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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-89252(P2021-89252A)
(43)【公開日】2021年6月10日
(54)【発明の名称】膜厚測定装置及び膜厚測定方法
(51)【国際特許分類】
   G01B 11/06 20060101AFI20210514BHJP
【FI】
   G01B11/06 G
【審査請求】有
【請求項の数】6
【出願形態】OL
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2019-221038(P2019-221038)
(22)【出願日】2019年12月6日
(71)【出願人】
【識別番号】597147038
【氏名又は名称】テクノス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100114421
【弁理士】
【氏名又は名称】薬丸 誠一
(72)【発明者】
【氏名】渡辺 泰弘
(72)【発明者】
【氏名】中嶋 孝
【テーマコード(参考)】
2F065
【Fターム(参考)】
2F065AA30
2F065BB17
2F065CC02
2F065CC17
2F065DD03
2F065DD06
2F065FF52
2F065GG07
2F065HH12
2F065JJ03
2F065JJ26
2F065LL19
2F065LL28
2F065LL42
2F065MM03
2F065PP12
2F065UU07
(57)【要約】
【課題】入射角補正が不要となり、高速、高精度で膜厚測定を行うことができる膜厚測定装置及び膜厚測定方法を提供する。
【解決手段】本発明に係る膜厚測定装置は、測定対象物Sに対して光を照射する光源3と、測定対象物Sで反射又は透過した反射光又は透過光の干渉光を受光する分光ユニット2とを備え、分光ユニット2は、干渉光を受光する受光部20と、干渉光から受光部20の光軸CLを中心とする円弧線状に測定光を抽出する抽出部22と、円弧線状の測定光を分光する分光部24と、分光を撮像して二次元分光画像を取得する撮像部25と、二次元分光画像の情報に基づいて測定対象物Sの膜厚を算出する処理部とを備える。
【選択図】図2
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に対して光を照射する光源と、
測定対象物で反射又は透過した反射光又は透過光の干渉光を受光する分光ユニットとを備え、
分光ユニットは、
干渉光を受光する受光部と、
干渉光から受光部の光軸を中心とする円弧線状に測定光を抽出する抽出部と、
円弧線状の測定光を分光する分光部と、
分光を撮像して二次元分光画像を取得する撮像部と、
二次元分光画像の情報に基づいて測定対象物の膜厚を算出する処理部とを備える
膜厚測定装置。
【請求項2】
受光部は、受光部の光軸が測定対象物の測定面と直交するように配置される
請求項1に記載の膜厚測定装置。
【請求項3】
抽出部は、円弧線状のスリットを有するスリット板である
請求項1又は請求項2に記載の膜厚測定装置。
【請求項4】
光源は、円弧線状の測定光に対応する円弧線状の仮想線光源を含む帯状の発光面を有する
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の膜厚測定装置。
【請求項5】
分光部は、凸面回折格子を有し、
分光ユニットは、受光部と分光部との間及び分光部と撮像部との間のそれぞれに、凹面反射部を備える
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の膜厚測定装置。
【請求項6】
測定対象物に対して光を照射し、
測定対象物で反射又は透過した反射光又は透過光の干渉光を受光し、
干渉光から受光部の光軸を中心とする円弧線状に測定光を抽出し、
円弧線状の測定光を分光し、
分光を撮像して二次元分光画像を取得し、
二次元分光画像の情報に基づいて測定対象物の膜厚を算出する
