【解決手段】単量体(I)及び/又は単量体(II)を含む重合性成分aの重合体及び/又はその中和物である高分子成分Aを含み、前記単量体(I)がカルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体であり、前記単量体(II)がカルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体であり、下記条件1を満たす、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物。条件1:蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の相対湿度50%RHで、かつ温度23℃における比誘電率が9以上80以下である。
前記レオロジー調整剤Cが、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも1種である、請求項3に記載の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物。
負極、正極、セパレータ、及び電解液を含む蓄電デバイスであって、前記負極、前記正極、及び前記セパレータのうちの少なくとも1個が、請求項5に記載の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分を含む被膜を有する、蓄電デバイス。
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物は、高分子成分Aを含む。まず、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物を構成する成分について詳しく説明する。
【0017】
〔高分子成分A〕
高分子成分A(以下、単に成分Aということがある)は、重合性成分aを重合して得られる重合体及び/又はその中和物である。重合性成分aは、重合性炭素−炭素二重結合を1つ有する単量体を含み、重合性炭素−炭素二重結合を2つ以上有する架橋剤を含むことがある成分である。単量体、架橋剤は共に付加反応が可能な成分であり、架橋剤は重合体に橋架け構造を導入することができる成分である。
【0018】
重合性成分aは、単量体(I)及び/又は単量体(II)を含むものである。単量体(I)はカルボキシル基及び/又はその塩である基を有する単量体である。また、単量体(II)はカルボキシル基及び/又はその塩である基と反応する基を有する単量体である。このような重合性成分aを重合して得られる成分Aは、構成する重合体の分子構造から優れた濡れ性を有することができ、また、剛性や弾性も有することもできる。
【0019】
単量体(I)としては、例えば、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、クロトン酸、ケイ皮酸等の不飽和モノカルボン酸;マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、シトラコン酸、クロロマレイン酸等の不飽和ジカルボン酸;不飽和ジカルボン酸の無水物;マレイン酸モノメチル、マレイン酸モノエチル、マレイン酸モノブチル、フマル酸モノメチル、フマル酸モノエチル、イタコン酸モノメチル、イタコン酸モノエチル、イタコン酸モノブチル等の不飽和ジカルボン酸モノエステル等を挙げることができる。カルボキシル基の塩である基を有する単量体としては、上記不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸、不飽和ジカルボン酸モノエステル等の不飽和カルボン酸の塩等を挙げることができる。不飽和カルボン酸の塩としては、例えば、不飽和カルボン酸ナトリウム、不飽和カルボン酸カリウム等の不飽和カルボン酸アルカリ金属塩;不飽和カルボン酸カルシウム等の不飽和カルボン酸アルカリ土類金属塩;不飽和カルボン酸アンモニウム等を挙げることができる。カルボキシル基の塩である基を含有する単量体は、カルボキシル基を有する単量体があらかじめ塩基性組成物で中和されたものであってもよく、塩基性組成物としては後述するpH調整剤を使用してもよい。これらの単量体(I)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
上記単量体(I)のなかでも、本願効果を奏する観点から、不飽和モノカルボン酸、不飽和ジカルボン酸が好ましく、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸がより好ましい。カルボキシル基を有する単量体は、一部又は全部のカルボキシル基が重合時や重合後に中和されていてもよい。
【0020】
重合性成分aが単量体(I)を含む場合、重合性成分aに占める単量体(I)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは20〜100重量%である。単量体(I)の重量割合が20重量%未満であると、蓄電デバイス用スラリー組成物の流動性が低下することがある。単量体(I)の重量割合の上限は、(1)90重量%、(2)85重量%、(3)75重量%、(4)65重量%、(5)60重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、単量体(I)の重量割合の下限は、より好ましくは30重量%、さらに好ましくは40重量%、特に好ましくは50重量%、最も好ましくは55重量%である。
【0021】
単量体(II)としては、特に限定はないが、水酸基、アミノ基、アミド基、エポキシ基、イソシアネート基、アルデヒド基、アゾ基、ニトロ基、ニトロソ基、チオール基、スルホン酸基、リン酸基等を有する単量体を挙げることができる。
単量体(II)としては、例えば、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、ヒドロキシメチルアクリルアミド、ヒドロキシエチルアクリルアミド、アセトンアクリルアミド、N、N−ジメチル(メタ)アクリルアミド、N、N−ジエチル(メタ)アクリルアミド、N−エチル(メタ)アクリルアミド、N−プロピル(メタ)アクリルアミド、N−ヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−シクロヘキシル(メタ)アクリルアミド、N−ヒドロキシエチル(メタ)アクリルアミド、2−アセトアミドアクリル酸、N−フェニル(メタ)アクリルアミド、N−ニトロフェニル(メタ)アクリルアミド、ダイアセトンアクリルアミド等の(メタ)アクリルアミド系単量体;アクロレイン等のアルデヒド系単量体;ビニルスルホン酸、N−t−ブチルアクリルアミドスルホン酸等のスルホン酸系単量体;ビニルホスホン酸等のリン酸系単量体;N,N−ジメチルアミノエチル(メタ)アクリレート;N,N−ジメチルアミノプロピル(メタ)アクリレート;ビニルグリシジルエーテル;プロペニルグリシジルエーテル;グリシジル(メタ)アクリレート;グリセリンモノ(メタ)アクリレート;4−ヒドロキシブチルアクリレートグリシジルエーテル;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;4−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート;2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート;p−ヒドロキシスチレン等を挙げることができる。なお、本発明において(メタ)アクリルの表記は、アクリル又はメタクリルを意味する。また、本発明において(メタ)アクリレートの表記は、アクリレート又はメタクリレートを意味する。これらの単量体(II)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
上記単量体(II)のなかでも、本願効果を奏する観点から、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミド、グリシジル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレートが好ましく、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、(メタ)アクリルアミドがより好ましい。
【0022】
重合性成分aが単量体(II)を含む場合、重合性成分aに占める単量体(II)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは3〜100重量%である。単量体(II)の重量割合が3重量%未満であると、蓄電デバイス用スラリー組成物の流動性が低下することがある。単量体(II)の重量割合の上限は、(1)50重量%、(2)40重量%、(3)35重量%、(4)30重量%、(5)20重量%、(6)17重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。一方、単量体(II)の重量割合の下限は、より好ましくは5重量%、さらに好ましくは10重量%、特に好ましくは12重量%、最も好ましくは15重量%である。
【0023】
重合性成分aが単量体(I)及び単量体(II)を含むと、本願効果を奏する観点から、好ましい。
重合性成分aが単量体(I)及び単量体(II)を含む場合、重合性成分aに占める単量体(I)の重量割合と重合性成分aに占める単量体(II)の重量割合の比(単量体(I)/単量体(II))は、特に限定はないが、好ましくは1〜8である。単量体(I)と単量体(II)の重量割合の比が1以上であると、蓄電デバイス用スラリー組成物の流動性が向上する傾向がある。一方、単量体(I)と単量体(II)の重量割合の比が8以下であると、成分Aの弾性が向上する傾向がある。単量体(I)と単量体(II)の重量割合の比の上限は、より好ましくは7、さらに好ましくは6、特に好ましくは5、最も好ましくは4.5である。一方、単量体(I)と単量体(II)の重量割合の比の下限は、より好ましくは2、さらに好ましくは2.5、特に好ましくは3、最も好ましくは3.5である。
【0024】
重合性成分aがさらにニトリル系単量体(III)(以下、単に単量体(III)ということがある)を含むと、成分Aの剛性、弾性を向上させることができるため、好ましい。
単量体(III)としては、例えば、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、α−クロルアクリロニトリル、α−エトキシアクリロニトリル、フマロニトリル等を挙げることができる。これらの単量体(III)は、1種又は2種以上を併用してもよい。
上記単量体(III)のなかでも、本願効果を奏する観点から、アクリロニトリル、メタクリロニトリルが好ましく、アクリロニトリルがより好ましい。
【0025】
重合性成分aが単量体(III)を含む場合、重合性成分aに占める単量体(III)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは5〜45重量%である。単量体(III)の重量割合が5重量%未満であると、弾性が低下することがある。一方、単量体(III)の重量割合が45重量%超であると、濡れ性が低下することがある。単量体(III)の重量割合の上限は、より好ましくは40重量%、さらに好ましくは35重量%、特に好ましくは30重量%、最も好ましくは27重量%である。一方、単量体(III)の重量割合の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは23重量%である。
【0026】
重合性成分aが単量体(I)及び単量体(III)を含む場合、重合性成分aに占める単量体(I)の重量割合と重合性成分aに占める単量体(III)の重量割合の比(以下、単量体(I)/単量体(III)ということがある)は、特に限定はないが、好ましくは1〜8である。単量体(I)/単量体(III)が1以上であると、蓄電デバイス用スラリー組成物の流動性が向上する傾向がある。一方、単量体(I)/単量体(III)が8以下であると、成分Aの弾性が向上する傾向がある。単量体(I)/単量体(III)の上限は、より好ましくは7、さらに好ましくは6、特に好ましくは5、最も好ましくは4.5である。一方、単量体(I)/単量体(III)の下限は、より好ましくは2、さらに好ましくは2.5、特に好ましくは3、最も好ましくは3.5である。
【0027】
