【解決手段】軸方向に延びる中心軸に沿って回転するロータと、前記ロータと対向するステータと、を備えるモータ部と、前記モータ部の駆動を行う回路基板と、前記モータ部及び前記回路基板を収容するハウジングと、を備え、前記回路基板には、少なくとも一つのディスクリート型電子部品を有し、前記ハウジングは、軸方向一方側に延びる凸部を有し、前記ディスクリート型電子部品は、前記凸部と熱的に接続する。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照しながら、本発明の実施形態に係るモータについて説明する。なお、以下の図面においては、各構成をわかり易くするために、実際の構造と各構造における縮尺及び数等を異ならせる場合がある。
【0010】
また、図面においては、適宜3次元直交座標系としてXYZ座標系を示す。XYZ座標系において、Z軸方向は、
図1に示す中心軸Jの軸方向と平行な方向とする。X軸方向は、中心軸Jに対する径方向のうち
図1に示す凸部21d、放熱シート91及び電子部品81が並ぶ方向と平行な方向とする。Y軸方向は、X軸方向とZ軸方向との両方と直交する方向とする。X軸方向、Y軸方向、及びZ軸方向のいずれにおいても、図中に示す矢印が指す側を+側、反対側を−側とする。
【0011】
また、以下の説明においては、Z軸方向の正の側(+Z側)を「フロント側」又は「一方側」と呼び、Z軸方向の負の側(−Z側)を「リア側」又は「他方側」と呼ぶ。なお、リア側(他方側)及びフロント側(一方側)とは、単に説明のために用いられる名称であって、実際の位置関係及び方向を限定しない。また、特に断りのない限り、中心軸Jに平行な方向(Z軸方向)を単に「軸方向」と呼び、中心軸Jを中心とする径方向を単に「径方向」と呼び、中心軸Jを中心とする周方向、すなわち、中心軸Jの軸周りを単に「周方向」と呼ぶ。径方向において中心軸Jに近づく側を「径方向内側」と呼び、中心軸Jから遠ざかる側を「径方向外側」と呼ぶ。
【0012】
なお、本明細書において、「軸方向に延びる」とは、厳密に軸方向(Z軸方向)に延びる場合に加えて、軸方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また、本明細書において、「径方向に延びる」とは、厳密に径方向、すなわち、軸方向(Z軸方向)に対して垂直な方向に延びる場合に加えて、径方向に対して、45°未満の範囲で傾いた方向に延びる場合も含む。また「平行」とは、厳密に平行な場合に加えて、互いに成す角が45°未満の範囲で傾いた場合も含む。
【0013】
なお、本明細書において、「熱的に接続する」とは、発熱物が、空気よりも熱伝導率が高い対象物と接触することによって、発熱物の熱が空気よりも対象物に伝わりやすい状態であることをいう。
【0014】
[第1実施形態]
<全体構成>
図1は、本発明の第1実施形態に係るモータを、Y軸と直交し中心軸Jを通る面で切断して示す断面図である。
図2は、
図1のモータ10の斜視図である。
本実施形態において、モータ10は、ブラシレスDCモータである。モータ10は、モータ部30と、モータ部30の駆動を行う電子部品81、82及び83等を実装した回路基板80とを収容するモータハウジング21及び23と、を備える。モータ部30は、軸方向に延びる中心軸Jに沿って配置されるモータシャフト41を有するロータ50と、ロータ50と径方向に隙間を介して対向するステータ40と、を備える。モータハウジング21及び23は、軸方向一方側から軸方向他方側に向けて回路基板80及びロータ50の順に配置して収容する。
【0015】
モータ10は、ステータ40を備え、ステータ40は、ステータヨーク42を備える。モータ10は、ステータヨーク42の軸方向一方側に回路基板80を有する。回路基板80は、軸方向に貫通する貫通孔80aを有する。モータシャフト41は、貫通孔80aを貫通する。モータ10は、軸受55a及び55bを備える。軸受55aは、モータハウジング23の軸方向他方側に配置される。軸受55bは、モータハウジング21の軸方向一方側に配置される。また、軸受55aは、モータシャフト41の軸方向一方側端部に配置される。軸受55bは、モータシャフト41の軸方向他方側端部に配置される。軸受55a及び55bは、モータシャフト41を回転可能に支持する。軸受55a及び55bの形状、構造等は、特に限定されず、いかなる公知の軸受も用いることが出来る。
【0016】
ロータ50は、ロータマグネット51を備える。ロータマグネット51は、モータシャフト41を軸周りに囲んで、モータシャフト41に固定される。
【0017】
