【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明による解決手段は、ステップモータによって動作可能な膨張弁であって、ハウジングと、ハウジング内に配置された中空シャフトと、中空シャフトを支持するとともに、ハウジングを閉鎖する弁基体と、ステータによって駆動可能であるロータと、中心の主軸であって、主軸は、中空シャフト内に配置されているともに、ロータによって駆動可能であり、主軸の回転運動が、ねじ山結合部を介して、膨張弁の開閉のための軸方向移動に変換可能である、主軸と、ねじ部を有する螺旋体であって、螺旋体は、中空シャフトの側面に配置されているとともに、ロータによって駆動可能である、螺旋体と、を備え、中空シャフトに、ストッパボディが配置されていて、ストッパボディは、螺旋体のねじ部内に移動可能に配置されているともに、主軸−ストッパ−構造の一部として、中心の主軸の上端位置と下端位置とを設定する、膨張弁を提供することにある。
【0017】
中心の主軸は、とりわけ、他の要素(ここでは中空シャフトのねじ山)と協働して、ロータの回転運動を並進移動に変換するために用いられる、ねじ山付きの主軸として構成されている。
【0018】
そのために、中心の主軸は、ロータに結合されている。螺旋体は、別個の要素であって、中空シャフトの一部ではない。螺旋体は、ロータが螺旋体を駆動することができるように、ロータにも結合されている。
【0019】
ストッパボディは、特に中空シャフトの側面に配置されていて、好適には、中心の主軸が下端位置にあるとき、第1の(上側の)ストッパ要素に当接し、中心の主軸が上端位置にあるとき、第2の(下側の)ストッパ要素に当接する。ストッパボディは、例えば、棒状の要素であり得る。主軸の上端位置が固定されるか又は下端位置が固定されるかは、螺旋体のピッチと主軸のピッチとに依存する。
【0020】
ねじ部を有する螺旋体が(別個に)ロータによって駆動可能であり、ストッパボディが、このねじ部内で可動であるように配置されていることによって、膨張弁の特にコンパクトな構造が実現可能である。
【0021】
本発明の有利な一発展形態によれば、中空シャフトが、側面に、縦溝を有し、ストッパボディが、滑りリングとして構成されていて、滑りリングは、螺旋体のねじ部内で、縦溝によって回動不能に確保されているとともに、軸方向可動に配置されている。
【0022】
回動方向に応じて、滑りリングは、軸方向に中空シャフトに沿って(縦溝内で)上又は下に移動される。
【0023】
滑りリングが縦溝内で上下に移動することができるので、膨張弁全体の構造サイズを小さくすることができ、その結果、膨張弁をさらにコンパクトに構成することができる。特に、縦溝と滑りリングとによって、機能確実性が高くて簡単な構造が提供される。
【0024】
さらに、滑りリングが縦溝に確保されていることによって、螺旋体と滑りリングとからなるセットも、中空シャフトの側面に確保されている。したがって、ガイド溝は、滑りリングと相俟って、紛失防止手段としても機能する。
【0025】
本発明の有利な一発展形態によれば、主軸−ストッパ−構造は、螺旋体と滑りリングとの相互作用によって形成されている。
【0026】
本発明の有利な一発展形態によれば、滑りリングは、半径方向内方へ延在する延長部を有し、延長部は、縦溝内に延在し、そこで回動防止手段として作用するように構成されている。
【0027】
半径方向内方へ延在するこの延長部は、滑りリングを回動しないように確保する簡単な可能性を提供するので、延長部は、確実に縦溝内で軸方向可動である。
【0028】
本発明の有利な一発展形態によれば、螺旋体は、螺旋体の軸方向に延在する第1のストッパ要素と、螺旋体の軸方向に延在する第2のストッパ要素とを有する。
【0029】
螺旋体の軸方向とは、それを中心に螺旋体が巻回される軸線に沿って延びる方向と解される。組み込まれた状態で、この軸線は、中空シャフトの回転軸線と主軸の回転軸線とに対して少なくともほぼ同心に配向されている。とりわけ、第1のストッパ要素は、第2のストッパ要素の延在方向とは逆向きの方向に延在する。ただしこの場合、両方向は、螺旋体の軸方向である。
【0030】
本発明の有利な一発展形態によれば、第1のストッパ要素がストッパボディに接触すると、主軸の下端位置が固定され、第2のストッパ要素がストッパボディに当接すると、螺旋体の最大のねじり角度を加えて、主軸の上端位置が固定される。
【0031】
螺旋体が剛体である又はねじり弾性体でないとき、螺旋体の最大のねじり角度はゼロであり、その結果、第2のストッパ要素がストッパボディに接触すると、主軸の上端位置が固定されている。
【0032】
しかし、螺旋体がねじり弾性的に構成されていると、主軸は、第2のストッパ要素がストッパボディに接触した後でも、依然として、螺旋体の弾性が許す限り可動である。したがって、第2のストッパ要素がストッパボディに接触すると、上方への主軸の移動が減衰される。
【0033】
これに対して代替的に、第1のストッパ要素がストッパボディに接触するときでも、中心のスピンドルの上端位置を固定することができ、その際、第2のストッパ要素がストッパボディに接触するとき、場合によっては螺旋体の最大のねじり角度を加えて、スピンドルの下端位置が固定されている。
【0034】
中心の主軸の上端位置を固定するか又は下端位置を固定するかは、螺旋体のピッチと中心の主軸のピッチとに依存する。とりわけ、これは、ねじ山が右回りであるか又は左回りであるかに依存する。中心の主軸のねじ山ピッチが、螺旋体のねじ山ピッチと同一でないときにだけ、第1のストッパ要素は、上側の主軸位置にもなる。中心の主軸と螺旋体とが同一のピッチ方向を有するとき、中心の主軸の移動経路と滑りリングの移動経路とが逆になる。この場合、これに応じて、第1のストッパ要素は、下側の主軸位置も提供する。
【0035】
本発明の有利な一発展形態によれば、滑りリングは、円筒形の螺旋部材として構成されているとともに、上端と、上端とは反対の側の下端とを有し、上端は、第1のストッパ要素に接触し、下端は、第2のストッパ要素に接触する。
【0036】
滑りリングが円筒形の螺旋部材として構成されているので、螺旋体内での滑りリングの特に良好な保持を達成することができる。さらに、滑りリングを、つまり円筒形の螺旋部材を、上端と下端とが重畳するように構成することが可能である。すなわち、円筒形の螺旋部材は360度より大きい角度範囲にわたって形成されていて、この場合、重畳は、360度を超える角度範囲である。螺旋体の端部のこのような重畳と巻き数とによって、実現可能な回動の最大数を設定するかつ/又は制限することができる。
