8
+Eomes
+T−bet
low細胞集団の割合を増加させる作用も示さなかった。したがって、二価mIL−12−Fcと比較して、一価mIL−12−Fcは、エフェクターメモリーCD8
+T細胞およびメモリーCD8
+T細胞の数を有意に増加させるために、CD3
+CD8
+T−bet
high細胞集団の割合を低減させ、CD3
+CD8
+Eomes
+T−bet
low細胞集団の割合を増加させることによって、より高い腫瘍除去作用を有することが見出された。
【0200】
T細胞受容体シグナルおよび共起刺激シグナルの存在下でCD8
+T細胞をIL−12などの炎症性サイトカインで刺激するとき、STAT4のリン酸化が増加し、リン酸化されたSTAT4(pSTAT4)は核に移動し、T−betエンハンサーに結合し、それによってT−betの発現を増加させることが公知である。したがって、1μgのIL−12の等モル量に対応した濃度で二価mIL−12−Fcを投与したときに起こった、短寿命エフェクター細胞へのCD8
+T細胞の分化が、一価mIL−12−Fcと比較して、1μgのIL−12の等モル量に対応した濃度での二価mIL−12−Fcの投与が、腫瘍移植マウスの腫瘍流入領域リンパ節においてT細胞が活性化されたときにpSTAT4およびT−betの発現を増加させたことが原因であるかどうかを決定するために、分析を実行した。
【0201】
図25(C)は、CT26
HER2/Neuを移植したBalb/cマウスの腫瘍体積が300mm
3に到達したときに、二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcを1μgのrmIL−12の等モル量に対応した濃度で腹腔内に一度投与してから24時間後に腫瘍流入領域リンパ節から単離した、CD8
+T細胞の中のリン酸化STAT4の発現レベルを測定するために実行したフローサイトメトリー分析の結果を示す。
【0202】
具体的には、
図23(B)に関して記載されている通り、CT26
HER2/Neu結腸直腸がん細胞を移植したBalb/cマウスの腫瘍体積が300mm
3に到達したときに、二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcを1μgのrmIL−12と等モルの濃度でマウスの腹腔内に投与した。24時間後にマウスの腫瘍流入領域リンパ節を解剖し、ペトリ皿の中でワイヤメッシュを使用して砕き、次に10mlの2%FBS含有培地で洗浄した。次に、1mlの赤血球溶解緩衝液をそれに加えて赤血球を溶解し、生じた細胞をPBSで洗浄し、このように細胞懸濁物を調製した。流入領域リンパ節細胞をPE−cy5またはFITCコンジュゲート抗CD3および抗CD8抗体により4℃で30分間染色し、PBS(pH7.4)で洗浄し、次に冷メタノールで固定した。次に、流入領域リンパ節細胞を冷PBS(pH7.4)で洗浄し、APCコンジュゲート抗pSTAT4抗体により4℃で30分間染色し、冷PBS(pH7.4)で洗浄し、次にフローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Bioscience)およびFlow jo(Thermo Fisher Scientific)によって分析した。各試料をドットプロットによって分析し、CD3
+CD8
+T細胞の中のpSTAT4の発現レベルを比較した。その結果、一価mIL−12−Fcと比較して、二価mIL−12−Fcは、腫瘍移植マウスの腫瘍流入領域リンパ節においてCD8
+T細胞が活性化されたときにpSTAT4の発現を増加させる作用を示した。
【0203】
図25(D)は、
図25(C)の単一の腹腔内投与から72時間後の腫瘍流入領域リンパ節の中のCD8
+T細胞(メモリー細胞の分化を阻害するT−betを発現する)の割合を測定するために実行したフローサイトメトリーの結果を示す。
【0204】
具体的には、
図23(B)に関して記載されている通り、CT26
HER2/Neu結腸直腸がん細胞を移植したBalb/cマウスの腫瘍体積が300mm
3に到達したときに、二価mIL−12−Fcおよび一価mIL−12−Fcを1μgのrmIL−12の等モル量に対応する濃度でマウスの腹腔内に投与した。72時間後にマウスの腫瘍流入領域リンパ節を解剖し、ペトリ皿の中でワイヤメッシュを使用して砕き、次に10mlの2%FBS含有培地で洗浄した。次に、1mlの赤血球溶解緩衝液をそれに加えて赤血球を溶解し、生じた細胞をPBSで洗浄し、このように細胞懸濁物を調製した。流入領域リンパ節細胞をPE−cy5またはFITCコンジュゲート抗CD3および抗CD8抗体により4℃で30分間染色し、PBS(pH7.4)で洗浄し、Foxp3/転写因子染色緩衝液セット(Thermo Fisher Scientific)(細胞核内転写因子染色試薬である)を使用して固定し、次に透過処理した。次に、細胞をPEまたはAPCコンジュゲート抗T−bet抗体により4℃で30分間染色し、次に透過処理緩衝液でのフローサイトメトリー(FACS Calibur、BD Bioscience)およびFlow jo(Thermo Fisher Scientific)分析によって分析した。各試料をドットプロットによって分析し、T−betを発現するCD3
