【解決手段】市販中のアイスクリームに含まれている合成乳化剤及び安定剤を添加せず、柑橘由来天然食物繊維及びストレプトベルチシリウムモバラエンス(Streptoverticillium mobaraense)の培養物由来酵素を添加することによって、アイスクリームミックスに安定性を与え、乳製品の風味を阻害することなく保形性を向上させたアイスクリーム組成物及びその製造方法を提供する。
前記ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素は、60℃〜70℃で酵素活性を示すタンパク質架橋酵素である、請求項1に記載の保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物。
前記a)段階において水相組成物は、アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に、0.15〜0.55重量%の天然食物繊維、10〜30重量%の糖類、5〜20重量%の乳製品、3〜5重量%の卵黄、及び55〜65重量%の水を混合してなる、請求項3に記載の保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物の製造方法。
【背景技術】
【0002】
一般のアイスクリームの製造方法は、乳製品、糖類、精製水に乳化剤、安定剤、香料を添加して安定したアイスクリームミックスを製造した後、フリーザーを用いて冷却しつつ空気を均一に混合させ、軟らかい食感のアイスクリームを作る。
【0003】
アイスクリームの等級は、乳脂肪、無脂乳固形分などの含有量によってアイスクリーム、アイスミルク、非乳脂肪アイスクリーム、低脂肪アイスクリーム、シャーベット、氷菓類などの6つに分類される。
【0004】
市販中のアイスクリームは、乳化剤、安定剤を多く含有している。乳化剤は一般に、0.1%〜4.0%まで使用されるが、アイスクリームの主要原料である水と油の表面張力を下げることによって水と油の粒子を均一に分布させ、ミックスの安定性を与える。
【0005】
安定剤は一般に0.1〜3.0%まで使用されるが、アイスクリームに粘性を与えることによって空気の均一な混入を促して気泡を安定化させ、軟らかい組織を持つようにする。また、コロイド成分を均一に維持させて安定性を増加させる。
【0006】
乳化剤及び安定剤を使用しないと、アイスクリームの水と油との乳化力が弱いため、ミックスの原料と水分とが分離することがある。このため、フリーザーでチャーニングが起き、アイスクリームの食感が粗くなる現象が発生する。また、ミックスに空気を注入し難くなって粗い組織のアイスクリームが作られ、大容量でアイスクリームを生産時にミックスの安定性及び保形性が弱くなり、生産及び流通過程で問題が生じ得る。
【0007】
一般に、乳化剤は、グリセリン脂肪酸エステル、ショ糖脂肪酸エステル、ポリグリセリン脂肪酸エステルなどの合成製品を多く使用しており、安定剤としては、カラギーナン、グアーガム、ローカストビーンガム、ペクチンなどを多く使用している。合成乳化剤は多量摂取時に肝臓や腎臓に悪影響を与えることがあると知られており、1日許容基準値(Acceptable Daily Intake,ADI)として、グリセリン脂肪酸エステルは0〜125mg/kg、ショ糖脂肪酸エステルは0〜30mg/kg、プロピレングリコール脂肪酸エステルは0〜20mg/kg、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステルは0〜25mg/kgを推奨している。また、安定剤のカラギーナンは癌を誘発する恐れがあると1972年から米国食品医薬局(FDA)から主張されており、1982年米国国際癌研究所ではカラギーナンを'動物に癌を誘発し得る物質'と規定した。カラギーナンを含めて電荷を帯びる大部分のガム質は、強い静電気的結合力及び消化抵抗性によって無機質の体内吸収を妨害することがあり、アレルギー反応を起こし得るという疑念が提起され続けている。
【0008】
韓国登録特許第10−1272799号には、合成乳化剤を使用せずに大豆タンパク粉末を用いて油化安定性を与えたアイスクリームの製造に関して開示されているが、大豆タンパク粉末は適正量以上を使用する場合、豆の生臭い匂いがし、アイスクリームに異臭をもたらし得るという問題があった。
【0009】
したがって、合成乳化剤と安定剤を使用しなくともアイスクリームミックスの安全性を高め、コーン及び様々な形態のアイスクリームをその形態のまま長持ちさせ、アイスクリームの風味に影響を与えない素材に関する研究が必要である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
上記のような背景下で、本発明者らは合成乳化剤と安定剤を使用しなくとも、アイスクリームミックスの安全性を高めるとともにアイスクリームの風味に影響を与えない素材を見出すために鋭意努力した結果、アイスクリームミックス製造時に、柑橘由来天然食物繊維及びタンパク質架橋酵素を添加することによってアイスクリームに食物繊維ネットワーク構造を与えると同時にタンパク質架橋骨格を形成し、アイスクリームの溶ける時間を遅延させ且つ保形性を向上させることを確認し、本発明を完成するに至った。