膜厚測定方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、線状に取得した測定対象物の測定光に基づいて測定対象物の膜厚を測定する膜厚測定装置及び膜厚測定方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、フィルム、シート、半導体基板などの二次元膜厚分布を測定する膜厚測定装置としては、i)光源から照射され、測定対象物で反射又は透過した反射光又は透過光の干渉光を受光し、ii)干渉光から直線状に測定光を抽出し、iii)直線状の測定光を回折格子により直線方向と直交する方向に分光し、iv)分光を撮像素子で撮像することにより、第1方向を回折格子により波長展開された波長情報とし、第1方向と直交する第2方向を各測定点の位置情報として有する二次元分光画像を取得し、v)二次元分光画像から得られる各測定点の波形データに基づいて各測定点の膜厚を算出することにより、測定対象物の1ラインにおける膜厚分布を求め、vi)これらi)〜v)までの処理を、測定対象物を相対的に移動させつつ測定対象物の所定領域(全領域の場合を含む)に対して連続して行うことにより、測定対象物の所定領域における二次元膜厚分布を求める、という分光方式の膜厚測定装置が知られている。
【0003】
膜厚の算出に際しては、光学シミュレーションを用いて、測定対象とする膜の各膜厚値に対する分光反射率を計算しておき、これを実測の波形データと照合し、膜厚の最確値を算出するという方法が採られる。ただし、波形データは、そのまま使用するとデータ量が多いため、波形から何らかの特徴を抽出する。この抽出方法としては、実測の波形データと、膜厚参照テーブルの各膜厚値に対応する波形データとの「相関」を算出し、この値が最も大きいところを膜厚値とするという方法(いわゆる相関法)や、波形データをFFT変換(フーリエ変換)し、この周波数の特徴を用いて膜厚値と波形とを照合するという方法(いわゆるFFT法)などがある。
【0004】
図11(a)に、一般的な反射型の膜厚測定装置を示す。光源3’から照射された光は、ステージ1’上に載置された測定対象物Sで反射され、この反射光の干渉光が対物レンズ21’を経て回折格子24’に入射される。回折格子24’に入射した測定光は、各波長に分光され、撮像素子25’の撮像面で結像する。これが二次元分光画像となる。図11(b)に、一般的な透過型の膜厚測定装置を示す。光源3’から照射された光は、ステージ1’上に載置された測定対象物Sで透過し、この透過光の干渉光が対物レンズ21’を経て回折格子24’に入射される。回折格子24’に入射した測定光は、各波長に分光され、撮像素子25’の撮像面で結像する。これが二次元分光画像となる。
【0005】
ここで、反射型であれ透過型であれ、図11(c)及び(d)に示すように、測定対象物S上の測定線MLのうち、中心の測定点からの干渉光は、分光ユニットの受光部20’(対物レンズ21’)の光軸に沿った光路で受光部20’に入射する。しかし、測定線MLのうち、中心から端側にずれる測定点ほど、測定点からの干渉光は、入射角が大きくなって(最大入射角θy)受光部20’に入射する。この入射角の差異によって、測定線ML上の各測定点間で、同一の膜厚であっても、二次元分光画像に現れる情報が異なったものとなる。そこで、この入射角の差異に応じて、二次元分光画像の情報を補正する膜厚測定装置が提案されている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特許第6285597号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、入射角補正(視野角補正ともいう)は、膜厚測定アルゴリズムを複雑にし、処理の高速化を妨げるという問題がある。この問題は、膜厚測定の密度(解像度)を上げるために測定点を増やすほど、顕著となる。また、入射角補正を行っても、それが適切な光学定数を用いなければ、逆に誤差を増やすことになり、膜厚測定の高精度化にはつながらない。
【0008】
そこで、本発明は、かかる事情に鑑みてなされたもので、入射角補正が不要となり、高速、高精度で膜厚測定を行うことができる膜厚測定装置及び膜厚測定方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る膜厚測定装置は、
測定対象物に対して光を照射する光源と、
測定対象物で反射又は透過した反射光又は透過光の干渉光を受光する分光ユニットとを備え、
分光ユニットは、
干渉光を受光する受光部と、
干渉光から受光部の光軸を中心とする円弧線状に測定光を抽出する抽出部と、
円弧線状の測定光を分光する分光部と、
分光を撮像して二次元分光画像を取得する撮像部と、
二次元分光画像の情報に基づいて測定対象物の膜厚を算出する処理部とを備える
膜厚測定装置である。
【0010】
