(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-89130(P2021-89130A)
(43)【公開日】2021年6月10日
(54)【発明の名称】乾燥装置
(51)【国際特許分類】
F26B 21/00 20060101AFI20210514BHJP
F26B 15/00 20060101ALI20210514BHJP
【FI】
F26B21/00 N
F26B15/00 D
【審査請求】有
【請求項の数】7
【出願形態】OL
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2020-139294(P2020-139294)
(22)【出願日】2020年8月20日
(31)【優先権主張番号】特願2019-213446(P2019-213446)
(32)【優先日】2019年11月26日
(33)【優先権主張国】JP
(71)【出願人】
【識別番号】394025371
【氏名又は名称】株式会社マックステック
(74)【代理人】
【識別番号】110001726
【氏名又は名称】特許業務法人綿貫国際特許・商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 俊介
【テーマコード(参考)】
3L113
【Fターム(参考)】
3L113AA03
3L113AB02
3L113AC08
3L113AC52
3L113AC67
3L113AC76
3L113AC77
3L113BA34
3L113DA19
(57)【要約】
【課題】乾燥室の室内空間を有効に利用しかつワークを移載する移送機構のガイド孔から熱気が漏れ出すのを防いで熱効率の改善を図った乾燥装置を提供する。
【解決手段】ワーク移送機構6を作動させて吊り下げロッド6bがガイド孔4aに沿って移動すると、可動遮蔽板10が耐熱遮蔽ベルト8の内周面上を所定長スライドしてガイド孔4aの一部を塞ぎ、吊り下げロッド6bが第二ベルト孔8bの端部に突き当たると耐熱遮蔽ベルト8が所定長回転して可動遮蔽板10に連続してガイド孔4aの残余を覆う。
【選択図】
図6
【特許請求の範囲】
【請求項1】
薄板状のワークがキャリヤに保持されたまま非接触で乾燥室内を移送される間に所定の温度プロファイルで順次ワーク両面の乾燥が行われる乾燥装置であって、
前記ワークを載置したキャリヤを乾燥室内で昇降させる複数の昇降機構と、
前記乾燥室の天板部には、前記昇降機構間でワークを保持して移送するワーク保持部が吊り下げロッドにより吊り下げ支持されたワーク移送機構と、を備え、
前記天板部には吊り下げロッドが往復動する範囲にガイド孔が設けられ、かつ無端状の耐熱遮蔽ベルトが前記天板部の長手方向内面及び外面に沿って移動可能に配置されており、前記耐熱遮蔽ベルトの対向辺部には前記吊り下げロッドが挿入されかつ長さが異なるベルト孔が各々形成され、前記耐熱遮蔽ベルトの内周面には、前記吊り下げロッドと共に移動可能な可動遮蔽板がスライド可能に重ねて設けられており、
前記ワーク移送機構を作動させて前記吊り下げロッドがガイド孔の一端側から他端側へ移動すると、前記可動遮蔽板が前記耐熱遮蔽ベルトの内周面上を所定長スライドして前記ガイド孔の一部を塞ぎ、前記吊り下げロッドが前記ベルト孔の端部に突き当たると前記耐熱遮蔽ベルトを所定長従動回転させて前記可動遮蔽板に連続して前記ガイド孔の残余を覆うことを特徴とする乾燥装置。
【請求項2】
前記耐熱遮蔽ベルトの対向する天板上辺部には前記ガイド孔以上の長さの第一ベルト孔が形成され、天板下辺部には前記ガイド孔より長さが短い第二ベルト孔が各々形成されており、前記可動遮蔽板は前記耐熱遮蔽ベルトの内周面に前記第二ベルト孔に重ねて配置されている請求項1又は請求項2記載の乾燥装置。
【請求項3】
前記ワーク移送機構の吊り下げロッドが、前記第二ベルト孔の端部に係止すると前記第一ベルト孔と前記第二ベルト孔間の平板状の遮蔽ベルトが前記可動遮蔽板に連続する位置まで引き出されて前記ガイド孔の残余を覆う請求項2記載の乾燥装置。