【0012】
本発明の目的は、天然食物繊維及びタンパク質架橋酵素が含まれた、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物及びその製造方法を提供することにある。
本発明の目的は以上に言及した目的に制限されない。本発明の目的は、以下の説明からより明らかになるはずであり、特許請求の範囲に記載の手段及びその組合せによって実現されるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記の目的を達成するために、下記の解決手段を提供する。
本発明の一側面は、アイスクリームミックス組成物において、前記アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に、0.15〜0.55重量%の天然食物繊維を含む水相組成物;0.03〜0.15重量%のストレプトベルチシリウムモバラエンス(Streptoverticillium mobaraense)の培養物由来酵素;及び5〜10重量%の油脂を含む油相組成物;を含む、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物を提供する。
【0014】
本発明の一側面において、前記水相組成物は、アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に、10〜30重量%の糖類;5〜20重量%の乳製品;3〜5重量%の卵黄;及び55〜65重量%の水をさらに含む、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物を提供する。
【0015】
本発明の一側面において、前記天然食物繊維は柑橘由来天然食物繊維であり、純度が70%以上である、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物を提供する。
【0016】
本発明の一側面において、前記ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素は60℃〜70℃で酵素活性を示すタンパク質架橋酵素である、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物を提供する。
【0017】
本発明の一側面において、前記アイスクリームミックス組成物は組成物の全重量%を基準に乳化剤及び安定剤がそれぞれ0.01重量%以下の含有量で含まれる、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物を提供する。
【0018】
本発明の他の側面は、a)天然食物繊維;糖類;乳製品;卵黄;及び水を混合して水相組成物を製造する段階;b)前記水相組成物、油相組成物及び酵素を混合して乳化物を製造する段階;c)前記b)段階の乳化物に含まれた酵素を活性化させる段階;及びd)前記c)段階の乳化物を殺菌及び均質化した後に冷却させる段階;を含む、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物の製造方法を提供する。
【0019】
本発明の他の側面において、前記a)段階で水相組成物は、アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に、0.15〜0.55重量%の天然食物繊維;10〜30重量%の糖類;5〜20重量%の乳製品;3〜5重量%の卵黄;及び55〜65重量%の水を混合して製造される、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物の製造方法を提供する。
本発明の他の側面において、前記b)段階で油相組成物はアイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に5〜10重量%の油脂を含む、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物の製造方法を提供する。
【0020】
本発明の他の側面において、前記b)段階で酵素はアイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に0.03〜0.15重量%含まれるストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素である、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物の製造方法を提供する。
【0021】
本発明の他の側面において、前記c)段階は60℃〜70℃の温度条件下で行われる、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物の製造方法を提供する。
【0022】
本発明の他の側面において、前記c)段階で前記酵素の活性時間は5〜70分である、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物の製造方法を提供する。