重合性成分aが単量体(II)及び単量体(III)を含む場合、重合性成分aに占める単量体(II)の重量割合と重合性成分aに占める単量体(III)の重量割合の比(以下、単量体(II)/単量体(III)ということがある)は、特に限定はないが、好ましくは0.25〜5である。単量体(II)/単量体(III)が0.25以上であると、蓄電デバイス用スラリー組成物の流動性が向上する傾向がある。一方、単量体(II)/単量体(III)が5以下であると、成分Aの弾性が向上する傾向がある。単量体(II)/単量体(III)の上限は、より好ましくは4、さらに好ましくは3.5、特に好ましくは3、最も好ましくは2.5である。一方、単量体(II)/単量体(III)の下限は、より好ましくは0.5、さらに好ましくは0.75、特に好ましくは1、最も好ましくは1.5である。
また、重合性成分aが単量体(I)、単量体(II)及び単量体(III)を含む場合、単量体(I)/単量体(III)が上記範囲であると好ましく、単量体(II)/単量体(III)が上記範囲であると好ましい。
【0028】
重合性成分aは単量体(I)、単量体(II)、及び単量体(III)以外の単量体(IV)を含んでもよい。単量体(IV)としては、例えば、塩化ビニル等のハロゲン化ビニル系単量体;塩化ビニリデン等のハロゲン化ビニリデン系単量体;4−アクリロイルモルホリン等のモルホリン系単量体;メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、ラウリル(メタ)アクリレート、フェニル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アセチルアクリル酸メチル、2−アセチル−3−エトキシアクリル酸エチル、ベンジル(メタ)アクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート等の(メタ)アクリル酸エステル系単量体;スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン、t−ブチルスチレン、p−ニトロスチレン、クロロメチルスチレン等のスチレン系単量体;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル等のビニルエステル系単量体;N−フェニルマレイミド、N−シクロヘキシルマレイミド等のマレイミド系単量体;エチレン、プロピレン、イソブチレン等のエチレン不飽和モノオレフイン系単量体;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテル等のビニルエーテル系単量体;ビニルメチルケトン等のビニルケトン系単量体;N−ビニルカルバゾール、N−ビニルピロリドン等のN−ビニル系単量体;ビニルナフタリン塩等を挙げることができる。これら単量体(IV)は、1種または2種以上併用してもよい。
上記単量体(IV)のなかでも、スチレン、エチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレートが好ましい。
【0029】
重合性成分aが単量体(IV)を含む場合、重合性成分aに占める単量体(IV)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは40重量%以下である。単量体(IV)の重量割合の上限は、より好ましくは30重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは10重量%、最も好ましくは5重量%である。単量体(IV)の重量割合の下限は、好ましくは0重量%である。
【0030】
重合性成分aは、上述のとおり、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤としては、特に限定はないが、例えば、ジビニルベンゼン等の芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、PEG#200ジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスルトールトリ(メタ)アクリレート等の多官能(メタ)アクリレート化合物等を挙げることができる。これらの架橋剤は、1種又は2種以上を併用してもよい。
【0031】
架橋剤はなくてもよいが、その含有量については特に限定はなく、重合性成分a100重量部に対して、20重量部以下であると好ましい。架橋剤の含有量の上限は、より好ましくは10重量部、さらに好ましくは5重量部、特に好ましくは2重量部、最も好ましくは1重量部である。一方、架橋剤の含有量の下限は、好ましくは0重量部である。
【0032】
成分Aの製造方法としては、特に限定はなく、溶液重合法、懸濁重合法、塊状重合法、乳化重合法等の一般的な方法で製造することができる。また、成分Aの製造時に使用する開始剤としては特に限定はなく、重合体の重合の際に用いられる一般的な開始剤を用いる事ができる。
【0033】
成分Aが、重合性成分aの重合体の中和物を含む場合、重合性成分aの重合体の中和物は、重合性成分aの重合体が含まれる分散液のpHを5〜13とした際に得られるものである。pHを5〜13とする際は、後述するpH調整剤を使用してもよい。なお、重合性成分aの重合体が含まれる分散液のpHは、25℃においてpHメータ(堀場製作所社製、F−51)を用いて測定した。
【0034】
重合性成分aの重合体の中和物は、部分中和物でもよく、完全中和物であってもよい。本願効果を奏する点で、重合性成分aの重合体の中和物が部分中和物であると好ましい。
重合性成分aの重合体の中和物が部分中和物である場合、重合性成分aの重合体の中和度は、5モル%以上100モル%未満であると好ましい。中和度が上記範囲内であると、塗布性が向上する傾向がある。重合性成分aの重合体の中和度の下限は、より好ましくは50モル%である。一方、重合性成分aの重合体の中和度の上限は、より好ましくは99モル%、さらに好ましくは90モル%である。
重合性成分aの重合体の中和物が完全中和物である場合、重合性成分aの重合体の中和度は、100モル%である。なお、重合性成分aの重合体の中和物における中和度はカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基等の酸性基を有する単量体および中和に用いる中和剤の仕込み量から計算により算出する方法で得た。
【0035】
重合性成分aの重合体の中和物の製造方法としては、例えば、以下の1)〜4)の方法を挙げることができる。
1)重合性成分aの重合体が分散した分散液に後述するpH調整剤を添加してpHを調整、中和して、重合性成分aの重合体の中和物を得る方法。
2)重合性成分aの重合体が分散した分散液を後述するpH調整剤に添加してpHを調整、中和して、重合性成分aの重合体の中和物を得る方法。
3)重合性成分aの重合体に後述するpH調整剤の溶液を添加してpHを調整、中和して、重合性成分aの重合体の中和物を得る方法。
4)重合性成分aの重合体を後述するpH調整剤の溶液に添加してpHを調整、中和して、重合性成分aの重合体の中和物を得る方法。
【0036】
重合性成分aの重合体の中和物の上記の製造方法において、調整後の25℃におけるpHは、好ましくは5〜13である。pHがこの範囲であると、濡れ性が向上する傾向がある。調整後のpHの下限としては、より好ましくは6である。一方、調整後のpHの上限としては、より好ましくは10である。なお、調整後の25℃におけるpHの測定は、pHメータ(堀場製作所社製、F−51)を用いて測定した。
成分Aの形態としては、蓄電デバイス用スラリー組成物の流動性の観点から、重合性成分aの重合体又はその中和物であると好ましく、重合性成分aの重合体の中和物であると特に好ましい。
【0037】
成分Aのガラス転移点(Tg)は、特に限定はないが、剛性、弾性の観点から、好ましくは50℃以上である。成分Aのガラス転移点が50℃未満であると、剛性、弾性が低下することがある。成分Aのガラス転移点の下限は、より好ましくは70℃、さらに好ましくは100℃、特に好ましくは120℃、最も好ましくは140℃である。一方、成分Aのガラス転移点の上限は、好ましくは300℃、より好ましくは250℃、さらに好ましくは200℃である。なお、成分Aのガラス転移点(Tg)の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0038】
成分Aは、水溶性、又は非水溶性のいずれであってもよいが、水溶性であると好ましい。成分Aが水溶性の場合、特に限定はないが、成分Aの25℃における溶解度が水100mLに対して3g以上であると好ましい。高分子成分Aの溶解度が3g未満であると、剛性、弾性が低下することがある。成分Aの溶解度の下限は、より好ましくは5g、さらに好ましくは50g、特に好ましくは100g、最も好ましくは200gである。一方、成分Aの溶解度の上限はなくとも構わないが、好ましくは10000g、より好ましくは5000g、さらに好ましくは1000g、特に好ましくは500g、最も好ましくは300gである。
【0039】
〔高分子成分B〕
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物は、本願効果を阻害しない範囲で、高分子成分B(以下、単に成分Bということがある)を含んでもよい。成分Bは、例えば、成分Aで用いられる上記単量体(IV)を含む、重合性成分bの重合体であってもよく、ポリイソブチレン等のイソブチレン系高分子;ポリブタジエン、ポリイソプレン、スチレン−ブタジエン共重合体(SBR)等のジエン系高分子;フッ化ビニリデン系高分子(PVDF)、フッ化エチレン−プロピレン共重合体等のフッ素系高分子;アクリル系高分子;ジメチルポリシロキサン等のポリシロキサン系高分子;ポリ酢酸ビニル、ポリステアリン酸ビニル等のビニル系高分子;スチレン−塩化ビニル共重合体、スチレン−酢酸ビニル共重合体等のスチレン系高分子;ウレタン系高分子;フェノール系高分子;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ−1−ブテン等のオレフィン系高分子;ケトン系高分子;アミド系高分子;ポリフェニレンオキサイド系高分子;エポキシ系高分子;天然ゴム;セルロース系高分子;ポリペプチド;蛋白質等であってもよい。また、これら成分Bは、1種または2種以上併用してもよい。
また、重合性成分bは、上記単量体(I)、単量体(II)、単量体(III)、及び単量体(IV)より選ばれる少なくとも1つを含んでもよく、重合性成分bは、上記架橋剤を含んでもよい。
【0040】
重合性成分bに含まれる単量体(IV)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは50〜100重量%である。重合性成分bに占める単量体(IV)の重量割合の上限は、より好ましくは80重量%である。一方、重合性成分bに占める単量体(IV)の重量割合の下限は、より好ましくは60重量%である。
重合性成分bが、単量体(I)をさらに含む場合、重合性成分bに占める単量体(I)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0重量%以上20重量%未満である。重合性成分bに占める単量体(I)の重量割合は、より好ましくは0〜19重量%である。
重合性成分bが、単量体(II)をさらに含む場合、重合性成分bに占める単量体(II)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0%以上3重量%未満であり、より好ましくは0〜2重量%である。
重合性成分bが、単量体(III)をさらに含む場合、重合性成分bに占める単量体(III)の重量割合は、特に限定はないが、好ましくは0〜50重量%であり、より好ましくは0〜25重量%である。
【0041】
重合性成分bが、上記架橋剤をさらに含む場合、重合性成分b100重量部に対する架橋剤の含有量は、特に限定は無いが、好ましくは0〜1重量部であり、より好ましくは0〜0.5重量部である。
【0042】
成分Bの性状は、特に限定はなく、水溶性、又は粒状物状等の非水溶性のいずれであってもよい。
成分Bが粒状物である場合、成分Bの平均粒子径は、特に限定はないが、好ましくは0.001〜100μmである。成分Bの平均粒子径の上限は、より好ましくは10μm、さらに好ましくは1μm、特に好ましくは0.8μmである。一方、成分Bの平均粒子径の下限は、より好ましくは0.01μm、さらに好ましくは0.05μm、特に好ましくは0.1μmである。なお、成分Bの平均粒子径の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0043】
