(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-89060(P2021-89060A)
(43)【公開日】2021年6月10日
(54)【発明の名称】折り畳み構造体
(51)【国際特許分類】
F16S 1/06 20060101AFI20210514BHJP
【FI】
F16S1/06
【審査請求】未請求
【請求項の数】5
【出願形態】書面
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2019-232109(P2019-232109)
(22)【出願日】2019年12月5日
(71)【出願人】
【識別番号】519458174
【氏名又は名称】定延 治朗
(72)【発明者】
【氏名】定延 治朗
(72)【発明者】
【氏名】定延 葉子
(57)【要約】 (修正有)
【課題】折紙構造の可逆的折り畳み性を利用して位置制御機構として利用できる構造体を提供する。
【解決手段】特定のミウラ折り折紙構造体5の両末端部に特定の折り畳み構造を導入することで、ミウラ折り折紙構造体が折りたたまれても壁面に固定できる構造とし、1対の対向する2面を結合することで折り畳み構造体の折り畳み変形により面間の距離を制御する機構が得られる。またこの構造を筒状に接続することで筒状折り畳み構造体を構成し、さらにこの筒状折り畳み構造体を積層することで、折紙構造体の折り畳みによる展開面方向の変位をその垂直方向に増幅して伝えることが可能な位置制御が可能となる。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
ミウラ折りで構成される折紙構造体の主軸の末端に設けることで壁面に固定することができ、副軸が回転することなく折紙構造体が可逆的に折り畳み変形可能となることを特徴とする端部折り畳み構造体。
【請求項2】
請求項1の端部折り畳み構造体がミウラ折り折紙構造体の主軸の両端に設けられた折り畳み構造体。ここでミウラ折り折紙構造体は全ての四辺形要素の辺の長さが等しく、主軸方向への四辺形要素の数が0以上の偶数、かつ副軸方向への四辺形要素の数が2以上の偶数であることを特徴する。
【請求項3】
2つの平面板が請求項2の折り畳み構造体でつながれた構造体
【請求項4】
請求項2の折り畳み構造体の方向をそろえて上下に2つ重ね、外縁部分をヒンジで連結することで構成される筒状折り畳み構造体
【請求項5】
請求項4の筒状折紙構造体を積層することによって構成される筒状折り畳み構造積層体
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は一自由度の折紙構造からなる折り畳み構造体を、その折り畳み性を保持したま対向する二つの面への接合を可能とする方法に関する。
【背景技術】
【0002】
折紙構造を応用した構造体は、平面からに折れ線周りの回転のみの操作で三次元構造が形成され、かつ折りたたむことによって、可搬性あるいは収納性に富んだ構造に変形できる。この可逆的な折り畳みと展開によって可動性あるいは可変性の建築物などの多くの応用が期待される。
【0003】
図1に示したミウラ折りに代表される一自由度系の折紙構造は、原理的には幾何学的な一つのパラメータによって折紙全体の折り畳み状態を制御できることから位置制御機構などへの応用が期待される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記の一自由度系の折紙構造は折り畳みに伴い端末周縁の形状が変化するため、折り畳み性を維持しながら方向を規定して壁などに固定することができない。仮に一辺を壁に固定した場合折り畳みと共に構造全体が回転することになる。このことが、折紙構造の位置制御機能を実用的に利用できない原因となっている。
【0005】
本発明はミウラ折の折紙構造の末端部に壁面固定可能な特定の端部折り畳み構造体を設け、対抗する二面を結合することにより面間の距離を制御できる折り畳み構造体を提供する。また本発明の折り畳み構造体の二つをその外周辺をヒンジで接合することで筒状折り畳み構造体とし、この筒状折り畳み構造体を積層することで、折り畳みに伴いそれに直交する高さ方向に変位を増幅させる位置制御機能を有する構造体を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の折り畳み構造体に用いるミウラ折り折紙構造体とは
図1に展開図で示すような菱形の面が規則的に連結された構造体であり、二つの菱形が接合される辺の周りで回転することで平面構造と折り畳み構造の間を可逆的に変形できるものである。本発明に用いるミウラ折り折紙構造体の構造は
図1に示す辺の長さLとその間の角度aで決まる。本発明のミウラ折り折紙構造体はそれを構成するすべての菱形要素でLとaが等しいことが必要である。以下では
図1の展開図のX及びY方向を以下、「主軸方向」及び「副軸方向」と呼び、この二軸に直交する方向を「垂直軸方向」と呼ぶ。
【0007】
本発明の折り畳み構造体は、このミウラ折のX方向の両端部にミウラ折り折紙構造と接続可能な特定の端部折り畳み構造を設ける。その特定の端部折り畳み構造は