【0037】
本発明の有利な一発展形態によれば、螺旋体は、第1のストッパ要素によって、アダプタ要素に結合されていて、これによりロータの回転時に一緒に回動され、アダプタ要素は、ロータを主軸に結合し、これにより主軸をロータの回転時に一緒に回動させる。
【0038】
この場合、アダプタ要素は、力結合に基づいて、例えば、プレス結合、溶接結合又は形状結合によって、主軸に結合されている。アダプタ要素は、例えば、形状結合に基づいて、ロータに結合することができる。そのために、アダプタ要素は、横断面で見て非回転対称に構成されている。例えば、アダプタ要素の外形は、横断面で見て(つまり回転軸線Rに沿って見て)、三角形、四角形又は通常の多角形であり得、例えば歯列状に構成してもよい。もちろんこの場合、ロータの内形は、横断面で見て、アダプタ要素の形状に対して補完的に構成されている。
【0039】
要するに、螺旋体の第1のストッパ要素は、2つの機能を満たし、ストッパ要素としての機能に加えて、ロータ又はアダプタに対する連行要素(つまり結合要素)としても用いられる。
【0040】
ロータの回転が直接に伝達されるのではなく、アダプタを介して間接に伝達されることによって、例えば、様々な膨張弁(たとえばそれぞれ異なるロータを有する)をできるだけ多くの同一の部品を用いて生産することも可能である。
【0041】
本発明の有利な一発展形態によれば、螺旋体は、鋼から作製されたコイルばねの形態で構成されたねじりばねである。
【0042】
鋼は、とりわけ、螺旋体へと成形するために十分な弾性を有する鋼である。
【0043】
これにより、螺旋体の製造が特に有利である。
【0044】
本発明の有利な一発展形態によれば、中空シャフトは、プラスチック、好適にはポリフェニレンサルファイド(PPS)又はポリエーテルエーテルケトン(PEEK)又は真鍮又は青銅から製造されている。
【0045】
プラスチックを使用するとき、膨張弁では、金属材料を使用する場合に比べて重量が節約される。さらに、プラスチックPPS及びPEEKは高機能材料であるので、これらのプラスチックは、高温域(240℃まで)で持続的に使用可能であり、さらに短時間的には300℃まで使用可能である。その結果、膨張弁の故障をおそれる必要がなく、極端な条件でも膨張弁を使用することができる。
【0046】
本発明の有利な一発展形態によれば、膨張弁は、さらにスリーブ要素を有し、スリーブ要素は、収容領域と弁ニードルとを有し、収容領域内に、中心の主軸のスタンプ状の端部領域と圧縮コイルばねと力伝達要素とが完全に収容されている。
【0047】
膨張弁は、一方では弁ニードルの機能を満たすとともに、他方では収容領域を提供するようなスリーブ要素を有して構成されているので、膨張弁の特にコンパクトな構成を達成することができる。コンパクトな構成にもかかわらず、膨張弁の全ての機能を確実に満たすことができる。
【0048】
発明の有利な一発展形態によれば、力伝達要素は、中心の主軸との接触によって、軸方向力を中心の主軸から圧縮コイルばねを介してスリーブ要素へと伝達するように構成されているとともに配置されていて、力伝達要素は、横断面で見て、トルクが中心の主軸から力伝達要素へと伝達されない又は限定的にしか伝達されないようにきのこ状に構成されている。
【0049】
力伝達要素はきのこ状に構成されているので、中心の主軸に対する接触点、つまり力伝達点が小さくなる。この場合、力伝達点では、トルクが限定的にしか(摩擦を介して)力伝達要素へと伝達されない。総じて、そのこともまた特に低摩耗の膨張弁をもたらさす。
【0050】
本発明の有利な一発展形態によれば、ハウジングと、弁基体の、ハウジングに向いた面とが、ハウジング内室を画定し、中空シャフト内に中空シャフト内室が形成されていて、弁基体の、ハウジングとは反対に向いた面に隣接して、膨張弁の、弁組付けスペースに組み込まれた状態で、流体入口空間が配置されていて、流体入口空間とハウジング内室との間の圧力補償のための第1の圧力補償チャネルが配置されていて、第1の圧力補償チャネルは、第1のチャネル領域と第2のチャネル領域とを有し、第2のチャネル領域は、縦溝によって形成される。
【0051】
これによっても、膨張弁の特にコンパクトな構成を得ることができる。とりわけ、存在する構成部材に第2の機能を割り当てることによって、構成部材を節約することができる。
【0052】
ゆえにここでは、縦溝は、滑りリングをガイドする機能を有するだけではなく、圧力補償チャネルの機能も担う。したがって、縦溝は、2つの機能を満たす。というのも、縦溝は、一方で滑りリングのガイドを可能にし、付加的に第2の圧力補償チャネルの一部を形成するからである。
【0053】
本発明の有利な一発展形態によれば、中空シャフト内室とハウジング内室との間の圧力補償のための第2の圧力補償チャネルが、縦溝及び中空シャフト内室の半径方向の広がりが最大の領域に配置されている。
【0054】
これにより、中空シャフト内室とハウジング内室との間の確実な圧力補償も可能になる。
【0055】
本発明による別の解決手段は、ステップモータによって動作可能な膨張弁であって、ハウジングと、ハウジング内に配置された中空シャフトと、中空シャフトを支持するとともに、ハウジングを閉鎖する弁基体と、ステータによって駆動可能であるロータと、中心の主軸であって、主軸は、中空シャフト内に配置されているともに、ロータによって駆動可能であり、主軸の回転運動が、ねじ山結合部を介して、膨張弁の開閉のための軸方向移動に変換可能である、主軸と、ロータから主軸へとモーメントを伝達するために、ロータとスピンドルとの間に配置されたアダプタ要素と、中空シャフトの側面に配置されているとともに、アダプタ要素によって回動運動させることが可能である螺旋体と、を備え、螺旋体は、軸方向に延在する第1のストッパ要素を有し、第1のストッパ要素は、アダプタ要素の離心した開口に配置されていることにある。
【0056】
アダプタ要素が主軸とロータとの間に配置されているので、膨張弁の構造は、総じて、より普遍的である。つまり、例えば種々異なるロータを使用することができる。さらに、アダプタは、第2の機能を有する。というのも、アダプタは、螺旋体を駆動する、つまり回転運動させるからである。