【0023】
本発明の他の側面において、前記d)段階で均質化は100〜300bar圧力条件で高圧均質機(high pressure homogenizer)を用いて行われる、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物の製造方法を提供する。
【0024】
本発明の他の側面において、前記d)段階で冷却は5℃以下の温度条件下で行われる、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物の製造方法を提供する。
【発明の効果】
【0025】
本発明の一側面による天然食物繊維及びタンパク質架橋酵素が含まれた、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物は、市販中のアイスクリームに含まれている合成乳化剤及び安定剤を添加しなくとも、アイスクリームミックスに安定性を与え、且つ乳製品の風味を阻害することなく保形性を向上させる効果がある。
【0026】
また、本発明の一側面によるアイスクリームミックス組成物は、合成乳化剤及び安定剤を含まず、体内に悪影響を与え得る有害性の問題から免れることができる。
【0027】
一方、本発明の一側面によるアイスクリームミックス組成物は、安定化したミックス乳化形態及び粘性を有し、これによってオーバーラン(over−run)投入の作業性が容易である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以上の本発明の目的、他の目的、特徴及び利点は、添付の図面に関連した以下の好ましい実施例から容易に理解されるであろう。しかし、本発明は、ここで説明される実施例に限定されず、他の形態に具体化されてもよい。却って、ここで紹介される実施例は、開示の内容が徹底且つ完全になるように、また通常の技術者に本発明の思想を十分に伝達するために提供されるものである。
【0030】
本明細書において、"含む"又は"有する"などの用語は、明細書上に記載された特徴、数字、段階、動作、構成要素、部品又はそれらの組合せが存在することを指定するためのものであり、1つ又はそれ以上の他の特徴、数字、段階、動作、構成要素、部分品又はそれらの組合せの存在又は付加の可能性をあらかじめ排除しないものとして理解すべきである。また、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の"上に"あるとする場合、これは、他の部分の"真上に"ある場合の他、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。同様に、層、膜、領域、板などの部分が他の部分の"下に"あるとする場合、これは他の部分の"真下に"ある場合の他、その中間にさらに他の部分がある場合も含む。
【0031】
本明細書において、範囲が変数に対して記載される場合、この変数は、当該範囲における記載された終了点を含む、記載された範囲内の全ての値を含むものとして理解すべきである。例えば、"5〜10"の範囲は、5、6、7、8、9、及び10の値の他、6〜10、7〜10、6〜9、7〜9などの任意の下位範囲も含み、5.5、6.5、7.5、5.5〜8.5及び6.5〜9などのような記載された範囲の範ちゅうに妥当な整数の間の任意の値も含むものとして理解されるであろう。また、例えば、"10%〜30%"の範囲は、10%、11%、12%、13%などの値と、30%までを含む全ての整数の他、10%〜15%、12%〜18%、20%〜30%などの任意の下位範囲も含み、10.5%、15.5%、25.5%などのように記載された範囲の範ちゅう内の妥当な整数の間の任意の値も含むものとして理解されるであろう。
【0033】
本発明は、天然食物繊維及びタンパク質架橋酵素を用いて、溶ける時間を遅延させ、保形性を強化したアイスクリーム組成物及びその製造方法に関する。より詳細には、市販中のアイスクリームに含まれている合成乳化剤及び安定剤を添加せず、柑橘由来天然食物繊維及びストレプトベルチシリウムモバラエンス(Streptoverticillium mobaraense)の培養物由来酵素を添加することによって、アイスクリームミックスに安定性を与え、且つ乳製品の風味を阻害することなく保形性を向上させたアイスクリーム組成物及びその製造方法に関する。
【0034】
前記合成乳化剤及び安定剤が含まれていないアイスクリーム組成物を用いて、乳製品の風味を阻害することなく食感特性及び保形性に優れた健康指向的アイスクリーム製品を製造することができる。
【0035】
本発明の一側面は、アイスクリームミックス組成物において、前記アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に、0.15〜0.55重量%の天然食物繊維を含む水相組成物;0.03〜0.15重量%のストレプトベルチシリウムモバラエンス(Streptoverticillium mobaraense)の培養物由来酵素;及び5〜10重量%の油脂を含む油相組成物;を含む、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物を提供する。