【請求項4】
前記ガイド孔の長さをL1、前記耐熱遮蔽ベルトの対向辺に設けられたベルト孔端部間の平板状のベルト長をL2、前記可動遮蔽板の前記吊り下げロッドの貫通孔から遮蔽板端部までの長さをL3とするとL1≦L2+L3となるように形成されている請求項1乃至請求項3のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項5】
前記昇降機構は、前記ワークを載置したキャリヤを前記乾燥室の底部から天板部に向かって上昇させながら積層する第一昇降機構と、前記ワーク移送機構により最上側のワークが前記第一昇降機構から順次移載されて下降させながら積層する第二昇降機構を少なくとも一対備えている請求項1乃至請求項4のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項6】
ワークを載置したキャリヤを第一昇降機構の下方の第一位置で昇降させて当該第一昇降機構の最下層に受け渡し、第二昇降機構の下方の第二位置で当該第二昇降機構の最下層より乾燥後のワークを載置したキャリヤを受け取って下降して取り出す動作を繰り返すキャリヤ昇降機構を前記第一位置と前記第二位置とで移動可能に設けた請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の乾燥装置。
【請求項7】
ワークを載置したキャリヤを第一昇降機構の下方の第一位置で昇降させて当該第一昇降機構の最下層に受け渡す第一キャリヤ昇降機構と、第二昇降機構の下方の第二位置で乾燥後のワークを載置したキャリヤを昇降させる第二キャリヤ昇降機構と、キャリヤを第二位置から第一位置へ戻して再利用するキャリヤ戻し機構を備えた請求項1乃至請求項5のいずれかに記載の乾燥装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ワークとして例えば板状の精密部品、基板等の電子精密部品にコーティングされた保護層などの加熱・乾燥工程に用いられる乾燥装置に関する。
【背景技術】
【0002】
本件出願人は、ワークとして基板等電子精密部品の製造工程でワーク乾燥室に発塵要因や熱劣化の要因となるチェーンやコンベアベルトを設けることなくワークの移送を行う乾燥装置をすでに提案した。この乾燥装置は、密閉された室内に収容されたワークを移送しながら乾燥するワーク乾燥室と、該ワーク乾燥室を閉止する仕切プレートから室内に挿入され、該ワークを支持したまま、該仕切プレートに形成されたガイド孔に沿って往復動する吊り下げロッドと、該ガイド孔に重ねて設けられ、該吊り下げロッドが貫通して、該吊り下げロッドと共にスライドするスライドプレートと、該スライドプレートの両側に、該スライドプレートのスライド動作に伴い開口する該ガイド孔の開口部を覆うように従動する従動プレートが設けられている(特許文献1参照)。これにより、乾燥室の仕切プレートに設けられたガイド孔より熱気が放出されるのを防いで熱効率の向上を図り、駆動機構への熱害を防いでいる。
【0003】
また、平板上のワークを乾燥室内に積層して収容することで小型化を図り、収容中または搬送中のワークの汚損を防止するワーク加熱冷却装置を提案した。保温室内でワークを、板面を対向させて所定の間隔を空けて並列状態に積層させて周回させながら、該ワークを均熱状態で保温している(特許文献2参照)。これにより保温室内にチェーンやベルトを設けてワークを搬送するといった機構を採用せずに、モータとボールネジ(もしくはシリンダとピストン)による昇降機構を動力源とし、且つ、それらの昇降機構を保温室の下方の室外に設置する構成により、ワークの昇降を実現している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2009−19820号公報