【0057】
アダプタ要素は、中心の回転軸線Rを有し、この場合、離心した開口が、中心の回転軸線Rから離心して形成されるように設定されている。
【0058】
本発明の有利な一発展形態によれば、アダプタ要素は、プレート状のベース領域と、中央でプレート状のベース領域から軸方向に延在する、中心の主軸用の収容領域とを有する。
【0059】
軸方向に延在する収容領域は、孔の公差を増大することができるという利点を有する。とうのも、長いガイドが、構成部材同士が傾倒する可能性の低下を伴うからである。
【0060】
主軸とアダプタ要素との間の結合は、例えば主軸の上側で整列された後に行われる。結合は、レーザ溶接によって行うことができ、この場合、好適には、複数の溶接点が設けられる。
【0061】
さらに、ベース領域だけがプレート状に構成されているので、完全にプレート状に構成されたアダプタ要素に比べて、重量を節約することができる。
【0062】
本発明の有利な一発展形態によれば、中心の貫通開口が、アダプタ要素の回転軸線Rに沿って、主軸の上側の領域を収容するように構成されている。
【0063】
したがって、中心の貫通開口は、アダプタ要素の回転軸線Rに沿って延在する。横断面で見て、中心の貫通開口は、好適には円形であり、これにより、主軸−ストッパ−構造又は上側のストッパの特に簡単な整列が可能になる。
【0064】
ただし、中心の貫通開口は、円形の開口でなくてよい。むしろ、中心の貫通開口は、横断面で見て、非回転対称に構成され得る。例えば、貫通開口は、横断面で見て(つまり回転軸線Rに沿って見て)、三角形、四角形又は通常の多角形であってよく、例えば歯列状に構成してもよい。
【0065】
これにより、この場合、アダプタ要素から主軸への、又はより詳細には主軸の上側の領域への特に容易な力伝達が可能であり得る。もちろん、主軸の上側の領域は、横断面で見て、中心の貫通開口の形状に対して相補的に構成されている。
【0066】
本発明の有利な一発展形態によれば、アダプタ要素の外形が、回転軸線Rに関して非回転対称に形成されている。
【0067】
本発明の有利な一発展形態によれば、離心した開口は、プレート状のベース領域に配置されていて、プレート状のベース領域は、好適には別の離心した開口を有する。
【0068】
離心した開口がアダプタ要素のプレート状のベース領域に配置されているので、開口は、アダプタ要素の中心(つまり回転軸線)から特に遠くに離れて形成することができる。離心した開口と回転軸線Rとの間の距離の増大によって、より良好な力伝達を可能にすることができる(梃子腕)。
【0069】
別の離心した開口の配置によって、別の機能をアダプタ要素に組み込むことができる。
【0070】
本発明の有利な一発展形態によれば、離心した開口が、長孔として構成されている。
【0071】
長孔は、側方から(つまり回転軸線に対して直角に)アダプタ要素に又はアダプタ要素のプレート状のベース領域に加工することができるので、長孔をより簡単に作製することができるとう利点を伴う。
【0072】
本発明の有利な一発展形態によれば、複数の別の離心した開口のうちの少なくとも1つが、開口がアダプタ要素の上方及びアダプタ要素の下方におけるハウジング内室の圧力を補償するように配置されている。
【0073】
したがって、アダプタ要素は、付加的に、圧力補正機能も満たす。(またもや)構成部材が複数の機能を及ぼすことができるように構成されているので、構成部材の数は、全体的に(さらに)低減することができる。
【0074】
本発明の有利な一発展形態によれば、螺旋体が、ねじ部を有し、中空シャフトが、側面に、縦溝を有し、滑りリングが、螺旋体のねじ部に、縦溝によって回動不能であるが、軸方向可動に配置されている。
【0075】
滑りリングが縦溝内で上下に移動することができるので、膨張弁全体の構造サイズを小さくすることができ、その結果、膨張弁をさらにコンパクトに構成することができる。縦溝と滑りリングとによっても、機能確実性が高くて簡単な構造が提供される。
【0076】
滑りリングが縦溝に確保されていることによって、螺旋体と滑りリングとからなるセットも、中空シャフトの側面に確保されている。したがって、ガイド溝は、滑りリングと相俟って、紛失防止手段としても機能する。
【0077】
本発明の有利な一発展形態によれば、螺旋体と滑りリングとの相互作用によって、中心の主軸の上端位置と下端位置とを設定する主軸−ストッパ−構造が形成される。
【0078】
本発明の有利な一発展形態によれば、螺旋体が、軸方向に、第1のストッパ要素とは逆向きに延在する第2のストッパ要素を有する。
【0079】
本発明の有利な一発展形態によれば、滑りリングが、円筒形の螺旋部材として構成されているとともに、上端と下端とを有する。
【0080】
滑りリングが円筒形の螺旋部材として構成されていると、螺旋体内での滑りリングの特に良好な保持を達成することができる。さらに、滑りリングを、つまり円筒形の螺旋部材を、その上端と下端とが重畳するように構成することが可能である。したがって、円筒形の螺旋部材は、完全な円(360度超)を超えて形成されている。この場合、重畳は、完全な円を超えて延在する領域である。螺旋体の端部の重畳と巻き数とによって、実現され得る回動の最大の数を設定するかつ/又は制限することができる。
【0081】
本発明の有利な一発展形態によれば、両方の端部のうちの1つに、半径方向内方へ延在する延長部が形成されている。
【0082】
半径方向内方へ延在するこの延長部は、滑りリングを回動しないように確保する簡単な手段を提供するので、延長部は、縦溝内で軸方向に確実に可動である。
【0083】
本発明の有利な一発展形態によれば、半径方向内方へ延在する、滑りリングの延長部が、中空シャフトの縦溝内に延在し、そこで回動防止手段として作用するように構成されている。
【0084】
本発明の有利な一発展形態によれば、第1のストッパ要素が上端に接触すると、主軸の下端位置が固定され、第2のストッパ要素が下端に接触すると、螺旋体の最大のねじれ角度を加えて、主軸の上端位置が固定される。
【0085】
螺旋体が回動方向に予荷重を加えることができない(つまり剛体であり、ねじれ弾性を有しない)ボディであるとき、螺旋体の最大のねじれ角度はゼロである。この場合、スピンドルの上端位置は、第2のストッパ要素がストッパボディに接触すると固定される。ただし、螺旋体が、ねじり弾性的に構成されている(つまり回動方向に予荷重を加えることが可能である)とき、主軸は、第2のストッパ要素がストッパボディに接触した後でもさらに可動である(というのも主軸が螺旋体に予荷重を加えるからである)。