成分Bは、水に分散した粒状物のエマルションの状態であってもよい。粒状物のエマルションの状態の場合の、成分Bの水分散液であるエマルションの不揮発分濃度は、特に限定はないが、好ましくは1〜80重量%である。成分Bの水分散液であるエマルションの不揮発分濃度の上限は、より好ましくは70重量%、さらに好ましくは60重量%、特に好ましくは50重量%、最も好ましくは40重量%である。一方、成分Bの水分散液であるエマルションの不揮発分濃度の下限は、より好ましくは10重量%、さらに好ましくは15重量%、特に好ましくは20重量%、最も好ましくは30重量%である。なお、「高分子成分Bの水分散液であるエマルションの不揮発分」は、成分Bの水分散液であるエマルションを110℃で加熱し、重量が恒量となった時の、残留物である。
【0044】
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物が成分Bを含む場合、成分Bの含有量は、高分子成分A100重量部に対して、特に限定はないが、好ましくは0〜90重量部、より好ましくは0〜50重量部、さらに好ましくは0〜20重量部、特に好ましくは0〜10重量部、最も好ましくは0〜5重量部である。
【0045】
〔レオロジー調整剤C〕
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物は、レオロジー調整剤C(以下、単に調整剤Cということがある)を含んでもよい。調整剤Cを含むと、蓄電デバイス用スラリー組成物のハンドリング性が向上するため、好ましい。
調整剤Cとしては、例えば、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、ポリアクリル酸、ポリエチレングリコール、ポリエチレンオキシド、ポリオキシエチレン・ポリプロピレンブロックポリマー、ポリアルキレングリコール系誘導体、ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、アラビアガム、グアーガム、ヒドロキシプロピル化グアーガム、キサンタンガム、ローカストビーンガム、ジェランガム、ダイユータンガム、デキストリン、デンプン、ゼラチン、コーンスターチ、ペクチン、アミロペクチン、ポリグルタミン酸塩、ポリアクリルアミド、ポリエチレンイミン、ポリナフタレンスルホン酸塩、ポリカルボン酸系共重合体、ビニルアルコール系共重合体、ビニルピロリドン系共重合体、アルギン酸、アルギン酸エステル等の水溶性高分子;セルロースナノファイバー、キチンナノファイバー、ポリオレフィン綿状ファイバー等のファイバー系高分子;珪酸アルミニウムマグネシウム、塩基性硫酸マグネシウム無機繊維等の無機系増粘剤等を挙げることができる。これらのレオロジー調整剤Cは、1種または2種以上を併用してもよい。
上記調整剤Cのなかでも、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロース、及びヒドロキシエチルセルロースから選ばれる少なくとも1種であると好ましい。
【0046】
調整剤Cの1重量%濃度水溶液の20℃における粘度としては、特に限定はないが、通常1〜5000mPa・sであり、好ましくは3〜1000mPa・s、さらに好ましくは5〜500mPa・s、特に好ましくは6〜100mPa・s、最も好ましくは7〜50である。なお、調整剤Cの1重量%濃度水溶液の20℃における粘度は、B型粘度計(東京計器社製、BL型)を用いて測定した。
【0047】
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物が調整剤Cを含む場合、調整剤Cの含有量としては、特に限定はないが、成分Aの含有量100重量部に対して、好ましくは0.5〜100重量部である。調整剤Cの含有量が0.5重量部未満であると、蓄電デバイス用スラリー組成物の塗布性が低下することがある。一方、調整剤Cの含有量が100重量部超であると、蓄電デバイス用スラリー組成物のハンドリング性が低下することがある。調整剤Cの含有量の上限は、より好ましくは50重量部、さらに好ましくは30重量部、特に好ましくは20重量部である。一方、調整剤Cの含有量の下限は、より好ましくは2重量部、さらに好ましくは3重量部、特に好ましくは5重量部である。
【0048】
〔その他成分〕
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物は、本願効果を阻害しない範囲で、上記成分以外のその他成分を含んでもよい。その他成分としては、特に限定はないが、例えば、界面活性剤、消泡剤、pH調整剤、粘着付与剤、高分子用架橋剤、防腐剤、老化防止剤等が挙げられる。
【0049】
界面活性剤としては、特に限定はなく、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンスチレン化フェニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルアミン等の非イオン性界面活性剤;陰イオン性界面活性剤;陽イオン性界面活性剤;両性界面活性剤等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0050】
蓄電デバイススラリー用分散剤組成物が界面活性剤を含む場合、界面活性剤の含有量は、成分A100重量部に対して、特に限定はないが、好ましくは0.1〜10重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、さらに好ましくは1〜3重量部である。
消泡剤としては、例えば、ポリシロキサン系消泡剤、鉱物油系消泡剤、シリカ微粉末系消泡剤等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0051】
pH調整剤としては、例えば、有機酸;ニトリロトリスメチルホスホン酸等の無機酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等のアルカリ(土類)金属の水酸化物;アンモニア;炭酸塩;アミン化合物等を挙げることができ、必要に応じて、1種または2種以上を併用してもよい。
粘着付与剤としては、例えば、ロジンエステル等のロジン系樹脂;芳香族変性テルペン樹脂等のテルペン系樹脂;クマロンインデン系樹脂;ポリブテン系樹脂;ポリイソプレン系樹脂;MMAグラフト天然ゴムラテックス等の天然ゴム系ラテックス;フェノール樹脂;石油系樹脂等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0052】
高分子用架橋剤としては、例えば、ポリカルボジイミド樹脂等のカルボジイミド系樹脂;グリセロールポリグリシジルエーテル等のエポキシ系樹脂;炭酸ジルコニウム等のジルコニウム系化合物;ウレア系樹脂;イソシアネート系化合物;オキサゾリン系化合物;アジリジン系化合物;アルミニウムキレート系化合物、チタンキレート系化合物等の金属キレート系化合物等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
老化防止剤としては、例えば、オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート等のフェノール系酸化防止剤等を挙げることができ、1種または2種以上を併用してもよい。
【0053】
〔蓄電デバイススラリー用分散剤組成物、その製造方法〕
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物は、上記の高分子成分Aを必須に含み、下記条件1を満たすものである。これらの条件を満たすことで、成分Aの剛性、弾性を保持することができ、かつ、各性能のバランスにより、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物は優れた濡れ性を有することができ、流動性にすぐれた蓄電デバイス用スラリー組成物を得ることができると考えられる。
【0054】
条件1:蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の相対湿度50%RHで、かつ温度23℃における比誘電率が9以上80以下である。
【0055】
条件1において、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の相対湿度50%RHで、かつ温度23℃における比誘電率が上記範囲外であると、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の濡れ性が低下する。蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の比誘電率の上限は好ましくは70、より好ましくは60、さらに好ましくは50、最も好ましくは45である。一方、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分からなる成形膜の比誘電率の下限は好ましくは10、より好ましくは15、さらに好ましくは20、最も好ましくは25である。
なお、本発明における「比誘電率」は、実施例に記載される電極接触法により測定される値である。また、本発明における「蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分」とは、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物を110℃で加熱し、重量が恒量となったときの、残留物である。
【0056】
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物は、特に限定はないが、本願効果を奏する観点から、さらに下記条件2を満たすと好ましい。
条件2:蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分を、体積比率が50/50のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネートの混合物に浸漬し、60℃にて1週間静置した後の、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分の重量膨潤率が120重量%以下である。
【0057】
条件2において、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分の重量膨潤率が120重量%超となると、成分Aの弾性が低下し、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の濡れ性が低下することがある。蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分の重量膨潤率の上限は、より好ましくは115重量%、さらに好ましくは110重量%である。一方、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分の重量膨潤率の下限は、好ましくは100重量%である。なお、重量膨潤率の評価方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0058】
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物は、特に限定はないが、本願効果を奏する観点から、さらに下記条件3を満たすと好ましい。
条件3:前記蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分濃度2.5重量%水分散液の、670nm波長の光透過率が、60%以上である。
【0059】
条件3において、透過率が60%未満であると、成分Aの剛性が低下し、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の濡れ性が低下することがある。光透過率の上限は、好ましくは100%である。一方、光透過率の下限は、より好ましくは65%、さらに好ましくは70%、特に好ましくは80%、最も好ましくは85%である。なお、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分濃度2.5重量%水分散液の、670nm波長の光透過率の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0060】
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分濃度は、特に限定はないが、好ましくは0.1〜50重量%である。不揮発分濃度が上記範囲外であると、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物のハンドリング性が低下することがある。不揮発分濃度の上限は、より好ましくは25重量%、さらに好ましくは20重量%、特に好ましくは15重量%、最も好ましくは12.5重量%である。一方、不揮発分濃度の下限は、より好ましくは1重量%、さらに好ましくは2.5重量%、特に好ましくは5重量%、最も好ましくは8重量%である。