【特許文献2】特開2009−121732号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、ワークのサイズが大型化すると、乾燥室内に積載して収容されたワークを乾燥室内で循環させて移送する場合、移送機構の移動量が多くなる。この場合、乾燥室の室外に設けられる移動機構と乾燥室内に設けられるワーク保持部を連結する吊り下げロッドが移動する長孔状のガイド孔を特許文献1に示す従動プレートだけでは塞ぐことができなくなる。
【0006】
また、特許文献2の保温室において、ワークを上昇しながら積載する第一のワーク積載部の最上層からワークを保持して第二のワーク積載部の最上層にワークを移載してワークを下降しながら取り出してワークを循環させている。このとき、保温室両側面を貫通してスライドシャフトが移動するためスリット状の貫通孔が形成されており、保温室の熱気が室外に漏れて冷却されやすい。
また、保温室内の上部空間を移送機構が突き抜けて配置され、保温室を移動空間として使用するため、保温室の室内空間を有効利用できず、熱効率が低下しやすい。
特に、ワークを乾燥する場合に溶剤等が気化しており、乾燥室内の温度が低下すると液化して移送機構に付着しワークの汚損が発生するおそれがある。
また、乾燥前のワークを連続して乾燥室に搬入し乾燥後のワークを乾燥室から取り出す動作を効率良く行って、作業効率を高めたいというニーズもある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明はこれらの課題を解決すべくなされたものであり、その目的とするところは、乾燥室の室内空間を有効に利用しかつワークを移載する移送機構のガイド孔から熱気が漏れ出すのを防いで熱効率の改善を図ると共に作業効率を向上させた乾燥装置を提供することにある。
【0008】
本発明は上記目的を達成するため、次の構成を備える。
薄板状のワークがキャリヤに保持されたまま非接触で乾燥室内を移送される間に所定の温度プロファイルで順次ワーク両面の乾燥が行われる乾燥装置であって、前記ワークを載置したキャリヤを乾燥室内で昇降させる複数の昇降機構と、前記乾燥室の天板部には、前記昇降機構間でワークを保持して移送するワーク保持部が吊り下げロッドにより吊り下げ支持されたワーク移送機構と、を備え、前記天板部には吊り下げロッドが往復動する範囲にガイド孔が設けられ、かつ無端状の耐熱遮蔽ベルトが前記天板部の長手方向内面及び外面に沿って移動可能に配置されており、前記耐熱遮蔽ベルトの対向辺部には前記吊り下げロッドが挿入されかつ長さが異なるベルト孔が各々形成され、前記耐熱遮蔽ベルトの内周面には、前記吊り下げロッドと共に移動可能な可動遮蔽板がスライド可能に重ねて設けられており、前記ワーク移送機構を作動させて前記吊り下げロッドがガイド孔の一端側から他端側へ移動すると、前記可動遮蔽板が前記耐熱遮蔽ベルトの内周面上を所定長スライドして前記ガイド孔の一部を塞ぎ、前記吊り下げロッドが前記ベルト孔の端部に突き当たると前記耐熱遮蔽ベルトを所定長従動回転させて前記可動遮蔽板に連続して前記ガイド孔の残余を覆うことを特徴とする。
【0009】
上記構成によれば、ワーク移送機構を作動させて吊り下げロッドがガイド孔に沿って移動すると、可動遮蔽板が耐熱遮蔽ベルトの内周面上を所定長スライドしてガイド孔の一部を塞ぎ、吊り下げロッドがベルト孔の端部に突き当たると耐熱遮蔽ベルトを所定長従動回転させて可動遮蔽板に連続してガイド孔の残余を覆う。このように天板部のガイド孔の長さに応じて可動遮蔽板と耐熱遮蔽ベルトとを組み合わせて遮蔽することで、吊り下げロッドの移動量が増えても、ガイド孔から熱気が乾燥室外へ漏れ出すのを防ぐことができ、熱効率の改善を図ることができる。
また、乾燥室の天板部には吊り下げロッドが往復動する範囲にガイド孔が設けられ、かつ無端状の耐熱遮蔽ベルトが天板部の内面及び外面に沿って移動可能に配置されているので、天板部近傍までワークを収容することができ、乾燥室の室内空間を広く有効に利用することができる。
【0010】
前記耐熱遮蔽ベルトの対向する天板上辺部には前記ガイド孔以上の長さの第一ベルト孔が形成され、天板下辺部には前記ガイド孔より長さが短い第二ベルト孔が各々形成されており、前記可動遮蔽板は前記耐熱遮蔽ベルトの内周面に前記第二ベルト孔に重ねて配置されていてもよい。