【0036】
本発明において、前記天然食物繊維は柑橘類から抽出した天然食物繊維素材の繊維(fiber)であり、抽出物全重量を基準に、食物繊維74%〜78%、ペクチン15%で構成されている。前記柑橘由来天然食物繊維は純度70%以上であることを特徴とし、アイスクリームミックス製造時にアイスクリームに食物繊維ネットワーク構造を与える。しかも、前記柑橘由来天然食物繊維はアイスクリームミックスの乳化、粘度安定性を与え、これによって、軟らかい組織のアイスクリームの製造を可能にする。
【0037】
本発明において、前記柑橘由来天然食物繊維は、純度70%以上であると好ましく、純度70%以下の場合、残余ペクチン成分によって粘度が上昇する恐れがあり、アイスクリーム内ネットワーク構造形成を弱くさせてミックスの乳化物が分離されることがある。
【0038】
前記柑橘由来天然食物繊維は、これに制限されないが、アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に0.15〜0.55重量%、又は0.2〜0.4重量%を添加することが好ましい。
【0039】
前記柑橘由来天然食物繊維が0.15重量%未満で添加される場合、アイスクリームミックス粘度が既存通常のアイスクリームミックスに比べて50%に減少して気泡捕集が困難となり、オーバーランが低くなる。逆に、0.4重量%を超えて添加される場合、ミックス粘度が1,500cPs以上に急上昇し、生産時にタンクの移送に困難が生じることがある。
【0040】
本発明において、前記ストレプトベルチシリウムモバラエンス(Streptoverticillium mobaraense)の培養物由来酵素は、ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物から通常の抽出方法によって抽出した後、エチルアルコールで処理して得られた酵素である。前記ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素はタンパク質架橋酵素であり、トランスグルタミナーゼ(transglutaminase)であり得る。前記タンパク質架橋酵素はアイスクリームミックス製造時にタンパク質架橋骨格を形成する。
【0041】
前記ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素は、これに制限されないが、60℃〜70℃、又は65℃で酵素活性を示すものが好ましい。
【0042】
アイスクリームミックス製造時に、添加された前記酵素の活性温度が60℃未満の場合、乳製品及び食物繊維が不完全溶解することがあり、70℃を超える場合、乳化工程において乳製品の酸敗及び糖類の変質が起きることがある。
【0043】
また、アイスクリームミックス製造時に、これに制限されないが、前記酵素添加後の活性時間は、5〜70分、10〜60分、又は10〜30分が好ましい。前記酵素の活性時間が70分を超える場合、ミックス粘度が低下し保形性が弱くなる。
【0044】
前記ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素は、これに制限されないが、アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に0.03〜0.15重量%、又は0.05〜0.1重量%を添加することが好ましい。
【0045】
前記ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素が0.15重量%を超えて添加された場合でも、保形性効果は0.15重量%で添加した時に比べて増加しない。これによって、0.03〜0.15重量%、好ましくは0.05〜0.1重量%添加時に臨界的意義を有する。
【0046】
前述したように、アイスクリームミックス製造時に、柑橘由来天然食物繊維及びタンパク質架橋酵素であるストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素を添加することによってアイスクリームに食物繊維ネットワーク構造を与えると同時にタンパク質架橋骨格を形成し、アイスクリームの溶ける時間を遅延させるとともに保形性を向上させることができる。
【0047】
本発明において、前記油相組成物に含まれる油脂は、アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に5〜10重量%、又は6〜8重量%を添加することが好ましい。
【0048】
前記油脂は動物性油脂及び植物性油脂を含み、ここで、動物性油脂は、バター、牛脂、豚脂、羊脂、魚脂及びそれらの組合せから選ばれ、好ましくは、バターであり得る。そして、前記植物性油脂は、これに制限されないが、パーム油、ヤシ油(ココナッツオイル)、大豆油、ひまわり油、玄米油、糠油、オリーブ油、ぶどう種子油、クルミ油、杏子油、バージンココナッツオイル、アボカドオイル、ヘンプシードオイル、亜麻種子油、アーモンドオイル、月見草オイル、キャノーラ油、綿実油、胡麻油及びそれらの組合せから選択して使用することができる。
【0049】