【0061】
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分濃度20重量%水分散液の25℃における粘度は、特に限定はないが、好ましくは1000〜20000mPa・sである。不揮発分濃度20重量%水分散液の25℃における粘度が上記範囲外であると、蓄電デバイススラリー用組成物の流動性が低下することがある。不揮発分濃度20重量%水分散液の25℃における粘度の上限は、より好ましくは10000mPa・s、さらに好ましくは6000mPa・s、特に好ましくは5000mPa・s、最も好ましくは4000mPa・sである。なお、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分濃度20重量%水分散液の粘度の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0062】
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分濃度20重量%水分散液のpHは、特に限定はないが、本願効果を奏する観点から、好ましくは6.0〜8.5である。不揮発分濃度20重量%水分散液のpHの上限は、より好ましくは8.0である。一方、不揮発分濃度20重量%水分散液のpHの下限は、より好ましくは6.5である。なお、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分濃度20重量%水分散液のpHの測定は、実施例で測定される方法によるものである。
【0063】
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分の20℃、100mNの荷重で10秒間押し込み時のヌープ硬度HK(0.01)(以下、単にヌープ硬度ということがある)は、負極活物質を含んだ際の追従性の観点から、特に限定はないが、好ましくは100以上である。ヌープ硬度が100未満であると、高分子成分Aの剛性が低く、追従性が低下することがある。ヌープ硬度は、より好ましくは110以上、さらに好ましくは120以上、特に好ましくは130以上である。また、ヌープ硬度の上限は、好ましくは500である。なお、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分のヌープ硬度の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0064】
蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分に占める成分Aの重量割合は、本願効果を奏する点で、好ましくは20〜100重量%である。成分Aの重量割合が20重量%未満である場合、塗布性に劣ることがある。蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分に占める成分Aの重量割合の上限は、より好ましくは99.9重量%、さらに好ましくは95重量%である。また、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分に占める高分子成分Aの重量割合の下限は、より好ましくは40重量%、さらに好ましくは50重量%、特に好ましくは70重量%、最も好ましくは90重量%である。
【0065】
本発明の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物において、その製造方法は、特に限定はなく、上記の成分Aと、適宜、成分B、調整剤C、その他成分を混合する方法等を挙げることができる。混合については、特に限定はなく、容器と攪拌翼といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。
【0066】
本発明の蓄電デバイス用スラリー組成物は、上述のように成分Aを必須とした蓄電デバイススラリー用分散剤組成物と、無機粒子とを含有する。本発明の蓄電デバイス用スラリー組成物は、上述の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物を含むため、流動性に優れ、作製される被膜は均一性に優れる。
無機粒子については、蓄電デバイス用スラリー組成物の用途によって異なるので後で説明する。
【0067】
蓄電デバイス用スラリー組成物における成分Aの含有量は、特に限定はないが、無機粒子100重量部に対して、好ましくは1〜40重量部である。成分Aの含有量が、1重量部未満であると、無機粒子に対して結着性が不足することがある。一方、成分Aの含有量が、40重量部超であると、蓄電デバイスの体積エネルギー密度が不足することがある。成分Aの含有量の上限は、より好ましくは20重量部、さらに好ましくは10重量部、特に好ましくは8重量部、最も好ましくは6重量部である。一方、成分Aの含有量の下限は、より好ましくは2重量部、さらに好ましくは3重量部、特に好ましくは4重量部、最も好ましくは5重量部である。
【0068】
〔水〕
本発明の蓄電デバイス用スラリー組成物は、分散性の観点から、水を含有すると好ましい。水としては、水道水、イオン交換水、蒸留水等が挙げられる。
蓄電デバイス用スラリー組成物における水の含有量は、特に限定はないが、無機粒子100重量部に対して、好ましくは1〜10000重量部である。水の含有量が10000重量部超であると、蓄電デバイス用スラリー組成物の粘度が不足することがある。一方、水の含有量が1重量部未満であると、蓄電デバイス用スラリー組成物のハンドリング性が低下することがある。水の含有量の上限は、より好ましくは1000重量部、さらに好ましくは500重量部、特に好ましくは300重量部、最も好ましくは200重量部である。一方、水の含有量の下限は、より好ましくは10重量部、さらに好ましくは50重量部、特に好ましくは65重量部、最も好ましくは80重量部である。
【0069】
また、蓄電デバイス用スラリー組成物は、アルコール等の水と混和可能な有機溶媒を含んでもよい。アルコールとしては、特に限定はないが、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、グリセンリン等を挙げることができるが、汎用性の観点から、イソプロパノールが好ましい。
【0070】
〔蓄電デバイス用スラリー組成物、その製造方法及び用途〕
本発明の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分濃度は、特に限定はないが、好ましくは30〜80重量%である。不揮発分濃度が上記範囲外であると、ハンドリング性が低下することがある。不揮発分濃度の上限は、より好ましくは60重量%である。一方、不揮発分濃度の下限は、より好ましくは50重量%である。
なお、本発明における「蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分」とは、蓄電デバイススラリー組成物を110℃で加熱し、重量が恒量となった時の、残留物である。
【0071】
蓄電デバイススラリー組成物の不揮発分濃度40重量%水分散液のpHは、特に限定はないが、本願効果を奏する観点から、好ましくは4.0〜12.0である。蓄電デバイススラリー組成物の不揮発分濃度40重量%水分散液のpHが4.0未満であると、集電体が腐食することがある。一方、蓄電デバイス用スラリー組成物のpHが12.0超であると、ハンドリング性が低下することがある。蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分濃度40重量%水分散液のpHの上限は、より好ましくは10.0、さらに好ましくは9.0、特に好ましくは8.0、最も好ましくは7.5である。一方、蓄電デバイススラリー組成物の不揮発分濃度40重量%水分散液のpHの下限は、より好ましくは4.5、さらに好ましくは5.0、特に好ましくは5.5、最も好ましくは6.0である。蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分濃度40重量%水分散液のpHの測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0072】
本発明の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分の密度は、特に限定はないが、好ましくは0.1〜3.0g/cm
3である。蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分の密度が3.0g/cm
3超であると、蓄電デバイスの出力特性が低くなることがある。一方、蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分の密度が0.1g/cm
3未満であると、蓄電デバイスの体積エネルギー密度が低くなることがある。蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分の密度の上限は、より好ましくは2.5g/cm
3、さらに好ましくは2.0g/cm
3である。一方、蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分の密度の下限は、より好ましくは0.3g/cm
3、さらに好ましくは0.5g/cm
3である。
【0073】
本発明の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分濃度5重量%水分散液の、測定温度25℃におけるゼータ電位は、特に限定はないが、好ましくは−10〜−100mVである。蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分濃度5重量%水分散液のゼータ電位が−100mV未満であると、ハンドリング性が低下することがある。一方、蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分濃度5重量%水分散液のゼータ電位が−10mV超であると、無機粒子の分散性が十分ではないことがある。より好ましくは−10〜−90mV、さらに好ましくは−20〜−80mV、特に好ましくは−20〜−70mVである。蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分濃度5重量%水分散液のゼータ電位の測定方法は、実施例で測定される方法によるものである。
【0074】
本発明の蓄電デバイス用スラリー組成物において、その製造方法としては、例えば、上述の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物、無機粒子、水、水と混和可能な有機溶媒等の各成分を混合する方法が挙げられる。混合については、特に限定はなく、容器と攪拌翼といった極めて簡単な機構を備えた装置を用いて行うことができる。
【0075】
また、本発明の蓄電デバイス用スラリー組成物において、その製造方法は、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物を構成する各成分を別々に水や水と混和可能な有機溶媒に分散させる工程を含んでも構わない。なお、別々に水や水と混和可能な有機溶媒に分散させる際の各成分の量は、上述の蓄電デバイス用スラリー組成物の各成分の含有量に従う。
【0076】
本発明の蓄電デバイス用スラリー組成物は、上記で説明した各成分以外に、ハイドロトロープ剤、保護コロイド剤、抗菌剤、防黴剤、着色剤、酸化防止剤、消臭剤、触媒、乳化安定剤、キレート剤等をさらに含有していてもよい。
【0077】
本発明の蓄電デバイススラリー組成物の用途としては、特に限定はないが、正極用途、負極用途、正極、負極、セパレータ等の表面コート用途等が挙げられる。
以下、各種用途について、詳しく説明する。
【0078】
<蓄電デバイス正極用途>
本発明の蓄電デバイス用スラリー組成物は、蓄電デバイス正極用途として利用することができる。蓄電デバイス用スラリー組成物が蓄電デバイス正極用途として用いられる場合、含有する無機粒子としては、正極活物質、導電助剤等が挙げられる。蓄電デバイス正極用途の蓄電デバイス用スラリー組成物(以下、蓄電デバイス正極用スラリー組成物ということがある)は、集電体に塗布、乾燥して、被膜化させることができる。
【0079】
〔正極活物質〕
正極活物質としては、例えば、リン酸鉄リチウム(LiFePO
4)、リン酸マンガンリチウム(LiMnPO
4)、リン酸コバルトリチウム(LiCoPO
4)、ピロリン酸鉄リチウム(Li
2FeP
2O
7)、コバルト酸リチウム複合酸化物(LiCoO
2)、スピネル型マンガン酸リチウム(LiMn
