(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】公開特許公報(A)
(11)【公開番号】特開2021-89407(P2021-89407A)
(43)【公開日】2021年6月10日
(54)【発明の名称】ギターのパイプ
(51)【国際特許分類】
G10D 3/12 20200101AFI20210514BHJP
G10D 1/08 20060101ALI20210514BHJP
【FI】
G10D3/12
G10D1/08
【審査請求】未請求
【請求項の数】3
【出願形態】書面
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2019-230932(P2019-230932)
(22)【出願日】2019年12月4日
(71)【出願人】
【識別番号】519456321
【氏名又は名称】森山 順一
(72)【発明者】
【氏名】森山 順一
【テーマコード(参考)】
5D002
【Fターム(参考)】
5D002AA04
5D002CC43
(57)【要約】
【課題】本発明は、ギターの表面板9に設けてあるブリッジ3の一端に取り付けて音質の低下を防ぐと同時に、弦1の振動に共振するパイプ4を提供する。さらにこの共振の効果により表面板9の振動を増幅させて響きを良くするパイプ4を提供する。
【解決手段】本発明は
図6および
図7のように少なくともギターの6本の弦1と同数の穴7を設けることができる長さと、その両側に弦留めするための切り欠き部6を設けたパイプ4を特徴とする。
このような特徴を持つパイプ4はブリッジ3の一端と接触面が線接触となる形状を有して弦1の張力のみで保持されると、それぞれの弦1の振動ごとに敏感に反応して共振する。この振動が近接する表面板9に伝播し、弦1の振動が直接表面板9に伝わる音に加えてパイプ4の振動から発生する音が表面板9で増幅して響きの良い音を発生する。
【選択図】
図1
【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくともギターの弦1と同数でしかも同じ間隔で弦1が通る穴7を設けることが可能な長さを有し、この穴7の両側には弦留めするために使用する切り欠き部6が設けてあることを特徴とするパイプ。
【請求項2】
ギターの表面板9に設けてあるブリッジ3の一端と密着すると接触面が線接触となるような形状を有する前記請求項1に記載のパイプ。
【請求項3】
ブリッジ3の一端との接触面が線接触状態にあるとき弦1の張力のみで保持される前記請求項1または2に記載のパイプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、響きを良くするギターのパイプ(以下パイプという。)に関する。
【背景技術】
【0002】
弦楽器の一種であるギターは主として電気信号を増幅して音を発生させるエレキギター、木製のサウンドボードとサウンドホールにより音を発生させるアコースティックギターとクラシックギターがある。
【0003】
これらに使用される弦に関して、エレキギター、アコースティックギターがスチール弦を使用しているのに対して、クラシックギターはナイロン弦を使用している。スチール弦が硬くクリアな音を出すのとは対照的にギターに使用されるナイロン弦は基本的にソフトな音が特徴ではあるものの、その構造上から発生する物理的要因により音質が低下することが欠点であり、この問題を解決する先行技術として「非特許文献1」が知られている。
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】ネットショップ:名称 GGクリアトーン 会社名 現代ギター 名称 スーパーチップ 会社名 ファナ 名称 ロゼットストリングタイ 会社名 ロゼット 名称 フェリペコンデストリングタイ 会社名 フェリペコンデ 名称 シンプルチップ 会社名マツバラ
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
前記のように、一般的にクラシックギター(以下ギターと呼ぶ。)はソフトな音を出すことができるのが利点ではあるがその反面、その構造上から発生する物理的要因により音質の低下は避けられず、クリアな音を発生させることが困難である。
【0006】
図11に示すように物理的要因によりギターの音質の低下をもたらす一般的な弦1の結び方(以下弦留めという。)は、サドル2からブリッジ3の穴5に弦1の先端を通した後ブリッジ3の上面を通り、サドル2とブリッジ3の間の弦1の下をくぐらせる。次に