モータ10は、有底筒状のモータハウジング21を有する。モータハウジング21の径方向内側にはモータ部30が収容される。モータハウジング21は、円筒形状でもよいし、角筒形状であってもよい。モータハウジング21は、空気よりも熱伝導率が高い材質であり、例えばアルミダイキャスト製である。モータ10は、回路基板80の軸方向一方側に、有底筒状のモータハウジング23を有する。モータハウジング23は、円筒形状でもよいし、角筒形状であってもよい。モータハウジング23は、空気よりも熱伝導率が高い材質であり、例えばアルミダイキャスト製である。モータハウジング21は軸方向一方側に開口し、モータハウジング23は軸方向他方側に開口する。モータハウジング21の軸方向一方側の開口は、モータハウジング23によって塞がれ、モータハウジング23の軸方向他方側の開口は、モータハウジング21によって塞がれる。
【0018】
モータハウジング21は、軸方向一方側の端部に縁部21bを有する。モータハウジング21は、軸方向他方側の端部に縁部23bを有する。縁部21bの内周面は、縁部23bの外周面と径方向で対向する。縁部21bの軸方向一方側の端部のZ軸と直交する面である面21cは、縁部23bの軸方向他方側の端部のZ軸と直交する面である面23cと接する。縁部21b及び縁部23bは、モータハウジング21とモータハウジング23とが互いに径方向にオーバーラップするオーバーラップ部の一例である。
【0019】
モータハウジング21は、軸方向一方側の端部に、径方向外側に延びるフランジ部21aを有する。フランジ部21aは、軸方向に貫通する貫通孔21aaを有する。モータハウジング23は、軸方向他方側の端部に、径方向外側に延びるフランジ部23aを有する。フランジ部23aは、軸方向に貫通する貫通孔23aaを有する。貫通孔21aaと貫通孔23aaとは、軸方向位置及び周方向位置が一致し、貫通孔21aaと貫通孔23aaとが連続した貫通孔となる。貫通孔21aaと貫通孔23aaとに貫通するようにねじ止めを行うことで、モータハウジング21とモータハウジング23とを固定することが出来る。
【0020】
電子部品81は、回路基板80に実装された電子部品である。本実施形態では、電子部品81は、ブリッジダイオードである。モータハウジング21は、軸方向一方側の端部に、軸方向一方側に延びる凸部21dを有する。電子部品81と凸部21dとは、間に放熱シート91を介在し、クリップ90で挟んで固定される。モータハウジング21は、凸部21dの径方向外側に、軸方向他方側に凹む溝部21eを有する。クリップ90の一端は、溝部21eに挿入される。凸部21dは、電子部品81の放熱を目的とするものであるが、他の用途を兼ねるものであってもよい。
【0021】
図3は、
図2のモータ10からモータハウジング23を外して示す斜視図である。
図4は、
図3からクリップ90を外し、上から見た平面図である。
回路基板80は、モータハウジング21の筒穴の形状に応じた形状である。本実施形態では、回路基板80は円形である。電子部品81が実装される位置は、回路基板80において、凸部21d側の縁部、すなわち凸部21dの近傍である。電子部品81は、IGBT、ブリッジダイオード、MOSFET,IPM、DC/DCコンバータのうちの少なくとも一つである。IGBTは、Insulated Gate Bipolar Transistorの略称である。MOSFETは、metal−oxide−semiconductor field−effect transistorの略称である。IPMは、Intelligent Power Moduleの略称である。
【0022】
図5(a)は、
図1のモータ10におけるクリップ90の斜視図である。
図5(b)は、
図1のモータ10における放熱シート91の斜視図である。
図5(c)は、
図1のモータ10における電子部品81の斜視図である。電子部品81の素子部81aには孔が図示されているが、孔は無くても良い。
【0023】
クリップ90は、一端(図中の左下)から+Z軸方向に延びる第1面部90aと、第1面部90aの+Z軸方向端部で+X軸方向に屈曲する第1屈曲部90bと、第1屈曲部90bから+X軸方向に延びる第2面部90cと、第2面部90cの+X軸方向端部で−Z軸方向に屈曲する第2屈曲部90dと、を有する。クリップ90は、更に、第2屈曲部90dから−Z軸方向且つ−X軸方向に延びる第3面部90eと、第3面部90eの−Z軸方向端部で+X軸方向に屈曲する第3屈曲部90fと、第3屈曲部90fから+X軸方向に延びる第4面部90gと、を有する。クリップ90は、第3屈曲部90fと第1面部90aとの間の距離を広げる方向の外力に抗う付勢力を有する弾性部材である。第1面部90aは、+X軸方向に向く面90aaを有する。第3面部90eは、−X軸方向に向く面90eaを有する。クリップ90は、金属製又は樹脂製であってもよく、特に材料は問わない。しかしながら、電子部品81の焼損時等に電子部品81と凸部21dとの絶縁を確保するために、クリップ90は、絶縁性の部材であることが望ましい。また、クリップ90は、空気よりも熱伝導率が高い材質であることが望ましい。