また、本発明に係る膜厚測定方法は、
測定対象物に対して光を照射し、
測定対象物で反射又は透過した反射光又は透過光の干渉光を受光し、
干渉光から受光部の光軸を中心とする円弧線状に測定光を抽出し、
円弧線状の測定光を分光し、
分光を撮像して二次元分光画像を取得し、
二次元分光画像の情報に基づいて測定対象物の膜厚を算出する
膜厚測定方法である。
【0011】
ここで、本発明に係る膜厚測定装置の一態様として、
受光部は、受光部の光軸が測定対象物の測定面と直交するように配置される
との構成を採用することができる。
【0012】
また、本発明に係る膜厚測定装置の他態様として、
抽出部は、円弧線状のスリットを有するスリット板である
との構成を採用することができる。
【0013】
また、本発明に係る膜厚測定装置の別の態様として、
光源は、円弧線状の測定光に対応する円弧線状の仮想線光源を含む帯状の発光面を有する
との構成を採用することができる。
【0014】
また、本発明に係る膜厚測定装置のさらに別の態様として、
分光部は、凸面回折格子を有し、
分光ユニットは、受光部と分光部との間及び分光部と撮像部との間のそれぞれに、凹面反射部を備える
との構成を採用することができる。
【発明の効果】
【0015】
以上の如く、本発明に係る膜厚測定装置及び膜厚測定方法によれば、測定対象物上の測定線から分光ユニットの受光部に入射する干渉光の入射角は、測定線上のどの測定点からであっても等しくなる。このため、本発明に係る膜厚測定装置及び膜厚測定方法によれば、入射角補正が不要となり、高速、高精度で膜厚測定を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1図1は、本実施形態に係る膜厚測定装置の概要図である。
図2図2は、同膜厚測定装置の分光ユニットの概要図である。
図3図3(a)は、同膜厚測定装置の光源のLED基板の正面図である。図3(b)は、同光源の側面断面図である。図3(c)は、同光源の正面図である。
図4図4(a)は、Z方向(XY平面と直交する方向)から見た光路の説明図である。図4(b)は、Y方向から見た光路の説明図である。
図5図5(a1)は、図4(a)の光路面aと直交する方向から見た同光路面aにおける光路の説明図である。図5(a2)は、同光路面aに沿った方向から見た同光路面aにおける光路の説明図である。図5(b1)は、図4(a)の光路面bと直交する方向から見た同光路面bにおける光路の説明図である。図5(b2)は、同光路面bに沿った方向から見た同光路面bにおける光路の説明図である。図5(c1)は、図4(a)の光路面cと直交する方向から見た同光路面cにおける光路の説明図である。図5(c2)は、同光路面cに沿った方向から見た同光路面cにおける光路の説明図である。図5(d1)は、図4(a)の光路面dと直交する方向から見た同光路面dにおける光路の説明図である。図5(d2)は、同光路面dに沿った方向から見た同光路面dにおける光路の説明図である。図5(e1)は、図4(a)の光路面eと直交する方向から見た同光路面eにおける光路の説明図である。図5(e2)は、同光路面eに沿った方向から見た同光路面eにおける光路の説明図である。
図6図6(a)は、従来技術に係る膜厚測定方法の説明図である。図6(b)は、本実施形態に係る膜厚測定方法の説明図である。
図7図7は、他実施形態に係る膜厚測定装置の分光ユニットの概要図である。
図8図8は、別の実施形態に係る膜厚測定装置の分光ユニットの概要図である。
図9図9(a)は、さらに別の実施形態に係る膜厚測定装置の光源の概要図である。図9(b)は、さらに別の実施形態に係る膜厚測定装置の光源の概要図である。
図10図10は、さらに別の実施形態に係る膜厚測定装置の概要図である。
図11図11(a)は、従来の反射型の膜厚測定装置の概要図である。図11(b)は、従来の透過型の膜厚測定装置の概要図である。図11(c)は、同反射型の膜厚測定装置のX方向から見た光路の説明図である。図11(d)は、同透過型の膜厚測定装置のX方向から見た光路の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明に係る膜厚測定装置の一実施形態について、図1ないし図6を参酌して説明する。