図9および
図10のように先にブリッジ3の上面を通った弦1にその先端を巻き付けて弦留めする。
【0007】
このような弦留め方法は、弦1を張るほどにサドル2とブリッジ3の間の弦1の下をくぐらせた弦1がサドル2とブリッジ3の間の弦1をサドル2から持ち上げることになり緩み現象が発生する。
【0008】
このため、サウンドホール12上の弦1の張りが微量に緩められ音質が低下する。これがクリアな音が出せない構造上の物理的な要因となる。
【0009】
この課題を解決する方法として「非特許文献1」にみられるように、例えば
図12および
図13のような構造を設けた
図14のような部材10が市販されている。「非特許文献1」について、それぞれ異なる形状を有しているものの以下同様な構造を有しているので代表例として部材10で説明する。
【0010】
この方法は弦1をブリッジ3の穴5に通し、部材10の穴11にくぐらせた後、前記ブリッジ3に巻きつけないで弦1をそのまま
図14の部材10に巻きつけて弦留めするため、サドル2とブリッジ3の間の弦1の下をくぐらせた弦1がサドル2とブリッジ3の間の弦1を持ち上げることがなくなり、音質の低下を防ぐことができる。「非特許文献1」の他の部材についても同様な弦留め方法を採用している。
【0011】
しかし、この市販部材10を含め「非特許文献1」にある部材はいずれも後の「発明の効果」で述べる前記課題の音質の低下を防ぎクリアな音を発生させる効果はあるものの、「本発明の効果」に記載する響きを向上させる効果はなく、その上ギターに取り付ける弦1の本数だけ必要である。しかも
図13のように弦1の間の狭い空間に独立して取り付けることになり小片とならざるを得ない。このため弦1の交換時あるいは何かの要因で弦1が切れた場合には飛び跳ねるなどにより紛失しやすく、加工についても手間がかかりコスト的にも課題がある。
【0012】
本発明は、ブリッジ3の一端に取り付けてギターの音質の低下を防ぐと同時に、弦1の振動に共振するパイプ4を提供する。さらにこの共振の効果により表面板9の振動を増幅させて響きを良くするパイプ4を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明は前記先行技術「非特許文献1」に示す市販部材10の課題を解決し、さらに響きを向上させることを目的としている。
【0014】
前記手段として、本発明は
図6および
図7のように、少なくともギターの6本の弦1と同数の穴7を設けることが可能な長さのパイプ4を有し、その穴7の両側に弦留めするための切り欠き部6を設けたパイプ4を特徴としている。
【0015】
パイプ4は
図1および
図2のようにブリッジ3の一端に密着して取り付けられる。本発明が前記市販部材10と異なる点は、
図3のようにブリッジ3の穴5を通った6本の弦1がそれぞれパイプ4の穴7をくぐった後、切り欠き部6を利用して弦留めされて保持されることにある。
【0016】
このとき、パイプ4はギターの表面板9に設けてあるブリッジ3の一端とその接触面が線接触となるような形状を有しており弦1の張力のみで保持されるとパイプ4はそれぞれの弦1の振動ごとに敏感に反応して共振する。この振動が近接する表面板9に伝播し、弦1の振動が直接表面板9に伝わる音に加えてパイプ4そのものの振動から発生する音が表面板9で増幅される。
【0017】
一方、
図3のようにパイプ4とブリッジ3との線接触状態において、弦1の張力のみで保持されているパイプ4に振動が伝わり、これ自身が敏感に反応して共振すると前記表面板9に伝播され振動が増幅されるのとは別にパイプに直接弦留めされて振動している弦1にも伝播し弦1の振動が増幅される。
【発明の効果】
【0018】
「発明が解決しようとする課題」で取り上げたように
図11のような一般的な弦留めでは弦1を張るほどにサドル2とブリッジ3の間の弦1の下をくぐらせた弦1が、サドル2とブリッジ3の間の弦1を持ち上げることになり、サドル2で張られた弦1の張りが微量に緩められ、音質が低下するのでクリアな音が出せない要因となっている。
【0019】
本発明は
図3のようにサドル2からブリッジ3の穴5に弦1を通した後、ブリッジ3に巻きつけないでそのままパイプ4に弦留めするため、巻きつけた弦1で弦1を持ち上げることがなく、緩みがないので音質の低下がなくクリアな音が出せることになる。これは前記「非特許文献1」にある先行技術例と同じ効果を有する。