図2a及び
図2bで示す2種類のものから選ぶことができる。この特定の端部折り畳み構造をミウラ折り折紙構造体の主軸方向の一末端に接続し、該端部折り畳み構造を主軸に垂直な面で反転させた折り畳み構造を、ミウラ折り構造体の主軸方向のもう一端に接続するものである。但し、この両端において
図2a及び
図2bの面ACC’A’の形状はAA’との周りで回転できるという条件を除いて任意の形状をとることができ、この面を壁に取り付けることによって全体の折り畳み構造体を固定することができる。また両端のACC’Aの部分を除いて、本発明の折り畳み構造体は主軸に垂直な面に関して面対称の構造であることが好ましい。本発明の折紙構造体には
図2a及び
図2bの端部折り畳み構造体がそれぞれその主軸に垂直な面で反転させた端部折り畳み構造体と直接接合された折り畳み構造体も含まれる。
【0008】
図2a及び
図2bのAA’の辺の長さL(AA’)は概ミウラ折り折紙構造体の菱形要素の辺の長さをL、菱形要素の小さいほうの内角をaとするとき次式であらわされる。
L(AA’)=2L・[1+cos(a)]
また
図2aの角OAA’,PAO,OA’A,P‘A’O、及び
図2bのOAA’,PAO,OA’A,B2A’Oはいずれもa/2である。上記と面ACC’A’を除く辺の長さ及び角度は全て該ミウラ折り折紙構造体の菱形要素と全く同じ値をとることが必要である。
【0009】
図2aでは外周部B1B2B3B4B5及びB1’B2’B3’B4’B5’の全部または一部がそれぞれ異なるミウラ折り折紙構造体の主軸方向の両端部に接合され、接合により形成された辺の周りで回転することによってミウラ折り折紙構造と同期した変形が可能となる。このとき二つのミウラ折り折紙構造体は、AA’の中点をO’とするとき、OO’を通る直線に関して面対称であることが好ましい。
図2bの場合は外周部B1B2B3B4B5B6B7の全部または一部が一つのミウラ折り折紙構造体の主軸方向の両端部に接合され、接合により形成された辺の周りで回転することによってミウラ折り折紙構造体と同期した変形が可能となる。
【0010】
本発明の主軸方向の両端部に特定の端末折紙構造を設けた折り畳み構造体は、両端部で面に固定することが可能で、固定した状態で折り畳んでも主軸・副軸の方向は維持され、折り畳みによって該二面の距離を制御することが可能となる。
【0011】
本発明の折り畳み構造体を構成する材料は限定するものではなく紙、金属、プラスチック、木材、FRPなどを板材として用いることができる。これらの板材は所期の寸法・角度で平行四辺形に切り出され、ヒンジによって接合することで折り畳構造体を構成する。ヒンジとしてはゴムなどの弾性体や、繊維からなる布帛及びそれに弾性体を含侵したものなどが好ましく用いられる。また繊維強化複合材料において、板部は剛性の高い樹脂を、ヒンジ部はゴムのような柔軟な樹脂を含浸させたもので折り畳み構造体を構成することがさらに好ましい。剛性の高い板材を使った場合は、ヒンジの周りの回転の際に板材間の干渉が起こり折りたたむことが困難になる場合があるが、その場合には展開図における折れ線の両側に板厚以上となるようヒンジの幅を広げ、その幅の拡張分だけ板材の大きさをオフセットすることにより折り畳み性を改善することができる。
【0012】
本発明の折り畳み構造体のミウラ折り折紙構造体部の四角形ユニットの数を主軸方向に0以上の偶数個、副軸方向に2以上の偶数個とするとき、同じ形状の二枚の折紙構造体を重ね合わせ、副軸方向の両端のジグザグ構造の周縁部をヒンジで結合して閉じることにより、筒状折り畳み構造体を形成することができる。この筒状折り畳み構造体は全体が一自由度で主軸方向に折り畳むことができる。この筒状折り畳み構造体は折り畳むことで中空閉断面のトラス構造となり剛性が発現するため、展開面垂直軸方向の荷重を支えることができる。
【0013】
本発明の筒状折り畳み構造体はさらに垂直軸方向に複数個積層することができる。この筒構造積層体は主軸方向への折り畳みにより、垂直方向に伸長し、特に積層数を大きくすることにより、わずかな主軸方向への変形で大きな垂直軸方向への変位が得られるため、変位増幅機能を持つ位置制御機構としての利用が可能である。
【発明の効果】
【0014】
本発明の折り畳み構造体は、一自由度の折紙構造を有するにもかかわらず、壁などの面に主軸及び副軸の方向を規定して固定でき、折り畳みにより面間の距離を制御しうる位置制御機能を有する。またそれを一自由度の筒状折り畳み構造体とすることで主軸方向への変位を垂直軸方向に増幅しうる位置制御機能を付与することができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【
図2a】本発明の折り畳み構造体の端部構造の第1の構造
【
図2b】本発明の折り畳み構造体の端部構造の第2の構造
【
図5】実施例4に記載の構造体の、折り畳み構造体の折り畳みによる変形の様態
【
図6】実施例5に記載の構造体の、筒状折り畳み構造体積層体の折り畳みによる変形の様態