【0018】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係る膜厚測定装置は、ステージ1と、分光ユニット2と、光源3と、処理装置4とを備える。ステージ1上には、フィルム、シート、半導体基板などの測定対象物Sが載置される。ステージ1は、X方向に沿って移動可能に構成される。分光ユニット2は、ステージ1のX方向斜め上方位置に配置される。光源3は、分光ユニット2とは反対方向かつ分光ユニット2より低い位置で、ステージ1のX方向斜め上方位置に配置される。なお、分光ユニット2及び光源3は、図示しない支持手段によって、X方向、Y方向及びZ方向、並びにX軸回り、Y軸回り及びZ軸回りに位置調整可能に支持される。
【0019】
分光ユニット2は、光学系として、受光部20と、対物レンズ21と、スリット板22と、第1凹面鏡23と、凸面回折格子24と、第2凹面鏡23とを備え、これら光学系を介して入力された信号を撮像する撮像素子25を備える。本実施形態においては、受光部20、スリット板22、第1凹面鏡23、凸面回折格子24、第2凹面鏡23、撮像素子25及び処理装置4は、本発明に係る受光部、抽出部、凹面反射部、分光部、凹面反射部、撮像部及び処理部に相当する。
【0020】
受光部20は、対物レンズ21によって構成される。このため、受光部20の光軸CLは、対物レンズ21の光軸である。受光部20、ひいては分光ユニット2は、受光部20の光軸CLが測定対象物Sの測定面(の延長面)と直交するように配置される。なお、対物レンズ21は、凸レンズ単体のものや、凸レンズや凹レンズなどを適当な枚数組み合わせたものなど、公知となっている構造のものを種々選択することができる。
【0021】
スリット板22は、円弧線状のスリット22aを有する。本実施形態においては、スリット22aは、数μm〜数十μmの幅のスリットである。これにより、スリット板22は、対物レンズ21に入射する干渉光を円弧線状に整形して円弧線状の測定光を取得するものである。すなわち、スリット板22は、干渉光から受光部20の光軸CLを中心とする円弧線状に測定光を抽出するものである。詳細については、後述する。
【0022】
第1凹面鏡23及び第2凹面鏡23は、凸面回折格子24を中心として左右に配置された対称光学系である。また、第1凹面鏡23の凹面と第2凹面鏡の凹面は、同一曲率を有し、かつ、一つの大きな凹面上の光軸を挟んで左右の領域(第1領域、第2領域)にそれぞれ配置される態様となっている。対称光学系とするのは、撮像素子25の撮像面で結像する二次元分光画像の歪曲収差、像面湾曲及び非点収差を除去し、Y方向の測定誤差を無くすためである。
【0023】
凸面回折格子24は、凸面に回折格子を有する。本実施形態においては、凸面を有するガラス基材の凸面表面に、樹脂をコーティングして凹凸(グレーチング)を形成し、その上に、反射率を上げるためにアルミをコーティングしたものである。
【0024】
撮像素子25は、たとえばCCDイメージセンサやCMOSイメージセンサなどの光電変換素子である。
【0025】
処理装置4は、たとえばパーソナルコンピュータ等のコンピュータを用いて構成され、演算部を含む制御部と、膜厚測定などの各種ソフトウェアやハードウエア処理ボード、二次元分光画像などのデータを記憶する記憶部と、I/F(インターフェイス)部と、I/F部を介して接続されるモニタ等の画像表示部及びマウス等のPD(ポインティングデバイス)とを備える。
【0026】
図1及び図3に示すように、光源3は、基台30と、基板31と、複数のLED32,…と、導光板33と、光拡散板34とを備える。
【0027】
基板31には、たとえば700〜900nmの波長の光を発する複数のLED32,…が所定間隔を有して直線状に並んで実装される。複数のLED32,…の全長は、測定対象物Sの全幅に光を照射できるだけの長さを有する。LED実装基板31は、帯板状の基台30の正面に取り付けられる。
【0028】
複数のLED,…の前方には、複数のLED32,…の全長を網羅する大きさの端面が対向するように、導光板33が配置される。導光板33の前方には、導光板33の反対側の端面と対向するように、光拡散板34が配置される。導光板33は、スペーサ36を介して角筒状のカバー37内に固定される。光拡散板34は、カバー37の先端部の開口に固定される。そして、カバー37の基端部がLED実装基板31を内包するようにして、カバー37が基台30に取り付けられる。これにより、基台30、LED実装基板31、導光板33及び光拡散板34は、一体化されて、光源ユニットを構成する。なお、LED32の発熱を逃がすために、基台30の背面には、放熱板38が設けられる。
【0029】