この場合、耐熱遮蔽ベルトの第一ベルト孔は吊り下げロッドの移動に干渉することがなく、第二ベルト孔は移動ロッドの移動に合わせて可動遮蔽板に連続する位置まで耐熱遮蔽ベルトを引き出すことができる。よって簡易な構成でガイド孔を塞ぐことができる。
【0011】
具体的には前記ワーク移送機構の吊り下げロッドが、前記第二ベルト孔の端部に係止すると前記第一ベルト孔と前記第二ベルト孔間の平板状の遮蔽ベルトが前記可動遮蔽板に連続する位置まで引き出されて前記ガイド孔の残余を覆うようにしてもよい。
これにより、ガイド孔の長さに応じて可動遮蔽板と耐熱遮蔽ベルトの長さを組み合わせて遮蔽することができる。
【0012】
前記ガイド孔の長さをL1、前記耐熱遮蔽ベルトの対向辺に設けられたベルト孔端部間の平板状のベルト長をL2、前記可動遮蔽板の前記吊り下げロッドの貫通孔から遮蔽板端部までの長さをL3とするとL1≦L2+L3となるように形成されていることが好ましい。
これにより、天板部に設けられたガイド孔長L1を平板状の耐熱遮蔽ベルト長L2と可動遮蔽板長さL3で確実に覆うことができる。
【0013】
前記昇降機構は、前記ワークを載置したキャリヤを前記乾燥室の底部から天板部に向かって上昇させながら積層する第一昇降機構と、前記ワーク移送機構により最上側のワークが前記第一昇降機構から順次移載されて下降させながら積層する第二昇降機構を少なくとも一対備えていてもよい。
これにより、乾燥室内にワークを載置したキャリヤを第一昇降機構に積層収容して最上側のワークがワーク移送機構により第二昇降機構に移送して下降させながら積層することでワークを乾燥室内で効率よく循環させて乾燥させることができる。
【0014】
ワークを載置したキャリヤを第一昇降機構の下方の第一位置で昇降させて当該第一昇降機構の最下層に受け渡し、第二昇降機構の下方の第二位置で当該第二昇降機構の最下層より乾燥後のワークを載置したキャリヤを受け取って下降して取り出す動作を繰り返すキャリヤ昇降機構を前記第一位置と前記第二位置とで移動可能に設けてもよい。
これにより、キャリヤ昇降機構により乾燥前のワークを第一昇降機構に受け渡し乾燥後のワークを第二昇降機構から受け取る動作を繰り返し行って、作業効率を高めることができる。
【0015】
ワークを載置したキャリヤを第一昇降機構の下方の第一位置で昇降させて当該第一昇降機構の最下層に受け渡す第一キャリヤ昇降機構と、第二昇降機構の下方の第二位置で乾燥後のワークを載置したキャリヤを昇降させる第二キャリヤ昇降機構と、キャリヤを第二位置から第一位置へ戻して再利用するキャリヤ戻し機構を備えていてもよい。
これにより、第一キャリヤ昇降機構により乾燥前のワークをキャリヤに載置したまま第一昇降機構に保持させ、第二キャリヤ昇降機構により乾燥後のワークを載置したまま取り出し、キャリヤ戻し機構により空のキャリヤを第二位置から第一位置へ戻して再利用する動作を繰り返すことで、タクトタイムの短縮化を図り、作業効率を向上させることができる。
【発明の効果】
【0016】
上述した乾燥装置を用いれば、乾燥室の室内空間を有効に利用しかつワークを移載する移送機構のガイド孔から熱気が漏れ出すのを防いで熱効率の改善を図ると共に作業効率を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】乾燥装置の内部構成を透視した平面図及び正面図である。
【
図2】
図1の乾燥装置の内部構成を透視した側面図である。
【
図3】キャリヤの平面図、正面図及び側面図である。
【
図4】乾燥装置の天板部に設けられるワーク移送機構の構成を示す説明図である。
【
図5】
図4のキャリヤ取り出し部の左側の上視図である。
【
図7】
図1の乾燥室内部に備えた昇降機構の説明図である。
【