2O
4)、マンガン酸リチウム複合酸化物(LiMnO
2)、ニッケル酸リチウム複合酸化物(LiNiO
2)、ニオブ酸リチウム複合酸化物(LiNbO
2)、鉄酸リチウム複合酸化物(LiFeO
2)、マグネシウム酸リチウム複合酸化物(LiMgO
2)、カルシウム酸リチウム複合酸化物(LiCaO
2)、銅酸リチウム複合酸化物(LiCuO
2)、亜鉛酸リチウム複合酸化物(LiZnO
2)、モリブテン酸リチウム複合酸化物(LiMoO
2)、タンタル酸リチウム複合酸化物(LiTaO
2)、タングステン酸リチウム複合酸化物(LiWO
2)、リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム複合酸化物(LiNi
0.8Co
0.15Al
0.05O
2)、リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物(LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2、LiNi
0.8Co
0.1Mn
0.1O
2)、酸化マンガンニッケル(LiNi
0.5Mn
1.5O
4)、酸化マンガン(MnO
2)、リチウム過剰系ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物、水酸化ニッケル(Ni(OH)
2)、バナジウム系酸化物、硫黄系酸化物、シリケート系酸化物、活性炭等を挙げることができ、1種または2種以上併用してもよい。
【0080】
〔導電助剤〕
導電助剤としては、特に限定はないが、例えば、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック;グラフェン;カーボンナノ繊維、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等のカーボンナノチューブ;銀、銅、錫、亜鉛、酸化亜鉛、ニッケル、マンガン等の金属微粒子;酸化インジウムスズなどの複合金属微粒子等を挙げることができ、1種または2種以上併用してもよい。
導電助剤は、蓄電デバイス負極用途としても使用することができる。
【0081】
蓄電デバイス正極用スラリー組成物に含まれる導電助剤の量は、特に限定はないが、正極活物質100重量部に対して、好ましくは1〜15重量部である。導電助剤の含有量が1重量部未満であると、蓄電デバイスの出力特性が低下することがある。一方、導電助剤の含有量が15重量部超であると、蓄電デバイスの体積エネルギー密度が低くなることがある。導電助剤の含有量の上限は、より好ましくは10重量部である。一方、導電助剤の含有量の下限は、より好ましくは2重量部である。
【0082】
本発明の蓄電デバイス用正極は、集電体上に被膜を有し、その被膜が上述の蓄電デバイス正極用途の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分を含むものである。まず、蓄電デバイス用正極を構成する各成分について詳しく説明する。
【0083】
〔集電体〕
集電体としては、電子伝導性を有し正極材料に通電し得る材料であればよく、特に限定はないが、例えば、C、Ti、Cr、Mo、Ru、Rh、Ta、W、Os、Ir、Pt、Au、Al、Ni等の導電性物質、これら導電性物質の二種類以上を含有する合金(例えば、ステンレス鋼)を挙げることができる。なかでも、電気伝導性が高く、電解液中の安定性と耐酸化性の観点から、正極用途の集電体としてはC、Al、Ni、ステンレス鋼等が好ましく、さらに材料コストの観点からAl等が好ましい。正極用途の集電体の形状には、特に限定はなく、例えば、箔状基材、三次元基材、貫通基材、多孔質基材、パンチング基材、エッチング基材、穴あき基材等を用いることができる。
【0084】
〔蓄電デバイス用正極、その製造方法〕
本発明の蓄電デバイス用正極は、集電体上に被膜を有し、その被膜が上述の蓄電デバイス正極用途の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分を含むものであるから、均一性に優れる。
【0085】
蓄電デバイス用正極における集電体上の被膜は、集電体のどちらか片面にあってもよく、両面にあってもよい。また、集電体上の被膜は、プライマー層を含んでいてもよく、プライマー層はカーボンブラック等の導電助剤やプライマー層形成補助のためのアクリル樹脂や界面活性剤等の有機成分、リン酸塩やケイ酸塩等を含んでいてもよい。被膜がプライマー層を含む場合、プライマー層が集電体と接触し、プライマー層の上に蓄電デバイス正極用スラリー組成物の不揮発分が接触する構成となる被膜であると、好ましい。
【0086】
蓄電デバイス用正極における集電体上の被膜の厚みは、特に限定はないが、好ましくは1〜500μmである。集電体上の被膜の厚みが1μm未満であると、電池性能が悪くなり好ましくないことがある。一方、集電体上の被膜の厚みが500μm超であると、ハンドリング性が低下することがある。集電体上の被膜の厚みの上限は、より好ましくは400μm、さらに好ましくは300μm、特に好ましくは200μm、最も好ましくは150μmである。一方、集電体上の被膜の厚みの下限は、より好ましくは10μm、さらに好ましくは20μmである。
【0087】
蓄電デバイス用正極の製造方法としては、特に限定はないが、集電体上に、蓄電デバイス正極用スラリー組成物を塗工し、乾燥させる方法が挙げられる。
蓄電デバイス正極用スラリー組成物を正極の集電体に塗工する方法としては、特に限定はなく、均一にウェットコーティングできる方法であればよく、例えば、キャピラリーコート法、スピンコート法、スリットダイコート法、スプレーコート法、ディップコート法、ロールコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、バーコーター法、グラビアコーター法、ダイコーター法等を採用することができる。
【0088】
蓄電デバイス正極用スラリー組成物を正極の集電体に塗工した後の、蓄電デバイス用正極の乾燥方法については、特に限定はないが、例えば温風乾燥、熱風乾燥、真空乾燥、(遠)赤外線照射乾燥、電子線照射乾燥等の方法が挙げられる。
蓄電デバイス用正極の乾燥温度は、特に限定はないが、好ましくは10〜300℃である。蓄電デバイス用正極の乾燥温度が300℃超であると、正極の機能が低下することがある。蓄電デバイス用正極の乾燥温度の上限は、より好ましくは190℃、さらに好ましくは180℃、特に好ましくは170℃、最も好ましくは160℃である。一方、蓄電デバイス用正極の乾燥温度の下限は、より好ましくは30℃、さらに好ましくは50℃、特に好ましくは80℃である。
【0089】
<蓄電デバイス負極用途>
本発明の蓄電デバイス用スラリー組成物は、蓄電デバイス負極用途として利用することができる。蓄電デバイス用スラリー組成物が蓄電デバイス正極用途として用いられる場合、含有する無機粒子としては、負極活物質、導電助剤等が挙げられる。蓄電デバイス負極用途の蓄電デバイス用スラリー組成物(以下、蓄電デバイス負極用スラリー組成物ということがある)は、集電体に塗布、乾燥して、被膜化させることができる。
【0090】
〔負極活物質〕
負極活物質としては、特に限定はないが、例えば、天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、活性炭、カーボンファイバー、コークス、ソフトカーボン、ハードカーボン、グラフェン等の炭素材料;シリコン系;Si;SiC、Si
3N
4、Si
2N
2O、SiO
x(0.5≦x≦1.5)等のSi化合物;SnO、SnO
2、CuO、Li
4Ti
5O
12等の金属酸化物系;Si−Al、Al−Zn、Si−Mg、Al−Ge、Si−Ge、Si−Ag、Zn−Sn、Ge−Ag、Ge−Sn、Ge−Sb、Ag−Sn、Ag−Ge、Sn−Sb等の合金;リン酸スズガラス系等を挙げることができ、1種または2種以上併用してもよい。
【0091】
負極活物質は、上記負極活物質のなかでも、蓄電デバイスの体積エネルギー密度の観点から、Si及び/又はSi化合物を含むと好ましい。さらに、負極活物質がSi及び/又はSi化合物を含むと、スラリーの分散安定性、及び負極活物質の結着性を向上させることができるため、好ましい。また、蓄電デバイスのサイクル特性の観点から、Si化合物が、SiO
x(0.5≦x≦1.5)(以下、SiO
xということがある)を含むと好ましい。
なお、SiO
xは、非晶質のSiO
2マトリックス中に、Siが分散したものである。この非晶質のSiO
2と、その中に分散しているSiを合わせて、前記の酸素原子比xが決定され、0.5≦x≦1.5を満たせばよい。例えば、非晶質のSiO
2マトリックス中に、Siが分散した構造で、SiO
2とSiのモル比が1:1の物質の場合、x=1であるので、構造式としてはSiOで表記される。
【0092】
負極活物質がSiを含む場合、負極活物質に占めるSiの重量割合は、特に限定はないが、好ましくは3〜100重量%、より好ましくは5〜100重量%、さらに好ましくは10〜100重量%、特に好ましくは20〜100重量%、最も好ましくは30〜100重量%である。
負極活物質がSi化合物を含む場合、負極活物質に占めるSi化合物の重量割合は、特に限定はないが、(1)3〜100重量%、(2)5〜100重量%、(3)10〜100重量%、(4)25〜100重量%、(5)40〜100重量%、(6)50〜100重量%、(7)60〜100重量%、(8)70〜100重量%の順で好ましい(括弧内の数字が大きくなるにつれ好ましい)。
【0093】
負極活物質の形態としては、Si及び/又はSi化合物を含むと好ましく、Si又はSi化合物を含むとより好ましく、Si化合物を含むと特に好ましい。
Si及び/又はSi化合物が粒状物である場合、Si及び/又はSi化合物の粒状物の平均粒子径は、特に限定されないが、サイクル特性の観点から、好ましくは0.5μm〜100μm、より好ましくは0.5μm〜50μm、さらに好ましくは0.5μm〜20μmである。
【0094】
負極活物質が、Si及び/又はSi化合物を含む場合、Si及び/又はSi化合物が炭素による被覆物であってもよい。
Si及び/又はSi化合物を被覆している炭素としては、特に限定はないが、ファーネスブラック、アセチレンブラック、ケッチェンブラック等のカーボンブラック;グラフェン;カーボンナノ繊維、単層カーボンナノチューブ、多層カーボンナノチューブ等のカーボンナノチューブ;天然黒鉛、人造黒鉛、膨張黒鉛、ソフトカーボン、ハードカーボン等の黒鉛を挙げることができ、1種又は2種以上併用してもよい。
【0095】
本発明の蓄電デバイス用負極は、集電体上に被膜を有し、その被膜が上述の蓄電デバイス負極用途の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分を含むものである。まず、蓄電デバイス用負極を構成する各成分について詳しく説明する。
【0096】
蓄電デバイス用負極の集電体としては、電子伝導性を有し負極材料に通電し得る材料であればよく、上記の集電体を使用することができる。また、蓄電デバイス用負極の集電体としては、電気伝導性が高く、電解液中の安定性と耐酸化性の観点から、Cu、C、Al、ステンレス鋼等が好ましく、さらに材料コストの観点からCu等が好ましい。蓄電デバイス用負極の集電体の形状は、特に限定はなく、正極に使用される場合と同様に、例えば、箔状基材、三次元基材、貫通基材、多孔質基材、パンチング基材、エッチング基材、穴あき基材等を用いることができ、具体的には圧延銅箔、電解銅箔等が好ましい。
【0097】
〔蓄電デバイス用負極、その製造方法〕
本発明の蓄電デバイス用負極は、集電体上に被膜を有し、その被膜が上述の蓄電デバイス負極用途の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分を含むものであるから、均一性に優れる。
【0098】
蓄電デバイス用負極における集電体上の被膜は、集電体のどちらか片面にあってもよく、両面にあってもよい。また、集電体上の被膜は、プライマー層を含んでいてもよく、プライマー層はカーボンブラック等の導電助剤を含んでいてもよい。被膜がプライマー層を含む場合、プライマー層が集電体と接触し、プライマー層の上に蓄電デバイス負極用スラリー組成物の不揮発分が接触する構成となる被膜であると、好ましい。
【0099】
蓄電デバイス用負極における集電体上の被膜の厚みは、特に限定はないが、好ましくは1〜500μmである。集電体上の被膜の厚みが1μm未満であると、電池性能が悪くなり好ましくないことがある。一方、集電体上の被膜の厚みが500μm超であると、ハンドリング性が低下することがある。集電体上の被膜の厚みの上限は、より好ましくは200μm、さらに好ましくは100μm、特に好ましくは75μm、最も好ましくは50μmである。一方、集電体上の被膜の厚みの下限は、より好ましくは10μm、さらに好ましくは20μmである。