【0020】
本発明の前記ブリッジ3と線接触となるパイプ4を弦1の張力のみで保持するという方法を採用すれば前記「非特許文献1」にある先行技術にはない次のような四つの効果を有する。
【0021】
第一の効果として、本発明が前記「非特許文献1」にある部材10と決定的な違いは弦1が振動すると、
図3のようにパイプ4とブリッジ3との線接触状態において、弦1の張力のみで保持されているパイプ4に振動が伝わり、これ自身が敏感に反応して共振し近接する表面板9に振動が伝播することである。
【0022】
このパイプ4の振動が近接する表面板9に伝わると、弦1の振動が直接表面板9に伝わる一般的なギターの弦1の振動に加えてパイプ4そのものの振動が表面板9に伝播される振動の二つの振動が増幅されてクリアな音になると同時に「非特許文献1」にはない響きの良い音を実現することができる。
【0023】
一方、第二の効果として、
図3のようにパイプ4とブリッジ3との線接触状態において、弦1の張力のみで保持されているパイプ4に振動が伝わり、これ自身が敏感に反応して共振すると前記表面板9に伝播され振動が増幅されるのとは別にパイプに直接弦留めされて振動している弦1にも伝播し弦1の振動が増幅され響きの良い音を助長する。
【0024】
第三の効果として、前記「非特許文献1」にある先行技術例に関して、
図12ないし
図14に示す部材10が小片であるため弦1の交換時、あるいは何かの要因で弦1が切断した場合には飛散して紛失しやすいのに比べて、本発明は6本の弦1を1本のパイプ4で弦留めするので、紛失することがない。
【0025】
第四の効果として、前記「非特許文献1」にある部材10は加工機への取付け、取り外し作業をギターにセットされる弦1の本数分だけ繰り返して加工することが必要で煩雑であるのに対して、本発明のパイプ4は
図6ないし
図7のような穴7および切り欠き部6の加工をワンチャックで連続して加工ができるので効率的であり、その分低価格で製作できることが利点である。、
【図面の簡単な説明】
【0026】
【
図1】 本発明のパイプを取り付けたギターの正面図
【
図12】 「非特許文献1」の市販品の部材例による取り付け図
【
図13】 「非特許文献1」の市販品の部材例のJ部拡大図
【
図14】 「非特許文献1」の市販品の部材例のK部拡大斜視図
【発明を実施するための形態】
【0027】
図1は本発明の実施に係るパイプ4のギター本体8への取り付け実施例を、
図6および
図7はそのパイプ4の具体的形状を示した実施例である。
【0028】
少なくともギターの6本の弦1と同数の穴7を設けることができるような長さのパイプ4と、その穴7の両側に弦留めするための7か所の切り欠き部6を有するパイプ4を提供する。
【0029】
このパイプ4をギターに取り付ける方法は、まず6本の弦1をブリッジ3の穴に通した後、それぞれの穴7にくぐらせる。
【0030】
次に
図4および
図5のようにパイプ4の穴7の両側の切り欠き部6を利用して弦1を隣の一方の切り欠き部6aから空洞側に回し入れて、他方の隣の切り欠き部6bから引き出して絡ませるように巻きつけて弦1の端をパイプ4に結び付けて弦留めする。
【0031】
次に
図8のように6本の弦1を均等に引っ張り、
図1および
図2のようにパイプ4をブリッジ3に密着させ所定の弦1の張力を得るまで弦1を張ると、
図3のようにこのパイプ4とブリッジ3の一端との接触面は線接触となり、この線接触状態においてパイプ4は弦1の張力のみで保持され、すべての弦1の振動に対して敏感に反応して共振する。
【0032】
パイプ4が共振すると、この振動が近接する表面板9に伝播し、弦1の振動が直接表面板9に伝わる音に加えてパイプ4そのものの振動から発生する音が表面板9で増幅し良い響きを実現する。
【0033】
本発明のパイプ4は形状あるいは材質を替えることにより、響きの音色が変化する。したがってギターとのマッチングを考慮した最適なものを選ぶことができる。
【0034】
本発明のパイプ4は響きの良い音を実現するために本体8を加工する必要がなく、そのための費用も発生しない。
【符号の説明】
【0035】
1 弦
2 サドル
3 ブリッジ
4 パイプ
5 (ブリッジ3の)穴
6 切り欠き部
6a 穴7の隣の一方の切り欠き部
6b 穴7の隣の他方の切り欠き部
7 (パイプ4の)穴
8 本体
9 表面版
10 部材
11 (部材10の)穴
12 サウンドホール