図8】他例に係る乾燥室内部に備えた昇降機構の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明に係る乾燥装置の実施形態について、添付図面を参照しながら説明する。本実施形態では、ワークとして薄板状精密部品の製造工程で用いられる乾燥装置を例示して説明する。
【0019】
図1及び
図2を参照して、乾燥装置の概略構成について説明する。
乾燥装置1は、薄板状のワークWがキャリヤKに保持されたまま乾燥室(加熱炉)2内を非接触で移送される間に所定の温度プロファイルにしたがって順次ワーク両面の乾燥が行われる。
図1Bにおいて、両面コーティングされてワーク供給位置PにセットされたワークWは、プッシャー3によって乾燥室2内の昇降機構に供給される。
乾燥室2にはワークWを載置したキャリヤKを乾燥室2の底部から天板部4に向かって上昇させながら積層する第一昇降機構5と、ワーク移送機構6により最上側のワークWが第一昇降機構5から順次移載されて下降させながら積層する第二昇降機構7を少なくとも一対備えている。ワーク供給位置PにセットされたワークWは、プッシャー3によって第一昇降機構5の下方に待機するキャリヤ昇降機構11のキャリヤK上に供給される。
【0020】
第一昇降機構5及び第二昇降機構7の下方には、キャリヤ昇降機構11が移動可能に設けられている。キャリヤ昇降機構11は、スライダーにより支持されており、第一昇降機構5の下方の第一位置と第二昇降機構7の下方の第二位置との間で移動可能に設けられている。キャリヤ昇降機構11は、電動アクチュエータ11aによりキャリヤKを支持するリフター11bを昇降させるようになっている。キャリヤ昇降機構11は、ワークWを載置したキャリヤKを第一昇降機構5の下方の第一位置で昇降させて当該第一昇降機構5の最下層に受け渡す。また、第二昇降機構7の下方の第二位置で当該第二昇降機構7の最下層より乾燥後のワークWを載置したキャリヤKを受け取って下降してワークWを取り出す動作を繰り返す。これにより、キャリヤ昇降機構11により乾燥前のワークWを第一昇降機構5に受け渡し乾燥後のワークWを第二昇降機構7から受け取る動作を繰り返し行って、作業効率を高めることができる。
【0021】
図1B及び
図2に示すように、乾燥室2の天板部4には、第一昇降機構5から第二昇降機構7へワークWを移送するワーク移送機構6が設けられている。ワーク移送機構6はワークWを載置するキャリヤKを保持して移送するワーク保持部6aが吊り下げロッド6bにより吊り下げ支持されている。
図2に示すように乾燥室2の背面側には室内温度を150℃以下で加熱するヒータ2aや熱風を循環させるブロワ2bなどが設けられている。
【0022】
図4において、ワーク移送機構6は、天板部4の上面(外面)にワーク保持部6aの駆動機構6cを備えている。駆動機構6cとしてはサーボモータによりボールねじを正逆回転駆動し、ボールねじに嵌合するナットを介してスライダー6dを往復動させる電動アクチュエータ等が好適に用いられる。スライダー6dに固定された支持部材6eに昇降シリンダ6fが支持されている。支持部材6eの長手方向両側にはガイドロッド6e1が各々設けられている。昇降シリンダ6fのシリンダロッド6gの先端は水平支持板6hに連結されている。ガイドロッド6e1の他端部は水平支持板6hに固定され、水平支持板6hの昇降動作をガイドしている。水平支持板6hには一対の吊り下げロッド6bの上端側が天板部4の外側で連結されている。一対の吊り下げロッド6bは、天板部4の長手方向に形成されたガイド孔4a(貫通孔)を貫通して乾燥室2内に挿入されている。一対の吊り下げロッド6bの下端部には第一水平アーム6iが連結されている。第一水平アーム6iに直交するように一対の第二水平アーム6jが組み付けられており、各第二水平アーム6jの両端には保持ロッド6kが合計4本吊り下げ支持されている。各保持ロッド6kの下端部には保持爪6k1が設けられている。上記第一,第二水平アーム6i,6j及び保持ロッド6kによりワーク保持部6aが構成されている。