【0100】
蓄電デバイス用負極の製造方法は、特に限定はないが、集電体上に、蓄電デバイス負極用スラリー組成物を塗工し、乾燥させる方法が挙げられる。
蓄電デバイス負極用スラリー組成物を負極の集電体に塗工する方法としては、特に限定はないが、上記の蓄電デバイス正極用スラリー組成物を正極の集電体に塗工する方法と同様の方法を採用することができる。
【0101】
蓄電デバイス負極用スラリー組成物を負極の集電体に塗工した後の、蓄電デバイス用負極の乾燥方法については、特に限定はないが、上記蓄電デバイス用正極と同様の方法を挙げることができる。
また、蓄電デバイス用負極の乾燥温度としては、特に限定はないが、好ましくは10〜200℃である。蓄電デバイス用負極の乾燥温度が200℃超であると、負極の機能が低下することがある。蓄電デバイス用負極の乾燥温度の上限は、より好ましくは190℃、さらに好ましくは180℃、特に好ましくは170℃、最も好ましくは160℃である。一方、蓄電デバイス用負極の乾燥温度の下限は、より好ましくは30℃、さらに好ましくは50℃、特に好ましくは80℃、最も好ましくは90℃である。
【0102】
<表面コート用途>
本発明の蓄電デバイス用スラリー組成物は、セパレータの表面コート用途や、上述した正極あるいは負極の表面コート用途として利用することができる。蓄電デバイススラリー組成物が表面コート用途として用いられる場合の蓄電デバイス用スラリー組成物(以下、蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物ということがある)に含まれる無機粒子としては、非導電性粒子等が挙げられる。
【0103】
〔非導電性粒子〕
蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物に含まれる非導電性粒子としては、例えば、シリカ(酸化ケイ素)、α−アルミナ、β−アルミナ、γ−アルミナ、θアルミナ等のアルミナ(酸化アルミニウム)、チタニア(酸化チタン)、マグネシア(酸化マグネシウム)、ジルコニア(酸化ジルコニウム)、酸化カルシウム、酸化バリウム、酸化スズ、酸化ストロンチウム、酸化ニオブ、酸化セリウム、酸化タングステン、酸化インジウム、酸化ガリウム、酸化イットリウム、酸化鉄、酸化アンチモン、ホワイトカーボン等の無機酸化物粒子;窒化アルミニウム、窒化ケイ素などの無機窒化物粒子;フッ化カルシウム、フッ化バリウム、硫化バリウム、硫化カルシウム等のイオン結晶粒子;シリコン、ダイヤモンドなどの共有結合性結晶粒子;マイカ、タルク、ベントナイト、カオリン、ケイ酸アルミニウム、セリサイト等のケイ酸塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウム、炭酸バリウム等の炭酸塩等を挙げることができ、1種または2種以上でもよい。なかでもアルミナが、熱的および化学的安定性が高く、好ましい。
【0104】
非導電性粒子の平均粒子径については、特に限定はないが、好ましくは0.001〜100μmである。非導電性粒子の平均粒子径が0.001μm未満であると、蓄電デバイス用スラリー組成物の製造が困難となることがある。一方、非導電性粒子の平均粒子径が100μm超であると、分散性が低下することがある。非導電性粒子の平均粒子径の上限は、より好ましくは10μm、さらに好ましくは1μm、特に好ましくは0.8μm、最も好ましくは0.7μmである。一方、非導電性粒子の平均粒子径の下限は、より好ましくは0.01μm、特に好ましくは0.1μm、最も好ましくは0.2μmである。
【0105】
非導電性粒子のBET比表面積としては、特に限定はないが、好ましくは0.1〜30m
2/gである。非導電性粒子のBET比表面積が0.1m
2/g未満であると、被膜形成性が低下することがある。一方、非導電性粒子のBET比表面積が30m
2/g超であると、ハンドリング性が低下することがある。導電性粒子のBET比表面積の上限は、より好ましくは18m
2/g、さらに好ましくは14m
2/g、特に好ましくは10m
2/gである。一方、導電性粒子のBET比表面積の下限は、より好ましくは1m
2/g、さらに好ましくは4m
2/g、特に好ましくは5m
2/g、最も好ましくは8m
2/gである。
【0106】
非導電性粒子の電気伝導度としては、特に限定はないが、好ましくは100μS/cm以下、より好ましくは80μS/cm以下、さらに好ましくは40μS/cm以下、特に好ましくは20μS/cm以下である。非導電性粒子の電気伝導度が100μS/cm超であると、電池性能が低下することがある。
【0107】
非導電性粒子は遊離の金属(あるいは金属イオン)を含有していてもよい。遊離の金属としては、例えば、鉄、シリカ、マグネシウム、ナトリウム、銅等を挙げることができる。
非導電性粒子における遊離の金属の含有量としては、特に限定はないが、好ましくは10000ppm以下、より好ましくは1000ppm以下、さらに好ましくは100ppm以下、特に好ましくは10ppm以下、最も好ましくは1ppm以下である。遊離の金属の含有量が10000ppm超であると、電池性能が低下することがある。
【0108】
蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物のゼータ電位としては、特に限定はないが、測定温度25℃における5重量%濃度水分散液のゼータ電位が、好ましくは−10〜−100mVである。蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物のゼータ電位が−100mV未満であると、ハンドリング性が低下することがある。一方、5重量%濃度の蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物のゼータ電位が−10mV超であると、分散性が低下することがある。蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物のゼータ電位の上限は、より好ましくは−20mV、さらに好ましくは−30mV、特に好ましくは−35mVである。一方、蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物のゼータ電位の下限は、より好ましくは−90mV、さらに好ましくは−80mV、特に好ましくは−70mV、最も好ましくは−65mVである。
【0109】
本発明の蓄電デバイス用セパレータは、被膜を有するセパレータであって、その被膜が上述の蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物の不揮発分を含むものである。まず、畜電デバイス用セパレータを構成する成分について詳しく説明する。
【0110】
〔セパレータ〕
セパレータの組成を構成するものとしては、特に限定はないが、樹脂を挙げることができる。セパレータの組成を構成する樹脂としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブチレン等のポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリトリメチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;ナイロン等のポリアミド系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;ポリスチレン系樹脂;メタクリル系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリフェニレンサルファイド系樹脂、セルロース系樹脂等を挙げることができる。
【0111】
セパレータは、蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物を塗工する前に、親水化処理が行われていてもよい。親水化処理としては、酸やアルカリ等による薬剤処理、コロナ処理、プラズマ処理等を挙げることができる。また、セパレータは、蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物を塗工する前に、表面をポリフッ化ビニリデン樹脂やポリアラミド樹脂などで表面コートされていてもよい。
セパレータの形状としては、例えば、微多孔膜フィルム、不織布等が挙げられる。
【0112】
〔蓄電デバイス用セパレータ、その製造方法〕
本発明の蓄電デバイス用セパレータは、被膜を有するセパレータであって、その被膜が上述の蓄電デバイスの表面コート用途の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分を含むものであるから、均一性に優れる。
【0113】
さらに、蓄電デバイスでは、通常、正極と負極の間の短絡を防ぐ為に、セパレータが用いられている。例えば、リチウムイオン蓄電デバイスの場合、セパレータは、蓄電デバイス内部で短絡が発生した場合、セパレータの有するシャットダウン機能によって、セパレータの孔が塞がって、短絡した部分のリチウムイオンの移動ができなくなり、短絡部位の電池機能を失わせることにより、リチウムイオン蓄電デバイスの安全性を保持する役割を担っている。しかしながら、瞬間的に発生する発熱によって電池温度が例えば150℃を超えると、セパレータは急激に収縮して、正極と負極の短絡部位が拡大することがある。この場合、電池温度は数百℃以上にまで異常過熱された状態に至ることがあり、安全性の面で問題となる。それに対して、本発明の蓄電デバイス用セパレータは、その表面に非導電性の無機物を含む多孔膜を形成させることができ、上記問題を解決できると考えられる。なお、蓄電デバイスを構成する正極や負極が、蓄電デバイスの表面コート用途の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分を含む被膜を有する場合においても、上記問題を解決することができると考えられる。
【0114】
本発明の蓄電デバイス用セパレータにおけるセパレータ上の被膜は、セパレータのどちらか片面にあってもよく、両面にあってもよい。
本発明の蓄電デバイス用セパレータにおけるセパレータ上の被膜の厚みは、特に限定はないが、好ましくは0.1〜30μmである。被膜の厚みが0.1μm未満であると、耐熱性が低下することがある。一方、被膜の厚みが30μm超であると、セパレータの機能が低下することがある。セパレータ上の被膜の厚みの上限は、より好ましくは10μm、さらに好ましくは5μm、特に好ましくは4μm、最も好ましくは3μmである。一方、セパレータ上の被膜の厚みの下限は、より好ましくは0.3μm、さらに好ましくは0.5μm、特に好ましくは1μmである。
【0115】
本発明の蓄電デバイス用セパレータの厚みとしては、特に限定はないが、好ましくは1〜100μmである。蓄電デバイス用セパレータの厚みが1μm未満であると、耐熱性が低下することがある。一方、蓄電デバイス用セパレータの厚みが100μm超であると、セパレータの機能が低下することがある。蓄電デバイス用セパレータの厚みの上限は、より好ましくは50μm、さらに好ましくは30μm、特に好ましくは25μmである。一方、蓄電デバイス用セパレータの厚みの下限は、より好ましくは5μm、さらに好ましくは10μm、特に好ましくは15μm、最も好ましくは20μmである。
【0116】
本発明の蓄電デバイス用セパレータにおいて、蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物の不揮発分を含む被膜面の水の接触角としては、特に限定はないが、水を滴下してから1600msec経過時で好ましくは60°以下、より好ましくは50°以下、さらに好ましくは40°以下、特に好ましくは30°以下、最も好ましくは20°以下である。蓄電デバイス用セパレータの対する水の接触角が60°超であると、電池性能が低下することがある。
【0117】
本発明の蓄電デバイス用セパレータにおいて、蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物の不揮発分を含む被膜面の電解溶媒の接触角としては、特に限定はないが、電解液を滴下してから1600msec経過時で通常80°以下、好ましくは70°以下、より好ましくは60°以下、さらに好ましくは55°以下、特に好ましくは50°以下である。被膜面の電解質の接触角が80°超であると、蓄電デバイスの性能が低下することがある。なお電解溶媒とは、後述する電解質を溶解させることができる化合物のことである。