本発明において、前記水相組成物はアイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に、10〜30重量%の糖類;5〜20重量%の乳製品;3〜5重量%の卵黄;及び55〜65重量%の水をさらに含むことができる。
【0050】
本発明において、前記糖類は、アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に10〜30重量%、又は15〜25重量%を添加することが好ましい。
【0051】
前記糖類は、これに制限されないが、砂糖、糖シロップ、オリゴ糖、ぶどう糖、果糖、水飴、デキストリン、乳糖及びそれらの組合せから選択して使用することができる。
【0052】
本発明において、前記乳製品は、アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に5〜20重量%、又は7〜15重量%を添加することが好ましい。
【0053】
前記乳製品は、これに制限されないが、牛乳、発酵乳、バター乳、濃縮乳、練乳、乳クリーム、バター、バターオイル、粉乳類及びそれらの組合せから選択して使用することができる。
また、本発明において、前記卵黄は、アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に3〜5重量%を添加することが好ましい。
【0054】
一方、前記水はアイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に55〜65重量%を添加することが好ましい。
【0055】
本発明において、前記アイスクリームミックス組成物は、組成物の全重量%を基準に、乳化剤及び安定剤がそれぞれ0.01重量%以下の含有量で含まれてもよいが、前記乳化剤及び安定剤が含まれないことが好ましい。
【0056】
前述したように、天然食物繊維、糖類、乳製品、卵黄及び水を含む水相組成物;ストレプトベルチシリウムモバラエンス(Streptoverticillium mobaraense)の培養物由来酵素及び油脂を含む油相組成物の組合せで構成された、本発明に係る保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物は、市販中のアイスクリームに含まれている合成乳化剤及び安定剤を添加せずに製造されることが好ましく、これによって、健康指向的アイスクリーム製品の製造に有用であり得る。
【0057】
本発明の他の側面は、a)天然食物繊維;糖類;乳製品;卵黄;及び水を混合して水相組成物を製造する段階;b)前記水相組成物、油相組成物及び酵素を混合して乳化物を製造する段階;c)前記b)段階の乳化物に含まれた酵素を活性化させる段階;及びd)前記c)段階の乳化物を殺菌及び均質化した後に冷却させる段階;を含む、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物の製造方法を提供する。
【0058】
前記保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物の製造方法を段階別にさらに詳しく説明すると、次の通りである。
【0059】
a)段階は、天然食物繊維;糖類;乳製品;卵黄;及び水を混合して水相組成物を製造する段階である。具体的に、前記水相組成物は、アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に、0.15〜0.55重量%の天然食物繊維;10〜30重量%の糖類;5〜20重量%の乳製品;3〜5重量%の卵黄;及び55〜65重量%の水を混合して製造することができる。
【0060】
b)段階は、前記a)段階の水相組成物、油相組成物及び酵素を混合して乳化物を製造する段階である。具体的に、前記油相組成物は、アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に5〜10重量%の油脂を含むことができる。また、前記酵素は、前述したようにストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素であり、アイスクリームミックス組成物の全重量%を基準に0.03〜0.15重量%を含むことができる。
【0061】
本発明において、前記c)段階は、これに制限されないが、60℃〜70℃、又は65℃の温度条件下で行うことができる。
【0062】
一方、前記c)段階で酵素の活性時間は、これに制限されないが、5〜70分、10〜60分、又は10〜30分以内の酵素活性化時間を有することができる。
【0063】
d)段階は、前記c)段階の乳化物を殺菌及び均質化させた後に冷却させる段階である。具体的に、前記殺菌は、これに制限されないが、80℃以上の温度条件で10秒以内に行うことができ、前記均質化は、これに制限されないが、100〜300bar、又は200bar圧力条件で高圧均質機(high pressure homogenizer)を用いて行うことができる。
【0064】
前記均質化時の圧力条件が100barよりも低いと、ミックス粒子のサイズが大きくてアイスクリーム製造時に粗い組織が残ることがあり、300barよりも高いと、ミックス粒子のサイズが小さくて粘度が上昇することがある。