【0024】
放熱シート91は、−X軸方向に向く面91aを有する。放熱シート91は、+X軸方向に向く面91bを有する。放熱シート91は、金属製又は樹脂製であってもよく、特に材料は問わない。しかしながら、電子部品81の焼損時等に電子部品81と凸部21dとの絶縁を確保するために、放熱シート91は、絶縁性の部材であることが望ましい。放熱シート91は、例えば、ペースト状の放熱シール剤であってもよい。
【0025】
電子部品81は、電子部品81の機能を実現する素子を有する素子部81aと、素子部81aに接続されるリード84とを有する。電子部品81は、素子部81aで発熱する。素子部81aは、−X軸方向に向く面81aaを有する。素子部81aは、+X軸方向に向く面81abを有する。
【0026】
Y軸方向に並ぶ複数のリード84は、素子部81aの−Z軸方向の端部から−Z軸方向に延び、第1屈曲部84fで+X軸方向に屈曲し、屈曲後に−Z軸方向且つ+X軸方向に延び、第2屈曲部84gで−Z軸方向に屈曲し、屈曲後に−Z軸方向に延びる。
【0027】
第3屈曲部90fと第1面部90aとの間の距離は、第1屈曲部90bと第2屈曲部90dとの間の距離よりも短い。第1屈曲部90bと第2屈曲部90dとの間の距離は、凸部21d、放熱シート91及び電子部品81の素子部81aのX軸方向の厚さよりも長い。第3屈曲部90fと第1面部90aとの間の距離は、凸部21d、放熱シート91及び素子部81aのX軸方向の厚さよりも短い。
【0028】
クリップ90を嵌めるときは、例えば、凸部21dと放熱シート91と素子部81aとをX軸方向に並べた状態で、外力により第3屈曲部90fと第1面部90aとの間を広げながら、第3屈曲部90fと第1面部90aとの間に、凸部21d、放熱シート91及び素子部81aの+Z軸方向の端部を挿入する。このときクリップ90の一端(径方向外側且つ軸方向他方側の端部)は、溝部21eに挿入される。第3屈曲部90fと第1面部90aとの間を広げる外力を解除すると、クリップ90は、第1面部90aと第3面部90eとの間に、凸部21d、放熱シート91及び素子部81aを固定する。
【0029】
クリップ90を凸部21d、放熱シート91及び素子部81aに嵌めると、凸部21dの+X軸方向の面は、放熱シート91の面91aに接し、放熱シート91の面91bは素子部81aの面81aaに接する。これにより、素子部81aと凸部21dとが熱的に接続される。
【0030】
図6は、凸部21d及び電子部品81を+Y軸方向から見た側断面図である。
本実施形態では、電子部品81は、素子部81aの−Z軸方向の端部から−Z軸方向に延びるリード84を有する。リード84は、2つの屈曲部(第1屈曲部84f及び第2屈曲部84g)で屈曲して回路基板80に実装される。凸部21dの面のうち−X軸方向の面である面21daは、クリップ90の面90aaと接する。凸部21dの面のうち+X軸方向の面である面21dbは、放熱シート91の面91aと接する。電子部品81の面のうち凸部21dと対向する面である面81aaは、凸部21dの面のうち電子部品81と対向する面である面21dbと平行である。
【0031】
(電子部品及び凸部の別の実施形態)
図7は、
図6と別の実施形態であって、
図6の凸部21dに相当する凸部121d、及び
図6の電子部品81に相当する電子部品181を+Y軸方向から見た側断面図である。
図6の実施形態では、電子部品81の面81aa、及び凸部21dの面21dbは、Z軸方向と平行な面であったが、本実施形態では、電子部品181の面181aa、及び凸部121dの面121dbは、Z軸方向と平行ではない。
【0032】
電子部品181は、電子部品181の機能を実現する素子を有する素子部181aと、素子部181aに接続されるリード184とを有する。電子部品181は、素子部181aで発熱する。Y軸方向に並ぶ複数のリード184は、素子部181aの−Z軸方向且つ+X軸方向の端部から−Z軸方向且つ+X軸方向に延び、第1屈曲部184gで−Z軸方向に屈曲し、屈曲後に−Z軸方向に延びる。すなわち、本実施形態では、電子部品181のリード184は、ひとつの屈曲部(第1屈曲部184g)で屈曲して回路基板80に実装される。
【0033】
本実施形態では、
図6のモータハウジング21に相当するモータハウジング121を有する。モータハウジング121は、+Z軸方向の端部に、+Z軸方向且つ−X軸方向に延びる凸部121dを有する。電子部品181と凸部121dとは、間に放熱シート91を介在し、クリップ90で挟んで固定される。モータハウジング121は、凸部121dの径方向外側に、−Z軸方向且つ+X軸方向に凹む溝部121eを有する。クリップ90の一端は、溝部121eに挿入される。