複数のLED32,…から照射された光は、導光板33の一方の端面から入射し、導光板33内を通り、反対側の端面から出射し、光拡散板34で拡散された状態となって、出射する。このため、光源3において、光拡散板34は、横長の帯状の発光面35を構成する。
【0030】
図4に示すように、光源3の発光面35から照射された光は、測定対象物Sで干渉光となって反射する。分光ユニット2の受光部20は、この反射された干渉光を受光する。上述のとおり、分光ユニット2内において、干渉光は、スリット板22により、受光部20の光軸CLを中心とする円弧線状に整形され、円弧線状の測定光となる。図4は、この円弧線状の測定光の光路を表している。すなわち、円弧線状の測定光は、発光面35に含まれる円弧線状の仮想線光源3Aから照射され(照射光L1)、測定対象物S上の円弧線状の測定線MLに沿って干渉光となって反射され(反射光L2)、対物レンズ21の表面上の円弧線状の受光線ILを通り、分光ユニット2内に入射する光である。
【0031】
理想的には、円弧線状の測定光は、受光部20の光軸CL、すなわち、対物レンズ21の中心を中心とする所定半径の円弧線である。これに伴い、測定線ML及び受光線ILは、受光部20の光軸CLを中心とする所定半径の円弧線である。本実施形態においては、分光ユニット2は、水平距離にして、測定対象物Sから約500mm離れた配置となっている。このため、測定線MLは、測定対象物Sの測定面(測定対象物Sがフィルム等の薄いものであれば、実質的には、ステージ1の載置面)と受光部20の光軸CLとが交わる光軸点CPを中心とする半径約500mmの円弧線である。
【0032】
本実施形態に係る膜厚測定装置は、以上の構成からなる。このため、本実施形態に係る膜厚測定装置によれば、測定対象物S上の測定線MLから分光ユニット2の受光部20に入射する干渉光の入射角は、測定線ML上のどの測定点からであっても等しくなる。以下、この点について説明する。
【0033】
図4(a)において、光路面aは、受光部20の光軸CLを中心とし、X方向の中心線に対して角度θ2で傾斜した、径方向に沿った垂直面であり、測定線MLの一端を通る面である。光路面bは、受光部20の光軸CLを中心とし、X方向の中心線に対して角度θ1で傾斜した、径方向に沿った垂直面であり、測定線MLの中間の測定点を通る面である。光路面cは、受光部20の光軸CLを中心とし、X方向の中心線を含む、径方向に沿った垂直面であり、測定線MLの中心の測定点を通る面である。光路面dは、受光部20の光軸CLを中心とし、X方向の中心線に対して光路面bとは反対側に角度θ1で傾斜した、径方向に沿った垂直面であり、測定線MLの光路面bとは反対側の中間の測定点を通る面である。光路面eは、受光部20の光軸CLを中心とし、X方向の中心線に対して光路面aとは反対側に角度θ2で傾斜した、径方向に沿った垂直面であり、測定線MLの他端を通る面である。そして、これらの光路面a〜eを直交する方向から見たものが、図5(a1)、(b1)、(c1)、(d1)及び(e1)であり、これらの光路面a〜eに沿った方向から見たものが、図5(a2)、(b2)、(c2)、(d2)及び(e2)である。
【0034】
図5からわかるとおり、径方向における反射光L2の受光部20への入射角θrは、いずれの光路面a〜eにおいても、同じ角度となる。また、径方向と直交する方向(接線方向)における反射光L2の受光部20への入射角θtも、いずれの光路面a〜eにおいても、同じ角度(0度)となる。このため、反射光L2の受光部20への入射角は、測定線ML上のどの測定点からであっても、同じ角度となる。
【0035】
そして、測定対象物S上の測定線MLから分光ユニット2の受光部20に入射する干渉光の入射角が測定線ML上のどの測定点からであっても等しくなる(等視野角となる)ことで、入射角の差異は生じない。このため、入射角補正が不要となる。そして、入射角補正が不要となることで、膜厚測定アルゴリズムが簡素化され、これにより、膜厚測定を高速で行うことができる。また、入射角の差異がないことで、高精度な二次元分光画像を取得できるため、膜厚測定を高精度で行うことができる。
【0036】
測定対象物S全面の二次元膜厚分布を求めるために、ステージ1をX方向に連続的に移動させつつ、図6(b)に示すように、測定対象物Sの全面を、円弧線状の測定線MLでスキャンしていく。あるいは、ステージ1を間欠的に移動させ、停止のタイミングで1ライン分をスキャンするようにしてもよい。いずれにせよ、図6(a)に示すように、測定対象物Sを直線状の測定線MLでスキャンする従来の膜厚測定装置及び膜厚測定方法と大きく異なる点である。