ワーク移送機構6は、ワーク保持部6aを昇降シリンダ6fにより昇降させ、駆動機構6cによりスライダー6dをスライド移動させてワーク保持部6aを乾燥室2の上空間で移動させ、後述するようにワークWを載置したキャリヤKを第一昇降機構5側から第二昇降機構7側へ移送する。
【0023】
図3Aに示すように、ワークWを載置する矩形状キャリヤKの長手方向両側面部には保持爪6k1が係止する係止穴K1が合計4か所に形成されている。この係止穴K1に保持ロッド6kの保持爪6k1を係止させてワークWをキャリヤKと共に保持して第一昇降機構5から第二昇降機構7へ移送するようになっている。尚、
図3Bに示すように矩形状キャリヤKの四隅にはスペーサK2が突設されている。
各スペーサK2の上部にはピンK3が突設され、下部にはピンK3と嵌合するピン孔K4が設けられている。
図3Cに示すようにキャリヤKどうしは四隅のスペーサK2どうしをピンK3とピン孔K4が嵌合するように連結することで、ワークWどうしが非接触で積層支持されるようになっている。
【0024】
図4乃至
図6を参照してワーク移送機構6の移動に伴う天板部4のシール構造について説明する。
図4に示すように、天板部4には吊り下げロッド6bが往復動する範囲にガイド孔4aが設けられている。このガイド孔4aは何ら手当しないと乾燥室2内の熱気が逃げて室内温度が低下するおそれがある。そこで以下のシール構造が設けられている。
天板部4の長手方向両端部には、一対の搬送ローラ4bが回転自在に設けられている。一対の搬送ローラ4bには、無端状の耐熱遮蔽ベルト8が天板部4の長手方向内面及び外面に沿って移動可能に架設されている。耐熱遮蔽ベルト8は天板部4に設けられたガイド孔4aと内面及び外面で重なる位置に設けられている。耐熱遮蔽ベルト8は、金属ベルト、樹脂ベルト等様々な材料が用いられるが、本実施例では、耐熱性や加工し易さからモノマーキャストナイロン樹脂(登録商標:MCナイロン)が用いられる。搬送ローラ4bは平ベルト用のローラであっても、歯付プーリであっても或いはスプロケットホイール等であってもよい。
【0025】
図5A,Bに示すように、耐熱遮蔽ベルト8の対向辺部には一対の吊り下げロッド6bが挿入されかつ長さが異なる第一ベルト孔8a及び第二ベルト孔8bが各々形成されている。具体的には、耐熱遮蔽ベルト8の対向する天板上辺部4cにはガイド孔4a以上(L1以上)の長さLα(
図5A参照)の第一ベルト孔8aが形成されている。また、天板下辺部4dにはガイド孔4aより長さが短い長さLβ(
図5B参照)の第二ベルト孔8bが各々形成されている。
また、天板下辺部4d対向する耐熱遮蔽ベルト8の内周面上には、長尺状の平板である可動遮蔽板10が第二ベルト孔8bに重ねて設けられている。この可動遮蔽板10は中央部に一対の吊り下げロッド6bが貫通しており、吊り下げロッド6bが移動すると可動遮蔽板10が耐熱遮蔽ベルト8に重なったままスライドするようになっている。可動遮蔽板10は、耐熱遮蔽ベルト8の内周面に長手方向に設けられた凹溝に沿ってスライド可能に設けられているのが好ましい。
【0026】
図5Bに示すように、ガイド孔4aの長さをL1、耐熱遮蔽ベルト8の対向辺のベルト孔端部間の平板状のベルト長をL2、可動遮蔽板10の吊り下げロッド6bの貫通孔から可動遮蔽板10の端部までの長さをL3とすると、L1≦L2+L3となるように形成されている。
図6Aに示すように、ワーク移送機構6を作動させて吊り下げロッド6bがガイド孔4aの左端部から右端部に向かって移動すると、可動遮蔽板10が耐熱遮蔽ベルト8の内周面に沿って第二ベルト孔8b上を所定長(Lβ)だけスライドして、吊り下げロッド6bが第二ベルト孔8bの右端部に突き当たると可動遮蔽板10がガイド孔4aの一部を覆う。
図6Bに示すように、吊り下げロッド6bが更にガイド孔4aの右端部まで移動すると、耐熱遮蔽ベルト8が所定長L4だけ反時計回り方向に回転して可動遮蔽板10(左半分:長さL3)に連続して耐熱遮蔽ベルト8の平板部(長さL2に相当する部分)がガイド孔4aの直下に引き出されてガイド孔4aを覆う可動遮蔽板10の残余を覆う。これにより、耐熱遮蔽ベルト8の第一ベルト孔8aは吊り下げロッド6bの移動に干渉することがなく、第二ベルト孔8bは吊り下げロッド6bの移動に合わせて可動遮蔽板10に連続する位置まで耐熱遮蔽ベルト8を引き出すことができる。