また、上記接触角の測定に用いられる電解溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、エチレンカーボネート、ジエチルカーボネート、プロピレンカーボネート、ブチレンカーボネート、メチルエチルカーボネート等のカーボネート化合物;γ−ブチロラクトン、ギ酸メチル等のエステル化合物;1、2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン等のエーテル化合物;スルホラン、ジメチルスルホキシド等の含硫黄化合物等を挙げることができ、1種または2種以上併用してもよい。
【0118】
蓄電デバイス用セパレータの製造方法としては、特に限定はないが、セパレータ上に、蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物を塗工し、乾燥させる方法が挙げられる。
蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物をセパレータに塗工する方法としては、特に限定はなく、上記の蓄電デバイス正極用スラリー組成物を正極の集電体に塗工する方法と同様の方法を採用することができる。
【0119】
蓄電デバイス表面コート用スラリー組成物を塗工セパレータに塗工した後の、蓄電デバイス用セパレータの乾燥方法については、特に限定はないが、上記蓄電デバイス用正極と同様の装置を使用する方法を挙げることができる。
蓄電デバイス用セパレータの乾燥温度は、特に限定はないが、好ましくは10〜200℃である。乾燥温度が200℃超であると、蓄電デバイス用セパレータの機能が低下することがある。蓄電デバイス用セパレータの乾燥温度の上限は、より好ましくは150℃、さらに好ましくは120℃、特に好ましくは100℃、最も好ましくは90℃である。一方、蓄電デバイス用正極の乾燥温度の下限は、より好ましくは30℃、さらに好ましくは40℃、特に好ましくは50℃、最も好ましくは60℃である。
【0120】
本発明の蓄電デバイスは、負極、正極、セパレータ及び電解液を含む蓄電デバイスであって、負極、正極及びセパレータのうちの少なくとも1個が、上述の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分により形成されてなる被膜を有するものである。
【0121】
〔電解液〕
本発明の蓄電デバイスに含まれる電解液は、電解溶媒と電解質を含む混合液であり、電解溶媒に電解質を溶解させたものである。
電解液に含まれる電解溶媒は、上記の電解溶媒を使用することができ、1種または2種以上併用してもよい。なかでも、カーボネート類が、高誘電率であり、広い電位流域で化学的安定であるため、好ましい。
【0122】
電解液に含まれる電解質としては、例えば、LiPF
6、LiAsF
6、LiBF
4、LiSbF
6、LiAlCl
4、LiClO
4、CF
3SO
3Li、C
4F
9SO
3Li、CF
3SOOLi、(CF
3CO)
2NLi、(CF
3SO
2)
2NLi、(C
2F
5SO
2)NLi等を挙げることができ、1種又は2種以上を併用してもよい。
また、電解液は、ビニレンカーボネート等のその他添加剤を含有していてもよい。
【0123】
〔蓄電デバイス、その製造方法〕
本発明の蓄電デバイスは、負極、正極、セパレータ及び電解液を含む蓄電デバイスであって、負極、正極及びセパレータのうちの少なくとも1個が、上述の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分を含む均一性に優れた被膜を有するものである。
蓄電デバイスの形状としては、例えば、コイン型、円筒型、角型、シート型等を挙げることができる。
【0124】
蓄電デバイスの種類としては、例えば、リチウムイオン電池、リチウムイオン全固体電池、リチウムイオンポリマー電池等のリチウムイオン二次電池;ナトリウムイオン電池、ナトリウムイオン全固体電池、ナトリウムイオンポリマー電池等のナトリウムイオン二次電池;カリウムイオン電池、カリウムイオン全固体電池、カリウムイオンポリマー電池等のカリウムイオン二次電池;ニッケル水素電池、ニッケルカドミウム電池等のアルカリ二次電池;ナトリウム硫黄電池;レドックスフロー電池;空気電池等を挙げることができる。
蓄電デバイスがニッケル水素電池の場合、蓄電デバイスに含まれる電解液としては、特に限定はないが、アルカリ性の水溶液であればよく、例えば、水酸化カリウムや水酸化ナトリウムを含む水溶液等を挙げることができる。
【0125】
蓄電デバイスの形態としては、例えば、キャパシタを挙げることができる。キャパシタは、例えば、電気二重層キャパシタ、セラミックキャパシタ、アルミ電解キャパシタ、タンタル電解キャパシタ、マイラキャパシタ、及びフィルムキャパシタ等を挙げることができる。なかでも、蓄電量の観点から、電気二重層キャパシタ、セラミックキャパシタ、及びアルミ電解キャパシタが好ましく、特に電気二重層キャパシタが好ましい。電気二重層キャパシタ形状としては、特に限定はないが、たとえば、コイン型、円筒型、角型、シート型等が挙げられる。
【0126】
蓄電デバイスは、上述の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分を含む被膜を有する正極、上述の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分を含む被膜を有する負極、及び上述の蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分を含む被膜を有するセパレータの少なくとも1種を用いて作製することができる。蓄電デバイスの製造方法は、特に限定はないが、例えば、上述の負極と上述の正極を上述のセパレータを介して重ね合わせ、電池形状に応じて巻いたり折ったり積層したりして電極体を作製し、その電極体を蓄電デバイス用の容器に入れ、さらに蓄電デバイス用の容器に電解液を注入して封口する方法を挙げることができる。
【0127】
本発明の蓄電デバイスは、様々な電気機器(電気を使用する乗り物を含む)の電源として利用することができる。
電気機器としては、例えば、ノートパソコン、タブレット、スマートフォン、パソコンキーボード、パソコン用ディスプレイ、デスクトップ型パソコン、CRTモニター、パソコンラック、プリンター、一体型パソコン、マウス、ハードディスク等のパソコン通信周辺機器;エアコン、洗濯機、テレビ、冷蔵庫、冷凍庫、冷房機器、アイロン、衣類乾燥機、ウインドウファン、トランシーバー、送風機、換気扇、音楽レコーダー、音楽プレーヤー、オーブン、レンジ、洗浄機能付便座、温風ヒーター、カーコンポ、カーナビ、懐中電灯、加湿器、携帯カラオケ機、換気扇、乾燥機、乾電池、空気清浄器、携帯電話、非常用電灯、ゲーム機、血圧計、コーヒーミル、コーヒーメーカー、こたつ、コピー機、ディスクチェンジャー、ラジオ、シェーバー、ジューサー、シュレッダー、浄水器、照明器具、除湿器、食器乾燥機、炊飯器、ステレオ、ストーブ、スピーカー、ズボンプレッサー、掃除機、体脂肪計、体重計、ヘルスメーター、ムービープレーヤー、電気カーペット、電気釜、炊飯器、電気かみそり、電気スタンド、電気ポット、電子ゲーム機、携帯ゲーム機、電子辞書、電子手帳、電子レンジ、電磁調理器、電卓、電動カート、電動車椅子、電動工具、電動歯ブラシ、あんか、散髪器具、電話機、時計、インターホン、エアサーキュレーター、電撃殺虫器、複写機、ホットプレート、トースター、ドライヤー、電動ドリル、給湯器、パネルヒーター、粉砕機、はんだごて、ビデオカメラ、ビデオデッキ、ファクシミリ、ファンヒーター、フードプロセッサー、布団乾燥機、ヘッドホン、電気ポット、ホットカーペット、マイク、マッサージ機、豆電球、ミキサー、ミシン、もちつき機、床暖房パネル、ランタン、リモコン、冷温庫、冷水器、冷凍ストッカー、冷風器、ワープロ、泡だて器、電子楽器、オートバイ、おもちゃ類、芝刈り機、うき等の家電機器;自転車、自動車、ハイブリッド自動車、プラグインハイブリッド自動車、電気自動車、鉄道、船、飛行機、ドローン等の移動輸送機器;住宅用蓄電デバイス、風力発電用蓄電デバイス、水力発電用蓄電デバイス、非常用蓄電デバイス等の定置用蓄電機器;ボイラ、原動機、農作業機器、建設機器等の産業用機器等が挙げられる。
【実施例】
【0128】
以下に、本発明の実施例を、その比較例とともに具体的に説明する。なお、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0129】
〔ガラス転移点の測定〕
高分子成分Aのガラス転移点を、動的粘弾性測定装置(ティ−・エイ・インスツルメント社製、品番Q800)を用いて測定した。高分子成分Aについては、高分子成分Aの水分散液を110℃で重量が恒量となるまで加熱し、得られた残留物を高分子成分Aとした。
【0130】
〔重量平均分子量〕
上記方法にて得られた高分子成分Aの濃度が0.2重量%濃度となるように、テトラヒドロフランと混合し、溶解させた後、GPC装置(東ソー社製、HLC−8220)を用いて、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法にて、高分子成分Aの重量平均分子量を算出した。
【0131】
〔粘度の測定〕
蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分濃度20重量%の水分散液、蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分濃度40重量%の水分散液、及び高分子成分Aの水分散液を各々作製し、作製した各水分散液の25℃における粘度を、B型粘度計(東京計器社製、BL型)を用いて測定した。
【0132】
〔pHの測定〕
蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分濃度20重量%の水分散液及び蓄電デバイススラリー組成物の不揮発分濃度40重量%の水分散液の25℃におけるpHを、pHメータ(堀場製作所社製、F−51)を用いて測定した。
【0133】
〔平均粒子径、ゼータ電位の測定〕
粒径・ゼータ電位測定システム(大塚電子社製、ELSZ−1000)を用いて測定した。
【0134】
〔比誘電率の測定〕
蓄電デバイススラリー用分散剤組成物をポリプロピレン製平板の表面上に塗布し、オーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、残留物である蓄電デバイススラリー用組成物の不揮発分を得た。得られた不揮発分を縦70mm、横10mm、膜厚150μmのサイズに成形し、蓄電デバイススラリー用組成物の不揮発分からなる成形膜を作製した。
作製した成形膜の比誘電率を、相対湿度50%RHで、かつ温度23℃の条件下で、誘電率測定装置(ヒューレットパッカード社製、HP4284A)を用い、電極接触法により測定した。
【0135】
〔重量膨潤率の測定〕
蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分1gを精秤し、体積比率が50/50のエチレンカーボネート/ジエチルカーボネートの混合物に浸漬し、60℃にて1週間静置した。その後、不揮発分を引き上げ、表面の残液をキムワイプで拭いた後、重量を測定した。浸漬前の不揮発分の重量をG
0、浸漬後の不揮発分の重量をG
1として、以下の計算式を用いて重量膨潤率を算出した。
重量膨潤率(重量%)=(G
1/G
0)×100
【0136】
〔光透過率の測定〕
紫外可視分光光度計(島津製作所製、UV−1800)を用いて、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分濃度2.5%水分散液の670nmの波長の光透過率を測定した。
【0137】
〔ヌープ硬度HK(0.01)の測定〕
蓄電デバイススラリー用分散剤組成物をオーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、厚さ1mmの蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分の薄膜を得た。得られた薄膜を、マイクロビッカース硬度計(島津製作所製HMV−1)に設置し、20℃、100mNの荷重で10秒間押し込み時のヌープ硬度HK(0.01)を、JIS Z2251に準拠した手順で、6箇所測定し、その平均値を算出した。
【0138】
〔耐屈曲性の測定〕
蓄電デバイススラリー用分散剤組成物を20gと、SiO(一次粒子径4.9μm)を100gと、アセチレンブラックを5gと、イオン交換水120gを均一に混合して、混合物を得た。得られた混合物を膜厚18μmの銅箔に塗布し、オーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分を含む、厚み40μmとなる被膜を有する構造物を作製した。作製した構造物をJIS K5600−5−1に準拠した手順でマンドレル試験を行い、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分のJIS K5600−5−1に準じたマンドレル試験における耐屈曲性の測定を行った。