【0034】
凸部121dは、+Z軸方向且つ+X軸方向に向く面121dbを有する。電子部品181の素子部181aは、−Z軸方向且つ−X軸方向に向く面181aa、及び+Z軸方向且つ+X軸方向に向く面181abを有する。電子部品181の面のうち凸部121dと対向する面である面181aaは、凸部121dの面のうち電子部品181と対向する面である面121dbと平行である。
【0035】
<モータの作用・効果>
次に、モータ10の作用・効果について説明する。
【0036】
上述の実施形態に係る発明においては、モータであって、軸方向に延びる中心軸に沿って回転するロータと、前記ロータと対向するステータと、を備えるモータ部と、前記モータ部の駆動を行う回路基板と、前記モータ部及び前記回路基板を収容するハウジングと、を備え、前記回路基板には、少なくとも一つのディスクリート型電子部品を有し、前記ハウジングは、軸方向一方側に延びる凸部を有し、前記ディスクリート型電子部品は、前記凸部と熱的に接続する。
このため、モータにおいて、ディスクリート型電子部品の放熱効率を向上することが出来る。
また、ハウジングをヒートシンクとして使用することが出来るので、放熱効果をより高めることが出来る。また、ハウジングをヒートシンクとして使用することが出来るので、部品点数を削減出来ると共に、組み立てを容易にすることが出来る。
循環させることで、効率よく冷却することが出来る。
【0037】
また、前記電子部品と前記凸部との間に介在して前記電子部品と前記凸部とを熱的に接続する、絶縁性を有する放熱シートを更に備えた。
このため、放熱シートにより電子部品と凸部とを熱的に接続し、放熱効果をより高めることが出来る。
また、放熱シートが絶縁性を有することで電子部品の焼損時にも絶縁を確保することが出来る。
【0038】
また、前記電子部品及び前記凸部を挟んで固定したクリップを更に備えた。
このため、組み立てが容易であり、電子部品と凸部とをより確実に熱的に接続することが出来る。
【0039】
また、前記ハウジングは、前記クリップの軸方向他方側の端部を収納する溝部を有する。
このため、クリップの一端がハウジングの溝部に収納されるので、ハウジングの凸部と電子部品とをより確実に熱的に接続することが出来る。
【0040】
また、前記ハウジングは、径方向外側に延びるフランジ部を有し、前記凸部と前記フランジ部とは径方向に重なる。
このため、肉厚なフランジ部によって、熱の拡散を推進することが出来る。
【0041】
また、前記フランジ部にはネジを通すことが可能な孔がある。
このため、熱の拡散を促進すると同時に、単純な形状にすることが出来る。
【0042】
また、前記ハウジングは、第1ハウジングと第2ハウジングとが互いに径方向にオーバーラップするオーバーラップ部を有する。
このため、オーバーラップ部によりハウジング内の密閉性をより高めることが出来る。
【0043】
また、前記電子部品は、素子部と該素子部から軸方向他方側に延びるリードとを有し、前記リードは前記回路基板と電気的に接続し、前記リードの軸方向他方側は、軸方向一方側よりも径方向内側に位置する。
このため、リードとハウジングとの絶縁距離を確保することが出来る。
【0044】
また、前記凸部の軸方向一方側は、軸方向他方側よりも径方向外側に位置する。
このため、リードとハウジングとの絶縁距離を確保することが出来る。
【0045】
また、前記電子部品の前記凸部と対向する面は、前記凸部の前記電子部品と対向する面と平行である。
このため、電子部品の発熱をより効率的に放熱することが出来る。
【0046】
また、前記電子部品は、回路基板の前記凸部側の縁部に実装されている。
このため、電子部品が凸部に近く、電子部品と凸部とを熱的に接続しやすい。
【0047】
また、前記電子部品は、ブリッジダイオード、IGBT、ブリッジダイオード、MOSFET,IPM、DC/DCコンバータのうちの少なくとも一つである。
このため、発熱が大きく高温になりやすい電子部品の放熱をより効率的に行うことが出来る。
【0048】
上述した実施形態のモータの用途は、特に限定されない。また、上述した各構成は、相互に矛盾しない範囲内において、適宜組み合わせることが出来る。
【0049】
以上、本発明の好ましい実施形態について説明したが、本発明は、これらの実施形態に限定されず、その要旨の範囲内で種々の変形及び変更が可能である。これらの実施形態及びその変形は、発明の範囲及び要旨に含まれると同時に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。