【0086】
これは、第2のストッパ要素がストッパボディに接触すると、上方への主軸の回動が減衰されることを意味する。
【0087】
これに対して代替的に、第1のストッパ要素がストッパボディに接触するときも、主軸の上端位置を固定することもでき、この場合、第2のストッパ要素がストッパボディに接触すると、螺旋体の最大のねじり角度を加えて、主軸の下端位置が固定される。
【0088】
主軸の上端位置が固定されるか又は下端位置が固定されるかは、螺旋体のピッチに依存する。とりわけ、これは、螺旋体が右ねじであるか又は左ねじであるかに依存する。主軸のねじ山ピッチが螺旋体のねじ山ピッチと同一ではないときにだけ、第1のストッパ要素は、上側の主軸位置でもある。主軸と螺旋体とが同一のピッチ方向を有するとき、主軸の移動経路と滑りリングの移動経路とは逆向きである。この場合、これに応じて、第1のストッパ要素は、下側の主軸位置も設定する。
【0089】
本発明の有利な一発展形態によれば、螺旋体が、鋼から作製されたコイルばねの形態で構成されたねじりばねである。
【0090】
これにより、螺旋体は、極めて容易に(かつ低コストに)製造することができる。
【0091】
さらに、本発明による解決手段は、ステップモータによって動作可能な膨張弁であって、ハウジングと、ハウジング内に配置された中空シャフトと、中空シャフトを支持するとともに、ハウジングを閉鎖する弁基体と、ステータによって駆動可能であるロータと、中心の主軸であって、主軸は、中空シャフト内に配置されているともに、ロータによって駆動可能であり、主軸の回転運動が、ねじ山結合部を介して、膨張弁の開閉のための軸方向移動に変換可能である、主軸と、スリーブ要素とを備え、スリーブ要素は、収容領域と弁ニードルとを有し、収容領域内に中心の主軸と圧縮コイルばねと力伝達要素23とが少なくとも部分的に収容されていて、スリーブ要素の収容領域は、ブッシュによって閉鎖されていて、主軸は、第1の材料から作製されていて、ブッシュは、少なくとも部分的に、第1の材料とは異なる第2の材料から作製されていて、第2の材料は、第1の材料よりも低い硬さを有する、膨張弁を提供することにある。
【0092】
スリーブ要素が弁ニードルと収容領域とを有する、つまり弁ニードルボディがスリーブ状に構成されているので、膨張弁の特にコンパクトな構造を達成することができる。より詳細には、このことは、とりわけ、弁ニードルへの力伝達に必要な要素を収容領域内に省スペースに配置することができることによるものである。
【0093】
動作中、回転運動を行う構成部材と、回転運動を行わない構成部材とが存在する。特に、主軸は、回転運動を行い、他方、スリーブ要素は、可能な限り回転を行わない。回転を行う要素と回転を行わない要素との接触によって、要素に摩耗が生じる。
【0094】
本発明に係る膨張弁では、この問題は、選択されたトライボロジー対偶が、相互に接触するとともに相対移動する要素の間に存在することによって解決される。これにより、摩耗をコントロールすることができるので、摩擦は、主に関与する構成部材のうちの1つに発生する。付加的に、この構成部材は、任意選択的に、容易に交換することができる摩耗部材として設けることができる。
【0095】
ゆえに、スリーブ要素を閉鎖するブッシュは、それ自体、容易に交換可能な摩耗部材であり得る。ブッシュが摩耗しているとき、ブッシュは、容易に交換することができ、弁ニードルとともにスリーブ要素全体を交換しなくてよい。したがって、メンテナンスに際して大幅に労力を減らすことができる。
【0096】
トライボロジー対偶は、ブッシュが、より軟質の材料、つまり第1の材料より低い硬さを有する材料から形成されるように選択されている。したがって、摩耗は、主にブッシュに生じる。ブッシュを交換する可能性が存在し得るが、ブッシュは、有利には、弁の耐用期間にわたって摩耗を許容するように寸法設定されている。
【0097】
総じて、本発明に係る膨張弁は、コンパクトな構成を提供し、その構成では、構造的に的確にコントロールされた摩耗がもたらされる。摩耗部品自体は、容易に交換することができる。
【0098】
ブッシュは、特にスリーブ要素に押し込まれていて、つまりプレス嵌めによって結合されている。
【0099】
本発明の観点では、ブッシュとは、環状の又は中空円筒形の要素と解される。ただし、有利には、スリーブ要素は、環状の要素よりもさらに軸方向(回転軸線)に延在することを特徴とする中空円筒形の要素である。これに応じて、中空円筒形の摩耗要素は、環状の摩耗要素よりも耐摩耗性の材料を提供する。
【0100】
本発明の有利な一発展形態によれば、第1の材料及び第2の材料は、金属又は金属合金である。
【0101】
本発明の有利な一発展形態によれば、第2の材料は、銅合金、好適には真鍮であり、第1の材料は、鋼、特に特殊鋼である。
【0102】
特に好適には、第2の材料は、焼結材料である。例えば、材料は、焼結青銅であり得る。焼結材料とは、潤滑剤を充填することができる多数の孔を有する材料と解される。この場合、例えば、ブッシュの10体積百分率〜40体積百分率、好適には15体積百分率〜30体積百分率を孔から形成することができる。
【0103】
特に、特殊鋼と真鍮の材料対偶によって、摩耗とコストとの間の特に良好な関係を得ることができる。一方では、第2の材料は、過度に早期に摩耗しないように軟らかすぎてはならず、他方では、硬すぎてはならないので、第1の材料からなる要素は、損傷を受けない。
【0104】
特に好適には、力伝達要素も、第1の材料(例えば特殊鋼)から形成されている。さらに、スリーブ要素も、好適には第1の材料(つまり特殊鋼)から形成されている。
【0105】
本発明の有利な一発展形態によれば、力伝達要素は、頭領域と軸領域とを有し、力伝達要素は、中心の主軸から軸方向力を伝達するための接触が、頭領域の中心領域で点状に行われるように配置されている。
【0106】
この点状の伝達によって、主軸と動力伝達要素との間の(トルクを伝達するための)接触面が可能な限りわずかに保持される。わずかに保持された、つまり小さな接触面に基づいて、主軸は、回動時に滑り、力伝達要素は、回動されない。他方、軸方向力は、点状の接触を介してでも、確実に主軸から力伝達要素へと伝達することができる。