【0065】
また、殺菌及び均質化した後の冷却は、これに制限されないが、5℃以下の温度条件下で急冷させて行うことができる。
【0066】
なお、殺菌及び均質化した後に5℃以下の温度条件下で急冷させた乳化物を24時間以上エージング(aging)して安定化させることによって、保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物を製造することができる。
【0067】
前記保形性が強化されたアイスクリームミックス組成物を用いて製造されたアイスクリームは、前述したように、市販中のアイスクリームに含まれている合成乳化剤及び安定剤を添加せず、柑橘由来天然食物繊維及びストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素を添加することによって、従来通常のアイスクリームミックスによって製造されたアイスクリームに比べて保形性が強化されるだけでなく、製造原料及び工程中に風味変化が起きないという利点がある。
【0068】
以下、実施例を用いて本発明の構成及び効果をより詳細に説明する。これらの実施例は単に本発明を例示するためのものに過ぎず、本発明の範囲がこれらの実施例によって限定されるものではない。
【0069】
実施例1:アイスクリームミックス製造
砂糖120gと粉乳80g、柑橘由来天然食物繊維4gを混合した後、オリゴ糖80g、卵黄40gを水605gと混合して65℃で完全溶解させて水相組成物を製造した。該水相組成物に、溶かしたバター70g、及びストレプトベルチシリウムモバラエンス(Streptoverticillium mobaraense)の培養物から抽出した後エチルアルコールで処理して得られた酵素1gを添加した後、65℃で10分間酵素反応を活性化させた。この組成物を85℃で10秒間殺菌した後、150barの圧力下で高圧均質機で均質化し、5℃に急冷させた。その後、24時間以上エージング(aging)してアイスクリームミックスを製造した。
【0070】
一方、前記天然食物繊維は、柑橘類から抽出した天然食物繊維であり、純度70%以上のものを使用した。また、前記ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素はタンパク質架橋酵素であり、活性温度が60〜70℃で、トランスグルタミナーゼであることを確認した。
【0071】
実施例2:柑橘由来天然食物繊維を2g添加したアイスクリームミックス製造
前記実施例1と同じ方法で実施するが、柑橘由来天然食物繊維を2g添加してアイスクリームミックスを製造した。ただし、総量1000gを基準に水の量を調節した。
【0072】
実施例3:ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素を0.5g添加したアイスクリームミックス製造
前記実施例1と同じ方法で実施するが、前記ストレプトベルチシリウムモバラエンス(Streptoverticillium mobaraense)の培養物から抽出した後にエチルアルコールで処理して得られた酵素を0.5g添加してアイスクリームミックスを製造した。ただし、総量1000gを基準に水の量を調節した。
【0073】
実施例4:酵素活性時間を30分に調節したアイスクリームミックス製造
前記実施例1と同じ方法で実施するが、酵素活性時間を30分にしてアイスクリームミックスを製造した。
【0074】
実施例5:酵素活性時間を60分に調節したアイスクリームミックス製造
前記実施例1と同じ方法で実施するが、酵素活性時間を60分にしてアイスクリームミックスを製造した。
【0075】
比較例1:柑橘由来天然食物繊維を1g添加したアイスクリームミックス製造
前記実施例1と同じ方法で実施するが、柑橘由来天然食物繊維を1g添加してアイスクリームミックスを製造した。ただし、総量1000gを基準に水の量を調節した。
【0076】
比較例2:柑橘由来天然食物繊維を6g添加したアイスクリームミックス製造
前記実施例1と同じ方法で実施するが、柑橘由来天然食物繊維を6g添加してアイスクリームミックスを製造した。ただし、総量1000gを基準に水の量を調節した。
【0077】
比較例3:柑橘由来天然食物繊維を8g添加したアイスクリームミックス製造
前記実施例1と同じ方法で実施するが、柑橘由来天然食物繊維を8g添加してアイスクリームミックスを製造した。ただし、総量1000gを基準に水の量を調節した。
【0078】
比較例4:ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素を2.0g添加したアイスクリームミックス製造
前記実施例1と同じ方法で実施するが、前記酵素を2.0g添加してアイスクリームミックスを製造した。ただし、総量1000gを基準に水の量を調節した。
【0079】
比較例5:ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素を添加しないアイスクリームミックス製造