【0139】
〔濡れ性の評価〕
蓄電デバイススラリー用分散剤組成物を縦50mm、横50mm、膜厚15μmのサイズのポリプロピレンフィルム表面に10μmの厚みで塗布して、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の濡れ性の評価を以下の基準により行った。
◎:塗布直後及び塗布30秒後にはじきの発生がなく、濡れ性に優れる。
○:塗布直後にはじきの発生がなく、塗布30秒後に若干のはじき発生が見られ、濡れ性にやや優れる。
△:塗布直後にはじきの発生がなく、塗布30秒後に塗布面の10%以上にはじき発生が見られ、濡れ性にやや劣る。
×:塗布直後にはじきが発生し、濡れ性に劣る。
【0140】
〔消泡剤〕
実施例および比較例で用いた消泡剤を以下に示す。
ポリシロキサン系消泡剤:ジメチルポリシロキサン、粘度100mPa・s
シリカ微粉末系消泡剤:トリメチルエトキシシランにより疎水化処理されたシリカ微粉末
鉱物油系消泡剤:パラフィン系鉱物油
【0141】
〔無機粒子〕
実施例および比較例で用いた無機粒子を以下に示す。
コバルト酸リチウム;一次粒子径7.3μm、BET比表面積0.4m
2/g
リチウム−ニッケル−コバルト−マンガン複合酸化物(LiNi
0.33Co
0.33Mn
0.33O
2;一次粒子径11.5μm、BET比表面積0.3m
2/g
リチウム−ニッケル−コバルト−アルミニウム複合酸化物(LiNi
0.8Co
0.1Al
0.1O
2;一次粒子径12.0μm、BET比表面積0.3m
2/g
リン酸鉄リチウム(LiFePO
4);一次粒子径12.1μm、BET比表面積0.3m
2/g
アセチレンブラック:平均粒子径70.1nm
カーボンナノ繊維:繊維系150.0nm、BET比表面積13m
2/g
グラファイト:一次粒子径11.1μm
Si:一次粒子径5.1μm
SiO:一次粒子径4.9μm
αアルミナ1:一次粒子径0.3μm、BET比表面積8.4m
2/g
αアルミナ2:一次粒子径0.8μm、BET比表面積4.9m
2/g
γアルミナ:一次粒子径0.3μm、BET比表面積4.7m
2/g
θアルミナ:一次粒子径0.3μm、BET比表面積5.3m
2/g
シリカ:一次粒子径0.3μm、BET比表面積5.4m
2/g
【0142】
〔高分子成分A〕
実施例および比較例で用いた高分子成分Aについて、それらの具体的な製造方法および物性を以下の表1、2の製造例A−1〜A−17に示す。
【0143】
【表1】
【0144】
【表2】
【0145】
〔製造例A−1〕
まず、重合性成分aとして、65gのアクリル酸、5gのグリシジルメタクリレート、30gのアクリルアミドを準備した。上記で準備した重合性成分aと、250gのイオン交換水をホモジナイザーで混合撹拌し均一溶解させ、1000mlのセパラブルフラスコ中で、窒素気流下、80℃で3時間反応し、反応後にアンモニア25gを加えpHを6.8に調整、中和して、高分子成分A−1の水分散液を得た。
得られた高分子成分A−1の水分散液の粘度は15000mPa・s、高分子成分A−1の水分散液の不揮発分濃度は25.6重量%、高分子成分A−1は水溶性であって、重量平均分子量が69万、ガラス転移点122℃であった。
【0146】
〔製造例A−2〜製造例A−17〕
製造例A−2〜A−17では、製造例A−1において、表1、2に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、製造例A−1と同様に高分子成分Aをそれぞれ得て、物性等も製造例A−1と同様に評価した。その結果を表1、2に示す。
【0147】
〔高分子成分B〕
実施例および比較例で用いた高分子成分Bを以下に示す。
【0148】
〔高分子成分B−1、B−2〕
高分子成分B−1:ポリフッ化ビニリデン、不揮発分濃度30.0重量%、平均粒子径258nm
高分子成分B−2:スチレンブタジエンエマルション、エマルションの不揮発分濃度40.0重量%、平均粒子径245nm
【0149】
〔製造例1、表3〕
高分子成分Aである高分子成分A−1を100g含むA−1の水分散液375gと、POE(24)スチレン化フェニルエーテル1gと、ポリシロキサン系消泡剤0.01g、イオン交換水125gを均一に混合して、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物を得た。イオン交換水の量は、A−1の水分散液に含まれるイオン交換水と合わせて400gであった。
得られた蓄電デバイススラリー用分散剤組成物は、不揮発分濃度20.0重量%、pH6.9、粘度5200mPa・s、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物の不揮発分のヌープ硬度HKは202、耐屈曲性は6mm、不揮発分からなる成形膜の比誘電率は55、重量膨重率は102重量%、不揮発分濃度2.5重量%の水分散液の670nm波長の光透過率は99.8%であり、濡れ性に優れるものであった。
【0150】
〔製造例2〜18、製造比較例1〜8〕
製造例2〜18、及び製造比較例1〜8は、表3〜5に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、製造例1と同様に蓄電デバイススラリー用分散剤組成物をそれぞれ得て、物性等も製造例1と同様に評価した。その結果を表3〜5に示す。
【0151】
【表3】
【0152】
【表4】
【0153】
【表5】
【0154】
〔流動性の評価〕
蓄電デバイス用スラリー組成物を下記する各用途の条件で塗布して、流動性の評価を以下の基準により行った。
(負極用の塗布条件)
蓄電池デバイス負極用スラリー組成物を負極集電体表面に10mg/cm
2塗布して、流動性を評価した。
(正極用の塗布条件)
蓄電池デバイス正極用スラリー組成物を正極集電体表面に10mg/cm
2塗布して、流動性を評価した。
(表面コート用の塗布条件)
蓄電池デバイス表面コート用スラリー組成物をポリプロピレン系セパレータ表面に10mg/cm
2塗布して、流動性を評価した。
◎:塗布時に縦筋及びかすれの発生がなく、流動性に優れる
○:塗布時に若干の縦筋が見られるが、かすれの発生がなく、流動性にやや優れる。
△:塗布時に部分的にかすれの発生があり、流動性にやや劣る。
×:塗布時に全面的にかすれが発生し、流動性に劣る。
【0155】
〔被膜の均一性の評価〕
上記流動性の評価で塗布した蓄電デバイス用スラリー組成物を、オーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分を含む被膜を得た。得られた被膜の被覆面積を測定し、蓄電デバイス用スラリー組成物の被膜の均一性の評価を以下の基準により行った。
◎:被覆面積が100%で、被膜の凹凸がなく、被膜の均一性に優れる。
○:被覆面積が100%で、被膜に若干の凹凸が見られ、被膜の均一性にやや優れる。
△:被覆面積が95%以上100%未満であり、被膜の均一性にやや劣る。
×:被覆面積が95%未満であり、被膜の均一性に劣る。
【0156】
〔実施例1、表6〕
正極活物質としてコバルト酸リチウムを100gと、導電助剤としてアセチレンブラックを3gと、製造例10で得られた蓄電デバイススラリー用分散剤組成物10を15gと、イオン交換水120gを均一に混合して、蓄電デバイス正極用スラリー組成物を得た。得られた蓄電デバイス正極用スラリー組成物は、不揮発分濃度45.2重量%、粘度4500mPa・s、平均粒子径15.5μm、pH6.7、ゼータ電位−30mVであった。
この蓄電デバイス正極用スラリー組成物を集電体である膜厚18μmのアルミ箔表面に塗布して、蓄電デバイス正極用スラリー組成物の流動性を評価したところ、塗布時に縦筋及びかすれの発生がなく、流動性に優れていた。
上記で得られた蓄電デバイス正極用スラリー組成物を塗布した集電体を、オーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、蓄電デバイス正極用スラリー組成物の不揮発分を含む被膜で被覆された集電体を得た。
得られた集電体表面の被膜の被覆面積は100%で被膜の凹凸がなく、塗膜の均一性に優れていた。集電体表面の被膜の膜厚は81μmであった。
【0157】
〔実施例2〜9、比較例1〜4〕
実施例2〜9及び比較例1〜4では、表6、9に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、実施例1と同様に蓄電デバイス用スラリー組成物をそれぞれ得て、物性等も実施例1と同様に評価した。その結果を表6、9に示す。
【0158】
〔実施例10、表7〕
負極活物質としてグラファイトを75g及びSiOを25gと、導電助剤としてアセチレンブラックを5gと、製造例1で得られた蓄電デバイススラリー用分散剤組成物1を20gと、イオン交換水120gを均一に混合して、蓄電デバイス負極用スラリー組成物を得た。得られた蓄電デバイス負極用スラリー組成物は、不揮発分濃度45.2重量%、粘度3200mPa・s、平均粒子径16.8μm、pH7.1、ゼータ電位−30mVであった。
この蓄電デバイス負極用スラリー組成物を集電体である膜厚18μmの銅箔表面に塗布して、蓄電デバイス負極用スラリー組成物の流動性を評価したところ、塗布時に若干の縦筋が見られるが、かすれの発生がなく、流動性にやや優れていた。
上記で得られた蓄電デバイス負極用スラリー組成物を塗布した集電体を、オーブン中で重量が恒量となるまで110℃で加熱し、蓄電デバイス負極用スラリー組成物の不揮発分を含む被膜で被覆された集電体を得た。
得られた集電体表面の被膜の被覆面積は100%で塗布面に若干の凹凸が見られ、塗膜の均一性にやや優れていた。集電体表面の被膜の膜厚は34μmであった。
【0159】
〔実施例11〜18、比較例1〜8〕
実施例11〜18、及び比較例1〜8では、表7、10に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、実施例10と同様に蓄電デバイス用スラリー組成物をそれぞれ得て、物性等も実施例10と同様に評価した。その結果を表7、10に示す。
【0160】
〔実施例19、表8〕
非導電性粒子としてαアルミナ1を100gと、製造例1で得られた蓄電デバイススラリー用分散剤組成物1を15gと、イオン交換水120gを均一に混合して、蓄電デバイス用スラリー組成物を得た。得られた蓄電デバイス用スラリー組成物は、不揮発分濃度42.1重量%、粘度500mPa・s、平均粒子径0.5μm、pH7.1、ゼータ電位−30mVであった。
この蓄電デバイス用スラリー組成物を膜厚20μmのポリエチレンセパレータに塗布して、蓄電デバイス用スラリー組成物の流動性を評価したところ、若干の縦筋が見られるが、かすれの発生がなく、流動性にやや優れていた。
上記で得られた蓄電デバイス用スラリー組成物を塗布したセパレータを、オーブン中で重量が恒量となるまで80℃で加熱し、蓄電デバイス用スラリー組成物の不揮発分を含む被膜で被覆された蓄電デバイス用セパレータを得た。
得られたセパレータ表面の被膜の被覆面積は100%で被膜に若干の凹凸が見られ、被膜の均一性にやや優れていた。セパレータ表面の被膜の膜厚は4μmであった。
〔実施例20〜27、比較例13〜16〕
実施例20〜27及び比較例13〜16では、表8、9に示すように原料をそれぞれ変更する以外は、実施例19と同様に蓄電デバイス用スラリー組成物をそれぞれ得て、物性等も実施例19と同様に評価した。その結果を表8、9に示す。
【0161】
【表6】
【0162】
【表7】
【0163】
【表8】
【0164】
【表9】
【0165】
【表10】
【0166】
実施例1〜27の蓄電デバイススラリー用分散剤組成物は、単量体(I)及び/又は単量体(II)を含む重合性成分aの重合体及び/又はその中和物である高分子成分Aを含み、上記条件1を満たすため、濡れ性に優れることを確認した。また、実施例1〜27の蓄電デバイス用スラリー組成物は、上記蓄電デバイススラリー用分散剤組成物を含むので、流動性に優れることを確認した。さらに、上記蓄電デバイス用スラリー組成物は、被膜の均一性に優れた蓄電デバイス用材料が製造できることを確認した。
一方、表9、表10から分かるように、蓄電デバイススラリー用分散剤組成物が、単量体(I)及び/又は単量体(II)を含む重合性成分aの重合体及び/又はその中和物である高分子成分Aを含まない場合、上記条件1を満たさない場合、及びその両方の場合は、本願課題を解決できていない。