【0107】
つまり、力伝達要素と中心の主軸との接触面で、トルク中断が行われる。要するに、ステータによって駆動されるロータにトルクが作用し、トルクは、例えば力結合に基づいて(アダプタを介して)主軸へと伝達される。主軸のねじ結合によって、回転運動が、主軸の軸方向移動に変換される。この場合、弁ニードルのこの軸方向移動だけが所望され、つまり弁ニードルの回転運動は、そこでは望まれない。
【0108】
本発明の有利な一発展形態によれば、圧縮コイルばねが、部分的に力伝達要素の軸領域の側面に配置されている。
【0109】
圧縮コイルばねが軸領域の側面に配置されているので、圧縮コイルばねは、軸領域によって内側からガイドされている。他方、圧縮コイルばねは、外側から、スリーブ要素の収容領域の内側面によってガイドされている。つまり、圧縮コイルばねは、力伝達要素の軸領域とスリーブ要素の収容領域との間に確実にガイドされている。
【0110】
この場合、圧縮コイルばねは、両方の要素に必然的に接触しなくてよい。むしろ、軸領域の側面と圧縮コイルばねとの間の他に圧縮コイルばねと収容領域の内側面との間に遊びが形成されることも考えられる。ただし、圧縮コイルばねは、ばねの圧縮時の傾倒が回避される程度にガイドされている。
【0111】
本発明の有利な一発展形態によれば、圧縮コイルばねは、円筒コイルばねである。
【0112】
これにより、圧縮コイルばねは、その製造が特に低コストであり、確実に軸領域の側面の周りに配置することができる。
【0113】
本発明の有利な一発展形態によれば、軸領域の長さは、予め設定されたばね行程の分だけ圧縮コイルばねを圧縮する軸方向の力が超えられると、軸領域が、スリーブ要素のスリーブ底部に接触するような長さに構成されている。
【0114】
これは、圧縮コイルばねが、予め設定されたばね行程の分だけ圧縮されていると、軸方向力を直接に力伝達要素からスリーブ底部へと伝達することができることを意味する。ゆえに、機械的な停止装置、つまり主軸−ストッパ−構造が故障する又は弁に過負荷がかかると、最大行程の制限を行うことができる。
【0115】
したがって、力伝達要素も複数の機能をも満たす。まずは、力伝達要素は、主軸からのスリーブ要素のトルク分離を可能にする。さらに力伝達要素又は力伝達要素の軸領域は、圧縮コイルばねを軸方向にガイドし、したがって圧縮コイルばねの座屈又通常の非対称の変形を阻止する。さらに、軸領域は、前述の最大行程制限をもたらす。
【0116】
本発明の有利な一発展形態によれば、主軸が、スタンプ状の端部領域を有し、端部領域は、これが軸方向力を伝達するために力伝達要素に接触し、その際、スタンプ状の端部領域の上側の領域が、ブッシュに摩擦接触するように構成されているとともに配置されている。
【0117】
これは、スタンプ状の端部領域の下側の領域(より正確には下面)が、力伝達要素に接触し、スタンプ状の端部領域の上側の領域が、ブッシュに摩擦接触することを意味する。したがってスタンプ状の端部領域は、ブッシュと力伝達要素との間に配置されている。
【0118】
本発明の有利な一発展形態によれば、収容領域は、これがブッシュとスタンプ状の端部領域と圧縮コイルばねと力伝達要素とを完全に収容するように構成されている。
【0119】
収容領域の下部に、つまりスリーブ底部の直ぐ上に、圧縮コイルばねが配置されている。圧縮コイルばねの上方に、力伝達要素が配置されていて、力伝達要素の上方に、主軸のスタンプ状の端部領域が配置されている。他方、スタンプ状の端部領域の上方には、ブッシュが配置されていて、この場合、ブッシュが、収容領域を全体的に閉鎖する。
【0120】
これにより、膨張弁の特にコンパクトな構成が達成される。
【0121】
本発明の有利な一発展形態によれば、膨張弁が、弁座を有し、弁基体が、弁座とスリーブ要素と中空シャフトとを少なくとも部分的に収容する、一体に構成されたボディである。
【0122】
したがって、弁基体は、ある種の交換可能な弁カートリッジ(Cartridge)として構成されている。弁基体だけを弁組付けスペースから取り外せばよいので、容易化された弁交換が可能になる。さらに、多くの機能が弁基体に組み込まれているので、コンパクト化も向上される。
【0123】
さらに、このような一体に構成された弁基体は、弁を、1つの構成部材(弁基体外側部)のみの適合によって、顧客特有の構造スペースに組み込む手段を提供する。これにより、コストを削減することができる。というのも、同一の構成部材を様々な膨張弁に使用することができるからである。さらに、部品の種類が減るので、さらなるコストの削減が可能である。膨張弁の組立てにおける煩雑性も低減される。
【0124】
本発明の有利な一発展形態によれば、弁基体は、下側の領域に、弁座収容領域を有するとともに、上側の領域に、中空シャフトとスリーブ要素とを収容するように構成された収容領域を有する。
【0125】
したがって、弁基体は、膨張弁の要素をできるだけ容易に弁基体に組み込むことを可能にする収容領域を有する。
【0126】
本発明の有利な一発展形態によれば、スリーブ要素は、少なくとも部分的に中空シャフト内で収容領域内に配置されている。
【0127】
収容領域によって、膨張弁の軸方向に見て、構造スペースが減少する。
【0128】
本発明の有利な一発展形態によれば、力伝達要素は、これが主軸からのトルクを吸収しない又は限定的にしか吸収しないように構成されている。
【0129】
この限定は、力伝達要素と中心の主軸との間の点状の接触面で行われる。
【0130】
本発明の有利な一発展形態によれば、膨張弁は、上端位置と下端位置との間の主軸の回転運動を制限する主軸−ストッパ−構造を有する。
【0131】
本発明の有利な一発展形態によれば、主軸−ストッパ−構造は、螺旋体とストッパボディとの相互作用によって形成される。
【0132】
さらに、本発明による解決手段は、ステップモータによって動作可能な膨張弁であって、ハウジングと、ハウジングに配置された中空シャフトと、中空シャフトを支持するとともに、ハウジングを閉鎖する弁基体と、ステータによって駆動可能であるロータと、中心の主軸であって、主軸は、中空シャフト内に配置されているともに、ロータによって駆動可能であり、主軸の回転運動が、ねじ山結合部を介して、膨張弁の開閉のための軸方向移動に変換可能である、主軸と、スリーブ要素とを備え、スリーブ要素は、弁ニードルを有し、弁ニードルは、弁座に押圧可能であり、弁基体は、弁座とスリーブ要素と中空シャフトとを少なくとも部分的に収容する、一体に構成されたボディ本体である、膨張弁を提供することにある。