【0037】
また、本実施形態に係る膜厚測定装置及び膜厚測定方法によれば、受光部20の光軸CLが測定対象物Sの測定面と直交することにより、測定線MLは、受光部20の光軸CLを中心とする円の一部である円弧線となる。このため、光源3をより長いものとして円弧の角度範囲を大きくして測定線MLを長くすることにより、より幅広の測定対象物Sを測定対象とすることができる。
【0038】
なお、本発明に係る膜厚測定装置及び膜厚測定方法は、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲で種々の変更が可能である。
【0039】
上記実施形態においては、凸面回折格子24を中心として、第1凹面鏡23及び第2凹面鏡23が左右に配置された対称光学系を採用している。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図7に示すように、第1凹面鏡23及び第2凹面鏡23が一つとなった凹面鏡23を用いる対称光学系であってもよい。この場合、凹面鏡23の凹面の光軸を挟んで一方の第1領域23aが第1凹面鏡23に相当し、他方の第2領域23bが第2凹面鏡23に相当する。
【0040】
また、上記実施形態においては、分光ユニット2の測定光学系における光路制御手段として、反射鏡23が用いられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図8に示すように、凹面鏡を用いる代わりに、凸レンズ26を用いるようにしてもよい。
【0041】
また、上記実施形態においては、平面状の発光面35が用いられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。たとえば、図9(a)に示すように、光源3を円弧状に形成して、円弧面状の帯状の発光面35としてもよい。この場合、発光面35をより長いものとして円弧の角度範囲を大きくして測定線MLを長くすることにより、より幅広の測定対象物Sを測定対象とすることができる。
【0042】
ただし、円弧面状の発光面35は、製作上コストがかかるということであれば、図9(b)に示すように、複数の直線状の光源3,…を円弧線に沿って並べて用いることにより、幅広の測定対象物Sに対応することもできる。
【0043】
また、上記実施形態においては、受光部20の光軸CLが測定対象物Sの測定面と直交するように分光ユニット2が鉛直方向に沿って配置される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。干渉光から受光部20の光軸CLを中心とする円弧線状に測定光を抽出することができる限りにおいて、図10に示すように、受光部20の光軸CLが光源3側に傾くようにして(受光部20の光軸CLと反射光L2の光路との角度が小さくなるようにして)、分光ユニット2が斜めに配置されるようにしてもよい。
【0044】
また、上記実施形態においては、受光部20は、対物レンズ21で構成される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。受光部20は、他の光学要素で構成されるものであってもよい。
【0045】
また、上記実施形態においては、スリット板22は、測定光学系において、受光部20の後位に配置される。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。スリット板は、分光ユニットと測定対象物との間に配置されるようにしてもよい。また、上記実施形態においては、抽出部として、スリット板22が用いられる。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。抽出部は、干渉光から受光部の光軸を中心とする円弧線状に測定光を抽出することができるものであれば、他の光学要素であってもよい。
【0046】
また、上記実施形態においては、理想的には、円弧線状の測定光、測定線ML及び受光線ILは、受光部20の光軸CLを中心とする所定半径の円弧線である。しかし、装置や部品の加工精度や組立精度の関係で、中心を受光部の光軸に完全一致させることや、円弧線を真円の円弧線にすることが困難である場合がある。本発明に係る構成は、このような膜厚測定の精度に影響が生じない程度の誤差を含む趣旨である。
【0047】