前記実施例1と同じ方法で実施するが、前記酵素を添加せずにアイスクリームミックスを製造した。ただし、総量1000gを基準に水の量を調節した。
【0080】
比較例6:酵素活性時間無しでアイスクリームミックス製造
前記実施例1と同じ方法で実施するが、酵素活性時間を0分にしてアイスクリームミックスを製造した。
【0081】
比較例7:酵素活性時間を90分に調節したアイスクリームミックス製造
前記実施例1と同じ方法で実施するが、酵素活性時間を90分にしてアイスクリームミックスを製造した。
【0082】
比較例8:従来通常のアイスクリームミックス製造
前記実施例1と同じ方法で実施するが、柑橘由来天然食物繊維と前記酵素を添加せず、合成乳化剤2gと、グアーガム、ローカストビーンガム、カラギーナン、タマリンドガムの混合安定剤2gを添加し、酵素活性時間も持たない条件下でアイスクリームミックスを製造した。
【0083】
次に、実施例1〜実施例5及び比較例1〜比較例7を下記の表1に整理して示す。
【表1】
【0084】
実験例1:柑橘由来天然食物繊維添加の有無及び含有量による保形性評価
前記実施例1及び比較例8で製造されたアイスクリーム組成物の柑橘由来天然食物繊維添加の有無による保形性特性を確認し、実施例1及び実施例2と比較例1〜比較例3で製造されたアイスクリーム組成物の柑橘由来天然食物繊維の含有量による保形性を評価した。その結果を下記の表2及び
図2に示す。
【0085】
具体的に、保形性評価は、液状ミックスをフリーザー冷却器を用いて冷却及び気泡注入をしてアイスクリームを製造した後、23℃〜24℃で時間によって溶けるアイスクリームの量を測定した。
【0086】
粘度測定は、ブルックフィールド(BROOKFIELD)粘度計を用いた。このとき、LV2スピンドルを使用し、6〜30RPM、測定物温度は8〜10℃条件にして行った。味と食感は官能評価によって評価した。
【0088】
上記の表2及び
図2によれば、食物繊維を添加した実施例1の場合、食物繊維を添加せず、合成乳化剤及び安定剤を使用した比較例8に比べて、溶け出す時点が遅く、40〜50分間に溶ける量が32〜68%減少する効果を示した。
【0089】
また、実施例1及び2と比較例1〜3において、食物繊維の含有量が増加するほど保形性に優れることが確認できた。しかし、食物繊維0.1重量%以下ではミックス粘性が低いため、冷凍中に混合物が空気の混入によって体積増加する現象であるオーバーラン(over−run)が低くなった。一方、食物繊維0.6重量%以上使用時にミックスの粘度が急増し、0.8重量%使用時にぬるぬるした食感を持つことを確認した。
したがって、前記結果から、食物繊維の添加量は0.15〜0.55重量%が最も優れた物性及び保形性を示すことが分かった。
【0090】
実験例2:ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素添加の有無及び含有量による保形性評価
上記の実施例1及び実施例3と比較例4及び比較例5で製造されたアイスクリーム組成物のストレプトベルチシリウムモバラエンス(Streptoverticillium mobaraense)の培養物由来酵素添加の有無と含有量による保形性を評価した。その結果を、下記の表3及び
図3に示す。
【0092】
上記の表3及び
図3の結果によれば、ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来の酵素を添加した実施例1及び実施例3と比較例4は、酵素を添加していない比較例5に比べて保形性が向上したことが確認できる。
【0093】
一方、酵素0.10重量%を添加した実施例1と酵素0.2重量%を添加した比較例4とを比較分析した結果、保形性の効果が類似であることが確認されたが、実質的に0.10重量%以上の添加時には保形性効果が増加しなかった。これによって、ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素の含有量が0.03〜0.15重量%の場合に最適であることが分かった。
【0094】
実験例3:ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素の活性時間による保形性評価
上記の実施例1、実施例4及び実施例5と比較例6及び比較例7で製造されたアイスクリーム組成物の製造過程においてストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素の活性時間による保形性を評価した。その結果を下記の表4及び
図4に示す。
【0096】
上記の表4及び
図4の結果によれば、ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素の添加後、65℃で活性時間が増加するほど、保形性効果に優れたことが確認された。しかし、比較例7によれば、活性時間が90分以上の場合、保形性効果がわずかであることが確認され、溶け出す時点が活性時間を0にした時と類似であった。
【0097】
したがって、前記結果から、ストレプトベルチシリウムモバラエンスの培養物由来酵素を添加後、5〜70分の活性時間の範囲で保形性及び溶ける時間の遅延効果があることが分かった。