【0133】
したがって、弁基体は、ある種の弁カートリッジ(Cartridge)として構成されている。一方では、これは、弁基体だけを弁組付けスペースから取り外せばよいので、容易化された弁交換が可能になるという利点を提供する。他方では、多くの機能が弁カートリッジに、つまり弁基体に組み込まれているので、特に高度なコンパクト化を達成することができる。
【0134】
さらに、このような一体に構成された弁基体は、弁を、1つだけの構成部材の適合によって、顧客特有の組付けスペースに組み込む手段を提供する。したがって、好適には弁基体のみで異なる様々な数多くの弁が得られる。
【0135】
この場合、様々な弁基体の内側領域が常に同一に構成されているので、内側領域における機能的な部分を、様々な数多くの膨張弁に組付けることが可能である。これに対して、弁基体の外形は、顧客特有の構造スペースに適合させることができるので、ここでは様々な弁基体が、それぞれ区別される。
【0136】
これにより、特に製造コストを削減することができる。というのも、様々な膨張弁に対して同一の部品を使用することができるからである。膨張弁の組立てにおける煩雑性も低減される。
【0137】
本発明の有利な一発展形態によれば、弁基体が、下側の領域に、弁座収容領域を有し、上側の領域に、中空シャフトとスリーブ要素とを収容するように構成された収容領域を有する。
【0138】
したがって、弁基体は、膨張弁の機能的に必要な要素をできるだけ容易に弁基体に組み込むことができるようにするために、収容領域を有する。収容領域によって、膨張弁の軸方向に見て、構造スペースも減少する。
【0139】
本発明の有利な一発展形態によれば、スリーブ要素は、少なくとも部分的に中空シャフトの内側で収容領域内に配置されている。
【0140】
これにより、さらなる構造スペースを節約することができる。収容領域は、一平面(法線としての回転軸線Rを有する)に配置することができる。収容領域において、まずは半径方向内側に、中空シャフトが配置されている。次いで半径方向内側に(つまり中空シャフトの内側に)スリーブ要素が配置されている。この場合、さらに半径方向内側に、例えば中心の主軸の一部及び/又は1つのもしくは前述の力伝達要素が配置されている。
【0141】
これにより、極めてコンパクトな構造が得られる。複数の要素が一平面に設置されるので、これに応じて軸方向の長さを減らすことができる。つまり、膨張弁は、従来技術に比べて長さを短縮することができる。特に自動車産業では、組付けスペースが、極端に制限されていることが多いので、より短い弁では、配置に関するより多くの可能性が得られる。
【0142】
本発明の有利な一発展形態によれば、弁基体は、ハウジング座を有し、ハウジング座は、半径方向で周方向に延びる1つの又は前述の弁基体の上側の領域に、弁基体がハウジングを密閉して収容するように配置されているとともに構成されている。
【0143】
ゆえに、ハウジングは、全ての構成部材をその内部に確実に包囲することができる。
【0144】
本発明の有利な一発展形態によれば、弁基体が、下側のシール収容領域と上側のシール収容領域とを有する。
【0145】
2つの異なるシール収容領域の配置によって、一体に構成された弁基体でも確実な緊密性を達成することができる。
【0146】
本発明の有利な一発展形態によれば、弁基体が、圧力補償のための装置を有する。
【0147】
これは、弁基体が、圧力補償のためのこれらの装置(例えば圧力補償チャネル)に組み込まれているように構成されていることを意味する。圧力補償チャネル又は圧力補償のための装置の的確な組込みによって、膨張弁の機能が損なわれることなく、弁基体を一体の構成部材として実現することができる。
【0148】
本発明の有利な一発展形態によれば、ハウジングと、弁基体の、ハウジングに向いた面とが、ハウジング内室を画定し、圧力補償のための第1の装置が、第1の圧力補償チャネルとして、ハウジング内室と流体入口空間との間に配置されている。
【0149】
第1の圧力補償チャネルは、好適には、少なくとも部分的に弁基体内に配置された第1のチャネル領域と、少なくとも部分的に中空シャフト内に配置された第2のチャネル領域とを有し、第1のチャネル領域と第2のチャネル領域とは、周方向に延びる接続領域を介して相互に接続されている。
【0150】
動作中、特に介在された構成部材の上下で作用する力の間のアンバランスは、可能な限り阻止しなければならない。これは、例えば、入口に存在する高圧が上方へ導かれることによって起こる。したがって、総じて、圧力補償チャネルによって、膨張弁の空間のうちの1つにおける、膨張弁の機能を妨げる圧力停滞が回避されるべきである。
【0151】
本発明の有利な一発展形態によれば、膨張弁が、中空シャフト内室とハウジング内室との間の圧力補償のための第2の圧力補償チャネルを有し、中空シャフト内室が、中空シャフト内に形成されている。
【0152】
本発明の有利な一発展形態によれば、スリーブ要素が、中心の主軸のスタンプ状の端部領域と圧縮コイルばねと力伝達要素とが完全に収容された収容領域を有し、横断面で見て、収容領域は、完全に弁基体内に配置されている。
【0153】
これにより、構造スペースを節約することができる。収容領域には、まずは半径方向内側に中空シャフトが配置されている。次いで半径方向内側に(つまり中空シャフトの内側に)スリーブ要素が配置されている。この場合、さらに半径方向内側に、中心の主軸のスタンプ上の端部領域と圧縮コイルばねと力伝達要素とが配置されている。
【0154】
これにより、極めてコンパクトな構造が得られる。複数の要素が一平面内に設置されるので、これに応じて軸方向の長さを減らすことができる。
【0155】
本発明の有利な一発展形態によれば、膨張弁が、第3の圧力補償チャネルを有し、第3の圧力補償チャネルは、スリーブ要素の収容領域と弁基体の下側の内側領域との間に配置されていて、弁基体の下側の領域内に、弁ニードル、が軸方向可動に構成されている。
【0156】
第3の圧力補償チャネルは、スリーブ要素の収容領域内に形成された空間と弁基体の下側の内側領域との間の圧力補償をもたらす。弁基体の下側の内側領域は、他方、流体孔を介して流体入口空間に接続されているので、ここでも、流体孔によって圧力補償を行うことができる。
【0157】