また、上記実施形態に係る膜厚測定装置は、反射型である。しかし、本発明は、これに限定されるものではない。膜厚測定装置は、透過型であってもよい。
【符号の説明】
【0048】
1…ステージ、2…分光ユニット、20…受光部、21…対物レンズ、22…スリット板(抽出部)、22a…スリット、23…凹面鏡(凹面反射部)、23a…第1領域(凹面反射部)、23b…第2領域(凹面反射部)、24…凸面回折格子(分光部)、25…撮像素子(撮像部)、26…凸レンズ、3…光源、3A…仮想線光源、30…基台、31…基板、32…LED、33…導光板、34…光拡散板、35…発光面、36…スペーサ、37…カバー、38…放熱板、4…処理装置(処理部)、CL…光軸、CP…光軸点、L1…照射光、L2…反射光、ML…測定線、IL…受光線、P…二次元分光画像、S…測定対象物
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
【手続補正書】
【提出日】2021年1月7日
【手続補正1】
【補正対象書類名】特許請求の範囲
【補正対象項目名】全文
【補正方法】変更
【補正の内容】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定対象物に対して光を照射する光源と、
測定対象物で反射又は透過した反射光又は透過光の干渉光を受光する分光ユニットとを備え、
分光ユニットは、
干渉光を受光する受光部と、
干渉光から受光部の光軸を中心とする所定半径の円の一部である円弧線状に測定光を抽出する抽出部と、
円弧線状の測定光を分光する分光部と、
分光を撮像して二次元分光画像を取得する撮像部と、
二次元分光画像の情報に基づいて測定対象物の膜厚を算出する処理部とを備え
測定対象物を円弧線状の測定線でスキャンする
膜厚測定装置。
【請求項2】
受光部は、受光部の光軸が測定対象物の測定面と直交するように配置される
請求項1に記載の膜厚測定装置。
【請求項3】
抽出部は、円弧線状のスリットを有するスリット板である
請求項1又は請求項2に記載の膜厚測定装置。
【請求項4】
光源は、円弧線状の測定光に対応する円弧線状の仮想線光源を含む帯状の発光面を有する
請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載の膜厚測定装置。
【請求項5】
分光部は、凸面回折格子を有し、
分光ユニットは、受光部と分光部との間及び分光部と撮像部との間のそれぞれに、凹面反射部を備える
請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の膜厚測定装置。
【請求項6】
測定対象物に対して光を照射し、測定対象物で反射又は透過した反射光又は透過光の干渉光を受光し、干渉光から受光部の光軸を中心とする所定半径の円の一部である円弧線状に測定光を抽出することにより、測定対象物を円弧線状の測定線でスキャンし、
円弧線状の測定光を分光し、
分光を撮像して二次元分光画像を取得し、
二次元分光画像の情報に基づいて測定対象物の膜厚を算出する
膜厚測定方法。
【手続補正2】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0009
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0009】
本発明に係る膜厚測定装置は、
測定対象物に対して光を照射する光源と、
測定対象物で反射又は透過した反射光又は透過光の干渉光を受光する分光ユニットとを備え、
分光ユニットは、
干渉光を受光する受光部と、
干渉光から受光部の光軸を中心とする所定半径の円の一部である円弧線状に測定光を抽出する抽出部と、
円弧線状の測定光を分光する分光部と、
分光を撮像して二次元分光画像を取得する撮像部と、
二次元分光画像の情報に基づいて測定対象物の膜厚を算出する処理部とを備え
測定対象物を円弧線状の測定線でスキャンする
膜厚測定装置である。
【手続補正3】
【補正対象書類名】明細書
【補正対象項目名】0010
【補正方法】変更
【補正の内容】
【0010】
また、本発明に係る膜厚測定方法は、
測定対象物に対して光を照射し、測定対象物で反射又は透過した反射光又は透過光の干渉光を受光し、干渉光から受光部の光軸を中心とする所定半径の円の一部である円弧線状に測定光を抽出することにより、測定対象物を円弧線状の測定線でスキャンし、
円弧線状の測定光を分光し、
分光を撮像して二次元分光画像を取得し、
二次元分光画像の情報に基づいて測定対象物の膜厚を算出する
膜厚測定方法である。