【0027】
このようにガイド孔4aの長さに応じて可動遮蔽板10と耐熱遮蔽ベルト8とを組み合わせて遮蔽することで、吊り下げロッド6bの移動量が増えても、簡易な構成でガイド孔4aから乾燥室2内の熱気が室外へ漏れ出すのを防ぐことができ熱効率の改善を図ることができる。
また、乾燥室2の天板部4には吊り下げロッド6bが往復動する範囲にガイド孔4aが設けられ、かつ無端状の耐熱遮蔽ベルト8が天板部4の内面及び外面に沿って移動可能に配置されているので、天板部近傍までワークWを収容することができ、乾燥室2の室内空間を広く有効に利用することができる。
【0028】
ここで、ワークWの乾燥室2への搬送動作について説明すると、前工程においてワークWは薄板両面にレジスト等の保護層が印刷或いは塗布により両面コーティングされている。
図1Cに示すように、ワーク供給位置PにセットされたワークWは、プッシャー3によって第一昇降機構5の下方に待機するキャリヤ昇降機構11に支持されたキャリヤK上に供給される。
【0029】
図7に示すように、ワークWは最下部にあるキャリヤKに搬入されるが、最下部以外のキャリヤKに搬入させる機構としてもよい。このとき、最下部のキャリヤKよりも一つ上方に位置するキャリヤKはフック形状の第一保持爪5aにより支持されており、それによって、上方に積層されているキャリヤ積層体が支持されている。第一保持爪5aは、キャリヤKの両側に配置され、高さ方向に移動可能に支持され、任意の高さ位置で開閉操作される。尚、第一保持爪5aは高さ方向に複数箇所に設けられていてもよい。
【0030】
次に、キャリヤ昇降機構11の電動アクチュエータ11aを作動させてリフター11bを上昇させてワークWを載置したキャリヤKがキャリヤ支持部5bに支持された最下部のキャリヤKに替わって押し上げられる。最下部のキャリヤKが、その一つ上方に位置するキャリヤKと密着したところで、当該キャリヤKの下部に引っ掛けてあるフック形状の第一保持爪5aをキャリヤKから離れる方向に回動させ、キャリヤ積層体の支持を解放する。キャリヤK1個分の高さ、第一昇降機構5によるキャリヤKの上昇が行われたところで、第一保持爪5aを最下部のキャリヤKに近づける方向に回動させることによって、再度上方に積層されているキャリヤ積層体が支持される。以上の動作を繰り返すことでワークWを載置したキャリヤKが順次第一昇降機構5に積層支持される。キャリヤ昇降機構11は、電動アクチュエータ11aを作動させて下降し、図示しないスライダーが動作して第一位置から第二昇降機構7の下方である第二位置へ移動する。キャリヤ昇降機構11は、再度電動アクチュエータ11aを作動させてリフター11bを上昇位置へ移動させて待機する。
【0031】
第一昇降機構5に積層支持された最上部のキャリヤKは、前述したように、ワーク移送機構6のワーク保持部6aによって保持され、隣接する第二昇降機構7に設けられた第二保持爪7aに受け渡される。第二保持爪7aは、キャリヤKの両側に配置され、高さ方向に移動可能に支持され、任意の高さ位置で開閉操作される。尚、第二保持爪7aも高さ方向に複数設けられていてもよい。
【0032】
上記ワーク移送機構6によりキャリヤ移送動作を繰り返すことにより、第二昇降機構7側にキャリヤ積層体が積層支持される。第二昇降機構7上に所定数のワークWを支持したキャリヤKが積層支持されると、キャリヤ昇降機構11のリフター11bが上昇してキャリヤ支持部7bに支持された最下部のキャリヤKに密着して押し上げる。最下部のキャリヤKにリフター11bが密着したところで、当該キャリヤKの下部に引っ掛けてあるフック形状の第二保持爪7aをキャリヤKから離れる方向に回動させ、キャリヤ積層体の支持を一旦解放する。第二保持爪7aを最下部より一つ上のキャリヤKに近づける方向に回動させることによって、再度それより上方に積層されているキャリヤ積層体が支持される。最下部のキャリヤKはワークWを載置したままリフター11bに受け渡される。リフター11bに受け渡された最下部のキャリヤKは所定位置まで下降して、図示しない取り出し機構によりワークWのみが乾燥室2より取り出される。キャリヤ昇降機構11は、キャリヤKを支持したまま第二昇降機構7の下方の第二位置から、第一昇降機構5の下方の第一位置へ移動して同様の動作を繰り返す。