したがって、構造的に容易な手段で、膨張弁内に、そして膨張弁に部分的に隣接して形成された又は配置された全ての空間の間の確実で十分な圧力補償が達成される。
【0158】
本発明の有利な一発展形態によれば、力伝達要素が、頭領域と軸領域とを有し、力伝達要素は、中心の主軸との接触が頭領域の中心の領域で点状に行われるように配置されている。
【0159】
主軸と力伝達要素との間のこの点状の接触面によって、トルクが伝達され得ない又は全く伝達され得ない。したがって、主軸が回動時に滑り、動力伝達要素が回動されない。これに対して、軸方向力は、点状の接触でも確実に主軸から力伝達要素へと伝達することができる。その結果、力伝達要素と中心の主軸との間の接触面で、トルクの中断が行われる。
【0160】
本発明の有利な一発展形態によれば、圧縮コイルばねが、部分的に、力伝達要素の軸領域の側面に配置されている。
【0161】
圧縮コイルばねが軸領域の側面に配置されているので、圧縮コイルばねは、一方では軸領域によってガイドされている。他方では、圧縮コイルばねは、外側からスリーブ要素の収容領域の内側面によってガイドされている。
【0162】
この場合、圧縮コイルばねは、両方の要素に接触しなくてよい。むしろ、軸領域の側面と圧縮コイルばねとの他に圧縮コイルばねと収容領域の内側面との間に遊びが形成されていることも考えられる。ただし、圧縮コイルばねは、ばねの圧縮時の傾倒が回避されることができる程度にガイドされている。
【0163】
本発明の有利な一発展形態によれば、圧縮コイルばねが、円筒コイルばねである。
【0164】
円筒コイルばねとして、圧縮コイルばねは、その製造が特に低コストであり、確実に軸領域の側面の周りに配置することができる。
【0165】
本発明の有利な一発展形態によれば、軸領域の長さが、予め設定されたばね行程の分だけ圧縮コイルばねを圧縮する軸方向の力が超えられると、軸領域が、スリーブ要素のスリーブ底部に接触するような長さに構成されている。
【0166】
これは、圧縮コイルばねが、予め設定されたばね行程の分だけ圧縮されていると、軸方向力を直接に力伝達要素からスリーブ底部へと伝達することができることを意味する。ゆえに、機械的な停止装置、つまり主軸−ストッパ−構造が故障する又は弁に過負荷がかかると、最大行程の制限を行うことができる。
【0167】
したがって、力伝達要素も複数の機能をも満たす。まずは、力伝達要素は、主軸からのスリーブ要素のトルク分離を可能にする。さらに、力伝達要素又は力伝達要素の軸領域は、圧縮コイルばねを軸方向にガイドし、したがって圧縮コイルばねの座屈又通常の非対称の変形を阻止する。さらに、軸領域は、前述の最大行程制限をもたらす。
【0168】
さらに、本発明に係る解決手段は、弁組付けスペースに組み込むための、ステップモータによって動作可能な膨張弁であって、ハウジングと、ハウジングに配置された中空シャフトと、中空シャフトを支持するとともに、ハウジングを閉鎖する弁基体と、ステータによって駆動可能であるロータと、中心の主軸であって、主軸は、中空シャフト内に配置されているともに、ロータによって駆動可能であり、主軸の回転運動が、ねじ山結合部を介して、膨張弁の開閉のための軸方向移動に変換可能である、主軸とを備え、ハウジングと、弁基体の、ハウジングに向いた側の面とが、ハウジング内室を画定し、中空シャフト内に、中空シャフト内室が形成されていて、弁基体の、ハウジングとは反対の側の面に隣接して、膨張弁が弁組付け空間に組み込まれた状態で、流体入口空間が配置されていて、ハウジング内室は、圧力補償のために、第1の圧力補償チャネルを介して流体入口室に接続されていて、第1の圧力補償チャネルは、少なくとも部分的に弁基体内に配置された第1のチャネル領域と、少なくとも部分的に中空シャフト内に配置された第2のチャネル領域とを有し、第1のチャネル領域と第2のチャネル領域とが、周方向に延びる接続領域を介して相互に接続されている、膨張弁を提供することにある。
【0169】
膨張弁は、膨張弁内に又は膨張弁に隣接して形成された多くの空間を有する。動作中、特に介在する構成部分の上側で作用する力と下側で作用する力との間のアンバランスは、可能な限り阻止しなければならない。これは、例えば、入口に存在する高圧が上方へ導かれることによって起こる。したがって、総じて、圧力補償チャネルによって、膨張弁の空間のうちの1つ又は複数における、膨張弁の機能を妨げる圧力停滞が回避されるべきである。
【0170】
膨張弁が組み立てられた状態で、中空シャフトが弁基体に(より正確に述べると、弁基体の1つの又は前述の収容領域に)に配置されている。第1のチャネル領域は、少なくとも部分的に弁基体内に配置されていて、第2のチャネル領域は、少なくとも部分的に中空シャフト内に配置されている。
【0171】
第1のチャネル領域と第2のチャネル領域との間で圧力補償を行うことができるように、これらは流体接続しなければならない。この流体接続は、周方向に延びる接続領域を介して行われる。接続領域が、2つの領域の間の必要な流体接続を形成する、周方向に延びる接続領域として構成されているので、組立て時に、弁基体と中空シャフトとをもはや相互に整列させなくてよい。これにより、組立てが容易になり、膨張弁の故障につながり得る、組立て時のエラーを回避することができる。
【0172】
本発明の有利な一発展形態によれば、周方向に延びる接続領域は、弁基体の収容領域の内周に配置された周方向に延びるアンダカットである。
【0173】
この場合、周方向に延びるアンダカットは、第1のチャネル領域と第2のチャネル領域との間の確実な(流体)接続を可能にする。
【0174】
本発明の有利な一発展形態によれば、広範囲に周方向に延びる接続領域は、中空シャフトの外周に配置された周方向に延びる面取り部である。
【0175】
これには、とりわけ、面取り部が、収容領域における周方向に延びるアンダカットよりも簡単であり、ひいては低コストで製造することができるという利点がある。
【0176】
特に迅速な圧力補償が要求されているとき、周方向に延びるアンダカットと周方向に延びる面取り部とを配置することもできる。
【0177】
本発明の有利な一発展形態によれば、第2のチャネル領域は、中空シャフト内で、弁基体内に配置された領域から弁基体内に配置されていない領域にまで延在する縦溝として構成されている。
【0178】