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の具体的な実施の様態を実施例をもって説明する。但し。本発明は以下の記載の内容に限定されるものではない。
【実施例1】
【0017】
図3aは
図2aに示した構造をミウラ折り折紙構造体の主軸両端面に接合した展開図である。この展開図に基づき、ガラス繊維の平織りの織物に板部にはエポキシ樹脂、ヒンジ部にはシリコン樹脂を含侵することで厚み0.5mmの折り畳み構造体を作成した。角度aは75°、辺の長さLは5cmとし、ヒンジの幅は1.5mmとした。またP1P2Q2Q1およびP3P4Q4Q3は直方体形状で辺P1P2、Q1Q2、P3P4及びQ3Q4の長さは5cmであった。この折り畳み構造体は展開状態からほぼ完全な折り畳み状態まで可逆的に変形させることができた。この折り畳み構造体の同じものを二つ上下に重ね、
図3aに示したそれぞれの折り畳み構造体の点A1、A2、A3、A4及びA5に相当する点どうしが一致するように各隣接点間の辺をヒンジで接合し、点B1、B2、B3、B4及びB5に相当する点どうしが一致するように各隣接点間の辺をヒンジで接合し、点O1、C、O2、点O1、D、O2に相当する点どうしが一致するように各隣接点の間の辺をヒンジで接合することで、
図3bに示すような筒状折り畳み構造体を作成した。得られた筒状折り畳み構造体は展開構造からほぼ完全な折り畳み状態まで可逆的に変形させることができた。
図3bは筒状折り畳み構造体を主軸方向に30%折り畳みによって収縮させた状態を示す。
【実施例2】
【0018】
実施例1と同様の方法で
図4aの展開図に基づく折り畳み構造体を作成した。この折り畳み構造体は展開状態からほぼ完全な折り畳み状態まで可逆的に変形させることができた。この折紙構造体の同じものを二つ上下に重ね、
図4aに示したそれぞれの折り畳み構造体の点A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8及びA9に相当する点どうしが一致するように各隣接点間の辺をヒンジで接合し、点B1、B2、B3、B4、B5、B6、B7、B8及びB9に相当する点どうしが一致するように各隣接点間の辺をヒンジで接合し、点O1、C1、O2、C2、O3、C3,およびO4、点O1、D1、O2、D2、O3、D3,およびO4に相当する点どうしが一致するように各隣接点間の辺をヒンジで接合することで、
図4bに示すような筒状折り畳み構造体を作成した。得られた筒状折り畳み構造体は展開構造からほぼ完全な折り畳み状態まで可逆的に変形させることができた。
図4bは筒状構造体を主軸方向に30%折り畳みによって収縮させた状態を示す。
【実施例3】
【0019】
実施例1と同様の方法で
図5a展開図に基づく折り畳み構造体を作成した。この折り畳み構造体は展開状態からほぼ完全な折り畳み状態まで可逆的に変形させることができた。この折紙構造体の同じものを二つ上下に重ね、
図5aに示したそれぞれの折り畳み構造体の点A1、A2、A3、A4、A5、A6、A7、A8及びA9に相当する点どうしが一致するように各隣接点間の辺をヒンジで接合し、点B1、B2、B3、B4、B5、B6およびB7に相当する点どうしが一致するように各隣接点間の辺をヒンジで接合し、点C1、C2、C3、C4、C5、C6およびC7に相当する点どうしが一致するように各隣接点の間の辺をヒンジで接合し、
図4bに示すような筒状構造体を作成した。得られた筒状構造体は展開構造からほぼ完全な折り畳み状態まで可逆的に変形させることができた。
図4bは筒状構造体を主軸方向に30%折り畳みによって収縮させた状態を示す。
【実施例4】
【0020】
実施例1の方法で2部の折り畳み構造体を作成し、その1部の端部P1P2Q2Q1を、並行に対向する一対の板面の片方に接続し、P3P4Q4Q3をもう片方の板面に接続した。さらに第2部の折紙構造体の端部P1P2Q2Q1及びP3P4Q4Q3を第一の折紙構造体のP1P2Q2Q1及びP3P4Q4Q3と平行になるようにそれぞれの板面に接続し、
図5に示した折り畳み構造体を得た。得られた折り畳み構造体は2つの板面を並行に保ちながら、折紙構造体の折り畳みに応じて主軸・副軸が固定された状態で可逆的にかつスムーズに距離が変化できた。
図5は図中左から0%、30%、および70%折り畳み構造体を展開状態の長さから主軸方向に収縮させた状態を示す
【実施例5】
【0021】
実施例1と同様の方法で2部の筒状折り畳み構造体を作成し、垂直軸方向に四層に積み重ね、層間はそれぞれの筒状折り畳み構造体の主軸方向の両端部にて接合し、
図6の筒状折り畳み構造積層体を作成した。
図6はこの筒状折り畳み構造積層体を図中左から0%、30%、及び70%折り畳むことにより、展開状態の長さから主軸方向に収縮させた状態であり、主軸方向の変形量に対し垂直軸方向の変形量が大幅に増幅されていることがわかる。
【符号の説明】
【0022】
1.折り畳み構造体の板部
2.折り畳み構造体のヒンジ部
3.折り畳み構造体の固定端
4.折り畳み構造体
5.筒状折り畳み構造積層体
6.折り畳み構造体で結合された1対の板
7.筒状折り畳み構造体構造積層体を固定する板