+CD8
+T細胞の割合を比較した。その結果、一価mIL−12−Fcと比較して、二価mIL−12−Fcは、腫瘍移植マウスの流入領域リンパ節においてCD8
+T細胞が活性化されたときにT−betの発現を増加させる作用を示した。したがって、1μgのIL−12の等モル量に対応した濃度で二価mIL−12−Fcを投与したときに起こった、短寿命エフェクター細胞へのCD8
+T細胞の分化は、一価mIL−12−Fcと比較して、二価mIL−12−Fcの投与が、腫瘍移植マウスの腫瘍流入領域リンパ節においてT細胞が活性化されたときにpSTAT4およびT−betの発現を増加させたことが原因であることが見出された。
【0205】
図25(E)および25(F)は、一価mIL−12−Fcが、2つのL−12分子を発現し、そのためCD8
+T細胞を2つのL−12分子によって刺激することができる二価mIL−12−Fcのように抗Fc抗体と交差反応したときに、細胞中のpSTAT4およびT−betの発現が、細胞を二価mIL−12−Fcで処置したときに示されるレベルに類似のレベルまで増加するかどうかを測定した結果を示す。
【0206】
具体的には、脾臓および腫瘍流入領域リンパ節を正常なBalb/cマウスから解剖し、ペトリ皿の中でワイヤメッシュを使用して砕き、次に10mlの2%FBS含有培地で洗浄した。次に、1mlの赤血球溶解緩衝液をそれに加えて赤血球を溶解し、生じた細胞をPBSで洗浄し、このように細胞懸濁物を調製した。リンパ節細胞をPEコンジュゲート抗CD8抗体により4℃で30分間染色し、冷PBS(pH7.4)で洗浄し、抗PEミクロビーズ(Miltenyi Biotec)と15分間インキュベートし、MACS分離器およびLSカラム(Miltenyi Biotec)を使用してCD8
+T細胞をそこから分離した。0.5μg/mlの抗CD3抗体の100μlを96ウェル丸底プレートの各ウェルに加え、それを次に4℃で12時間インキュベートし、PBSで洗浄してプレートに付着していない抗CD3抗体を除去し、2μg/mlの抗CD28抗体の50μlを各ウェルに加えた。次に、一価mIL−12−Fcおよび二価mIL−12−Fcを抗Fc抗体の様々な濃度と4℃で30分間反応させ、次に20pMのIL−12に等モルの濃度で各ウェルに加えた。次に、CD8
+T細胞(4×10
4/ウェル)を各ウェルに加え、pSTAT4の発現を測定するために3時間、T−betの発現を測定するために3日間、37℃のインキュベーターの中でインキュベートした。pSTAT4およびT−betの発現を測定するために、
図25(C)および25(D)に関して記載した方法によって細胞を染色し、次にフローサイトメトリーによって分析した。各試料をドットプロットによって分析し、CD8
+T細胞の中のpSTAT4またはT−betの発現レベルを比較した。その結果、一価mIL−12−Fcを、CD8
+T細胞を2つのL−12分子によって刺激することができるように抗Fc抗体と交差反応させたときに、細胞中のpSTAT4およびT−betの発現レベルは、細胞を二価mIL−12−Fcで処置したときに示されるレベルまで増加したことが示された。
【0207】
結論として、
図26に示すように、二価mIL−12−Fcと比較して、一価mIL−12−Fcは、CD8
+T細胞がメモリー前駆体エフェクター細胞に、次にエフェクターメモリー細胞およびセントラルメモリー細胞に分化することができるように、CD8
+T細胞の中でpSTAT4およびT−betの低い発現を誘導する。したがって、一価mIL−12−Fcは、低い濃度(0.5μgのIL−12の等モル量に対応する)でさえ腫瘍移植マウスから腫瘍を除去することができ、したがってマウスの寿命を長くする。しかし、二価mIL−12−Fcは、短寿命エフェクター細胞に細胞が分化してメモリー細胞の発生を妨げることができるように、CD8
+T細胞の中でpSTAT4およびT−betの高い発現を誘導する。したがって、二価mIL−12−Fcが一価mIL−12−Fcと同じモル濃度で投与されるとき、それは腫瘍移植マウスから腫瘍を完全に除去することはできない。したがって、二価mIL−12−Fcがより高い濃度(2μgのIL−12の等モル量に対応する)で投与され、腫瘍細胞を直接的に破壊するエフェクター段階において細胞傷害性CD8
+T細胞が拡大増殖されるときに限り、二価mIL−12−Fcは腫瘍を除去することができる。