縦溝は、特に容易に作製することができ、この場合、縦溝は、とりわけその中で前述の滑りリングが軸方向に移動する縦溝である。したがって、縦溝は、同様に2つの機能を有する。というのも、縦溝は、第2のチャネル領域として構成されているだけでなく、主軸−ストッパ−構造の一部として膨張弁の機能を満たす滑りリングをガイドするためにも用いられる。
【0179】
本発明の有利な一発展形態によれば、膨張弁が、中空シャフト内室とハウジング内室との間の圧力補償のための第2の圧力補償チャネルを有し、第2の圧力補償チャネルは、少なくとも部分的に第2のチャネル領域によって形成される。
【0180】
換言すると、第2のチャネル領域の領域は、第2の圧力補償チャネルの領域も形成する。
【0181】
本発明の有利な一発展形態によれば、第2の圧力補償チャネルは、縦溝及び中空シャフト内室の半径方向の広がりが最大の領域に配置されている。
【0182】
これは、第2の圧力補償チャネルが、縦溝の底部に形成されていることを意味する。特に、これは、縦溝の底部における開口である。
【0183】
したがって、縦溝は、第2のチャネル領域としてだけではなく、第2の圧力補償チャネルの一部として、流体入口空間とハウジング内室との間の圧力補償に加えて、中空シャフト内室とハウジング内室との間の圧力補償を提供することができる。
【0184】
中空シャフト内室を有して構成された中空シャフト内に縦溝を加工するとき、同時に第1圧力補償チャネルの第2のチャネル領域と第2の圧力補償チャネルとを形成することができる。
【0185】
本発明の有利な一発展形態によれば、膨張弁は、アダプタ要素を有し、アダプタ要素は、モーメントをロータから主軸へ伝達するためにロータと主軸との間に配置されていて、アダプタ要素は、少なくとも1つの離心した開口を有し、開口は、これがアダプタ要素の上部とアダプタ要素の下部とにおけるハウジング内室の圧力を補償するように配置されている。
【0186】
アダプタ要素における離心した開口によって、ハウジング内室内、つまり上側の領域(アダプタ要素の上部)と下側の領域(アダプタ要素の下部)との間の圧力を迅速にかつ容易に補償することができる。これにより、膨張弁の機能確実性がさらに高まる。
【0187】
本発明の有利な一発展形態によれば、膨張弁は、第3の圧力補償チャネルを有し、第3の圧力補償チャネルは、膨張弁の弁ニードルを有するスリーブ要素の収容領域と弁基体の下側の内側領域との間に配置されていて、その内側に、弁ニードルが、軸方向可動に構成されていて、流体孔を介して流体入口空間に接続されている。
【0188】
したがって、第3の圧力補償チャネルは、スリーブ要素の収容領域内に形成された空間と弁基体の下側の内側領域との間の圧力補償をもたらす。弁基体の下側の内側領域は、他方、流体孔を介して流体入口空間に接続されているので、ここでも、流体孔を介して圧力補償を行うことができる。
【0189】
したがって、構造的に簡単な手段で、膨張弁内に、そして部分的に膨張弁に隣接して(例えば流体入口空間)形成された又は配置された全ての空間の間の確実で十分な圧力補償が達成される。
【0190】
本発明の有利な一発展形態によれば、スリーブ要素の収容領域内に、中心の主軸のスタンプ状の端部領域と圧縮コイルばねと力伝達要素とが収容されている。
【0191】
これにより、膨張弁の特にコンパクトな構造が得られ、それにもかかわらず、しかもその際、全ての機能を満たすことができる。
【0192】
本発明の有利な一発展形態によれば、力伝達要素は、これが中心の主軸との接触によって、軸方向力を、中心の主軸から圧縮コイルばねを介してスリーブ要素へと伝達するように構成されているとともに配置されていて、力伝達要素は、横断面で見て、きのこ状に構成されている。
【0193】
本発明の有利な一発展形態によれば、力伝達要素が、頭領域と軸領域を有し、力伝達要素は、中心の主軸との接触が頭領域の中央の領域で点状に行われるように配置されている。
【0194】
主軸と力伝達要素との間のこの点状の接触面によって、トルクが伝達され得ない又は全く伝達され得ない。したがって、主軸が回動時に滑り、力伝達要素は回動されない。これに対して、軸方向力は、点状の接触面でも確実に主軸から力伝達要素へと伝達することができる。したがって、力伝達要素と中心の主軸との間の接触面で、トルクの中断が行われる。
【0195】
本発明の有利な一発展形態によれば、膨張弁が、弁座を有し、弁基体が、弁座とスリーブ要素と中空シャフトとを少なくとも部分的に収容する、一体的に構成されたボディである。
【0196】
したがって、弁基体は、ある種のカートリッジとして構成されている。一方では、弁基体は、容易化された弁交換が可能になるという利点を有する。というのも、弁基体だけを弁組付けスペースから取り外せばよいからである。他方では、多くの機能が弁カートリッジに、つまり弁基体に組み込まれているので、特に高度なコンパクト化を達成することができる。
【0197】
さらに、このような一体に構成された弁基体は、弁を、1つの構成部材のみの適合によって、顧客特有の構造スペースに組み込む手段を提供する。これにより、特に製造コストを削減することができる。というのも、同一の構成部材を様々な膨張弁に使用することができるからである。膨張弁の組み立てにおける煩雑性も低減される。
【0198】
本発明の有利な一発展形態によれば、弁基体が、下側のシール収容領域と上側のシール収容領域とを有する。
【0199】
それぞれ異なる2つのシール収容領域の配置によって、一体に構成された弁基体でも、確実な緊密性を達成することができる。
【0200】
さらに、本発明による解決手段は、膨張弁を製造する方法であって、以下の、中空シャフトを提供するステップと、中空シャフトに縦溝を加工するステップと、を有する方法を提供することにある。
【0201】
本発明の有利な一発展形態によれば、縦溝を加工するとき、第2の圧力補償チャネルが中空シャフト内に形成される。
【0202】
第2の圧力補償チャネルの同時の加工によって、そうでない場合には付加的に必要な、第2の圧力補償チャネルを別個に加工するための作業ステップが節減される。
【0203】
発明のさらなる利点は、明細書及び図面から明らかである。
【0204】
本発明を、以下に、添付の図面を参照して、実施例の記載に基づいて詳説する。その際、以下の記載及び特許請求の範囲の全体から、本発明のさらなる有利な実施態様及び特徴の組合わせが得られる。
【0205】
実施例の説明のために用いられる図面は、以下の通り示すものである。