図1Aに、乾燥室2内のワークWの流れを直線的な矢印で示し、キャリヤKの流れを周回する矢印にて示した。
【0033】
以上の動作を繰り返すことでワークWを載置したキャリヤKの乾燥室2内における搬送動作が繰り返される。尚、上記第一昇降機構5側のキャリヤKの上昇動作と第二昇降機構7側のキャリヤKの下降動作を並行しても連続動作により行なってもいずれでもよい。
【0034】
図8に他例に係る乾燥室2内部に備えた昇降機構の構成例を示す。
図7は、キャリヤ昇降機構11を第一昇降機構5と第二昇降機構7の下方位置で移動可能に設けていたが、第一昇降機構5と第二昇降機構7の下方に各々設けてもよい。
即ち、ワークWを載置したキャリヤKを第一昇降機構5の下方の第一位置で昇降させて当該第一昇降機構5の最下層に受け渡す第一キャリヤ昇降機構12と、第二昇降機構7の下方の第二位置で乾燥後のワークWを載置したキャリヤKを昇降させる第二キャリヤ昇降機構13と、キャリヤKを第二位置から第一位置へ戻して再利用するキャリヤ戻し機構14を備えている。第一キャリヤ昇降機構12は、電動アクチュエータ12aによりキャリヤKを支持するリフター12bを昇降させるようになっている。また、第二キャリヤ昇降機構13は、電動アクチュエータ13aによりキャリヤKを支持するリフター13bを昇降させるようになっている。キャリヤ戻し機構14は、例えば単軸電動スライダーにより第一位置と第二位置とを往復動させる。キャリヤ戻し機構14は、リフター13bから第二位置で受け取った空のキャリヤKをリフター12b上の第一位置へ単軸電動スライダーによって周回して搬送するようになっている。
【0035】
これにより、第一キャリヤ昇降機構12により乾燥前のワークWをキャリヤKに載置したまま第一位置で第一昇降機構5に保持させ、第二キャリヤ昇降機構13により乾燥後のワークWを載置したままキャリヤKを第二位置で取り出し、キャリヤ戻し機構14により空のキャリヤKを第二位置から第一位置へ戻して再利用する動作を繰り返す。これにより、タクトタイムの短縮化を図り、作業効率を向上させることができる。
【0036】
また、上述した実施態様では、乾燥室2内にワーク上昇側である第一昇降機構5とワーク下降側である第二昇降機構7が一対設けられていたが、これに限らず例えば第一昇降機構5によりキャリヤ積層体が形成された後これを乾燥室内で平面移動させて複数保管した後、ワーク移送機構6により第一昇降機構5より第二昇降機構7に移送してワークWを乾燥室2より取り出すようにしてもよい。
【符号の説明】
【0037】
W ワーク K キャリヤ K1 係止穴 K2 スペーサ K3 ピン K4 ピン孔 P ワーク供給位置 1 乾燥装置 2 乾燥室 2a ヒータ 2b ブロワ 3 プッシャー 4 天板部 4a ガイド孔 4b 搬送ローラ 4c 天板上辺部 4d 天板下辺部 5 第一昇降機構 5a 第一保持爪 5b,7b キャリヤ支持部 6 ワーク移送機構 6a ワーク保持部 6b 吊り下げロッド 6c 駆動機構 6d スライダー 6e 支持部材 6f 昇降シリンダ 6g シリンダロッド 6h 水平支持板 6i 第一水平アーム 6j 第二水平アーム 6k 保持ロッド 6k1 保持爪 7 第二昇降機構 7a 第二保持爪 8 耐熱遮蔽ベルト 8a 第一ベルト孔 8b 第二ベルト孔 10 可動遮蔽板 11 キャリヤ昇降機構 11a,12a,13a 電動アクチュエータ 11b,12b,13b リフター 12 第一キャリヤ昇降機構 13 第二キャリヤ昇降機構 14 キャリヤ戻し機構